(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023146079
(43)【公開日】2023-10-12
(54)【発明の名称】水栓装置
(51)【国際特許分類】
E03C 1/05 20060101AFI20231004BHJP
【FI】
E03C1/05
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022053071
(22)【出願日】2022-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000144072
【氏名又は名称】SANEI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】片岡 健介
【テーマコード(参考)】
2D060
【Fターム(参考)】
2D060BA05
2D060BB02
2D060BC04
2D060BF03
2D060CA04
2D060CA20
(57)【要約】
【課題】集音マイクの集音性能を低下させることなく、集音マイクへの浸水を適切に防止することが可能な水栓装置を提供すること。
【解決手段】水栓装置は、水栓設置面から外部に露出する吐水管3の水栓表面(湾曲面A1)に設けられて使用者の音声を集音する集音マイク10を有する。集音マイク10が、水栓内部に設けられ、水栓表面を向く天板部12Aに貫通形状の本体集音孔A6を有する本体ユニット12と、天板部12Aを覆うように水栓表面に露出して設けられ、本体集音孔A6を外部と連通させるように貫通するカバー集音孔11Aを有するマイクカバー11と、本体集音孔A6の開口に被せられ、空気は通すが水は通さない多孔質膜から成る通気膜13と、を有する。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水栓設置面から外部に露出する水栓表面に設けられて使用者の音声を集音する集音マイクを有する水栓装置であって、
前記集音マイクが、
水栓内部に設けられ、前記水栓表面を向く天板部に貫通形状の本体集音孔を有する本体ユニットと、
前記天板部を覆うように前記水栓表面に露出して設けられ、前記本体集音孔を外部と連通させるように貫通するカバー集音孔を有するマイクカバーと、
前記本体集音孔の開口に被せられ、空気は通すが水は通さない多孔質膜から成る通気膜と、を有する水栓装置。
【請求項2】
請求項1に記載の水栓装置であって、
前記本体集音孔が、前記天板部から筒状に突出する突出筒部の筒孔として形成され、
前記通気膜が、前記突出筒部の突出した先の先端面に被せられる水栓装置。
【請求項3】
請求項2に記載の水栓装置であって、
前記突出筒部が、前記天板部から浮島状に突出して前記マイクカバーが周囲を取り囲むように被せられる浮島部上に設けられる水栓装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の水栓装置であって、
前記集音マイクが、先端の吐水口に向かって下方に湾曲する吐水管の湾曲の外周縁を成す湾曲面に設けられる水栓装置。
【請求項5】
請求項4に記載の水栓装置であって、
前記マイクカバーが、前記吐水管の管軸方向に延びる縦長形状とされると共に、前記本体ユニットに対して管軸方向の両端でカバー裏側から支持され、かつ、前記天板部との間を幅方向に開口させる側方開口を形成するように組み付けられる水栓装置。
【請求項6】
請求項5に記載の水栓装置であって、
前記側方開口が、幅方向に一対設けられる水栓装置。
【請求項7】
請求項4から請求項6のいずれかに記載の水栓装置であって、
前記本体ユニットが、前記吐水管の管内に管軸方向に通されて固定されるベース板の上面に対し、浮島状に突出するように設けられる水栓装置。
【請求項8】
請求項4から請求項7のいずれかに記載の水栓装置であって、
前記マイクカバーに形成される前記カバー集音孔が、前記吐水管の管軸方向に並んで複数設けられる水栓装置。
【請求項9】
請求項4から請求項8のいずれかに記載の水栓装置であって、
更に、前記湾曲面に設けられて使用者の手の差し出しを非接触で検出することが可能な光電式の手かざしセンサを備え、
前記集音マイクが、前記手かざしセンサと管軸方向に並び、かつ、前記手かざしセンサよりも前記吐水口から遠い位置に配置される水栓装置。
【請求項10】
請求項4から請求項9のいずれかに記載の水栓装置であって、
前記吐水管が、水栓本体との接続口から上向きに延びてから先端の前記吐水口に向かって下方に湾曲するように延びるグースネック状の管形状とされる水栓装置。
【請求項11】
請求項1から請求項10のいずれかに記載の水栓装置であって、
前記カバー集音孔と前記本体集音孔とが、互いに管軸方向及び/又は幅方向の配置が重ならないようにずれて配置される水栓装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水栓装置に関する。詳しくは、水栓設置面から外部に露出する水栓表面に設けられて使用者の音声を集音する集音マイクを有する水栓装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、吐水管の上面に使用者の音声を集音可能な集音マイクが配置された水栓装置が開示されている。この水栓装置は、使用者から出される音声指示を集音マイクにおいて集音し、集音した音声信号に基づいて吐水口からの吐水状態を変更するよう吐水制御を行う構成とされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の構成では、集音マイクを吐水口に近づけて配置すると、集音マイクの孔に水が入り込んで動作不具合を引き起こすおそれがある。そこで、本発明は、集音マイクの集音性能を低下させることなく、集音マイクへの浸水を適切に防止することが可能な水栓装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明の水栓装置は、次の手段をとる。すなわち、本発明の第1の発明は、水栓設置面から外部に露出する水栓表面に設けられて使用者の音声を集音する集音マイクを有する水栓装置であって、前記集音マイクが、水栓内部に設けられ、前記水栓表面を向く天板部に貫通形状の本体集音孔を有する本体ユニットと、前記天板部を覆うように前記水栓表面に露出して設けられ、前記本体集音孔を外部と連通させるように貫通するカバー集音孔を有するマイクカバーと、前記本体集音孔の開口に被せられ、空気は通すが水は通さない多孔質膜から成る通気膜と、を有する水栓装置である。
【0006】
第1の発明によれば、水栓表面に露出する集音マイクのカバー集音孔に外部から水が浸入しても、この浸入水は、水栓内部において本体ユニットの本体集音孔に被せられた通気膜により、本体集音孔への浸入が防止される。このような構成により、集音マイクの集音性能を低下させることなく、集音マイクへの浸水を適切に防止することができる。
