(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023146288
(43)【公開日】2023-10-12
(54)【発明の名称】車両用電気音響変換器及び車両用電気音響変換器の製造方法
(51)【国際特許分類】
H04R 9/02 20060101AFI20231004BHJP
【FI】
H04R9/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022053399
(22)【出願日】2022-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000112565
【氏名又は名称】フォスター電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】窪田 岳
(72)【発明者】
【氏名】古賀 敦
【テーマコード(参考)】
5D012
【Fターム(参考)】
5D012BC04
(57)【要約】
【課題】はんだ付け部の剥がれ等の不具合の発生を抑制する。
【解決手段】車両用電気音響変換器は、振動することで音を発生させる振動板と、コイルに通電がなされることで振動板を振動させるコイル体と、第2ターミナル50と、配線部材48と、を備えている。第2ターミナル50は、コイル体との間の電流経路の一部を構成し、一方側が開放された係止凹部を有する。配線部材48は、コイル体との間の電流経路の他の一部を構成し、係止凹部に係止される被係止部52と、被係止部52に対して折り曲げられた折曲部54と、を有する。被係止部52と係止凹部の内周面とは、はんだ付け部58の主接合部を介して接合されている。折曲部54の少なくとも一部と第2ターミナル50とは、はんだ付け部58の副接合部58Bを介して接合されている。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動することで音を発生させる振動板と、
前記振動板が固定されたボビンと、前記ボビンに沿って形成されたコイルと、を有し、前記コイルに通電がなされることで前記振動板を振動させるコイル体と、
前記コイル体との間の電流経路の一部を構成し、一方側が開放された係止凹部を有するターミナルと、
前記コイル体との間の電流経路の他の一部を構成し、前記係止凹部に係止される被係止部と、前記被係止部に対して折り曲げられた折曲部と、を有する配線部材と、
前記被係止部と前記係止凹部の内周面とを接合する主接合部と、前記折曲部の少なくとも一部と前記ターミナルとを接合する副接合部と、を有するはんだ付け部と、
を備え、車室外に設けられる車両用電気音響変換器。
【請求項2】
前記副接合部は、前記配線部材の先端へ向かうにつれて広がる形状に形成されている請求項1に記載の車両用電気音響変換器。
【請求項3】
前記折曲部は、前記係止凹部の開放方向とは反対側へ向けて折り曲げられている請求項1又は請求項2に記載の車両用電気音響変換器。
【請求項4】
請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の車両用電気音響変換器の製造方法に適用され、
前記被係止部を前記係止凹部に係止する配線部材係止工程と、
前記係止凹部を支点として前記配線部材の一部を折り曲げることで前記折曲部を形成する配線部材折り曲げ工程と、
溶融させたはんだを前記ターミナルにおける前記係止凹部内及びその周辺に付着させることで、前記主接合部及び前記副接合部を形成するはんだ付け工程と、
を有する車両用電気音響変換器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用電気音響変換器及び車両用電気音響変換器の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、車両に搭載される音響装置が開示されている。この文献に記載された音響装置は、コイルが巻かれたボビンと、ボビンに固定された振動体と、を備えている。そして、コイルに通電がなされることで、振動体が振動するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記特許文献1に記載された音響装置のように車両に搭載される車両用電気音響変換器には、車両の走行に伴う振動が入力される。