(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023146208
(43)【公開日】2023-10-12
(54)【発明の名称】換気構造体
(51)【国際特許分類】
E04D 13/15 20060101AFI20231004BHJP
E04B 1/70 20060101ALI20231004BHJP
【FI】
E04D13/15 301Z
E04B1/70 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022053283
(22)【出願日】2022-03-29
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】592114080
【氏名又は名称】株式会社ハウゼコ
(74)【代理人】
【識別番号】100101409
【弁理士】
【氏名又は名称】葛西 泰二
(74)【代理人】
【氏名又は名称】葛西 さやか
(74)【代理人】
【識別番号】100206195
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 直樹
(72)【発明者】
【氏名】神戸 睦史
【テーマコード(参考)】
2E001
【Fターム(参考)】
2E001DB02
2E001EA08
2E001FA04
2E001FA73
2E001HB01
2E001HE02
2E001NA07
2E001NB05
2E001NC01
2E001ND11
2E001ND15
(57)【要約】
【課題】 優れた通気機能及び防水機能を有する換気構造体を提供する。
【解決手段】 換気構造体4bは、貫通孔18が形成された第2垂直部16を含む枠体12と、枠体12内部において屋内から屋外への通気機能及び防水機能を果たす換気部材13とから主に構成されている。換気部材13は、屋内から屋外への通気経路を横断するように垂直方向に延びる第1邪魔板24と、第1邪魔板24から外方に所定間隔離れて垂直方向に延びる第2邪魔板26とを備えている。又、第1邪魔板24には空気が通過可能な第1通気孔25が形成され、第2邪魔板26には同様に第2通気孔27が形成されている。このように構成することで、第2垂直部16、第1邪魔板24及び第2邪魔板26により雨水の浸入は防止しながら、第2垂直部16の貫通孔18、第1通気孔25及び第2通気孔27により屋内から屋外への通気経路が確保される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外壁材の上方に設置され長手方向に延びる換気構造体であって、
設置状態において垂直方向に延びる第1垂直部と、前記第1垂直部の上端から屋外方向に延びる第1水平部と、前記第1水平部の一部から垂直下方に延び、貫通孔が形成された第2垂直部とを備える枠体と、
前記枠体内部において屋内から屋外への通気機能及び防水機能を有する換気部材とを備え、
前記換気部材は、屋内から屋外への通気経路を横断するように垂直方向に延び、第1通気孔が形成された第1邪魔板と、前記第1邪魔板から外方に所定間隔離れて垂直方向に延び、第2通気孔が形成された第2邪魔板とを備える、換気構造体。
【請求項2】
前記換気部材は、3個のコの字状部材を組み合わせて構成され、
前記コの字状部材は、短手方向断面形状が垂直面部、上面部、及び下面部を含む略コの字状であり、
前記垂直面部は、短手方向断面形状における解放側に起き上がる複数の切り起こし孔が長手方向に所定間隔で形成され、
3個の前記コの字状部材は、
解放側を屋外方向とした第1コの字状部材と、
前記第1コの字状部材と解放側が対向し、各々の前記上面部同士と前記下面部同士とが重ねて組み合わされた第2コの字状部材と、
解放側を屋外方向とし、前記第2コの字状部材と各々の前記垂直面部同士が接すると共に各々の前記切り起こし孔同士の位置が一致した状態で配置された第3コの字状部材とを含む、請求項1記載の換気構造体。
【請求項3】
前記貫通孔は、前記第2垂直部の垂直方向下半分の領域に設けられる、請求項1又は請求項2記載の換気構造体。
【請求項4】
前記枠体は、前記第2垂直部の下端から屋内方向に延びる第2水平部を更に備え、
