(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023146161
(43)【公開日】2023-10-12
(54)【発明の名称】車両
(51)【国際特許分類】
B62D 21/15 20060101AFI20231004BHJP
B60K 1/04 20190101ALI20231004BHJP
B62D 25/20 20060101ALI20231004BHJP
F16F 7/12 20060101ALI20231004BHJP
【FI】
B62D21/15 B
B60K1/04
B62D25/20 F
F16F7/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022053201
(22)【出願日】2022-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】向川 優貴
(72)【発明者】
【氏名】宮岡 恭平
(72)【発明者】
【氏名】柴田 峻志
【テーマコード(参考)】
3D203
3D235
3J066
【Fターム(参考)】
3D203AA31
3D203AA33
3D203AA34
3D203BB04
3D203BB12
3D203BB22
3D203CA04
3D203CA25
3D203CA40
3D203CA45
3D203CB09
3D203CB19
3D203DB05
3D203DB07
3D203DB10
3D235AA02
3D235BB07
3D235BB25
3D235CC15
3D235DD35
3D235EE64
3D235FF06
3D235FF09
3D235HH26
3J066AA23
3J066BA03
3J066BB01
3J066BF02
(57)【要約】
【課題】EA材からバッテリパックの側壁へ伝達される衝突荷重を低減し得る技術を提供する。
【解決手段】車両は、フロアパネルを有する車体と、フロアパネルの下方に位置するバッテリパックと、バッテリパックの車両幅方向外側に位置するとともに、バッテリパックを車体に対して固定しているエネルギー吸収材と、を備える。エネルギー吸収材は、車両長さ方向に沿って一定の断面を有する中空部材である。エネルギー吸収材のバッテリパックに対向する内側の側壁は、車両幅方向内側に向かうにつれて車両高さ方向下側に傾斜している。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロアパネルを有する車体と、
前記フロアパネルの下方に位置するバッテリパックと、
前記バッテリパックの車両幅方向外側に位置するとともに、前記バッテリパックを前記車体に対して固定しているエネルギー吸収材と、
を備え、
前記エネルギー吸収材は、車両長さ方向に沿って一定の断面を有する中空部材であり、
前記エネルギー吸収材の前記バッテリパックに対向する内側の側壁は、前記車両幅方向内側に向かうにつれて車両高さ方向下側に傾斜している、
車両。
【請求項2】
前記車両高さ方向に沿って配置されており、上端が前記バッテリパックに当接するとともに、下端が前記エネルギー吸収材に当接しているカラーと、
前記カラーを通過して、前記エネルギー吸収材を前記バッテリパックに締結しているボルトと、をさらに備える、請求項1に記載の車両。
【請求項3】
前記エネルギー吸収材の前記内側の側壁には、前記カラーが通過する開口が形成されている、請求項2に記載の車両。
【請求項4】
前記カラーは、前記エネルギー吸収材の前記内側の側壁に溶接されている、請求項2又は3に記載の車両。
【請求項5】
前記カラーの内径は、前記ボルトの呼び径の2倍以上である、請求項2から4のいずれか一項に記載の車両。
【請求項6】
前記バッテリパックには、前記車両幅方向外側に突出するブラケットが設けられており、
前記ボルトは、前記エネルギー吸収材を前記バッテリパックの前記ブラケットに締結している、請求項2から5のいずれか一項に記載の車両。
【請求項7】
前記エネルギー吸収材は、前記車両幅方向において、前記内側の側壁を含む内端部分と、前記内端部分に隣接する中間部分とを有し、
前記エネルギー吸収材の前記内側の側壁の厚みは、前記エネルギー吸収材の前記中間部分を構成する各壁の厚みよりも大きい、請求項1から6のいずれか一項に記載の車両。
【請求項8】
前記エネルギー吸収材の前記内端部分を構成する各壁の厚みは、前記エネルギー吸収材の前記中間部分を構成する各壁の厚みよりも大きい、請求項7に記載の車両。
【請求項9】
前記バッテリパックには、前記車両幅方向外側に突出するブラケットが設けられており、
前記エネルギー吸収材は、前記車両幅方向において、前記内側の側壁を含む内端部分と、前記内端部分に隣接する中間部分とを有し、
前記エネルギー吸収材の前記内端部分は、前記バッテリパックの前記ブラケットの下面に、下方から取り付けられており、
