(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023146297
(43)【公開日】2023-10-12
(54)【発明の名称】建設機械
(51)【国際特許分類】
E02F 9/00 20060101AFI20231004BHJP
B60K 15/063 20060101ALI20231004BHJP
B60K 15/07 20060101ALI20231004BHJP
【FI】
E02F9/00 P
B60K15/063 B
B60K15/07
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022053420
(22)【出願日】2022-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】398071668
【氏名又は名称】株式会社日立建機ティエラ
(74)【代理人】
【識別番号】110002457
【氏名又は名称】弁理士法人広和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中林 哲也
(72)【発明者】
【氏名】野口 修平
(72)【発明者】
【氏名】中西 健太
(72)【発明者】
【氏名】太田 幸宏
【テーマコード(参考)】
2D015
3D038
【Fターム(参考)】
2D015CA00
3D038CA01
3D038CA12
3D038CA19
3D038CB09
3D038CC18
3D038CD02
3D038CD10
(57)【要約】
【課題】ガス容器への振動負荷を低減できる建設機械を提供する。
【解決手段】油圧ショベル1は、走行可能な下部走行体2および上部旋回体3と、上部旋回体3に取付けられる作業装置4とを備えている。上部旋回体3は、作業装置4が取付けられる旋回フレーム5と、旋回フレーム5に搭載されるガスエンジン13と、旋回フレーム5に防振ゴム18C、上側弾性体22Aおよび下側弾性体22Bを介して支持されるフロア部材8とを備えている。フロア部材8には、ガスエンジン13のガス燃料を貯留するガス容器25および運転席7が載置されている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行可能な車体と、前記車体に取付けられた作業装置とを有し、
前記車体は、
前記作業装置が取付けられた車体フレームと、
前記車体フレームに搭載されたガスエンジンと、
前記車体フレームに弾性部材を介して支持されたフロア部材と、を備えた建設機械において、
前記フロア部材には、前記ガスエンジンのガス燃料を貯留するガス容器および運転席が載置されていることを特徴とする建設機械。
【請求項2】
前記フロア部材は、
前記車体フレームの前記作業装置側に設けられた足乗せ部と、
前記足乗せ部から前記車体フレームの幅方向に延び、前記ガス容器が載置された第1延長部と、を備えることを特徴とする請求項1に記載の建設機械。
【請求項3】
前記ガス容器は、前記運転席の側方に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の建設機械。
【請求項4】
前記フロア部材は、
前記車体フレームの前記作業装置側に設けられた足乗せ部と、
前記足乗せ部から上方に向けて立ち上がった壁面部と、を備え、
前記ガス容器は、前記壁面部を挟んで前記運転席とは反対側に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の建設機械。
【請求項5】
前記フロア部材は、
前記車体フレームの前記作業装置側に設けられた足乗せ部と、
前記足乗せ部から前記作業装置側に延び、前記ガス容器が載置された第2延長部と、を備えたことを特徴とする請求項1に記載の建設機械。
【請求項6】
前記ガス容器は、前記フロア部材に設けられたガス容器取付ブラケットに取付け取外し可能に載置されていることを特徴とする請求項1に記載の建設機械。
【請求項7】
前記ガス容器取付ブラケットは、
前記ガス容器が取付けられた取付け台と、
前記取付け台を前記フロア部材に対して移動させるスライド機構と、を備えることを特徴とする請求項6に記載の建設機械。
【請求項8】
前記スライド機構は、前記取付け台を前記車体フレームの外側に向けて移動させることを特徴とする請求項7に記載の建設機械。