前記換気部材は、前記第2水平部に固定される、請求項1から請求項3のいずれかに記載の換気構造体。
【請求項5】
前記第2垂直部と前記第2水平部との接続箇所に設けられ、浸入した雨水を外方に排出する水抜孔を更に備える、請求項4記載の換気構造体。
【請求項6】
前記第2垂直部から外方に所定間隔を設けて垂直方向に延びる前垂部と、前記第1水平部と前記前垂部とを接続する連絡部とを更に備える、請求項1から請求項5のいずれかに記載の換気構造体。
【請求項7】
前記換気部材と前記外壁材との間の箇所に設置される弾性変形可能な緩衝材を更に備える、請求項1から請求項6のいずれかに記載の換気構造体。
【請求項8】
前記外壁材は外壁下地材の外面に取り付けられた胴縁を介して取り付けられ、
前記枠体の前記第1垂直部は前記外壁下地材と前記胴縁との間の隙間に差し込むようにして設置されている、請求項1から請求項7のいずれかに記載の換気構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は換気構造体に関し、特に、塀、バルコニー手摺、パラペット等の躯体上端部における笠木、ケラバや軒先に設置される換気構造体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、塀、バルコニー手摺、パラペット等の躯体(立上り躯体)の上端部に設置される笠木において、換気を行い腐食やクラック等を防ぐために用いられる換気構造体として、以下のような技術が提案されている。
【0003】
特許文献1には、外壁下地材及び外壁材の上方に換気部材が設置された笠木下換気構造体が開示されている。換気部材は合成樹脂製の段ボール構造の積層体であり、所定の大きさの貫通孔が多数形成されている。これによって、雨水等が換気部材を通過して躯体内部に浸入しないよう防水機能を発揮しながら空気は内方から外方へ通過可能に構成されており、笠木下に湿った空気が滞留しないよう換気を行うことができる。
【0004】
特許文献2に開示された笠木構造体では、上述の特許文献1に記載の換気部材と同様の構成の換気部材を用いており、当該換気部材より外方において垂直方向に延びる前垂部を更に備えている。当該前垂部の下端に笠木カバーを掛けて止めることで、躯体の上端部にビスを打ち込むことなく留め付けることができ、ビスを打ち込んだ箇所から躯体に水が浸入する事態を防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013-108314号公報
【特許文献2】特開2018-127883号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の特許文献1や特許文献2のような従来の換気構造体では、換気部材が特定の構造を有しているが、その通気機能及び防水機能には未だ改善の余地があった。
【0007】
又、従来の換気構造体では、外壁材の上端部と換気部材との間の箇所を充填するためコーキング材が用いられていたが、笠木下の視認し難い箇所への施工は手間がかかっていた。
【0008】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、優れた通気機能及び防水機能を有する換気構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、請求項1記載の発明は、外壁材の上方に設置され長手方向に延びる換気構造体であって、設置状態において垂直方向に延びる第1垂直部と、第1垂直部の上端から屋外方向に延びる第1水平部と、第1水平部の一部から垂直下方に延び、貫通孔が形成された第2垂直部とを備える枠体と、枠体内部において屋内から屋外への通気機能及び防水機能を有する換気部材とを備え、換気部材は、屋内から屋外への通気経路を横断するように垂直方向に延び、第1通気孔が形成された第1邪魔板と、第1邪魔板から外方に所定間隔離れて垂直方向に延び、第2通気孔が形成された第2邪魔板とを備えるものである。
【0010】
このように構成すると、第2垂直部、第1邪魔板及び第2邪魔板により雨水の浸入は防止しながら、貫通孔、第1通気孔及び第2通気孔により屋内から屋外への通気経路が確保される。