この振動は、車両用電気音響変換器を構成する部品同士を電気的に接合するはんだ付け部にも入力される。そのため、車両用電気音響変換器の電気的な信頼性を確保するという観点では、はんだ付け部の剥がれ等の不具合の発生を抑制することが重要である。また、車室外に設けられる車両用電気音響変換器においては、車室内に設けられる装置と比較して、耐久性が求められるため、はんだ付け部の剥がれ等の不具合の発生をより抑制することが求められる。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、はんだ付け部の剥がれ等の不具合の発生を抑制することができる車両用電気音響変換器及び車両用電気音響変換器の製造方法を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様の車両用電気音響変換器は、振動することで音を発生させる振動板と、前記振動板が固定されたボビンと、前記ボビンに沿って形成されたコイルと、を有し、前記コイルに通電がなされることで前記振動板を振動させるコイル体と、前記コイル体との間の電流経路の一部を構成し、一方側が開放された係止凹部を有するターミナルと、前記コイル体との間の電流経路の他の一部を構成し、前記係止凹部に係止される被係止部と、前記被係止部に対して折り曲げられた折曲部と、を有する配線部材と、前記被係止部と前記係止凹部の内周面とを接合する主接合部と、前記折曲部の少なくとも一部と前記ターミナルとを接合する副接合部と、を有するはんだ付け部と、を備え、車室外に設けられる。
【0007】
第1の態様の車両用電気音響変換器によれば、コイルへの通電が配線経路であるターミナル及び配線部材を介してなされる。これにより、振動板が振動して音を発生させる。ここで、ターミナルと配線部材とを接続するはんだ付け部は、配線部材の被係止部とターミナルの係止凹部の内周面とを接合する主接合部を備えている。これに加えて、はんだ付け部は、配線部材の折曲部の少なくとも一部とターミナルとを接合する副接合部を備えている。このように、はんだ付け部が主接合部に加えて副接合部を有する構成とすることにより、はんだ付け部の剥がれ等の不具合の発生を抑制することができる。
【0008】
第2の態様の車両用電気音響変換器は、第1の態様の車両用電気音響変換器において、前記副接合部は、前記配線部材の先端へ向かうにつれて広がる形状に形成されている。
【0009】
第2の態様の車両用電気音響変換器によれば、はんだ付け部の副接合部が、配線部材の先端へ向かうにつれて広がる形状に形成されている。このように構成することで、副接合部の体積を確保することができる。
【0010】
第3の態様の車両用電気音響変換器は、第2の態様の車両用電気音響変換器において、前記折曲部は、前記係止凹部の開放方向とは反対側へ向けて折り曲げられている。これにより、折曲部をターミナルにおいて係止凹部の開放方向とは反対側の部位に副接合部を介して接合することができる。
【0011】
第4の態様の車両用電気音響変換器の製造方法は、第1の態様~第3の態様のいずれか1つの態様の車両用電気音響変換器の製造方法に適用され、前記被係止部を前記係止凹部に係止する配線部材係止工程と、前記係止凹部を支点として前記配線部材の一部を折り曲げることで前記折曲部を形成する配線部材折り曲げ工程と、溶融させたはんだを前記ターミナルにおける前記係止凹部内及びその周辺に付着させることで、前記主接合部及び前記副接合部を形成するはんだ付け工程と、を有する。
【0012】
第4の態様の車両用電気音響変換器の製造方法によれば、上記の配線部材係止工程、配線部材折り曲げ工程及びはんだ付け工程を経ることにより、主接合部に加えて副接合部を有するはんだ付け部を形成することができる。これにより、はんだ付け部の剥がれ等の不具合の発生を抑制することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る車両用電気音響変換器は、はんだ付け部の剥がれ等の不具合の発生を抑制することができる、という優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本実施形態の車両用電気音響変換器を分解して示す分解斜視図である。
【
