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特開2023-146106身体マップ作成装置および身体マップ作成方法。
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  • 特開-身体マップ作成装置および身体マップ作成方法。 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023146106
(43)【公開日】2023-10-12
(54)【発明の名称】身体マップ作成装置および身体マップ作成方法。
(51)【国際特許分類】
   G01L 5/00 20060101AFI20231004BHJP
   A61B 5/107 20060101ALI20231004BHJP
【FI】
G01L5/00 101Z
A61B5/107 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022053126
(22)【出願日】2022-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】800000068
【氏名又は名称】学校法人東京電機大学
(71)【出願人】
【識別番号】522125124
【氏名又は名称】株式会社レナートサイエンス
(74)【代理人】
【識別番号】110002343
【氏名又は名称】弁理士法人 東和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】荒船 龍彦
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 雪憲
【テーマコード(参考)】
2F051
4C038
【Fターム(参考)】
2F051AA17
2F051AA18
2F051AB03
2F051AB06
2F051AB07
2F051AB08
2F051BA07
4C038VA04
4C038VB26
4C038VC01
(57)【要約】
【課題】本発明は、形状と共に感触をも再現する再建手術を支援する身体マップを提供する。
【解決手段】本発明の一実施形態に係る身体マップ作成装置100は、被計測者Kの突出した身体部分である乳房Bに密着した装着部30と、この装着部30に配設された触覚センサ40と、被計測者Kの乳房Bの形状をスキャンして3次元的な座標データを取得する測定部10と、座標データを記憶する記憶部20と、座標データおよび触覚センサ40によって取得した触覚データを関連付ける情報処理を行う処理部50と、からなる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
突出した身体部分の形状及び力学的特性を相関付けて計測する身体マップ作成装置であって、
該身体部分の形状を3次元的に計測する測定部と、
該測定部が取得した前記形状の座標データを蓄積する記憶部と、
該身体部分に密着し、所定の間隔を有した格子が描かれた装着部と、
該装着部の該格子の交点に配設され、前記身体部分と前記装着部との密着面に対する垂線方向の前記力学的特性を計測する複数の触覚センサと、
該触覚センサが取得した触覚データと該触覚データが取得された前記交点の座標データとを関連付けて前記身体マップを作成する処理部と、を備えることを特徴とする身体マップ作成装置。
【請求項2】
前記装着部が、
前記身体部分の外縁を囲う枠体と、
該枠体に周縁が装着され、収縮自在の材料の面布と、から形成されることを特徴とする請求項1に記載の身体マップ作成装置。
【請求項3】
前記触覚データが、力覚データあることを特徴とする請求項1または2に記載の身体マップ作成装置。
【請求項4】
前記触覚センサが、電気抵抗式、静電容量式、圧電式、光学式の力覚センサからなることを特徴とする請求項3に記載の身体マップ作成装置。
【請求項5】
前記処理部が、
健常体の前記身体部分の座標データと、予め統計的に所定の範囲を有する触覚データと、の関係を示す判定マップを備えており、
計測された触覚データが該判定マップの前記所定の範囲に含まれない場合に、信号を発信することを特徴とする請求項3または4に記載の身体マップ作成装置。
【請求項6】
前記身体部分は乳房であることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の身体マップ作成装置。
【請求項7】
前記乳房が患部切除手術によって切除された後に再建された乳房に前記装着部を装着し、手術前の前記身体マップに基づき、該再建された乳房を測定する請求項1から6に記載の身体マップ作成装置。