【0011】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明の構成において、換気部材は、3個のコの字状部材を組み合わせて構成され、コの字状部材は、短手方向断面形状が垂直面部、上面部、及び下面部を含む略コの字状であり、垂直面部は、短手方向断面形状における解放側に起き上がる複数の切り起こし孔が長手方向に所定間隔で形成され、3個のコの字状部材は、解放側を屋外方向とした第1コの字状部材と、第1コの字状部材と解放側が対向し、各々の上面部同士と下面部同士とが重ねて組み合わされた第2コの字状部材と、解放側を屋外方向とし、第2コの字状部材と各々の垂直面部同士が接すると共に各々の切り起こし孔同士の位置が一致した状態で配置された第3コの字状部材とを含むものである。
【0012】
このように構成すると、屋内からの空気が切り起こし孔を通じて屋外に排出される。
【0013】
請求項3記載の発明は、請求項1又は請求項2記載の発明の構成において、貫通孔は、第2垂直部の垂直方向下半分の領域に設けられるものである。
【0014】
このように構成すると、十分な通気機能を確保しつつ、防水機能が高まる。
【0015】
請求項4記載の発明は、請求項1から請求項3のいずれかに記載の発明の構成において、枠体は、第2垂直部の下端から屋内方向に延びる第2水平部を更に備え、換気部材は、第2水平部に固定されるものである。
【0016】
このように構成すると、第1邪魔板及び第2邪魔板の上下が第1水平部及び第2水平部に挟まれる。
【0017】
請求項5記載の発明は、請求項4記載の発明の構成において、第2垂直部と第2水平部との接続箇所に設けられ、浸入した雨水を外方に排出する水抜孔を更に備えるものである。
【0018】
このように構成すると、少量の雨水が浸入した場合でも外方に排出される。
【0019】
請求項6記載の発明は、請求項1から請求項5のいずれかに記載の発明の構成において、第2垂直部から外方に所定間隔を設けて垂直方向に延びる前垂部と、第1水平部と前垂部とを接続する連絡部とを更に備えるものである。
【0020】
このように構成すると、前垂部と第2垂直部との間の空間に流入する空気の乱流が発生する。又、前垂部の下端に笠木カバーを掛けて固定することができる。
【0021】
請求項7記載の発明は、請求項1から請求項6のいずれかに記載の発明の構成において、換気部材と前記外壁材との間の箇所に設置される弾性変形可能な緩衝材を更に備えるものである。
【0022】
このように構成すると、換気部材と外壁材の間のスペースを緩衝材により埋めることができる。
【0023】
請求項8記載の発明は、請求項1から請求項7のいずれかに記載の発明の構成において、外壁材は外壁下地材の外面に取り付けられた胴縁を介して取り付けられ、枠体の第1垂直部は外壁下地材と胴縁との間の隙間に差し込むようにして設置されているものである。
【0024】
このように構成すると、枠体の位置決めが容易となる。
【発明の効果】
【0025】
以上説明したように、請求項1記載の発明は、第2垂直部、第1邪魔板及び第2邪魔板により雨水の浸入は防止しながら、貫通孔、第1通気孔及び第2通気孔により屋内から屋外への通気経路が確保されるため、優れた通気機能及び防水機能が発揮される。
【0026】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明の効果に加えて、屋内からの空気が切り起こし孔を通じて屋外に排出されるため、通気経路の安定性が向上する。
【0027】
請求項3記載の発明は、請求項1又は請求項2記載の発明の効果に加えて、十分な通気機能を確保しつつ、防水機能が高まるため、構造を小型化することができる。
【0028】
請求項4記載の発明は、請求項1から請求項3のいずれかに記載の発明の効果に加えて、第1邪魔板及び第2邪魔板の上下が第1水平部及び第2水平部に挟まれるため、設置の安定性が向上する。
【0029】
請求項5記載の発明は、請求項4記載の発明の効果に加えて、少量の雨水が浸入した場合でも外方に排出されるため、防水機能が向上する。
【0030】
請求項6記載の発明は、請求項1から請求項5のいずれかに記載の発明の効果に加えて、前垂部と第2垂直部との間の空間に流入する空気の乱流が発生するため、雨水の浸入をより防止する。又、前垂部の下端に笠木カバーを掛けて固定することができるため、躯体の上端部にビス等を打ち込むことなく取り付けられる。
