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特開2023-146165線材被膜除去装置及び線材成形システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023146165
(43)【公開日】2023-10-12
(54)【発明の名称】線材被膜除去装置及び線材成形システム
(51)【国際特許分類】
   H02G 1/12 20060101AFI20231004BHJP
   H01F 41/076 20160101ALI20231004BHJP
   H01F 41/10 20060101ALI20231004BHJP
   B23C 3/13 20060101ALI20231004BHJP
   B26D 3/00 20060101ALI20231004BHJP
【FI】
H02G1/12 065
H02G1/12 048
H02G1/12 085
H01F41/076
H01F41/10 C
B23C3/13
B26D3/00 603Z
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022053210
(22)【出願日】2022-03-29
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-10-18
(71)【出願人】
【識別番号】000116976
【氏名又は名称】旭精機工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112472
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100202223
【弁理士】
【氏名又は名称】軸見 可奈子
(72)【発明者】
【氏名】大林 栄次
(72)【発明者】
【氏名】野島 高志
(72)【発明者】
【氏名】深津 遼太
【テーマコード(参考)】
5E002
5E062
5G353
【Fターム(参考)】
5E002AD03
5E062FG15
5G353AB01
5G353AC09
5G353BA05
5G353CA05
(57)【要約】
【課題】従来の線材被膜除去装置では不可能であった露出面の加工を線材に対して行うことが可能な技術の開発が求められている。
【解決手段】本実施形態の線材被膜除去装置10は、線材90が直線状に延ばされた状態で送給される線材送給路Rを有し、その線材送給路の第1位置で第1方向から線材90を挟んで被膜90Bを切除する1対の回転工具31と、線材送給路Rの第2位置で第1方向と交差する第2方向から線材90を挟んで被膜90Bを切除する1対の回転工具32とを備える。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
線材が直線状に延ばされた状態で送給される線材送給路と、
前記線材送給路の第1位置で、第1方向から前記線材を挟み、前記線材の被膜を切除する1対の第1回転工具と、
前記1対の第1回転工具を回転駆動する第1回転駆動機構と、
前記線材送給路の第2位置で、前記第1方向と交差する第2方向から前記線材を挟み、前記線材の被膜を切除する1対の第2回転工具と、
前記1対の第2回転工具を回転駆動する第2回転駆動機構と、
前記1対の第1回転工具同士の間隔を変更する第1工具間隔変更機構と、
前記1対の第2回転工具同士の間隔を変更する第2工具間隔変更機構と、
を備える線材被膜除去装置。
【請求項2】
前記第1回転駆動機構は、対をなして前記1対の第1回転工具を別々に回転駆動し、
前記第2回転駆動機構は、対をなして前記1対の第2回転工具を別々に回転駆動し、
前記第1工具間隔変更機構は、前記1対の第1回転工具と共に1対の前記第1回転駆動機構を互いに接近及び離間するように移動し、
前記第2工具間隔変更機構は、前記1対の第2回転工具と共に1対の前記第2回転駆動機構を互いに接近及び離間するように移動する請求項1に記載の線材被膜除去装置。
【請求項3】
前記線材送給方向と直交しかつ前記第1方向と前記第2方向とに対して傾斜する第3方向に対し、それぞれ平行に移動する1対のスライドベースを備え、
一方の前記スライドベースに、一方の前記第1回転駆動機構と一方の前記第2回転駆動機構とが搭載されると共に、他方の前記スライドベースに、他方の前記第1回転駆動機構と他方の前記第2回転駆動機構とが搭載され、
前記1対のスライドベースが互いに逆向きとなる第1向きに移動されると、前記1対の第1回転工具が前記第1方向と前記第2方向の両方向で互いに接近する一方、前記1対の第2回転工具が前記第1方向と前記第2方向で互いに離間し、
前記1対のスライドベースが互いに逆向きとなる前記第1向きとは逆の第2向きに移動されると、前記1対の第1回転工具が前記第1方向と前記第2方向の両方向で互いに離間する一方、前記1対の第2回転工具が前記第1方向と前記第2方向で互いに接近する請求項2に記載の線材被膜除去装置。
【請求項4】
前記線材送給方向に延び、前記線材を挿通される線材ガイド孔を有する線材ガイド部材と、
前記線材ガイド部材の前記第1位置及び前記第2位置を分断してなり、前記線材が露出する第1分断部及び第2分断部を備える請求項1から3の何れか1の請求項に記載の線材被膜除去装置。
【請求項5】
前記線材ガイド孔及び前記線材は、断面四角形をなしている請求項4に記載の線材被膜除去装置。
【請求項6】
前記線材を送給する線材送給装置を有する請求項1から5の何れか1の請求項に記載の線材被膜除去装置。
【請求項7】
請求項1から6の何れか1の請求項に記載の線材被膜除去装置と、前記線材被膜除去装置から前記線材を取り込んで成形する線材成形機と、を備えてなり、
線材を送給する線材送給装置が前記線材被膜除去装置と前記線材成形機とに別々に設けられている線材成形システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、線材の被膜を除去する線材被膜除去装置及びそれを有する線材成形システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より線材の長手方向の任意の位置を1対の工具で挟んで線材を覆う被膜を除去し、1対の露出面を形成することが可能な線材被膜除去装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】WO2019/207989(段落[0019]、図5,6)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の技術では不可能であった露出面を線材に加工することが可能な技術の開発が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するためになされた請求項1の発明は、線材が直線状に延ばされた状態で送給される線材送給路と、前記線材送給路の第1位置で、第1方向から前記線材を挟み、前記線材の被膜を切除する1対の第1回転工具と、前記1対の第1回転工具を回転駆動する第1回転駆動機構と、前記線材送給路の第2位置で、前記第1方向と交差する第2方向から前記線材を挟み、前記線材の被膜を切除する1対の第2回転工具と、前記1対の第2回転工具を回転駆動する第2回転駆動機構と、前記1対の第1回転工具同士の間隔を変更する第1工具間隔変更機構と、前記1対の第2回転工具同士の間隔を変更する第2工具間隔変更機構と、を備える線材被膜除去装置である。