【請求項9】
前記取付け台には、前記取付け台を上下方向に貫通する貫通孔が設けられていることを特徴とする請求項7に記載の建設機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、原動機としてガスエンジンを搭載した油圧ショベル、ホイールローダ等の建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、建設機械の代表例である油圧ショベルは、自走可能な下部走行体と、下部走行体上に旋回装置を介して旋回可能に搭載された上部旋回体と、上部旋回体の前側に設けられた作業装置とを備えている。上部旋回体は、ベースとなる旋回フレームを有し、旋回フレームには、ディーゼルエンジン等の原動機と、原動機によって駆動される油圧ポンプと、作動油を貯える作動油タンクと、これら原動機、油圧ポンプ、作動油タンク等を覆う外装カバー(建屋カバー)とが搭載されている。
【0003】
ここで、近年、地球環境問題、排ガス規制への対応によって、エンジンの価格が高騰している。このため、例えば、自動車、フォークリフトでは、排ガスがクリーンでコストパフォーマンスに優れているガスエンジン、例えば、液化石油ガス(LPG:Liquefied Petroleum Gas)等を燃料とするガスエンジンの搭載が進んでいる。一方、特許文献1には、LPGを燃料とするガスエンジンおよびガス容器(ガスボンベ)を搭載した作業車両が記載されている。また、特許文献2には、燃料となる天然ガス(NG:Natural Gas)を充填したガス容器(ガスボンベ)をカウンタウエイトの内部に配設した建設機械が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-171968号公報
【特許文献2】特開2001-040705号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えばLPGをガス燃料として使用する場合、容器検査で適合されたガス容器(ガスボンベ)での使用が義務付けられている。ガスエンジンの搭載が普及している自動車、フォークリフトでは、一般的にガス販売事業者から提供されるガス容器(ガスボンベ)にガス燃料を充填することにより、または、ガス容器(ガスボンベ)を載せ換えることにより、使用されている。自動車、フォークリフトの場合、ゴム製のタイヤを装着していることから、悪路を走行したときの振動を減衰できる。このため、悪路走行時のガス容器への振動負荷を低減することができる。これに対して、鋼鉄製の履帯を駆動させて走行を行う建設機械においては、悪路を走行したときの振動負荷が大きいため、ガス容器の振動を低減することが望まれる。また、仮にガス容器に対して大きな振動が加わった際には、オペレータがガス容器に大きな振動が加わったことをすみやかに認識できることが望まれる。
【0006】
本発明の目的は、ガス容器への振動負荷を低減できると共に、ガス容器へ大きな振動が加わったことを把握できる建設機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、走行可能な車体と、前記車体に取付けられた作業装置とを有し、前記車体は、前記作業装置が取付けられた車体フレームと、前記車体フレームに搭載されたガスエンジンと、前記車体フレームに弾性部材を介して支持されたフロア部材と、を備えた建設機械において、前記フロア部材には、前記ガスエンジンのガス燃料を貯留するガス容器および運転席が載置されている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ガス容器への振動負荷を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施の形態による油圧ショベルを示す左側面図である。
【
図2】作業装置が取外された油圧ショベルを
図1の左側から見た正面図である。
【
図3】旋回フレーム、フロア部材、ガス容器、作動油タンク、カウンタウエイト等を示す斜視図である。
【
図4】旋回フレーム、ガスエンジン、カウンタウエイト等を示す斜視図である。
【
図5】カウンタウエイト、カウンタウエイトの防振部材ブラケット、防振部材、フロア支持部材、フロア部材の取付板部等を示す断面図である。
【
図6】傾転支持部材、フロア部材の足乗せ部等を示す分解斜視図である。