【0031】
請求項7記載の発明は、請求項1から請求項6のいずれかに記載の発明の効果に加えて、換気部材と外壁材の間のスペースを緩衝材により埋めることができるため、コーキングを用いず、設置工程を減らすことができ、交換も容易となる。
【0032】
請求項8記載の発明は、請求項1から請求項7のいずれかに記載の発明の効果に加えて、枠体の位置決めが容易となるため、取付作業が効率的になる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】この発明の第1の実施の形態による換気構造体を家屋の笠木下部分に用いた場合の納まりを示す断面図である。
【
図2】
図1で示したX部分に含まれる換気構造体を示す断面図である。
【
図4】
図3で示した換気部材の組立工程を示す模式図である。
【
図5】この発明の第2の実施の形態による換気構造体を家屋の笠木下部分に用いた場合の納まりを示す断面図である。
【
図6】この発明の第3の実施の形態による換気構造体を家屋の笠木下部分に用いた場合の納まりを示す断面図である。
【
図7】
図6で示したZ部分に含まれる換気構造体を示す断面図である。
【
図8】この発明の第4の実施の形態による換気構造体を家屋の笠木下部分に用いた場合の納まりを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
図1は、この発明の第1の実施の形態による換気構造体を家屋の笠木下部分に用いた場合の納まりを示す断面図である。
【0035】
尚、以下で説明する笠木構造体1、笠木2や換気構造体4は、塀、バルコニー手摺、パラペット等の躯体40の長手方向に沿って長尺状であり、
図1は短手方向断面の納まりを示したものである。又、同図の中央方向が屋内側であり、左右両側が屋外側である。
【0036】
同図を参照して、躯体40の短手方向屋外側端部には一対の外壁下地材41a、41bが配置されており、その外面には一対の胴縁42a、42bが設けられ、更にその外方(屋外側)には窯業系サイディングである一対の外壁材45a、45bが設けられている。胴縁42a、42bは、図示しない長手方向において所定間隔ごとに設けられており、その間隔が通気路48a、48bとなる。又、躯体40内部の温まった湿度の高い空気が通気路48a、48b内を上昇するように、躯体40内部の空間を通気路48a、48bと連通させている(図示せず)。そして、躯体40の上端部には、笠木構造体1が設置されている。
【0037】
笠木構造体1は、躯体40の上端部に設置された笠木2と、一対の外壁材45a、45bの上方であって笠木2下方に設置された一対の換気構造体4a、4bとから主に構成されている。
【0038】
笠木2は、金属製であり、躯体40の上端部において長手方向に所定間隔ごとに設けられた笠木取付金具3を介して、躯体40の上端部及び換気構造体4a、4bの上方から屋外側にかけて全体を覆うように設置され、笠木2内部の躯体40への上方からの雨水の直接的な浸入を防止する。
【0039】
一対の換気構造体4a、4bの各々は、外壁材45a、45bの上方において、同図にて一点鎖線の矢印38で示す内方から外方(屋内側から屋外側)への通気経路を横断するように設置されている。
【0040】
図2は、
図1で示したX部分に含まれる換気構造体を示す断面図であり、
図3は、
図2で示したY部分の拡大斜視図である。
【0041】
まず
図2を参照して、換気構造体4bは、鋼板からなる枠体12と、枠体12内に配置され屋内から屋外への通気機能及び防水機能を果たす換気部材13とから主に構成されている。
【0042】
枠体12は、設置状態において垂直方向に延びる第1垂直部14と、第1垂直部14の上端から屋外方向(
図2の右方向)に向かって略水平に延びる第1水平部15と、第1水平部15の屋外側端部から垂直下方に延びる第2垂直部16とから主に構成されている。又、枠体12は、第2垂直部16の下端から、第1水平部15と平行に且つ第1垂直部14の方向(屋内方向)に所定距離を残して延びる第2水平部17を更に備えている。尚、第2垂直部16には、長手方向に所定間隔で複数個の貫通孔18が形成されており、これらの貫通孔18は第2垂直部16の垂直方向下半分の領域Aに収まるように設けられている。このように構成したことによる効果は後述する。
