(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023146078
(43)【公開日】2023-10-12
(54)【発明の名称】水栓装置
(51)【国際特許分類】
E03C 1/05 20060101AFI20231004BHJP
【FI】
E03C1/05
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022053070
(22)【出願日】2022-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000144072
【氏名又は名称】SANEI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】片岡 健介
【テーマコード(参考)】
2D060
【Fターム(参考)】
2D060BA05
2D060BB02
2D060BC04
2D060BF03
2D060CA04
2D060CA20
(57)【要約】
【課題】湾曲形状の吐水管に対して、手かざしセンサと集音マイクとを適切に設けることが可能な水栓装置を提供すること。
【解決手段】水栓装置1は、先端の吐水口4Aに向かって下方に湾曲する湾曲部3Aを備えた吐水管3を有し、更に、湾曲部3Aの湾曲の外周縁を成す湾曲面A1に配置されて使用者からの指示情報を検出する情報検出部Uを有する。情報検出部Uは、使用者の手の差し出しを検出した検出信号に基づいて吐水状態を変更する吐水制御を行うための非接触式のセンサとされる手かざしセンサ8と、使用者の音声を集音した音声信号に基づいて吐水状態を変更する吐水制御を行うための集音マイク9と、を有する。情報検出部Uは、手かざしセンサ8と集音マイク9とが互いに湾曲部3Aの湾曲に沿って管軸方向に並ぶ配置とされる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端の吐水口に向かって下方に湾曲する湾曲部を備えた吐水管を有する水栓装置であって、
前記湾曲部の湾曲の外周縁を成す湾曲面に配置され、使用者からの指示情報を検出する情報検出部を有し、
前記情報検出部が、使用者の手の差し出しを検出した検出信号に基づいて吐水状態を変更する吐水制御を行うための非接触式のセンサとされる手かざしセンサと、使用者の音声を集音した音声信号に基づいて前記吐水状態を変更する吐水制御を行うための集音マイクと、を有し、前記手かざしセンサと前記集音マイクとが互いに前記湾曲部の湾曲に沿って管軸方向に並ぶ配置とされる水栓装置。
【請求項2】
請求項1に記載の水栓装置であって、
前記手かざしセンサが、前記集音マイクよりも前記吐水口に近い位置に配置される水栓装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の水栓装置であって、
前記手かざしセンサが、使用者の手の差し出しの度に前記吐水状態を手が引かれても吐水を続ける連続吐水と止水とに切り替える吐水制御を行うためのセンサとされる水栓装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の水栓装置であって、
前記吐水管が、水栓本体との接続口から上向きに延びてから前記湾曲部が下方に湾曲するように延びるグースネック状の管形状とされる水栓装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載の水栓装置であって、
前記湾曲部の先端に着脱可能なように設けられる吐水ヘッドを更に有する水栓装置。
【請求項6】
請求項5に記載の水栓装置であって、
前記手かざしセンサが、前記湾曲部の先端から前記管軸方向に後退した位置に配置される水栓装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれかに記載の水栓装置であって、
前記手かざしセンサの前記湾曲面から外部に露出するセンサカバーの露出形状及び露出面積が、前記集音マイクの前記湾曲面から外部に露出するマイクカバーの露出形状及び露出面積と同一とされる水栓装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水栓装置に関する。詳しくは、先端の吐水口に向かって下方に湾曲する湾曲部を備えた吐水管を有する水栓装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、水栓本体から逆U字状に延びるグースネック状の吐水管の上面に、使用者の手の差し出しを検出する非接触式の手かざしセンサが設けられた水栓装置が開示されている。