(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023146147
(43)【公開日】2023-10-12
(54)【発明の名称】電子部品
(51)【国際特許分類】
H01F 27/29 20060101AFI20231004BHJP
H01F 17/00 20060101ALI20231004BHJP
H01F 17/04 20060101ALI20231004BHJP
H01G 4/30 20060101ALI20231004BHJP
【FI】
H01F27/29 123
H01F17/00 D
H01F17/04 A
H01G4/30 201F
H01G4/30 513
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022053176
(22)【出願日】2022-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(72)【発明者】
【氏名】下保 真志
(72)【発明者】
【氏名】戸沢 洋司
(72)【発明者】
【氏名】生出 章彦
(72)【発明者】
【氏名】加藤 大貴
(72)【発明者】
【氏名】岸本 緑
(72)【発明者】
【氏名】鷹巣 哲
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 洋
(72)【発明者】
【氏名】高橋 瑠唯
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 兼太
(72)【発明者】
【氏名】吉野 真
(72)【発明者】
【氏名】海老名 和広
【テーマコード(参考)】
5E001
5E070
5E082
【Fターム(参考)】
5E001AF06
5E070AA01
5E070AB01
5E070CB13
5E070CB18
5E070EA01
5E070EB04
5E082AA01
5E082BC33
5E082GG10
5E082GG11
5E082GG28
5E082JJ02
5E082JJ12
5E082JJ23
(57)【要約】
【課題】応力を緩和して素体にクラックが生じることを抑制できる電子部品を提供する。
【解決手段】電子部品1は、素体2のうち、端面2aを覆う本体部21、及び側面2cへ回り込む回込部22を有する外部電極3を備える。この外部電極3の回込部22において、第2の距離D2は、第1の距離D1及び第3の距離D3より大きく、第4の距離D4は、第3の距離D3及び第5の距離D5より大きい。この場合、回込部22は、第2の部分42及び第4の部分44においてY軸方向へ突出するような凸凹形状を有する。この場合、回込部22が素体2に作用する応力を分散し易くなる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の方向に対向する一対の第1の面、前記第1の方向と直交する第2の方向に対向する一対の第2の面、及び第1の方向及び第2の方向に直交する第3の方向に対向する一対の第3の面を有する素体と、
前記素体のうち、少なくとも前記第2の面を覆う本体部、及び前記第3の面へ回り込む第1の回込部を有する外部電極と、を有し、
前記外部電極の前記回込部は、前記第1の方向における一方側から他方側へ向かって順に、前記第2の方向において第1の距離を有する第1の部分、第2の距離を有する第2の部分、第3の距離を有する第3の部分、第4の距離を有する第4の部分、及び第5の距離を有する第5の部分を有し、
前記第2の距離は、前記第1の距離及び前記第3の距離より大きく、
前記第4の距離は、前記第3の距離及び前記第5の距離より大きい、電子部品。
【請求項2】
前記第2の部分、及び前記第4の部分は、前記素体の前記第1の方向における中央位置を挟んで配置される、請求項1に記載の電子部品。
【請求項3】
前記第2の部分及び前記第4の部分の前記第3の方向における厚みは、前記第1の部分、前記第3の部分、及び前記第5の部分の厚みより大きい、請求項1又は2に記載の電子部品。
【請求項4】
前記第2の部分及び前記第4の部分は、前記素体の前記第1の方向における中央位置よりも前記第1の面に近い位置に配置される、請求項1~3の何れか一項に記載の電子部品。