前記エネルギー吸収材の前記中間部分の上壁は、前記車両高さ方向において、前記ブラケットの下面よりも下方に位置している、請求項1に記載の車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書が開示する技術は、車両に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、車両が記載されている。この車両は、一対のロッカと、一対のロッカの間を延びるフロアパネルと、フロアパネルの下方に位置するバッテリパックと、バッテリパックの車幅方向外側に配置されるとともに、一対のロッカのうちいずれか一方に固定されたエネルギー吸収材と、を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した構造では、車両に側面衝突が生じたときに、エネルギー吸収材(以下、EA材と称することがある)が変形することによって、衝突エネルギーが吸収される。このとき、EA材のバッテリパックに対向する内側の側壁が、バッテリパックの側壁に押し付けられると、バッテリパックの側壁に対して衝突荷重が比較的に大きく作用するおそれがある。
【0005】
上記の実情を鑑み、本明細書は、EA材からバッテリパックの側壁へ伝達される衝突荷重を低減し得る技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書が開示する技術は、車両に具現化される。この車両は、フロアパネルを有する車体と、前記フロアパネルの下方に位置するバッテリパックと、前記バッテリパックの車両幅方向外側に位置するとともに、前記バッテリパックを前記車体に対して固定しているエネルギー吸収材と、を備える。前記エネルギー吸収材は、車両長さ方向に沿って一定の断面を有する中空部材である。前記エネルギー吸収材の前記バッテリパックに対向する内側の側壁は、前記車両幅方向内側に向かうにつれて車両高さ方向下側に傾斜している。
【0007】
上記した構造では、車両に側面衝突が生じたときに、EA材が変形することによって、衝突エネルギーが吸収される。ここで、EA材のバッテリパックに対向する内側の側壁は、車両幅方向内側に向かうにつれて車両高さ方向下側に傾斜している。そのため、EA材がバッテリパックに向けて車両幅方向に圧縮変形された場合でも、EA材がバッテリパックの側壁と接触することを回避又は抑制することができる。これにより、EA材からバッテリパックの側壁に作用する衝突荷重を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】バッテリパック20と、一対のEA材30、32と、一対のロッカ24、26との位置関係を説明するための図。
【
図4】
図4(A)-(C)は、車両10に側面衝突が生じた場合におけるEA材30の変形の一例を経時的に示す図。
【
図6】
図2中のIII-III線に対応する位置で、実施例2の構造を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本技術の一実施形態において、車両は、車両高さ方向に沿って配置されており、上端がバッテリパックに当接するとともに、下端がエネルギー吸収材に当接しているカラーと、カラーを通過して、エネルギー吸収材をバッテリパックに締結しているボルトと、をさらに備えてもよい。このような構成によると、ボルトによって締結されるEA材とバッテリパックとの間の距離は、カラーの車両高さ方向における寸法によって決定される。そのため、締結作業によって、上記の距離にばらつきが生じることを回避又は抑制することができる。
【0010】
上記した実施形態において、エネルギー吸収材の内側の側壁には、カラーが通過する開口が形成されていてもよい。このような構成によると、当該側壁が傾斜する角度にかかわらず、エネルギー吸収材に対してカラーを配置することができる。
【0011】
上記したいくつかの実施形態において、カラーは、エネルギー吸収材の内側の側壁に溶接されていてもよい。このような構成によると、カラーをEA材に強固に固定することができる。そのため、EA材がバッテリパックに向けて車両幅方向に圧縮変形された場合でも、EA材及びカラーの両方がバッテリパックの側壁と接触することを回避又は抑制することができる。
【0012】
上記したいくつかの実施形態において、カラーの内径は、ボルトの呼び径の2倍以上であってもよい。このような構成によると、カラーとボルトとの間に比較的に大きな隙間を確保することができる。そのため、EA材がバッテリパックに向けて車両幅方向に圧縮変形された場合、上記したカラーとボルトとの間の隙間によって、EA材からバッテリパックの側壁に作用する衝突荷重を低減することができる。
【0013】
