(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023014605
(43)【公開日】2023-01-31
(54)【発明の名称】信号処理のシミュレート方法および信号処理シミュレータ
(51)【国際特許分類】
H04R 3/00 20060101AFI20230124BHJP
【FI】
H04R3/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021118647
(22)【出願日】2021-07-19
(71)【出願人】
【識別番号】000004075
【氏名又は名称】ヤマハ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000970
【氏名又は名称】弁理士法人 楓国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】深田 アユミ
(72)【発明者】
【氏名】寺田 光太郎
【テーマコード(参考)】
5D220
【Fターム(参考)】
5D220EE05
5D220EE34
5D220EE44
5D220EE47
(57)【要約】 (修正有)
【課題】音信号をトリガーとして動作するロジック処理部をオフラインでシミュレートすることが可能な信号処理のシミュレート方法及び信号処理シミュレータを提供する。
【解決手段】信号処理のシミュレート方法では、信号処理シミュレートを行う音信号処理装置、シミュレートする信号処理コンポーネント、その設定を受け付けて音信号処理装置内に仮想信号処理デバイスを構築する。そして、仮想信号処理コンポーネントに音信号を入力し、前入力された音信号に対して所定の信号処理を行い、信号処理を行った音信号を出力する。仮想信号処理デバイスは、仮想信号処理コンポーネントに入力される前記音信号をトリガーとして動作する、LED803・メータ805等のロジック処理部を含む。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
音信号処理装置の指定を受け付けて、
指定された前記音信号処理装置内で、音信号を入力し、入力された該音信号に対して所定の信号処理を行い、音信号を出力する信号処理コンポーネントの指定を受け付けて、
指定された前記信号処理コンポーネントにより構築される信号処理デバイスの設定を受け付けて、
受け付けた前記信号処理デバイスに対応する仮想信号処理デバイスを構築する、
信号処理のシミュレート方法であって、
前記仮想信号処理デバイスは、受け付けた前記信号処理コンポーネントに対応する仮想信号処理コンポーネントを含み、
前記仮想信号処理コンポーネントに音信号を入力し、
前記仮想信号処理コンポーネントは、入力された音信号に対して所定の信号処理を行い、前記信号処理を行った音信号を出力し、
前記仮想信号処理デバイスは、前記仮想信号処理コンポーネントに入力される前記音信号をトリガーとして動作するロジック処理部を含む、
信号処理のシミュレート方法。
【請求項2】
前記仮想信号処理コンポーネントに入力する音信号は、前記信号処理コンポーネントに入力する音信号と異なる音である、
請求項1に記載の信号処理のシミュレート方法。
【請求項3】
前記仮想信号処理デバイスが前記音信号を入力してから前記音信号を出力するまでの第1時間は、前記信号処理デバイスが前記音信号を入力してから前記音信号を出力するまでの第2時間よりも長い、
請求項1または請求項2に記載の信号処理のシミュレート方法。
【請求項4】
利用者から、前記第2時間に対する前記第1時間の時間差に対応する情報を受け付ける、
請求項3に記載の信号処理のシミュレート方法。
【請求項5】
前記仮想信号処理デバイスは、複数の仮想信号処理コンポーネントを含み、
利用者から、前記複数の仮想信号処理コンポーネントのうち前記音信号を入力して前記信号処理を行う仮想信号処理コンポーネントの指定を受け付ける、
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の信号処理のシミュレート方法。
【請求項6】
前記仮想信号処理コンポーネントで信号処理された音信号を録音する、
請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の信号処理のシミュレート方法。
【請求項7】
音信号処理装置の指定を受け付けて、