図2】リヤカバー側を前後方向と直交する方向に沿って切断した状態の車両用電気音響変換器の内部を示す斜視図である。
【
図3】第2ターミナルの係止片部付近を拡大して示す拡大斜視図である。
【
図4】
図3に示された4-4線に沿って切断した配線部材の断面及び第2ターミナルの係止片部等を示す図である。
【
図5】配線部材及び第2ターミナルの係止片部等を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1~
図6を用いて、本発明の実施形態に係る車両用電気音響変換器10について説明する。本実施形態の車両用電気音響変換器10は、車室外としてのパワーユニット室に搭載され、低速走行時に音を発生させることで、歩行者に車両の接近を知らせる車両接近通報装置(AVAS:Acoustic Vehicle Alerting System)とする例を説明する。なお、車両用電気音響変換器10の前方側及び後方側をそれぞれ矢印FR及び矢印RRで示す。また、以下、単に前後の方向を示す場合は、特に断りのない限り、車両用電気音響変換器10の前後の方向を示すものとする。車両用電気音響変換器10の前後の方向は、当該車両用電気音響変換器10が車両に搭載された状態における車両の前後の方向と一致している。
【0016】
図1に示されるように、車両用電気音響変換器10は、箱状に形成されたメインバッフル12と、メインバッフル12の前部及び後部にそれぞれ取付けられるフロントカバー14及びリヤカバー16と、を備えている。また、車両用電気音響変換器10は、メインバッフル12内に配置された状態で当該メインバッフル12に支持された発音器本体18を備えている。
【0017】
メインバッフル12は、略四角筒状に形成されたベース筒部12Aと、ベース筒部12A内の空間を前後方向に隔てる隔壁12Bと、を備えている。隔壁12Bの中心部には、円形の第1貫通孔12Cが形成されている。この第1貫通孔12Cは、後述する振動板32によって塞がれるようになっている。また、隔壁12Bには、第1貫通孔12Cよりも小さな内径に設定された第2貫通孔12Dが形成されている。この第2貫通孔12Dは、プラグ20によって塞がれるようになっている。また、メインバッフル12は、ベース筒部12Aの外周部から当該ベース筒部12Aの外側に向けて突出するコネクタ接続部12Eを備えている。このコネクタ接続部12Eには、図示しない外部コネクタが接続されるようになっている。
【0018】
フロントカバー14は、前後方向から見て矩形状に形成されたフロントカバー本体14Aと、フロントカバー本体14Aからメインバッフル12側へ向けて突出する複数の係止爪部14Bと、を備えている。フロントカバー本体14Aには、後述する振動板32が発生した音をフロントカバー本体14Aの前方側へ伝えるための複数のスリット14Cが形成されている。また、複数の係止爪部14Bは、メインバッフル12に係止されるようになっている。そして、複数の係止爪部14Bがメインバッフル12に係止されることで、フロントカバー14がメインバッフル12に取付けられるようになっている。
【0019】
リヤカバー16は、前後方向から見て矩形状に形成されたリヤカバー本体16Aと、リヤカバー本体16Aからメインバッフル12側へ向けて突出する複数の係止爪部16Bと、を備えている。リヤカバー本体16Aには、T型ナット22が固定されている。そして、図示しないボルトがT型ナット22に螺合されることで、車両用電気音響変換器10が車両に固定されるようになっている。また、複数の係止爪部16Bは、メインバッフル12に係止されるようになっている。そして、複数の係止爪部16Bがメインバッフル12に係止されることで、リヤカバー16がメインバッフル12に取付けられるようになっている。
【0020】
発音器本体18は、フレーム24と、フレーム24に支持された磁気回路部26と、フレーム24内に配置されたコイル体28と、コイル体28とフレーム24との間に設けられたダンパ30と、コイル体28に固定された振動板32と、を備えている。
【0021】
フレーム24は、略段付円筒状に形成されており、前側が後側よりも大きく開口した形状になっている。このフレーム24の前側の開口部は、後述する振動板32によって塞がれるようになっている。
【0022】