【0043】
又、
図2でθ
1として示した、第1垂直部14と第1水平部15との接続角度は87°となるように設定されている。ここで、第1垂直部14は垂直方向に設置されるので、第1水平部15及び第2水平部17の各々は、屋外方向に向かって3°下方に傾斜した状態となる。又、第2垂直部16と第2水平部17との接続箇所には、浸入した雨水を外方に排出する水抜孔19が長手方向に所定間隔で複数個形成されている。
【0044】
又、第2水平部17の内方(
図2の左方向)端部20は上方に向かうように曲げられている。
【0045】
次に換気部材13は、屋内から屋外への通気経路を横断するように垂直方向に延びる第1邪魔板24と、第1邪魔板24から外方(屋外方向)に所定間隔離れて垂直方向に延びる第2邪魔板26とを備えている。又、第1邪魔板24には空気が通過可能な第1通気孔25が形成され、第2邪魔板26には同様に第2通気孔27が形成されている。
【0046】
このように構成することで、第2垂直部16、第1邪魔板24及び第2邪魔板26により雨水の浸入は防止しながら、貫通孔18、第1通気孔25及び第2通気孔27により
図1にて矢印38で示した屋内から屋外への通気経路が確保される。そのため、躯体40内部の空気は通気しながら、外方からの雨水等の水の浸入に対してはいわば3段階の障壁が存在することとなり、換気構造体4bは優れた通気機能及び防水機能が発揮される。
【0047】
このとき、上述したように貫通孔18は第2垂直部16の垂直方向下半分の領域Aに設けられていることで、外方から吹き付ける風と共に雨水が浸入しようとした場合であっても、一旦第2垂直部16の外部上方の空間30に吹き付け、勢いが減殺された後に第2垂直部16の貫通孔18に接することとなる。そのため、貫通孔18を第2垂直部16全体に設けなくとも十分な通気機能を確保しつつ、防水機能が高まるため、後述する換気部材13を構成するためのコの字状部材を最低限の3個に抑えることができ、構造を小型化することができる。
【0048】
又、上述したように第2垂直部16と第2水平部17との接続箇所に水抜孔19が設けられていることで、少量の雨水が浸入した場合でも外方に排出されるため、より防水機能が向上している。更に、上述したように第1水平部15及び第2水平部17は屋外方向に向かって3°下方に傾斜しているため、浸入した雨水は水抜孔19に誘導されるように構成されており、更に防水機能が向上している。
【0049】
又、上述した換気部材13は、枠体12の第2水平部17にリベット21a、21bを用いて固定されている。このように構成することで、第1邪魔板24及び第2邪魔板26の上下が第1水平部15及び第2水平部17に挟まれるため、設置の安定性が向上する。
【0050】
又、戻って
図1を参照して、換気構造体4bの第2水平部17と外壁材45bとの間には、弾性変形可能なEPDM製の緩衝材22が設けられている。あらかじめ換気構造体4bに緩衝材22を取り付けた状態で外壁材45bの上方に設置することで、換気部材13と外壁材45bの間のスペースを緩衝材22により埋めることができるため、笠木2下の視認し難い箇所へのコーキングを行う必要が無く、設置工程を減らすことができる。又、交換も容易となる。
【0051】
尚、以上で説明した換気構造体4bとは他方側の換気構造体4aも同様の構成である。そのため、屋外方向両側において優れた通気機能及び防水機能が発揮される。
【0052】
次に、このような換気構造体4a、4bにおける換気部材13を構成する方法について説明する。
【0053】
図4は、
図3で示した換気部材の組立工程を示す模式図である。
【0054】
同図を参照して、換気部材13は、第1コの字状部材51と、これと同一形状の第2コの字状部材61及び第3コの字状部材71とを組み合わせて構成される。
【0055】
第1コの字状部材51は、長尺状の金属板を、同図に示す短手方向断面形状として略コの字状に折り曲げて垂直面部52、上面部53、下面部54を形成することで構成されている。又、垂直面部52には、短手方向断面形状における解放側56に起き上がる複数の切り起こし孔55が、長手方向に所定間隔で形成される。
【0056】