【0007】
本発明の第2の発明は、上記第1の発明において、前記本体集音孔が、前記天板部から筒状に突出する突出筒部の筒孔として形成され、前記通気膜が、前記突出筒部の突出した先の先端面に被せられる水栓装置である。
【0008】
第2の発明によれば、本体集音孔が天板部から突出する突出筒部の筒孔として形成されることで、天板部上に流れ落ちた浸入水が本体集音孔に浸入しにくくなる。また、本体集音孔の開口をカバー集音孔に近付けることができる。したがって、集音マイクの集音性能を低下させることなく、集音マイクへの浸水をより適切に防止することができる。
【0009】
本発明の第3の発明は、上記第2の発明において、前記突出筒部が、前記天板部から浮島状に突出して前記マイクカバーが周囲を取り囲むように被せられる浮島部上に設けられる水栓装置である。
【0010】
第3の発明によれば、本体集音孔の形成される突出筒部が、天板部から浮島状に突出する浮島部から更に突出するように形成されることとなる。したがって、浮島部上に流れ落ちた浸入水がより一層本体集音孔に浸入しにくくなる。また、本体集音孔の開口をカバー集音孔により一層近付けることができる。また、浮島部が天板部から突出することから、浮島部上に流れ落ちた浸入水を浮島部の外部へとより適切に排出することができる。
【0011】
本発明の第4の発明は、上記第1から第3のいずれかの発明において、前記集音マイクが、先端の吐水口に向かって下方に湾曲する吐水管の湾曲の外周縁を成す湾曲面に設けられる水栓装置である。
【0012】
第4の発明によれば、集音マイクを使用者に向けて音声がより集音されやすい位置に配置することができる。また、マイクカバーと本体ユニットの天板部とが、互いに重力方向に対して角度のある方向に対向するようになる。したがって、カバー集音孔から浸入した浸入水を、本体集音孔に掛かりにくくすることができる。更に、水栓内部に浸入した浸入水を、吐水管の湾曲に沿って先端の吐水口へ向けて排水しやすくすることができる。
【0013】
本発明の第5の発明は、上記第4の発明において、前記マイクカバーが、前記吐水管の管軸方向に延びる縦長形状とされると共に、前記本体ユニットに対して管軸方向の両端でカバー裏側から支持され、かつ、前記天板部との間を幅方向に開口させる側方開口を形成するように組み付けられる水栓装置である。
【0014】
第5の発明によれば、集音マイクを吐水管の管軸方向に沿って広く集音可能なように設けることができる。また、側方開口を管軸方向に広く形成することができ、浸入水を本体ユニットの外部へとより適切に排出することができる。
【0015】
本発明の第6の発明は、上記第5の発明において、前記側方開口が、幅方向に一対設けられる水栓装置である。
【0016】
第6の発明によれば、浸入水を本体ユニットの外部へとより適切に排出することができる。
【0017】
本発明の第7の発明は、上記第4から第6のいずれかの発明において、前記本体ユニットが、前記吐水管の管内に管軸方向に通されて固定されるベース板の上面に対し、浮島状に突出するように設けられる水栓装置である。
【0018】
第7の発明によれば、本体ユニットがベース板から浮島状に突出するため、カバー集音孔から浸入した浸入水を、本体ユニットの外部へとより適切に排出することができる。
【0019】
本発明の第8の発明は、上記第4から第7のいずれかの発明において、前記マイクカバーに形成される前記カバー集音孔が、前記吐水管の管軸方向に並んで複数設けられる水栓装置である。
【0020】
第8の発明によれば、カバー集音孔が、吐水管の湾曲面に沿って管軸方向に複数並んで設けられる構成となる。したがって、マイクカバーに水が掛けられた際に、全てのカバー集音孔が水で塞がれてしまう不具合を起こしにくくすることができる。
【0021】
本発明の第9の発明は、上記第4から第8のいずれかの発明において、更に、前記湾曲面に設けられて使用者の手の差し出しを非接触で検出することが可能な光電式の手かざしセンサを備え、前記集音マイクが、前記手かざしセンサと管軸方向に並び、かつ、前記手かざしセンサよりも前記吐水口から遠い位置に配置される水栓装置である。
【0022】
第9の発明によれば、集音マイクと手かざしセンサとを、これらの高さ方向の並び順が使用者の口と手との高さ方向の並び順と同じ、上下の並び順となる配置とすることができる。したがって、手かざしセンサを使用者の手がより届きやすい位置に配置しつつ、集音マイクを使用者の音声がより集音されやすい位置に配置することができる。なおかつ、集音マイクを吐水口から遠い、水が掛かりにくい配置とすることができる。
【0023】
本発明の第10の発明は、上記第4から第9のいずれかの発明において、前記吐水管が、水栓本体との接続口から上向きに延びてから先端の前記吐水口に向かって下方に湾曲するように延びるグースネック状の管形状とされる水栓装置である。
【0024】
第10の発明によれば、吐水口の位置が比較的高い位置に設定されるグースネック状の管形状から成る吐水管に対し、集音マイクを使用者に向けて適切に機能させられるように近づけて配置することができる。また、集音マイクを吐水口から遠い、水が掛かりにくい配置とすることができる。
【0025】
本発明の第11の発明は、上記第1から第10のいずれかの発明において、前記カバー集音孔と前記本体集音孔とが、互いに管軸方向及び/又は幅方向の配置が重ならないようにずれて配置される水栓装置である。
【0026】
第11の発明によれば、カバー集音孔から浸入した浸入水を、本体集音孔に掛かりにくくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】第1の実施形態に係る水栓装置の概略構成を表す斜視図である。
【
図5】吐水ヘッドを吐水管の先端から引き出した状態を表す拡大斜視図である。
【
図6】集音マイクがベース板に取り付けられた状態を表す部分断面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下に、本発明を実施するための形態について、図面を用いて説明する。
【0029】
《第1の実施形態》
(水栓装置1の概略構成について)
始めに、本発明の第1の実施形態に係る水栓装置1の構成について、
図1~
図9を用いて説明する。なお、以下の説明において、手前、奥、上、下、左、右等の各方向を示す場合には、各図中に示されたそれぞれの方向を指すものとする。各図中に示す方向は、それぞれ、水栓装置1の正面に立つ使用者から見た方向となっている。以下の説明において、具体的な参照図を示さない場合、或いは参照図に該当する符号がない場合には、
図1~
図9のいずれかの図を適宜参照するものとする。
【0030】