上記水栓装置は、使用者が手かざしセンサに手を差し出すことにより、連続吐水を開始するよう吐水制御される構成とされる。また、水栓装置は、使用者が手かざしセンサに再度手を差し出すことにより、連続吐水を止めるよう止水制御される構成とされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の構成では、手かざしセンサに加えて音声認識により吐水状態の切り替えを行うための集音マイクを吐水管に設ける場合、両者を最適な位置に配置することが難しい。すなわち、湾曲形状の吐水管に対して、手かざしセンサを使用者が手をかざしやすい位置に配置しつつ、集音マイクを使用者の声を集音しやすい位置に配置する必要があるからである。そこで、本発明は、湾曲形状の吐水管に対して、手かざしセンサと集音マイクとを適切に設けることが可能な水栓装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明の水栓装置は、次の手段をとる。すなわち、本発明の第1の発明は、先端の吐水口に向かって下方に湾曲する湾曲部を備えた吐水管を有する水栓装置であって、前記湾曲部の湾曲の外周縁を成す湾曲面に配置され、使用者からの指示情報を検出する情報検出部を有し、前記情報検出部が、使用者の手の差し出しを検出した検出信号に基づいて吐水状態を変更する吐水制御を行うための非接触式のセンサとされる手かざしセンサと、使用者の音声を集音した音声信号に基づいて前記吐水状態を変更する吐水制御を行うための集音マイクと、を有し、前記手かざしセンサと前記集音マイクとが互いに前記湾曲部の湾曲に沿って管軸方向に並ぶ配置とされる水栓装置である。
【0006】
第1の発明によれば、手かざしセンサと集音マイクとの双方を、吐水管の湾曲部の湾曲した先の正面に立つ使用者に向けて配置することができる。したがって、湾曲形状の吐水管に対して、使用者の手の差し出しを検出するための手かざしセンサと、使用者の音声を集音するための集音マイクと、をそれぞれ適切に機能させられるように設けることができる。
【0007】
本発明の第2の発明は、上記第1の発明において、前記手かざしセンサが、前記集音マイクよりも前記吐水口に近い位置に配置される水栓装置である。
【0008】
第2の発明によれば、集音マイクと手かざしセンサとを、これらの高さ方向の並び順が使用者の口と手との高さ方向の並び順と同じ、上下の並び順となる配置とすることができる。したがって、手かざしセンサを使用者の手がより届きやすい位置に配置しつつ、集音マイクを使用者の音声がより集音されやすい位置に配置することができる。
【0009】
本発明の第3の発明は、上記第1又は第2の発明において、前記手かざしセンサが、使用者の手の差し出しの度に前記吐水状態を手が引かれても吐水を続ける連続吐水と止水とに切り替える吐水制御を行うためのセンサとされる水栓装置である。
【0010】
第3の発明によれば、使用者の手が届きやすい位置に使用頻度の高い連続吐水と止水との切り替え操作を行うための手かざしセンサを配置することができ、水栓装置の利便性を更に高めることができる。
【0011】
本発明の第4の発明は、上記第1から第3のいずれかの発明において、前記吐水管が、水栓本体との接続口から上向きに延びてから前記湾曲部が下方に湾曲するように延びるグースネック状の管形状とされる水栓装置である。
【0012】
第4の発明によれば、吐水口の位置が比較的高い位置に設定されるグースネック状の管形状から成る吐水管に対し、手かざしセンサと集音マイクとの双方を使用者に向けてそれぞれ適切に機能させられるように近づけて配置することができる。
【0013】
本発明の第5の発明は、上記第1から第4のいずれかの発明において、前記湾曲部の先端に着脱可能なように設けられる吐水ヘッドを更に有する水栓装置である。
【0014】
第5の発明によれば、湾曲部の先端が着脱可能な吐水ヘッドの配設によって情報検出部を配置しにくい構成とされても、手かざしセンサと集音マイクとの双方を使用者に向けてそれぞれ適切に機能させられるように近づけて配置することができる。
【0015】
本発明の第6の発明は、上記第5の発明において、前記手かざしセンサが、前記湾曲部の先端から前記管軸方向に後退した位置に配置される水栓装置である。
【0016】
第6の発明によれば、手かざしセンサを、使用者が吐水ヘッドを掴んで着脱する際に、使用者の手を誤検出しにくいように配置することができる。
【0017】
