(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023146152
(43)【公開日】2023-10-12
(54)【発明の名称】マップ作成装置、マップ作成装置のためのコンピュータプログラム、及び、トポロジカルマップ用のデータ構造
(51)【国際特許分類】
G05D 1/02 20200101AFI20231004BHJP
【FI】
G05D1/02 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022053184
(22)【出願日】2022-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】出口 秀輝
(72)【発明者】
【氏名】田口 峻
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 徳晃
【テーマコード(参考)】
5H301
【Fターム(参考)】
5H301CC10
5H301GG09
(57)【要約】
【課題】計画した移動経路上に障害物が置かれるような場合でも、目的地まで移動体を移動させるための技術が必要である。
【解決手段】複数のノードと、ノード間の接続を示すエッジと、で表現されるトポロジカルマップを作成するマップ作成装置は、前記複数のノードの各々に、そのノードにおける計測センサの複数の姿勢に対応したセンサ情報を追加する処理、を実行するように構成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のノードと、ノード間の接続を示すエッジと、で表現されるトポロジカルマップを作成するマップ作成装置であって、
前記複数のノードの各々に、そのノードにおける計測センサの複数の姿勢に対応したセンサ情報を追加する処理、を実行するように構成されている、マップ作成装置。
【請求項2】
複数のノードと、ノード間の接続を示すエッジと、で表現されるトポロジカルマップを作成するマップ作成装置であって、
マップ生成部と、
マップ最適化部と、を備えており、
前記マップ生成部は、
計測センサを用いて時系列に連続した複数のセンサ情報を取得する取得処理と、
前記複数のセンサ情報から選択したセンサ情報を含むノードを前記トポロジカルマップに登録する登録処理と、を実行するように構成されており、
前記マップ最適化部は、
前記マップ生成部が登録した複数のノードの各々に、そのノードにおける前記計測センサの複数の姿勢に対応したセンサ情報を追加する追加処理と、
類似したセンサ情報を有するノードを統合する統合処理と、を実行するように構成されている、マップ作成装置。
【請求項3】
前記マップ生成部の前記登録処理は、
登録済みのセンサ情報から未登録のセンサ情報への移動体の制御入力を推定することと、
前記登録済みのセンサ情報から前記制御入力に基づいて前記移動体が移動した後の位置で取得されると予測される予測センサ情報を推定することと、
前記未登録のセンサ情報と前記予測センサ情報の類似度が閾値を超えたときに、前記未登録のセンサ情報を含むノードを前記トポロジカルマップに登録することと、を有している、請求項2に記載のマップ作成装置。
【請求項4】
前記計測センサがカメラである、請求項2又は3に記載のマップ作成装置。
【請求項5】
前記計測センサが全方位カメラであり、
前記マップ最適化部の前記追加処理は、
前記マップ生成部が登録した複数のノードの各々に、そのノードにおいて前記全方位カメラの方向を変えた複数の画像を追加すること、を有している、請求項4に記載のマップ作成装置。
【請求項6】
複数のノードと、ノード間の接続を示すエッジと、で表現されるトポロジカルマップを作成するマップ作成装置のためのコンピュータプログラムであって、
前記複数のノードの各々に、そのノードにおける計測センサの複数の姿勢に対応したセンサ情報を追加する処理を、前記マップ作成装置に実行させる、コンピュータプログラム。
【請求項7】
複数のノードと、ノード間の接続を示すエッジと、で表現されるトポロジカルマップを作成するマップ作成装置のためのコンピュータプログラムであって、前記マップ作成装置を、以下の各部、即ち、
マップ生成部と、
マップ最適化部と、として機能させるように構成されており、
前記マップ生成部は、
計測センサを用いて時系列に連続した複数のセンサ情報を取得する取得処理と、
前記複数のセンサ情報から選択したセンサ情報を含むノードを前記トポロジカルマップに登録する登録処理と、を実行するように構成されており、
前記マップ最適化部は、