換気部材13の組立にあたっては、まず
図4の(1)を参照して、第1コの字状部材51の解放側56と第2コの字状部材61の解放側66とを対向させて矢印60a、60bで示すように互いに接近させ、
図4の(2)に示すように、それぞれの上面部53、63と下面部54、64とを重ねて、短手方向断面形状として略矩形形状を形成するように組み合わせる。
【0057】
次に、第3コの字状部材71を、その解放側76を屋外方向(第1コの字状部材51の解放側56と同一方向)とし、矢印70で示すように、第3コの字状部材71の垂直面部72と第2コの字状部材61の垂直面部62とが接すると共に、切り起こし孔75と切り起こし孔65との位置(高さ)が一致した状態となるように配置することで、換気部材13の組立が終了する。
【0058】
こうして組み立てられた換気部材13にあっては、第1コの字状部材51の垂直面部52が第1邪魔板24として機能し、切り起こし孔55が第1通気孔25として機能する。又、第1邪魔板24から外方に上面部53、63及び下面部54、64により保持される間隔を空けて第2コの字状部材61の垂直面部62及び第3コの字状部材71の垂直面部72が第2邪魔板26として機能し、切り起こし孔65、75が第2通気孔27として機能する。
【0059】
このように構成すると、屋内からの空気が切り起こし孔55、65、75を通じて屋外に排出されるため、通気経路の安定性が向上する。又、一定距離離れた位置に第1邪魔板24及び第2邪魔板26が配置されるため、屋内から屋外への通気経路が詰まりにくく、且つ、防水機能が向上する。
【0060】
そして、戻って
図1及び
図2を参照して、換気部材13を金属板を折り曲げて構成した枠体12内部(第1水平部15より下方であって第2垂直部16より内方である箇所)に配置することで、換気構造体4bが構成される。
【0061】
又、換気構造体4bの設置に際しては、まず外壁下地材41bの上端部と胴縁42bの上端部との間を広げて隙間を形成し、その隙間に換気構造体4bの枠体12の第1垂直部14を差し込むようにして設置する。
【0062】
このようにすることで、枠体12の位置決めが容易となるため、取付作業が効率的になる。
【0063】
このようにして外壁材45bの上方に設置された換気構造体4bにあっては、上述したように、雨水の浸入は防止しながら、目詰まりの虞も低減し、屋内から屋外への通気経路が確保されるため、優れた通気機能及び防水機能が発揮されるものである。
【0064】
次に、
図5はこの発明の第2の実施の形態による換気構造体を家屋の笠木下部分に用いた場合の納まりを示す断面図である。
【0065】
尚、この発明の第2の実施の形態による換気構造体5は、上述した第1の実施の形態による換気構造体4と基本的に同様の構成であるため、相違点を中心に以下説明する。
【0066】
同図を参照して、換気構造体5a、5bの各々の下方には、緩衝材22(
図1参照)は備えず、片ハットジョイナー32a、32bが設けられている。片ハットジョイナー32a、32bは長手方向に延びており、納まり断面形状がコの字状であるハット部33a、33bを有する。そして、ハット部33a、33bの下面が外壁材45a、45bの上端に接すると共に上面が換気構造体5a、5bの下部に接するように、片ハットジョイナー32a、32bは胴縁42a、42bにそれぞれ釘等で固定される。
【0067】
このように設置された片ハットジョイナー32a、32bのハット部33a、33bに対しコーキング材34a、34bを用いて、換気構造体5a、5bの下部と外壁材45a、45bの上端との間隙が充填される。
【0068】
このように、換気構造体5a、5bに対し緩衝材22を用いずにコーキング材34a、34bを用いることも可能である。
【0069】
次に、
図6はこの発明の第3の実施の形態による換気構造体を家屋の笠木下部分に用いた場合の納まりを示す断面図であり、
図7は
図6で示したZ部分に含まれる換気構造体を示す断面図である。
【0070】
尚、この発明の第3の実施の形態による換気構造体6は、上述した第1の実施の形態による換気構造体4と基本的に同様の構成であるため、相違点を中心に以下説明する。
【0071】
まず