【請求項8】
突出した身体部分の形状及び力学的特性を相関付けて計測する身体マップ作成方法であって、
該身体部分の形状を3次元的に計測するステップと、
該測定部が取得した前記形状の座標データを蓄積するステップと、
該身体部分に密着し、所定の間隔を有した格子が描かれた装着部を装着するステップと、
該装着部の該格子の交点に配設され、前記身体部分と前記装着部との密着面に対する垂線方向の前記力学的特性を計測する複数の触覚センサが取得した触覚データと、該触覚データが取得された前記交点の座標データと、を関連付けて前記身体マップを作成するステップと、からなる身体マップ作成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、突出した身体部分の形状及び力学的特性を相関付けて計測する身体マップ作成装置に関する。
詳しくは、患部切除前における身体部分表面の手術前の3次元データとこの3次元データに対応した複数の箇所における身体部分の触覚データを元にして、数値化された定量的な判断資料を得ることにより、最適な再建手術を支援する身体マップ作成装置及び身体マップ作成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、救命等のために患部を切除する外科的手術が行われることで、平均寿命が一層延びる傾向にある。そして、患部切除後の人生における生活をより満足して送るために、切除された身体部分を再建する身体再建手術も行われることが多くなってきている。
【0003】
身体再建手術の内でも乳房再建手術は多くなる傾向にあり、この乳房再建手術に用いるための種々のツールが開発されている。従来技術としては、例えば3次元的画像として乳房形状を扱った既存ソフトウエアとして、メディックエンジニアリングのBreast―Rugle(販売終了)や、米国のCanfield Scientific社製(国内販売は株式会社インテグラル)の乳房形状計測装置のVECTRAシリーズに付属するソフトウエアが挙げられる。
【0004】
本発明者等は、乳房再建手術の支援を目的に、患部切除前における身体部分表面の手術前の3次元データ及び患部切除後における身体部分表面の切除後の3次元データを元にして、数値化された定量的な判断資料を得ることにより、最適な再建手術を可能とした身体マップ作成方法、身体マップ作成プログラム及びその記録媒体を提供している(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6791482号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1にて開示された技術は、身体部の形状を寸法的に再生するために有効であるが、再生後の身体部の感触を再現するには至っていない。
【0007】
なぜなら、特許文献1にて開示された技術による形状データの取得や、ロボティクス技術の発展に伴い硬さ計測、感圧計測のためのセンサはあったが、3次元のデータである形状データと硬さ・感圧値等の触覚値とを結びつけ、これらのデータ間の整合性をとりつつ、再建手術用のデータに利用することは難しかった。
すなわち、硬さ・感圧を測定するデータが有効となるのは、被測定箇所の座標だけではなく、被測定面に対して、垂直、つまり同じベクトルとなるようなデータを取得し、これらを形状データと統合する必要があった。
【0008】
さらに、取得したマッピングデータに対しては、異常値の判定(例えばガン)、重力による形状データの変化とそれに伴う硬さ・感圧データの変化等の情報処理・評価が必要となり、これらには単純なデータ処理だけでは対応することができない。
そのため、医学的な知見や、これまでの診断状況等から、エキスパートシステムに類似した判断・閾値の設定が必要となるが、これらの要素を加味した技術は開示されていない。
【0009】
本発明は、前記背景におけるこれらの実情に鑑みてなされたものであり、形状と共に感触をも再現する再建手術を支援する身体マップを提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、前記目的を達成する突出した身体部分の形状及び力学的特性を相関付けて計測する身体マップ作成装置である。
本発明の一態様は、身体部分の形状を3次元的に計測する測定部と、
該測定部が取得した前記形状の座標データを蓄積する記憶部と、
該身体部分に密着し、所定の間隔を有した格子が描かれた装着部と、
該装着部の該格子の交点に配設され、前記身体部分と前記装着部との密着面に対する垂線方向の前記力学的特性を計測する複数の触覚センサと、