上記したいくつかの実施形態において、バッテリパックには、車両幅方向外側に突出するブラケットが設けられていてもよい。この場合、ボルトは、エネルギー吸収材をバッテリパックのブラケットに締結していてもよい。このような構成によると、ブラケットが車両幅方向外側に突出している分だけ、車両幅方向において、バッテリパックとEA材との間の距離を大きくすることができる。そのため、EA材がバッテリパックに向けて車両幅方向に圧縮変形された場合に、EA材からバッテリパックの側壁に作用する衝突荷重を低減することができる。但し、他の実施形態として、バッテリパックにブラケットを設けることなく、ボルトによって、EA材がバッテリパックに直接的に締結されてもよい。
【0014】
本技術の一実施形態において、エネルギー吸収材は、車両幅方向において、内側の側壁を含む内端部分と、内端部分に隣接する中間部分とを有してもよい。この場合、エネルギー吸収材の内側の側壁の厚みは、エネルギー吸収材の中間部分を構成する各壁の厚みよりも大きくてもよい。このような構成によると、バッテリパックに対向するEA材の内側の側壁の剛性を、EA材の中間部分を構成する各壁の剛性よりも高くすることができる。これにより、EA材がバッテリパックに向けて車両幅方向に圧縮変形された場合に、EA材の内側の側壁を、EA材の中間部分を構成する各壁と比較して変形しにくくすることができる。そのため、EA材がバッテリパックの側壁と接触することを回避又は抑制することができる。
【0015】
上記した実施形態において、エネルギー吸収材の内端部分を構成する各壁の厚みは、エネルギー吸収材の中間部分を構成する各壁の厚みよりも大きくてもよい。このような構成によると、バッテリパックに対向する内側の側壁を含む内端部分の各壁の剛性を、中間部分を構成する各壁の剛性よりも高くすることができる。これにより、EA材がバッテリパックに向けて車両幅方向に圧縮変形された場合に、EA材の内端部分を、その中間部分よりも変形しにくくすることができる。
【0016】
本技術の一実施形態において、バッテリパックには、車両幅方向外側に突出するブラケットが設けられていてもよい。エネルギー吸収材は、車両幅方向において、内側の側壁を含む内端部分と、内端部分に隣接する中間部分とを有してもよい。エネルギー吸収材の内端部分は、バッテリパックのブラケットの下面に、下方から取り付けられていてもよい。この場合、エネルギー吸収材の中間部分の上壁は、車両高さ方向において、ブラケットの下面よりも下方に位置していてもよい。このような構成によると、EA材がバッテリパックに向けて車両幅方向に圧縮変形された場合に、EA材がバッテリパックのブラケットと接触することを回避又は抑制することができる。これにより、EA材からバッテリパックに作用する衝突荷重を低減することができる。
【0017】
本明細書において単に前方、後方、長さ方向といった記載は、車両における前方、後方、長さ方向をそれぞれ意味するものとする。同様に、単に左方、右方、車幅方向といった記載は、車両における左方、右方、車幅方向をそれぞれ意味し、単に上方、下方、高さ方向といった記載は、車両における上方、下方、高さ方向を意味する。なお、車両における車幅方向は、車両の左右方向でもあり、本明細書では左右方向と表現することがある。例えば、車両が水平面上に配置されたときに、車両の高さ方向は、鉛直方向と一致する。また、車両の車幅方向は、水平面に平行かつ車両の車軸に平行な方向となり、車両の長さ方向は、水平面に平行かつ車両の車軸に垂直な方向となる。
【実施例0018】
(実施例1)図面を参照して、実施例1の車両10について説明する。本実施例の車両10は、車輪14f、14rを駆動するモータ16を有する電動車に属するものであり、典型的には路面を走行する電動車(いわゆる自動車)である。但し、本実施例で説明する技術の一部又は全部は、軌道を走行する電動車にも同様に採用することができる。また、車両10は、ユーザによって運転操作されるものに限られず、外部装置によって遠隔操作されるものや、自律走行するものであってもよい。
【0019】
ここで、図面における方向FRは、車両10の長さ方向(又は、前後方向)における前方を示し、方向RRは車両10の長さ方向における後方を示す。また、方向LHは車両10の車幅方向(又は、左右方向)における左方を示し、方向RHは車両10の車幅方向における右方を示す。また、方向UPは車両10の高さ方向(又は、上下方向)における上方を示し、方向DWは車両10の高さ方向における下方を示す。
【0020】
図1に示すように、車両10は、車体12と、複数の車輪14f、14rとを備える。車体12は、乗員を乗せる空間である車室12cを有する。複数の車輪14f、14rは、車体12に対して回転可能に取り付けられている。複数の車輪14f、14rには、車体12の前部に位置する一対の前輪14fと、車体12の後部に位置する一対の後輪14rとが含まれる。一対の前輪14fは互いに同軸に配置されており、一対の後輪14rも互いに同軸に配置されている。なお、車輪14f、14rの数は、四つに限定されない。特に限定されないが、車体12は、スチール材又はアルミニウム合金といった金属で構成されている。