【請求項5】
前記素体内に設けられたコイルを更に備え、
前記コイルのコイル部は、前記第3の方向から見て、前記第2の部分、及び前記第4の部分と重ならない、請求項1~4の何れか一項に記載の電子部品。
【請求項6】
前記外部電極は、一対の前記第3の面に回り込む一対の前記第1の回込部と、一対の前記第1の面に回り込む一対の第2の回込部と、を有し、
一対の前記第1の回込部において、前記第2の距離が、前記第1の距離及び前記第3の距離より大きく、前記第4の距離が、前記第3の距離及び前記第5の距離より大きい、請求項1~5の何れか一項に記載の電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
素体と、当該素体の面に金属ペーストを焼き付けることで形成した外部電極と、を備える電子部品が知られている(たとえば、特許文献1)。特許文献1において、外部電極は、素体の所定の面を覆う本体部と、所定の面と直交する面へ回り込む回込部を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような構成を有する電子部品では、素体に対して応力が作用することで、素体にクラックが生じる場合がある。素体にクラックが生じる場合、電子部品としての信頼性が損なわれるという問題がある。
【0005】
本発明の一態様は、応力を緩和して素体にクラックが生じることを抑制できる電子部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一つの態様における電子部品は、第1の方向に対向する一対の第1の面、前記第1の方向と直交する第2の方向に対向する一対の第2の面、及び第1の方向及び第2の方向に直交する第3の方向に対向する一対の第3の面を有する素体と、素体のうち、少なくとも第2の面を覆う本体部、及び第3の面へ回り込む第1の回込部を有する外部電極と、を有し、外部電極の回込部は、第1の方向における一方側から他方側へ向かって順に、第2の方向において第1の距離を有する第1の部分、第2の距離を有する第2の部分、第3の距離を有する第3の部分、第4の距離を有する第4の部分、及び第5の距離を有する第5の部分を有し、第2の距離は、第1の距離及び第3の距離より大きく、第4の距離は、第3の距離及び第5の距離より大きい。
【0007】
この電子部品は、素体のうち、少なくとも第2の面を覆う本体部、及び第3の面へ回り込む第1の回込部を有する外部電極を備える。この外部電極の回込部において、第2の距離は、第1の距離及び第3の距離より大きく、第4の距離は、第3の距離及び第5の距離より大きい。この場合、第1の回込部は、第2の部分及び第4の部分において第2の方向へ突出するような凸凹形状を有する。この場合、第1の回込部が素体に作用する応力を分散し易くなる。以上より、応力を緩和して素体にクラックが生じることを抑制できる。
【0008】
第2の部分、及び第4の部分は、素体の第1の方向における中央位置を挟んで配置されてよい。この場合、突出量が大きい第2の部分及び第4の部分を第1の方向において分散して配置することができる。これにより、素体の応力の分散性能を第1の方向において均等に得ることができる。
【0009】
第2の部分及び第4の部分の第3の方向における厚みは、第1の部分、第3の部分、及び第5の部分の厚みより大きくてよい。この場合、第2の部分及び第4の部分の厚みを確保することで、更に応力を分散し易くできる。
【0010】
第2の部分及び第4の部分は、素体の第1の方向における中央位置よりも第1の面に近い位置に配置されてよい。この場合、応力が集中し易い箇所である第1の面と第3の面との間の角部付近に凹凸形状を設けることができるため、当該箇所での応力を分散し易くなる。
【0011】
電子部品は、素体内に設けられたコイルを更に備え、コイルのコイル部は、第3の方向から見て、第2の部分、及び第4の部分と重ならなくてよい。この場合、第1の回込部とコイルとが重なることで浮遊容量が発生することを抑制することができる。そのため、自己共振周波数を高周波まで延びるようにすることで、広帯域でのノイズ対策を可能とすることができる。
【0012】
