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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023146242
(43)【公開日】2023-10-12
(54)【発明の名称】眉毛に好適な組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/891 20060101AFI20231004BHJP
   A61Q 5/00 20060101ALI20231004BHJP
   A61K 8/31 20060101ALI20231004BHJP
   A61K 8/73 20060101ALI20231004BHJP
   A61K 8/25 20060101ALI20231004BHJP
【FI】
A61K8/891
A61Q5/00
A61K8/31
A61K8/73
A61K8/25
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022053331
(22)【出願日】2022-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】391023932
【氏名又は名称】ロレアル
【氏名又は名称原語表記】L’OREAL
【住所又は居所原語表記】14 Rue Royale,75008 PARIS,France
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133086
【弁理士】
【氏名又は名称】堀江 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】大熊 真紀
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AB172
4C083AB232
4C083AB242
4C083AB431
4C083AB432
4C083AB441
4C083AC011
4C083AC012
4C083AC112
4C083AC332
4C083AD151
4C083AD152
4C083AD241
4C083AD242
4C083CC31
4C083DD23
4C083EE01
4C083EE06
4C083EE07
(57)【要約】
【課題】ケラチン物質のメイクアップに好適な無水液体組成物であって、安定性であり、快適な質感をもたらすことができる組成物を提供すること。
【解決手段】ケラチン物質用の無水液体組成物であって、(a)少なくとも1種のシリコーン樹脂、(b)少なくとも1種のシリコーンガム、(c)少なくとも1種の揮発性炭化水素油、(d)少なくとも1種のフィラー、及び(e)有機変性クレイから選択される少なくとも1種の親油性ゲル化剤を含み、(d)フィラーが、(d-1)少なくとも1種の疎水性無機フィラーを含み、(d)フィラー及び(e)親油性ゲル化剤の総量が、組成物の総質量に対して18.5質量%超であり、(e)親油性ゲル化剤の量が、組成物の総質量に対して2.5質量%超且つ10質量%未満であり、(d)フィラーの量が、組成物の総質量に対して21質量%未満であり、(d-1)疎水性無機フィラーの量が、組成物の総質量に対して2質量%未満である、組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケラチン物質、好ましくはケラチン繊維、より好ましくは眉毛用の無水液体組成物であって、
(a)少なくとも1種のシリコーン樹脂、
(b)少なくとも1種のシリコーンガム、
(c)少なくとも1種の揮発性炭化水素油、
(d)少なくとも1種のフィラー、及び
(e)有機変性クレイから選択される少なくとも1種の親油性ゲル化剤
を含み、
(d)フィラーが、
(d-1)好ましくは疎水変性金属酸化物から選択される、より好ましくは疎水性シリカから選択される、少なくとも1種の疎水性無機フィラー
を含み、
組成物中の(d)フィラー及び(e)親油性ゲル化剤の総量が、組成物の総質量に対して18.5質量%超であり、
組成物中の(e)親油性ゲル化剤の量が、組成物の総質量に対して2.5質量%超且つ10質量%未満であり、
組成物中の(d)フィラーの量が、組成物の総質量に対して21質量%未満であり、
組成物中の(d-1)疎水性無機フィラーの量が、組成物の総質量に対して2質量%未満である、組成物。
【請求項2】
(a)シリコーン樹脂が、MQ樹脂から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
(a)シリコーン樹脂が、前記組成物の総質量に対して1質量%~30質量%、好ましくは5質量%~25質量%、より好ましくは10質量%~20質量%の量で存在する、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
(b)シリコーンガムが、ポリジメチルシロキサンガムから選択される、請求項1から3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
(b)シリコーンガムが、25℃で400,000cSt以上、好ましくは600,000cSt以上、より好ましくは800,000cSt以上の動粘度を有する、請求項1から4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
(b)シリコーンガムが、前記組成物の総質量に対して1質量%~25質量%、好ましくは3質量%~20質量%、より好ましくは5質量%~15質量%の量で存在する、請求項1から5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
(c)揮発性炭化水素油が、イソドデカン、C8~9イソパラフィン、及びこれらの混合物から選択される、請求項1から6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
(c)揮発性炭化水素油が、前記組成物の総質量に対して10質量%~60質量%、好ましくは15質量%~55質量%、より好ましくは20質量%~50質量%の量で存在する、請求項1から7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
(d)フィラーが、前記組成物の総質量に対して10質量%~20質量%、好ましくは12質量%~19質量%、より好ましくは14質量%~18質量%の量で存在する、請求項1から8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
(d)フィラーが、好ましくは疎水変性デンプンから選択される、より好ましくはエステル化されたデンプンから選択される、(d-2)少なくとも1種の疎水性有機フィラーを更に含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
(d-1)疎水性無機フィラーが、前記組成物の総質量に対して0.1質量%~2質量%未満、好ましくは0.2質量%~1.5質量%、より好ましくは0.3質量%~1質量%の量で存在する、請求項1から10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
(e)親油性ゲル化剤が、有機変性ベントナイト、有機変性ヘクトライト、及びこれらの混合物から選択される、請求項1から11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
(e)親油性ゲル化剤が、前記組成物の総質量に対して3質量%~9.5質量%、好ましくは4質量%~9質量%、より好ましくは5質量%~8.5質量%の量で存在する、請求項1から12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
(d)フィラー及び(e)親油性ゲル化剤が、前記組成物の総質量に対して19質量%~35質量%、好ましくは20質量%~30質量%、より好ましくは21質量%~25質量%の総量で存在する、請求項1から13のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
ケラチン物質、好ましくはケラチン繊維、より好ましくは眉毛のための美容方法であって、
請求項1から14のいずれか一項に記載の組成物を前記ケラチン物質上に適用する工程を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケラチン物質、好ましくはケラチン繊維、より好ましくは眉毛に好適な組成物、及び該組成物に関する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
MQ樹脂とシリコーンガムとの組合せは、色移り抵抗又は摩耗抵抗のために、無水液体化粧用組成物中で揮発性担体と共に使用されてきた。米国特許第6,074,654号、同第6,139,823号、同第6,340,466号、同第6,406,683号、同第6,071,503号、同第6,019,962号、同第6,464,964号、及び同第7,160,550号は、この技術に関する。例えば、米国特許第6,074,654号及び同第6,340,466号は、MQ樹脂及びシリコーンガムをイソドデカン中に含む、唇用の組成物(実施例6参照)を開示している。
【0003】
一部の化粧料、特に眉毛用メイクアップ製品では、摩耗抵抗だけではなく、マット仕上げ等のナチュラルメイクアップ仕上げも好ましい。ナチュラルメイクアップ仕上げは、上記の先行技術文献で開示されているような唇用の組成物には必要とされないことがある。むしろ、多くの場合において、唇用の組成物には、より多くの艶が必要とされる。
【0004】
一方、メイクアップ製品では、一般的に、メイクアップのベタつきの低減及び適用時の滑らかな拡がり等の快適な質感も好ましい。液体メイクアップ製品には、乾燥後にベタつき無し又は非粘着性のメイクアップ膜をもたらすことが特に好ましい。
【0005】
パウダーを追加することは、マット仕上げ又はベタつき無しのメイクアップ膜の生成に寄与しうる。しかしながら、マット仕上げ又は非粘着性のために過度のパウダー成分を添加すると、適用時の滑らかさが悪化する可能性がある。
【0006】
更に、液体メイクアップ製品は、特に高温で、長時間の間、安定することも好ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第6,074,654号
【特許文献2】米国特許第6,139,823号
【特許文献3】米国特許第6,340,466号
【特許文献4】米国特許第6,406,683号
【特許文献5】米国特許第6,071,503号
【特許文献6】米国特許第6,019,962号
【特許文献7】米国特許第6,464,964号
【特許文献8】米国特許第7,160,550号
【特許文献9】USP 2,676,182
【特許文献10】USP 3,627,851
【特許文献11】USP 3,772,247