【
図9】ガス容器およびガス容器取付ブラケットを示す側面図である。
【
図10】ガス容器およびガス容器取付ブラケットを
図9の右側から見た正面図である。
【
図11】ガス容器取付ブラケットを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施の形態を、建設機械(作業機械)を代表する油圧ショベル、より具体的には、小型の油圧ショベルに適用した場合を例に挙げ、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0011】
なお、以下の説明では、油圧ショベル1の前後方向は、前側を作業装置4側とし、後側を作業装置4とは反対側となるカウンタウエイト12側とする。また、油圧ショベル1の左右方向は、前後方向と直交する方向とする。例えば、
図1では、紙面の左右方向が油圧ショベル1の前後方向(X方向)に対応し、紙面の表裏方向が油圧ショベル1の左右方向(Y方向)に対応し、紙面の上下方向が油圧ショベル1の上下方向(Z方向)に対応する。
【0012】
建設機械(作業機械)としての油圧ショベル1は、例えば、土木、解体、地下工事等の作業現場で用いられる。実施の形態の油圧ショベル1は、例えば、狭い作業現場での作業に適した小型(例えば、機械重量が1~6トン程度)の油圧ショベル(ミニショベル、小型油圧ショベル)として構成されている。また、実施の形態の油圧ショベル1は、キャブ仕様の油圧ショベル1として構成されている。
【0013】
油圧ショベル1は、自走可能なクローラ式の下部走行体2と、下部走行体2上に旋回可能に搭載された上部旋回体3と、上部旋回体3に設けられた作業装置4とを備えている。下部走行体2および上部旋回体3は、油圧ショベル1の車体を構成している。車体は、走行可能であり、かつ、旋回可能である。上部旋回体3の前側には、スイング式の作業装置4が揺動可能に取付けられている。油圧ショベル1は、作業装置4を用いて土砂の掘削作業等を行う。
【0014】
下部走行体2は、例えば、無端状に形成されたトラックリンクに複数個のシューを取付けてなる履帯2Aと、履帯2Aを周回駆動させることにより油圧ショベル1を走行(自走)させる左右の走行用油圧モータ(図示せず)とを含んで構成されている。下部走行体2と上部旋回体3との間には、旋回軸受と旋回用油圧モータとを含んで構成される旋回装置が設けられている。
【0015】
フロント装置または作業機とも呼ばれる作業装置4は、旋回フレーム5の前側に左右方向に揺動可能に設けられたスイングポスト4Aを有している。スイングポスト4Aには、ブーム4Bが回動可能に取付けられており、ブーム4Bの先端には、アーム4Cが回動可能に取付けられており、アーム4Cの先端には、作業具としてのバケット4Dが回動可能に取付けられている。また、作業装置4は、スイングポスト4Aを揺動させるスイングシリンダ(図示せず)と、ブーム4Bを回動させるブームシリンダ4Eと、アーム4Cを回動させるアームシリンダ4Fと、バケット4Dを回動させる作業具シリンダとしてのバケットシリンダ4Gとを備えている。
【0016】
上部旋回体3は、下部走行体2上に旋回可能に搭載されている。上部旋回体3は、旋回装置の旋回用油圧モータが駆動することにより、下部走行体2上で旋回する。ここで、上部旋回体3の左右方向の幅寸法は、下部走行体2の車幅と同等な寸法に設定されている。これにより、油圧ショベル1は、上部旋回体3が下部走行体2上で旋回したときに、カウンタウエイト12の後面12Aが、下部走行体2の車幅の120%以内に収まる後方超小旋回型の油圧ショベルとして構成されている。
【0017】
上部旋回体3は、例えば、車体フレームとしての旋回フレーム5と、油圧ショベル1の原動機となるガスエンジン13(
図4)と、オペレータが座る運転席7が取付けられるフロア部材8とを備えている。フロア部材8上には、オペレータの運転室を区画するキャブボックス9が設けられている。キャブボックス9は、運転席7の周囲と上部を覆う箱体として形成されている。即ち、キャブボックス9は、前面9A、後面9B、左側面9C、右側面9D、上面9Eによって囲まれたボックス状に形成され、内部がオペレータの運転室となっている。
【0018】