外部電極は、一対の第3の面に回り込む一対の第1の回込部と、一対の第1の面に回り込む一対の第2の回込部と、を有し、一対の第1の回込部において、第2の距離が、第1の距離及び第3の距離より大きく、第4の距離が、第3の距離及び第5の距離より大きくてよい。この場合、一対の第1の回込部の両側において、応力を分散させ易い構造とすることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、応力を緩和して素体にクラックが生じることを抑制できる電子部品を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本実施形態における電子部品の斜視図である。
【
図2】
図1に示すII-II線に沿った断面図である。
【
図5】外部電極とコイルとの位置関係を示す図である。
【
図8】電子部品に作用する応力をシミュレーションするための基板のたわませ方を示す図である。
【
図10】シミュレーション結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施形態が詳細に説明される。図面の説明において、同一又は同等の要素には同一符号が用いられ、重複する説明は省略される。
【0016】
まず、
図1~
図3を参照して、本実施形態における電子部品1の概略構成を説明する。
図1は、本実施形態における電子部品1の斜視図である。
図2は、
図1のII-II線に沿った断面図である。
図3(a)は電子部品1をZ軸方向の正側から見た平面図である。
図3(b)は電子部品1をZ軸方向の負側から見た底面図である。X軸方向、Y軸方向、及び、Z軸方向は、互いに交差する方向である。本実施形態における電子部品は、複数の層をZ軸方向に積層することによって形成されている。層間の境界は、視認できない程度に一体化されている。本実施形態において、X軸方向、Y軸方向、及び、Z軸方向は、互いに直交している。特に限定されないが、本実施形態では、X軸方向が請求項における「第1の方向」に該当し、Y軸方向が請求項における「第2の方向」に該当し、Z軸方向が請求項における「第3の方向」に該当する。
【0017】
図1に示されているように、電子部品1は、素体2と、外部電極3,4とを備えている。電子部品1は、たとえば、電子機器にはんだ実装される。電子機器は、たとえば、回路基板又は電子部品を含んでいる。本実施形態において、素体2は、Z軸方向に積層された複数の素体層によって形成されている。
【0018】
素体2は、たとえば、絶縁性を有する。素体2は、たとえば磁性材料により構成されている。磁性材料は、たとえば、Ni-Cu-Zn系フェライト材料、Ni-Cu-Zn-Mg系フェライト材料、及び、Ni-Cu系フェライト材料から選択された少なくとも一つを含んでいる。素体2を構成する磁性材料には、Fe合金等が含まれていてもよい。素体2は、非磁性材料から構成されていてもよい。非磁性材料は、たとえば、ガラスセラミック材料、及び、誘電体材料から選択された少なくとも一つを含んでいる。
【0019】
素体2は、たとえば、直方体形状を呈している。直方体形状は、角部及び稜線部が面取りされている直方体の形状、角部及び稜線部が丸められている直方体の形状を含んでいる。素体2の形状は、直方体形状に限定されない。たとえば、素体2は円柱形状を呈していてもよい。
【0020】
素体2は、その外表面として、一対の端面2a,2b(
図2参照)と、一対の側面2c,2dと、一対の側面2e,2f(
図1参照)とを有している。たとえば、各側面2c,2dの面積は、端面2a、端面2b、側面2e、及び、側面2fのいずれの面積よりも大きい。たとえば、一対の端面2a,2bと、一対の側面2c,2dと、一対の側面2e,2fとは、それぞれ平面である。
【0021】
一対の端面2a,2bは、Y軸方向で互いに対向している。一対の側面2c,2dは、Z軸方向で互いに対向している。一対の側面2e,2fは、X軸方向で互いに対向している。素体2は、たとえば、Y軸方向の長さに比してZ軸方向及びX軸方向の長さが小さい。素体2は、たとえば、X軸方向及びY軸方向の長さに比してZ軸方向の長さが小さい。素体2のX軸方向、Y軸方向、及び、Z軸方向における長さ比はこれに限定されない。Y軸方向は、たとえば長手方向である。本実施形態では、X軸方向が請求項における「第1の方向」に該当し、Y軸方向が請求項における「第2の方向」に該当し、Z軸方向が請求項における「第3の方向」に該当する。本実施形態では、側面2e,2fが請求項における「第1の面」に該当し、端面2a,2bが請求項における「第2の面」に該当し、側面2c,2dが請求項における「第3の面」に該当する。