【特許文献12】USP 5,248,739
【特許文献13】USP 5,082,706
【特許文献14】USP 5,319,040
【特許文献15】USP 5,302,685
【特許文献16】USP 4,935,484
【特許文献17】USP 5,817,302
【特許文献18】USP 5,110,890
【特許文献19】WO 2005/075 542
【特許文献20】DE102008012457
【特許文献21】米国特許第7,470,725号
【特許文献22】JP-A-2014-088307
【特許文献23】JP-A-2014-218433
【特許文献24】JP-A-2018-177620
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】「Encyclopedia of Polymer Science and Engineering」、第15巻、John Wiley & Sons, New York(1989年)、265~270頁
【非特許文献2】Brinker C. J.及びScherer G. W.、Sol-Gel Science、New York、Academic Press、1990年
【非特許文献3】The Journal of the American Chemical Society、第60巻、309頁、1938年2月
【非特許文献4】Van de Hulst, H.C.、「Light Scattering by Small Particles」、第9章及び第10章、Wiley、ニューヨーク、1957年
【非特許文献5】Barrett, E. P.、Joyner, L. G.、Halenda, P. P.、J. Am. Chem. Soc. 73、373 (1951年)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、ケラチン物質、好ましくはケラチン繊維、より好ましくは眉毛のメイクアップに好適な無水液体組成物であって、安定性であり、マット仕上げ等の優れた美容効果、良好な摩耗抵抗、並びに適用中のメイクアップのベタつき減少及び滑らかな拡がり等の快適な質感をもたらすことができる組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の上記の目的は、ケラチン物質、好ましくはケラチン繊維、より好ましくは眉毛用の無水液体組成物であって、
(a)少なくとも1種のシリコーン樹脂、
(b)少なくとも1種のシリコーンガム、
(c)少なくとも1種の揮発性炭化水素油、
(d)少なくとも1種のフィラー、及び
(e)有機変性クレイから選択される少なくとも1種の親油性ゲル化剤
を含み、
(d)フィラーが、
(d-1)好ましくは疎水変性金属酸化物から選択される、より好ましくは疎水性シリカから選択される、少なくとも1種の疎水性無機フィラー
を含み、
組成物中の(d)フィラー及び(e)親油性ゲル化剤の総量が、組成物の総質量に対して18.5質量%超であり、
組成物中の(e)親油性ゲル化剤の量が、組成物の総質量に対して2.5質量%超且つ10質量%未満であり、
組成物中の(d)フィラーの量が、組成物の総質量に対して21質量%未満であり、
組成物中の(d-1)疎水性無機フィラーの量が、組成物の総質量に対して2質量%未満である、組成物によって達成することができる。
【0011】
(a)シリコーン樹脂は、MQ樹脂から選択されてもよい。
【0012】
(a)シリコーン樹脂は、組成物の総質量に対して1質量%~30質量%、好ましくは5質量%~25質量%、より好ましくは10質量%~20質量%の量で存在してもよい。
【0013】
(b)シリコーンガムは、ポリジメチルシロキサンガムから選択されうる。
【0014】
(b)シリコーンガムは、25℃で400,000cSt以上、好ましくは600,000cSt以上、より好ましくは800,000cSt以上の動粘度を有しうる。
【0015】
(b)シリコーンガムは、組成物の総質量に対して1質量%~25質量%、好ましくは3質量%~20質量%、より好ましくは5質量%~15質量%の量で存在してもよい。
【0016】
(c)揮発性炭化水素油は、イソドデカン、C8~9イソパラフィン、及びこれらの混合物から選択されうる。
【0017】
(c)揮発性炭化水素油は、組成物の総質量に対して10質量%~60質量%、好ましくは15質量%~55質量%、より好ましくは20質量%~50質量%の量で存在してもよい。
【0018】
(d)フィラーは、組成物の総質量に対して10質量%~20質量%、好ましくは12質量%~19質量%、より好ましくは14質量%~18質量%の量で存在してもよい。
【0019】
(d)フィラーは、好ましくは疎水変性デンプンから選択される、より好ましくはエステル化されたデンプンから選択される、(d-2)少なくとも1種の疎水性有機フィラーを更に含んでもよい。
【0020】
(d-1)疎水性無機フィラーは、組成物の総質量に対して0.1質量%~2質量%未満、好ましくは0.2質量%~1.5質量%、より好ましくは0.3質量%~1質量%の量で存在してもよい。
【0021】
(e)親油性ゲル化剤は、有機変性ベントナイト、有機変性ヘクトライト、及びこれらの混合物から選択されうる。
【0022】
(e)親油性ゲル化剤は、組成物の総質量に対して3質量%~9.5質量%、好ましくは4質量%~9質量%、より好ましくは5質量%~8.5質量%の量で存在してもよい。
【0023】
(d)フィラー及び(e)親油性ゲル化剤は、組成物の総質量に対して19質量%~35質量%、好ましくは20質量%~30質量%、より好ましくは21質量%~25質量%の総量で存在してもよい。
【0024】
本発明はまた、ケラチン物質、好ましくはケラチン繊維、より好ましくは眉毛のための美容方法であって、
本発明による組成物をケラチン物質に適用する工程を含む、方法にも関しうる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
鋭意検討の結果、本発明者らは、ケラチン物質、好ましくはケラチン繊維、より好ましくは眉毛のメイクアップに好適な無水液体組成物であって、安定性であり、マット仕上げ等の優れた美容効果、良好な摩耗抵抗、並びに適用中のメイクアップのベタつき減少及び滑らかな拡がり等の快適な質感をもたらすことができる組成物を提供することが可能であることを発見した。
【0026】
したがって、本発明による組成物は、ケラチン物質、好ましくはケラチン繊維、より好ましくは眉毛のための無水液体組成物であって、
(a)少なくとも1種のシリコーン樹脂、
(b)少なくとも1種のシリコーンガム、
(c)少なくとも1種の揮発性炭化水素油、
(d)少なくとも1種のフィラー、及び
(e)有機変性クレイから選択される少なくとも1種の親油性ゲル化剤
を含み、
(d)フィラーが、
(d-1)好ましくは疎水変性金属酸化物から選択される、より好ましくは疎水性シリカから選択される、少なくとも1種の疎水性無機フィラー
を含み、
組成物中の(d)フィラー及び(e)親油性ゲル化剤の総量が、組成物の総質量に対して18.5質量%超であり、
組成物中の(e)親油性ゲル化剤の量が、組成物の総質量に対して2.5質量%超且つ10質量%未満であり、
組成物中の(d)フィラーの量が、組成物の総質量に対して21質量%未満であり、
組成物中の(d-1)疎水性無機フィラーの量が、組成物の総質量に対して2質量%未満である、組成物である。
【0027】
(d)フィラーは、(e)親油性ゲル化剤とは異なる。
【0028】
本発明による組成物は、安定性であり、マット仕上げ等の優れた美容効果、良好な摩耗抵抗、並びに適用中のメイクアップのベタつきの低減及び滑らかな拡がり等の快適な質感をもたらすことができる。
【0029】
本発明による組成物は、高温でも、長期間にわたって安定性である。したがって、本発明による組成物は、高温条件下でも、長期間にわたって保存することができる。
【0030】
本発明による組成物は、ケラチン物質、好ましくはケラチン繊維、より好ましくは眉毛に、マット仕上げ又は光沢を抑えた仕上げをもたらすことができる。すなわち、本発明による組成物は、ナチュラルメイクアップの仕上げをもたらすことができる。
【0031】
本発明による組成物は、適用中のメイクアップのベタつきの低減及び滑らかな拡がり等の快適な質感をもたらすことができる。すなわち、本発明による組成物は、ケラチン物質、好ましくはケラチン繊維、より好ましくは眉毛上で滑らかに滑走又は滑ることができる。
【0032】
本発明による組成物によってもたらされる美容効果は、長持ちできる、又は長時間維持できる。本発明による組成物によってもたらされる美容効果は、皮脂又は水に対して良好な耐性を有することができる。したがって、本発明による組成物によるメイクアップは、例えば汗又は雨に暴露されたときでも長時間維持できる。そのため、本発明による組成物は、ケラチン物質、好ましくはケラチン繊維、より好ましくは眉毛に、良好な摩耗抵抗をもたらすこともできる。
【0033】
本発明による組成物は、色移り抵抗又は摩耗抵抗を有するメイクアップをもたらすこともできる。
【0034】
以下に、本発明による組成物及び方法をより詳細に説明する。
【0035】
[組成物]
【0036】
(シリコーン樹脂)
【0037】
本発明による組成物は、(a)少なくとも1種のシリコーン樹脂を含む。2種以上のシリコーン樹脂が使用される場合、それらは同一であっても異なっていてもよい。
【0038】
「樹脂」という用語は、その構造が三次元である化合物を意味する。「シリコーン樹脂」は、「シリコーンベースの樹脂」又は「シロキサン樹脂」としても知られる。したがって、本発明の目的では、直鎖状ポリジメチルシロキサンはシリコーン樹脂ではない。
【0039】
シリコーン樹脂(シロキサン樹脂としても知られている)の命名法は、「MDTQ」の名称で知られており、樹脂は、含まれる様々なシロキサンモノマー単位に応じて表され、「MDTQ」という文字はそれぞれ、単位のタイプを特徴付ける。
【0040】
「M」という文字は、式R1R2R3SiO1/2の単官能性単位を表し、式中のケイ素原子は、この単位を含むポリマー中の1個の酸素原子のみに結合されている。
【0041】
「D」という文字は、ケイ素原子が2個の酸素原子に結合している二官能性単位R1R2SiO2/2を意味する。
【0042】
「T」という文字は、式R1SiO3/2の三官能性単位を表す。
【0043】
そのような樹脂は、例えば、「Encyclopedia of Polymer Science and Engineering」、第15巻、John Wiley & Sons, New York(1989年)、265~270頁、並びにUSP 2,676,182、USP 3,627,851、USP 3,772,247及びUSP 5,248,739、又はUSP 5,082,706、USP 5,319,040、USP 5,302,685及びUSP 4,935,484に記載されている。
【0044】
