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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023146292
(43)【公開日】2023-10-12
(54)【発明の名称】充電器
(51)【国際特許分類】
   H02J 50/50 20160101AFI20231004BHJP
   H02J 50/20 20160101ALI20231004BHJP
   H02J 50/10 20160101ALI20231004BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20231004BHJP
【FI】
H02J50/50
H02J50/20
H02J50/10
H02J7/00 301D
H02J7/00 303C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022053413
(22)【出願日】2022-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】阿部 哲平
(72)【発明者】
【氏名】婦木 慎一郎
(72)【発明者】
【氏名】酒井 智和
(72)【発明者】
【氏名】武田 重郎
(72)【発明者】
【氏名】徳山 雄生
【テーマコード(参考)】
5G503
【Fターム(参考)】
5G503AA01
5G503AA04
5G503BB01
5G503BB03
5G503CA08
5G503CC08
5G503GB08
5G503GB09
5G503GD03
(57)【要約】
【課題】使い勝手のよい充電器を提供する。
【解決手段】充電器20は、受電部22、蓄電池23、および送電部24を有する。受電部22は、車両の内部に設けられた送電装置10から送られる電力を電波方式のワイヤレス給電によって受ける。蓄電池23は、受電部22が受ける電力が供給されて充電される。送電部24は、蓄電池23に蓄えられた電力を電磁誘導方式のワイヤレス給電によって充電対象の電気機器に送電する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の内部に設けられた送電装置から送られる電力を電波方式のワイヤレス給電によって受ける受電部と、
前記受電部が受ける電力が供給されて充電される蓄電部と、
前記蓄電部に蓄えられた電力を電磁誘導方式のワイヤレス給電によって充電対象の電気機器に送電する送電部と、を備える充電器。
【請求項2】
前記送電部は、車室内に設けられた車載部品に取り付けられている
請求項1に記載の充電器。
【請求項3】
前記送電部は、前記蓄電部に蓄えられた電力の残量が予め定められた低量判定値以下のときには、当該電力の前記電気機器への送電を禁止するものである
請求項1または2に記載の充電器。
【請求項4】
前記送電部は、前記残量が前記低量判定値以下であり、且つ、前記受電部が前記送電装置から送られる電力を受けているときには、前記受電部が受ける電力を電磁誘導方式のワイヤレス給電によって前記電気機器に送電するものである
請求項3に記載の充電器。
【請求項5】
前記受電部は、前記蓄電部に蓄えられた電力の残量が予め定められた満量判定値以上のときには、前記送電装置から送られる電力を受けることを禁止する
請求項1~4のいずれか一項に記載の充電器。
【請求項6】
前記送電部による前記電気機器への送電を許可する状態と当該送電を禁止する状態とを切り替える物理スイッチを備える
請求項1~5のいずれか一項に記載の充電器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気機器を充電する充電器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、スマートフォンやタブレット端末、ワイヤレスイヤホンなどの電気機器を充電するための充電器が種々提案され、実用されている。充電器としては、同充電器と電気機器とをケーブルで接続して有線給電を行うものの他、充電器と電気機器とを無線で接続してワイヤレス給電を行うものが実用されている(例えば特許文献1)。特許文献1に記載の充電器は、筐体と筐体内に設けられた送電コイルとを有している。そして、充電器の筐体に充電対象の電気機器が載置されると、電気機器の受電コイルと充電器の送電コイルとの間で生じる電磁誘導を利用することで、電気機器(詳しくは、電気機器が有する蓄電池)が充電される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-113849号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