【0006】
請求項2の発明は、前記第1回転駆動機構は、対をなして前記1対の第1回転工具を別々に回転駆動し、前記第2回転駆動機構は、対をなして前記1対の第2回転工具を別々に回転駆動し、前記第1工具間隔変更機構は、前記1対の第1回転工具と共に1対の前記第1回転駆動機構を互いに接近及び離間するように移動し、前記第2工具間隔変更機構は、前記1対の第2回転工具と共に1対の前記第2回転駆動機構を互いに接近及び離間するように移動する請求項1に記載の線材被膜除去装置である。
【0007】
請求項3の発明は、前記線材送給方向と直交しかつ前記第1方向と前記第2方向とに対して傾斜する第3方向に対し、それぞれ平行に移動する1対のスライドベースを備え、一方の前記スライドベースに、一方の前記第1回転駆動機構と一方の前記第2回転駆動機構とが搭載されると共に、他方の前記スライドベースに、他方の前記第1回転駆動機構と他方の前記第2回転駆動機構とが搭載され、前記1対のスライドベースが互いに逆向きとなる第1向きに移動されると、前記1対の第1回転工具が前記第1方向と前記第2方向の両方向で互いに接近する一方、前記1対の第2回転工具が前記第1方向と前記第2方向で互いに離間し、前記1対のスライドベースが互いに逆向きとなる前記第1向きとは逆の第2向きに移動されると、前記1対の第1回転工具が前記第1方向と前記第2方向の両方向で互いに離間する一方、前記1対の第2回転工具が前記第1方向と前記第2方向で互いに接近する請求項2に記載の線材被膜除去装置である。
【0008】
請求項4の発明は、前記線材送給方向に延び、前記線材を挿通される線材ガイド孔を有する線材ガイド部材と、前記線材ガイド部材の前記第1位置及び前記第2位置を分断してなり、前記線材が露出する第1分断部及び第2分断部を備える請求項1から3の何れか1の請求項に記載の線材被膜除去装置である。
【0009】
請求項5の発明は、前記線材ガイド孔及び前記線材は、断面四角形をなしている請求項4に記載の線材被膜除去装置である。
【0010】
請求項6の発明は、前記線材を送給する線材送給装置を有する請求項1から5の何れか1の請求項に記載の線材被膜除去装置である。
【0011】
請求項7の発明は、請求項1から6の何れか1の請求項に記載の線材被膜除去装置と、前記線材被膜除去装置から前記線材を取り込んで成形する線材成形機と、を備えてなり、線材を送給する線材送給装置が前記線材被膜除去装置と前記線材成形機とに別々に設けられている線材成形システムである。
【発明の効果】
【0012】
本開示の線材被膜除去装置によれば、線材の長手方向における任意の位置に第1方向を向いた1対の露出面(以下、「第1露出面」という)と、第1方向と異なる第2方向を向いた1対の露出面(以下、「第2露出面」という)とを加工することができる。即ち、本開示の線材被膜除去装置によれば、従来では不可能であった露出面を線材に加工することが可能になる。
【0013】
1対の第1露出面を加工する1対の第1回転工具同士は、共通の回転駆動機構で回転駆動されてもよいし、請求項2の構成のように、1対の第1回転工具を別々に回転駆動する1対の第1回転駆動機構を備えた構成としてもよい。1対の第2露出面を加工する1対の第2回転工具同士に関しても同様である。なお、第1回転工具同士を共通の回転駆動機構で回転駆動するものに関しては、共通の回転体(ギヤやプーリ)を中心にして1対の第1回転工具が回動される構成が考えられる。1対の第2回転工具同士を共通の回転駆動機構で回転駆動するものに関しても同様である。
【0014】
第1工具間隔変更機構及び第2工具間隔変更機構は、第1回転工具を駆動する1対の第1回転駆動機構を、第1方向と平行に移動すると共に、第2回転工具を駆動する1対の第2回転駆動機構を、第2方向と平行に移動する構造(以下、「単純移動構造」という)以外に、請求項3の構造が考えられる。単純移動構造では、1対の第1回転駆動機構同士、及び、1対の第2回転駆動機構同士の相互の干渉を回避するために、第1回転駆動機構及び第2回転駆動機構の大きさや構造の制限が厳しくなるが、請求項3の構造では、そのような制限が緩和される。
【0015】
請求項4の構成によれば、線材が線材ガイド部材により被加工部の両側を支持されて安定するので、加工精度が向上する。
【0016】
請求項5の構成によれば、線材ガイド孔及び線材は、断面四角形をなしているので、加工時の線材の軸回りの回転及び捻れが防がれ、加工精度が向上する。
【0017】
請求項6の構成では、線材被膜除去装置自体が、線材を送給する線材送給装置を有するので、線材の長手方向における被加工部の位置精度が向上する。
【0018】
請求項7の線材成形システムは、線材被膜除去装置と線材成形機とが線材送給装置を別々に備えているので、それら線材被膜除去装置と線材成形機との間に線材の弛みを設けて線材被膜除去装置及び線材成形機の一方が他方を待つ動作を無くすことができ、効率良く線材から線材成形品を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本開示の第1実施形態に係る線材成形システム正面図
図2】(A)線材の一例を示す断面図、(B)線材成形品の一例を示す斜視図、(C)被膜除去加工された線材の一例を示す斜視図
図3】線材被膜除去装置の正面図
図4】線材被膜除去装置の上面図
図5】支持部材周辺の拡大断面図
図6】(A)図4におけるA-A断面図、(B)図4におけるB-B断面図
図7図3におけるC-C断面図
図8】1対のスライドベースを外した状態の図3におけるC-C断面図
図9】線材成形機の側面図
図10】線材に対し、1対の第1回転工具が近接し、1対の第2回転工具が離間した状態の斜視図
図11】線材に対し、1対の第1回転工具が離間し、1対の第2回転工具が近接した状態の斜視図
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図1図11を参照して、本開示の一実施形態に係る線材成形システム100について説明する。図1に示すように、線材成形システム100は、線材被膜除去装置10と線材成形機80とを備えてなり、線材90に対して線材被膜除去装置10にて被膜除去加工を行ってから線材成形機80にて線材成形品91に成形する。図2(A)には、その線材90の一例が示され、図2(B)には線材成形品91の一例が示されている。