先に定義されたM、D及びT単位中、R、すなわちR1、R2及びR3は、1~10個の炭素原子を含有する炭化水素系基(とりわけアルキル)、フェニル基、フェニルアルキル基又はヒドロキシル基を表す。
【0045】
最後に、「Q」という文字は、四官能性単位SiO4/2を意味し、式中のケイ素原子は、4個の酸素原子に結合され、それら自体が、ポリマーの残りに結合されている。
【0046】
異なる特性を有する様々なシリコーン樹脂は、これらの異なる単位から得ることができ、これらのポリマーの特性は、モノマー(又は単位)のタイプ、R基の性質及び数、ポリマー鎖の長さ、分枝度並びにペンダント鎖のサイズに応じて変動する。
【0047】
本発明による組成物中で使用することができるシリコーン樹脂としては、例えば、MQタイプ、Tタイプ又はMQTタイプのシリコーン樹脂を使用することができる。
【0048】
MQ樹脂:
【0049】
MQタイプのシリコーン樹脂の例としては、式[(R1)3SiO1/2]x(SiO4/2)y(MQ単位)(式中、R1基が先に定義された基を表し、好ましくは1~8個の炭素原子を含有するアルキル基、好ましくはメチル基であるように、x及びyは50~80の範囲の整数である)のアルキルシロキシシリケートを挙げることができる。
【0050】
トリメチルシロキシシリケートタイプのMQタイプの固体シリコーン樹脂の例としては、General Electric社によってSR1000の参照名で、Wacker Chemie AG社によってTMS 803の参照名で、又は信越化学工業株式会社によってKF-7312J、又はDow Corning社によってDC749若しくはDC593の名称で販売されているものを挙げることができる。
【0051】
MQシロキシシリケート単位を含むシリコーン樹脂としては、フェニルアルキルシロキシシリケート樹脂、例えばフェニルプロピルジメチルシロキシシリケート(General Electric社によって販売されているSilshine 151)も挙げることができる。該樹脂の調製は、とりわけ、特許USP 5,817,302に記載されている。
【0052】
樹脂T:
【0053】
挙げることができるタイプTのシリコーン樹脂の例には、式(RSiO3/2)x(単位T)(式中、R基が1~10個の炭素原子を含有するアルキル基であるように、xは100超である)のポリシルセスキオキサンであって、更にSi-OH末端基を場合により含む、ポリシルセスキオキサンが含まれる。
【0054】
好ましくは使用することができるポリメチルシルセスキオキサン樹脂は、Rがメチル基を表すもの、例として以下:
- Wacker社によってResin MKの参照名で販売されているもの、例えばBelsil PMS MK、即ち、CH3SiO3/2繰り返し単位(単位T)を含むポリマーであって、最大1質量%の(CH3)2SiO2/2単位(単位D)を含んでもよく、平均分子量が約10000g/molであるポリマー、又は
- 信越化学工業株式会社により、式CH3SiO3/2の単位Tで構成され、Si-OH(シラノール)末端基を有する、KR220Lの参照名で販売されているもの、98%の単位T及び2%のジメチル単位Dを含み、Si-OH末端基を有する、KR242Aの参照名で販売されているもの、若しくは88%の単位T及び12%のジメチル単位Dを含み、Si-OH末端基を有する、KR251の参照名で販売されているもの
である。
【0055】
MQT樹脂:
【0056】
とりわけ知られているMQT単位を含む樹脂は、文献USP 5,110,890に挙げられているものである。
【0057】
MQTタイプの樹脂の好ましい形態は、MQT-プロピル(MQTPrとしても知られている)である。本発明による組成物中で使用することができる該樹脂は、その内容が参照により本明細書に組み込まれる特許出願WO 2005/075 542において記載され、調製されている樹脂である。
【0058】
MQ-T-プロピル樹脂は、好ましくは、以下:
(i) (R13SiO1/2)a
(ii) (R22SiO2/2)b
(iii) (R3SiO3/2)c及び
(iv) (SiO4/2)d
(式中、
R1、R2及びR3は、独立して、1~10個の炭素原子を含有する炭化水素系基(特にアルキル)、フェニル基、フェニルアルキル基又はヒドロキシル基、好ましくは1~8個の炭素原子を含有するアルキル基又はフェニル基を表し、
aは、0.05~0.5の間であり、
bは、0~0.3の間であり、
cは、ゼロ超であり、
dは、0.05~0.6の間であり、
a+b+c+d=1であり、a、b、c及びdは、モル分率であり、
但し、シロキサン樹脂のR3基の40mol%超は、プロピル基であることを条件とする)の単位を含む。
【0059】
好ましくは、シロキサン樹脂は、以下:
(i) (R13SiO1/2)a
(iii) (R3SiO3/2)c及び
(iv) (SiO4/2)d
(式中、
R1及びR3は、独立して、1~8個の炭素原子を含有するアルキル基を表し、R1は、好ましくはメチル基であり、R3は、好ましくはプロピル基であり、
aは、0.05~0.5の間、好ましくは0.15~0.4の間であり、
cは、ゼロ超、好ましくは0.15~0.4の間であり、
dは、0.05~0.6の間、好ましくは0.2~0.6の間、或いは0.2~0.55の間であり、
a+b+c+d=1であり、a、b、c及びdは、モル分率であり、
但し、シロキサン樹脂のR3基の40mol%超は、プロピル基であることを条件とする)の単位を含む。
【0060】
本発明に従って使用することができるシロキサン樹脂は、以下:
A) 少なくとも80mol%の単位(R13SiO1/2)a及び(SiO4/2)dを含むMQ樹脂
[R1は、1~8個の炭素原子を含有するアルキル基、アリール基、カルビノール基又はアミノ基を表し、
a及びdは、ゼロ超であり、
比a/dは、0.5~1.5の間である]、
及び
B) 少なくとも80mol%の単位(R3SiO3/2)cを含むT-プロピル樹脂
[R3は、1~8個の炭素原子を含有するアルキル基、アリール基、カルビノール基又はアミノ基を表し、
cは、ゼロ超であり、
但し、R3基の少なくとも40mol%は、プロピル基であることを条件とする]、
の反応を含む方法によって得ることができ、質量比A/Bは、95/5~15/85の間であり、質量比A/Bは、好ましくは30/70である。
【0061】
有利には、質量比A/Bは、95/5~15/85の間である。好ましくは、比A/Bは、70/30以下である。これらの好ましい比は、快適な固着物を生成することを証明しており、これは固着物中の硬質MQ樹脂粒子のパーコレーションがないことに起因する。
【0062】
そのため、好ましくは、シリコーン樹脂は、以下:
a)特に(i)式[(R1)3SiO1/2]x(SiO4/2)y(式中、R1基が1~10個の炭素原子を含有する炭化水素系基、フェニル基、フェニルアルキル基、又はヒドロキシル基を表し、好ましくは1~8個の炭素原子を含有するアルキル基、好ましくはメチル基であるように、x及びyは50~80の範囲の整数である)のトリメチルシロキシシリケートであってもよいアルキルシロキシシリケート、及び(ii)フェニルアルキルシロキシシリケート樹脂、例えばフェニルプロピルジメチルシロキシシリケートから選択される、MQタイプの樹脂、並びに/又は
b)特に式(RSiO3/2)x(式中、xは100超であり、R基は1~10個の炭素原子を含有するアルキル基、例えばメチル基である)のポリシルセスキオキサンであって、更にSi-OH末端基を場合により含む、ポリシルセスキオキサンから選択される、Tタイプの樹脂、並びに/又は
c)単位(i)(R13SiO1/2)a、(ii)(R22SiO2/2)b、(iii)(R3SiO3/2)c及び(iv)(SiO4/2)dを含みうるMQTタイプの樹脂、特にMQT-プロピルタイプの樹脂
(式中、R1、R2及びR3は、独立して、1~10個の炭素原子を含有する炭化水素系基、特にアルキル、フェニル基、フェニルアルキル基又はヒドロキシル基、好ましくは1~8個の炭素原子を含有するアルキル基又はフェニル基を表し、
aは、0.05~0.5の間であり、
bは、0~0.3の間であり、
cは、ゼロ超であり、
dは、0.05~0.6の間であり、
a+b+c+d=1であり、a、b、c及びdは、モル分率であり、
但し、シロキサン樹脂のR3基の40mol%超は、プロピル基であることを条件とする)を含む群から選択される。
【0063】
(a)シリコーン樹脂は、MQ樹脂から選択されることが好ましく、より好ましくはトリメチルシロキシシリケートである。
【0064】
本発明による組成物中の(a)シリコーン樹脂の量は、組成物の総質量に対して1質量%以上、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上でありうる。
【0065】
本発明による組成物中の(a)シリコーン樹脂の量は、組成物の総質量に対して30質量%以下、好ましくは25質量%以下、より好ましくは20質量%以下でありうる。
【0066】
したがって、本発明による組成物中の(a)シリコーン樹脂の量は、組成物の総質量に対して1質量%~30質量%、好ましくは5質量%~25質量%、より好ましくは10質量%~20質量%でありうる。
【0067】
(シリコーンガム)
【0068】
本発明による組成物は、(b)少なくとも1種のシリコーンガムを含む。2種以上の(b)シリコーンガムが使用される場合、それらは同一であっても異なっていてもよい。
【0069】
(b)シリコーンガムは、25℃で400,000cSt以上、好ましくは600,000cSt以上、より好ましくは800,000cSt以上の動粘度を有しうる。
【0070】
(b)シリコーンガムは、25℃で10,000,000cSt以下、好ましくは5,000,000cSt以下、より好ましくは3,000,000cSt以下の動粘度を有しうる。
【0071】
(b)シリコーンガムは、25℃で300,000~10,000,000cSt、好ましくは500,000~5,000,000cSt以下、より好ましくは700,000~3,000,000cStの動粘度を有しうる。
【0072】
(b)シリコーンガムの動粘度は、ASTM規格D-445に従って測定することができる。
【0073】
(b)シリコーンガムは、アミノ基等の官能基を含まないことが好ましいことがある。
【0074】
(b)シリコーンガムは、次式:
【0075】
【化1】
【0076】
(式中、
R1、R2、R5及びR6は、一緒に又は別々に、1~6個の炭素原子を含有するアルキル基であり、
R3及びR4は、一緒に又は別々に、1~6個の炭素原子を含有するアルキル基、ビニル基、アミン基又はヒドロキシル基であり、
Xは、1~6個の炭素原子を含有するアルキル基、ヒドロキシル基又はアミン基であり、
n及びpは、化合物の25℃での動粘度が400,000cSt以上、好ましくは600,000cSt以上、より好ましくは800,000cSt以上になるように選択される整数である)のシリコーンから特に選択されうる。
【0077】