自動車等の車両の内部(例えば車室内)で、電気機器を充電するシーンが増えている。このシーンにおいて、上記充電器はアクセサリーソケットやUSBポートなどの電源端子に接続コードを介して接続された状態で使用される。この場合には、充電器の設置場所が電源端子の周辺に限定されてしまうため、充電器は使い勝手のよいものにはならない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための充電器は、車両の内部に設けられた送電装置から送られる電力を電波方式のワイヤレス給電によって受ける受電部と、前記受電部が受ける電力が供給されて充電される蓄電部と、前記蓄電部に蓄えられた電力を電磁誘導方式のワイヤレス給電によって充電対象の電気機器に送電する送電部と、を備える。
【0006】
上記構成では、充電器の蓄電部が電波方式のワイヤレス給電を通じて充電される。そのため、アクセサリーソケット等の電源端子と接続コードとを利用して有線で充電器に電力供給せずとも、同充電器を、蓄電部に蓄えられた電力と送電部とによって電気機器を充電可能な状態にしておくことができる。したがって、充電器の設置場所についての電源端子の位置による制限を無くすことができる。これにより、充電器の設置場所についての自由度が高くなるため、充電器を使い易い場所に設置することが可能になる。上記構成によれば、このようにして充電器の使い勝手を良くすることができる。
【0007】
上記充電器において、前記送電部は、車室内に設けられた車載部品に取り付けられていることが好ましい。
上記構成によれば、車室内において乗員が充電器を容易に利用することができる。
【0008】
上記充電器において、前記送電部は、前記蓄電部に蓄えられた電力の残量が予め定められた低量判定値以下のときには、当該電力の前記電気機器への送電を禁止するものであることが好ましい。
【0009】
上記構成では、電源装置に電源コードで接続されるタイプの充電器と異なり、何らかの原因によって蓄電部の蓄電残量が少なくなると、電気機器を充電することができなくなる。上記構成によれば、蓄電部に蓄えられている電力の残量が少なくなったときには、同電力を電気機器の充電に用いることが禁止される。これにより、電気機器の充電が無駄に実行されることを抑えて、蓄電部の蓄電残量の不要な減少を抑えることができる。
【0010】
上記充電器において、前記送電部は、前記残量が前記低量判定値以下であり、且つ、前記受電部が前記送電装置から送られる電力を受けているときには、前記受電部が受ける電力を電磁誘導方式のワイヤレス給電によって前記電気機器に送電するものであることが好ましい。
【0011】
上記構成によれば、蓄電部に蓄えられた電力の利用を禁止することで同蓄電部の蓄電残量の減少を抑えつつ、受電部による受電電力を利用することで電気機器を充電する機能を維持することができる。
【0012】
上記充電器において、前記受電部は、前記蓄電部に蓄えられた電力の残量が予め定められた満量判定値以上のときには、前記送電装置から送られる電力を受けることを禁止することが好ましい。
【0013】
上記構成では、蓄電部の蓄電残量は、電気機器の充電時における電力消費によって減少する一方で、電気機器の充電停止時における受電部の受電電力によって充電されることで増加するようになる。上記構成によれば、そうした蓄電部の充電に伴って同蓄電部の蓄電残量が適当な量になったことを条件に、蓄電部の充電を停止することができる。そのため、蓄電部が適度に充電された状態を保つことができる。
【0014】
上記充電器において、前記送電部による前記電気機器への送電を許可する状態と当該送電を禁止する状態とを切り替える物理スイッチを備えることが好ましい。
上記構成によれば、ユーザーによる物理スイッチの操作を通じて、充電器によって電気機器を充電する状態と充電しない状態とが切り替えられるようになる。これにより、送電部による送電が無駄に実行されることを抑えることができる。そのため、充電器による電力消費を抑えながら、電気機器の充電が可能な状態で充電器を保持することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、使い勝手のよい充電器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】一実施形態の充電器が適用される車両の概略構成図である。
図2】充電器と送電装置との関係を示す略図である。
図3】充電器および送電装置の概略構成図である。
図4】充電器の斜視図である。
図5】充電器による受電態様を説明するための説明図である。
図6】受電部の作動制御にかかる処理の実行手順を示すフローチャートである。