【0022】
一対の外部電極3,4は、互いに離間して素体2の外表面に配置されている。一対の外部電極3,4は、Y軸方向において互いに対向している。一対の外部電極3,4は、Y軸方向において互いに離れている。
【0023】
一対の外部電極3,4は、たとえば後述の手法によって形成される。一対の外部電極3,4は、たとえば、金属材料から構成されている。金属材料は、たとえば、銅、銀、金、ニッケル、又はクロムである。一対の外部電極3,4は、たとえば、電極層にめっき処理が施されることによって形成されている。電極層は、たとえば、導電性ペーストからなる。導電性ペーストは、たとえば、ディップ法、印刷法、又は転写法によって付与されている。めっき処理は、たとえば、電解めっき又は無電解めっきである。このめっき処理によって、導電性ペーストの外表面にめっき層が形成される。
【0024】
図2及び
図3に示すように、外部電極3は、たとえば、本体部21、一対の回込部22,23(第1の回込部)と、一対の回込部24,26(第2の回込部、
図1参照)を含んでいる。外部電極3の本体部21は、端面2aを覆うように設けられている。外部電極3の回込部22,23は、一対の側面2c,2dに回り込むように設けられている。外部電極3の回込部24,26は、一対の側面2e,2fに回り込むように設けられている。外部電極3の本体部21は、たとえば、端面2aの全面を覆っている。外部電極3の回込部22,23,24,26は、たとえば、一対の側面2c,2dと一対の側面2e,2fとの一部を覆っている。外部電極3の本体部21は、外部電極3の回込部22,23,24,26に連結されている。各側面2c,2dにおいて、外部電極3の回込部22,23に覆われている領域は、凸凹形状をなしている(詳細は後述)。各側面2e,2fにおいて、外部電極3の回込部24,26に覆われている領域は、たとえば、矩形状を呈している。
【0025】
外部電極4は、たとえば、本体部31、一対の回込部32,33と、一対の回込部34,36(
図1参照)を含んでいる。外部電極4の本体部31は、端面2bを覆うように設けられている。外部電極4の回込部32,33は、一対の側面2c,2dに回り込むように設けられている。外部電極4の回込部34,36は、一対の側面2e,2fに回り込むように設けられている。外部電極4の本体部31は、たとえば、端面2bの全面を覆っている。外部電極4の回込部32,33,34,36は、たとえば、一対の側面2c,2dと一対の側面2e,2fとの一部を覆っている。外部電極4の本体部31は、外部電極4の回込部32,33,34,36に連結されている。各側面2c,2dにおいて、外部電極4の回込部32,33に覆われている領域は、凸凹形状をなしている(詳細は後述)。各側面2e,2fにおいて、外部電極4の回込部34,36に覆われている領域は、たとえば、矩形状を呈している。
【0026】
電子部品1は、さらに、
図2及び
図3に示されているように、素体2の内部に配置されたコイル10を備えている。コイル10は、Z軸方向に延在するコイル軸AXを有している。すなわち、Z軸方向は、コイル軸方向に相当する。電子部品1を基板100の電極パッド101,102に実装した場合、コイル10は、コイル軸AXが基板100の上面100aと平行になる。コイル10の外部電極3,4は、はんだ103,104を介して電極パッド101,102に接続される。
【0027】
図2(a)に示すように、コイル10は、各層に形成されたコイル導体11を接続することによって螺旋状に構成されたコイル部12と、コイル部12から外部電極3へ引き出される引出部13と、コイル部12から外部電極4へ引き出される引出部14と、を備える。コイル導体11は、たとえば、金属材料から構成されている。金属材料は、たとえば、銅、銀、金、ニッケル、又はクロムである。
図2(a)に示す例では、コイル10のコイル部12は、Z軸方向から見て円環状の形状を有する。当該コイル部12は、各層に形成された円弧状の導体パターンを螺旋状に積層方向に接続することによって構成される。