図1に示すように、本実施形態に係る水栓装置1は、キッチンカウンタのシンクSの奥側の天板T上に設置される、いわゆる台付きタイプのシングルレバー混合水栓として構成される。この水栓装置1は、キッチンカウンタの天板Tの下側より供給される湯と水とを内部で混合してシンクSへと吐水することが可能な機能を備える。ここで、天板Tが、本発明の「水栓設置面」に相当する。
【0031】
具体的には、水栓装置1は、天板Tの下側から供給される湯と水との混合割合を内部で調節することが可能な温調機能を備える。また、水栓装置1は、混合した湯水の吐水/止水を切り替えることが可能な吐止水の切替機能を備える。また、水栓装置1は、吐水する湯水の量を調節することが可能な吐水量の調節機能を備える。
【0032】
上記湯水の混合割合の調節と吐水量の調節は、水栓本体2の手前上部に取り付けられた1本のレバーハンドル5の操作によって行うことが可能とされる。レバーハンドル5は、その基部が水栓本体2の手前上部に対して上下左右に首振り回転できるように連結されている。レバーハンドル5は、その基部から延び出す把持部が使用者により掴まれて上下左右に動かされることで、水栓本体2の内部に組み込まれた湯水混合用のカートリッジCを操作する。
【0033】
具体的には、レバーハンドル5は、使用者により把持部が左右方向に動かされることで、上記カートリッジCを操作して、水栓本体2の内部に取り込まれる湯水の各取込口の開度を変化させる。それにより、水栓本体2の内部に取り込まれて混合される湯水の混合割合が、レバーハンドル5の操作位置に応じた設定温度となるように調節される。
【0034】
また、レバーハンドル5は、使用者により把持部が上下方向に動かされることで、上記カートリッジCを操作して、水栓本体2の内部から湯水を吐出する吐出口の開度を変化させる。それにより、水栓本体2の内部から吐出される湯水の量が、レバーハンドル5の操作位置に応じた吐出量となるように調節される。
【0035】
具体的には、上記吐出口は、レバーハンドル5の引き上げに伴いその開度が徐々に開かれるように操作され、レバーハンドル5の押し下げに伴いその開度が徐々に閉じられるように操作される。なお、上記カートリッジCによる湯水の混合割合の調節と吐水量の調節とに纏わる基本構成は、特開2020-46067号公報等の文献に開示された公知の構成と同一となっている。したがって、カートリッジCの具体的な構成についての説明は省略することとする。
【0036】
また、上述した湯水の吐水/止水の切り替えは、水栓本体2の奥上部から手前上方に延び出す吐水管3の湾曲面A1上に設けられた手かざしセンサ8に対する手の差し出し、或いは集音マイク10に対する音声指示のいずれかによって行うことが可能とされる。手かざしセンサ8は、使用者の手がその正面に差し出されることで、手の差し出しを非接触で検出することが可能な反射型の光電センサ(赤外線センサ)から成る。集音マイク10は、使用者が発する音声をどの方向からも同じ感度で集音することが可能な無指向性のマイクから成る。
【0037】
手かざしセンサ8と集音マイク10は、それぞれ、水栓装置1に設けられた不図示の制御部に電気的に接続され、それぞれの検出信号が制御部へと送信される構成とされる。制御部は、手かざしセンサ8から送信される受光量の検出信号に基づき、手かざしセンサ8に使用者の手が差し出されたか否かを判定する。制御部において使用者の手が手かざしセンサ8に差し出されたものと判定された場合には、制御部から水栓装置1の図示しない吐水経路に介設された電磁弁に制御信号が送信され、電磁弁の開弁/閉弁が切り替えられる。
【0038】
また、不図示の制御部は、集音マイク10から送信される音声の検出信号に基づき、使用者から特定の音声指示が出されたか否かを判定する。制御部は、上記音声の検出信号に基づく音声情報を不図示のメモリに記憶された指示パターンと照合し、一致する指示パターンがあるか否かを判定する。制御部において一致する指示パターンがあると判定された場合には、制御部から上記不図示の電磁弁に指示パターンに対応する制御信号が送信され、電磁弁の開弁/閉弁が切り替えられる。
【0039】
具体的には、図示しない制御部のメモリには、湯水の吐水/止水の切り替えに纏わる指示パターンが記憶されている。湯水の吐水に纏わる指示パターンには、「吐水」「出す」「出して」等の吐水に纏わる音声指示に対応した指示パターンが登録されている。また、止水に纏わる指示パターンには、「止水」「止める」「止めて」等の止水に纏わる音声指示に対応した指示パターンが登録されている。
【0040】
制御部は、吐水に纏わる音声指示が出されたと判定した場合には、電磁弁を開弁するように電磁弁に制御信号を送信する。また、制御部は、止水に纏わる音声指示が出されたと判定した場合には、電磁弁を閉弁するように電磁弁に制御信号を送信する。
【0041】
制御部は、手かざしセンサ8又は集音マイク10から受ける検出信号に基づき、吐水の判定をして電磁弁を開弁した後には、その後に検出信号に基づく止水の判定をするまでの間は、電磁弁を開弁したままの状態にする。したがって、初期の止水状態から、使用者が手かざしセンサ8に手をかざしたり集音マイク10に吐水に纏わる音声指示を出したりすることにより、湯水の吐水状態を連続吐水の状態に切り替えることができる。
【0042】
「連続吐水」とは、使用者が手かざしセンサ8から手を引いても吐水をやめることなく継続する吐水形態である。なお、制御部は、吐水状態を連続吐水に切り替えた後、30分又は1時間等の長時間が経過しても止水判定をする検出信号が入力されない場合には、電磁弁に閉弁の制御信号を送信して自動止水をするような止水制御を行う構成とされていても良い。
【0043】
上記制御部は、吐水状態が止水、すなわち電磁弁が閉弁されている状態から、使用者が手かざしセンサ8に手をかざすことにより、吐水状態を連続吐水に切り替える。また、制御部は、吐水状態が連続吐水、すなわち電磁弁が開弁されている状態から、使用者が手かざしセンサ8に手をかざすことにより、吐水状態を止水に切り替える。
【0044】
また、制御部は、吐水状態にかかわらず、集音マイク10に吐水に纏わる音声指示が出された時には、吐水状態を連続吐水とし、集音マイク10に止水に纏わる音声指示が出された時には、吐水状態を止水とするように吐水制御をする。したがって、制御部は、使用者の手が手かざしセンサ8に差し出されて吐水状態を連続吐水に切り替えた後、集音マイク10に止水に纏わる音声指示が出された場合には、吐水状態を止水に切り替える。
【0045】
また、制御部は、集音マイク10に吐水に纏わる音声指示が出されて吐水状態を連続吐水に切り換えた後、使用者の手が手かざしセンサ8に差し出された場合にも、吐水状態を止水に切り替える。また、制御部は、使用者の手が手かざしセンサ8に差し出されて吐水状態を連続吐水に切り替えた後、再び使用者の手が手かざしセンサ8に差し出された場合にも、吐水状態を止水に切り替える。