図7】送電部の作動制御にかかる処理の実行手順を示すフローチャートである。
図8】充電器による充電態様の一例を説明するための説明図である。
図9】充電器による充電態様の他の例を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、充電器の一実施形態について説明する。
図1に示すように、本実施形態の充電器20は、車両1の内部、詳しくは後部座席2用のアームレスト3に設けられている。このアームレスト3は、図1中に矢印で示すように動作する、いわゆる可動式のものである。充電器20は、アームレスト3に着脱可能に取り付けられている。なお本実施形態では、アームレスト3が、車室内に設けられた車載部品に相当する。また、送電装置10は、車両1の内部、詳しくは車室の天井壁4に取り付けられている。
【0018】
図2に示すように、本実施形態の充電器20は、送電装置10から送られる電力によって充電される。送電装置10は、電波(本実施形態では、マイクロ波)方式のワイヤレス給電により、充電器20に対する給電を行う。詳しくは、送電装置10の送電アンテナ11と充電器20の受電アンテナ21との間で、ワイヤレス給電のための電力伝送信号の送受信を行う。
【0019】
充電器20は、位置情報を含むビーコン信号を、送電装置10に対して所定の時間間隔で送信する。送電装置10は、その送電可能範囲ARに充電器20が在る場合には、充電器20のビーコン信号を受信する。送電装置10は、充電器20のビーコン信号を受信すると、同ビーコン信号をもとに充電器20の位置を特定する。送電装置10は、特定した位置に向けて電力伝送信号を送信することで充電器20へのワイヤレス給電を行う。これにより、送電装置10に対する充電器20の向きや送電装置10と充電器20との距離などに応じて、充電器20への給電が効率よく行われる。
【0020】
<送電装置10>
図3に示すように、送電装置10は、送電アンテナ11と制御部12とを備えている。送電装置10はワイヤーハーネスを介して車両1の電源回路に接続されている。送電装置10には、ワイヤーハーネスを介して車両1の電源回路から電力が供給される。
【0021】
送電アンテナ11は、充電器20との各種通信に用いられる。送電アンテナ11は、電力伝送信号の送信や、ビーコン信号の受信に利用される。
制御部12としては、例えば、マイクロコントロールユニットが用いられる。制御部12は、プロセッサと記憶部とを備えている。記憶部は、ROM(Read Only Memory)およびRAM(Random Access Memory)を含む。制御部12は、充電器20との通信に関する各種制御を実行する。制御部12は、送電アンテナ11を制御して、充電器20が送信するビーコン信号を受信する。制御部12は、電源装置(図示略)から供給される電力を電力伝送信号に変換するとともに、この電力伝送信号を送電アンテナ11を利用して送信する。
【0022】
<充電器20>
充電器20は、受電部22、蓄電池23、送電部24、および制御部25を備えている。
【0023】
<受電部22>
受電部22は、送電装置10から送られる電力を電波方式のワイヤレス給電によって受ける部分を構成している。受電部22は、受電アンテナ21と受電変換部26とを有している。
【0024】
受電アンテナ21は、送電装置10との各種通信に用いられる。受電アンテナ21は、詳しくは、送電装置10から送信される電力伝送信号の受信や、送電装置10へのビーコン信号の送信に利用される。
【0025】
受電変換部26は、受電アンテナ21によって受信した電力伝送信号を直流電力に変換する部分を構成している。受電変換部26は整流回路や変圧回路を有している。本実施形態の充電器20では、この受電変換部26により変換された直流電力が蓄電池23に供給されることで、同蓄電池23が充電される。
【0026】
<送電部24>
送電部24は、蓄電池23に蓄えられた電力を電磁誘導方式のワイヤレス給電によって充電対象の電気機器に送電する部分を構成している。本実施形態では、送電部24によるワイヤレス給電は、例えばQi(チー)と呼ばれる規格に準規して行われる。Qiは、WPC(Wireless Power Consortium)が策定した国際標準規格である。送電部24によるワイヤレス給電は、他の規格、例えばPMA(Power Matters Alliance)が定める規格に準規してもよい。なお上記電気機器としては、スマートフォン、タブレット端末、ワイヤレスイヤホンなどを想定している。
【0027】
送電部24は送電変換部27と送電コイル28とを有している。送電変換部27は、インバータ回路を有している。送電変換部27は、蓄電池23から供給される直流電力を交流電力に変換する部分を構成している。送電コイル28は、巻回された導線によって構成されている。本実施形態の充電器20では、上記送電変換部27によって変換された交流電力が送電コイル28に供給される。