該触覚センサが取得した触覚データと該触覚データが取得された前記交点の前記座標データとを関連付けて前記身体マップを作成する処理部と、を備える。
【0011】
本構成は、突出した身体部分の形状の座標データと、この座標データに力学的特性を関連付けることを特徴としている。
突出した身体部分とは、「乳房」「鼻」「耳」「腕」「足」等が該当する。これらの身体部分が怪我や疾病等で欠如したときに再建手術を施す場合がある。
本構成では、この状況を鑑みて、再建される部位の外見を3次元的に計測する。
3次元的な計測は、例えば特許文献1に記載した技術を適用しても良いし、近年多くの商品・サービスが提供されているいわゆる「3Dボディスキャン」を適用することができる。
【0012】
さらに、本構成では、突出した身体部分の3次元形状の座標データ測定位置に重畳するように、装着部に備えた複数の触覚センサが取得した力学的特性を計測し、座標データと力学的特性である触覚データを関連付けるようにしている。
【0013】
なお、ここでいう触覚センサが取得した力学的特性とは、動物の体表に物が触れたときに生ずる機械的接触を感受する感覚を力、加速度、圧力等の力学的特性で表したことをいう。
【0014】
装着部は、突出した身体部分が「乳房」である場合、ブラジャーに類似した装着具を適用できる。ただし、被装着部に密着し、形状通り延伸し、自然な形状を維持するように圧迫しない、等の特性を有する形状・素材であることが望ましい。
【0015】
なお、本構成では、突出した身体部分を格子が描かれた装着部によって小さな領域に区分しており、「3Dボディスキャン」等で得られたデータとの整合をとりやすく、また、測定結果を視覚的に判断しやすくしている。
【0016】
この格子は、正確な寸法で等間隔に区切られた正方形等の矩形に限定されるものではなく、身体マップ作成時に、座標データと触覚データの同定のため、かつ再建時の支援のために、複数の過不足ない程度の計測点を有すればよい。
例えば、形状変化が大きい部分には、細かい格子を適用し、形状変化が少ない部分には、大きな格子を適用するようなことでも良いし、装着部の素材の伸縮に伴って、格子形状が変化しても良い。
【0017】
そして、装着部に配設された触覚センサが取得する力学的特性を、身体部分と装着部との密着面に対する垂線方向とすることで、力学的特性のベクトルを一致させ斜め方向の分力を排除して、形状データと力学的特性との、複数データ間での整合性を担保している。
【0018】
本発明によれば、複数の測定点において、測定する密着面の凹凸にかかわらず、突出した身体部分の座標データと、力学的特性である触覚データとの同定を図ることができるとともに精度よく関連付けることができる。
【0019】
前記構成において、前記装着部が、前記身体部分の外縁を囲う枠体と、該枠体に周縁が装着され、収縮自在の材料の面布と、から形成されるよう構成することができる。
【0020】
この構成によれば、突出した身体部分の周囲を囲う、例えばブラジャーで適用されているワイヤ状の枠体と、この枠体を覆うように枠体の周縁に留められている面布として、例えば伸縮自在なストレッチャブル樹脂フィルム(パナソニック株式会社https://news.panasonic.com/jp/press/data/2015/12/jn151224-2/jn151224-2.html)を適用することで、より正確な形状データを担保することができる。
【0021】
例で挙げた、ストレッチャブル樹脂フィルムは、柔らかく、しなやかなフィルム状の絶縁材料で、優れた伸張性を有するものであり、触覚センサの配設にも好適な構成となる。
【0022】
前記構成において、前記触覚データが、力覚データであるように構成するようにしてもよい。
【0023】
力覚データとは力(圧力)、硬さ、トルクの大きさ、向き等であり、触覚センサはこの力覚データを検出する。
前記構成によれば、3次元のデータである座標データと1次元の力覚データ(触覚データ)である硬さ・感圧値とを結びつけ、これらのデータ間の整合性をとることができる。
なお、力覚データ(触覚データ)としては、すべり覚データも含まれるが、用途に応じて適宜対応する触覚センサを選択すればよい。
【0024】
前記構成において、前記触覚センサが、電気抵抗式、静電容量式、圧電式、光学式の力覚センサからなるように構成してもよい。
【0025】
前記構成によれば、
力が加わった際に一定の関係で電気抵抗値が変化する物体を用いて力の大きさを検出する電気抵抗式、
力によって静電容量が一定の関係で変化する構造を利用し、力の大きさを検出する静電容量式、
力が加わった際に電圧を発生させる圧電素子を用いて、力の大きさを検出する圧電式、