前記マップ生成部が登録した複数のノードの各々に、そのノードにおける前記計測センサの複数の姿勢に対応したセンサ情報を追加する追加処理と、
類似したセンサ情報を有するノードを統合する統合処理と、を実行するように構成されている、コンピュータプログラム。
【請求項8】
複数のノードと、ノード間の接続を示すエッジと、で表現されるトポロジカルマップ用のデータ構造であって、
前記複数のノードの各々には、そのノードにおける計測センサの複数の姿勢に対応したセンサ情報が保持されている、トポロジカルマップ用のデータ構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書が開示する技術は、マップ作成装置、マップ作成装置のためのコンピュータプログラム、及び、トポロジカルマップ用のデータ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
移動体を目的地まで自律移動させるためには、対象領域を表現するマップを用いて移動体の移動経路を計画する必要がある。このようなマップとしてトポロジカルマップを利用する技術が提案されている。トポロジカルマップは、計測センサで計測されたセンサ情報を含む複数のノードと、ノード間の接続を示すエッジと、で表現される。センサ情報の一例として、カメラで取得された画像を利用する技術が知られている。
【0003】
このようなトポロジカルマップは、移動体を運用するのに先立って作成される。トポロジカルマップを作成する技術の一例が非特許文献1~3に開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】N. Savinov, etc., International Conference on Learning Representations, 2018, “Semi-parametric Topological Memory for Navigation”
【非特許文献2】A. Taniguchi, etc., International Conference on Computer Vision, 2021, “Pose Invariant Topological Memory for Visual Navigation”
【非特許文献3】X. Meng, etc., International Conference on Robotics and Automation, 2020, “Scaling Local Control to Large-Scale Topological Navigation”
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
計画した移動経路上に障害物が置かれることがある。このような場合でも、目的地まで移動体を移動させるための技術が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書は、複数のノードと、ノード間の接続を示すエッジと、で表現されるトポロジカルマップを作成するマップ作成装置を提供することができる。このマップ作成装置は、前記複数のノードの各々に、そのノードにおける計測センサの複数の姿勢に対応したセンサ情報を追加する処理、を実行するように構成されている。このマップ作成装置が作成する前記トポロジカルマップでは、前記複数のノードの各々に前記計測センサの複数の姿勢に対応した前記センサ情報が保持されている。このため、このようなトポロジカルマップを利用して自律移動する移動体は、ノード上で回転することが可能である。この結果、前記移動体は、移動経路上に障害物が置かれたとしても、異なるルートを採用して目的地に到達することが可能になる。
【0007】
本明細書は、複数のノードと、ノード間の接続を示すエッジと、で表現されるトポロジカルマップを作成するマップ作成装置を提供することができる。このマップ作成装置は、マップ生成部と、マップ最適化部と、を備えることができる。前記マップ生成部は、計測センサを用いて時系列に連続した複数のセンサ情報を取得する取得処理と、前記複数のセンサ情報から選択したセンサ情報を含むノードを前記トポロジカルマップに登録する登録処理と、を実行するように構成されている。前記マップ最適化部は、前記マップ生成部が登録した複数のノードの各々に、そのノードにおける前記計測センサの複数の姿勢に対応したセンサ情報を追加する追加処理と、類似したセンサ情報を有するノードを統合する統合処理と、を実行するように構成されている。