【0028】
次に
図3(a)を参照して、外部電極3のZ軸方向の正側の回込部22の構成について説明する。なお、
図3(b)に示すように、外部電極3のZ軸方向の負側の回込部23は、回込部22と同趣旨の構成を有しているため、説明を省略する。
図3(a)に示すように、外部電極4の回込部32は、回込部22と左右対称な構成を有しているため、説明を省略する。
図3(b)に示すように、外部電極4の回込部33は、回込部23と左右対称な構成を有しているため、説明を省略する。すなわち、回込部22の各部分41,42,43,44,45の位置関係は、他の回込部23,32,33についても成り立つ。
【0029】
外部電極3の回込部22は、X軸方向における正側から負側へ向かって順に、Y軸方向において第1の距離D1を有する第1の部分41、第2の距離D2を有する第2の部分42、第3の距離D3を有する第3の部分43、第4の距離D4を有する第4の部分44、及び第5の距離D5を有する第5の部分45を有する。この場合、第2の距離D2は、第1の距離D1及び第3の距離D3より大きい。また、第4の距離D4は、第3の距離D3及び第5の距離D5より大きい。下限値は特に限定されないが、距離D2,D4の大きさは、他の距離D1,D3,D5の大きさに比して100%より大きいことが好ましく、105%以上であることがより好ましい。上限値は特に限定されないが、距離D2,D4の大きさは、他の距離D1,D3,D5の大きさに比して150%以下であることが好ましく、130%以下であることがより好ましい。
【0030】
本実施形態においては、回込部22は、Y軸方向の正側の縁部22aがY軸方向の正側に突出する突出部46,47を有する。突出部46,47は、Y軸方向の正側へ凸となるような湾曲形状を有している。突出部46と突出部47とは、X軸方向において互いに離間するように配置される。また、突出部46と突出部47との間には、縁部22aがY軸方向の負側へ窪むように形成された凹部48が形成される。ここでは、凹部48は、Y軸方向の負側へ凸となるような湾曲形状を有している。
【0031】
このような構成において、X軸方向の正側の側面2eに対応する部分が、第1の部分41に該当する。突出部46において最もY軸方向の正側に位置する極大部に対応する部分が、第2の部分42に該当する。凹部48において最もY軸方向の負側に位置する極小部に対応する部分が、第3の部分43に該当する。突出部47において最もY軸方向の正側に位置する極大部に対応する部分が、第4の部分44に該当する。X軸方向の負側の側面2fに対応する部分が、第5の部分45に該当する。
【0032】
第2の部分42、及び第4の部分44は、素体2のX軸方向における中央位置を挟んで配置される。すなわち、突出部46及び第2の部分42は、X軸方向における中心線CL1よりもX軸方向の正側に配置される。突出部47及び第4の部分44は、中心線CL1よりもX軸方向の負側に配置される。
【0033】
第2の部分42は、素体2のX軸方向における中央位置よりも側面2eに近い位置に配置される。中心線CL1と側面2eとの間のX軸方向の中心線CL2を設定した場合、第2の部分42は、中心線CL2よりもX軸方向における正側に配置される。第4の部分44は、素体2のX軸方向における中央位置よりも側面2fに近い位置に配置される。中心線CL1と側面2fとの間のX軸方向の中心線CL3を設定した場合、第4の部分44は、中心線CL3よりもX軸方向における負側に配置される。
【0034】
なお、第2の部分42のX軸方向における位置は特に限定されないが、例えば、素体2のX軸方向の幅寸法W1を100%とした場合、第2の部分42は、中心線CL2から20%の寸法の範囲内に入っていればよい。第4の部分44は、中心線CL3から20%の寸法の範囲内に入っていればよい。
【0035】
第2の部分42及び第4の部分44のZ軸方向における厚みは、第1の部分41、第3の部分43、及び第5の部分45の厚みより大きい。具体的には、