磁気回路部26は、後述するコイル体28に磁界を印加するものである。磁気回路部26は、有底筒状に形成されたヨーク34と、ヨーク34の底面に固定された円板状の磁石36と、磁石に積層された円板状のトッププレート38と、を備えている。ヨーク34及びトッププレート38は、軟磁性材料を用いて形成されている。ヨーク34は、前側に向かって開口し、フレーム24の後側の開口部を塞ぐように設けられている。磁石36及びトッププレート38とヨーク34との間には隙間が形成されており、この隙間に後述するコイル体28の一部が配置されるようになっている。
【0023】
コイル体28は、円筒状に形成されたボビン40と、ボビン40に沿って形成されたコイル42と、を含んで構成されている。ボビン40の前方側の端部には、後述する振動板32が固定されている。コイル42は、導電性の材料を用いて線状に形成された導線44がボビン40に沿って巻回されることによって形成されている。コイル42を形成する導線44の一対の端末部44Aは、後述する一対の第1ターミナル46(
図2参照)にそれぞれ接続されている。
【0024】
ダンパ30は、径方向の中央部に開口が形成された円板状に形成されていると共に径方向に沿って前後方向に繰り返し湾曲している波型形状に形成されている。このダンパ30の中央部に形成された開口には、コイル体28が挿通される。そして、ダンパ30の内周部は、コイル体28のボビン40に係止されており、ダンパ30の外周部は、フレーム24に係止されている。
【0025】
振動板32は、前後方向から見て円形状に形成されていると共に前側が凹状に湾曲された形状に形成されている。振動板32の外周部には、ゴム等の弾性材料で形成されたエッジ部32Aが全周に亘って設けられている。エッジ部32Aの外周部は、その全周に亘ってフレーム24に接合されている。
【0026】
次に、本実施形態の要部であるコイル42と図示しない外部コネクタとの間の配線経路の構成について説明する。
【0027】
図2に示されるように、コイル42と図示しない外部コネクタとの間の配線経路は、一対の第1ターミナル46、一対の配線部材48及び一対の第2ターミナル50を含んで構成されている。
【0028】
第1ターミナル46は、導電性の金属板にプレス加工等が施されることにより形成されている。この第1ターミナル46は、その一部がフレーム24に埋設されることにより当該フレーム24に支持されている。第1ターミナル46の一方側の端部は、フレーム24から後方側へ向けて突出する第1係止片部46Aとなっている。この第1係止片部46Aには、後方側が開放された係止凹部46Bが形成されている。そして、コイル42を形成する導線44の一対の端末部44Aは、一対の第1ターミナル46のそれぞれの係止凹部46B内に配置された状態で当該係止凹部46Bに係止されている。そしてさらに、コイル42を形成する導線44の一対の端末部44Aと一対の第1ターミナル46の第1係止片部46Aとは、図示しないはんだ付け部を介して接合されている。また、第1ターミナル46の他方側の端部は、フレーム24から露出している第2係止片部46Cとなっている。この第2係止片部46Cには、円形状の係止孔46Dが形成されている。
【0029】
配線部材48は、コイル42を形成する導線44よりも硬質な硬銅線を用いて形成されている。ここで、配線部材48としては、折り曲げたときに折り曲げた形状を維持できるものであればよく、例えば、硬銅線、リン青銅線、軟銅線等とすることができる。一対の配線部材48の一方側の端部48Aは、一対の第1ターミナル46の第2係止片部46Cに形成された係止孔46Dに挿通されている。また、一対の配線部材48の一方側の端部48Aと一対の第1ターミナル46の第2係止片部46Cとは、図示しないはんだ付け部を介して接合されている。また、一対の配線部材48の他方側の端部48Bは、後述する一対の第2ターミナル50にそれぞれ接続されている。
【0030】
ターミナルとしての第2ターミナル50は、第1ターミナル46と同様に導電性の金属板にプレス加工等が施されることにより形成されている。この第2ターミナル50は、その一部がメインバッフル12に埋設されることにより当該メインバッフル12に支持されている。