【0021】
図2(A)に示すように、線材90は、例えば、導電性金属である線材本体90Aを絶縁性の被膜90Bで覆った構造をなし、その断面形状は例えば扁平な長方形になっている。また、線材本体90Aを構成する金属は、例えば銅又は銅合金であり、被膜90Bは、例えばエナメルである。
【0022】
なお、本実施形態の線材90は、断面が扁平の四角形であるが、これに限定されるものではなく、断面形状は、四角形以外の多角形、円形又は楕円形であってもよい。また、線材本体90Aを構成する金属は、銅又は銅合金に限定されるものではなく、成形可能な部材であれば、どのような部材であってもよく、非導電性の部材でもよい。線材被膜除去装置10が、線材成形機80と別個に使用される場合には、線材本体90Aは成形不可能な部材でもよい。また、被膜90Bは、本実施形態では、例えばエナメルであるが、絶縁性の樹脂であってもよく、線材本体90Aを被覆しているものであれば、絶縁性でなくてもよい。さらには、線材本体90A及び被膜90Bは、一層構造であってもよいし、多層構造であってもよい。
【0023】
図2(B)に示すように、本実施形態の線材成形品91は、例えば、コイルであり、コイル本体92から1対の延長部93が延びた構造をなしている。各延長部93の先端部には、先端面及び四側面で線材本体90Aが露出した電気接続部95が備えられている。
【0024】
線材被膜除去装置10は、図2(C)に示すように、線材90に対して、線材成形品91の展開長である所定間隔L0毎に所定長だけ被膜90Bを除去して線材本体90Aの露出面94を形成する。各露出面94は、線材90の上下の両面に位置する1対の第1露出面94Aと、線材90の横方向の両面に位置する1対の第2露出面94Bとからなる。そして、線材成形機80は、線材90を各露出面94の中央で切断する。これにより、半分の長さになった露出面94と切断面とによって前述の電気接続部95が形成される。
【0025】
なお、本実施形態の線材成形品91は、コイルであるが、例えば、U字状や、V字状であってもよいし、どのような形状であってもよい。また、電気接続部95は線材成形品91を構成する線材90の端部のみに備えられているが、それに限定されるものではなく任意の位置に配置されていてもよい。さらに、電気接続部95は、線材90の露出面94と切断面とからなるものに限らず、例えば、露出面94のみからなるものであってもよい。また、露出面94についても、1対の第1露出面94A及び1対の第2露出面94Bとからなるものに限らず、例えば、1対の第1露出面94A及び1対の第2露出面94Bの何れか一方のみのものであってもよい。
【0026】
以下、線材被膜除去装置10の構造について説明する。以下、線材被膜除去装置10においては、図3に示されている側を「前側」、その反対側を「後側」ということとし、図3の紙面と直交する方向を前後方向という。また、前後方向は、次述する線材送給路Rの線材90における横方向でもある。なお、図4~8において前向きを矢印「F」で示し、後向きを矢印「R」で示す。
【0027】
図3に示すように、線材被膜除去装置10は、線材90が送給される線材送給路Rを水平に延びた状態に備え、その線材送給路Rの一端部に線材送給装置11を有する。線材送給装置11は、線材送給路Rを挟んで上下方向で対向する1対のローラ12と、それらの回転駆動源であるサーボモータ13(図4参照)とを備える。そして、1対のローラ12の間に線材90が挟まれ、1対のローラ12が対称回転して線材90が線材送給路Rに沿って図3における右方向に向かって送給される。以下、線材送給路Rが延びる方向を、「線材送給方向H1」という。
【0028】
線材送給装置11より線材送給方向H1の上流側には、線材ガイド部材20が設けられている。線材ガイド部材20には、線材送給方向H1に貫通するガイド孔20Hが備えられている。そのガイド孔20Hの断面形状は、上述した線材90が丁度通過可能となるように上下方向に扁平な長方形をなしている(図6(A)及び図6(B)参照)。そして、ガイド孔20Hが線材送給路Rの一部をなし、線材90はガイド孔20Hを通って線材送給装置11に案内される。
【0029】
なお、線材送給装置11は、線材ガイド部材20に対して線材送給方向H1の下流側に配置されていたが、例えば、線材ガイド部材20に対して線材送給方向H1の上流側であってもよいし、途中位置に配置されていてもよい。
【0030】
図3及び図4に示すように、線材ガイド部材20には、線材送給方向H1の途中の2箇所に第1と第2の分断部21,22が設けられている。そして、図3に示すように、上流側の第1の分断部21で露出する線材90に対し、上下方向の両側から1対の第1回転工具31が接近及び離間すると共に、図4に示すように、下流側の第2の分断部22で露出する線材90に対し、横方向の両側から1対の第2回転工具32が接近及び離間するようになっている。これらにより、線材90の任意の位置の被膜90Bが第1及び第2の回転工具31,32によって除去される。
【0031】
具体的には、線材ガイド部材20は、全体的には断面四角形の棒状になっていて、図5に示すように、第1の分断部21より上流側の上流側ガイド部20Aと、第1と第2の分断部21,22の間の中間ガイド部20Bと、第2の分断部22より下流側の下流側ガイド部20Cとに分かれている。また、図3に示すように、第1の分断部21において突き合わされた上流側ガイド部20A及び中間ガイド部20Bの各端部は、線材送給路R(ガイド孔20H)を挟んだ上下に1対の斜面を有する先細り形状をなし、図4に示すように、第2の分断部22において突き合わされた中間ガイド部20B及び下流側ガイド部20Cの各端部は、線材送給路R(ガイド孔20H)を挟んだ前後に1対の斜面を有する先細り形状をなしている。
【0032】
上流側ガイド部20A、中間ガイド部20B及び下流側ガイド部20C(これらを纏めて単に「ガイド部20A,20B,20C」という)は、図4に示すように、支持部材23によって一直線状に並んだ状態に支持されている。そして、ガイド部20A,20B,20Cと支持部材23とを含んでなるガイドユニット20Uが、支持台15と支持壁14との間に差し渡されている。
【0033】
図5に示すように、支持部材23は、例えば、角筒体24の一端にブリッジ体25を備えてなる。ブリッジ体25は、例えば、線材送給方向H1に並ぶ3つの対向壁25A,25B,25Cを連絡壁25Sで連絡した構造をなしている。対向壁25A,25B,25Cは、線材送給方向H1から見ると図6(A)に示すように例えば長方形の板状をなし、その3つの角部が面取りされかつ、長方形の4辺は、上下方向に対して45°の角度で傾斜している。また、3つの対向壁25A,25B,25Cには、断面四角形の嵌合孔25Hが形成されている。そして、図5に示すように、上流側の対向壁25Aの嵌合孔25Hに、上流側ガイド部20Aにおける下流側の端部寄り位置が嵌合して溶接等により固定され、中央の対向壁25Bの嵌合孔25Hに、中間ガイド部20Bの中間部が嵌合して溶接等により固定され、下流側の対向壁25Cの嵌合孔25Hに、下流側ガイド部20Cにおける上流側の端部寄り位置が嵌合して溶接等により固定されている。