本発明の第7の発明は、上記第1から第6のいずれかの発明において、前記手かざしセンサの前記湾曲面から外部に露出するセンサカバーの露出形状及び露出面積が、前記集音マイクの前記湾曲面から外部に露出するマイクカバーの露出形状及び露出面積と同一とされる水栓装置である。
【0018】
第7の発明によれば、センサカバーとマイクカバーとを、これらの外部に露出する形状及び大きさを揃えた機能美を持たせた外観とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】第1の実施形態に係る水栓装置の概略構成を表す斜視図である。
【
図5】吐水ヘッドを吐水管の先端から引き出した状態を表す拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明を実施するための形態について、図面を用いて説明する。
【0021】
《第1の実施形態》
(水栓装置1の概略構成について)
始めに、本発明の第1の実施形態に係る水栓装置1の構成について、
図1~
図5を用いて説明する。なお、以下の説明において、手前、奥、上、下、左、右等の各方向を示す場合には、各図中に示されたそれぞれの方向を指すものとする。各図中に示す方向は、それぞれ、水栓装置1の正面に立つ使用者から見た方向となっている。以下の説明において、具体的な参照図を示さない場合、或いは参照図に該当する符号がない場合には、
図1~
図5のいずれかの図を適宜参照するものとする。
【0022】
図1に示すように、本実施形態に係る水栓装置1は、キッチンカウンタのシンクSの奥側の天板T上に設置される、いわゆる台付きタイプのシングルレバー混合水栓として構成される。この水栓装置1は、キッチンカウンタの天板Tの下側より供給される湯と水とを内部で混合してシンクSへと吐水することが可能な機能を備える。
【0023】
具体的には、水栓装置1は、天板Tの下側から供給される湯と水との混合割合を内部で調節することが可能な温調機能を備える。また、水栓装置1は、混合した湯水の吐水/止水を切り替えることが可能な吐止水の切替機能を備える。また、水栓装置1は、吐水する湯水の量を調節することが可能な吐水量の調節機能を備える。
【0024】
上記湯水の混合割合の調節と吐水量の調節は、水栓本体2の手前上部に取り付けられた1本のレバーハンドル5の操作によって行うことが可能とされる。レバーハンドル5は、その基部が水栓本体2の手前上部に対して上下左右に首振り回転できるように連結されている。レバーハンドル5は、その基部から延び出す把持部が使用者により掴まれて上下左右に動かされることで、水栓本体2の内部に組み込まれた湯水混合用のカートリッジCを操作する。
【0025】
具体的には、レバーハンドル5は、使用者により把持部が左右方向に動かされることで、上記カートリッジCを操作して、水栓本体2の内部に取り込まれる湯水の各取込口の開度を変化させる。それにより、水栓本体2の内部に取り込まれて混合される湯水の混合割合が、レバーハンドル5の操作位置に応じた設定温度となるように調節される。
【0026】
また、レバーハンドル5は、使用者により把持部が上下方向に動かされることで、上記カートリッジCを操作して、水栓本体2の内部から湯水を吐出する吐出口の開度を変化させる。それにより、水栓本体2の内部から吐出される湯水の量が、レバーハンドル5の操作位置に応じた吐出量となるように調節される。
【0027】
具体的には、上記吐出口は、レバーハンドル5の引き上げに伴いその開度が徐々に開かれるように操作され、レバーハンドル5の押し下げに伴いその開度が徐々に閉じられるように操作される。なお、上記カートリッジCによる湯水の混合割合の調節と吐水量の調節とに纏わる基本構成は、特開2020-46067号公報等の文献に開示された公知の構成と同一となっている。したがって、カートリッジCの具体的な構成についての説明は省略することとする。
【0028】
また、上述した湯水の吐水/止水の切り替えは、水栓本体2の奥上部から手前上方に延び出す吐水管3の湾曲面A1上に設けられた手かざしセンサ8に対する手の差し出し、或いは集音マイク9に対する音声指示のいずれかによって行うことが可能とされる。手かざしセンサ8は、使用者の手がその正面に差し出されることで、手の差し出しを非接触で検出することが可能な反射型の光電センサ(赤外線センサ)から成る。集音マイク9は、使用者が発する音声をどの方向からも同じ感度で集音することが可能な無指向性のマイクから成る。
【0029】