力が加わる箇所に模様をプリントしておき、力による模様の変化を光学センサで検出して力の大きさを求める光学式、
の触覚センサを、適宜場合に応じて適用することで、環境や条件に左右されず有用な力覚データ(触覚データ)を取得することができる。
【0026】
前記構成において、前記処理部が、健常体の前記身体部分の座標データと、予め統計的に所定の範囲を有する触覚データと、の関係を示す判定マップを備えており、計測された触覚データが該判定マップの前記所定の範囲に含まれない場合に、信号を発信するように構成するようにしてもよい。
【0027】
前記構成によれば、健常体の前記身体部分の座標データと、触覚データとを、予め統計的に処理して、健常体とみられる所定の範囲もしくは閾値を設定することで、突出した身体部分の異常値の判定(例えばガン)の診断支援をすることができる。
【0028】
また、これらの統計的な処理をしたデータ群を使った機械学習・深層学習などの結果、専門の医師による医学的な知見、これまでの診断状況等から、エキスパートシステムに類似した判断・閾値の設定をして、診断支援の精度を向上させることもできる。
【0029】
さらに、前記構成によれば、身体部分の再建に用いる材料、製法等の選択を支援することができる。
他にも、統計処理したデータは、再建部分における有限要素法や境界要素法による構造モデルを構築したときの検証用のデータとしても活用できる。
これらの選択された材料、製法等による試作品や、構造モデルは、再建手術後の身体部分のシミュレーションとして利用できることから、施術される患者にとって、安心できる材料となる。
【0030】
前記構成において、前記身体部分は乳房であるように構成してもよい。
【0031】
身体再建手術の内でも乳房再建手術は多くなる傾向にあり、前記構成によれば、この乳房再建手術において再建時の再現性を向上させることができる。
【0032】
前記構成において、前記乳房が患部切除手術によって切除された後に再建された乳房に前記装着部を装着し、手術前の前記身体マップに基づき、該再建された乳房を測定するよう構成してもよい。
【0033】
前記構成によれば、再建後の乳房の完成度を、自身や医師の触覚だけでなく、具体的な数値として把握することができるため、より客観的に術後の状態を評価することができる。
【0034】
本発明は、突出した身体部分の形状及び力学的特性を相関付けて計測する身体マップ作成方法である。
本発明の一態様は、該身体部分の形状を3次元的に計測するステップと、該測定部が取得した前記形状のデータを蓄積するステップと、該身体部分に密着し、所定の間隔を有した格子が描かれた装着部を装着するステップと、該装着部の該格子の交点に配設され、前記身体部分と前記装着部との密着面に対する垂線方向の前記力学的特性を計測する複数の触覚センサが取得したデータと、該データが取得された前記交点と、を関連付けて前記身体マップを作成するステップと、からなる構成とすることができる。
【0035】
本発明によれば、複数の測定点において、測定する密着面の凹凸にかかわらず、突出した身体部分の座標データと、力学的特性である触覚データとの同定を図ることができるとともに精度よく関連付けることができる方法を提供できる。
なお、本発明はステップに応じたプログラムとして構成してもよい。
【発明の効果】
【0036】
本発明によれば、形状に表す座標データとその形状データに含まれた硬さ・感圧等の触覚データとからなる解剖学的マップ上に差分画像マップを重畳することで、患部切除手術前後の身体形状の差および硬さ状態が、身体のいずれの部分にどの程度生じているかを提示可能となる。
したがって、本発明が提示する数値情報により、再建手術中の例えば乳房形状を医師が修正し易くなり、より理想的な再建手術の支援をすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】本発明の一実施形態に係る全体構成図である。
図2】本発明の一実施形態に係るブロック構成図である。
図3】本発明の一実施形態に係る装着部の一例である。
図4】本発明の一実施形態に係る装着部が装着された場合の触覚センサの状態を表す一例であり、(a)は装着部を装着した状態を側面から見た図で、(b)は(a)の装着部b部分を拡大した図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、図1図4を参照して、本発明の一実施形態について説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る全体構成図である。図2は、本発明の一実施形態に係るブロック構成図である。図3は、本発明の一実施形態に係る装着部の一例である。図4は、本発明の一実施形態に係る装着部が装着された場合の触覚センサの状態を表す一例であり、(a)は装着部を装着した状態を側面から見た図で、(b)は(a)の装着部b部分を拡大した図である。