【0034】
詳細には、前述の対向壁25A,25B,25Cの線材送給方向H1から見た形状である長方形の長辺は、図6(A)に示すように、短辺より僅かに長く、一方の短辺が斜め上後側に位置する一方、他方の短辺が斜め下前側に位置する。また、長方形の上下の両角部が水平面となるように面取りされると共に、後側の角部が鉛直面になるように面取りされている。また、連絡壁25Sは、線材送給方向H1に延びる帯板状をなし、その幅方向は、対向壁25A,25B,25Cの斜め上後側の短辺と平行になるように配置されている。そして、隣合う対向壁25A,25Bの間、及び対向壁25B,25Cの間に挟まれて、それらの対向壁25A,25B,25Cの斜め上後側の短辺の縁部に接続されている。
【0035】
図5に示すように、前述の角筒体24は、ブリッジ体25の上流側の端面から線材送給方向H1の上流側に延びている。また、角筒体24の4つの側面は、上下方向に対して45°の角度で傾斜している。そして、角筒体24は、上流側ガイド部20Aの長手方向の途中部分の外側に遊嵌し、上流側ガイド部20Aは、角筒体24からさらに上流側に延びている。また、角筒体24の上流側の端部には、側方に張り出す図示しないフランジが備えられている。
【0036】
図3に示すように前述の支持台15は、線材送給装置11に対する線材送給方向H1の上流側の隣りに位置し、線材送給装置11と共に支持テーブル60の上面に固定されている。また、前述の支持壁14は、支持テーブル60の上面から鉛直に起立し、線材送給方向H1と直交する主平面を表裏に有する板状をなしている。また、支持壁14には、線材ガイド部材20に対応した四角形の貫通孔14Hが形成されている。
【0037】
そして、図4に示すように、上流側ガイド部20Aのうち角筒体24から線材送給方向H1の上流側に突出する部分が支持壁14の支持壁14Hに嵌合されると共に、角筒体24の図示しないフランジが支持壁14の主平面に重ねられてボルト止めされている。また、図3に示すように、下流側ガイド部20Cは、長手方向の途中部分を支持台15の上面に重ねられて固定され、線材送給装置11における1対のローラ12の手前位置まで延びている。なお、下流側ガイド部20Cの下流側端部は、線材送給路R(ガイド孔20H)を挟んで上下に1対の斜面を有する先細り形状をなしている。
【0038】
なお、支持部材23のブリッジ体25は、線材送給方向H1から見て長方形状をなしていたが、例えば、円形であってもよいし、どのような形状であってもよい。また、角筒体24についても、同様に、例えば、円筒体であってもよく、どのような形状であってもよい。さらに、角筒体24は、内側に上流側ガイド部20Aが遊嵌していたが、これに限らず、例えば、嵌合していてもよい。また、ガイド部20A,20B,20Cの支持構造は、上述した支持部材23に限らず、例えば、上流側ガイド部20Aと中間ガイド部20Bとの間、及び、中間ガイド部20Bと下流側ガイド部20Cとの間を後述する1対の第1回転工具31及び1対の第2回転工具32との干渉を避けて帯状部材にてそれぞれ連結してもよい。
【0039】
1対の第1回転工具31は、線材送給装置11の前後方向と平行な円柱状をなし、図7に示した1対の第1回転駆動機構41によって別々に駆動される。各第1回転駆動機構41は、モータ43と支持部44とを第1回転工具31の同軸上に備える。また、1対の第1回転駆動機構41は、互いに干渉しないようにするために、線材送給路Rを挟んで前後に分けて配置されている。具体的には、1対の第1回転工具31のうち上側の第1回転工具31の第1回転駆動機構41は、モータ43及び支持部44が第1回転工具31より前側に配置され、下側の第1回転工具31の第1回転駆動機構41は、モータ43及び支持部44が第1回転工具31より後側に配置されている。
【0040】
1対の第2回転工具32も、上下方向と平行な円柱状をなし、第1回転駆動機構41と同じ構造の1対の第2回転駆動機構42によって別々に駆動される。また、1対の第2回転駆動機構42も、互いに干渉しないようにするために、線材送給路Rを挟んで上下に分けて配置されている。具体的には、1対の第2回転工具32のうち前側の第2回転工具32の第2回転駆動機構42は、モータ43及び支持部44が第2回転工具32より上側に配置され、後側の第2回転工具32の第2回転駆動機構42は、モータ43及び支持部44が第2回転工具32より下側に配置されている。
【0041】
1対の第1回転駆動機構41及び1対の第2回転駆動機構42は、1対の第1回転工具31同士及び1対の第2回転工具32同士が対称回転するように駆動する。そして、第1回転工具31及び第2回転工具32は、外周面を線材90に押し付けて被膜90Bを除去する。
【0042】
1対の第1回転工具31同士の間隔を変更する第1工具間隔変更機構と、1対の第2回転工具32同士の間隔を変更する第2工具間隔変更機構とは、1対のスライド機構70を共有していて、1対の第1回転工具31同士が近づくと1対の第2回転工具32同士が離れ、1対の第1回転工具31同士が離れると1対の第2回転工具32同士が近づくようになっている。
【0043】
具体的には、図8に示すように、1対のスライド機構70は、線材送給路Rを中心にして点対称に配置され、各スライド機構70は、支持壁14の主平面と平行な面内で上下方向及び前後方向に対して例えば45°の角度で前上りに傾斜する方向(以下、「特定傾斜方向H2」という。)に延びるガイドレール72とボールネジ73とを備える。それらガイドレール72とボールネジ73とを支持するために、特定傾斜方向H2に延びる帯板状の固定プレート71が支持壁14のうち支持台15を向く主平面に重ねて固定されている。そして、固定プレート71のうち支持壁14の主平面のうち線材送給路Rに近い側にガイドレール72が固定されている。また、固定プレート71の主平面のうち線材送給路Rから遠い側には、固定プレート71の特定傾斜方向H2における一端部と他端寄り位置とに1対の突壁71Aが設けられ、それら1対の突壁71Aにボールネジ73の両端部が回転可能に支持されている。さらには、固定プレート71の他端部からはモータ支持突壁71Bが突出している。また、固定プレート71には減速機付サーボモータ74の一端部が支持され、その減速機付サーボモータ74の回転出力軸とボールネジ73とが一体回転可能に連結されている。さらには、ボールネジ73に螺合しているボールナット75と、ガイドレール72にスライド可能に係合しかつボールナット75の両側に位置する1対のスライダ76とにスライドベース77が固定されている。そして、減速機付サーボモータ74によりスライドベース77が任意のスライド位置に移動される。