【0028】
本実施形態の充電器20では、基本的に、蓄電池23から供給される直流電力が送電変換部27によって交流電力に変換される。そして、この交流電力は送電コイル28に送られる。これにより、送電コイル28は、電磁誘導方式のワイヤレス給電のための磁束を発生する。
【0029】
<制御部25>
制御部25としては、例えば、マイクロコントロールユニットが用いられる。制御部25は、プロセッサと記憶部とを備えている。記憶部は、ROMおよびRAMを含む。制御部25は、受電部22の作動制御や送電部24の作動制御など、充電器20の作動制御にかかる各種制御を実行する。制御部25は、受電アンテナ21を制御して、送電装置10に対してビーコン信号を送信する。制御部25は、受電アンテナ21を制御して、送電装置10から送信される電力伝送信号を受信する。制御部25は、蓄電池23から供給される直流電力を交流電力に変換するとともに、この交流電力を送電コイル28に供給する。
【0030】
<筐体30>
図4に示すように、充電器20は筐体30を備えている。この筐体30の内部に、前記受電部22、蓄電池23、送電部24、および制御部25は収容されている。
【0031】
充電器20を利用して電気機器を充電する際には、この筐体30上に電気機器が置かれる。これにより、電磁誘導方式のワイヤレス給電によって、電気機器が充電される。具体的には、充電器20の送電コイル28は通電されることで磁束を発生している。充電器20は、電気機器が筐体30上の所定位置に置かれることで、送電コイル28の発生する磁束が電気機器の受電コイルと鎖交するように構成されている。そして、電気機器の受電コイルと鎖交する磁束によって同電気機器の受電コイルに誘導起電力が発生する。この誘電起電力を利用して電気機器の蓄電池が充電される。
【0032】
筐体30には操作スイッチ31が取り付けられている。操作スイッチ31は充電器20の制御部25(図3参照)に接続されている。操作スイッチ31は、充電器20のユーザーによって操作されるスライドスイッチである。制御部25は、ユーザーによる操作スイッチ31の操作態様をもとに、送電部24による電気機器への送電を許可する状態(送電許可状態)と当該送電を禁止する状態(送電禁止状態)とを切り替える。こうした操作スイッチ31を設けることで、電気機器の充電に合わせて送電部24を作動させることが可能になる。これにより、充電を実行しないにもかかわらず送電部24が作動する状態になることが抑えられるため、同送電部24における無駄な電力消費が抑えられる。
【0033】
筐体30には表示装置32が取り付けられている。表示装置32は、一列に並ぶ態様で設けられた複数の発光ダイオードを有している。表示装置32は制御部25(図3参照)に接続されている。表示装置32は、制御部25による作動制御を通じて、蓄電池23の蓄電残量、いわゆるSOC(State Of Charge)に応じた内容を表示する。この表示装置32は、蓄電残量SOCが所定量以上であるときの表示色(例えば、緑色)と、蓄電残量SOCが所定量未満であるときの表示色(例えば赤色)とが異なる。ユーザは、表示装置32の表示内容(詳しくは、発光ダイオードの点灯数)や表示色をもとに、充電器20が電気機器の充電のために十分な電力を蓄えている状態であることや、充電器20が蓄えている電力が少なくなっている状態であることを容易に判断できる。なお、蓄電残量SOCは、受電部22による受電電力や、蓄電池23の電圧、送電部24による送電電力などをもとに制御部25によって求められている。
【0034】
<蓄電池23>
なお本実施形態の充電器20では、蓄電池23を交換可能な構造が採用されている。具体的には、筐体30には蓄電池23を収容可能な電池収容部(図示略)と、同電池収容部を開閉可能な蓋体(図示略)とが設けられている。そして、電池収容部に蓄電池23が収容された状態で、筐体30に上記蓋体が閉状態で取り付けられている。こうした構造を採用することで、蓄電池23が劣化した場合に、同蓄電池23を交換することで、充電器20における蓄電池23以外の部分を再利用することが可能になっている。
【0035】
以下、本実施形態の充電器20による作用効果について説明する。
<受電部22による送電装置10からの受電>
図2に示すように、充電器20は、受電アンテナ21を制御して、ビーコン信号を送信している。送電装置10は、送電アンテナ11を制御して、充電器20が送信するビーコン信号を受信する。そして、送電装置10は、ビーコン信号を受信すると、送電アンテナ11を制御して、充電器20に対して電力伝送信号を送信する。
【0036】