手かざしセンサ8と集音マイク9は、それぞれ、水栓装置1に設けられた不図示の制御部に電気的に接続され、それぞれの検出信号が制御部へと送信される構成とされる。制御部は、手かざしセンサ8から送信される受光量の検出信号に基づき、手かざしセンサ8に使用者の手が差し出されたか否かを判定する。制御部において使用者の手が手かざしセンサ8に差し出されたものと判定された場合には、制御部から水栓装置1の図示しない吐水経路に介設された電磁弁に制御信号が送信され、電磁弁の開弁/閉弁が切り替えられる。
【0030】
また、不図示の制御部は、集音マイク9から送信される音声の検出信号に基づき、使用者から特定の音声指示が出されたか否かを判定する。制御部は、上記音声の検出信号に基づく音声情報を不図示のメモリに記憶された指示パターンと照合し、一致する指示パターンがあるか否かを判定する。制御部において一致する指示パターンがあると判定された場合には、制御部から上記不図示の電磁弁に指示パターンに対応する制御信号が送信され、電磁弁の開弁/閉弁が切り替えられる。
【0031】
具体的には、図示しない制御部のメモリには、湯水の吐水/止水の切り替えに纏わる指示パターンが記憶されている。湯水の吐水に纏わる指示パターンには、「吐水」「出す」「出して」等の吐水に纏わる音声指示に対応した指示パターンが登録されている。また、止水に纏わる指示パターンには、「止水」「止める」「止めて」等の止水に纏わる音声指示に対応した指示パターンが登録されている。
【0032】
制御部は、吐水に纏わる音声指示が出されたと判定した場合には、電磁弁を開弁するように電磁弁に制御信号を送信する。また、制御部は、止水に纏わる音声指示が出されたと判定した場合には、電磁弁を閉弁するように電磁弁に制御信号を送信する。
【0033】
制御部は、手かざしセンサ8又は集音マイク9から受ける検出信号に基づき、吐水の判定をして電磁弁を開弁した後には、その後に検出信号に基づく止水の判定をするまでの間は、電磁弁を開弁したままの状態にする。したがって、初期の止水状態から、使用者が手かざしセンサ8に手をかざしたり集音マイク9に吐水に纏わる音声指示を出したりすることにより、湯水の吐水状態を連続吐水の状態に切り替えることができる。
【0034】
「連続吐水」とは、使用者が手かざしセンサ8から手を引いても吐水をやめることなく継続する吐水形態である。なお、制御部は、吐水状態を連続吐水に切り替えた後、30分又は1時間等の長時間が経過しても止水判定をする検出信号が入力されない場合には、電磁弁に閉弁の制御信号を送信して自動止水をするような止水制御を行う構成とされていても良い。
【0035】
上記制御部は、吐水状態が止水、すなわち電磁弁が閉弁されている状態から、使用者が手かざしセンサ8に手をかざすことにより、吐水状態を連続吐水に切り替える。また、制御部は、吐水状態が連続吐水、すなわち電磁弁が開弁されている状態から、使用者が手かざしセンサ8に手をかざすことにより、吐水状態を止水に切り替える。
【0036】
また、制御部は、吐水状態にかかわらず、集音マイク9に吐水に纏わる音声指示が出された時には、吐水状態を連続吐水とし、集音マイク9に止水に纏わる音声指示が出された時には、吐水状態を止水とするように吐水制御をする。したがって、制御部は、使用者の手が手かざしセンサ8に差し出されて吐水状態を連続吐水に切り替えた後、集音マイク9に止水に纏わる音声指示が出された場合には、吐水状態を止水に切り替える。
【0037】
また、制御部は、集音マイク9に吐水に纏わる音声指示が出されて吐水状態を連続吐水に切り換えた後、使用者の手が手かざしセンサ8に差し出された場合にも、吐水状態を止水に切り替える。また、制御部は、使用者の手が手かざしセンサ8に差し出されて吐水状態を連続吐水に切り替えた後、再び使用者の手が手かざしセンサ8に差し出された場合にも、吐水状態を止水に切り替える。
【0038】
上記のように集音マイク9からの検出信号に基づき吐水状態を連続吐水に切り替えた後、手かざしセンサ8への手の差し出しによって止水に切り替える制御は、制御部において電磁弁の開弁/閉弁の状態を示す制御フラグを用いた切り替え制御を行うことで可能とされる。同様に、集音マイク9からの検出信号に基づき吐水状態を止水に切り替えた後、手かざしセンサ8への手の差し出しによって連続吐水に切り替える制御も、制御部において制御フラグを用いた切り替え制御を行うことで可能とされる。
【0039】
このように、水栓装置1は、湯水の吐水/止水の切り替えを、手かざしセンサ8に対する手の差し出しと、集音マイク9に対する音声指示と、の両方によって行うことが可能とされる。したがって、使用者が鍋を両手で抱えていて手が塞がっている場合には、吐水/止水の切り替えを音声指示により行い、近くで子供が寝ていて音声指示を出せない場合には、吐水/止水の切り替えを手の差し出しによって行う、といった使用状況に応じた選択的な操作が可能となる。