【0044】
また、本実施形態では、線材ガイド部材20より前側のスライド機構70(以下、単に「前側のスライド機構70」という)の減速機付サーボモータ74が固定プレート71の上端に位置する一方、線材ガイド部材20より後側のスライド機構70(以下、単に「後側のスライド機構70」という)の減速機付サーボモータ74が固定プレート71の下端に位置する。さらには、支持テーブル60の天板60Aには、前側のスライド機構70の下端部を受容する貫通孔60Bが形成されている。
【0045】
なお、本実施形態では、上述の特定傾斜方向H2が特許請求の範囲の「第3方向」に相当し、上下方向が特許請求の範囲の「第1方向」に相当し、前後方向が特許請求の範囲の「第2方向」に相当する。
【0046】
スライドベース77は、特定傾斜方向H2に延びかつ固定プレート71と平行な帯板状をなしている。そして、前側のスライドベース77には、その上端部に、上側の第1回転駆動機構41のモータ43及び支持部44が固定され、下端部に、台座部材78(図3参照)を介して後側の第2回転駆動機構42のモータ43及び支持部44が固定されている。一方、後側のスライドベース77には、下端部に、下側の第1回転駆動機構41のモータ43及び支持部44が固定され、上端部に、台座部材78を介して前側の第2回転駆動機構42のモータ43及び支持部44が固定されている。
【0047】
そして、前側のスライドベース77が斜め下方に移動する一方、後側のスライドベース77が斜め上方に移動することで、図10に示すように、1対の第1回転工具31同士が上下方向で互いに接近する一方、1対の第2回転工具32が前後方向で互いに離間し、前側のスライドベース77が斜め上方に移動する一方、後側のスライドベース77が斜め下方に移動することで、図11に示すように、1対の第1回転工具31同士が上下方向で互いに離間する一方、1対の第2回転工具32が前後方向で互いに接近する。なお、図10及び図11には、1対の第1回転工具31が平行移動する架空の平面が平面K1として示され、1対の第2回転工具32が平行移動する架空の平面が平面K2として示されている。
【0048】
なお、1対の第1回転工具31同士が上下方向で互いに接近及び離間するときには、前後方向でも接近及び離間する。1対の第2回転工具32に関しても同様である。また、上側の第1回転工具31及び下側の第2回転工具32は、ブリッジ体25の連絡壁25Sと線材ガイド部材20との間の空間に対して進退するように移動する(図6参照)。
【0049】
なお、上記実施形態では、一方の第1回転駆動機構41と一方の第2回転駆動機構42とが共通のスライドベース77に固定されてセットになって移動していたが、これに限るものでなく、以下の構成であってもよい。具体的には、例えば、ガイドレール72に設けられた1対のスライダ76のうち、一方のスライダ76に第1回転駆動機構41のみが固定されたスライドベースを固定し、他方のスライダ76に第2回転駆動機構42のみが固定されたスライドベースを固定し、これら2つのスライドベースを別々の駆動源にて移動させてもよい。また、他方の第1回転駆動機構41と他方の第2回転駆動機構42とについても同様である。
【0050】
なお、上記実施形態では、スライドベース77がボールネジ73及びボールナット75によってスライドしていたが、スライドベース77を移動可能な構成であればどのような構造であってもよく、例えば、ラックアンドピニオン機構によりスライドさせてもよい。
【0051】
なお、上記実施形態では、1対のスライドベース77が支持壁14の主平面と平行な面内で上下方向及び前後方向に対して45°の角度で傾斜した方向に移動する構成になっていたが、この角度に限らず、例えば、線材90の形状又は1対の回転工具31及び1対の回転工具32の傾きに合わせて適宜変更してもよい。
【0052】
線材被膜除去装置10の構造に関する説明は以上である。次に、線材成形機80の構造について説明する。図1に示すように、線材成形機80にも線材90を送給することが可能な線材送給装置81が備えられている。そして、線材送給装置81から送給される線材90がクイル82のガイド孔に通されて加工ステージSに送給される。図9に示すように、加工ステージSには、線材90を挟んで曲げ成形等をすることが可能な複数の成形ツール83と、線材90を切断することが可能な切断ツール84とが備えられている。これらにより、前述した線材成形品91が、順次、成形される。
【0053】
なお、本実施形態では、線材被膜除去装置10の線材送給装置11と線材成形機80の線材送給装置81とは、同一直線上に線材送給路Rを有するが、それに限定されるものではなく、線材被膜除去装置10の線材送給路Rと線材成形機80の線材送給路Rが上下にずれていてもよいし、上方から見て異なる方向を向いていてもよい。
【0054】
線材成形システム100の構成に関する説明は以上である。次に、線材被膜除去装置10及び線材成形システム100の作用効果について説明する。線材成形システム100が停止した状態では、線材被膜除去装置10においては1対の第1回転工具31と1対の第2回転工具32は、共に線材送給路Rから離間した原点位置に配置されている。この状態で線材被膜除去装置10の線材送給路Rに線材90が通され、その先端が線材送給装置11の1対のローラ12に差し込まれる。そして、線材被膜除去装置10が起動されると、1対の第1回転工具31が接近し、線材ガイド部材20の第1の分断部21において線材90の上下の両面に当接する(図6(A)及び図10参照)。このとき、1対の第2回転工具32は離間して線材90から横方向に離れている。この状態で線材送給装置11が線材90を所定長だけ送給する。これにより、線材90の上下の両面から所定長分の被膜90Bが除去され、1対の第1露出面94Aが形成される。
【0055】
1対の第1露出面94Aが形成されたら、1対の第1回転工具31が離間して線材90から離れると共に、1対の第2回転工具32が接近して線材90に近づいていく。そして、第1露出面94Aの一端が線材ガイド部材20の第2の分断部22に到達したところで1対の第2回転工具32が線材90の横方向の両面に当接する(図6(B)及び図11参照)。このとき、1対の第1回転工具31は離間して線材90から上下方向に離れている。この状態で線材送給装置11が線材90を所定長だけ送給する。これにより、線材90の横方向の両面から所定長分の被膜90Bが除去されて1対の第2露出面94Bが形成される。これにより、1対の第1露出面94Aと1対の第2露出面94Bとからなる露出面94が、線材90に形成される。また、1対の第2露出面94Bが形成されたら、1対の第1回転工具31及び1対の第2回転工具32が原点位置に戻る。そして、線材被膜除去装置10は露出面94が線材90に所定間隔L0で形成されるように上記動作を繰り返す。
【0056】