図2に示すように、第2の部分42の厚みt1は、Z軸方向における正側の側面2cと第2の部分42の上面との間のZ軸方向における寸法である。第3の部分43の厚みt2は、Z軸方向における正側の側面2cと第3の部分43の上面との間のZ軸方向における寸法である。たとえば、厚みt2は、15~35μmである。これに対し、厚みt1は、厚みt2に対して100~170%である。
【0036】
図3(a)に示すように、コイル10のコイル部12は、Z軸方向から見て、第2の部分42、及び第4の部分44と重ならない。コイル部12のY軸方向の負側の領域は、突出部46,47及び凹部48よりもY軸方向の正側に配置された状態を維持しながら、凹部48に入り込むように配置されている。コイル部12のY軸方向の正側の領域も同様である。
【0037】
次に、
図4を参照して、上述のような外部電極3を素体2に形成する方法の一例について説明する。
図4(a)に示すように、複数の素体2をシリコン製の整列治具60に挿入する。端面2a側に外部電極3を形成する場合、端面2aが下側になるように、整列治具60の保持孔61に挿入する。
図4(c)に示すように、保持孔61は、側面2c,2d,2e,2fと擦れる保持部61a,61b,61c,61dを有する。素体2の擦れた部分には、シロキサンが付着することで疎水性を持たせる。素体2のうち、保持孔61と密着する部分では、突出部46,47が形成されにくい箇所となる。保持孔61の内周面のうち、保持部61a,61b,61c,61d以外の箇所は、素体2との間に隙間を有する。
図4(b)に示すように、複数の素体2を整列治具60で保持した状態で、電極ペースト受け65上に配置された電極ペースト66に素体2を浸漬させる。このとき、素体2のうち、整列治具60より下側に露出している部分に電極ペースト66が付着する。更に、保持孔61で保持されている箇所のうち、密着していない箇所に電極ペースト66が入り込み突出部46,47が形成される。
【0038】
次に、本実施形態に係る電子部品1の作用・効果について説明する。なお、作用・効果の説明は外部電極3の回込部22について主に説明するが、他の回込部23,32,33においても同様な作用・効果が成り立つ。
【0039】
この電子部品1は、素体2のうち、端面2aを覆う本体部21、及び側面2cへ回り込む回込部22を有する外部電極3を備える。この外部電極3の回込部22において、第2の距離D2は、第1の距離D1及び第3の距離D3より大きく、第4の距離D4は、第3の距離D3及び第5の距離D5より大きい。この場合、回込部22は、第2の部分42及び第4の部分44においてY軸方向へ突出するような凸凹形状を有する。この場合、回込部22が素体2に作用する応力を分散し易くなる。以上より、応力を緩和して素体2にクラックが生じることを抑制できる。
【0040】
第2の部分42、及び第4の部分44は、素体2のY軸方向における中央位置を挟んで配置されてよい。この場合、突出量が大きい第2の部分42及び第4の部分44をX軸方向において分散して配置することができる。これにより、素体2の応力の分散性能をX軸方向において均等に得ることができる。
【0041】
第2の部分42及び第4の部分44のZ軸方向における厚みは、第1の部分41、第3の部分43、及び第5の部分45の厚みより大きくてよい。この場合、第2の部分42及び第4の部分44の厚みを確保することで、更に応力を分散し易くできる。
【0042】
第2の部分42及び第4の部分44は、素体2のX軸方向における中央位置よりも側面2e,2fに近い位置に配置されてよい。この場合、応力が集中し易い箇所である2e,2fと側面2cとの間の角部付近に凹凸形状を設けることができるため、当該箇所での応力を分散し易くなる。
【0043】
電子部品1は、素体2内に設けられたコイル10を更に備え、コイル10のコイル部12は、Z軸方向から見て、第2の部分42、及び第4の部分44と重ならなくてよい。この場合、回込部22とコイル10のコイル部12とが重なることで浮遊容量が発生することを抑制することができる。そのため、自己共振周波数を高周波まで延びるようにすることで、広帯域でのノイズ対策を可能とすることができる。
【0044】
例えば、
図5(c)に示す比較例では、外部電極203,204の中央位置に突出部246が形成されている。この場合、