【0040】
図1~
図2に示すように、上記湯水の吐水/止水の切り替えを行うための指示情報を検出する手かざしセンサ8と集音マイク9とから成る情報検出部Uは、吐水管3における次のような使い勝手の良い位置に配置されている。すなわち、吐水管3は、水栓本体2との接続口から上向きに延びて、そこから先端の吐水口4Aに向かって図示手前下方に逆U字状に湾曲するグースネック状の管形状とされている。
【0041】
そして、上記グースネック状の吐水管3に対し、情報検出部Uは、吐水管3の最上端から図示手前下方に湾曲する湾曲部3Aの湾曲の外周縁を成す湾曲面A1に配置されている。詳しくは、情報検出部Uを構成する手かざしセンサ8と集音マイク9とは、それぞれ、上記湾曲面A1において、湾曲部3Aの湾曲に沿って管軸方向に並ぶように配置されている。
【0042】
より詳しくは、手かざしセンサ8は、集音マイク9よりも吐水口4Aに近い位置に並ぶように配置されている。それにより、手かざしセンサ8と集音マイク9との双方が、吐水管3の湾曲部3Aの湾曲した先の正面に立つ使用者の方を向いて配置されている。
【0043】
(各部の構成について)
以下、吐水管3及び情報検出部Uを構成する手かざしセンサ8と集音マイク9の各構成について、更に詳しく説明する。吐水管3は、その水栓本体2と接続される基部が、水栓本体2に対して、高さ方向に延びる管軸回りに首振り回転できるように連結されている。それにより、
図3に示すように、吐水管3は、水栓本体2に対して、水栓装置1の正面側となる図示手前側に真っ直ぐ向けられた位置を中心に、左右に約60度ずつ首振り回転できるようになっている。
【0044】
吐水管3は、水栓本体2に対して、左右に約60度首振り回転したそれぞれの位置で、不図示の当接構造が当接して回転規制されるようになっている。なお、以下の説明では、便宜上、各図に示すように吐水管3が水栓装置1の正面側となる図示手前側に真っ直ぐ向けられた状態を基準として説明する。
【0045】
図3に示すように、吐水管3は、平面視においては、水栓本体2と接続される基部から先端の吐水口4Aに向かって図示手前側に真っ直ぐに延び出す形状とされる。吐水管3は、平面視においては、管径が一定の形状とされる。
【0046】
しかし、
図2に示すように、吐水管3は、側面視においては、湾曲部3Aが湾曲の最上端から図示手前側の先端に向かって管径が次第に太くなる先太りの形状とされる。それにより、
図1に示すように、吐水管3は、湾曲部3Aを図示手前斜め上方から見た斜面視においても、湾曲部3Aが先端に向かって先太り状となっているように見える形状とされる。なお、吐水管3は、左右対称な管形状とされている。
【0047】
図1~
図2及び
図4に示すように、吐水管3の先端には、吐水口4Aを下面に備える円筒容器状の吐水ヘッド4が着脱可能なように取り付けられている。
図5に示すように、吐水ヘッド4は、その上端部が、吐水管3の図示下端面に形成された凹部3Bに対して図示下方からの差し込みにより嵌合される構成とされる。この嵌合により、吐水ヘッド4は、吐水管3に対して、図示下側の先端面から下方に突出する形に装着される。
【0048】
凹部3Bは、吐水ヘッド4を正面に向けた状態でのみ図示下方から差し込んで装着することができる形状とされる。吐水ヘッド4は、吐水管3の先端に対する装着状態から使用者がその外周部を手で掴んで図示下方へと引張ることにより、凹部3Bとの嵌合状態から外される。
【0049】
吐水ヘッド4は、その図示上端部に接続されたフレキシブルホース6を介して、
図1で前述した水栓本体2の内部のカートリッジCの吐出口と流路が接続されている。フレキシブルホース6は、吐水ヘッド4の図示上端部から吐水管3の管内と水栓本体2の内部とを通って上述した天板Tの下側へと一旦引き込まれ、そこから上向きに曲げ返されて上述した水栓本体2の内部のカートリッジCの吐出口と接続されている。
【0050】
上記接続により、水栓本体2の内部でカートリッジCの吐出口より吐出される湯水が、吐水管3の管内に通されたフレキシブルホース6の内部を通って吐水ヘッド4の先端の吐水口4Aから吐水されるようになっている。フレキシブルホース6は、吐水ヘッド4が凹部3Bから図示下方へと外されることに伴い、吐水管3の先端から引き出される。また、フレキシブルホース6は、吐水ヘッド4が凹部3Bに図示下方から嵌め込まれることに伴い、吐水管3の管内へと引き込まれる。
【0051】
図1及び
