(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023146178
(43)【公開日】2023-10-12
(54)【発明の名称】穀粉焼成食品コーティング用油脂組成物
(51)【国際特許分類】
A23D 9/00 20060101AFI20231004BHJP
A23D 7/01 20060101ALI20231004BHJP
A21D 13/28 20170101ALN20231004BHJP
A21D 13/24 20170101ALN20231004BHJP
A21D 13/80 20170101ALN20231004BHJP
【FI】
A23D9/00 510
A23D7/01
A21D13/28
A21D13/24
A21D13/80
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022053239
(22)【出願日】2022-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】315015162
【氏名又は名称】不二製油株式会社
(72)【発明者】
【氏名】眞々田 基
(72)【発明者】
【氏名】唐谷 直宏
(72)【発明者】
【氏名】円谷 恭子
【テーマコード(参考)】
4B026
4B032
【Fターム(参考)】
4B026DC02
4B026DG03
4B026DK01
4B026DP01
4B026DP03
4B026DP10
4B032DB22
4B032DK10
4B032DK18
4B032DL20
4B032DP02
4B032DP54
(57)【要約】
【課題】焼き菓子の外観を損ねない、被覆固化後も透明なコーティング用油脂を提供すること。
【解決手段】ジグリセリンモノオレイン酸エステル(ジグリセリンモノオレート)を0.7重量%以上含有するコーティング用油脂組成物を調製する。該乳化剤以外の油脂配合には通常一般のコーティング用途の油脂や油脂混合物等を適宜利用することができる。本発明の油脂組成物は焼き菓子の表面で固化後も白色化しないため、その質感や焼き色を遮ることがない。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジグリセリンモノオレイン酸エステルを0.7重量%以上含有する、穀粉焼成食品コーティング用油脂組成物。
【請求項2】
カカオマス及び/又はココア分を含有しない、請求項1に記載のコーティング用油脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はコーティング用油脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
焼き菓子の表面に油脂組成物をコーティング(被覆)することは広く行われている。代表的にはコーティングチョコレート類であり、風味を付与したり、同時に食感にも変化をつけたりする目的において主に使用される。(例えば特許文献1、2)
一方、チョコレート類の風味を必ずしも必要とせず、無味ないしはプレーンな風味が求められる場合もある。例えば水分バリヤー性のある油脂配合を用いて焼き菓子の表面を被覆し、これより水分の多い食品(ベーカリー生地、クリーム、フィリング等)と組み合わせたパン、洋菓子などを製造する用途などである。
しかし油脂を主体とする組成物を被覆する場合、常温域での結晶量の多い油脂を使用し、かつその用途や目的によっては被覆層を一定以上に厚くする必要がある。特に焼き菓子表面に被覆した場合は白色化し、表面の質感や焼き色も見えにくくなり商品価値が低下するため、その用途が制限されてしまう場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5549225号公報
【特許文献2】特開2007-319043公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は被覆固化後も透明なコーティング用油脂の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは鋭意検討し、乳化剤としてジグリセリンモノオレイン酸エステルを一定量以上配合することで被覆固化後も透明な油脂組成物が得られることを見出し、本発明を完成させた。
【0006】
すなわち本発明は
(1)ジグリセリンモノオレイン酸エステルを0.7重量%以上含有する、穀粉焼成食品コーティング用油脂組成物、
(2)カカオマス及び/又はココア分を含有しない(1)に記載のコーティング用油脂組成物、である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば油脂を被覆しても外観が維持された焼き菓子類が提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を具体的に説明する。