【0046】
上記のように集音マイク10からの検出信号に基づき吐水状態を連続吐水に切り替えた後、手かざしセンサ8への手の差し出しによって止水に切り替える制御は、制御部において電磁弁の開弁/閉弁の状態を示す制御フラグを用いた切り替え制御を行うことで可能とされる。同様に、集音マイク10からの検出信号に基づき吐水状態を止水に切り替えた後、手かざしセンサ8への手の差し出しによって連続吐水に切り替える制御も、制御部において制御フラグを用いた切り替え制御を行うことで可能とされる。
【0047】
このように、水栓装置1は、湯水の吐水/止水の切り替えを、手かざしセンサ8に対する手の差し出しと、集音マイク10に対する音声指示と、の両方によって行うことが可能とされる。したがって、使用者が鍋を両手で抱えていて手が塞がっている場合には、吐水/止水の切り替えを音声指示により行い、近くで子供が寝ていて音声指示を出せない場合には、吐水/止水の切り替えを手の差し出しによって行う、といった使用状況に応じた選択的な操作が可能となる。
【0048】
図1~
図2に示すように、上記湯水の吐水/止水の切り替えを行うための指示情報を検出する手かざしセンサ8と集音マイク10とから成る情報検出部Uは、吐水管3における次のような使い勝手の良い位置に配置されている。すなわち、吐水管3は、水栓本体2との接続口から上向きに延びて、そこから先端の吐水口4Aに向かって図示手前下方に逆U字状に湾曲するグースネック状の管形状とされている。
【0049】
そして、上記グースネック状の吐水管3に対し、情報検出部Uは、吐水管3の最上端から図示手前下方に湾曲する湾曲部3Aの湾曲の外周縁を成す湾曲面A1に配置されている。ここで、湾曲面A1が、本発明の「水栓表面」に相当する。詳しくは、情報検出部Uを構成する手かざしセンサ8と集音マイク10とは、それぞれ、上記湾曲面A1において、湾曲部3Aの湾曲に沿って管軸方向に並ぶように配置されている。
【0050】
より詳しくは、手かざしセンサ8は、集音マイク10よりも吐水口4Aに近い位置に並ぶように配置されている。それにより、手かざしセンサ8と集音マイク10との双方が、吐水管3の湾曲部3Aの湾曲した先の正面に立つ使用者の方を向いて配置されている。
【0051】
(各部の構成について)
以下、吐水管3及び情報検出部Uを構成する手かざしセンサ8と集音マイク10の各構成について、更に詳しく説明する。吐水管3は、その水栓本体2と接続される基部が、水栓本体2に対して、高さ方向に延びる管軸回りに首振り回転できるように連結されている。それにより、
図3に示すように、吐水管3は、水栓本体2に対して、水栓装置1の正面側となる図示手前側に真っ直ぐ向けられた位置を中心に、左右に約60度ずつ首振り回転できるようになっている。
【0052】
吐水管3は、水栓本体2に対して、左右に約60度首振り回転したそれぞれの位置で、不図示の当接構造が当接して回転規制されるようになっている。なお、以下の説明では、便宜上、各図に示すように吐水管3が水栓装置1の正面側となる図示手前側に真っ直ぐ向けられた状態を基準として説明する。
【0053】
図3に示すように、吐水管3は、平面視においては、水栓本体2と接続される基部から先端の吐水口4Aに向かって図示手前側に真っ直ぐに延び出す形状とされる。吐水管3は、平面視においては、管径が一定の形状とされる。
【0054】
しかし、
図2に示すように、吐水管3は、側面視においては、湾曲部3Aが湾曲の最上端から図示手前側の先端に向かって管径が次第に太くなる先太りの形状とされる。それにより、
図1に示すように、吐水管3は、湾曲部3Aを図示手前斜め上方から見た斜面視においても、湾曲部3Aが先端に向かって先太り状となっているように見える形状とされる。なお、吐水管3は、左右対称な管形状とされている。
【0055】
図1~
図2及び
図4に示すように、吐水管3の先端には、吐水口4Aを下面に備える円筒容器状の吐水ヘッド4が着脱可能なように取り付けられている。
図5に示すように、吐水ヘッド4は、その上端部が、吐水管3の図示下端面に形成された凹部3Bに対して図示下方からの差し込みにより嵌合される構成とされる。この嵌合により、吐水ヘッド4は、吐水管3に対して、図示下側の先端面から下方に突出する形に装着される。
【0056】
凹部3Bは、吐水ヘッド4を正面に向けた状態でのみ図示下方から差し込んで装着することができる形状とされる。吐水ヘッド4は、吐水管3の先端に対する装着状態から使用者がその外周部を手で掴んで図示下方へと引張ることにより、凹部3Bとの嵌合状態から外される。
【0057】
吐水ヘッド4は、その図示上端部に接続されたフレキシブルホース6を介して、
図1で前述した水栓本体2の内部のカートリッジCの吐出口と流路が接続されている。フレキシブルホース6は、吐水ヘッド4の図示上端部から吐水管3の管内と水栓本体2の内部とを通って上述した天板Tの下側へと一旦引き込まれ、そこから上向きに曲げ返されて上述した水栓本体2の内部のカートリッジCの吐出口と接続されている。
【0058】
上記接続により、水栓本体2の内部でカートリッジCの吐出口より吐出される湯水が、吐水管3の管内に通されたフレキシブルホース6の内部を通って吐水ヘッド4の先端の吐水口4Aから吐水されるようになっている。フレキシブルホース6は、吐水ヘッド4が凹部3Bから図示下方へと外されることに伴い、吐水管3の先端から引き出される。また、フレキシブルホース6は、吐水ヘッド4が凹部3Bに図示下方から嵌め込まれることに伴い、吐水管3の管内へと引き込まれる。
【0059】
図1及び
図4に示すように、吐水ヘッド4は、その図示手前側面に、押し込み操作式の切替ボタン7を備える構成とされる。切替ボタン7は、吐水ヘッド4の内部に組み込まれる不図示の切替弁体と連結された構成とされる。吐水ヘッド4は、使用者が切替ボタン7を図示手前側から手で奥へと押し込む操作を行う度に、内部の切替弁体が作動されて、その下面の吐水口4Aからの吐水形態がストレート吐水とシャワー吐水とに交互に切り替えられる構成とされる。
【0060】
手かざしセンサ8は、その不図示の本体ユニットが吐水管3の湾曲部3Aの管内に組み込まれ、その表面の投受光面となるセンサカバー8Aが湾曲面A1の一部から湾曲面A1と面一状に外部に露出するように配設されている。集音マイク10も同様に、その本体ユニット12(
図6参照)が湾曲部3Aの管内に組み込まれ、その表面の集音面となるマイクカバー11が湾曲面A1の一部から湾曲面A1と面一状に外部に露出するように配設されている。
【0061】