図4に示すように、吐水ヘッド4は、その図示手前側面に、押し込み操作式の切替ボタン7を備える構成とされる。切替ボタン7は、吐水ヘッド4の内部に組み込まれる不図示の切替弁体と連結された構成とされる。吐水ヘッド4は、使用者が切替ボタン7を図示手前側から手で奥へと押し込む操作を行う度に、内部の切替弁体が作動されて、その下面の吐水口4Aからの吐水形態がストレート吐水とシャワー吐水とに交互に切り替えられる構成とされる。
【0052】
手かざしセンサ8は、その不図示の本体ユニットが吐水管3の湾曲部3Aの管内に組み込まれ、その表面の投受光面となるセンサカバー8Aが湾曲面A1の一部から湾曲面A1と面一状に外部に露出するように配設されている。集音マイク9も同様に、その不図示の本体ユニットが湾曲部3Aの管内に組み込まれ、その表面の集音面となるマイクカバー9Aが湾曲面A1の一部から湾曲面A1と面一状に外部に露出するように配設されている。
【0053】
マイクカバー9Aには、その表面上に外部からの音を集音するための複数の集音孔A2が貫通して形成されている。マイクカバー9Aは、その表面上にあけられた各集音孔A2に外部から水が入り込んでも、入り込んだ水を吐水管3の管内において重力作用により本体ユニットの外部へと逃がすように漏出させられる構成とされる。
【0054】
センサカバー8Aとマイクカバー9Aとは、共に、湾曲面A1の幅方向(左右方向)の中央位置から管軸方向に長尺状に延びる矩形状の形に露出する構成とされる。詳しくは、
図3~
図4に示すように、センサカバー8Aとマイクカバー9Aとは、共に、湾曲面A1の幅方向(左右方向)の中央位置に左右対称な露出面を成す形に配置されている。
【0055】
図1~
図2及び
図4に示すように、センサカバー8Aは、マイクカバー9Aよりも吐水口4Aに近い図示手前側の低い位置に配置されている。そのことから、使用者が手かざしセンサ8に手を差し出した際に、差し出した手が集音マイク9にかかりにくくなる。
【0056】
その理由は、使用者は通常、手かざしセンサ8に対して身体に近い図示手前下側から手を差し出すことが多いと考えられるからである。したがって、集音マイク9に手が近づく動作によって生じ得る動作音が集音マイク9において吐水/止水を切り替える音声指示として誤検出されるおそれを適切に低減できることが期待できる。
【0057】
詳しくは、センサカバー8Aとマイクカバー9Aとは、互いに湾曲面A1の管軸方向に離間して配置されている。そのことから、使用者が手かざしセンサ8に手を差し出した際に、差し出した手が集音マイク9により一層かかりにくくなる。したがって、集音マイク9に手が近づく動作によって生じ得る動作音が上記のように誤検出されるおそれをより一層低減できることが期待できる。
【0058】
また、上記配置により、マイクカバー9Aとセンサカバー8Aとを、これらの高さ方向の並び順が使用者の口と手との高さ方向の並び順と同じ、上下の並び順となるように配置することができる。したがって、手かざしセンサ8を使用者の手がより届きやすい位置に配置することができると共に、集音マイク9を使用者の音声がより集音されやすい位置に配置することができる。
【0059】
また、手かざしセンサ8が集音マイク9よりも図示手前側の低い位置に配置されることから、手前側に集音マイク9が配置される場合と比べて、子供等の背の低い使用者が水栓装置1を使用する場合に、手かざしセンサ8を容易に視認することが可能となる。したがって、子供等の背の低い使用者が水栓装置1を使用する場合であっても、手かざしセンサ8の位置を容易に把握して手を差し出すことができ、吐水/止水の切り替え操作を簡便に行うことができる。
【0060】
すなわち、例えば集音マイク9が手かざしセンサ8よりも図示手前側の低い位置にある場合、子供等の背の低い使用者が水栓装置1を使用する際に、集音マイク9が手かざしセンサ8よりも近い位置に視認されることとなる。或いは、手かざしセンサ8が視界に入らず、集音マイク9だけが視界に入ることも考えられる。それにより、使用者がより近い位置に見える集音マイク9を手かざしセンサ8と誤認識してしまい、集音マイク9に手を差し出すといった誤操作を招くおそれがある。
【0061】
しかし、手かざしセンサ8が集音マイク9よりも図示手前側の低い位置にあることから、上記のような誤認識が起こりにくい。したがって、集音マイク9に手を差し出すといった誤操作を招くおそれも低減できるものと期待できる。
【0062】
また、集音マイク9が手かざしセンサ8よりも高い位置にあることから、使用者の手が濡れた状態で手かざしセンサ8に差し出された場合でも、手に付着した水が集音マイク9にかかりにくい。したがって、集音マイク9のマイクカバー9Aにあけられた集音用の孔に水がかかって孔が塞がれてしまうおそれを適切に低減することができる。