指定された前記音信号処理装置内で、音信号を入力し、入力された該音信号に対して所定の信号処理を行い、音信号を出力する信号処理コンポーネントの指定を受け付けて、
指定された前記信号処理コンポーネントにより構築される信号処理デバイスの設定を受け付けて、
受け付けた前記信号処理デバイスに対応する仮想信号処理デバイスを構築する、
処理を実行する信号処理シミュレータであって、
前記仮想信号処理デバイスは、受け付けた前記信号処理コンポーネントに対応する仮想信号処理コンポーネントを含み、
前記信号処理シミュレータは、前記仮想信号処理コンポーネントに音信号を入力し、
前記仮想信号処理コンポーネントは、入力された音信号に対して所定の信号処理を行い、前記信号処理を行った音信号を出力し、
前記仮想信号処理デバイスは、前記仮想信号処理コンポーネントに入力される前記音信号をトリガーとして動作するロジック処理部を含む、
信号処理シミュレータ。
【請求項8】
前記仮想信号処理コンポーネントに入力する音信号は、前記信号処理コンポーネントに入力する音信号と異なる音である、
請求項7に記載の信号処理シミュレータ。
【請求項9】
前記仮想信号処理デバイスが前記音信号を入力してから前記音信号を出力するまでの第1時間は、前記信号処理デバイスが前記音信号を入力してから前記音信号を出力するまでの第2時間よりも長い、
請求項7または請求項8に記載の信号処理シミュレータ。
【請求項10】
利用者から、前記第2時間に対する前記第1時間の時間差に対応する情報を受け付ける、
請求項9に記載の信号処理シミュレータ。
【請求項11】
前記仮想信号処理デバイスは、複数の仮想信号処理コンポーネントを含み、
前記信号処理シミュレータは、利用者から、前記複数の仮想信号処理コンポーネントのうち前記音信号を入力して前記信号処理を行う仮想信号処理コンポーネントの指定を受け付ける、
請求項7乃至請求項10のいずれか1項に記載の信号処理シミュレータ。
【請求項12】
前記仮想信号処理コンポーネントで信号処理された音信号を録音する、
請求項7乃至請求項11のいずれか1項に記載の信号処理シミュレータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明の一実施形態は、信号処理のシミュレート方法および信号処理シミュレータに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、信号処理コンポーネントをシミュレートした仮想デバイスに対して、周波数等のパラメータを変更することが記載されている。
【0003】
特許文献2には、パーソナルコンピュータ上で信号処理を行う一例としてDAW(Digital Audio Workstation)が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005-318550号公報
【特許文献2】特開2015-188203号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1、2には、信号処理コンポーネントをシミュレートすることが開示されているが、オフライン(シミュレート対象の音信号処理装置につながっていない状態)で音信号の入力をトリガーとして動作するロジック処理部をシミュレートすることは開示されていない。
【0006】
そこで、この発明の一実施形態は、音信号をトリガーとして動作するロジック処理部をオフラインでシミュレートすることが可能な信号処理のシミュレート方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
信号処理のシミュレート方法は、音信号処理装置の指定を受け付けて、指定された前記音信号処理装置内で、音信号を入力し、入力された該音信号に対して所定の信号処理を行い、音信号を出力する信号処理コンポーネントの指定を受け付けて、指定された前記信号処理コンポーネントにより構築される信号処理デバイスの設定を受け付けて、受け付けた前記信号処理デバイスに対応する仮想信号処理デバイスを構築する。
【0008】
前記仮想信号処理デバイスは、受け付けた前記信号処理コンポーネントに対応する仮想信号処理コンポーネントを含む。信号処理のシミュレート方法は、前記仮想信号処理コンポーネントに音信号を入力する。前記仮想信号処理コンポーネントは、入力された音信号に対して所定の信号処理を行い、前記信号処理を行った音信号を出力する。前記仮想信号処理デバイスは、前記仮想信号処理コンポーネントに入力される前記音信号をトリガーとして動作するロジック処理部を含む。