【0021】
図1に示すように、車両10は、モータ16と、電力制御ユニット18と、バッテリパック20とをさらに備える。モータ16は、一対の後輪14rを駆動する走行用モータであって、一対の後輪14rに接続されている。バッテリパック20は、モータ16に電力を供給する電源装置であり、電力制御ユニット18を介してモータ16と電気的に接続されている。バッテリパック20は、複数の二次電池セルを内蔵しており、外部の電力やモータ16の回生電力によって、繰り返し充電可能に構成されている。バッテリパック20は、フロアパネル22の下方に位置しており、フロアパネル22に沿って配置されている。一例ではあるが、
図2、3に示すように、本実施例におけるバッテリパック20には、車両幅方向外側に突出するブラケット20aが設けられている。また、特に限定されないが、バッテリパック20の下壁には、下方に向けて突出する支持部20bが設けられている。電力制御ユニット18は、DC-DCコンバータ及び/又はインバータを内蔵しており、例えばユーザによる運転操作に応じて、バッテリパック20からモータ16へ供給される駆動電力や、モータ16からバッテリパック20へ供給される回生電力を制御する。
【0022】
モータ16は、一対の後輪14rに限られず、複数の車輪14f、14rの少なくとも一つを駆動するように構成されていればよい。車両10は、モータ16に代えて、又は加えて、エンジンといった他の原動機をさらに備えてもよい。また、車両10は、バッテリパック20に加えて、又は代えて、燃料電池ユニットや太陽電池パネルといった他の電源装置を備えてもよい。車両10は、ここで説明する電気自動車に限られず、ハイブリッド車両、燃料電池車両、ソーラーカー等であってもよい。
【0023】
図2、3に示すように、車体12は、フロアパネル22と、一対のロッカ24、26と、フロアクロスビーム28とを備える。フロアパネル22は、車室12cの底面を構成する板状の部材である。各ロッカ24、26は、車両長さ方向に沿って一定の断面を有する中空部材であって、車体12における骨格の一部を構成する。一対のロッカ24、26には、左側ロッカ24と、右側ロッカ26とが含まれる。左側ロッカ24は、フロアパネル22の左側縁22aに位置しており、フロアパネル22の車幅方向外側において、前後方向に延びている。一対のロッカ24は、車幅方向に関して互いに対称に設けられている。そのことから、右側ロッカ26は、フロアパネル22の右側縁に位置しており、フロアパネル22の車幅方向外側において、前後方向に延びている。
【0024】
特に限定されないが、左側ロッカ24は、幅方向内側に位置する左側ロッカインナパネル24aと、幅方向外側に位置する左側ロッカアウタパネル24bとを有する。左側ロッカインナパネル24a及び左側ロッカアウタパネル24bは、それぞれの上縁及び下縁において互いに接合されており、左側ロッカ24の内部には、前後方向に延びる閉空間が形成されている。同様に、特に限定されないが、右側ロッカ26は、幅方向内側に位置する右側ロッカインナパネル26aと、幅方向外側に位置する右側ロッカアウタパネル26bとを有する。右側ロッカインナパネル26a及び右側ロッカアウタパネル26bは、それぞれの上縁及び下縁において互いに接合されており、右側ロッカ26の内部には、前後方向に延びる閉空間が形成されている。フロアパネル22は、一対のロッカ24、26の間を延びており、左側縁22aでは左側ロッカインナパネル24aと、右側縁では右側ロッカインナパネル26aに接合されている。各ロッカ24、26は、各ロッカインナパネル24a、26a及び各ロッカアウタパネル24b、26bだけに限られず、三つ以上のパネルによって構成されてもよい。
【0025】
フロアクロスビーム28は、車両長さ方向に沿って一定の断面を有する中空部材であって、車体12における骨格の一部を構成する。フロアクロスビーム28は、フロアパネル22上に位置しており、一対のロッカ24、26の間を車幅方向に沿って延びている。図示省略するが、一対のロッカ24、26の間には、複数のフロアクロスビーム28が設けられている。
【0026】