線材被膜除去装置10から線材成形機80に向かって線材90が所定長さ分だけ延びたら線材90が線材成形機80の線材送給装置81に取り込まれ、図1に示すように、線材被膜除去装置10と線材成形機80との間で線材90が撓んだ状態にされる。具体的には、線材被膜除去装置10と線材成形機80との装置間距離に対して少なくとも1つの線材成形品91の展開長分(即ち、前述の所定間隔L0分)だけ長い線材90が線材送給装置11,81の間に配置されるようにセットされる。そして、線材被膜除去装置10の線材成形品91の1つ分の線材90に露出面94を加工して送給する1サイクルの時間と、線材成形機80の1つの線材90を成形する1サイクルの時間とが同じになるように線材被膜除去装置10と線材成形機80とが同期して動作する。これにより、線材被膜除去装置10と線材成形機80とが一定の動作を繰り返して、線材成形品91が順次製造される。ここで、線材被膜除去装置10と線材成形機80とは、それぞれ線材送給装置11,81を有し、線材被膜除去装置10と線材成形機80との間で線材90が撓んでいるので、1サイクル中に線材被膜除去装置10及び線材成形機80の一方が他方を待つようなことはなく、スムーズに線材被膜除去装置10と線材成形機80とが動作する。
【0057】
以上説明したように、本実施形態の線材被膜除去装置10によれば、線材90の長手方向における任意の位置に上下方向(第1方向)を向いた1対の第1露出面94Aと、線材被膜除去装置10の前後方向(第2方向)を向いた1対の第2露出面94Bとを加工することができる。即ち、本実施形態の線材被膜除去装置10によれば、従来の線材被膜除去装置では不可能であった露出面94の加工を線材90に対して行うことが可能になる。また、線材90は線材ガイド部材20により被加工部の両側を支持されて安定するので、加工精度が向上する。また、線材90及びそれが通される線材ガイド部材20のガイド孔20Hは、断面四角形をなしているので、加工時の線材90の軸回りの回転及び捻れが防がれ、加工精度が向上する。さらには、線材被膜除去装置10自体が、線材90を送給する線材送給装置11を有するので、線材90の長手方向における被加工部の位置精度が向上する。また、本実施形態の線材成形システム100では、線材被膜除去装置10と線材成形機80とが線材送給装置11、81を別々に備えているので、それら線材被膜除去装置10と線材成形機80との間に線材90の弛みを設けて線材被膜除去装置10及び線材成形機80の一方が他方を待つ動作を不要にすることができ、効率良く線材90から線材成形品91を製造することができる。
【0058】
ところで、1対の第1回転工具31の第1方向(具体的には、上下方向)における間隔を変更する第1工具間隔変更機構及び1対の第2回転工具32の第2方向(具体的には、前後方向)における間隔を変更する第2工具間隔変更機構は、第1回転工具31を駆動する1対の第1回転駆動機構41を、第1方向と平行に移動すると共に、第2回転工具32を駆動する1対の第2回転駆動機構42を、第2方向と平行に移動する構造(以下、「単純移動構造」という)であってもよいが、そのような単純移動構造では、1対の第1回転駆動機構41同士、及び、1対の第2回転駆動機構42同士の相互の干渉を回避するために、第1回転駆動機構41及び第2回転駆動機構42の大きさの制限が厳しくなる。これに対し、本実施形態の構造のように第1工具間隔変更機構及び第2工具間隔変更機構が1対のスライド機構70を共有して、一方の第1回転工具31と一方の第2回転工具32をセットにして移動すると共に、他方の第1回転工具31と他方の第2回転工具32をセットにして移動する構成にすれば、第1回転駆動機構41及び第2回転駆動機構42の干渉を容易に回避することができ、それらの大きさや構造の制限が緩和される。
【0059】
なお、本実施形態では、1対の第1露出面94Aと1対の第2露出面94Bとは、線材90の長手方向において同じ位置に配置されているが、離れた位置に配置されていてもよい。また、本実施形態では、1対の第1回転工具31が1対の第1露出面94Aを加工するために接近・離間する第1方向(上下方向)と、1対の第2回転工具32が1対の第2露出面94Bを加工するために接近・離間する方向(前後方向)とが直交しているが、90度以外の角度で交差していてもよい。
【0060】
また、1対の第1回転工具31同士及び1対の第2回転工具32同士は、共通の回転駆動機構で回転駆動されてもよい。1対の第1回転工具31同士を共通の回転駆動機構で回転駆動するものに関しては、共通の回転体(ギヤやプーリ)を中心にして1対の第1回転工具31が回動される構成が考えられる。1対の第2回転工具32同士の間隔を変更する第2工具間隔変更機構に関しても同様である。
【0061】
なお、本実施形態では、1対の第1露出面94Aと1対の第2露出面94Bからなる露出面94を例に説明したが、例えば、1対の第1露出面94A及び1対の第2露出面94Bの何れか一方のみで露出面が形成されてもよい。換言すれば、本実施形態の線材被膜除去装置10によれば、1対の第1露出面94A及び1対の第2露出面94Bからなる露出面94と、1対の第1露出面94Aのみの露出面と、1対の第2露出面94Bのみの露出面の複数種類の露出面を形成することができる。
【0062】
なお、本明細書及び図面には、特許請求の範囲に含まれる技術の具体例が開示されているが、特許請求の範囲に記載の技術は、これら具体例に限定されるものではなく、具体例を様々に変形、変更したものも含み、また、具体例から一部を単独で取り出したものも含む。
【符号の説明】
【0063】
10 線材被膜除去装置
11,81 線材送給装置
20 線材ガイド部材
20H ガイド孔
21 第1の分断部
22 第2の分断部
31 第1回転工具
32 第2回転工具
41 第1回転駆動機構
42 第2回転駆動機構
77 スライドベース
80 線材成形機
90 線材
90B 被膜
100 線材成形システム
R 線材送給路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【手続補正書】
【提出日】2022-07-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
線材が直線状に延ばされた状態で送給される線材送給路と、
前記線材送給路の第1位置で、第1方向から前記線材を挟み、前記線材の被膜を除去する1対の第1回転工具と、
前記1対の第1回転工具を回転駆動する第1回転駆動機構と、
前記線材送給路の第2位置で、前記第1方向と交差する第2方向から前記線材を挟み、前記線材の被膜を除去する1対の第2回転工具と、
前記1対の第2回転工具を回転駆動する第2回転駆動機構と、
前記1対の第1回転工具同士の間隔を変更する第1工具間隔変更機構と、
前記1対の第2回転工具同士の間隔を変更する第2工具間隔変更機構と、
を備え