マイクカバー11には、その表面上に外部からの音を集音するための複数のカバー集音孔11Aが貫通して形成されている。マイクカバー11は、その表面上にあけられた各カバー集音孔11Aに外部から水が浸入しても、浸入した水を吐水管3の管内において重力作用により本体ユニット12の外部へと逃がすように排出できる構成とされる。具体的な構成についての説明は後述する。
【0062】
図1及び
図4に示すように、センサカバー8Aとマイクカバー11とは、共に、湾曲面A1の幅方向(図示左右方向)の中央位置から管軸方向に長尺状に延びる矩形状の形に露出する構成とされる。詳しくは、センサカバー8Aとマイクカバー11とは、共に、湾曲面A1の幅方向(左右方向)の中央位置に左右対称な露出面を成す形に配置されている。
【0063】
図1~
図2及び
図4に示すように、センサカバー8Aは、マイクカバー11よりも吐水口4Aに近い図示手前側の低い位置に配置されている。そのことから、使用者が手かざしセンサ8に手を差し出した際に、差し出した手が集音マイク10にかかりにくくなる。
【0064】
その理由は、使用者は通常、手かざしセンサ8に対して身体に近い図示手前下側から手を差し出すことが多いと考えられるからである。したがって、集音マイク10に手が近づく動作によって生じ得る動作音が集音マイク10において吐水/止水を切り替える音声指示として誤検出されるおそれを適切に低減できることが期待できる。
【0065】
詳しくは、センサカバー8Aとマイクカバー11とは、互いに湾曲面A1の管軸方向に離間して配置されている。そのことから、使用者が手かざしセンサ8に手を差し出した際に、差し出した手が集音マイク10により一層かかりにくくなる。したがって、集音マイク10に手が近づく動作によって生じ得る動作音が上記のように誤検出されるおそれをより一層低減できることが期待できる。
【0066】
また、上記配置により、マイクカバー11とセンサカバー8Aとを、これらの高さ方向の並び順が使用者の口と手との高さ方向の並び順と同じ、上下の並び順となるように配置することができる。したがって、手かざしセンサ8を使用者の手がより届きやすい位置に配置することができると共に、集音マイク10を使用者の音声がより集音されやすい位置に配置することができる。
【0067】
また、手かざしセンサ8が集音マイク10よりも図示手前側の低い位置に配置されることから、手前側に集音マイク10が配置される場合と比べて、子供等の背の低い使用者が水栓装置1を使用する場合に、手かざしセンサ8を容易に視認することが可能となる。したがって、子供等の背の低い使用者が水栓装置1を使用する場合であっても、手かざしセンサ8の位置を容易に把握して手を差し出すことができ、吐水/止水の切り替え操作を簡便に行うことができる。
【0068】
すなわち、例えば集音マイク10が手かざしセンサ8よりも図示手前側の低い位置にある場合、子供等の背の低い使用者が水栓装置1を使用する際に、集音マイク10が手かざしセンサ8よりも近い位置に視認されることとなる。或いは、手かざしセンサ8が視界に入らず、集音マイク10だけが視界に入ることも考えられる。それにより、使用者がより近い位置に見える集音マイク10を手かざしセンサ8と誤認識してしまい、集音マイク10に手を差し出すといった誤操作を招くおそれがある。
【0069】
しかし、手かざしセンサ8が集音マイク10よりも図示手前側の低い位置にあることから、上記のような誤認識が起こりにくい。したがって、集音マイク10に手を差し出すといった誤操作を招くおそれも低減できるものと期待できる。
【0070】
また、集音マイク10が手かざしセンサ8よりも高い位置にあることから、使用者の手が濡れた状態で手かざしセンサ8に差し出された場合でも、手に付着した水が集音マイク10にかかりにくい。したがって、集音マイク10のマイクカバー11にあけられた各カバー集音孔11Aに水がかかって各カバー集音孔11Aが塞がれてしまうおそれを適切に低減することができる。
【0071】
センサカバー8Aとマイクカバー11とは、各々の外部に露出する形状及び大きさが互いに同一とされている。詳しくは、センサカバー8Aとマイクカバー11とは、共に、吐水管3の延びる管軸方向に長尺状に延びる矩形状の形に露出する形とされて、互いに管軸方向に真っ直ぐに並んで設けられている。それにより、手かざしセンサ8と集音マイク10とを、それぞれに広い検出範囲を持たせつつ、各々の露出形状及び大きさを揃えた機能美を持たせた外観となるように設けることができる。
【0072】
センサカバー8Aは、詳しくは、吐水管3の湾曲部3Aの先端(図示下端)から管軸方向に後退した位置に配置されている。それにより、手かざしセンサ8を、使用者が吐水管3の先端に取り付く吐水ヘッド4を掴んで着脱する際に、使用者の手を誤検出しにくい構成とすることができる。
【0073】
上記センサカバー8Aとマイクカバー11とは、湾曲面A1の湾曲に沿って管軸方向に並ぶように配置されていることから、それぞれが図示手前斜め上方を向いて配置されている。詳しくは、センサカバー8Aがマイクカバー11よりも湾曲面A1における図示手前側の低い位置に配置されていることから、センサカバー8Aがマイクカバー11よりも手前側(使用者側)に面が向けられて配置されている。また、マイクカバー11がセンサカバー8Aよりも上方に面が向けられて配置されている。
【0074】
(集音マイク10の防水構造について)
図6~
図7に示すように、上述した集音マイク10は、吐水管3の湾曲面A1の一部から外部に露出する化粧カバーとしてのマイクカバー11と、マイクカバー11により覆われて吐水管3の内部に設けられる本体ユニット12と、を有する構成とされる。集音マイク10は、上述した手かざしセンサ8と共に、吐水管3の管内に管軸方向に通されて固定される樹脂製長板状のベース板M上に組み付けられる構成とされる。
【0075】
マイクカバー11は、アクリル樹脂(PMMA)やポリカーボネート樹脂(PC)等の透明樹脂をインジェクション成形した成形品から成る。具体的には、
図7~
図8に示すように、マイクカバー11は、吐水管3の延びる管軸方向に長尺状に延びる略矩形の板形状から成る。
【0076】
マイクカバー11は、その周縁を残す中央部分が、水栓表面側に段差状に膨出する形状とされる。マイクカバー11は、上記段差状に膨出する中央部分が、吐水管3の湾曲面A1にあけられた通し孔に水栓内部から嵌め込まれて湾曲面A1の一部から湾曲面A1と面一状に外部に露出するようにセットされる構成とされる。
【0077】
上記マイクカバー11の段差状に膨出する中央部分には、その四隅の各位置に、マイクカバー11の長手方向(管軸方向)に4つずつ並ぶ丸孔状のカバー集音孔11Aが板厚方向に貫通して形成されている。これら長手方向に4つずつ並ぶカバー集音孔11Aの四隅に分かれた各束は、図示手前側2つの束と奥側2つの束とが互いに各々のカバー集音孔11Aの並ぶピッチよりも長手方向に大きく離間して配置され、図示右側2つの束と左側2つの束とが互いに各々のカバー集音孔11Aの並ぶピッチよりも幅方向に大きく離間して配置されている。