キャブボックス9内には、オペレータが座る運転席7、油圧ショベル1を操作するための走行用レバー・ペダル10および作業用レバー11が設けられている。オペレータは、走行用レバー・ペダル10および作業用レバー11を操作することにより、下部走行体2による走行、上部旋回体3の旋回、作業装置4による掘削等を行うことができる。
【0019】
旋回フレーム5は、上部旋回体3の支持構造体(ベースフレーム)を構成している。
図4に示すように、旋回フレーム5は、底板5Aと、左縦板5Bと、右縦板5Cと、横板5Dと、上板5Eと、左サイドフレーム5Fと、右サイドフレーム5Gとを含んで構成されている。底板5Aは、厚肉な鋼板を用いて形成され、前後方向に延びている。左縦板5Bおよび右縦板5Cは底板5A上に立設され、前側から後側に向けて左右方向の間隔が広がるように前後方向に延びている。横板5Dは、底板5A上に立設されて左右方向に延び、左縦板5Bと右縦板5Cとの間を連結している。上板5Eは、左縦板5Bおよび右縦板5Cの上部に設けられ、左縦板5Bおよび右縦板5Cの前後方向の中間部から前側へと延びている。
【0020】
左サイドフレーム5Fは、底板5Aの前端部から左側に延びつつ屈曲して後側に延びている。右サイドフレーム5Gは、底板5Aの前端部から右側に延びつつ屈曲して後側に延びている。底板5A、左縦板5B、右縦板5Cおよび上板5Eの前端は、前方に突出した作業装置支持部5Hとなっている。この作業装置支持部5Hには、作業装置4のスイングポスト4Aが左右方向に揺動可能に取付けられている。
【0021】
旋回フレーム5の前側位置には、左サイドフレーム5Fの上方を左右方向に延びる左前梁5Jが設けられている。また、旋回フレーム5の前側位置で右縦板5Cよりも右側には、左前梁5Jおよび上板5Eと共にフロア部材8を下側から支持する右前ブラケット5Kが設けられている。右前ブラケット5Kは、右サイドフレーム5Gに取付けられ右サイドフレーム5Gから立ち上がる立ち上がり板部5K1と、立ち上がり板部5K1の上端と接続され右サイドフレーム5Gの上方を左右方向に延びる上板部5K2とを備えている。右前ブラケット5Kは、立ち上がり板部5K1と上板部5K2とにより全体としてL字型に形成されている。そして、旋回フレーム5の前側位置となる左前梁5J、上板5Eおよび右前ブラケット5Kには、後述する傾転支持部材18がそれぞれ取付けられている。
【0022】
旋回フレーム5には、傾転支持部材18によってフロア部材8がキャブボックス9と共に傾転支持部材18を中心とした傾転(チルト)を可能に支持される。また、旋回フレーム5には、カウンタウエイト12、ガスエンジン13(
図4)、油圧ポンプ14(
図4)、作動油タンク15(
図3)、コントロールバルブ装置(図示せず)が搭載されている。この場合、旋回フレーム5の前側に作業装置4が取付けられ、旋回フレーム5の後側にカウンタウエイト12が取付けられる。また、旋回フレーム5上には、旋回フレーム5に搭載された各種機器を覆う外装カバー16が設けられている。
【0023】
カウンタウエイト12は、上部旋回体3の後端側に設けられている。即ち、カウンタウエイト12は、作業装置4との重量バランスをとるために、キャブボックス9よりも後側に位置して旋回フレーム5の後端に設けられている。カウンタウエイト12は、左右方向に延びつつ、左右方向の中央が後方に突出した円弧状の重量物として形成されている。これにより、カウンタウエイト12の後面12Aは、上部旋回体3が旋回したときに一定の旋回半径の仮想円内に収まる円弧面として形成されている。
【0024】
カウンタウエイト12は、旋回フレーム5に対して弾性部材を介することなく直接的に固定されている。即ち、カウンタウエイト12は、旋回フレーム5と同一振動系となっている。
図4および
図5に示すように、カウンタウエイト12の上部前側には、後述の防振部材22を取付けるための防振部材ブラケット12Bが設けられている。防振部材ブラケット12Bには、防振部材22を介してフロア支持部材21が取付けられる。フロア支持部材21には、フロア部材8の取付板部8Eが取付けられる。
【0025】