図3に示されるように、第2ターミナル50の一方側の端部は、メインバッフル12から後方側へ向けて突出する係止片部50Aとなっている。ここで、係止片部50Aの厚み方向一方側及び幅方向一方側を矢印T及び矢印Wで示すことにする。なお、係止片部50Aの厚み方向Tと幅方向Wとは直交しており、係止片部50Aの厚み方向T及び幅方向Wは前後方向と直交している。係止片部50Aの幅方向Wの中央部には、後方側が開放された係止凹部50Bが形成されている。この係止凹部50Bの内周面における後端側は、後方側へ向かうにつれて幅方向Wへの寸法が次第に大きくなるように設定された拡幅面S1となっている。また、係止凹部50Bの内周面において拡幅面S1よりも前方側かつ幅方向Wへの寸法が上下方向の各位置で一定の寸法に設定された部分は、定常面S2となっている。この定常面S2の間の幅方向Wへの寸法は、配線部材48の線径と同じか若干大きな寸法に設定されている。係止凹部50Bの内周面かつ当該係止凹部50Bの底面は、係止面S3となっている。係止面S3は、係止片部50Aの厚み方向Tから見て後方側が開放されたU字状に湾曲している。すなわち、拡幅面S1と定常面S2と係止面S3とは、係止凹部50Bの内周面を構成する。なお、係止凹部50Bは、U字状に限定されず、例えば、V字状に形成されていてもよい。
【0031】
なお、図示は省略するが、第2ターミナル50の他方側の端部は、メインバッフル12のコネクタ接続部12E(
図1参照)内に配置される接続片部となっている。そして、図示しない外部コネクタがコネクタ接続部12Eに接続されることで、図示しない外部コネクタ内の外部コネクタターミナルと一対の第2ターミナル50の接続片部とが接続されるようになっている。
【0032】
ここで、
図3に示されるように、配線部材48の他方側の端部48Bにおいて、係止凹部50Bに係止される部分を被係止部52と呼ぶことにする。また、配線部材48の他方側の端部48Bにおいて、被係止部52から第2ターミナル50の係止片部50Aの厚み方向Tの一方側に延出している部分を折曲部54と呼ぶことにする。配線部材48の他方側の端部48Bにおける被係止部52と折曲部54との境界部は、前方側へ向けて屈曲された屈曲部56となっている。この屈曲部56を有することにより、折曲部54は被係止部52に対して前方側へ傾斜した姿勢となっている。
【0033】
図4及び
図5に示されるように、配線部材48の他方側の端部48Bと第2ターミナル50の係止片部50Aとは、はんだ付け部58によって接合されている。詳述すると、
図4に示されるように、配線部材48の被係止部52は、係止凹部50Bの係止面S3に沿って配置されている。そして、被係止部52と係止凹部50Bの係止面S3及び定常面S2とは、はんだ付け部58によって接合されている。ここで、はんだ付け部58において被係止部52と係止凹部50Bの係止面S3及び定常面S2とを接合する部分を主接合部58Aと呼ぶことにする。
【0034】
図5に示されるように、配線部材48の折曲部54における被係止部52側の部位54Aと第2ターミナル50の係止片部50Aにおける厚み方向Tの一方側の面S4かつ係止凹部50Bと隣接する部分50Cは、はんだ付け部58によって接合されている。ここで、はんだ付け部58において折曲部54における被係止部52側の部位54Aと第2ターミナル50の係止片部50Aにおける厚み方向Tの一方側の面S4かつ係止凹部50Bと隣接する部分50Cとを接合する部分を副接合部58Bと呼ぶことにする。副接合部58Bを係止片部50Aの幅方向Wから見た形状は、前方側へ向かうにつれて次第に広がる扇形状となっている。なお、副接合部58Bの形状は、扇形状に限定されない。副接合部58Bの形状は、配線部材48の折曲部54の形状や姿勢等を考慮して適宜設定すればよい。
【0035】
また、配線部材48の折曲部54における被係止部52とは反対側の部位54Bは、はんだ付け部58の副接合部58Bが付着していない状態で第2ターミナル50の係止片部50Aと離間している。
【0036】
次に、車両用電気音響変換器10の製造工程の一部の工程であり、配線部材48の他方側の端部48Bと第2ターミナル50の係止片部50Aとを接合する工程について簡潔に説明する。
【0037】
先ず、