【発明の効果】
【0009】
この発明の一実施形態は、音信号をトリガーとして動作するロジック処理部をオフラインでシミュレートすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】音信号処理システム1の構成を示すブロック図である。
【
図2】プロセッサ11のハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図3】情報処理装置12の構成を示すブロック図である。
【
図4】エディタ353が提示するGUIの一例を示す図である。
【
図5】エディタ353の動作を示すフローチャートである。
【
図6】他の例に係る音信号処理システム1の構成を示すブロック図である。
【
図7】変形例1に係るエディタ353が提示するGUIの一例を示す図である。
【
図8】変形例2に係るエディタ353が提示するGUIの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、音信号処理システム1の構成を示すブロック図である。音信号処理システム1は、プロセッサ11、情報処理装置12、ネットワーク13、スピーカ14、およびマイク15を備えている。
【0012】
プロセッサ11および情報処理装置12は、ネットワーク13を介して接続されている。ネットワーク13は、LAN(ローカルエリアネットワーク)またはインターネットを含む。プロセッサ11は、オーディオケーブルを介してスピーカ14およびマイク15に接続されている。
【0013】
ただし、本発明において、機器間の接続は、この例に限るものではない。例えば、プロセッサ11、スピーカ14、およびマイク15は、ネットワークを介して接続されていてもよい。また、プロセッサ11および情報処理装置12は、USBケーブル等の通信線で接続されていてもよい。
【0014】
プロセッサ11は、音信号処理装置の一例である。プロセッサ11は、マイク15から音信号を受信する。また、プロセッサ11は、スピーカ14に音信号を出力する。本実施形態ではプロセッサ11に接続される音響機器の一例としてスピーカ14およびマイク15を示すが、さらに多数の音響機器が接続されてもよい。
【0015】
図2は、プロセッサ11の構成を示すブロック図である。プロセッサ11は、表示器201、ユーザI/F202、オーディオI/O(Input/Output)203、CPU204、ネットワークI/F205、フラッシュメモリ206、およびRAM207を備えている。
【0016】
表示器201は、LEDまたはLCD等からなり、種々の情報(例えば電源ON/OFF状態等)を表示する。ユーザI/F202は、スイッチあるいはボタン等の操作子である。ユーザI/F202は、電源ON/OFF等のユーザの操作を受け付ける。
【0017】
CPU204は、システム制御を行うための制御部として機能する。また、CPU204は、音信号処理を行なうための信号処理部としても機能する。CPU204は、記憶媒体であるフラッシュメモリ206に記憶された所定のプログラムをRAM207に読み出して実行することにより制御部および信号処理部の動作を行なう。
【0018】
CPU204は、オーディオI/O203またはネットワークI/F205を介してマイク15等の音響機器から入力される音信号に、フィルタ処理等の音信号処理を施す。CPU204は、信号処理後の音信号を、オーディオI/O203またはネットワークI/F205を介して、スピーカ14等の音響機器に出力する。
【0019】
音信号処理の内容を示すパラメータは、フラッシュメモリ206内のカレントメモリ251に保持される。CPU204は、カレントメモリ251に保持されたパラメータに基づいて、音信号処理を行う。
【0020】
システム制御の設定内容(設定情報)は、フラッシュメモリ206内の設定メモリ252に保持される。CPU204は、設定メモリ252に保持された設定情報に基づいてシステム制御を行う。システムの制御は、例えば音信号を入力する入力ポート(物理ポート)と入力チャンネルのパッチ設定(結線の管理)等を含む。
【0021】
なお、CPU204が読み出すプログラムは、自装置内のフラッシュメモリ206に記憶する必要はない。例えば、プログラムは、サーバ等の外部装置の記憶媒体に記憶されていてもよい。この場合、CPU204は、該サーバから都度プログラムをRAM207に読み出して実行すればよい。
【0022】