前記線材の長手方向に部分的に配置される加工対象部位の前記被膜の一部を、前記1対の第1回転工具で除去してから、前記加工対象部位の前記被膜の残りを前記1対の第2回転工具で除去する線材被膜除去装置。
【請求項2】
前記第1回転駆動機構は、対をなして前記1対の第1回転工具を別々に回転駆動し、
前記第2回転駆動機構は、対をなして前記1対の第2回転工具を別々に回転駆動し、
前記線材送給方向と直交しかつ前記第1方向と前記第2方向とに対して傾斜する第3方向に対し、それぞれ平行に移動する1対のスライドベースを備え、
一方の前記スライドベースに、一方の前記第1回転駆動機構と一方の前記第2回転駆動機構とが搭載されると共に、他方の前記スライドベースに、他方の前記第1回転駆動機構と他方の前記第2回転駆動機構とが搭載されて、前記第1工具間隔変更機構及び前記第2工具間隔変更機構が形成され、
前記1対のスライドベースが互いに逆向きとなる第1向きに移動されると、前記1対の第1回転工具が前記第1方向と前記第2方向の両方向で互いに接近する一方、前記1対の第2回転工具が前記第1方向と前記第2方向で互いに離間し、
前記1対のスライドベースが互いに逆向きとなる前記第1向きとは逆の第2向きに移動されると、前記1対の第1回転工具が前記第1方向と前記第2方向の両方向で互いに離間する一方、前記1対の第2回転工具が前記第1方向と前記第2方向で互いに接近する請求項1に記載の線材被膜除去装置。
【請求項3】
前記線材送給方向に延び、前記線材を挿通される線材ガイド孔を有する線材ガイド部材と、
前記線材ガイド部材の前記第1位置及び前記第2位置を分断してなり、前記線材が露出する第1分断部及び第2分断部を備える請求項1又は2に記載の線材被膜除去装置。
【請求項4】
前記線材ガイド孔及び前記線材は、断面四角形をなしている請求項3に記載の線材被膜除去装置。
【請求項5】
前記線材を送給する線材送給装置を有する請求項1から4の何れか1の請求項に記載の線材被膜除去装置。
【請求項6】
請求項1から5の何れか1の請求項に記載の線材被膜除去装置と、前記線材被膜除去装置から前記線材を取り込んで成形する線材成形機と、を備えてなり、
線材を送給する線材送給装置が前記線材被膜除去装置と前記線材成形機とに別々に設けられている線材成形システム。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0005
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0005】
上記課題を解決するためになされた請求項1の発明は、線材が直線状に延ばされた状態で送給される線材送給路と、前記線材送給路の第1位置で、第1方向から前記線材を挟み、前記線材の被膜を除去する1対の第1回転工具と、前記1対の第1回転工具を回転駆動する第1回転駆動機構と、前記線材送給路の第2位置で、前記第1方向と交差する第2方向から前記線材を挟み、前記線材の被膜を除去する1対の第2回転工具と、前記1対の第2回転工具を回転駆動する第2回転駆動機構と、前記1対の第1回転工具同士の間隔を変更する第1工具間隔変更機構と、前記1対の第2回転工具同士の間隔を変更する第2工具間隔変更機構と、を備え、前記線材の長手方向に部分的に配置される加工対象部位の前記被膜の一部を、前記1対の第1回転工具で除去してから、前記加工対象部位の前記被膜の残りを前記1対の第2回転工具で除去する線材被膜除去装置である。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0006
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
請求項の発明は、前記第1回転駆動機構は、対をなして前記1対の第1回転工具を別々に回転駆動し、前記第2回転駆動機構は、対をなして前記1対の第2回転工具を別々に回転駆動し、前記線材送給方向と直交しかつ前記第1方向と前記第2方向とに対して傾斜する第3方向に対し、それぞれ平行に移動する1対のスライドベースを備え、
一方の前記スライドベースに、一方の前記第1回転駆動機構と一方の前記第2回転駆動機構とが搭載されると共に、他方の前記スライドベースに、他方の前記第1回転駆動機構と他方の前記第2回転駆動機構とが搭載されて、前記第1工具間隔変更機構及び前記第2工具間隔変更機構が形成され、前記1対のスライドベースが互いに逆向きとなる第1向きに移動されると、前記1対の第1回転工具が前記第1方向と前記第2方向の両方向で互いに接近する一方、前記1対の第2回転工具が前記第1方向と前記第2方向で互いに離間し、前記1対のスライドベースが互いに逆向きとなる前記第1向きとは逆の第2向きに移動されると、前記1対の第1回転工具が前記第1方向と前記第2方向の両方向で互いに離間する一方、前記1対の第2回転工具が前記第1方向と前記第2方向で互いに接近する請求項に記載の線材被膜除去装置。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0008
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0008】
請求項の発明は、前記線材送給方向に延び、前記線材を挿通される線材ガイド孔を有する線材ガイド部材と、前記線材ガイド部材の前記第1位置及び前記第2位置を分断してなり、前記線材が露出する第1分断部及び第2分断部を備える請求項1又は2に記載の線材被膜除去装置である。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0009】
請求項の発明は、前記線材ガイド孔及び前記線材は、断面四角形をなしている請求項に記載の線材被膜除去装置である。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0010
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0010】
請求項の発明は、前記線材を送給する線材送給装置を有する請求項1からの何れか1の請求項に記載の線材被膜除去装置である。
【手続補正8】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0011
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0011】
請求項の発明は、請求項1からの何れか1の請求項に記載の線材被膜除去装置と、前記線材被膜除去装置から前記線材を取り込んで成形する線材成形機と、を備えてなり、線材を送給する線材送給装置が前記線材被膜除去装置と前記線材成形機とに別々に設けられている線材成形システムである。
【手続補正9】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0014
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0014】