ガスエンジン13は、カウンタウエイト12の前側に位置して旋回フレーム5に搭載されている。ガスエンジン13は、旋回フレーム5の横板5Dよりも後側に複数のマウント部材13Aを介して支持されている。ガスエンジン13は、油圧ショベル1の動力源(駆動源)となる原動機である。ガスエンジン13は、例えばガス燃料としての液化石油ガス(LPG)を燃料として駆動する。ガスエンジン13は、左右方向に延在する横置き状態で旋回フレーム5に搭載されている。ガスエンジン13には、ガスボンベとも呼ばれるガス容器25からガス燃料が供給される。ガス容器25の内部には、液状となったガス燃料が充填されている。図示は省略するが、ガス容器25とガスエンジン13との間の燃料供給ラインには、ガス燃料を気化するベーパライザ(蒸発器)が設けられている。ベーパライザは、例えば、旋回フレーム5の後端部に配置されている。
【0026】
油圧ポンプ14は、ガスエンジン13の一端側となる左側に取付けられている。油圧ポンプ14は、ガスエンジン13によって駆動される。油圧ポンプ14は、作動油タンク15に貯えられた作動油を吸込んでコントロールバルブ装置に向けて圧油を吐出(供給)する。油圧ポンプ14は、コントロールバルブ装置を介してブームシリンダ4E等の各種の油圧アクチュエータ(油圧シリンダ、油圧モータ)に圧油を供給する。
【0027】
コントロールバルブ装置は、複数の方向制御弁からなる制御弁群である。コントロールバルブ装置は、油圧ポンプ14から吐出された圧油を、走行用レバー・ペダル10および作業用レバー11の操作に応じてブームシリンダ4E等の複数の油圧アクチュエータ(油圧シリンダ、油圧モータ)に分配する。これにより、油圧ショベル1は、走行、旋回、掘削等を行うことができる。
【0028】
作動油タンク15は、旋回フレーム5の前部右側に設けられている。作動油タンク15は、後述のガス容器取付ブラケット26の右側に位置して右縦板5Cと右サイドフレーム5Gとの間に配置されている。作動油タンク15は、上下方向に延びる直方体の容器からなり、油圧ショベル1に搭載された各種の油圧アクチュエータに供給される作動油を貯留している。
【0029】
外装カバー16は、フロア部材8(換言すれば、キャブボックス9)の周囲に位置して旋回フレーム5上に設けられている。外装カバー16は、旋回フレーム5上に搭載された熱交換器、作動油タンク15等の機器を覆う。外装カバー16は、フロア部材8の仕切り板部8F(換言すれば、キャブボックス9の右側面9D)よりも右側で熱交換器等の機器を覆う後カバー16Aと、旋回フレーム5の右後側に搭載される機器を後カバー16Aと共に覆う上カバー16Bと、後カバー16Aよりも前側に位置して作動油タンク15等の機器を覆う前カバー16C(
図2)と、作動油タンク15とガス容器25とを仕切る仕切りカバー16Dとを含んで構成されている。ガス容器25は、外装カバー16から露出する。即ち、ガス容器25は、外装カバー16で覆われていない。ガス容器25は、フロア部材8の仕切り板部8F(キャブボックス9の右側面9D)と外装カバー16(後カバー16A、前カバー16C、仕切りカバー16D)とにより区画される略直方体状の空間(ガス容器載置空間)に配置され、外部に露出する。なお、ガス容器25を覆うためのガス容器カバーを設けてもよい。
【0030】
フロア部材8は、ガスエンジン13の前側および上側を覆った状態で、旋回フレーム5の左側に配置されている。フロア部材8は、前側が傾転支持部材18を介して旋回フレーム5の前側位置に回動(チルトアップ、チルトダウン)可能に支持される。フロア部材8は、後側がカウンタウエイト12の上部に設けられたフロア支持部材21に取付け、取外し可能に支持される。
【0031】
図3および
図4に示すように、フロア部材8は、足乗せ部8Aと、立上がり部8Bと、運転席取付部8Cと、背板部8Dと、取付板部8Eと、壁面部としての仕切り板部8Fとを含んで構成されている。足乗せ部8Aは、オペレータが足を乗せる部位となり、フロア部材8とキャブボックス9とにより囲まれる運転室の底部を構成している。足乗せ部8Aは、傾転支持部材18を介して旋回フレーム5に支持される。この場合、足乗せ部8Aは、旋回フレーム5の前後方向の前側で幅方向(左右方向)の一側となる左側(オペレータが出入りする乗降口側)に配置されている。即ち、足乗せ部8Aは、旋回フレーム5の幅方向(左右方向)に関して作業装置支持部5Hと左サイドフレーム5Fとの間に配置されている。立上がり部8Bは、足乗せ部8Aの後部から上方に立上がっている。運転席取付部8Cは、立上がり部8Bの上端からガスエンジン13の上側に向けて後側に延びている。運転席取付部8Cには、運転席7が取付けられる。背板部8Dは、運転席取付部8Cの後端から斜め上向きに延びている。
【0032】