このマップ作成装置が作成する前記トポロジカルマップでは、前記複数のノードの各々に前記計測センサの複数の姿勢に対応した前記センサ情報が保持されている。このため、このようなトポロジカルマップを利用して自律移動する移動体は、ノード上で回転し、移動経路を計画することが可能である。この結果、前記移動体は、移動経路上に障害物が置かれたとしても、異なるルートを採用して目的地に到達することが可能になる。さらに、このマップ作成装置が作成する前記トポロジカルマップでは、前記マップ最適化部によってノードが統合されることにより、統合されたノードでは他のノードへのエッジが多く張られることとなる。このため、このようなトポロジカルマップを利用して自律移動する前記移動体は、目的地までのルートをより多く計画することができるので、より短い距離で目的地に移動することが可能となる。
【0008】
前記マップ生成部の前記登録処理は、登録済みのセンサ情報から未登録のセンサ情報への移動体の制御入力を推定することと、前記登録済みの前記センサ情報から前記制御入力に基づいて前記移動体が移動した後の位置で取得されると予測される予測センサ情報を推定することと、前記未登録のセンサ情報と前記予測センサ情報の類似度が閾値を超えたときに、前記未登録のセンサ情報を含むノードを前記トポロジカルマップに登録することと、を有していてもよい。このマップ生成部は、前記トポロジカルマップに新たにノードを追加するときに、ノード間の到達可能性を評価することができる。このため、このように作成されたトポロジカルマップを利用して自律移動する前記移動体については、ノード間を移動できる確率が向上し、目的地に到達する確率を向上させることができる。
【0009】
前記計測センサがカメラであってもよい。前記カメラで取得される画像を利用することで、低コストで前記トポロジカルマップを作成することができる。
【0010】
前記計測センサが全方位カメラであってもよい。この場合、前記マップ最適化部の前記追加処理は、前記マップ生成部が登録した複数のノードの各々に、そのノードにおいて前記全方位カメラの方向を変えた複数の画像を追加することを有していてもよい。前記全方位カメラを利用することにより、方向を変えた複数の画像を容易に生成することができる。
【0011】
本明細書は、複数のノードと、ノード間の接続を示すエッジと、で表現されるトポロジカルマップを作成するマップ作成装置のためのコンピュータプログラムを提供することができる。このコンピュータプログラムは、前記複数のノードの各々に、そのノードにおける計測センサの複数の姿勢に対応したセンサ情報を追加する処理を、前記マップ作成装置に実行させる。
【0012】
本明細書は、複数のノードと、ノード間の接続を示すエッジと、で表現されるトポロジカルマップを作成するマップ作成装置のためのコンピュータプログラムを提供することができる。このコンピュータプログラムは、前記マップ作成装置を、以下の各部、即ち、マップ生成部と、マップ最適化部と、として機能させるように構成されている。前記マップ生成部は、計測センサを用いて時系列に連続した複数のセンサ情報を取得する取得処理と、前記複数のセンサ情報から選択したセンサ情報を含むノードを前記トポロジカルマップに登録する登録処理と、を実行するように構成されている。前記マップ最適化部は、前記マップ生成部が登録した複数のノードの各々に、そのノードにおける前記計測センサの複数の姿勢に対応したセンサ情報を追加する追加処理と、類似したセンサ情報を有するノードを統合する統合処理と、を実行するように構成されている。
【0013】
本明細書は、複数のノードと、ノード間の接続を示すエッジと、で表現されるトポロジカルマップ用のデータ構造を提供することができる。このトポロジカルマップ用のデータ構造では、前記複数のノードの各々には、そのノードにおける計測センサの複数の姿勢に対応したセンサ情報が保持されている。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本実施形態のマップ作成システムの機能ブロック図を示す。
【
図2】本実施形態のマップ作成システムが実行する処理の概要を示す。
【
図3】本実施形態のマップ作成装置のマップ生成部が実行する処理のフローチャートを示す。
【
図4】本実施形態のマップ作成装置のマップ最適化部が実行する処理のフローチャートを示す。
【
図6】従来手法で作成されたトポロジカルマップと本実施形態のマップ作成システムが作成したトポロジカルマップの概要を示す。
【
図7】従来手法で作成されたトポロジカルマップを用いた場合の移動体の移動経路と本実施形態のマップ作成システムが作成したトポロジカルマップを用いた場合の移動体の移動経路を示す。