【0063】
センサカバー8Aとマイクカバー9Aとは、各々の外部に露出する形状及び大きさが互いに同一とされている。詳しくは、センサカバー8Aとマイクカバー9Aとは、共に、吐水管3の延びる管軸方向に長尺状に延びる矩形状の形に露出する形とされて、互いに管軸方向に真っ直ぐに並んで設けられている。それにより、手かざしセンサ8と集音マイク9とを、それぞれに広い検出範囲を持たせつつ、各々の露出形状及び大きさを揃えた機能美を持たせた外観となるように設けることができる。
【0064】
センサカバー8Aは、詳しくは、吐水管3の湾曲部3Aの先端(図示下端)から管軸方向に後退した位置に配置されている。それにより、手かざしセンサ8を、使用者が吐水管3の先端に取り付く吐水ヘッド4を掴んで着脱する際に、使用者の手を誤検出しにくい構成とすることができる。
【0065】
上記センサカバー8Aとマイクカバー9Aとは、湾曲面A1の湾曲に沿って管軸方向に並ぶように配置されていることから、それぞれが図示手前斜め上方を向いて配置されている。詳しくは、センサカバー8Aがマイクカバー9Aよりも湾曲面A1における図示手前側の低い位置に配置されていることから、センサカバー8Aがマイクカバー9Aよりも手前側(使用者側)に面が向けられて配置されている。また、マイクカバー9Aがセンサカバー8Aよりも上方に面が向けられて配置されている。
【0066】
以上をまとめると、第1の実施形態に係る水栓装置1は、次のような構成となっている。なお、以下において括弧書きで付す符号は、上記実施形態で示した各構成に対応する符号である。
【0067】
すなわち、水栓装置(1)は、先端の吐水口(4A)に向かって下方に湾曲する湾曲部(3A)を備えた吐水管(3)を有する水栓装置(1)である。水栓装置(1)は、湾曲部(3A)の湾曲の外周縁を成す湾曲面(A1)に配置され、使用者からの指示情報を検出する情報検出部(U)を有する。情報検出部(U)は、使用者の手の差し出しを検出した検出信号に基づいて吐水状態を変更する吐水制御を行うための非接触式のセンサとされる手かざしセンサ(8)と、使用者の音声を集音した音声信号に基づいて吐水状態を変更する吐水制御を行うための集音マイク(9)と、を有する。情報検出部(U)は、手かざしセンサ(8)と集音マイク(9)とが互いに湾曲部(3A)の湾曲に沿って管軸方向に並ぶ配置とされる。
【0068】
上記構成によれば、手かざしセンサ(8)と集音マイク(9)との双方を、吐水管(3)の湾曲部(3A)の湾曲した先の正面に立つ使用者に向けて配置することができる。したがって、湾曲形状の吐水管(3)に対して、使用者の手の差し出しを検出するための手かざしセンサ(8)と、使用者の音声を集音するための集音マイク(9)と、をそれぞれ適切に機能させられるように設けることができる。
【0069】
また、手かざしセンサ(8)が、集音マイク(9)よりも吐水口(4A)に近い位置に配置される。上記構成によれば、集音マイク(9)と手かざしセンサ(8)とを、これらの高さ方向の並び順が使用者の口と手との高さ方向の並び順と同じ、上下の並び順となる配置とすることができる。したがって、手かざしセンサ(8)を使用者の手がより届きやすい位置に配置しつつ、集音マイク(9)を使用者の音声がより集音されやすい位置に配置することができる。
【0070】
また、手かざしセンサ(8)が、使用者の手の差し出しの度に吐水状態を手が引かれても吐水を続ける連続吐水と止水とに切り替える吐水制御を行うためのセンサとされる。上記構成によれば、使用者の手が届きやすい位置に使用頻度の高い連続吐水と止水との切り替え操作を行うための手かざしセンサ(8)を配置することができ、水栓装置(1)の利便性を更に高めることができる。
【0071】
また、吐水管(3)が、水栓本体(2)との接続口から上向きに延びてから湾曲部(3A)が下方に湾曲するように延びるグースネック状の管形状とされる。上記構成によれば、吐水口(4A)の位置が比較的高い位置に設定されるグースネック状の管形状から成る吐水管(3)に対し、手かざしセンサ(8)と集音マイク(9)との双方を使用者に向けてそれぞれ適切に機能させられるように近づけて配置することができる。
【0072】
また、水栓装置(1)が、湾曲部(3A)の先端に着脱可能なように設けられる吐水ヘッド(4)を更に有する。上記構成によれば、湾曲部(3A)の先端が着脱可能な吐水ヘッド(4)の配設によって情報検出部(U)を配置しにくい構成とされても、手かざしセンサ(8)と集音マイク(9)との双方を使用者に向けてそれぞれ適切に機能させられるように近づけて配置することができる。