以下の説明において、異なる図面においても同じ符号を付した構成は同様のものであるとして、その説明を省略する場合がある。
【0039】
本発明に係る突出した身体部分の形状及び力学的特性を相関付けて計測する身体マップ作成装置は、身体部分の形状を3次元的に計測する測定部と、該測定部が取得した前記形状の座標データを蓄積する記憶部と、該身体部分に密着し、所定の間隔を有した格子が描かれた装着部と、該装着部の該格子の交点に配設され、前記身体部分と前記装着部との密着面に対する垂線方向の前記力学的特性を計測する複数の触覚センサと、該触覚センサが取得した触覚データと該触覚データが取得された前記交点の前記座標データとを関連付けて前記身体マップを作成する処理部と、を備えるものであれば、どのような構成であっても構わない。
【0040】
<全体構成の説明>
図1、2を参照すると、本発明の一実施形態に係る身体マップ作成装置100は、被計測者Kの突出した身体部分である乳房Bに密着した装着部30と、この装着部30に配設された触覚センサ40と、被計測者Kの乳房Bの形状をスキャンして3次元的な座標データを取得する測定部10と、座標データを記憶する記憶部20と、座標データおよび触覚センサ40によって取得した触覚データを関連付ける情報処理を行う処理部50と、からなる。
また、処理部50にて情報処理を行った結果を出力する出力部60を付加した構成としても良い。
【0041】
測定部10は、物体の3次元形状を測定するものであり、接触式、非接触式がある。本実施形態では、触覚データの取得を同時に行ことから、接触による触覚データの変化を防ぐ非接触式が好適となる。
【0042】
非接触式の3Dスキャナとは、対象物の凹凸を感知して3Dデータとして取り込むための装置である。例えば、対象物にレーザーを照射して3次元の座標データ(X,Y,Z)を複数取得する。この取得された「点群データ」を三角面の集合体である「ポリゴンデータ」に変換して立体を生成している。
【0043】
3Dスキャンは、多くの商品・サービスが提供されているいわゆる「3Dボディスキャン」(例:ワコール社 https://www.wacoal.jp/smart_try/service/3d/)を適用することができ、特別な仕様が要求されるものではない。
【0044】
記憶部20は、測定部10が取得した座標データを保管するものであり、コンピュータの記憶媒体を適用することができる。
【0045】
装着部30は、突出した身体部分に対して、密着、形状通り延伸、圧迫しない、等の特性を有する形状・素材であることが望ましい。装着部30は、突出した身体部分が乳房Bである場合、ブラジャーに類似した装着具を適用できる。
【0046】
図3,4を併せて参照すると、装着部30は、図3に示すように乳房Bの外縁を囲う枠体32と、枠体32に周縁が装着され、図4(a)に示すように乳房Bのシルエットを保持する、収縮自在の材料の面布34と、から形成してもよい。
【0047】
枠体32は、樹脂もしくは金属の、例えばブラジャーで適用されているワイヤ状のものとすることができる。
一方、面布34は、例えば、先述した伸縮自在なストレッチャブル樹脂フィルムを適用することで、より正確な形状データを担保することができる。
このストレッチャブル樹脂フィルムは、柔らかく、しなやかなフィルム状の絶縁材料で、優れた伸張性を有するものであり、触覚センサの配設にも好適な構成となる。
【0048】
装着部30の面布34の表面には、図3に示すように、所定の間隔を有した格子42が描かれている。格子42の交点44には、図4(a)(b)に示すように、乳房Bと装着部30との密着面BLに対して垂線方向の力学的特性を計測する複数の触覚センサ40が配設されている。
この格子42は、正確な寸法で等間隔に区切られた正方形等の矩形に限定されるものではなく、身体マップ作成時に、座標データと触覚データの同定のため、かつ再建時の支援のために、複数の過不足ない程度の計測点を有すればよい。
【0049】
触覚センサ40は、以下の方式の力覚センサを適宜適用することができる。
電気抵抗式:力が加わった際に一定の関係で電気抵抗値が変化する物体を用いて力の大きさを検出する。
静電容量式:力によって静電容量が一定の関係で変化する構造を利用し、力の大きさを検出する。
圧電式:力が加わった際に電圧を発生させる圧電素子を用いて、力の大きさを検出する。
光学式:力が加わる箇所に模様をプリントしておき、力による模様の変化を光学センサで検出して力の大きさを求める。