本発明に従って使用されうるシリコーンガムとして挙げることができるのは、以下:
- 置換基R1~R6が、メチル基を表し、X基が、メトキシ基を表し、n及びpが、ポリマーの分子量を600 000g/molとするものであるもの、例えばBluestar社によりMirasil C-DPDMの名称で販売されている製品、
- 置換基R1~R6が、メチル基を表し、X基が、ヒドロキシル基を表し、n及びpが、ポリマーの分子量を600 000g/molとするものであるもの、例えばDow Corning社によりSGM 36の名称で販売されている製品、並びに
- (ポリジメチルシロキサン)(メチルビニルシロキサン)タイプのジメチコン、例えばGE Bayer Silicones社により販売されているSE63、ポリ(ジメチルシロキサン)(ジフェニル)(メチルビニルシロキサン)コポリマー、及びこれらの混合物
である。
【0078】
(b)シリコーンガムの分子量は、350,000g/mol超、350,000~800,000g/mol、好ましくは450,000~700,000g/molであってもよい。
【0079】
(b)シリコーンガムは、ポリジメチルシロキサンガムから選択されることが好ましい。
【0080】
本発明による組成物中の(b)シリコーンガムの量は、組成物の総質量に対して1質量%以上であり、好ましくは3質量%以上、より好ましくは5質量%以上でありうる。
【0081】
本発明による組成物中の(b)シリコーンガムの量は、組成物の総質量に対して25質量%以下であり、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下でありうる。
【0082】
したがって、本発明による組成物中の(b)シリコーンガムの量は、組成物の総質量に対して1質量%~25質量%、好ましくは3質量%~20質量%、より好ましくは5質量%~15質量%である。
【0083】
(揮発性炭化水素油)
【0084】
本発明による組成物は、(c)少なくとも1種の揮発性炭化水素油を含む。2種以上の(c)揮発性炭化水素油が使用される場合には、それらは同じであっても異なっていてもよい。
【0085】
ここでは、「油」は、大気圧(760mmHg)下、室内温度(25℃)において、液体又はペースト(非固体)の形態の脂肪化合物又は脂肪物質を意味する。
【0086】
「揮発性油」という用語は、本発明の趣旨の範囲内で、室温(20~25℃)及び大気圧下にて、皮膚又はケラチン繊維と接触して1時間未満で蒸発することができる油を意味すると理解される。本発明の揮発性油は、室温で液体であり、室温及び大気圧において、特に0.13Pa~40000Pa (10-3~300mmHg)、特に1.3Pa~13000Pa (0.01~100mmHg)、より特定すると1.3Pa~1300Pa (0.01~10mmHg)を範囲とする、非ゼロの蒸気圧を有する揮発性化粧用油である。
【0087】
本発明において使用することができる揮発性炭化水素油の例として挙げることができるのは、8~16個の炭素原子を有する炭化水素油、特に石油起源のC8~C16イソアルカン(イソパラフィンとしても知られる)、例えばイソドデカン(2,2,4,4,6-ペンタメチルヘプタンとしても知られる)、イソデカン又はイソヘキサデカン、例えばIsopar又はPermethylの商品名で販売されている油、分岐鎖C8~C16エステル、ネオペンタン酸イソヘキシル、及びこれらの混合物である。その他の揮発性の炭化水素油、例えば、石油蒸留物、特に、Shell社によって名称Shell Soltで販売されているもの;揮発性の直鎖状アルカン、例えば、Cognis社からの特許出願DE102008012457に記載されているものも使用されうる。
【0088】
揮発性炭化水素油の中でも、C8~C16イソアルカン、特にイソドデカンが優先される。
【0089】
(c)揮発性炭化水素油は、イソドデカン、C8~9イソパラフィン、及びこれらの混合物から選択されることが好ましい。
【0090】
本発明による組成物中の(c)揮発性炭化水素油の量は、組成物の総質量に対して10質量%以上、好ましくは15質量%以上、より好ましくは20質量%以上であってもよい。
【0091】
本発明による組成物中の(c)揮発性炭化水素油の量は、組成物の総質量に対して60質量%以下、好ましくは55質量%以下、より好ましくは50質量%以下であってもよい。
【0092】
本発明による組成物中の(c)揮発性炭化水素油の量は、組成物の総質量に対して10質量%~60質量%、好ましくは15質量%~55質量%、より好ましくは20質量%~50質量%であってもよい。
【0093】
(フィラー)
【0094】
本発明による組成物は、(d)少なくとも1種のフィラーを含む。2種以上の(d)フィラーが使用される場合、それらは同一でも異なっていてもよい。
【0095】
「フィラー」という用語は、組成物が製造される温度にかかわらず、本発明による組成物中に存在しうる液体成分中に不溶性である無色又は白色の無機又は合成粒子を意味するものと理解されるべきである。
【0096】
(d)フィラーは、無機でも有機でもよく、球状又は長円形状であっても、いかなる結晶形態(例えば、板状、立方晶系、六方晶系、斜方晶系等)であってもよい。非限定的に、タルク、マイカ、シリカ、シリカシリレート、カオリン、セリサイト、焼成タルク、焼成マイカ、焼成セリサイト、合成マイカ、オキシ塩化ビスマス、硫酸バリウム、窒化ホウ素、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸水素マグネシウム、及びヒドロキシアパタイト、ポリアミド[Nylon(登録商標)]、ポリ-β-アラニン及びポリエチレンで形成される粉末、ポリウレタンで形成される粉末、テトラフルオロエチレンポリマー[Teflon(登録商標)]で形成される粉末、ラウリルリジン、デンプン、ポリマー中空ミクロスフィア、例えばポリ(塩化ビニリデン)/アクリロニトリルの中空ミクロスフィア、例えばExpancel(登録商標)(Nobel Industrie社)、若しくはアクリル酸コポリマーの中空ミクロスフィア、シリコーン樹脂マイクロビーズ[例えば、Toshiba社のTospearls(登録商標)]、ポリオルガノシロキサンエラストマーで形成される粒子、沈降炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、塩基性炭酸マグネシウム、中空シリカミクロスフィア、ガラス若しくはセラミックマイクロカプセル、又は8~22個の炭素原子、例えば12~18個の炭素原子を有する有機カルボン酸に由来する金属石けん、例えば、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸リチウム、ラウリン酸亜鉛若しくはミリスチン酸マグネシウムを挙げることができる。
【0097】
本発明では、(d)フィラーの例として、金属酸化物、好ましくはシリカ、酸化チタン、酸化亜鉛及びこれらの混合物が挙げられる。
【0098】
本発明に適するフィラーは、例えば、平均粒径が100μm未満、特に1~50μmの間、例えば4~20μmの間のフィラーでもよい。
【0099】
(d)フィラーは、親水性であっても疎水性であってもよい。
【0100】
(d)フィラーは、油又は液体脂肪物質、例えば皮脂を(皮膚から)吸収(及び/又は吸着)可能であっても可能でなくてもよい。(d)フィラーは、油又は液体脂肪物質、例えば皮脂を(皮膚から)吸収(及び/又は吸着)可能であることが好ましい。
【0101】
親水性又は疎水性の吸油粉末は、多孔質又は中空粒子、特に多孔質又は中空球状粒子を含んでもよい。
【0102】
親水性吸油粉末:
【0103】
本発明の目的のために、「親水性」吸油粉末という用語は、前記粉末(又は粒子)が、凝集体が形成されないように水中に個別に分散されうることを意味する。
【0104】
親水性吸油粉末は、100ml/100g以上、好ましくは150ml/100g以上、より好ましくは200ml/100g以上の吸油能を有していてもよい。
【0105】
親水性吸油粉末により吸収(及び/又は吸着)される油の量は、下に記載の方法に従って湿潤点を測定することにより特徴づけられうる。Wpと記される湿潤点で測定される吸油能は、均質なペーストを得るために粉末100gに加える必要のある油の量に相当する。
【0106】
吸収(及び/又は吸着)される油の量は、NF規格T 30-022に記載の、粉末の吸油量を決定するための方法に従って測定できる。これは、湿潤点の測定による、粉末の利用可能表面上に吸収/吸着される油の量に相当する。
【0107】
m=2gの量の粉末をガラス板上に乗せ、次いで、油(エステル油及びシリコーン油等)を滴下で加える。4~5滴の油を粉末に添加した後、スパチュラを使用して混合し、油と粉末との集合体が形成されるまで、油の添加を継続する。この時点で、油を1滴ずつ添加し、次いで、混合物をスパチュラで磨りつぶす。堅く滑らかなペーストが得られたら、油の添加を中止する。このペーストは、ひび割れること又は塊を形成することなく、ガラス板上に広げることができなければならない。次いで、使用した油の体積Vs(mlで表される)が記される。吸油量は、Vs/m比に相当する。
【0108】
別法では、吸油能は、JIS-K6217-4に従って測定することができる。
【0109】
親水性吸油粉末は、有機性のものであっても無機性のものであってもよい。
【0110】
親水性吸油粉末は、セルロース、シリカ、シリケート;パーライト;炭酸マグネシウム;水酸化マグネシウム;及びそれらの誘導体;並びにそれらの混合物から選択することができる。
【0111】
一実施形態によれば、セルロース誘導体は、セルロースエステル及びエーテルから選択することができる。
【0112】
「セルロースエステル」という用語は、上記及び下記の文章中では、部分的に又は完全にエステル化された無水グルコース環のα(1~4)配列からなるポリマーを意味し、このエステル化は、前記無水グルコース環の遊離ヒドロキシル官能基の全て又は一部のみと、1~4個の炭素原子を含有する直鎖状又は分枝状のカルボン酸又はカルボン酸誘導体(酸塩化物若しくは酸無水物)との反応によって得られる。好ましくは、セルロースエステルは、前記環の遊離ヒドロキシル官能基の一部と、1~4個の炭素原子を含有するカルボン酸との反応により得られる。有利には、セルロースエステルは、酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、イソ酪酸セルロース、アセト酪酸セルロース及びアセトプロピオン酸セルロース、並びにそれらの混合物から選択される。
【0113】
「セルロースエーテル」という用語は、部分的にエーテル化された無水グルコース環のα(1~4)配列からなるポリマーを意味し、前記環の遊離ヒドロキシル官能基の一部は、-OR基で置換されており、Rは、好ましくは、1~4個の炭素原子を含有する直鎖状又は分枝状のアルキル基である。したがって、セルロースエーテルは、好ましくは、1~4個の炭素原子を含有するアルキル基を有するセルロースアルキルエーテル、例えばセルロースメチル、プロピル、イソプロピル、ブチル及びイソブチルエーテルから選択される。