【0073】
また、手かざしセンサ(8)が、湾曲部(3A)の先端から管軸方向に後退した位置に配置される。上記構成によれば、手かざしセンサ(8)を、使用者が吐水ヘッド(4)を掴んで着脱する際に、使用者の手を誤検出しにくいように配置することができる。
【0074】
また、手かざしセンサ(8)の湾曲面(A1)から外部に露出するセンサカバー(8A)の露出形状及び露出面積が、集音マイク(9)の湾曲面(A1)から外部に露出するマイクカバー(9A)の露出形状及び露出面積と同一とされる。上記構成によれば、センサカバー(8A)とマイクカバー(9A)とを、これらの外部に露出する形状及び大きさを揃えた機能美を持たせた外観とすることができる。
【0075】
《その他の実施形態について》
以上、本発明の実施形態を1つの実施形態を用いて説明したが、本発明は上記実施形態のほか、以下に示す様々な形態で実施することができるものである。
【0076】
1.本発明の水栓装置は、吐水量や温度の調節を行うレバーハンドルを備えない自動水栓として構成されるものであっても良い。また、水栓装置は、湯水を吐水する混合水栓の他、水のみを吐水する単水栓として構成されるものであっても良い。また、水栓装置は、洗面台やキッチンカウンタの上部の壁面に水栓本体が埋め込まれ、吐水管と操作ハンドルとが壁面から露出するように設けられる「壁出し」或いは「壁付け」と称されるタイプの水栓として構成されるものであってもよい。
【0077】
2.吐水ヘッドは、吐水管の先端と一体を成す着脱不能な構成とされていても良い。また、吐水管は、水栓本体に対し、左右に首振りできないように一体に連結される構成とされていても良い。
【0078】
3.上記実施形態では、情報検出部の検出信号に基づき吐水状態を連続吐水と止水とに切り替える構成を例示した。しかし、情報検出部の検出信号に基づく吐水状態の切り替えは、吐水状態をストレート吐水、シャワー吐水、気泡を含んだ水撥ねしにくい泡沫吐水及び浄水のうちのいずれか2つあるいは3つ以上の状態に切り替えるものであっても良い。
【0079】
また、水栓装置が自動水栓に適用される場合には、吐水状態を小流量吐水と大流量吐水とに切り替えるものや、水吐水と湯吐水とに切り替えるもの、吐水する湯水の温度を段階的に切り替えるものであっても良い。なお、自動水栓とは、吐水口に臨む吐水管の先端等の箇所に、使用者の吐水口への手の差し出しを検出して手の差し出し状態に合わせて吐止水を行う(手が差し出されれば吐水し、手が引き抜かれれば止水する)よう制御するための非接触式のセンサ(赤外線センサ)から成る自動吐水センサを備える水栓である。
【0080】
吐水状態の切り替えを集音マイクを用いて行うことで、使用者からの指示情報が音声指示により多種多様に行える自由度の高いものとなる。したがって、手かざしセンサにより吐止水の切り替えを行い、集音マイクにより吐水する湯水の温度調節や流量調節を行うようにすることで、水栓装置をより操作性に優れたものにすることができる。併せて、集音マイクによっても吐止水の切り替えを行えるようにしても良い。また、集音マイクにより「10秒だけ水を出して」等のタイマー機能を付けた吐水や、「水を1L出して」等の定量止水の機能を付けた吐水を行うなどのアレンジを行うことも可能となる。
【0081】
4.手かざしセンサの湾曲面から外部に露出するセンサカバーと、集音マイクの湾曲面から外部に露出するマイクカバーとは、互いに湾曲部の湾曲に沿って管軸方向に離間せず接したり一部が重なったりして並ぶように配置されていても良い。センサカバーとマイクカバーとは、各々の露出形状や露出面積が互いに同一と成るものの他、異なるものであっても良い。センサカバーとマイクカバーとは、それぞれ、露出形状が矩形状となるものの他、円形状や長円形状となるものであっても良い。
【0082】
センサカバー(手かざしセンサ)とマイクカバー(集音マイク)とは、そのどちらかが湾曲面の湾曲の最上端に配置される構成であっても良い。マイクカバー(集音マイク)がセンサカバー(手かざしセンサ)よりも吐水口に近い位置に配置される構成とされていても良い。
【0083】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0084】
1…水栓装置、2…水栓本体、3…吐水管、3A…湾曲部、A1…湾曲面、3B…凹部、4…吐水ヘッド、4A…吐水口、5…レバーハンドル、6…フレキシブルホース、7…切替ボタン、8…手かざしセンサ、8A…センサカバー、9…集音マイク、9A…マイクカバー、A2…集音孔、U…情報検出部、S…シンク、T…天板、C…カートリッジ