次に、
図3は、情報処理装置12の構成を示すブロック図である。情報処理装置12は、信号処理シミュレータの一例であり、例えばパーソナルコンピュータまたは専用の組み込みシステム(embedded system)等の情報処理装置である。情報処理装置12は、インターネットを介してプロセッサ11に接続されるクラウドサーバであってもよい。
【0023】
情報処理装置12は、表示器301、ユーザI/F302、CPU303、RAM304、ネットワークI/F305、およびフラッシュメモリ306を備えている。
【0024】
CPU303は、記憶媒体であるフラッシュメモリ306に記憶されているプログラムをRAM304に読み出して、所定の機能を実現する。なお、CPU303が読み出すプログラムも、自装置内のフラッシュメモリ306に記憶されている必要はない。例えば、プログラムは、サーバ等の外部装置の記憶媒体に記憶されていてもよい。この場合、CPU303は、該サーバから都度プログラムをRAM304に読み出して実行すればよい。
【0025】
フラッシュメモリ306は、カレントメモリ351、設定メモリ352、およびエディタ353を有する。カレントメモリ351は、プロセッサ11のカレントメモリ251と同期する。また、設定メモリ352は、プロセッサ11の設定メモリ252と同期する。
【0026】
エディタ353は、プロセッサ11等の音信号処理装置をシミュレートするプログラムである。
図4は、エディタ353が提示するGUIの一例を示す図であり、
図5は、エディタ353の動作を示すフローチャートである。CPU303は、エディタ353をRAM304に読み出し、以下の動作を行う。
【0027】
まず、エディタ353は、シミュレート対象となる音信号処理装置のモデルの指定を受け付ける(S11)。モデルとは、例えば音信号処理装置の種別および機種名を含む。この例では、エディタ353は、プロセッサ11の機種名を受け付ける。その後、エディタ353は、指定されたモデルの音信号処理装置において、信号処理コンポーネントの指定を受け付ける(S12)。信号処理コンポーネントとは、音信号を入力し、入力された該音信号に対して所定の信号処理を行い、音信号を出力する機能的構成を意味する。信号処理コンポーネントは、例えば
図4に示す様に、アッテネータ(ATT)等のエフェクト処理部や、ミキシング(Mix)処理を行うミキシングコンポーネント、音信号の増幅処理を行うアンプ(Amp)等を含む。利用者は、
図4に示す様なGUI画面上で信号処理コンポーネントのアイコン画像を任意の位置に配置することで、使用する信号処理コンポーネントを指定する。
【0028】
そして、エディタ353は、指定された信号処理コンポーネントにより構築される信号処理デバイスの設定を受け付ける(S13)。例えば、利用者は、
図4に示す様なGUI画面上で配置した複数の信号処理コンポーネントを互いに接続する操作を行い、各信号処理コンポーネントに対してパラメータを設定する。これにより、信号処理デバイスが設定される。
図4の例では、利用者は、発振器501、入力コンポーネント502、アッテネータ503、ミキシングコンポーネント504、アンプ505、および出力コンポーネント506を指定している。
【0029】
入力コンポーネント502は、オーディオI/O203における複数の入力ポート(例えばアナログ入力ポートまたはデジタル入力ポート)に対応する。入力コンポーネント502は、複数の入力ポートのうち少なくともいずれか1つのポートを、複数の入力チャンネルの少なくとも1つのチャンネルに割り当てる。
【0030】
アッテネータ503は、エフェクト処理部の一例である。アッテネータ503は、入力した音信号を減衰させる信号処理を行う。ミキシングコンポーネント504は、各入力チャンネルの音信号を任意の出力チャンネルにミキシングする信号処理を行う。アンプ505は、各出力チャンネルの音信号を増幅する信号処理を行う。出力コンポーネント506は、各出力チャンネルを、複数の出力ポートのうちいずれか1つのポートに割り当てる。
【0031】
利用者は、音信号の流れに沿って各信号処理コンポーネントを互いに接続して、信号処理の流れを構築する。そして、利用者は、各信号処理コンポーネントのパラメータを設定する。例えば、利用者が各信号処理コンポーネントのアイコン画像を選択すると、エディタ353は、対応する信号処理コンポーネントのパラメータ設定画面を提示する。
