(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023146238
(43)【公開日】2023-10-12
(54)【発明の名称】車両用フック装置
(51)【国際特許分類】
B60R 7/08 20060101AFI20231004BHJP
B60R 7/04 20060101ALI20231004BHJP
B60N 3/00 20060101ALI20231004BHJP
A47C 7/62 20060101ALI20231004BHJP
【FI】
B60R7/08 Z
B60R7/04 C
B60N3/00 Z
A47C7/62 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022053325
(22)【出願日】2022-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000135209
【氏名又は名称】株式会社ニフコ
(74)【代理人】
【識別番号】100098202
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 信彦
(72)【発明者】
【氏名】水野 可奈子
【テーマコード(参考)】
3B084
3B088
3D022
【Fターム(参考)】
3B084JC03
3B088CA01
3D022CA07
3D022CA11
3D022CB01
3D022CC19
3D022CD02
3D022CD06
(57)【要約】
【課題】フック装置に、引っかけ対象を引っかける機能のみならず、挟み付け対象を挟み付ける機能を、備えさせる。
【解決手段】自由端6側の一方側を引っかけ対象の支持部7とし、前記自由端6側の他方側を挟み付け対象の一方挟持部8とし、車両本体側に固定されるベース体3に対し、基準位置からの引っかけ利用に向けた前記自由端6側の一方移動操作、および、前記基準位置からの挟み付け利用に向けた前記一方移動操作と反対向きの前記自由端6側の他方移動操作とを可能に組み合わされた可動体2と、前記一方移動操作、および、前記他方移動操作のいずれがされたときにも、前記基準位置に向けて前記可動体を復動させる向きの付勢力を蓄勢させるように構成された付勢手段4とを備えてなる。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自由端側の一方側を引っかけ対象の支持部とし、前記自由端側の他方側を挟み付け対象の一方挟持部とし、車両本体側に固定されるベース体に対し、基準位置からの引っかけ利用に向けた前記自由端側の一方移動操作、および、前記基準位置からの挟み付け利用に向けた前記一方移動操作と反対向きの前記自由端側の他方移動操作とを可能に組み合わされた可動体と、
前記一方移動操作、および、前記他方移動操作のいずれがされたときにも、前記基準位置に向けて前記可動体を復動させる向きの付勢力を蓄勢させるように構成された付勢手段とを備えてなる、車両用フック装置。
【請求項2】
前記可動体は、前記一方移動操作の中心となる第一軸と、前記他方移動操作の中心となる第二軸と、動作制御用の第三軸とを有しており、
前記ベース体は、前記第一軸の案内溝と、前記第二軸の当接部と、前記第三軸の案内溝とを備えており、
前記一方移動操作を止めた後の前記基準位置への復動によって前記第二軸が前記当接部に押しつけられるようになっていると共に、
前記ベース体に、前記他方移動操作により前記一方挟持部との間に前記挟み付け対象の挟み込み隙間を形成させる他方挟持部を形成させてなる、請求項1に記載の車両用フック装置。
【請求項3】
前記付勢手段を、バネ一端を前記可動体に回動可能に連係させ、かつ、バネ他端を前記ベース体に回動可能に連係させると共に、バネ巻回部を前記ベース体内において移動可能に納めた捻りコイルバネとしてなる、請求項1又は請求項2に記載の車両用フック装置。
【請求項4】
前記可動体は前記自由端から突き出して前記支持部となる一方顎部と、前記自由端から前記一方顎部と反対側に突き出して前記一方挟持部となる他方顎部とを備えてなる、請求項1又は請求項2に記載の車両用フック装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、乗用車などの車両の典型的には居室内に備えられて用いられるフック装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
車室の内壁に埋め込むように取り付けられるハウジングに収容状態から突き出し位置まで回転可能にフックを内蔵させてなるフック装置として、特許文献1に示されるものがある。
【0003】