図5(d)に示すように、コイル部12の端部付近(領域E1)が外部電極3,4の突出部246と重なる。この場合、領域E1にて浮遊容量が発生する。この場合、自己共振周波数(SRF)が低周波側にシフトしてしまいノイズ対策可能な周波数領域が狭くなってしまう。これに対し、
図5(a)(b)に示すように、コイル10のコイル部12は、突出部46,47間の凹部48に配置されており、外部電極3,4と重ならない。そのため、比較例のような浮遊容量が発生しないため、自己共振周波数を高周波まで延びるようにすることで、広帯域でのノイズ対策を可能とすることができる。
【0045】
外部電極3は、一対の側面2c,2dに回り込む一対の回込部22,23と、一対の側面2e,2dに回り込む一対の回込部24,26と、を有し、一対の回込部22,23において、第2の距離D2が、第1の距離D1及び第3の距離D3より大きく、第4の距離D4が、第3の距離D3及び第5の距離D5より大きくてよい。この場合、一対の回込部22,23の両側において、応力を分散させ易い構造とすることができる。
【0046】
次に
図6~
図10を参照して、実施例と比較例1,2のシミュレーション結果について説明する。
図6は、比較例1に係る電子部品150を示す斜視図である。
図6に示すように、比較例1では、外部電極153,154の回込部が突出部及び凹部を有しておらず、縁部153a,154aがX軸方向に直線状に延びている。
図7は、比較例2に係る電子部品200を示す斜視図である。
図7に示すように、比較例2では、外部電極203,204の回込部がX軸方向の中央位置に突出部246を有する。
【0047】
図8に示すように、実施例及び比較例1,2に係る電子部品1,150,200を実装した基板100に対してZ軸方向の負側へたわませ、その時に電子部品1,150,200に作用する応力をシミュレーションによって測定した。
【0048】
図9(a)~
図9(c)は素体2に作用する応力を示すシミュレーション結果を示す画像である。
図9(a)~
図9(c)は素体2を実装面側から見た画像である。
図9(a)は比較例1の結果を示し、
図9(b)は比較例2の結果を示し、
図9(c)は実施例の結果を示す。
図9(a)~
図9(c)の外部電極におけるエッジ部の領域E2に示すように、比較例1が最も応力が高く、比較例2が次に応力が高く、実施例が最も応力が低い。
図10(a)に示すように、比較例2の応力は比較例1に対して18%低減され、実施例の応力は比較例2に対して5%低減される。
【0049】
図9(d)~
図9(f)は素体2及び外部電極に作用する応力を示すシミュレーション結果を示す画像である。
図9(d)~
図9(f)は素体2を実装面側から見た画像である。
図9(d)は比較例1の結果を示し、
図9(e)は比較例2の結果を示し、
図9(f)は実施例の結果を示す。
図10(b)に示すように、比較例2の応力は比較例1に対して26%低減され、実施例の応力は比較例2に対して18%低減される。
【0050】
本発明は、上述の実施形態に限定されるものではない。
【0051】
外部電極の回込部の形状は、
図3に示すものに限定されない。例えば、凹部48は湾曲した形状を有していなくともよく、
図5(a)に示すように、凹部48が直線状の形状を有してもよい。また、突出部46,47も湾曲した形状を有していなくともよく、頂部付近が直線状の形状を有してもよい。
【0052】
第2の部分42及び第4の部分44のX軸方向の位置は特に限定されない。例えば、第2の部分42及び第4の部分44を中心線CL2,CL3よりも中心線CL1側に配置してもよい。また、第2の部分42及び第4の部分44の両方を、中心線CL1に対してX軸方向における一方側に配置してよい。
【0053】
上述の実施形態ではコイル部がZ軸から見て円環状の形状を有しているが、コイル部の形状は特に限定されず、矩形環状の形状や多角形環状の形状を有してもよい。
【符号の説明】
【0054】
1…電子部品、2…素体、2e,2f…側面(第1の面)、2a,2b…端面(第2の面)、2c,2d…側面(第3の面)、10…コイル、12…コイル部、3,4…外部電極、21,31…本体部、22,23,32,33…回込部(第1の回込部)、24,26,34,36…回込部(第2の回込部)、41…第1の部分、42…第2の部分、43…第3の部分、44…第4の部分、45…第5の部分。