【0078】
図7に示すように、マイクカバー11は、その周縁が、マイクカバー11の組み付け先となる本体ユニット12の天板部12Aに向かって張り出すフランジ11Bを有する形状とされる。また、マイクカバー11の長手方向(管軸方向)の両縁部には、それらの幅方向(図示左右方向)の中央箇所に、長手方向に山状に膨出する嵌合凸部11Cがそれぞれ形成されている。マイクカバー11は、本体ユニット12の天板部12Aの中央部分に浮島状に突出する形に形成された浮島部A2に対し、その周囲をフランジ11Bにより隙間を空けて取り囲むように図示上方から被せられて組み付けられる。
【0079】
上記組み付けにより、マイクカバー11は、その長手方向の両縁部に形成された各嵌合凸部11Cが、本体ユニット12の天板部12A上の対応する各位置に形成された各嵌合凹部A7の内周部に嵌め込まれる。それにより、マイクカバー11が、本体ユニット12の天板部12A上に一体的に組み付けられる。
【0080】
各嵌合凹部A7は、互いに対向する側に開口を向けるように天板部12A上からU字状或いは逆U字状に突出する形に形成されている。図示手前側の嵌合凹部A7は、そのU字の繋ぎの部分が肉抜きされた穴あきのU字形状とされている。
【0081】
図7~
図8に示すように、図示手前側の嵌合凹部A7は、上記穴あきのU字形状とされていることで、そのU字の内部に水が流れ込んできても、その穴あきの部分から水を重力方向へと排出できる構成とされている。図示手前側の嵌合凹部A7に嵌め込まれるマイクカバー11の嵌合凸部11Cは、嵌合凹部A7のU字の穴あき部分にセットされる突起を備えた形状とされる。上記突起により、マイクカバー11の本体ユニット12に対する誤組み付けが防止可能とされている。
【0082】
図6~
図7に示すように、マイクカバー11の幅方向の両側縁には、それらの長手方向の中央箇所に、マイクカバー11の組み付け先となる本体ユニット12の天板部12Aに向かって突出する接地凸部11Dが形成されている。これら接地凸部11Dは、マイクカバー11が本体ユニット12の天板部12A上に被せられるのに伴い、本体ユニット12の天板部12A上にそれぞれ接地した状態にセットされる(
図6参照)。
【0083】
それにより、マイクカバー11は、その幅方向の両側縁、詳しくは各接地凸部11Dを支点とする図示手前側と奥側の各部分に、本体ユニット12の天板部12Aとの間を幅方向に開口させる側方開口11Eを形成するように天板部12A上に組み付けられる。各側方開口11Eは、マイクカバー11の各カバー集音孔11Aから天板部12A上に浸入した浸入水を側方に排出、すなわち吐水管3の内部で集音マイク10の外部へと排出するための排出孔として機能するものとなっている。
【0084】
本体ユニット12は、マイクカバー11よりもひとまわり大きな略矩形の板形状から成る天板部12Aと、天板部12Aの裏側に取り付けられた電気信号変換部12B(
図9参照)と、を有する。電気信号変換部12Bは、外部から集音された音を電気信号に変換するためのマイク素子等の機器を備える。
【0085】
図7に示すように、天板部12Aは、その周縁を残す中央部分に、浮島状に突出する浮島部A2を有する構成とされる。また、天板部12Aは、その周縁が、本体ユニット12の組み付け先となるベース板Mに向かってフランジ状に張り出す周囲側壁A3を有する角筒容器状の形に形成されている。天板部12Aの周囲側壁A3の幅方向の両側壁には、それらの長手方向の2箇所の位置に、幅方向の外側に向かって突出する各嵌合ピンA4が形成されている。
【0086】
上記本体ユニット12は、その天板部12Aの幅方向の両側壁から突出する各嵌合ピンA4が、ベース板Mの幅方向の両側縁から立ち上がる取付リブM1に形成された対応する各ピン嵌合溝M2内に図示上方からそれぞれ嵌め込まれることで、ベース板Mに一体的に組み付けられる。上記ベース板M及びベース板Mに本体ユニット12を組み付ける組付構造に纏わる具体的な構成は、特開2020-111973号公報等の文献に開示された公知の構成と同一となっている。したがって、これらの具体的な構成についての説明は省略することとする。
【0087】
天板部12Aの浮島部A2上には、その図示手前側と奥側の2箇所の幅方向の中央位置に、図示上方(面直方向)に円筒状に突出する突出筒部A5が形成されている。そして、これら突出筒部A5の筒内部には、板厚方向に丸孔状に貫通する本体集音孔A6がそれぞれ形成されている(
図9参照)。各本体集音孔A6は、各突出筒部A5の筒孔を構成する孔とされる。
【0088】
また、天板部12Aの浮島部A2上の長手方向の中央部には、図示上方(面直方向)に矩形状に突出するON/OFF表示部A8が設けられている。ON/OFF表示部A8は、吐水状態が連続吐水に切り替えられることで、不図示の制御部によりその表面のLEDライトが点灯され、透明なマイクカバー11を通して外部に点灯表示をする。また、ON/OFF表示部A8は、吐水状態が止水に切り替えられることで、不図示の制御部によりLEDライトが消灯され、外部に対する点灯表示を消すようになっている。
【0089】
図7に示すように、各突出筒部A5の突出した先の先端面には、これらの筒孔である本体集音孔A6の開口を覆う通気膜13が一体的に被せられている。各通気膜13は、空気は通すが水は通さないポリテトラフルオロエチレン樹脂(PTFE)製の多孔質膜から成る。各通気膜13は、各突出筒部A5の突出した先の先端面に不図示の粘着シールを介して一体的に貼り付けられている。
【0090】
上記構成により、本体ユニット12に形成された各本体集音孔A6は、各通気膜13により外部からの水の浸入が適切に防止されつつ、マイクカバー11に形成された各カバー集音孔11Aを通して外部と適切に連通された構成とされる。それにより、各カバー集音孔11Aに集音された外部からの音が、各本体集音孔A6を通って天板部12Aの裏側の電気信号変換部12B(
図9)へと適切に伝達されるようになっている。
【0091】
図8に示すように、上記2つの本体集音孔A6は、マイクカバー11の四隅に分かれて長手方向に4つずつ並ぶ各カバー集音孔11Aの4つの束のうち、図示手前側の左右2つの束の間と、奥側の左右2つの束と、の間にそれぞれ分かれて配置されている。それにより、上記2つの本体集音孔A6は、マイクカバー11の四隅に分かれて長手方向に4つずつ並ぶカバー集音孔11Aのいずれとも幅方向の配置が重ならない配置とされる。それにより、各カバー集音孔11Aから天板部12A上に水が浸入した際に、その浸入水が各本体集音孔A6上に掛かりにくくなっている。
【0092】
以上のように構成された集音マイク10は、次のように各カバー集音孔11Aから水が内部に侵入しても、その浸入水を各本体集音孔A6に浸入させることなく、吐水管3の管内において外部へと適切に排出できるようになっている。すなわち、