一方、自動車の座席のシートバックの側面に取り付けられるピンチ状の吊り下げ器として、特許文献2に示されるものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5897875号公報
【特許文献2】実公平6-16832号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明が解決しようとする主たる問題点は、この種のフック装置に、引っかけ対象を引っかける機能のみならず、挟み付け対象を挟み付ける機能を、部品点数を可及的に少なくできる態様で、かつ、装置全体を可及的に小型化可能な態様で、合理的に備えさせるようにする点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を達成するために、この発明にあっては、車両用フック装置を、自由端側の一方側を引っかけ対象の支持部とし、前記自由端側の他方側を挟み付け対象の一方挟持部とし、車両本体側に固定されるベース体に対し、基準位置からの引っかけ利用に向けた前記自由端側の一方移動操作、および、前記基準位置からの挟み付け利用に向けた前記一方移動操作と反対向きの前記自由端側の他方移動操作とを可能に組み合わされた可動体と、
前記一方移動操作、および、前記他方移動操作のいずれがされたときにも、前記基準位置に向けて前記可動体を復動させる向きの付勢力を蓄勢させるように構成された付勢手段とを備えてなる、ものとした。
【0007】
基準位置から可動体を一方移動操作することで、可動体の支持部に引っかけ対象を引っかけることが可能となる(フックとしての利用)。この一方移動操作によって可動体を基準位置に復動させる向きの付勢力が付勢手段に蓄勢されることから、引っかけ対象の引っかけを止めると、可動体は基準位置に自動的に復動される。
一方、基準位置から可動体を他方移動操作することで、可動体の一方挟持部を利用して挟み付け対象を挟み付けることが可能となる(ピンチとしての利用)。この他方移動操作によっても可動体を基準位置に復動させる向きの付勢力が付勢手段に蓄勢されることから、この付勢力によって挟み付け対象の挟み付けがなされる。挟み付け対象の挟み付けを止めると、この場合も可動体は基準位置に自動的に復動される。
【0008】
前記可動体は、前記一方移動操作の中心となる第一軸と、前記他方移動操作の中心となる第二軸と、動作制御用の第三軸とを有しており、
前記ベース体は、前記第一軸の案内溝と、前記第二軸の当接部と、前記第三軸の案内溝とを備えており、
前記一方移動操作を止めた後の前記基準位置への復動によって前記第二軸が前記当接部に押しつけられるようになっていると共に、
前記ベース体に、前記他方移動操作により前記一方挟持部との間に前記挟み付け対象の挟み込み隙間を形成させる他方挟持部を形成させるようにすることが、この発明の態様の一つとされる。
【0009】
また、前記付勢手段を、バネ一端を前記可動体に回動可能に連係させ、かつ、バネ他端を前記ベース体に回動可能に連係させると共に、バネ巻回部を前記ベース体内において移動可能に納めた捻りコイルバネとすることが、この発明の態様の一つとされる。
【0010】
また、前記可動体を、前記自由端から突き出して前記支持部となる一方顎部と、前記自由端から前記一方顎部と反対側に突き出して前記一方挟持部となる他方顎部とを備えてなるものとすることが、この発明の態様の一つとされる。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、フックとしての機能とピンチとしての機能とを備えたフック装置を、可動体とベース体と付勢手段の三点のパーツから合理的に実現することができ、したがってまた、この発明は車両側への取り付け位置に応じたフック装置の小型化を支障なく実現しうる特長を有するものである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、この発明の一実施の形態にかかるフック装置の斜視図であり、可動体は基準位置にある。
【
図2】
図2は、前記フック装置の要部破断分解斜視構成図である。
【
図3】
図3は、前記フック装置の平面図であり、可動体は基準位置にある。
【
図4】
図4は、前記フック装置の側面図であり、可動体は基準位置にある。
【
図5】
図5は、前記フック装置の断面構成図であり、可動体は基準位置にある。
【
図6】
図6は、前記フック装置の斜視図であり、可動体は一方移動操作された状態にある。
【
図7】
図7は、
図6の状態における前記フック装置の断面構成図である。
【
図8】
図8は、前記フック装置の斜視図であり、可動体は他方移動操作された状態にある。
【
図9】
図9は、
図8の状態における前記フック装置の断面構成図である。
【
図10】
図10は、
図1~
図9に示されるフック装置に追加捻りコイルバネを付加した実施例を示した断面構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、