【0114】
挙げることができるセルロース及びその誘導体には、例えば、日本の大東化成工業株式会社により市販されている以下の球状セルロース粒子が含まれる:粒径4μm(多孔性セルロース)のCellulobeads USF(吸油量は250ml/100gである)。
【0115】
挙げることができるシリカ粉末には、多孔質シリカミクロスフェア、特に、旭硝子株式会社によりSunsphere(登録商標)H31及びSunsphere(登録商標)H51(吸油量は150ml/100gに等しい)、Kobo社によりMSS-500-3Hの名称で販売されているもの;非晶質中空シリカ粒子、特にKobo社によりSilica Shellsの名称で販売されているもの(吸油量は550ml/100gに等しい);富士シリシア化学株式会社によりSilysia 350の名称で販売されている多孔質シリカミクロスフェア(吸油量は310ml/100gに等しい);並びにOriental Silycas社によりFinesil X35の名称で販売されているシリカ粉末(吸油量は380ml/100gに等しい)が含まれる。
【0116】
特に挙げることができるシリケートは、協和化学工業株式会社によりKyowaad(登録商標)700PELの名称で販売されているケイ酸アルミニウム(吸油量は195ml/100gに等しい)である。
【0117】
特に挙げることができるパーライト粉末は、World Minerals社によりOptimat(登録商標)1430 OR及びOptimat(登録商標)2550 ORの名称で販売されている製品(吸油量は240ml/100gに等しい)である。
【0118】
特に挙げることができる炭酸マグネシウム粉末は、Buschle & Lepper社によりTipo Carbomagel(登録商標)の名称で販売されている製品(吸油量は214ml/100gに等しい)である。
【0119】
特に挙げることができる炭酸マグネシウム/水酸化マグネシウム粉末は、日鉄鉱業株式会社によりMg Tubeの名称で販売されているmMgCO3-Mg(OH)2-nH2Oの製品(吸油量は250~310ml/100gに等しい)である。
【0120】
親水性吸油粉末は、セルロース、シリカ、パーライト、及びそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つを含むことが好ましい。
【0121】
疎水性吸油粉末:
【0122】
本発明の目的のために、「親水性」吸油粉末という用語は、前記粉末(又は粒子)が、凝集体が形成されないように油中に個別に分散されうることを意味する。
【0123】
疎水性吸油粉末は、100ml/100g以上、好ましくは150ml/100g以上、より好ましくは200ml/100g以上の吸油能を有していてもよい。
【0124】
疎水性吸油粉末により吸収(及び/又は吸着)される油の量は、上に記載の方法によって決定することができる。
【0125】
疎水性吸油粉末は、有機性のものであっても無機性のものであってもよい。
【0126】
有機疎水性吸油粉末:
【0127】
有機疎水性吸油粉末は、ポリアミド(特にナイロン-6)粉末、アクリルポリマー、特にポリメチルメタクリレート、ポリメチルメタクリレート/エチレングリコールジメタクリレート、ポリアリルメタクリレート/エチレングリコールジメタクリレート、又はエチレングリコールジメタクリレート/ラウリルメタクリレートコポリマーの粉末、及びそれらの混合物からなる群から選択することができる。上記材料は、架橋されていてもよい。
【0128】
有機疎水性吸油粉末は、アクリルポリマー、特にエチレングリコールジメタクリレート/ラウリルメタクリレートコポリマーの粉末から選択されることが好ましい場合がある。
【0129】
有機疎水性吸油粉末の例には、下に記載のフィラーが含まれる。
【0130】
挙げることができるアクリルポリマー粉末には、多孔質ポリメチルメタクリレート(INCI名メチルメタクリレートクロスポリマー)、例えばSensient社によりCovabead LH85の名称で販売されているスフェア、Cardinal Health Technologies社によりMicrosponge 5640の名称で販売されている多孔質ポリメチルメタクリレート/エチレングリコールジメタクリレートスフェア(吸油量は155ml/100gに等しい)、エチレングリコールジメタクリレート/ラウリルメタクリレート架橋コポリマー粉末、特にAmcol Health & Beauty Solutions社からPolytrap(登録商標)6603の名称で販売されているもの(吸油量は656ml/100gに等しい)、Akzo Novel社によりExpancel 551DE40D42の名称で販売されているアクリロニトリル/メチルメタクリレート/塩化ビニリデンコポリマー(吸油量は1,040ml/100gに等しい)が含まれる。
【0131】
挙げることができるポリアミド粉末には、ナイロン-6粉末、特に宇部興産株式会社によりPomp610の名称で販売されている製品(吸油量は202ml/100gに等しい)が含まれる。
【0132】
無機疎水性吸油粉末:
【0133】
無機疎水性吸油粉末は、少なくとも1つの無機コア及び少なくとも1つの疎水性コーティングを有しうる。
【0134】
無機疎水性吸油粉末は、疎水性シリカ、好ましくは疎水性シリカエアロゲル、より好ましくはシリカシリレートの疎水性エアロゲルの粉末、及びこれらの混合物から選択されることが好ましい。
【0135】
用語「疎水性シリカ」は、表面が疎水性になるように処理された任意のシリカを意味すると理解される。
【0136】
疎水性シリカ、特にシリカシリレートは、シリカゲルの液体成分を空気と置き換えることによって(乾燥することによって)得られる多孔質材料であるシリカエアロゲルをベースとしたものでよい。
【0137】
それらは、一般に、液体媒体中でゾル-ゲル法によって合成され、次いで、通常は超臨界流体で抽出することによって乾燥され、最もよく使用される超臨界流体は、超臨界CO2である。このタイプの乾燥は、孔及び材料の収縮を回避することを可能にする。ゾル-ゲル法及び種々の乾燥操作は、Brinker C. J.及びScherer G. W.、Sol-Gel Science、New York、Academic Press、1990年に詳細に記載されている。
【0138】
エアロゲルは、多孔率が高い材料である。本明細書において、シリカエアロゲルは、一般的にシリカの固体網状構造を維持しながら湿潤シリカゲルを乾燥することによって該湿潤シリカゲルに含まれる媒体を空気と置き換えて得られる多孔質構造を有する固体シリカを指す。多孔率は、材料の見掛け体積に含まれる空気の量を体積百分率で表したものである。本発明の疎水性シリカエアロゲルは、60%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上の多孔率を有しうる。
【0139】
疎水性シリカエアロゲル粒子は、
500~1,500m2/g、好ましくは600~1,200m2/g、より好ましくは600~800m2/gの範囲の質量単位当たりの比表面積(SW)、及び/又は
1~1,500μm、好ましくは1~1,000μm、より好ましくは1~100μm、特に1~30μm、より好ましくは5~25μm、より好ましくは5~20μm、更により好ましくは5~15μmの範囲の、体積平均直径(D[0.5])で表されるサイズを示しうる。
【0140】
質量単位当たりの比表面積は、BET(Brunauer-Emmett-Teller)法として知られている窒素吸収法によって決定することができ、これは、The Journal of the American Chemical Society、第60巻、309頁、1938年2月に記載されており、国際規格ISO 5794/1(付属書D)に相当する。BET比表面積は、検討中の粒子の総比表面積に相当する。
【0141】
疎水性シリカエアロゲル粒子のサイズは、市販の粒径分析装置であるMalvern社製MasterSizer 2000型を使用して、静的光散乱によって測定することができる。データは、ミー散乱理論に基づいて処理される。等方性粒子に関して厳密であるこの理論では、非球状粒子の場合には、「有効な」粒径の決定が可能となる。この理論は、詳細には、Van de Hulst, H.C.、「Light Scattering by Small Particles」、第9章及び第10章、Wiley、ニューヨーク、1957年の刊行物に記載されている。
【0142】
疎水性シリカエアロゲル粒子は、有利なことには、0.04g/cm3~0.10g/cm3、好ましくは0.05g/cm3~0.08g/cm3の範囲の充填密度(r)を示すことができる。
【0143】
本発明の文脈では、充填密度として知られるこの密度は、次のプロトコルに従って評価することができる:
粉末40gをメスシリンダーに注ぎ入れ;
次いで、メスシリンダーをStampf Volumeter社製のStav 2003装置に乗せ;
後続して、メスシリンダーを、一連の2500回の充填動作に供し(この操作は、2回の連続した試験間での体積差が2%未満になるまで繰り返される);
次いで充填した粉末の最終体積Vfを、メスシリンダーにおいて直接測定する。充填密度は、この場合40/Vfであるw/Vf比(Vfはcm3で、wはgで表される)によって決定される。
【0144】
シリル化によって表面修飾された疎水性シリカエアロゲル粒子の調製に関しては、米国特許第7,470,725号を参照してもよい。
【0145】
特に、トリメチルシリル基で表面修飾された疎水性シリカエアロゲル粒子が使用される。
【0146】
挙げることができる無機疎水性吸油粉末には、ポリジメチルシロキサン被覆非晶質シリカミクロスフェア、特にSunsphere(登録商標)H33及びSunsphere(登録商標)H53の名称で販売されているもの(吸油量は400ml/100gに等しい)、無機ワックスで表面処理された沈降シリカ粉末、例えば、ポリエチレンワックスで処理された沈降シリカ、特にEvonik-Degussa社によりAcematt OR 412の名称で販売されているもの(吸油量は398ml/100gに等しい)、及びDow社によりVM-2270の名称で販売されているシリカシリレート(吸油量は1,040ml/100gに等しい)が含まれる。
【0147】
無機疎水性吸油粉末として、Dow社によりVM-2270の名称で販売されているシリカシリレートを使用することが好ましく、その粒子は、5~15μmの範囲の平均サイズ、及び600~800m2/gの範囲の質量単位当たりの比表面積を示す。
【0148】
疎水性シリカエアロゲル粒子は、各粒子の形状が球状であることを特徴としうる。この球状の形状により、疎水性シリカエアロゲル粒子は、良好な滑らかさを化粧用組成物に与えることができる。疎水性シリカエアロゲルの球面度は、平均真円度によって決定することができる。