図9に示すように、マイクカバー11の表面に水が掛かるなどして、各カバー集音孔11Aのうちのいずれかから内部に水が浸入したとする。
【0093】
そうすると、
図7に示すように、各カバー集音孔11Aのいずれかから浸入した水は、重力作用により本体ユニット12の天板部12Aの浮島部A2上に滴り落ちる。その際、各カバー集音孔11Aの直下には各本体集音孔A6がないことから、上記滴り落ちる水は各本体集音孔A6上には掛かりにくい。各カバー集音孔11Aは、マイクカバー11の四隅に分かれて長手方向に4つずつ並ぶように分散して形成されていることから、マイクカバー11の表面に水が掛かった際、その全てに水が浸入することが少なく、全てが水で塞がれてしまう不具合を生じにくくなっている。
【0094】
天板部12Aの浮島部A2上に滴り落ちた水は、吐水管3の湾曲面A1に沿って図示手前斜め下側に傾斜する浮島部A2上を重力方向に流れ、各突出筒部A5の外周面やON/OFF表示部A8の外周面との当たりにより幅方向の両側方へと流される。そして、幅方向の両側方へと流された水は、マイクカバー11の幅方向の両側にあけられた各側方開口11Eより浮島部A2上から天板部12A上へと流れ落ち、更にそこからベース板M上へと流れ落ちる。
【0095】
ベース板M上へと流れ落ちた水は、重力作用によりベース板Mに沿って図示手前下側へと流れ落ち、吐水管3の先端にあけられたフレキシブルホース6(
図5参照)の通される孔から外部に排出される。このような構成により、集音マイク10は、各カバー集音孔11Aから水が浸入しても、吐水管3の内部で集音マイク10の外部へとへ適切に排出することができるようになっている。
【0096】
以上をまとめると、第1の実施形態に係る水栓装置1は、次のような構成となっている。なお、以下において括弧書きで付す符号は、上記実施形態で示した各構成に対応する符号である。
【0097】
すなわち、水栓装置(1)は、水栓設置面(T)から外部に露出する水栓表面(A1)に設けられて使用者の音声を集音する集音マイク(10)を有する水栓装置(1)である。集音マイク(10)が、水栓内部に設けられ、水栓表面(A1)を向く天板部(12A)に貫通形状の本体集音孔(A6)を有する本体ユニット(12)と、天板部(12A)を覆うように水栓表面(A1)に露出して設けられ、本体集音孔(A6)を外部と連通させるように貫通するカバー集音孔(11A)を有するマイクカバー(11)と、本体集音孔(A6)の開口に被せられ、空気は通すが水は通さない多孔質膜から成る通気膜(13)と、を有する。
【0098】
上記構成によれば、水栓表面(A1)に露出する集音マイク(10)のカバー集音孔(11A)に外部から水が浸入しても、この浸入水は、水栓内部において本体ユニット(12)の本体集音孔(A6)に被せられた通気膜(13)により、本体集音孔(A6)への浸入が防止される。このような構成により、集音マイク(10)の集音性能を低下させることなく、集音マイク(10)への浸水を適切に防止することができる。
【0099】
また、本体集音孔(A6)が、天板部(12A)から筒状に突出する突出筒部(A5)の筒孔として形成され、通気膜(13)が、突出筒部(A5)の突出した先の先端面に被せられる。上記構成によれば、本体集音孔(A6)が天板部(12A)から突出する突出筒部(A5)の筒孔として形成されることで、天板部(12A)上に流れ落ちた浸入水が本体集音孔(A6)に浸入しにくくなる。また、本体集音孔(A6)の開口をカバー集音孔(11A)に近付けることができる。したがって、集音マイク(10)の集音性能を低下させることなく、集音マイク(10)への浸水をより適切に防止することができる。
【0100】
また、突出筒部(A5)が、天板部(12A)から浮島状に突出してマイクカバー(11)が周囲を取り囲むように被せられる浮島部(A2)上に設けられる。上記構成によれば、本体集音孔(A6)の形成される突出筒部(A5)が、天板部(12A)から浮島状に突出する浮島部(A2)から更に突出するように形成されることとなる。したがって、浮島部(A2)上に流れ落ちた浸入水がより一層本体集音孔(A6)に浸入しにくくなる。また、本体集音孔(A6)の開口をカバー集音孔(11A)により一層近付けることができる。また、浮島部(A2)が天板部(12A)から突出することから、浮島部(A2)上に流れ落ちた浸入水を浮島部(A2)の外部へとより適切に排出することができる。
【0101】
また、集音マイク(10)が、先端の吐水口(4A)に向かって下方に湾曲する吐水管(3)の湾曲の外周縁を成す湾曲面(A1)に設けられる。上記構成によれば、集音マイク(10)を使用者に向けて音声がより集音されやすい位置に配置することができる。また、マイクカバー(11)と本体ユニット(12)の天板部(12A)とが、互いに重力方向に対して角度のある方向に対向するようになる。したがって、カバー集音孔(11A)から浸入した浸入水を、本体集音孔(A6)に掛かりにくくすることができる。更に、水栓内部に浸入した浸入水を、吐水管(3)の湾曲に沿って先端の吐水口(4A)へ向けて排水しやすくすることができる。
【0102】
また、マイクカバー(11)が、吐水管(3)の管軸方向に延びる縦長形状とされると共に、本体ユニット(12)に対して管軸方向の両端でカバー裏側から支持され、かつ、天板部(12A)との間を幅方向に開口させる側方開口(11E)を形成するように組み付けられる。
【0103】
上記構成によれば、集音マイク(10)を吐水管(3)の管軸方向に沿って広く集音可能なように設けることができる。また、側方開口(11E)を管軸方向に広く形成することができ、浸入水を本体ユニット(12)の外部へとより適切に排出することができる。
【0104】
また、側方開口(11E)が、幅方向に一対設けられる。上記構成によれば、浸入水を本体ユニット(12)の外部へとより適切に排出することができる。
【0105】
また、本体ユニット(12)が、吐水管(3)の管内に管軸方向に通されて固定されるベース板(M)の上面に対し、浮島状に突出するように設けられる。上記構成によれば、本体ユニット(12)がベース板(M)から浮島状に突出するため、カバー集音孔(11A)から浸入した浸入水を、本体ユニット(12)の外部へとより適切に排出することができる。
【0106】
また、マイクカバー(11)に形成されるカバー集音孔(11A)が、吐水管(3)の管軸方向に並んで複数設けられる。上記構成によれば、カバー集音孔(11A)が、吐水管(3)の湾曲面(A1)に沿って管軸方向に複数並んで設けられる構成となる。したがって、マイクカバー(11)に水が掛けられた際に、全てのカバー集音孔(11A)が水で塞がれてしまう不具合を起こしにくくすることができる。