図6に示されるように、配線部材48の被係止部52を第2ターミナル50の係止凹部50Bに係止する(配線部材係止工程)。この配線部材係止工程では、配線部材48の被係止部52を第2ターミナル50の係止凹部50Bの係止面S3に沿って配置させる。次に、第2ターミナル50の係止凹部50Bの係止面S3を支点として配線部材48の一部を二点鎖線で示された位置から前方側へ向けて折り曲げることで折曲部54を形成する(配線部材折り曲げ工程)。次に、
図4及び
図5に示されるように、溶融させたはんだを第2ターミナル50の係止凹部50B内及びその周辺に付着させることで、はんだ付け部58の主接合部58A及び副接合部58Bを形成する(はんだ付け工程)。以上の工程を経て、配線部材48の他方側の端部48Bと第2ターミナル50の係止片部50Aとがはんだ付け部58を介して接合される。
【0038】
(本実施形態の作用並びに効果)
次に、本実施形態の作用並びに効果について説明する。
【0039】
図1及び
図2に示されるように、本実施形態の車両用電気音響変換器10では、コイル体28のコイル42への通電が配線経路である一対の第1ターミナル46、一対の配線部材48及び一対の第2ターミナル50を介してなされる。これにより、コイル体28が前後方向に移動することに伴い、振動板32が振動して音を発生させる。
【0040】
ここで、
図4に示されるように、本実施形態の車両用電気音響変換器10では、配線部材48の他方側の端部48Bと第2ターミナル50の係止片部50Aとを接合するはんだ付け部58は、配線部材48の被係止部52と第2ターミナル50の係止凹部50Bの係止面S3及び定常面S2とを接合する主接合部58Aを備えている。これに加えて、
図5に示されるように、はんだ付け部58は、配線部材48の折曲部54における被係止部52側の部位54Aと第2ターミナル50の係止片部50Aにおける厚み方向Tの一方側の面S4かつ係止凹部50Bと隣接する部分50Cとを接合する副接合部58Bを備えている。このように、はんだ付け部58が主接合部58Aに加えて副接合部58Bを有する構成とすることにより、はんだ付け部58の剥がれ等の不具合の発生を抑制することができる。
【0041】
また、本実施形態の車両用電気音響変換器10では、配線部材48の折曲部54が前方側へ傾斜した姿勢となっており、はんだ付け部58の副接合部58Bが前方側へ向かうにつれて広がる扇形状に形成されている。このように構成することで、副接合部58Bの体積を確保することができる。これにより、配線部材48と第2ターミナル50との間の導通経路を確保することができる。
【0042】
また、本実施形態の車両用電気音響変換器10では、配線部材48の折曲部54における被係止部52とは反対側の部位54Bが、はんだ付け部58の副接合部58Bが付着していない状態で第2ターミナル50の係止片部50Aと離間している。このように構成することで、はんだ付け部58の副接合部58Bが扇形状とは異なる形状になることを抑制することができる。
【0043】
なお、以上説明した本実施形態では、配線部材48の折曲部54における被係止部52とは反対側の部位54Bが、はんだ付け部58の副接合部58Bが付着していない状態で第2ターミナル50の係止片部50Aと離間している例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、配線部材48の折曲部54の全体が、はんだ付け部58の副接合部58Bを介して第2ターミナル50の係止片部50Aに接合されている構成としてもよい。
【0044】
また、以上説明した本実施形態では、折曲部54の折り曲げ方向が、係止凹部50Bの開放方向とは逆方向に折り曲げている例について説明したが、本発明はこれに限定されず、折曲部54を他の方向に折り曲げてもよい
【0045】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、その主旨を逸脱しない範囲内において上記以外にも種々変形して実施することが可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0046】
10 車両用電気音響変換器
28 コイル体
32 振動板
40 ボビン
42 コイル
48 配線部材
50 第2ターミナル(ターミナル)
50B 係止凹部
52 被係止部
54 折曲部
58 はんだ付け部
58A 主接合部
58B 副接合部