図5に示すように、充電器20は、受電アンテナ21の作動制御を通じて、上記電力伝送信号を受信する。そして、充電器20の受電変換部26により、この電力伝送信号が直流電力に変換されるとともに同直流電力が蓄電池23に供給される。こうして供給される直流電力によって蓄電池23が充電される。
【0037】
本実施形態の充電器20では、蓄電池23が電波方式のワイヤレス給電を通じて充電される。そのため、アクセサリーソケットやUSBポートなどの電源端子と接続コードとを利用して有線で充電器20に電力供給せずとも、同充電器20を、蓄電池23に蓄えられた電力と送電部24とによって電気機器を充電可能な状態にしておくことができる。これにより、充電器20の設置場所についての電源端子の位置による制限を無くすことができるため、同充電器20の設置場所についての自由度が高くなる。
【0038】
電磁誘導式のワイヤレス給電によって電力を伝送可能な距離(例えば、数cm)と比較して、電波方式のワイヤレス給電によって電力を伝送可能な距離(例えば、数m)は長い。本実施形態では、送電装置10から充電器20への給電態様として、電波方式のワイヤレス給電が採用されている。そのため、上記給電態様として電磁誘導式のワイヤレス給電が採用される場合と比較して、電力を伝送可能な距離が長い分だけ、充電器20を送電装置10から離れた位置で利用することができる。したがって、充電器20の設置場所についての自由度が高くなる。このように本実施形態によれば、充電器20の設置場所についての自由度を高くすることができるため、充電器20を使い易い場所に設置することが可能になる。したがって、充電器20の使い勝手を良くすることができる。
【0039】
本実施形態によれば、乗員は、車室内において充電器20をアームレスト3から取り外した状態で利用することができる。また、充電器20を、アームレスト3から取り外すとともに車両1の外部に持ち出して利用することもできる。
【0040】
図6に、受電部22の作動制御にかかる処理の実行手順を示す。なお図6のフローチャートに示す一連の処理は、所定周期毎の処理として、充電器20の制御部25によって実行される。
【0041】
本実施形態では、図6に示すように、蓄電残量SOCが満量判定値(例えば、満充電に相当する値[100パーセント])未満である場合には(ステップS11:NO)、充電器20の受電部22による電力伝送信号の受信が許可される(ステップS12)。すなわち、この場合には、充電器20は、送電装置10から送られる電力を受けることが可能な状態になる。
【0042】
一方、蓄電残量SOCが満量判定値以上になると(ステップS11:YES)、充電器20の受電部22による電力伝送信号の受信が禁止される(ステップS13)。この場合には、充電器20は、上記電力伝送信号を受信しない状態、すなわち送電装置10から送られる電力を受けない状態になる。本実施形態では、この場合において、送電装置10による充電器20への電力伝送信号の送信が禁止(停止)される。
【0043】
ここで、充電器20によって電気機器を充電する際には、蓄電池23に蓄えられた電力が消費されるため、蓄電池23の蓄電残量SOCは減少するようになる。一方、充電器20による電気機器の充電停止時においては、基本的に、受電部22が受電する電力によって蓄電池23は充電されるため、同蓄電池23の蓄電残量SOCは増加するようになる。
【0044】
本実施形態によれば、蓄電池23の充電に伴って同蓄電池23の蓄電残量SOCが適当な量になったことを条件に、蓄電池23の充電を停止することができる。そのため、蓄電池23が適度に充電された状態を保つことができる。また、このとき送電装置10からの電力伝送信号の送信が禁止されるため、無駄に電力伝送信号が送信されることが回避される。これにより、送電装置10の電力消費を低減することができる。
【0045】
<送電部24による電気機器への送電>
充電器20を利用して電気機器を充電する際には、操作スイッチ31(図4)をオン操作した状態で、筐体30上に電気機器が置かれる。これにより、電磁誘導方式のワイヤレス給電によって、電気機器が充電される。
【0046】
図7に、送電部24の作動制御にかかる処理の実行手順を示す。なお図7のフローチャートに示す一連の処理は、所定周期毎の処理として、充電器20の制御部25によって実行される。
【0047】
図7に示すように、蓄電池23の蓄電残量SOCが低量判定値(例えば、電力残量が「0」に相当する値[0パーセント])よりも多い場合には(ステップS21:YES)、蓄電池23の電力を利用する態様での電気機器の充電が実行される(ステップS22)。
【0048】