取付板部8Eは、背板部8Dの上端から後側に延びている。取付板部8Eは、カウンタウエイト12に防振部材22およびフロア支持部材21を介して取付けられる。仕切り板部8Fは、足乗せ部8Aの右側、即ち、オペレータが出入りする乗降口とは左右方向の反対側から上方に立上がると共に、前後方向に延びている。後述するように、フロア部材8は、足乗せ部8Aから仕切り板部8Fよりも右側に延びる第1延長部としてのガス容器載置部8Gを有している。ガス容器載置部8Gには、ガス容器取付ブラケット26を介してガス容器25が載置される。
【0033】
次に、旋回フレーム5およびカウンタウエイト12に対するフロア部材8の支持構造について説明する。
【0034】
先ず、フロア部材8の前側の支持構造について説明する。フロア部材8(足乗せ部8A)の前側と旋回フレーム5の前側との間には、傾転支持部材18が設けられている。傾転支持部材18は、旋回フレーム5の左前梁5J、上板5Eおよび右前ブラケット5Kにそれぞれ配置されている。傾転支持部材18は、旋回フレーム5の幅方向(左右方向)に延びる軸線を回動軸線としてフロア部材8(およびキャブボックス9)の前側を旋回フレーム5に対してチルトアップ、チルトダウン(傾転)可能に取付けている。
図6に示すように、傾転支持部材18は、旋回フレーム5(左前梁5J、上板5E、右前ブラケット5K)にボルト19によって取付けられるフレーム側ブラケット18Aと、フレーム側ブラケット18Aに対応するようにフロア部材8(足乗せ部8A)に取付けられたフロア側ブラケット18Bと、フレーム側ブラケット18Aに設けられた弾性部材としての防振ゴム18Cと、防振ゴム18Cを介してフレーム側ブラケット18Aとフロア側ブラケット18Bとを回動可能(傾転可能)に連結する連結ピン18Eとを備えている。
【0035】
フレーム側ブラケット18Aは、旋回フレーム5にボルト19を用いて固定される取付台18A1と、取付台18A1上に設けられ中心軸線が旋回フレーム5の幅方向(左右方向)となる筒状の支持筒部18A2とにより構成されている。フロア側ブラケット18Bは、一対の板体18B1により構成されている。一対の板体18B1は、フレーム側ブラケット18Aの支持筒部18A2の幅寸法よりも大きな離間寸法をもって平行に配設されている。フロア側ブラケット18Bの板体18B1のほぼ中央部には、連結ピン18Eの端部側を支持するピン支持孔18B2が形成されている。また、一方の板体18B1には、回り止めボルト18Fが螺合されるねじ孔18B3が形成されている。
【0036】
防振ゴム18Cは、例えば弾性を有するゴム材料を用いて厚肉な円筒状に形成されている。防振ゴム18Cは、フレーム側ブラケット18Aの支持筒部18A2内に挿嵌されている。防振ゴム18Cの中心部は、連結ピン18Eが挿通されるピン挿通孔18C1となっている。防振ゴム18Cは、フレーム側ブラケット18Aとフロア側ブラケット18B(連結ピン18E)との間で弾性変形することにより、旋回フレーム5からフロア部材8側に伝わる振動を吸収し、緩和する。
【0037】
連結ピン18Eは、フレーム側ブラケット18Aの支持筒部18A2に挿嵌された防振ゴム18Cのピン挿通孔18C1を貫通し、両端部がフロア側ブラケット18Bの板体18B1のピン支持孔18B2に取付けられている。板体18B1と防振ゴム18Cとの間には、ワッシャ18Gが配置されている。また、連結ピン18Eの一端側には、径方向に延びる回り止め部18E1が設けられている。回り止め部18E1には、回り止めボルト18Fが挿通される挿通孔18E2が形成されている。回り止めボルト18Fは、連結ピン18Eを防振ゴム18Cのピン挿通孔18C1および板体18B1のピン支持孔18B2に挿通した状態で、連結ピン18Eの回り止め部18E1の挿通孔18E2に挿通され、かつ、板体18B1のねじ孔18B3に螺合される。
【0038】
このように、傾転支持部材18は、ボルト19によって旋回フレーム5に取付けられている。フロア部材8の足乗せ部8Aの構成部品であるフロア側ブラケット18Bには、ピン支持孔18B2が設けられている。ピン支持孔18B2は、傾転支持部材18の防振ゴム18Cのピン挿通孔18C1と同軸位置にワッシャ18Gを介して配置される。連結ピン18Eは、ピン支持孔18B2およびピン挿通孔18C1を貫通するように挿入されている。連結ピン18Eの回り止め部18E1の挿通孔18E2には、回り止めボルト18Fが挿入される。フロア部材8は、回り止めボルト18Fをフロア側ブラケット18Bのねじ孔18B3に締め付けることで、傾転支持部材18により旋回フレーム5に傾転可能、かつ、防振状態で支持される。フロア部材8上には、キャブボックス9が固定される。