図1ないし
図10に基づいて、この発明の典型的な実施の形態について、説明する。この実施の形態にかかるフック装置1は、乗用車などの車両の典型的には居室内に備えられて、この居室内において引っかけ対象を引っかけるためのフックとして利用されると共に、挟み付け対象を挟み付けるためのピンチとしても利用可能となるものである。
【0014】
典型的には、かかるフック装置1は、前記居室内に設置されるコンソールボックスの側部、アームレストの前端部、シートバック、ドアトリムなどに、これらの意匠面に後述の基準位置にある可動体の自由端側の外面を連ならせるようにして、これらの内部に後述のベース体3を組み込むことで、前記居室内に備えられるようになっている。
【0015】
フックとして利用されるときは、典型的には、後述のように一方移動操作されて前記意匠面から突き出した可動体2の自由端6側に、かばんや買い物袋などの各種の物品の把手部分やループ部分を引っかけて用いる。
【0016】
ピンチとして利用されるときは、後述のように他方移動操作された可動体2の一方挟持部8とベース体3の他方挟持部28との間に挟み付け対象の一部を導入した後、前記他方移動操作を止めることで、前記挟み付け対象の一部を前記一方挟持部8と前記他方挟持部28とで挟み付けてこれを保持するように用いる。
【0017】
かかるフック装置1は、可動体2と、ベース体3と、付勢手段4とを備えてなる。
【0018】
可動体2は、自由端6側の一方側を引っかけ対象の支持部7とし、前記自由端6側の他方側を挟み付け対象の一方挟持部8とし、車両本体側に固定されるベース体3に対し、基準位置からの引っかけ利用に向けた前記自由端6側の一方移動操作、および、前記基準位置からの挟み付け利用に向けた前記一方移動操作と反対向きの前記自由端6側の他方移動操作とを可能に組み合わされている。
【0019】
図示の例では、可動体2は、自由端6とこれと反対のベース体3内に常時位置される内端9とを結ぶ仮想の中心線xを、基準位置において鉛直線yとの間に
図5における右側において角度θを形成させるように斜めにオフセットされた状態で、ベース体3に組み合わされている。前記支持部7は前記中心線xを挟んだ一方側に形成され、前記一方挟持部8は前記中心線xを挟んだ他方側に形成されている。
【0020】
この基準位置から可動体2は、第一に、前記中心線xを水平にする位置(
図7参照)まで
図5における時計回りの向きに一方移動操作可能となっている。
また、前記基準位置から可動体2は、第二に、前記角度θを小さくするように
図5における反時計回りの向きに他方移動操作可能となっている(
図9参照)。
【0021】
ベース体3は、可動体2を前記基準位置からの一方移動操作、および、前記基準位置からの他方移動操作可能に支持する。
【0022】
図示の例では、ベース体3は、
図5における右側を傾斜下とした傾斜を備えた意匠部19を有すると共に、この意匠部19の
図5における左右方向中程の位置に可動体2の繰り出し開口20を備えている。また、ベース体3は、前記意匠部19下に基準位置にある可動体2の自由端6下が納まる内部空間21を有している。この内部空間21は、意匠部19下に位置される一対の側板22によって形成されている。この一対の側板22によってベース体3の厚みが形成されている。かかるベース体3は前記意匠部19をコンソールボックスCBなどの意匠面CBaに連なるようにコンソールボックスCBなどに内蔵され、これにより、基準位置にある可動体2の自由端6側の外面もかかる意匠面Cbaに連なって配されるようになっている(
図5参照)。図中符号23は、前記コンソールボックスCBなどの側に固定するためのビスなどの通し穴を備えたタブ部である。
【0023】
付勢手段4は、前記一方移動操作、および、前記他方移動操作のいずれがされたときにも、前記基準位置に向けて前記可動体2を復動させる向きの付勢力を蓄勢させるように構成されている。
【0024】
図示の例では、かかる付勢手段4は、前記ベース体3の内部空間21内に、可動体2の側方に位置されるように納められている。
【0025】
図示の例では、かかる付勢手段4は、バネ一端29を前記可動体2に回動可能に連係させ、かつ、バネ他端30を前記ベース体3に回動可能に連係させると共に、バネ巻回部31(コイル部)を前記ベース体3内において移動可能に納めた捻りコイルバネとなっている。
【0026】
図示の例では、前記捻りコイルバネは、バネ巻回部31の中心軸をベース体3の厚さ方向z(
図1参照)に沿わせるようにして、ベース体3内に納められている。また、バネ巻回部31を上方に位置させ、バネ一端29及びバネ他端30を共に下方に位置させるようにして、ベース体3内に納められている。バネ一端29及びバネ他端30は共に前記巻回部から下方に引き出されたバネ構成線材の端末を屈曲させてベース体3の厚さ方向zに沿わせた構成となっており、可動体2及びベース体3の側板22に形成させた貫通穴10,24に挿入されて前記のように回動可能に連係されている。