【0149】
球状疎水性シリカエアロゲル粒子は、0.8以上、好ましくは0.82以上の平均真円度を有しうる。球状疎水性シリカエアロゲルは、1未満、好ましくは0.99以下、より好ましくは0.98以下、更により好ましくは0.97以下、なお更により好ましくは0.96以下、最も好ましくは0.95以下の平均真円度を有しうる。
【0150】
「平均真円度」は、画像解析法によって決定することができる。特に、「平均真円度」は、走査型電子顕微鏡(SEM)を使用した二次電子検出によって1,000倍率で観察された2,000以上のエアロゲル粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)画像の画像解析によって得られる真円度の算術平均でありうる。
【0151】
各エアロゲル粒子の「真円度」は、以下の式:
C=4πS/L2
(式中、Cは真円度を表し、Sは画像中のエアロゲル粒子の面積(投影面積)を表し、Lは画像中のエアロゲル粒子の周囲(外周)の長さを表す)によって決定される値である。平均真円度が1に近づくと、各粒子の形状はより球状になる。
【0152】
本発明に従って使用されうる疎水性シリカエアロゲル粒子は、好ましくは、シリル化されたシリカのタイプ(INCI名:シリカシリレート)である。好ましくは、疎水性シリカエアロゲル粒子は、JP-A-2014-088307、JP-A-2014-218433、又はJP-A-2018-177620に記載されているものであってもよい。
【0153】
無機疎水性吸油粉末としてシリカシリレートの疎水性エアロゲルを使用することが好ましい。
【0154】
シリカシリレートの疎水性エアロゲルの疎水性は、疎水化剤を、シリカの表面上に存在する以下の式:
≡Si-OH
(式中、記号「≡」は、Si原子の残りの3の原子価を表す)
で表されるシラノール基と反応させ、それによってシラノール基を以下の式:
(≡Si-O-)(4-n)SiRn
(式中、nは1~3の整数であり、各Rは独立してヒドロカルビル基であり、2つ以上のRは互いに同一でも異なっていてもよく、nは2以上である)
で表される基に変換することによって得ることができる。
【0155】
疎水化剤は、シリル化剤であってもよい。したがって、好ましい一実施形態によれば、シリカシリレートの疎水性エアロゲルにおいて、シリカ粒子は、シリル化によって表面修飾されうる。シリル化剤の例としては、以下の式(1)~(3)の1つを有する処理剤を挙げることができる。
【0156】
式(1):
RnSiX(4-n)
(式中、nは1~3の整数を表し、Rはヒドロカルビル基を表し、Xは、ヒドロキシル基を有する化合物との反応中にSi原子との結合を切断することによって分子から脱離することができる基(すなわち、脱離基)を表し、各Rは異なっていてもよく、nは2以上であり、各Xは異なっていてもよく、nは2以下である)。
【0157】
式(2):
【0158】
【化2】
【0159】
(式中、R1はアルキレン基を表し、R2及びR3は独立してヒドロカルビル基を表し、R4及びR5は独立して水素原子又はヒドロカルビル基を表す)。
【0160】
式(3):
【0161】
【化3】
【0162】
(式中、R6及びR7は独立してヒドロカルビル基を表し、mは3~6の整数を表し、R6が2つ以上存在する場合、各R6は異なっていてもよく、R7が2つ以上存在する場合、各R7は異なっていてもよい)。
【0163】
上式(1)中、Rは、ヒドロカルビル基、好ましくは1~10の炭素数を有するヒドロカルビル基、より好ましくは1~4の炭素数を有するヒドロカルビル基、特に好ましくはメチル基である。
【0164】
Xで表される脱離基の例としては、塩素及び臭素等のハロゲン原子、メトキシ基及びエトキシ基等のアルコキシ基、-NH-SiR3によって表される基(式中、Rの定義は、式(1)中のRの定義と同じである)を挙げることができる。
【0165】
上式(1)で表される疎水化剤の具体例としては、クロロトリメチルシラン、ジクロロジメチルシラン、トリクロロメチルシラン、モノメチルトリメトキシシラン、モノメチルトリエトキシシラン、及びヘキサメチルジシラザンが挙げられる。
【0166】
最も好ましくは、好都合な反応性の観点から、クロロトリメチルシラン、ジクロロジメチルシラン、トリクロロメチルシラン、及び/又はヘキサメチルジシラザンを使用してもよい。
【0167】
Si原子とシリカ骨格上のシラノール基との結合の数は、脱離基Xの数(4-n)に応じて変動する。例えば、nが2の場合、以下:
(≡Si-O-)2SiR2
の結合が生じる。
【0168】
nが3の場合、以下:
≡Si-O-SiR3
の結合が生じる。
【0169】
このようにして、シラノール基はシリル化されることができ、それによって疎水化が行われうる。
【0170】
上式(2)中、R1は、アルキレン基、好ましくは2~8の炭素数を有するアルキレン基、特に好ましくは2~3の炭素数を有するアルキレン基であってもよい。
【0171】
上式(2)中、R2及びR3は独立してヒドロカルビル基であり、式(1)中のRの基と同じ好ましい基を挙げることができる。R4は、水素原子又はヒドロカルビル基を表し、ヒドロカルビル基である場合、式(1)中のRと同じ好ましい基を挙げることができる。シリカゲルを式(2)で表される化合物(環状シラザン)で処理すると、シラノール基との反応によってSi-N結合の切断が生じ、したがってゲル中のシリカ骨格の表面上で以下:
(≡Si-O-)2SiR2R3
の結合が生じる。
【0172】
このようにして、上式(2)の環状シラザンによってシラノール基をシリル化することもでき、それによって疎水化が実行されうる。
【0173】
上式(3)によって表される環状シラザンの具体例としては、ヘキサメチルシクロトリシラザン及びオクタメチルシクロテトラシラザンが挙げられる。
【0174】
上式(3)中、R6及びR7は独立してヒドロカルビル基であり、式(2)中のRと同じ好ましい基を挙げることができる。mは、3~6の整数を表す。シリカゲルを式(3)で表される化合物(環状シロキサン)で処理すると、ゲル中のシリカ骨格の表面上で以下:
(≡Si-O-)2SiR6R7
の結合が生じる。
【0175】
このようにして、上式(3)の環状シロキサンによってシラノール基をシリル化することもでき、それによって疎水化が実行されうる。
【0176】
上式(3)によって表される環状シロキサンの具体例としては、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、及びデカメチルシクロペンタシロキサンが挙げられる。
【0177】
シリカシリレートの疎水性エアロゲルは、シリカゾルを生成し、ゾルをゲルに変え、ゲルをエージングし、エージングしたゲルを洗浄し、洗浄ゲル中の水を溶媒に置き換え、ゲルを疎水化剤で処理し、疎水化シリカを乾燥することによって調製することができる。
【0178】
シリカシリレートの疎水性エアロゲルの、BET法によって決定される比表面積は、200m2/g以上、好ましくは400m2/g以上、より好ましくは500m2/g以上であって、1200m2/g以下、好ましくは1000m2/g以下、より好ましくは800m2/g以下でありうる。
【0179】
シリカシリレートの疎水性エアロゲルの、BJH法によって決定される細孔容積は、1ml/g以上、好ましくは2ml/g以上、より好ましくは3ml/g以上であって、10ml/g以下、好ましくは8ml/g以下、より好ましくは7ml/g以下でありうる。シリカシリレートの疎水性シリカエアロゲルの、BJH法によって決定されるピーク細孔半径は、5nm以上、好ましくは10nm以上、より好ましくは12nm以上であって、50nm以下、好ましくは40nm以下、より好ましくは30nm以下でありうる。
【0180】
「BJH法によって決定される細孔容積」は、BJH法により、上記の「BET法によって決定される比表面積」で説明したやり方と同じやり方で得られる窒素吸着側の吸着等温線を分析することによって得られる1nm~100nmの細孔半径を有する細孔から誘導される細孔容積を指す(Barrett, E. P.、Joyner, L. G.、Halenda, P. P.、J. Am. Chem. Soc. 73、373 (1951年))。「BJH法によって決定されるピーク細孔半径」は、BJH法により、上記と同じやり方で得られる窒素吸着側の吸着等温線を分析することによって得られる細孔半径の対数による累積細孔容積の微分を縦軸とし、細孔半径を横軸としてプロットした細孔分布曲線(容積分布曲線)中のピークを生む細孔半径の値を指す。
【0181】
シリカシリレートの疎水性エアロゲルの平均粒径は、0.5μm以上、好ましくは1μm以上、より好ましくは2μm以上であり得、30μm以下、好ましくは20μm以下、より好ましくは15μm以下の画像解析法による平均粒径を有していてもよい。
【0182】
ここでの「平均粒径」は、画像解析法によって測定することができる。特に、「平均粒径」の値は、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)を使用した二次電子検出によって1,000倍率で観察された2,000個以上のエアロゲル粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)画像の画像解析によって得ることができる相当円径の算術平均である。各エアロゲル粒子の「相当円径」は、画像中のエアロゲル粒子の面積(投影面積)に等しい面積を有する円の直径である。
【0183】
好ましくは、シリカシリレートの疎水性エアロゲルの、上で説明したように、湿潤点で測定することができる吸油能は、2ml/g以上、好ましくは3ml/g以上、より好ましくは4ml/g以上、最も好ましくは5ml/g以上であって、12ml/g以下、好ましくは10ml/g以下、より好ましくは8ml/g以下、最も好ましくは7ml/g以下でありうる。
【0184】
(d)フィラーは、(d-1)少なくとも1種の疎水性無機フィラーを含む。用語「疎水性」は、無機フィラーが、凝集体が形成されないように油中に個別に分散されうることを意味する。
【0185】
(d-1)疎水性無機フィラーは、疎水的変性金属酸化物から選択されることが好ましい場合があり、より好ましくは疎水性シリカから選択される。「疎水変性」という用語は、少なくとも、金属酸化物の表面が疎水性になるように処理されたことを意味する。特に、シリカシリレートが最も好ましい。
【0186】
本発明による組成物中の(d-1)疎水性無機フィラーの量は、組成物の総質量に対して0.1質量%以上、好ましくは0.2質量%以上、より好ましくは0.3質量%以上であってもよい。
【0187】
本発明による組成物中の(d-1)疎水性無機フィラーの量は、組成物の総質量に対して2質量%未満であり、1.5質量%以下、好ましくは1質量%以下であってもよい。
【0188】