【
図8】移動経路上に障害物が置かれた場合において、従来手法で作成されたトポロジカルマップを用いた場合の移動体の移動経路と本実施形態のマップ作成システムが作成したトポロジカルマップを用いた場合の移動体の移動経路を示す。
【発明を実施するための形態】
【実施例0015】
(マップ作成システム1の構成)
図1に示すように、マップ作成システム1は、移動体10と、マップ作成装置20と、を備えている。マップ作成システム1は、移動体10が取得したセンサ情報からトポロジカルマップを作成するように構成されている。移動体10は、作成されたトポロジカルマップを利用して自律移動を行うことができる。本明細書では、移動体10の自立移動に有用なトポロジカルマップを作成するための技術について説明する。ここで、トポロジカルマップとは、複数のノードと、ノード間の接続を示すエッジと、で表現されるマップである。複数のノードの各々は、少なくとも1つのセンサ情報を含んでいる。エッジは、各ノードが有する画像類似度に応じて構築されており、移動体10の到達可能性を間接的に示している。移動体10は、エッジが張られたノード間を移動可能である。
【0016】
(移動体10の構成)
移動体10は、計測センサ12と、データ送信部14と、移動制御部16と、を備えている。移動体10は、対象領域内を移動しながら、計測センサ12を用いて対象領域内の環境を反映したセンサ情報を計測するように構成されている。本実施形態の計測センサ12は、特に限定されるものではないが、例えば全方位カメラであり、所定領域内の物体(壁、床、家具等)の画像を取得する。画像は、移動体10の移動に伴って取得される時系列データである。この例に代えて、計測センサ12は、LiDAR、RADAR、超音波センサ等であってもよい。データ送信部14は、計測センサ12で取得された時系列画像をマップ作成装置20に送信する。移動制御部16は、外部コントローラの操作に基づいて移動体10の移動を制御する。
【0017】
(マップ作成装置20の構成)
マップ作成装置20は、対象領域のトポロジカルマップを作成するための装置である。マップ作成装置20は、データ受信部22と、センサ情報記憶部24と、暫定マップ記憶部26と、マップ記憶部28と、マップ生成部30と、マップ最適化部40と、を備えている。マップ作成装置20は、例えば、CPU、ROM、RAM等を備えたコンピュータによって構成されており、コンピュータがプログラムを実行することで、
図1に示されている各種の機能ブロック部として機能することができる。
【0018】
データ受信部22は、移動体10から時系列画像を受信し、センサ情報記憶部24に記憶する。マップ生成部30は、制御入力推定部32と、予測センサ情報推定部34と、類似度判定部36と、ノード登録部38と、を有している。マップ生成部30は、時系列画像から暫定的なトポロジカルマップを作成し、その暫定的なトポロジカルマップを暫定マップ記憶部26に記憶する。マップ最適化部40は、複数姿勢センサ情報生成部42と、類似度判定部44と、ノード統合部46と、を有している。マップ最適化部40は、暫定的なトポロジカルマップを整理することによって最終的なトポロジカルマップを作成し、その最終的なトポロジカルマップをマップ記憶部28に記憶する。
【0019】
図2を参照し、マップ作成システム1が実行する処理の概要について説明する。
図2の(A)に示されるように、移動体10が所定領域内を移動しながら時系列画像を取得する。
図2(B)に示されるように、マップ作成装置20のマップ生成部30は、密な時系列画像から選択した画像(黒点)を含むノードをトポロジカルマップに登録し、疎な時系列画像で構成された暫定的なトポロジカルマップを作成する。
図2(C)に示されるように、マップ作成装置20のマップ最適化部40は、暫定的なトポロジカルマップの複数のノードの一部(この例では、中央の2つのノード)を統合し、最終的なトポロジカルマップを作成する。以下では、マップ生成部30及びマップ最適化部40の処理について詳細する。
【0020】
(マップ生成部30の処理)
マップ生成部30は、密な時系列画像から、トポロジカルマップのノードの候補となる画像を選択し、疎な時系列画像に変換することにより、暫定的なトポロジカルマップを作成するように構成されている。
【0021】
図3に、マップ生成部30が実行する処理のフローチャートを示す。ここで、「I
c」は移動体10が取得した密な時系列画像を表しており、下付きの「c」は取得した画像の時系列の順序を表す。