【0050】
触覚センサ40が計測したデータは、電気信号として処理部50に送出される。このとき、どの格子42の交点44かを同定できるように、交点44の位置についてもデータとして処理部50に送出される。
【0051】
処理部50は、触覚センサ40が取得した触覚データと、触覚データが取得された交点44の座標データとを関連付けて前記身体マップを作成する。
処理部50は、触覚データには、力学的特性の触覚データと座標データとが含まれており、この座標データと一致する触覚データとの相関付けを行う。
【0052】
処理部50は、マイクロコンピュータで構成されており、演算を行うプロセッサCPU、制御プログラムおよび各種データのリスト、テーブル、マップ等の演算・記録に必要なものを格納するROM、およびCPUによる演算結果などを一時記憶するRAMを有する。
処理部50は、不揮発性のメモリを備えており、必要なデータなどをこの不揮発性メモリに保存する。不揮発性メモリは、書き換え可能なROMであるEEPROM、または電源がオフにされていても保持電流が供給されて記憶を保持するバックアップ機能付きのRAMで構成することができる。
なお、記憶部20は、処理部50を備えたマイクロコンピュータの一部として構成することもできる。
【0053】
出力部60は、通常のモニターやプリンターを適用することができる。出力部60から出力されるデータはグラフやテーブルなどに変換して、医師や被測定者Kが見やすいように加工することが好ましい。
なお、出力を画像化して、それぞれの座標の触覚データをレベルごとに色付けすることで、測定結果を把握するための利便性を向上させることができる。
【0054】
<本実施形態の利用についての説明>
(1)乳房他、突出した身体部分の再建手術の支援
本実施形態によれば、形状に係る座標データとその座標データに含まれた硬さ・感圧データとからなる解剖学的マップ上に差分画像マップを重畳することで、患部切除手術前後の身体形状の差および硬さ状態が、身体のいずれの部分にどの程度生じているかを提示可能となる。これに伴い、本発明が提示する数値情報により、再建手術中の例えば乳房形状を医師が修正し易くなり、より理想的な再建手術の支援が可能となる。
【0055】
(2)異常検出の支援
本実施形態によれば、取得した身体マップのマッピングデータと、統計的に所定の範囲を有する触覚データと、の関係を示す判定マップとの比較によって、異常値の判定(例えばガン)、重力による座標データの変化とそれに伴う硬さ・感圧データの変化等の情報処理・評価の診断支援をすることができる。
さらに医学的な知見や、これまでの診断状況を加味した判定マップのデータベースを構築することによって、エキスパートシステムに類似した判断・閾値の設定を可能とする。
【0056】
(3)再建手術前後の視覚化
本実施形態によれば、再建手術前後の身体マップを視覚化、例えば触覚データとしての圧力状態をレベルによって色付けした身体マップを生成することで、再建手術後の再現性を、被計測者Kが自ら確認することができる。
【0057】
(4)再建手術用の部位の製作
本実施形態によれば、再建手術用に製作される部位の形状および触覚に基づく硬さ、圧力、弾力等について、予め、適正な材料の選択、構造設計を可能として、再建手術を受ける被計測者Kの要望を満足させた部位を製作できる。
【0058】
(5)美容整形手術への応用
本実施形態によれば、蓄積された複数の形状に係る座標データ及び触覚データの統計的な処理によって、乳房等の突出した身体部分の構造的シミュレーションモデルを構築することができる。
この構造的シミュレーションモデルは、例えば、乳房Bを大きくする豊胸手術などの事前検討に利用することができる。
なお、構造的シミュレーションモデルとしては、有限要素法や境界要素法などを適用することができる。
【0059】
以上説明したように、本発明は、形状に表す座標データとその形状データに含まれた硬さ・感圧等の触覚データとからなる解剖学的マップ上に差分画像マップを重畳することで、患部切除手術前後の身体形状の差および硬さ状態が、身体のいずれの部分にどの程度生じているかを提示可能となる。
これによって、本発明が提示する数値情報により、再建手術中の例えば乳房形状を医師が修正し易くなり、より理想的な再建をすることが可能となる。
【符号の説明】
【0060】
10・・・測定部
20・・・記憶部
30・・・装着部
32・・・枠体
34・・・面布
40・・・触覚センサ
42・・・格子
44・・・交点
50・・・処理部
60・・・出力部
100・・・身体マップ作成装置
K・・・被計測者
B・・・乳房(突出した身体部分)
BL・・・密着面
図1
図2
図3
図4