図6を参照して、外壁材45a、45bの上方には緩衝材22a、22bを介して換気構造体6a、6bが設けられている。又、笠木78は、家屋の屋外側である一方端部79側から屋内側である他方端部80側にかけて下るように天板部81が傾斜している。そのため、笠木78上に雨が降った場合に雨水は笠木78の他方端部80側(家屋の屋内側)に流れるように誘導され、雨水の跡が家屋の屋外側に残ることを防止することができる。
【0072】
又、笠木78と躯体40の間には、その上面が天板部81の傾斜に沿うように納まり断面形状が台形である弾性変形可能な緩衝体82が設けられている。これによって、天板部81に荷重が掛かった場合でも笠木78の形状が安定する。
【0073】
又、笠木78の一方端部79及び他方端部80の下端には、内側上方に折り曲げられることでそれぞれ折り返し部83a、83bが形成されている。
【0074】
次に
図7を併せて参照して、換気構造体6bは、上述した第1の実施の形態における換気構造体4bの構造に加え、第2垂直部86から外方に所定間隔を設けて垂直方向に延びる前垂部89と、第1水平部85と前垂部89とを接続する連絡部87とを備えている。そして、
図6で示すように笠木78の他方端部80の折り返し部83bが前垂部89の下端90に掛止しており、一方端部79の折り返し部83aにおいても同様である。尚、他方端部80は前垂部89に対しビス等で固定される。このようにして笠木78は天板部81や躯体40の上端部にビス等の取付具を打ち込むことなく取り付けることができるため、取付用の孔を形成することがなく、このような取付用の孔から躯体40内部に雨水が浸入することを防止することができる。
【0075】
又、前垂部89の下端90は、第2垂直部86の貫通孔88よりも垂直方向において下方に位置している。そのため、横方向の雨風が換気構造体6bに直接的に吹き込むことを防止することができる。
【0076】
そして、このように前垂部89を第2垂直部86から連絡部87を介して外方に所定間隔を設けて配置することで、
図7の矢印84で示すように前垂部89と第2垂直部86との間の空間に流入する空気の乱流が発生するため、第2垂直部86の貫通孔88が第2垂直部86の垂直方向下半分の領域に形成されていることと相乗効果を及ぼし、雨水の浸入をより防止する。
【0077】
次に
図8はこの発明の第4の実施の形態による換気構造体を家屋の笠木下部分に用いた場合の納まりを示す断面図である。
【0078】
同図を参照して、この換気構造体7a、7bは、上述した第3の実施の形態による換気構造体6a、6bと同様の構造である。又、上述した第2の実施の形態による換気構造体5a、5bと同様に、外壁材45a、45bの上方に片ハットジョイナー32a、32bを介して設置されている。
【0079】
このように、前垂部99a、99bを備える換気構造体7a、7bにおいても、片ハットジョイナー32a、32bを用いてコーキングすることは可能である。
【0080】
尚、上記の各実施の形態では、笠木や換気構造体の枠体は鋼板からなるものであったが、他の素材からなるものであっても良い。例えばアルミニウムや合成樹脂からなるものが挙げられる。又、押出成形により一体的に成形することも可能である。
【0081】
又、上記の各実施の形態では、換気部材が特定の構成であったが、第1通気孔が形成された第1邪魔板と、第1邪魔板から外方に所定間隔離れて設けられ第2通気孔が形成された第2邪魔板とを備えるものであれば他の構成であっても良い。例えば、通気孔が形成され長手方向に延びる鋼板2枚を所定間隔離れるように枠体内部に固定させた構造が挙げられる。
【0082】
更に、上記の各実施の形態では、貫通孔が第2垂直部の垂直方向下半分の領域に設けられていたが、第2垂直部の他の箇所に設けても良い。
【0083】
更に、上記の各実施の形態では、枠体が第2水平部を備えていたが、第2水平部を備えず例えば枠体の上部に第1邪魔板及び第2邪魔板が固定される構造であっても良い。
【0084】
更に、上記の各実施の形態では、第2垂直部と第2水平部との接続箇所に水抜孔が形成されていたが、水抜孔が形成されていなくとも良い。又、他の箇所に水抜孔を設けても良い。
【0085】
更に、上記の第1及び第3の実施の形態では、特定素材からなる緩衝材を備えていたが、緩衝材は弾性変形可能であって換気部材と外壁材との間の箇所を充填することができれば他の素材からなるものであっても良い。