本発明による組成物中の(d-1)疎水性無機フィラーの量は、組成物の総質量に対して0.1質量%~2質量%、好ましくは0.2質量%~1.5質量%、より好ましくは0.3質量%~1質量%であってもよい。
【0189】
(d)フィラーは、(d-2)少なくとも1種の疎水性有機フィラーを含んでもよい。用語「疎水性」は、有機フィラーが、凝集体が形成されないように油中に個別に分散されうることを意味する。
【0190】
(d-2)疎水性有機フィラーは、疎水変性デンプン、より好ましくはエステル化デンプンから選択されることが好ましい場合がある。「疎水変性」という用語は、少なくとも、デンプンの表面が疎水性になるように処理されたことを意味する。
【0191】
本発明において使用するのに好ましいエステル化デンプンは、リン酸化デンプン、酢酸デンプン、酸化酢酸デンプン、ラウリン酸デンプン、デンプンリン酸ナトリウム、アルキル又はアルケニルコハク酸化デンプン、例えば、オクテニルコハク酸デンプンカルシウム、オクテニルコハク酸デンプンナトリウム、オクテニルコハク酸デンプンアルミニウムからなる群から選択することができ、それらは、例えばAKZO NOVEL社によって名称「Dry Flo Plus」で販売されている、オクテニルコハク酸無水物及びその塩でエステル化されたデンプン、Amylum社によって名称「Supramyl P 60」で販売されている、カルボキシメチル基でエステル化されたジャガイモデンプン、Amylum社によって名称「Merigel EF6」で販売されている、ヒドロキシプロピル基でエステル化されたコーンスターチ、ドデセニルコハク酸無水物でエステル化されたコーンスターチ(INCI名:加工コーンスターチ)、及びハロゲン化メチルアミノジプロピオン酸でエステル化されたジャガイモデンプン(INCI名:ジャガイモ加工デンプン)である。
【0192】
本発明による組成物中の(d-2)疎水性有機フィラーの量は、組成物の総質量に対して1質量%以上、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上であってもよい。
【0193】
本発明による組成物中の(d-2)疎水性有機フィラーの量は、組成物の総質量に対して20質量%以下、好ましくは19質量%以下、より好ましくは18質量%以下であってもよい。
【0194】
本発明による組成物中の(d-2)疎水性有機フィラーの量は、組成物の総質量に対して1質量%~20質量%、好ましくは5質量%~19質量%、より好ましくは10質量%~18質量%であってもよい。
【0195】
(d)フィラーは、(d-3)少なくとも1種の疎水性フィラー、好ましくは少なくとも1種の疎水性無機フィラーを含んでもよい。用語「親水性」は、フィラーが、凝集体が形成されないように水中に個別に分散されうることを意味する。
【0196】
(d-3)親水性フィラーは、金属酸化物から選択されることが好ましい場合があり、より好ましくはシリカ、酸化チタン、酸化亜鉛、及びこれらの混合物から選択されうる。特に、シリカが最も好ましい。
【0197】
本発明による組成物中の(d-3)親水性フィラーの量は、組成物の総質量に対して1質量%以上、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上であってもよい。
【0198】
本発明による組成物中の(d-3)親水性フィラーの量は、組成物の総質量に対して20質量%以下、好ましくは19質量%以下、より好ましくは18質量%以下であってもよい。
【0199】
本発明による組成物中の(d-3)親水性フィラーの量は、組成物の総質量に対して1質量%~20質量%、好ましくは5質量%~19質量%、より好ましくは10質量%~18質量%であってもよい。
【0200】
本発明による組成物中の(d)フィラーの量は、組成物の総質量に対して10質量%以上、好ましくは12質量%以上、より好ましくは14質量%以上であってもよい。
【0201】
本発明による組成物中の(d)フィラーの量は、組成物の総質量に対して21質量%未満であり、20質量%以下、好ましくは19質量%以下、より好ましくは18質量%以下であってもよい。
【0202】
本発明による組成物中の(d)フィラーの量は、組成物の総質量に対して10質量%~20質量%、好ましくは12質量%~19質量%、より好ましくは14質量%~18質量%であってもよい。
【0203】
(親油性ゲル化剤)
【0204】
本発明による組成物は、有機変性クレイから選択される(e)少なくとも1種の親油性ゲル化剤を含む。2種以上の(e)親油性ゲル化剤を使用する場合、それらは同じであっても異なっていてもよい。
【0205】
用語「親油性ゲル化剤」は、本発明による組成物中の油をゲル化できる、微粒子形態又は非微粒子形態の助剤を意味する。
【0206】
用語「微粒子」の親油性ゲル化剤は、粒子の形態又は結晶の形態にある(微粒子又は結晶体)、親油性ゲル化剤を意味する。
【0207】
本発明による組成物は、好ましくは微粒子である少なくとも1種の親油性ゲル化剤を含む。
【0208】
本発明によれば、(e)親油性ゲル化剤は有機変性クレイから選択される。
【0209】
クレイは、ラメラ構造の水和シリケート及び/又はアルミノシリケートをベースとした材料を指す。
【0210】
クレイは、天然であっても合成であってもよく、C10~C22塩化アンモニウム、特に塩化ステアラルコニウム又は塩化ジステアリルジメチルアンモニウム等のアルキルアンモニウム塩を用いた処理によって親油性にされている。
【0211】
これらのクレイは、ベントナイト、具体的にはベントナイト、ヘクトライト及びモンモリロナイト、バイデライト、サポナイト、ノントロナイト、セピオライト、黒雲母、アタパルジャイト、バーミキュライト、並びにゼオライトから選択することができる。
【0212】
有機変性クレイは、特に第四級アミン及び第三級アミンから選択される化合物で処理されたクレイであってもよい。挙げることができる有機変性クレイには、有機変性ベントナイト、例えばRheox社により名称Bentone 34で販売されている製品、及び有機変性ヘクトライト、例えばRheox社により名称Bentone 27及びBentone 38で販売されている製品が含まれる。特に、例えば変性シリル化マグネシウム等の変性クレイ(Rheox社からのBentone gel VS38)、C10~C22脂肪酸アンモニウムクロリドで変性されたヘクトライト、例としてはジステアリルジメチルアンモニウムクロリドで変性されたヘクトライト等の変性ヘクトライト、例としてはElementis社により名称Bentone 38VCGで販売されている製品、又はRheox社により名称Bentone 38 CEで販売されている製品、又はElementis社により名称Bentone Gel V5 5Vで販売されている製品を挙げることができる。
【0213】
(e)親油性ゲル化剤は、有機変性ベントナイト、有機変性ヘクトライト、及びこれらの混合物から選択されることが好ましいことがある。
【0214】
(e)親油性ゲル化剤は、ジステアルジモニウムヘクトライトであることがより好ましいことがある。
【0215】
本発明による組成物中の(e)親油性ゲル化剤の量は、組成物の総質量に対して2.5質量%超であり、3質量%以上、好ましくは4質量%以上、より好ましくは5質量%以上であってもよい。
【0216】
本発明による組成物中の(e)親油性ゲル化剤の量は、組成物の総質量に対して10質量%未満であり、9.5質量%以下、好ましくは9質量%以下、より好ましくは8.5質量%以下であってもよい。
【0217】
本発明による組成物中の(e)親油性ゲル化剤の量は、組成物の総質量に対して2.5質量%超且つ10質量%未満であり、3質量%~9.5質量%、好ましくは4質量%~9質量%、より好ましくは5質量%~8.5質量%であってもよい。
【0218】
(総量の必要条件)
【0219】
本発明による組成物中の(d)フィラー及び(e)親油性ゲル化剤の総量は、組成物の総質量に対して18.5質量%超であり、19質量%以上、好ましくは20質量%以上、より好ましくは21質量%以上であってもよい。
【0220】
本発明による組成物中の(d)フィラー及び(e)親油性ゲル化剤の総量は、組成物の総質量に対して35質量%以下、好ましくは30質量%以下、より好ましくは25質量%以下であってもよい。
【0221】
本発明による組成物中の(d)フィラー及び(e)親油性ゲル化剤の総量は、組成物の総質量に対して19質量%~35質量%、好ましくは20質量%~30質量%、より好ましくは21質量%~25質量%であってもよい。
【0222】
(任意選択の成分)
【0223】
本発明による組成物は、化粧品の分野で通常使用される、例えば、成膜ポリマー、溶媒、染料、顔料、UV遮蔽剤、抗酸化剤、防腐剤、pH調整剤、化粧品活性剤、例えばビタミン、保湿剤、エモリエント剤又はコラーゲン保護剤、及びこれらの混合物から選択される少なくとも1種の任意選択の成分を更に含みうる。
【0224】
本発明による組成物は、アルコール、特に一価アルコール、例えばエチルアルコール、イソプロピルアルコール、ベンジルアルコール及びフェニルエチルアルコール;ジオール、例えばエチレングリコール、カプリリルグリコール、プロピレングリコール、及びブチレングリコール;他のポリオール、例えばグリセロール、糖及び糖アルコール;並びにエーテル、例えばエチレングリコールモノメチル、モノエチル及びモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチル、モノエチル及びモノブチルエーテル、並びにブチレングリコールモノメチル、モノエチル及びモノブチルエーテルであってもよい、1種以上の美容的に許容される有機溶媒を含んでよい。
【0225】
このとき、有機溶媒は、組成物の総質量に対して0.01質量%~30質量%、好ましくは0.1質量%~20質量%、より好ましくは1質量%~15質量%の濃度で存在してもよい。
【0226】
本発明による組成物中に存在しうる上記の任意選択の添加剤の性質及び量を、所望の美容特性が該添加剤により影響を受けないよう調節することは、当業者にとって常法である。
【0227】
(化粧料)
【0228】
本発明による組成物は、化粧用組成物、好ましくはケラチン物質用の化粧用組成物、より好ましくはケラチン繊維用の化粧用組成物、更により好ましくは眉毛用の化粧用組成物であってもよい。
【0229】
本発明による組成物は、メイクアップ化粧用組成物(特に、アイメイクアップ化粧用組成物)、より好ましくは眉毛メイクアップ組成物であってもよい。
【0230】
本発明による組成物は、ケラチン物質、好ましくはケラチン繊維、より好ましくは眉毛を美容処置、好ましくはメイクアップするために使用することができる。
【0231】
本発明による組成物は、無水液体の形態にある。
【0232】