図4の例では、エディタ353は、アッテネータ503の選択を受け付けて、アッテネータ503のパラメータ設定画面80を提示している。
【0032】
アッテネータ503のパラメータ設定画面80は、オン/オフボタン801、ミュートボタン802、LED803、スライダ804、メータ805およびチャンネル名表示部806を有する。LED803、スライダ804、メータ805、およびチャンネル名表示部806は、チャンネル毎に設けられている。
【0033】
オン/オフボタン801は、アッテネータ503の信号処理を有効にするか、無効にするかを示すパラメータである。ミュートボタン802は、音信号を遮断するか否かを示すパラメータである。LED803は、アッテネータ503に音信号の入力がある場合に点灯し、アッテネータ503に音信号の入力が無い場合に消灯する。LED803は、音信号をトリガーとして動作するロジック処理部の一例である。メータ805は、アッテネータ503に入力された音信号のレベルを示す。メータ805も、音信号をトリガーとして動作するロジック処理部の一例である。チャンネル名表示部806は、チャンネル名を表示する。
【0034】
入力された音信号のレベルが所定値以上または所定値以下となった場合に処理を開始する信号処理コンポーネントも、音信号をトリガーとして動作するロジック処理部の一例である。例えばノイズゲートは、入力された音信号のレベルが所定値以下となった場合にミュートし、入力された音信号のレベルが所定値を超えた場合にそのまま該音信号を通す。また、例えばコンプレッサは、入力された音信号のレベルが所定値以上となった場合に、入力した音信号に対して出力する音信号のレベルを低減する。これらノイズゲートおよびコンプレッサも、音信号をトリガーとして動作するロジック処理部の一例である。
【0035】
また、例えば、音信号のレベルの所定時間の平均値を示すRMSメータも、音信号をトリガーとして動作するロジック処理部の一例である。自動音量調整を行う信号処理コンポーネントも、音信号をトリガーとして動作するロジック処理部の一例である。当該信号処理コンポーネントは、音信号のレベルの所定時間の平均値が所定値以下となった場合に、所定値だけ音圧を上げる自動音量調整を行う。
【0036】
また、LED803は、複数の信号コンポーネントに接続し、音信号の入力に対して論理回路を設定してもよい。例えば、LED803は、AND回路を設定した場合、対象となる全ての信号処理コンポーネントに音信号が入力された場合にのみ点灯する。LED803は、OR回路を設定した場合、対象となる複数の信号処理コンポーネントのうち少なくとも1つの信号処理コンポーネントに音信号が入力された場合に点灯する。また、LED803は、AND回路およびOR回路以外にも、NOT、NAND、NOR、XOR、XNOR等の論理回路を利用することもできる。
【0037】
ロジック処理部は、点灯だけに限らず、オフ値(0)またはオン値(1)を出力してもよい。また、ロジック処理部は、音信号のレベルに応じて異なる動作を行ってもよい。例えば、LED803は、入力された音信号のレベルが-80dBを超えて-60dB以下である場合に青色に点灯し、入力された音信号のレベルが-60dBを超えて-40dB以下である場合に緑色に点灯し、入力された音信号のレベルが-40dBを超えて-20dB以下である場合に橙色に点灯し、入力された音信号のレベルが-20dBを超えた場合に赤色に点灯してもよい。 利用者は、オン/オフボタン801、ミュートボタン802、およびスライダ804を操作してアッテネータ503のパラメータを設定する。
【0038】
CPU303は、エディタ353で指定された信号処理コンポーネントおよび設定された各パラメータでカレントメモリ351および設定メモリ352を更新する。
【0039】
CPU303は、プロセッサ11と接続状態(オンラインの状態)では、更新した後のカレントメモリ351および設定メモリ352の内容をプロセッサ11に送信する。プロセッサ11のCPU204は、更新後のカレントメモリ351および設定メモリ352の内容を受信し、更新後のカレントメモリ351および設定メモリ352の内容にカレントメモリ251および設定メモリ252の内容を同期する。プロセッサ11は、マイク15等の音響機器から入力される音信号に、カレントメモリ351および設定メモリ352の内容に応じた信号処理を施し、信号処理後の音信号を、スピーカ14等の音響機器に出力する。
【0040】
これにより、情報処理装置12は、プロセッサ11に接続されているオンラインの状態の場合に、該プロセッサ11の信号処理の内容を制御することができる。