【0009】
(コーティング用油脂組成物)
本発明は穀粉焼成食品の表面、その一部ないしは全面にコーティング(被覆)して用いる油脂組成物に関する。
油脂組成物のベースとする油脂には特に制限はなく、通常一般のコーティング用途ないしはコーティングチョコレート原材料用途の油脂や油脂配合、油脂混合物等を適宜利用することができる。また該油脂は常温で固体であることが好ましく、上昇融点32℃以上、より好ましくは35℃以上の油脂ないしは油脂混合物が例示できる。
油脂原料としては公知の食用油脂類をいずれも使用することができ、例えば、菜種油、大豆油、ヒマワリ種子油、綿実油、落花生油、米糠油、コーン油、サフラワー油、オリーブ油、カポック油、ゴマ油、月見草油、パーム油、シア脂、サル脂、カカオ脂、ヤシ油、パーム核油等の植物性油脂並びに乳脂、牛脂、ラード、魚油、鯨油等の動物性油脂、及び/又はこれらの単独又は混合油あるいはそれらの硬化、分別、エステル交換等から選択される1以上の処理を施した加工油脂が挙げられる。これらは単独でも、2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0010】
(ジグリセリンモノオレイン酸エステル)
本発明の油脂組成物はグリセリン脂肪酸エステルの一種である、ジグリセリンモノオレイン酸エステル(ジグリセリンモノオレート)を0.7重量%以上、好ましくは0.8重量%以上含有する。これにより被覆、固化後も透明ないしは半透明の外観が維持される。配合量がこれより少ないと本発明の効果が不十分な場合がある。配合量の上限は特に設定しないが2重量%以下、好ましくは1.5重量%以下を目安として例示できる。これより多く配合しても効果は変わらない。市販品としては「ポエムDO-100V」(理研ビタミン株式会社)が例示できる。またベースとする油脂への添加方法にも特に制限はなく、必要に応じ加温融解した油脂に所定量を添加、混合する方法が例示できる。
【0011】
(穀粉焼成食品)
本発明における穀粉焼成食品とは小麦粉や米粉等の穀粉を主原料とし、これに水分、油脂類、糖類、卵、乳製品、イースト、イーストフード膨張剤等の原料を必要に応じて添加し、混捏工程を経て得られた生地を成形、焼成加熱して得られるものをいう。具体的にはクッキー、サブレ、ビスケット、パイ、タルト、マドレーヌ、スポンジケーキ、バターケーキなどの焼き菓子類、及び菓子パン、食パン、テーブルロール、デニッシュペストリーなどのパン類が例示できる。本発明は特に焼き菓子類において好適に用いることができる。
【0012】
(カカオマス及び/又はココア分)
本発明の油脂組成物はコーティングチョコレート類とはその用途や目的が異なり、固化後にも透明ないしは半透明の外観を維持することが特徴である。すなわちその配合においてカカオマス及び/又はココア分を含有しないことが好ましい。
【実施例0013】
以下に実施例および比較例を記載し、本発明をより具体的に説明する。なお、文中「%」は特に断りのない限り重量基準を意味する。
【0014】
(油脂の選択)
融点(上昇融点)38℃のパーム核硬化油(製品名:ニューメラリン38、不二製油株式会社)を用い、60℃で融解した。ここに市販のクッキー(直径5.5cm、厚さ0.8cm)全体を浸漬して直ぐに引き上げ、室温(約20℃)で放置、30秒経過毎に表面を触り、指への付着程度を確認した。
結果、およそ1分30秒で「強く指を押し付けると少量付着する」程度に固化し、さらに5分後には指への付着がほぼ無く、コーティング用途として問題なく使用できると判断した。なおクッキー1枚当たりの油脂のコーティング量(目付量)は約2.5~3.0gであった。
【0015】
(乳化剤の検討)
前項の油脂(ニューメラリン38)を60℃で融解し、表1に示す各乳化剤を添加、均一に混合し、油脂組成物を調製した。これを用い、前項と同手順でクッキー表面へのコーティング試験を実施した。
15分経過後に表面の一部を触り、指への付着がない(完全固化)ことを確認後に外観、具体的にはクッキー表面の質感や焼き色がどの程度見えるかを目視で評価した。評価はパネラー5名の合議で下記基準の4段階とし、3点以上を合格とした。
【0016】
(外観の評価基準)
4:ほぼ透明、クッキー表面がよく見える
3:一部半透明だが、クッキー表面はほとんど見える
2:白濁部分が多く、クッキー表面は隠れている部分が多い
1:全体に白濁し、クッキー表面がほとんど見えない
【0017】
【0018】
表1の外観評価欄に示す通り、ジグリセリンモノオレイン酸エステルを1.0%配合した系(実施例1)のみが固化後も白濁・白色化せずほぼ透明であり、焼き菓子の外観を損ねない油脂組成物を得ることができた。