【0107】
また、水栓装置(1)が、更に、湾曲面(A1)に設けられて使用者の手の差し出しを非接触で検出することが可能な光電式の手かざしセンサ(8)を備え、集音マイク(10)が、手かざしセンサ(8)と管軸方向に並び、かつ、手かざしセンサ(8)よりも吐水口(4A)から遠い位置に配置される。
【0108】
上記構成によれば、集音マイク(10)と手かざしセンサ(8)とを、これらの高さ方向の並び順が使用者の口と手との高さ方向の並び順と同じ、上下の並び順となる配置とすることができる。したがって、手かざしセンサ(8)を使用者の手がより届きやすい位置に配置しつつ、集音マイク(10)を使用者の音声がより集音されやすい位置に配置することができる。なおかつ、集音マイク(10)を吐水口(4A)から遠い、水が掛かりにくい配置とすることができる。
【0109】
また、吐水管(3)が、水栓本体(2)との接続口から上向きに延びてから先端の吐水口(4A)に向かって下方に湾曲するように延びるグースネック状の管形状とされる。上記構成によれば、吐水口(4A)の位置が比較的高い位置に設定されるグースネック状の管形状から成る吐水管(3)に対し、集音マイク(10)を使用者に向けて適切に機能させられるように近づけて配置することができる。また、集音マイク(10)を吐水口(4A)から遠い、水が掛かりにくい配置とすることができる。
【0110】
また、カバー集音孔(11A)と本体集音孔(A6)とが、互いに幅方向の配置が重ならないようにずれて配置される。上記構成によれば、カバー集音孔(11A)から浸入した浸入水を、本体集音孔(A6)に掛かりにくくすることができる。
【0111】
《その他の実施形態について》
以上、本発明の実施形態を1つの実施形態を用いて説明したが、本発明は上記実施形態のほか、以下に示す様々な形態で実施することができるものである。
【0112】
1.本発明の水栓装置は、吐水量や温度の調節を行うレバーハンドルを備えない自動水栓として構成されるものであっても良い。また、水栓装置は、湯水を吐水する混合水栓の他、水のみを吐水する単水栓として構成されるものであっても良い。また、水栓装置は、洗面台やキッチンカウンタの上部の壁面(水栓設置面)に水栓本体が埋め込まれ、吐水管と操作ハンドルとが壁面(水栓設置面)から露出するように設けられる「壁出し」或いは「壁付け」と称されるタイプの水栓として構成されるものであってもよい。
【0113】
2.集音マイクは、吐水管の他、水栓本体に設けられる構成であっても良い。集音マイクは、吐水管の側面や下面、又は水栓本体の側面や背面等、水栓正面に立つ使用者の方を向かない位置に設けられる構成であっても構わない。吐水管は、グースネック以外の管形状から成るものであっても良い。集音マイクは、手かざしセンサよりも吐水口に近い位置に配置される構成とされていても良い。
【0114】
3.上記実施形態では、情報検出部の検出信号に基づき吐水状態を連続吐水と止水とに切り替える構成を例示した。しかし、情報検出部の検出信号に基づく吐水状態の切り替えは、吐水状態をストレート吐水、シャワー吐水、気泡を含んだ水撥ねしにくい泡沫吐水及び浄水のうちのいずれか2つあるいは3つ以上の状態に切り替えるものであっても良い。
【0115】
また、水栓装置が自動水栓に適用される場合には、吐水状態を小流量吐水と大流量吐水とに切り替えるものや、水吐水と湯吐水とに切り替えるもの、吐水する湯水の温度を段階的に切り替えるものであっても良い。なお、自動水栓とは、吐水口に臨む吐水管の先端等の箇所に、使用者の吐水口への手の差し出しを検出して手の差し出し状態に合わせて吐止水を行う(手が差し出されれば吐水し、手が引き抜かれれば止水する)よう制御するための非接触式のセンサ(赤外線センサ)から成る自動吐水センサを備える水栓である。
【0116】
吐水状態の切り替えを集音マイクを用いて行うことで、使用者からの指示情報が音声指示により多種多様に行える自由度の高いものとなる。したがって、手かざしセンサにより吐止水の切り替えを行い、集音マイクにより吐水する湯水の温度調節や流量調節を行うようにすることで、水栓装置をより操作性に優れたものにすることができる。併せて、集音マイクによっても吐止水の切り替えを行えるようにしても良い。また、集音マイクにより「10秒だけ水を出して」等のタイマー機能を付けた吐水や、「水を1L出して」等の定量止水の機能を付けた吐水を行うなどのアレンジを行うことも可能となる。
【0117】
4.手かざしセンサの湾曲面から外部に露出するセンサカバーと、集音マイクの湾曲面から外部に露出するマイクカバーとは、互いに湾曲部の湾曲に沿って管軸方向に離間せず接したり一部が重なったりして並ぶように配置されていても良い。センサカバーとマイクカバーとは、互いの露出面積や露出形状が同一と成るものであっても良く異なるものであっても良い。センサカバーとマイクカバーとは、それぞれ、露出形状が矩形状となるものの他、円形状や長円形状となるものであっても良い。
【0118】
5.集音マイクのカバー集音孔と本体集音孔の数や形状、大きさは、特に限定されるものでなく、それぞれ、単数又は複数であっても良く、丸孔の他、角孔や長孔、或いは異形孔であっても良い。カバー集音孔と本体集音孔とは、互いに幅方向には位置が重なるが管軸方向には位置が重ならない配置とされるものや、互いに幅方向にも管軸方向にも位置が重なる或いは重ならない配置とされるものであっても良い。しかし、カバー集音孔と本体集音孔とは、互いに幅方向或いは管軸方向のいずれか一方において位置が重ならない配置とされている方が、カバー集音孔より浸入した水が本体集音孔に掛かりにくくなるため、好ましい。
【0119】
6.マイクカバーに形成される側方開口は、幅方向の両側にあるものの他、片側にしかないものであっても良い。また、集音マイクは、マイクカバーが側方開口を持たず、カバー集音孔より内部に浸入した水を重力方向にのみ排出するように流す構成であっても良い。
【0120】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0121】
1…水栓装置、2…水栓本体、3…吐水管、3A…湾曲部、A1…湾曲面(水栓表面)、3B…凹部、4…吐水ヘッド、4A…吐水口、5…レバーハンドル、6…フレキシブルホース、7…切替ボタン、8…手かざしセンサ、8A…センサカバー、10…集音マイク、11…マイクカバー、11A…カバー集音孔、11B…フランジ、11C…嵌合凸部、11D…接地凸部、11E…側方開口、12…本体ユニット、12A…天板部、A2…浮島部、A3…周囲側壁、A4…嵌合ピン、A5…突出筒部、A6…本体集音孔、A7…嵌合凹部、A8…ON/OFF表示部、12B…電気信号変換部、13…通気膜、M…ベース板、M1…取付リブ、M2…ピン嵌合溝、U…情報検出部、S…シンク、T…天板(水栓設置面)、C…カートリッジ