【0041】
一方で、プロセッサ11および情報処理装置12は、互いに非接続状態(オフラインの状態)である場合、それぞれ独立してカレントメモリおよび設定メモリの内容を変更する。つまり、情報処理装置12のCPU303は、エディタ353で受け付けた信号処理デバイスに対応する仮想信号処理デバイスを情報処理装置12内に構築し、プロセッサ11とは独立して音信号処理をシミュレートすることができる。
【0042】
オフラインの状態では、各信号処理コンポーネントは、プロセッサ11における信号処理コンポーネントをシミュレートした仮想信号処理コンポーネントとなる。CPU303は、各仮想信号処理コンポーネントに音信号を入力する(S14)。例えば、
図4では、発振器501が入力コンポーネント502の第2ポートに接続されている。CPU303は、発振器501から音信号を出力させて、対応する仮想信号処理コンポーネントに音信号を入力する。
【0043】
各仮想信号処理コンポーネントは、カレントメモリ351および設定メモリ352に応じて、入力された音信号に対して所定の信号処理を行い、信号処理を行った音信号を出力する(S15)。
図4の例では、発振器501から入力コンポーネント502の第2ポートに音信号が入力される。また、入力コンポーネント502は、第2入力チャンネルに当該音信号を入力する。アッテネータ503は、第2チャンネルにおいて音信号を入力し、スライダ804で設定されたレベルで音信号の減衰処理を行う。また、アッテネータ503は、LED803を点灯させ、入力した音信号のレベルに応じてメータ805を駆動するロジック処理も行う。
図4の例では、第2入力チャンネルに音信号が入力されている。したがって、アッテネータ503は、第2入力チャンネルのLED803を点灯させ、第2入力チャンネルに入力した音信号のレベルに応じてメータ805を駆動する。
【0044】
したがって、情報処理装置12は、オフラインの状態であっても、プロセッサ11で行われる信号処理をシミュレートすることができる。特に、情報処理装置12は、音信号の入力をトリガーとして動作するロジック処理部もオフラインでシミュレートすることができる。
【0045】
図4の例では、CPU303は、発振器501から音信号を出力させて、対応する仮想信号処理コンポーネントに音信号を入力した。しかし、情報処理装置12は、
図6に示すように、プロセッサ11と同様に、マイク15等の音響機器から音信号を入力してもよい。この場合、発振器501の信号処理コンポーネントは不要である。ただし、発振器501が正弦波等の単純な音を出力すれば、各信号処理コンポーネントは、プロセッサ11で実際に行われる信号処理よりも低い負荷で信号処理をシミュレートすることができる。特に、音信号の入力をトリガーとして動作するロジック処理部は、プロセッサ11に入力される音とは異なる音(情報処理装置12に接続されているマイクから入力する音、あるいは発振器501が出力する音等)であっても、動作の確認を行うことはできる。
【0046】
情報処理装置12は、シミュレート対象の音信号処理装置(例えばプロセッサ11)と同じ時間で信号処理を行う必要はない。つまり、情報処理装置12における仮想信号処理デバイスが音信号を入力してから音信号を出力するまでの第1時間は、音信号処理装置における信号処理デバイスが音信号を入力してから音信号を出力するまでの第2時間よりも長くてもよい。例えば、ライブ演奏中では、音信号処理装置は、リアルタイムに音信号を処理する必要がある。しかし、オフラインでのシミュレートは、リアルタイムに信号処理を行う必要はない。したがって、情報処理装置12は、シミュレート対象の音信号処理装置の信号処理能力よりも低い信号処理能力で信号処理デバイスをシミュレートしてもよい。この場合でも、情報処理装置12は、音信号の入力をトリガーとして動作するロジック処理部もオフラインでシミュレートすることができる。
【0047】
また、情報処理装置12は、利用者から、第2時間と第1時間との時間差に対応する情報を受け付けてもよい。
図7は、変形例に係るエディタ353が提示するGUIの一例を示す図である。
図7に示すGUIでは、エディタ353は、速度指定アイコン901をさらに表示する。速度指定アイコン901は、シミュレート対象の音信号処理装置の信号処理速度に対するエディタ353での信号処理速度の比を指定する。つまり、速度指定アイコン901は、第2時間に対する第1時間の時間差に対応する情報を受け付けるためのユーザI/Fの一例である。