【0022】
マップ生成部30は、時系列画像から時系列順に画像を入力し、入力した画像を暫定的なトポロジカルマップに登録するか否を判定するように構成されている。まず、ステップS1において、マップ生成部30は、時系列画像の順序数が「1」であるか否かを判定する。時系列画像の順序数が「1」であれば、ステップS2に進む。マップ生成部30は、順序数が「1」である画像I1をノードに登録する。その後、マップ生成部30は、時系列画像の順序数をインクリメントし、ステップS3に進む。
【0023】
ステップS3において、マップ生成部30は、現在の順序数に対応した画像Icを入力する。
【0024】
ステップS4において、マップ生成部30は、画像I
lと画像I
cをローカルプランナに入力する。ローカルプランナは、移動体10の制御入力を推定する(
図1の制御入力推定部32)。ここで、「I
l」は、直前にノードに登録された登録済みの画像を示す。ローカルプランナは、任意の画像を目標画像に一致させるための移動体10の制御入力を推定する機械学習モデルである。ローカルプランナに用いられる機械学習モデルは、特に限定されるものではないが、例えばニューラルネットワークモデルであってもよい。このように、ステップS4では、直前にノードに登録された登録済みの画像I
lを未登録の画像I
cに一致させるための移動体10の制御入力が推定される。
【0025】
ステップS5において、マップ生成部30は、ローカルプランナの出力である移動体10の制御入力を画像予測器に入力する。画像予測器は、登録済みの画像I
lから予測される予測画像Iハット
l→cを推定する(
図1の予測センサ情報推定部34)。画像予測器は、任意の画像と移動体10の制御入力に基づいて、任意の画像から移動体10が移動した後の位置で計測センサが取得すると予測される画像を推定する機械学習モデルである。画像予測器に用いられる機械学習モデルは、特に限定されるものではないが、例えばニューラルネットワークモデルであってもよい。このように、ステップS5では、登録済みの画像I
lから制御入力に基づいて移動体10が移動した後の位置で計測センサが取得すると予測される予測画像Iハット
l→cが推定される。
【0026】
ステップS6において、マップ生成部30は、未登録の画像I
cと予測画像Iハット
l→cの類似度を算出し、算出された類似度が閾値以下であるか否かを判定する(
図1の類似度判定部36)。算出された類似度が閾値よりも大きい場合、マップ生成部30は、時系列画像の順序数をインクリメントし、ステップS3~S6を実行する。算出された類似度が閾値以下の場合、ステップS7に進む。
【0027】
上記したステップS3~S6の処理によると、未登録の画像Icと予測画像Iハットl→cの類似度を比較することにより、直前のノードに登録された登録済みの画像Ilから未登録の画像Icへのローカルプランナを用いた移動体10の到達可能性を評価することができる。類似度が大きい場合、登録済みの画像Ilから未登録の画像Icへのローカルプランナを用いた移動体10の到達可能性が高いことを意味する。類似度が低い場合、登録済みの画像Ilから未登録の画像Icへのローカルプランナを用いた移動体10の到達可能性が低いことを意味する。閾値を調整することで、未登録の画像Icが登録済みの画像Ilに近すぎず、移動体10がローカルプランナを用いて到達可能である未登録の画像Icが選択される。
【0028】
ステップS7において、マップ生成部30は、未登録の画像I
cをノードに登録する(
図1のノード登録部38)。次に、ステップS8において、マップ生成部30は、全ての時系列画像を入力したか否かを判定する。全ての時系列画像が入力されていなければ、マップ生成部30は、時系列画像の順序数をインクリメントし、ステップS3~S7を実行する。時系列画像の全てが入力されていれば、マップ生成部30は、処理を終了し、暫定的なトポロジカルマップを完成させる。
【0029】
このように、マップ生成部30に全ての時系列画像を入力することで、ローカルプランナで到達できる可能性の高いノードで構成された暫定的なトポロジカルマップを作成することができる。なお、上記では、ローカルプランナの制御入力と画像予測器の予測画像はそれぞれ1つとして説明したが、これらが複数であってもよい。
【0030】
(マップ最適化部40の処理)
マップ最適化部40は、マップ生成部30が作成した暫定的なトポロジカルマップのノードを統廃合し、最終的なトポロジカルマップを作成するように構成されている。
【0031】