第1工具間隔変更機構及び第2工具間隔変更機構は、第1回転工具を駆動する1対の第1回転駆動機構を、第1方向と平行に移動すると共に、第2回転工具を駆動する1対の第2回転駆動機構を、第2方向と平行に移動する構造(以下、「単純移動構造」という)以外に、請求項の構造が考えられる。単純移動構造では、1対の第1回転駆動機構同士、及び、1対の第2回転駆動機構同士の相互の干渉を回避するために、第1回転駆動機構及び第2回転駆動機構の大きさや構造の制限が厳しくなるが、請求項の構造では、そのような制限が緩和される。
【手続補正10】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0015
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0015】
請求項の構成によれば、線材が線材ガイド部材により被加工部の両側を支持されて安定するので、加工精度が向上する。
【手続補正11】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0016
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0016】
請求項の構成によれば、線材ガイド孔及び線材は、断面四角形をなしているので、加工時の線材の軸回りの回転及び捻れが防がれ、加工精度が向上する。
【手続補正12】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0017
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0017】
請求項の構成では、線材被膜除去装置自体が、線材を送給する線材送給装置を有するので、線材の長手方向における被加工部の位置精度が向上する。
【手続補正13】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0018
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0018】
請求項の線材成形システムは、線材被膜除去装置と線材成形機とが線材送給装置を別々に備えているので、それら線材被膜除去装置と線材成形機との間に線材の弛みを設けて線材被膜除去装置及び線材成形機の一方が他方を待つ動作を無くすことができ、効率良く線材から線材成形品を製造することができる。
【手続補正書】
【提出日】2022-09-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
線材が直線状に延ばされた状態で送給される線材送給路と、
前記線材送給路の第1位置で、第1方向から前記線材を挟み、前記線材の被膜を除去する1対の第1回転工具と、
前記1対の第1回転工具を回転駆動する第1回転駆動機構と、
前記線材送給路の第2位置で、前記第1方向と交差する第2方向から前記線材を挟み、前記線材の被膜を除去する1対の第2回転工具と、
前記1対の第2回転工具を回転駆動する第2回転駆動機構と、
前記線材の送給に伴って前記1対の第1回転工具同士を互いに接近及び離間させる第1工具間隔変更機構と、
前記線材の送給に伴って前記1対の第2回転工具同士を互いに接近及び離間させる第2工具間隔変更機構と、
を備え、
前記線材の長手方向に部分的に配置される加工対象部位の前記被膜の一部を、前記1対の第1回転工具で除去してから、前記加工対象部位の前記被膜の残りを前記1対の第2回転工具で除去する線材被膜除去装置。
【請求項2】
前記第1回転駆動機構は、対をなして前記1対の第1回転工具を別々に回転駆動し、
前記第2回転駆動機構は、対をなして前記1対の第2回転工具を別々に回転駆動し、
前記線材送給方向と直交しかつ前記第1方向と前記第2方向とに対して傾斜する第3方向に対し、それぞれ平行に移動する1対のスライドベースを備え、
一方の前記スライドベースに、一方の前記第1回転駆動機構と一方の前記第2回転駆動機構とが搭載されると共に、他方の前記スライドベースに、他方の前記第1回転駆動機構と他方の前記第2回転駆動機構とが搭載されて、前記第1工具間隔変更機構及び前記第2工具間隔変更機構が形成され、
前記1対のスライドベースが互いに逆向きとなる第1向きに移動されると、前記1対の第1回転工具が前記第1方向と前記第2方向の両方向で互いに接近する一方、前記1対の第2回転工具が前記第1方向と前記第2方向で互いに離間し、
前記1対のスライドベースが互いに逆向きとなる前記第1向きとは逆の第2向きに移動されると、前記1対の第1回転工具が前記第1方向と前記第2方向の両方向で互いに離間する一方、前記1対の第2回転工具が前記第1方向と前記第2方向で互いに接近する請求項1に記載の線材被膜除去装置。
【請求項3】
前記線材送給方向に延び、前記線材を挿通される線材ガイド孔を有する線材ガイド部材と、
前記線材ガイド部材の前記第1位置及び前記第2位置を分断してなり、前記線材が露出する第1分断部及び第2分断部を備える請求項1又は2に記載の線材被膜除去装置。
【請求項4】
前記線材ガイド孔及び前記線材は、断面四角形をなしている請求項3に記載の線材被膜除去装置。
【請求項5】
前記線材を送給する線材送給装置を有する請求項1から4の何れか1の請求項に記載の線材被膜除去装置。
【請求項6】
請求項1から5の何れか1の請求項に記載の線材被膜除去装置と、前記線材被膜除去装置から前記線材を取り込んで成形する線材成形機と、を備えてなり、
線材を送給する線材送給装置が前記線材被膜除去装置と前記線材成形機とに別々に設けられている線材成形システム。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0005
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0005】
上記課題を解決するためになされた請求項1の発明は、線材が直線状に延ばされた状態で送給される線材送給路と、前記線材送給路の第1位置で、第1方向から前記線材を挟み、前記線材の被膜を除去する1対の第1回転工具と、前記1対の第1回転工具を回転駆動する第1回転駆動機構と、前記線材送給路の第2位置で、前記第1方向と交差する第2方向から前記線材を挟み、前記線材の被膜を除去する1対の第2回転工具と、前記1対の第2回転工具を回転駆動する第2回転駆動機構と、前記線材の送給に伴って前記1対の第1回転工具同士を互いに接近及び離間させる第1工具間隔変更機構と、前記線材の送給に伴って前記1対の第2回転工具同士を互いに接近及び離間させる第2工具間隔変更機構と、を備え、前記線材の長手方向に部分的に配置される加工対象部位の前記被膜の一部を、前記1対の第1回転工具で除去してから、前記加工対象部位の前記被膜の残りを前記1対の第2回転工具で除去する線材被膜除去装置である。