用語「無水」は、本明細書では、本発明による組成物がごく少量の水を含有してもよく、好ましくは水を含有しないことを意味する。そのため、本発明による組成物中の水の量は、組成物の総質量に対して3質量%以下、好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.1質量%以下でよい。本発明による組成物が、意図的に添加される個別の成分としての水を含有しないことが特に好ましい。一方で、本発明による組成物に含まれることになる成分自体中に、少量又は微量の水が存在しうる。
【0233】
用語「液体」は、本明細書では、大気圧(760mmHg)下、室温(25℃)で、組成物が流動性であり、測定可能な粘度を有することを意味する。そのため、粉末の形態の組成物は、本発明による組成物に相当しない。
【0234】
[調製]
【0235】
本発明による組成物は、上記の必須成分と任意選択の成分とを混合して調製することができる。
【0236】
例えば、本発明による組成物は、
成分(a)~(e)及び任意選択の他成分を、加熱して又は加熱せずに、好ましくは70℃以上の温度で混合する工程を含む方法によって調製することができる。上記の任意選択の成分のいずれかと更に混合することが好ましい。
【0237】
[方法及び使用]
【0238】
本発明による組成物は、ケラチン物質、好ましくはケラチン繊維、より好ましくは眉毛を被覆するために使用することができる。
【0239】
例えば、本発明による組成物は、ケラチン繊維を被覆するための方法であって、
本発明による組成物をケラチン繊維上に適用して、ケラチン繊維上に少なくとも1つのコーティングを形成する工程と、
コーティングを乾燥する工程とを含む方法によって使用することができる。
【0240】
そのため、本発明はまた、ケラチン物質、好ましくはケラチン繊維、より好ましくは眉毛のための美容方法であって、
本発明による組成物をケラチン物質上に適用する工程を含む、方法にも関する。
【0241】
本発明による美容方法は、例えば、ケラチン物質、好ましくはケラチン繊維、より好ましくは眉毛をメイクアップするために用いることができる。
【0242】
本発明はまた、
(d)(d-1)少なくとも1種の疎水性無機フィラーを含む少なくとも1種のフィラー、及び
(e)有機変性クレイから選択される少なくとも1種の親油性ゲル化剤
の、ケラチン物質、好ましくはケラチン繊維、より好ましくは眉毛用の無水液体組成物中での使用であって、該組成物が、
(a)少なくとも1種のシリコーン樹脂、
(b)少なくとも1種のシリコーンガム、及び
(c)少なくとも1種の揮発性炭化水素油
を含み、
組成物中の(d)フィラー及び(e)親油性ゲル化剤の量が、組成物の総質量に対して18.5質量%超であり、
組成物中の(e)親油性ゲル化剤の量が、組成物の総質量に対して2.5質量%超且つ10質量%未満であり、
組成物中の(d)フィラーの量が、組成物の総質量に対して21質量%未満であり、
組成物中の(d-1)疎水性無機フィラーの量が、組成物の総質量に対して2質量%未満であり、
安定性であり、マット仕上げ等の優れた美容効果、良好な摩耗抵抗、並びに適用中のメイクアップのベタつきの低減及び滑らかな拡がり等の快適な質感をもたらす組成物を生成するための使用にも関しうる。
【実施例0243】
本発明は、実施例によって、より詳細に記載される。しかしながら、これらの実施例が本発明の範囲を限定するものとは解釈すべきでない。以下の実施例は、本発明の分野における非限定的な例示として提示する。
【0244】
(実施例1及び比較例1~19)
表1及び表2に示す実施例1及び比較例1~19の眉毛をメイクアップするための化粧用組成物を、表1及び表2に示す成分を混合することによって調製した。表1及び表2に示す成分の量についての数値はすべて、原料の「質量%」に基づく。
【0245】
表1及び表2中の記号「a」、「b」、「c」、「d」、「d-1」及び「e」は、特許請求の範囲に記載の記号に相当する。
【0246】
【表1A】
【0247】
【表1B】
【0248】
【表2A】
【0249】
【表2B】
【0250】
[評価]
【0251】
(滑らかさ)
【0252】
実施例1及び比較例1~19のそれぞれの化粧用組成物をディップインアプリケーターパッケージに充填し、以下の基準に従って、腕に適用する間の滑らかさの観点で評価した。
【0253】
良好:軽度~中程度の滑らかな滑りを感じた
普通:滑らかな滑りに若干の劣化を感じたが許容範囲である
不良:許容できない抵抗感のある質感を感じた
【0254】
結果を表1及び表2に示す。
【0255】
(乾燥後のマット効果)
【0256】
実施例1及び比較例1~19のそれぞれの化粧用組成物を適用することによって厚さ100μmの膜を対比カード(白及び黒)上に調製した。室温で30分間、膜を乾燥した。次いで、以下の基準に従って、パネリストによる膜へのマット効果の評価が行われた。
【0257】
非常に良好:光沢がなく、全体的にマットである
良好:非常に若干の光沢が認められる
不良:光沢がある
【0258】
結果を表1及び表2に示す。
【0259】
(乾燥後の光沢)
【0260】
実施例1及び比較例1~19のそれぞれの化粧用組成物を適用することによって厚さ100μmの膜を対比カード(白及び黒)上に調製した。室温で30分間、膜を乾燥した。次いで、膜の光沢(カード上の反射光)を偏光カメラによって測定した。黒白の背景上の光沢の平均値を光沢度として使用した。
【0261】
結果を表1及び表2に示す。
【0262】
小さい光沢度は、良好なマット効果を意味する。光沢度は、6.0未満であることが好ましく、より好ましくは1.0未満である。
【0263】
(乾燥後のベタつき)
【0264】
実施例1及び比較例1~19のそれぞれの化粧用組成物を適用することによって厚さ100μmの膜を対比カード(白及び黒)上に調製した。室温で30分間、膜を乾燥した。
【0265】
乾燥した膜のベタつきを、以下の基準に従って、パネリストによって評価した。
【0266】
ベタつきがない:指で膜の表面に触れたときに粘着性の感触を感じない
極めて少ないベタつき(許容範囲):指で膜に触れたときに非常に少ないベタつきだが非有意な感触が感じられる
若干ベタつく:指で膜の表面に触れたときに明らかな粘着性の感触を感じる
【0267】
結果を表1及び表2に示す。
【0268】
(25℃又は45℃での安定性)
【0269】
実施例1及び比較例1~19のそれぞれの化粧用組成物を50mLガラス瓶に充填し、25℃又は45℃で8週間維持した。
【0270】
次いで、各組成物の上面に分離した油の存在の有無を確認した。分離した油が存在する場合、以下の式によって相分離率を算出した:
【0271】
分離率(%)=A/B×100
【0272】
A:上面の分離された油の高さ(mm)
B:分離された油を含む全バルク組成物の高さ(mm)
【0273】
各化粧用組成物の安定性を、以下の基準に従って評価した:
【0274】
非常に良好:分離された油がない、又は分離された油が非常に少ない(測定不可)
良好:分離率が5%未満の若干の油分離
普通:分離率が5%以上且つ6%未満の油分離
不良:分離率が6%以上の大量の油分離
非常に不良:完全な分離
【0275】
結果を表1及び表2に示す。
【0276】
(耐皮脂性)
【0277】
実施例1及び比較例1~19のそれぞれの化粧用組成物を、植毛アプリケーターを有するディップインアプリケーターに充填し、Beaulax社製の白色のBio Skinシート上に適用し、室温で30分間乾燥して乾燥膜を形成した。次いで、人工皮脂*を膜上に落とし、室温下、指で30ストークス(1ストーク/秒)擦った。汚れのレベルを以下の基準に従って評価した。
【0278】
非常に良好:ほぼ汚れがない
良好:極めて少ない汚れ
普通:若干の汚れがある(許容範囲)
不良:汚れがひどく、部分的に又は完全に色あせている
【0279】
*人工皮脂の組成:
【0280】
28.7wt%のトリイソステアリン、28wt%のオレイン酸、22.9wt%のエルカ酸オレイル、13.7wt%の水素化ポリイソブテン、及び6.7wt%のオクチルドデカノール
【0281】
結果を表1及び表2に示す。
【0282】
(耐水性)
【0283】
実施例1及び比較例1~19のそれぞれの化粧用組成物を、植毛アプリケーターを有するディップインアプリケーターに充填し、Beaulax社製の白色のBio Skinシート上に適用し、室温で30分間乾燥して乾燥膜を形成した。次いで、水を膜上に落とし、室温下、指で30ストークス(1ストーク/秒)擦った。汚れのレベルを以下の基準に従って評価した。
【0284】
非常に良好:ほぼ汚れがない
良好:極めて少ない汚れ
不良:しわがある又は色あせている
【0285】
結果を表1及び表2に示す。
【0286】
(概略)
【0287】
表1及び表2に示すように、本発明に相当する実施例1による化粧用組成物は、安定性であり、マット効果及び耐皮脂性/耐水性の美容効果並びに適用時の滑らかさ及び乾燥後に非粘着性等の快適な質感をもたらすことができた。
【0288】
一方、以下の量の必要条件:
(d)フィラー及び(e)親油性ゲル化剤の量が、18.5質量%超である、
(e)親油性ゲル化剤の量が、2.5質量%超且つ10質量%未満である、
(d)フィラーの量が21質量%未満である、及び
( d-1)疎水性無機フィラーの量が2質量%未満である
のいずれかを満たさない比較例1~19による化粧用組成物は、安定性でなかった、又はマット効果若しくは耐皮脂性/耐水性の美容効果若しくは適用時の滑らかさ及び乾燥後の非粘着性等の優れた使用感をもたらすことができなかった。
【0289】
(実施例2及び3並びに比較例20)
表3に示す実施例2及び3並びに比較例20の眉毛をメイクアップするための化粧用組成物を、表3に示す成分を混合することにより調製した。表3に示す成分の量についての数値はすべて、原料の「質量%」に基づく。
【0290】
表3中の記号「a」、「b」、「c」、「d」、「d-1」及び「e」は、特許請求の範囲に記載の記号に相当する。
【0291】
【表3】
【0292】
[評価]
【0293】
「滑らかさ」、「乾燥後の光沢」、「乾燥後のベタつき」、「25℃での安定性」、「45℃での安定性」、「耐皮脂性」、及び「耐水性」を、実施例1及び比較例1~19の評価で用いたプロトコルに従って評価した。
【0294】
結果を表3に示す。
【0295】
表3に示すように、本発明に相当する実施例2及び3による化粧用組成物は、安定性であり、マット効果及び耐皮脂性/耐水性の美容効果並びに適用時の滑らかさ及び乾燥後に非粘着性等の快適な質感をもたらすことができた。
【0296】
実施例2の組成物と実施例3の組成物は類似している。しかしながら、これらは、実施例3では、動粘度が1,000,000cStのジメチコンがイソドデカンで希釈される一方で、実施例2では、動粘度が1,000,000cStのジメチコンが希釈されない点で異なっている。実施例3による組成物の製造は、実施例2による組成物の製造より容易だったが、それは、ジメチコンの取り扱いが実施例3で改善されたからである。
【0297】
一方、シリコーンガムを一切含まない比較例20による化粧用組成物は、耐皮脂性/耐水性の美容効果又は乾燥後の非粘着性等の快適な質感をもたらすことができなかった。
【外国語明細書】