【0048】
この例では、エディタ353は、実機の信号処理速度に対するエディタ353での信号処理速度の比を1/2として受け付けている。したがって、情報処理装置12における仮想信号処理デバイスが音信号を入力してから音信号を出力するまでの第1時間は、シミュレート対象の音信号処理装置における信号処理デバイスが音信号を入力してから音信号を出力するまでの第2時間の2倍に指定される。つまり、情報処理装置12は、実機の2倍の時間で信号処理を実行する。
【0049】
この様に、利用者が信号処理の速度を指定してもよい。利用者は、動作が遅くてもよければ情報処理装置12の処理負荷を抑えて、低速度で信号処理を実行させることができる。無論、この場合でも、情報処理装置12は、音信号の入力をトリガーとして動作するロジック処理部もオフラインでシミュレートすることができる。
【0050】
情報処理装置12は、利用者から、複数の仮想信号処理コンポーネントのうち音信号を入力して信号処理を行う仮想信号処理コンポーネントの指定を受け付けてもよい。
図8は、変形例2に係るエディタ353が提示するGUIの一例を示す図である。
図8に示すGUIでは、エディタ353は、信号処理を行う仮想信号処理コンポーネントの指定を受け付ける。
図8の例では、発振器501、入力コンポーネント502、およびアッテネータ503が指定されている。ミキシングコンポーネント504、アンプ505、および出力コンポーネント506は指定されていない。
【0051】
発振器501は、音信号を出力する。入力コンポーネント502およびアッテネータ503は、信号処理を行う。信号処理は、アッテネータ503で終了し、ミキシングコンポーネント504、アンプ505、および出力コンポーネント506は信号処理を行わない。
【0052】
これにより、利用者は、信号処理の範囲を限定することができる。情報処理装置12は、信号処理の範囲を限定するため、低い負荷で信号処理をシミュレートすることができる。この場合でも、利用者は、動作を確認したいロジック処理部に音信号を入力してオフラインでシミュレートすることができる。
【0053】
なお、情報処理装置12は、仮想信号処理コンポーネントで信号処理された音信号を録音してもよい。また、情報処理装置12は、
図8に示した様に信号処理の範囲を限定した場合には、限定した範囲で信号処理された音信号を録音してもよい。利用者は、録音した音信号を聴くことで、いつでも信号処理デバイスのシミュレート結果を確認することができる。また、利用者がいつでもシミュレート結果を確認することができるため、情報処理装置12は、リアルタイムに信号処理を行う必要はない。例えば、情報処理装置12は、CPU303の負荷の低いタイミングで信号処理を実行してもよい。
【0054】
本実施形態の説明は、すべての点で例示であって、制限的なものではない。本発明の範囲は、上述の実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。さらに、本発明の範囲には、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0055】
例えば、音信号処理装置は、プロセッサだけでなく、例えばパワーアンプ、ミキサ、あるいはオーディオアンプ等も含む。情報処理装置は、プロセッサだけではなく、パワーアンプ、ミキサ、あるいはオーディオアンプ等で実行される信号処理をシミュレートすることもできる。
【符号の説明】
【0056】
1…音信号処理システム
11…プロセッサ
12…情報処理装置
13…ネットワーク
14…スピーカ
15…マイク
80…パラメータ設定画面
201…表示器
202…ユーザI/F
203…オーディオI/O
204…CPU
205…ネットワークI/F
206…フラッシュメモリ
207…RAM
251…カレントメモリ
252…設定メモリ
301…表示器
302…ユーザI/F
303…CPU
304…RAM
305…ネットワークI/F
306…フラッシュメモリ
351…カレントメモリ
352…設定メモリ
353…エディタ
501…発振器
502…入力コンポーネント
503…アッテネータ
504…ミキシングコンポーネント
505…アンプ
506…出力コンポーネント
801…オフボタン
802…ミュートボタン
803…LED
804…スライダ
805…メータ
806…チャンネル名表示部
901…速度指定アイコン