【0027】
前記捻りコイルバネのバネ巻回部31は、ベース体3及び可動体2には固定されておらず、ベース体3内において自由な状態にある。したがって、かかるバネ巻回部31の位置は、可動体2が基準位置から一方移動操作されると
図5の左側に移動し(
図7参照)、可動体2が基準位置から他方移動操作されると
図5の右側に移動するようになっている(
図9参照)。
【0028】
かかる捻りコイルバネのバネ一端29とバネ他端30との間の距離は、可動体2が基準位置から一方移動操作されたとき、および、可動体2が基準位置から他方移動操作されたときの、いずれのときにおいても基準位置にあるときよりも広げられるようになっている。これにより、前記一方移動操作、および、前記他方移動操作のいずれがされたときにも、前記基準位置に向けて前記可動体2を復動させる向きの付勢力が捻りコイルバネに蓄勢されるようになっている。
【0029】
図6及び
図7に示されるように、基準位置から可動体2を一方移動操作することで、可動体2の支持部7に引っかけ対象を引っかけることが可能となる(フックとしての利用)。この一方移動操作によって可動体2を基準位置に復動させる向きの付勢力が付勢手段4に蓄勢されることから、引っかけ対象の引っかけを止めると、可動体2は基準位置に自動的に復動される。
一方、
図8及び
図9に示されるように、基準位置から可動体2を他方移動操作することで、可動体2の一方挟持部8を利用して挟み付け対象を挟み付けることが可能となる(ピンチとしての利用)。この他方移動操作によっても可動体2を基準位置に復動させる向きの付勢力が付勢手段4に蓄勢されることから、この付勢力によって挟み付け対象の挟み付けがなされる。挟み付け対象の挟み付けを止めると、この場合も可動体2は基準位置に自動的に復動される。
かかるフック装置1によれば、かかるフックとしての機能とピンチとしての機能とを、可動体2とベース体3と付勢手段4の三点のパーツから合理的に実現でき、車両側への取り付け位置に応じた小型化も支障なくなし得る。
【0030】
図示の例では、前記可動体2は、前記一方移動操作の中心となる第一軸11と、前記他方移動操作の中心となる第二軸12と、動作制御用の第三軸13とを有している。
【0031】
第二軸12は可動体2の自由端6側に位置される。第一軸11および第三軸13は、可動体2の内端9側にあって第二軸12を中心とした仮想の円の円弧上に位置されるように配されている。第一軸11は可動体2の一方移動操作の往動先側maに位置し、第三軸13はこれよりも可動体2の他方移動操作の往動先側mbに位置している。
【0032】
第一軸11、第二軸12および第三軸13はいずれも、可動体2に対し前記ベース体3の厚さ方向zに軸中心線を沿わせるように、備えられている。
【0033】
可動体2は、自由端6から前記他方移動操作の往動先mb側に向けて突き出す一方顎部14と、自由端6から前記一方移動操作の往動先ma側に向けて突き出す他方顎部15とを備えている。これより、可動体2は、前記第一軸11、第二軸12および第三軸13の軸中心線に直交する向きから見たときに、その自由端6側にT字状の頭部を備えると共に、この頭部から内端9に至る脚部と、この内端9側から上方に突き出して第一軸11が備えられた分岐部とを備えた形態となっている。図中符号16は可動体2の自由端6側を覆う意匠部材である。
【0034】
可動体2を一方移動操作しきった位置(
図7)において、可動体2の前記中心線xは水平に配され、一方顎部14は上方に突き出すようになっている。これにより、一方顎部14が前記支持部7として機能するようになっている。
【0035】
一方、可動体2を他方移動操作すると、他方顎部15とベース体3の繰り出し開口20近傍の他方挟持部28との間に挟み付け対象の挟み込み隙間s1が形成されるようになっている(
図9)。これにより、他方顎部15が前記一方挟持部8として機能するようになっている。
【0036】
可動体2は、ベース体3を構成する一対の側板22の一方に向き合う一方の側部構成体17と、ベース体3を構成する一対の側板22の他方に向き合う他方の側部構成体17とを、前記厚さ方向zに沿う向きの接合部18によって接合させてなり、内部を中空にしている。
【0037】
第一軸11および第三軸13は一対の側部構成体17のそれぞれにおいて、その外面から突出されている。第二軸12は一対の側部構成体17間に亘るように可動体2の内部に形成されている。
【0038】
また、図示の例では、前記ベース体3は、前記第一軸11の案内溝25と、前記第二軸12の当接部26と、前記第三軸13の案内溝27とを備えている。