図4に、マップ最適化部40が実行する処理のフローチャートを示す。マップ最適化部40は、マップ生成部30において暫定的なトポロジカルマップに登録された順にノードの画像を確認するように構成されている。ここで「I
i,1」は、暫定的なトポロジカルマップに登録された画像(以下、ノードに登録された画像を「ノード画像」という)を示しており、下付きの「i」はマップ生成部30において暫定的なトポロジカルマップに登録された順序を表す。
【0032】
まず、マップ最適化部40は、ステップS1において、登録の順序数がi番目のノード画像Ii,1を入力し、ステップS2において登録の順序数が「1」であるか否かを判定する。登録の順序数が「1」であれば、ステップS3に進む。
【0033】
ステップS3において、マップ最適化部40は、ノード画像I
i,1をその場で回転させたn-1個の画像I
i,k(k=2,...,n)を生成し、ノードに追加する(
図1の複数姿勢センサ情報生成部42)。ここで、ノード画像I
i,kのkは、登録の順序数が「i」であるノードにおいて生成されたk番目のノード画像を表す。マップ最適化部40は、ノード画像I
i,kとノード画像I
i,k-1の間、及び、ノード画像I
i,kとノード画像I
i,k+1の間でエッジを張る。また、I
i,1とI
i,nの間にもエッジを張る。これにより、移動体10は、ノード上で回転することによってノード画像I
i,k(k=2,...,n)の間を移動することが可能となる。次に、マップ最適化部40は、登録の順序数をインクリメントし、ステップS1に戻る。なお、ノード画像I
i,k(k=2,...,n)のそれぞれは、1つのノードということもできる。この場合、同一位置において複数姿勢のノード画像間にエッジが張られており、同一位置に複数のノードが存在しているということができる。しかしながら、本明細書では、同一位置における複数姿勢のノード画像は、共通の1つのノードに含まれているとする。
【0034】
ここで、
図5に、ノード画像I
i,k(k=2,...,n)の一例を示す。上記したように、移動体10に搭載される計測センサ12は全方位カメラである。
図5の(A)は、暫定的なトポロジカルマップに登録されたノード画像I
i,1であり、移動体10の進行方向に沿った姿勢で取得されたオリジナル画像である。一対の円のうちの左側の円が全方位カメラの前方の画像であり、右側の円が全方位カメラの後方の画像である。
図5の(B)は、オリジナル画像を45度回転させた画像であり、例えばノード画像I
i,2に対応する。
図5の(C)は、オリジナル画像を270度回転させた画像であり、例えばノード画像I
i,3に対応する。このように、マップ生成部30は、オリジナル画像であるノード画像I
i,1から全方位カメラの複数の姿勢に対応したノード画像I
i,k(k=2,...,n)をソフトウェア処理によって生成する。なお、計測センサ12が全方位カメラではなく、通常の特定方向の画像を取得するカメラの場合、カメラの姿勢を物理的に変えてカメラの複数の姿勢に対応したノード画像を生成してもよく、異なる方向を向いた複数のカメラを移動体10に搭載することでカメラの複数の姿勢に対応したノード画像を生成してもよい。
【0035】
図4に戻る。ステップS1において、マップ最適化部40は、次に登録されたノード画像I
i,1を入力し、ステップS4に進む。ステップS4において、マップ最適化部40は、新たに入力されたノード画像I
i,1とこれまでに処理した全てのノード画像I
l,k(l=1,...,i-1、且つ、k=1,...,n)の類似度を算出し、算出された類似度が閾値以上であるか否かを判定する(
図1の類似度判定部44)。算出された類似度が閾値よりも小さい場合、マップ生成部30は、ステップS3に進む。算出された類似度が閾値以上の場合、ステップS5に進む。
【0036】
ステップS5において、マップ最適化部40は、新たに入力したノード画像I
i,1を削除するとともに、そのノード画像I
i,1に対応したノードに、閾値以上の類似度を持つノード画像の中で最も類似度が大きいノード画像を統合する(
図1のノード統合部46)。
【0037】
次に、ステップS6において、マップ最適化部40は、全てのノード画像を入力したか否かを判定する。全てのノード画像が入力されていなければ、マップ最適化部40は、登録の順序数をインクリメントし、ステップS1に戻る。全てのノード画像が入力されていれば、マップ最適化部40は、処理を終了し、最終的なトポロジカルマップを完成させる。
【0038】
(効果)