図2、3に示すように、車両10は、一対のエネルギー吸収材30、32(以下、EA材30、32と称する)をさらに備える。一対のEA材30、32の各々は、車両長さ方向に沿って一定の断面を有する中空部材である。一対のEA材30、32には、左側EA材30と、右側EA材32とが含まれる。一対のEA材30、32は、車幅方向に関して互いに対称に設けられている。左側EA材30は、車両10の左側部分において、バッテリパック20の車幅方向外側に位置している。右側EA材32は、車両10の右側部分において、バッテリパック20の車幅方向外側に位置している。各々のEA材30、32は、車両10に側面衝突が生じたときに、圧縮変形することによって衝突エネルギーを吸収する。一対のEA材30、32は、例えばアルミニウムといった金属で構成されている。但し、一対のEA材30、32を構成する材料は特に限定されない。
【0027】
上記のように、一対のEA材30、32は、車幅方向に関して互いに対称に設けられている。そして、左側EA材30及びそれに関連する部材(例えば、バッテリパック20、及び左側ロッカ24等)の構造は、右側EA材32及びそれに関連する部材(例えば、バッテリパック20、及び右側ロッカ26等)の構造と、車幅方向に関して互いに対称である。従って、以下では、
図3を参照して、左側EA材30及びそれに関連する部材(例えば、バッテリパック20、及び左側ロッカ24等)の構造について説明をする。なお、以下では、左側EA材30と単にEA材30と称する。
【0028】
図3に示すように、EA材30は、内端部分34と、第1中間部分36と、第2中間部分38と、外端部分40とを備える。内端部分34は、車両幅方向において、最も内側に位置しており、バッテリパック20と対向する。外端部分40は、車両幅方向において、最も外側に位置している。第1中間部分36と第2中間部分38とは、車両幅方向において、内端部分34と外端部分40との間に位置している。第1中間部分36は、内端部分34に隣接しており、第2中間部分38は、外端部分40に隣接している。即ち、車両幅方向内側から外側に向かって、内端部分34、第1中間部分36、第2中間部分38、及び外端部分40が順に位置している。
【0029】
内端部分34は、内側の側壁34aと、縦壁34bと、下壁34cとを有する。内側の側壁34aは、バッテリパック20に対向しており、車両幅方向内側に向かうにつれて車両高さ方向下側に傾斜している。縦壁34bは、車両高さ方向に沿って延びており、下壁34cは、車両幅方向に沿って延びている。このため、内側の側壁34aと、縦壁34bと、下壁34cとによって、車両長さ方向に一定の断面を有する空間が形成される。
【0030】
特に限定されないが、EA材30は、突出部35をさらに備える。突出部35は、内端部分34の内側の側壁34a及び下壁34cに接続しており、バッテリパック20に向かって延在している。
【0031】
図3に示すように、車両10は、第1カラー42と、第1ボルト44とをさらに備える。EA材30の内端部分34に設けられている内側の側壁34aには、第1カラー42が通過する開口が形成されている。第1カラー42は、車両高さ方向に沿って、内側の側壁34aの開口を通過するように配置されている。一例ではあるが、第1カラー42は、EA材30の内側の側壁34aに溶接されている。第1カラー42の上端は、バッテリパック20のブラケット20aに当接しており、第1カラー42の下端は、内端部分34の下壁34cに当接している。第1ボルト44は、第1カラー42を通過して、EA材30をバッテリパック20のブラケット20aに締結している。そのため、EA材30は、内端部分34において、バッテリパック20のブラケット20aに固定されている。第1カラー42の内径D1は、第1ボルト44の呼び径D2よりも大きい。例えば、第1カラー42の内径D1は、第1ボルト44の呼び径D2の2倍以上である。なお、他の実施形態として、バッテリパック20にブラケット20aを設けることなく、第1ボルト44によって、EA材30がバッテリパック20に直接的に締結されてもよい。
【0032】
図3に示すように、車両10は、第2カラー46と、第2ボルト48とをさらに備える。特に限定されないが、EA材30の第2中間部分38の上壁38aにも、第2カラー46が通過する開口が形成されている。第2カラー46は、車両高さ方向に沿って、第2中間部分38の上壁38aの開口を通過するように配置されている。一例ではあるが、第2カラー46は、第2中間部分38の上壁38aに溶接されている。第2カラー46の上端は、左側ロッカ24の左側ロッカインナパネル24aに当接しており、第2カラー46の下端は、第2中間部分38の下壁38bに当接している。第2ボルト48は、第2カラー46を通過して、EA材30を左側ロッカ24に締結している。そのため、EA材30は、第2中間部分38において、車体12の左側ロッカ24に固定されている。前述したように、EA材30は、内端部分34において、バッテリパック20のブラケット20aに固定されていることから、EA材30は、バッテリパック20を車体12に対して固定している。特に限定されないが、第2カラー46の内径は、第2ボルト48の呼び径よりも大きい。
【0033】