二つの案内溝25,27は、ベース体3を構成する一対の側板22にそれぞれ形成された透かし溝によって構成されている。
【0039】
当接部26は、可動体2の前記一方移動操作を止めた後の前記基準位置への復動によって前記第二軸12が押しつけられるように、形成されている。図示の例では、当接部26は、前記繰り出し開口20における可動体2の一方移動操作の往動先ma側にある開口縁部から上方に突き出す柱状部によって構成されている。当接部26は、可動体2の内部に収まるようになっている。また、当接部26には、前記一方移動操作の往動先ma側において開放された第二軸12の受入凹部26aが形成されている。
【0040】
第一軸11の案内溝25は前記第二軸12を中心とした仮想の円の円弧に沿うように形成されている。この案内溝25の長さの範囲で可動体2は前記他方移動操作可能となっている。図示の例では、基準位置において第一軸11はこの案内溝25の
図5における左側の端部に位置されている。
【0041】
第三軸13の案内溝27は、第一軸11を中心とした仮想の円の円弧に沿った第一部分27aと、第二軸12を中心とした仮想の円の円弧に沿った第二部分27bとを備えている。第一部分27aの下端と第二部分27bの左端とにおいて両部分27a、27bは連通している。基準位置において第三軸13はこの連通箇所27cに位置するようになっている。
【0042】
かかる第一軸11の案内溝25の長さ、および、第三軸13の案内溝27の長さを変えることで、一方移動操作および他方移動操作の移動範囲は調整可能とされる。
【0043】
また、前記ベース体3には、前記他方移動操作により前記一方挟持部8との間に前記挟み付け対象の挟み込み隙間s1を形成させる他方挟持部28が形成されている。図示の例では、前記繰り出し開口20よりも
図5における右側に位置されるベース体3の意匠部19の一部が他方挟持部28となっている。
【0044】
前記付勢手段4としての捻りコイルバネは、可動体2が基準位置にある状態において、バネ一端29とバネ他端30との間を引き離す向きの力の作用を既に受けているようになっている(無負荷の状態のバネ一端29の位置を
図5に想像線で示す。)。これにより、かかる捻りコイルバネの付勢により基準位置において第二軸12は当接部26の受入凹部26a内にあって当接部26に押しつけられ、第一軸11は案内溝の
図5における左側の端部に位置られるようになっている。また、この基準位置において、可動体2の一方顎部14とベース体3の前記繰り出し開口20近傍の意匠部19との間には隙間s2が形成されており、この隙間s2を利用して可動体2の他方移動操作ができるようになっている。
【0045】
可動体2をその自由端6側、図示の例では、可動体2における繰り出し開口20を通じてベース体3の外側に位置されている箇所(自由端6、支持部7、および一方挟持部8)の一部である一方顎部14に指を掛けるなどして基準位置から一方移動操作すると、第一軸11を案内溝25の
図5における左側の端部に位置づけた状態で、第三軸13は案内溝27の第一部分27aを上方に移動し、第二軸12は当接部26との当接を解いて
図5における右側に移動する(
図7参照)。この一方移動操作を止めるか、可動体2への引っかけ対象の引っかけを解くと、捻りコイルバネの付勢により可動体2は基準位置に復動される。
【0046】
可動体2をその自由端6側、図示の例では、一方顎部14に指を当てて押し込むなどして可動体2を基準位置から他方移動操作すると、第二軸12を当接部26に押し当てた状態で第一軸11は案内溝の
図5における右側の端部に移動し、第三軸13は案内溝27の第二部分27bを
図5における右側に移動する(
図9参照)。この他方移動操作を止めるか、可動体2の一方挟持部8とベース体3の他方挟持部28との間から挟み付け対象を抜け出させると、捻りコイルバネの付勢により可動体2は基準位置に復動される。
【0047】
図10に示されるように、バネ一端29を前記可動体2に回動可能に連係させ、かつ、バネ他端30を前記ベース体3に回動可能に連係させると共に、バネ巻回部31を前記ベース体3内において移動可能に納めた追加捻りコイルバネ5をさらに付加し、可動体2が基準位置から一方移動操作及び他方移動操作されたときに、追加捻りコイルバネ5に可動体2を基準位置に復動させる向きの付勢力が蓄勢されるようにすることもできる。このようにした場合、挟み付け対象に対する挟み付け力を追加捻りコイルバネ5によって強化することができる。
【0048】
なお、当然のことながら、本発明は以上に説明した実施態様に限定されるものではなく、本発明の目的を達成し得るすべての実施態様を含むものである。
【符号の説明】
【0049】
2 可動体
3 ベース体
4 付勢手段
6 自由端
7 支持部
8 一方挟持部