以下、マップ作成システム1が作成したトポロジカルマップを用いて移動体10を自律移動させたときの効果について説明する。
【0039】
図6に、従来手法で作成されたトポロジカルマップとマップ作成システム1が作成したトポロジカルマップの具体例を示す。
図6の(A)は、時系列画像を取得するときの移動体10の移動経路を示す。
図6の(B)は、従来手法で作成されたトポロジカルマップである。
図6(C)は、マップ作成システム1が作成したトポロジカルマップである。
図6の(B)及び(C)において、黒点がノードを示しており、矢印がノード間の接続を示すエッジである。移動体10は、矢印の方向にのみノード間を移動可能である。なお、
図6の(B)のトポロジカルマップは、本実施形態のマップ生成部30が作成する暫定的なトポロジカルマップに対応する。
【0040】
図6の(B)のトポロジカルマップでは、近い位置で撮影された画像であっても、計測センサの姿勢が異なれば別のノードとして登録される。また、エッジで規定される移動体10のエッジ間の到達可能な向きは、時系列画像を撮影した向きのみである。一方、
図6の(C)のトポロジカルマップでは、各ノードが複数姿勢の画像を保持しているので、移動体10は各ノード上で回転が可能である。このため、エッジで規定される移動体10のエッジ間の到達可能な向きは、時系列画像を撮影した向きとは逆向きも含んでいる。さらに、中央に位置するノードのように、撮影姿勢が異なるノードでも統合することが可能である。統合されたノードでは、他のノードへのエッジが多く張られている。このため、撮影時の全方位カメラの移動経路によらない経路計画が可能となる。
【0041】
図7に、目的地までの移動体10の移動経路を示す。図中の旗が目的地を示し、移動体10が現在位置を示す。
図7の(A)は、従来手法で作成されたトポロジカルマップを用いた場合の移動体10の移動経路である。
図7の(B)は、マップ作成システム1が作成したトポロジカルマップを用いた場合の移動体10の移動経路である。
図7の(A)に示されるように、従来手法のトポロジカルマップを利用する移動体10は、ノードが統合されていないので、遠回りの経路しか選択することができない。一方、
図7の(B)に示されるように、マップ作成システム1が作成したトポロジカルマップを利用する移動体10は、統合した中央のノードを介して目的地に移動することができる。このとき、統合した中央のノードから目的地への経路は、撮影時の全方位カメラの移動の向きとは反対向きである。移動体10は、統合した中央のノードで右向きにその場回転して目的地に向かうことができる。各ノードに複数姿勢の画像が保持されているので、移動体10は、統合した中央のノードにおいて適切な角度のその場回転をすることができる。また、各ノードに複数姿勢の画像が保持されているので、移動体10は、撮影時の全方位カメラの移動の向きとは逆向きに移動することができる。
【0042】
図8に、計画経路上に障害物が置かれたときの移動経路を示す。
図8の(A)は、従来手法で作成されたトポロジカルマップを用いた場合の移動体10の移動経路である。
図8の(B)は、マップ作成システム1が作成したトポロジカルマップを用いた場合の移動体10の移動経路である。
図8の(A)に示されるように、従来手法のトポロジカルマップを利用する移動体10は、時系列画像を撮影した向きにしか移動できないので、障害物を回避する経路を計画することができない。一方、
図8の(B)に示されるように、マップ作成システム1が作成したトポロジカルマップを利用する移動体10は、当初の計画経路上に障害物が置かれたときに、障害物の直前のノードでその場回転し、障害物を回避する経路を再計画し、目的地まで移動することができる。
【0043】
このように、マップ作成システム1が作成したトポロジカルマップは、経路の短縮及び障害物の回避に対するロバスト性を向上させ、移動体のナビゲーション成功率を向上させることができる。
【0044】
以上、本明細書が開示する技術の実施例について詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
1:マップ作成システム、 10:移動体、 12:計測センサ、 14:データ送信部、 16:移動制御部、 20:マップ作成装置、 22:データ受信部、 24:センサ情報記憶部、 26:暫定マップ記憶部、 28:マップ記憶部、 30:マップ生成部、 32:制御入力推定部、 34:センサ情報推定部、 36:類似度判定部、 38:ノード登録部、 40:マップ最適化部、 42:複数姿勢センサ情報生成部、 44:類似度判定部、 46:ノード統合部