この場合には、図8に示すように、送電変換部27により、蓄電池23から供給される直流電力が交流電力に変換されるとともに同交流電力が送電コイル28に送られる。これにより、送電コイル28はワイヤレス給電用の磁束を発生するようになる。そして、この磁束によって同電気機器の受電コイルに誘導起電力を発生させるとともに、この誘電起電力を利用して電気機器の蓄電池が充電される。
【0049】
電磁誘導方式のワイヤレス給電は、電波方式のワイヤレス給電と比較して、送電効率が高い。本実施形態では、充電器20から電気機器への給電態様として、電磁誘導方式のワイヤレス給電が採用されている。そのため、上記給電態様として電波式のワイヤレス給電が採用される場合と比較して、電気機器の充電を効率よく実行することができる。
【0050】
一方、図7に示すように、蓄電池23の蓄電残量SOCが低量判定値以下であり(ステップS21:NO)、且つ、受電部22によって受電している受電状態である場合には(ステップS23:YES)、以下の態様で電気機器が充電される(ステップS24)。この場合には、受電部22による受電電力を利用する態様での電気機器の充電が実行される。
【0051】
図9に示すように、具体的には、受電変換部26によって変換される直流電力が送電変換部27に供給される。そして、送電変換部27により、受電部22から供給される直流電力が交流電力に変換されるとともに、同交流電力が送電コイル28に送られる。これにより、送電コイル28はワイヤレス給電用の磁束を発生するようになる。そして、この磁束によって同電気機器の受電コイルに誘導起電力を発生させるとともに、この誘電起電力を利用して電気機器の蓄電池が充電される。なお、この場合には、受電変換部26によって変換された直流電力による蓄電池23の充電はなされず、同蓄電池23から送電変換部27への電力供給もなされない。
【0052】
本実施形態の充電器20では、電源装置に電源コードで接続されるタイプの充電器と異なり、何らかの原因によって蓄電池23の電力残量が少なくなると、電気機器を充電することができなくなる。
【0053】
この点、本実施形態では、蓄電池23の蓄電残量SOCが低量判定値以下のときには、蓄電池23に蓄えられている電力を利用する態様での電気機器への送電が禁止される。そのため、蓄電池23に蓄えられている電力の残量が少なくなったときには、同電力が電気機器の充電に用いられなくなる。これにより、蓄電池23に蓄えられている電力を利用する態様での電気機器の充電が無駄に実行されることを抑えて、蓄電池23の電力残量の不要な減少を抑えることができる。
【0054】
こうした場合であっても、受電部22が受電状態であるときには、同受電部22による受電電力を利用する態様での電気機器への送電が実行される。これにより、蓄電池23に蓄えられた電力の利用を禁止することで同蓄電池23の電力残量の減少を抑えつつ、受電部22による受電電力を利用することで電気機器を充電する機能を維持することができる。
【0055】
他方、図7に示すように、蓄電池23の蓄電残量SOCが低量判定値以下であり(ステップS21:NO)、且つ、受電部22によって受電していない非受電状態である場合には(ステップS23:NO)、電気機器の充電がなされない(ステップS25)。
【0056】
この場合には、蓄電池23に蓄えられている電力の残量が少なくなっているとして、同電力が電気機器の充電に用いられない。これにより、蓄電池23に蓄えられている電力を利用する態様での電気機器の充電が無駄に実行されることを抑えて、蓄電池23の電力残量の不要な減少を抑えることができる。また、この場合には、受電部22が非受電状態であるため、同受電部22による受電電力を利用する態様での電気機器への送電が実行不能であるとして、同態様での電気機器への送電が実行されない。
【0057】
<効果>
以上説明したように、本実施形態によれば、以下に記載する効果が得られる。
(1)充電器20は、車両1の内部に設けられた送電装置10から送られる電力を電波方式のワイヤレス給電によって受ける受電部22と、受電部22が受ける電力が供給されて充電される蓄電池23とを有する。充電器20は、蓄電池23に蓄えられた電力を電磁誘導方式のワイヤレス給電によって充電対象の電気機器に送電する送電部24を有する。これにより、充電器20の設置場所についての自由度を高くすることができるため、充電器20の使い勝手を良くすることができる。
【0058】
(2)充電器20は、車室内に設けられた後部座席2用のアームレスト3に取り付けられている。これにより、車室内において乗員が充電器20を容易に利用することができる。
【0059】
(3)蓄電池23の蓄電残量SOCが低量判定値以下のときには、蓄電池23に蓄えられている電力を利用する態様での電気機器への送電が禁止される。これにより、蓄電池23に蓄えられている電力を利用する態様での電気機器の充電が無駄に実行されることを抑えて、蓄電池23の電力残量の不要な減少を抑えることができる。