【0086】
更に、上記の各実施の形態では、枠体の第1垂直部が外壁下地材と胴縁との間の隙間に差し込むようにして設置されていたが、位置が固定できれば他の方法で設置されていても良い。
【0087】
更に、上記の各実施の形態では、天板部の短手方向における断面形状が特定のものであったが、上方から降り注いだ雨水等を下方に誘導し、天板部の上部に水が滞留することを防止できるものであれば他の形状であっても良い。
【0088】
更に、上記の各実施の形態において、換気部材の前垂部の外面と笠木カバーの第1側壁部の内面とを、接着剤や両面テープ等により液密に接合しても良い。このように構成することで、笠木構造体に向けて水平方向や斜め下方向から雨水が吹き込もうとした場合に、折り返し部から雨水が浸入したとしても、その水が前垂部の外面と笠木の端部の内面との間を表面張力等により上方に向かい笠木下空間に水が浸入することを防止することができる。
【0089】
更に、上記の各実施の形態では、笠木の端部と換気構造体の前垂部とがビスで取り付けられていたが、他の取り付け手段であっても良い。
【0090】
更に、上記の各実施の形態では、第1水平部、第2水平部や連絡部は外方に向かって特定の角度で下方に傾斜していたが、貫通孔より内方に浸入した水が排水用の水抜孔によって外部に排出することができるように下方に傾斜していれば他の角度であっても良い。又、下方に傾斜せず水平に設けられていても良い。
【0091】
更に、上記の各実施の形態では、笠木下部分の構造が特定のものであったが、外壁材とその上方に設置される笠木との間に位置する部分であれば、他の構造であっても良い。
【0092】
更に、上記の各実施の形態では、換気部材の枠体が特定の構造であったが、他の構造であっても良い。
【0093】
更に、上記の各実施の形態では、前垂部はその下端が第2垂直部の貫通孔よりも下方に位置していたが、このような下方に位置していなくとも良い。
【0094】
更に、上記の各実施の形態では、水平部の内方側であって換気部材が設置されていない部分は特定角度で上方に向かうように曲げられていたが、他の角度に曲げられていても良い。又、該部分が無くとも良い。
【0095】
更に、上記の各実施の形態では、換気部材が枠体内部に囲われるように配置されていたが、換気部材の位置が固定できれば良く、枠体との位置関係は限定されない。
【0096】
更に、上記の各実施の形態では、換気構造体が特定の笠木下部分において用いられていたが、換気構造体はケラバや妻側、軒側等の他の箇所においても用いることができる。
【0097】
更に、上記の第3及び第4の実施の形態では、笠木内部に緩衝体を備えていたが、緩衝体は他の構成であっても良く、例えば金属製の支持体等が挙げられる。又、緩衝体のような支持構造を備えていなくとも良い。
【0098】
更に、上記の第2及び第4の実施の形態では、特定の構成の片ハットジョイナーを備えていたが、片ハットジョイナーを用いなくとも良い。
【0099】
更に、上記の各実施の形態では、笠木構造体において換気構造体が一対設けられていたが、例えば外壁材や通気路が一方側にしか存在しない態様の躯体等に対しては、換気部材が一方側にのみ存在するものであっても良い。
【0100】
更に、上記の各実施の形態では、躯体内部の空間が胴縁の通気路と特定の手段により連通されていたが、他の手段により湿気や空気を通気路に排出するようにしても良い。又、躯体内部の空間と胴縁の通気路とが連通していなくとも良い。
【符号の説明】
【0101】
1…笠木構造体
4、5、6、7…換気構造体
12…枠体
13…換気部材
14…第1垂直部
15、85…第1水平部
16、86…第2垂直部
17…第2水平部
18、88…貫通孔
19…水抜孔
22…緩衝材
24…第1邪魔板
25…第1通気孔
26…第2邪魔板
27…第2通気孔
41…外壁下地材
42…胴縁
45…外壁材
51…第1コの字状部材
52、62、72…垂直面部
53、63…上面部
54、64…下面部
55、65、75…切り起こし孔
56、66、76…解放側
61…第2コの字状部材
71…第3コの字状部材
87…連絡部
89、99…前垂部
尚、各図中同一符号は同一又は相当部分を示す。