上記した構造では、
図4に示すように、車両10に側面衝突が生じたときに、EA材30、32が変形することによって、衝突エネルギーが吸収される。ここで、EA材30、32のバッテリパック20に対向する内側の側壁34aは、車両幅方向内側に向かうにつれて車両高さ方向下側に傾斜している。そのため、EA材30、32がバッテリパック20に向けて車両幅方向に圧縮変形された場合でも、EA材30、32がバッテリパック20の側壁と接触することを回避又は抑制することができる。これにより、EA材30、32からバッテリパック20の側壁に作用する衝突荷重を低減することができる。
【0034】
特に限定されないが、
図5に示すように、内側の側壁34aの厚みT1は、第1中間部分36を構成する各壁の厚みT4、T5よりも大きい。このような構成によると、バッテリパック20に対向するEA材30、32の内側の側壁34aの剛性を、EA材30、32の中間部分36を構成する各壁の剛性よりも高くすることができる。これにより、EA材30、32がバッテリパック20に向けて車両幅方向に圧縮変形された場合に、EA材30、32の内側の側壁34aを、EA材30、32の中間部分36を構成する各壁と比較して変形しにくくすることができる。そのため、EA材30、32がバッテリパック20の側壁と接触することを回避又は抑制することができる。
【0035】
特に限定されないが、
図5に示すように、内側の側壁34aの厚みT1に加えて、縦壁34bの厚みT2、及び下壁34cの厚みT3も、第1中間部分36を構成する各壁の厚みT4、T5よりも大きい。即ち、内端部分34を構成する各壁34a-34cの厚みT1-T3の全てが、第1中間部分36を構成する各壁の厚みT4、T5よりも大きい。このような構成によると、バッテリパック20に対向する内側の側壁34aを含む内端部分34の各壁34a-34cの剛性を、中間部分36を構成する各壁の剛性よりも高くすることができる。これにより、EA材30、32がバッテリパック20に向けて車両幅方向に圧縮変形された場合に、EA材30、32の内端部分34を、その中間部分36よりも変形しにくくすることができる。
【0036】
但し、他の実施形態において、縦壁34bの厚みT2及び下壁34cの厚みT3は、第1中間部分36を構成する各壁の厚みT4(及び/又はT5)と等しく、内側の側壁34aの厚みT1のみが、第1中間部分36を構成する各壁の厚みT4(及び/又はT5)よりも大きくてもよい。あるいは、更なる他の実施形態では、内側の側壁34aの厚みT1、縦壁34bの厚みT2、及び下壁34cの厚みT3は、第1中間部分36を構成する各壁の厚みT4(及び/又はT5)と等しくてもよい。
【0037】
(実施例2)次に、
図6を参照して、実施例2の車両について説明する。実施例1の車両10と比較して、本実施例の車両では、EA材30、32の第1中間部分36の上壁36aが車両幅方向内側から外側に向かって、等しい高さ位置に位置していることに代えて、当該第1中間部分36の上壁36a(より詳しくは、上壁36aの上面)が、車両幅方向内側から外側に向かって、下方に傾斜していている。EA材30、32の内端部分34は、バッテリパック20のブラケット20aの下面20cに、下方から取り付けられている。EA材30、32の第1中間部分36の上壁36aは、車両高さ方向において、ブラケット20aの下面20cよりも下方に位置している。このような構成によると、EA材30、32がバッテリパック20に向けて車両幅方向に圧縮変形された場合に、EA材30、32がバッテリパック20のブラケット20aと接触することを回避又は抑制することができる。これにより、EA材30、32からバッテリパック20に作用する衝突荷重を低減することができる。なお、実施例1と本実施例との間で、共通する構成については同一の符号を付すことによって、ここでは重複する説明を省略している。
【0038】
本実施例の構成は、実施例1においても採用することができる。即ち、EA材30、32の第1中間部分36の上壁36aが車両幅方向内側から外側に向かって、等しい高さ位置に位置している場合においても、EA材30、32の内端部分34がバッテリパック20のブラケット20aの下面20cに下方から取り付けられており、かつ、EA材30、32の第1中間部分36の上壁36aを、車両高さ方向において、ブラケット20aの下面20cよりも下方に位置させることができる。このような構成においても、EA材30、32の圧縮変形時において、EA材30、32からバッテリパック20に作用する衝突荷重を低減することができる。
【0039】
以上、いくつかの具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。本明細書又は図面に説明した技術要素は、単独であるいは組み合わせによって技術的有用性を発揮するものである。