【0060】
(4)蓄電池23の蓄電残量SOCが低量判定値以下であっても、受電部22が受電状態であるときには、同受電部22による受電電力を利用する態様での電気機器への送電を実行するようにした。これにより、蓄電池23に蓄えられた電力の利用を禁止することで同蓄電池23の電力残量の減少を抑えつつ、受電部22による受電電力を利用することで電気機器を充電する機能を維持することができる。
【0061】
(5)蓄電池23の蓄電残量SOCが満量判定値以上のときには、送電装置10から送られる電力を受電部22によって受けることが禁止される。これにより、蓄電池23が適度に充電された状態を保つことができる。
【0062】
(6)充電器20は送電許可状態と送電禁止状態とを切り替える操作スイッチ31を有する。これにより、送電部24による送電が無駄に実行されることを抑えることができるため、充電器20による電力消費を抑えながら、同充電器20を電気機器の充電が可能な状態で保持することができる。
【0063】
<変更例>
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記実施形態および以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0064】
・蓄電残量SOCを表示する表示装置32を省略してもよい。
・蓄電池23を交換不能な状態で筐体30に設けるようにしてもよい。
・充電器20に、充電コードを利用した有線給電によって充電対象の電気機器に送電する有線充電部を設けるようにしてもよい。有線接続部は、例えば充電コードを接続するための接続端子や、同接続端子と蓄電池23(または受電変換部26)とを接続する接続回路などを有している。充電コードとしては、USB規格(タイプ-A、タイプ-B、タイプ-Cなど)のコードを採用することができる。
【0065】
・受電部22が受ける電力が供給されて充電される蓄電部としては、蓄電池23を採用することに代えて、キャパシタを採用することができる。
・操作スイッチ31としては、スライドスイッチを採用することに限らず、タッチスイッチなどの任意の物理スイッチを採用することができる。
【0066】
・操作スイッチ31を省略してもよい。
・蓄電残量SOCが満量判定値以上のときに受電部22による電力伝送信号の受信を禁止する構成(図6参照)を省略してもよい。言い換えれば、蓄電残量SOCがどのような値である場合においても、受電部22による電力伝送信号の受信を許可するようにしてもよい。
【0067】
・受電部22による受電電力を利用する態様での電気機器の充電を実行する構成を省略してもよい。具体的には、図7のステップS23の処理およびステップS24の処理を省略することができる。
【0068】
・蓄電残量SOCが低量判定値以下のときに、蓄電池23の電力を利用する態様での電気機器の充電を禁止する構成を省略してもよい。言い換えれば、蓄電残量SOCがどのような値である場合においても、蓄電池23の電力を利用する態様での電気機器の充電を許可するようにしてもよい。
【0069】
・送電装置10の設置場所は、車両1の内部に向けて電力伝送信号を送ることができるのであれば、任意に変更することができる。そうした送電装置10の設置場所としては、グローブボックスの内部や、センタークラスター、車両1のフロアなどを挙げることができる。送電装置10を車両1の荷室内に設けるようにしてもよい。
【0070】
・充電器20を、アームレスト3に着脱可能に取り付けることに代えて、アームレスト3に固定するようにしてもよい。
・充電器20を、アームレスト3以外の車載部品に取り付けるようにしてもよい。そうした車載部品としては、例えばセンターコンソールや、グローブボックス、ダッシュボード、後部座席の座部、座席のヘッドレスト、テーブルなどを挙げることができる。また充電器20を、車両1の荷室内に設けるようにしてもよい。
【0071】
・充電器20を車両1の内部に1つのみ設けることに限らず、例えばセンターコンソールとアームレスト3とに1つずつ充電器20を設けるなど、複数の充電器20を設けるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0072】
1…車両
2…後部座席
3…アームレスト
4…天井壁
10…送電装置
11…送電アンテナ
12…制御部
20…充電器
21…受電アンテナ
22…受電部
23…蓄電池
24…送電部
25…制御部
26…受電変換部
27…送電変換部
28…送電コイル
30…筐体
31…操作スイッチ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9