【0039】
次に、フロア部材8の後側の支持構造について説明する。フロア部材8の後側(取付板部8E)は、
図4および
図5に示すフロア支持部材21に支持される。フロア支持部材21は、カウンタウエイト12に設けられた防振部材ブラケット12Bに防振部材22を介して支持されている。これにより、フロア部材8の取付板部8Eは、フロア支持部材21、防振部材22、防振部材ブラケット12B、カウンタウエイト12を介して旋回フレーム5に支持される。即ち、フロア部材8は、前側となる足乗せ部8Aが傾転支持部材18の防振ゴム18Cを介して旋回フレーム5に弾性的に支持されると共に、後側となる取付板部8Eがフロア支持部材21と防振部材ブラケット12B(カウンタウエイト12)との間に設けられる防振部材22を介して旋回フレーム5に弾性的に支持される。
【0040】
図5に示すように、防振部材ブラケット12Bは、カウンタウエイト12の上側に設けられている。防振部材ブラケット12Bは、カウンタウエイト12に沿うように湾曲した略長方形の板材からなる取付け部12B1を備えている。取付け部12B1には、防振部材22が取付けられる防振部材取付孔12B2が長さ方向に離間して2つ設けられている。防振部材ブラケット12Bは、カウンタウエイト12に図示しないボルト等を用いて固定されている。この場合、防振部材ブラケット12Bは、カウンタウエイト12に弾性部材を介することなく直接的に固定されている。即ち、防振部材ブラケット12Bは、カウンタウエイト12および旋回フレーム5と同一振動系となっている。
【0041】
図4および
図5に示すように、フロア支持部材21は、防振部材ブラケット12Bの上側に配置されている。フロア支持部材21は、フロア部材8がチルトダウンしたときにフロア部材8の取付板部8Eが取付けられる。フロア支持部材21は、左右方向に延びる略長方形状の板材からなり、左右両側位置には、防振部材ブラケット12Bの防振部材取付孔12B2に対応してボルト取付孔21Aが形成されている。このボルト取付孔21Aには、防振部材22をフロア支持部材21と防振部材ブラケット12Bとの間で連結するボルト22Eが挿通される。また、フロア支持部材21には、フロア部材8の取付板部8Eをフロア支持部材21に固定するためのボルト(図示せず)が螺合されるねじ穴21B(
図4)が設けられている。フロア部材8の取付板部8Eは、フロア支持部材21のねじ穴21Bに螺合されるボルトを用いてフロア支持部材21に取付け取外し可能に固定される。
【0042】
防振部材22は、フロア支持部材21をカウンタウエイト12の防振部材ブラケット12B上に弾性的に支持する。防振部材22は、弾性部材としての上側弾性体22Aおよび下側弾性体22Bと、スリーブ22Cと、ストッパ板22Dと、ボルト22Eおよびナット22Fとを含んで構成されている。上側弾性体22Aは、フロア支持部材21と防振部材ブラケット12Bとの間に設けられている。上側弾性体22Aの下端側は、防振部材ブラケット12Bの防振部材取付孔12B2に嵌合している。上側弾性体22Aは、例えばゴム等の弾性材料を用いて円筒状に形成されている。上側弾性体22A内には、スリーブ22Cおよびボルト22Eが挿通される。
【0043】
下側弾性体22Bは、防振部材ブラケット12Bの下面側に設けられている。下側弾性体22Bの上端側は、防振部材ブラケット12Bの防振部材取付孔12B2に嵌合している。下側弾性体22Bは、防振部材ブラケット12Bを挟んで上側弾性体22Aと上下方向で対をなしている。下側弾性体22Bは、上側弾性体22Aと同様にゴム等の弾性材料を用いて円筒状に形成されている。スリーブ22Cは、円筒状の筒体であり、上側弾性体22Aおよび下側弾性体22Bに挿通されている。スリーブ22Cは、内周側に挿通したボルト22Eにナット22Fを螺合することによりフロア支持部材21に固定される。
【0044】
上側弾性体22Aの上側と下側弾性体22Bの下側とには、それぞれストッパ板22Dが配置されている。ストッパ板22Dは、コ字型の板体として形成されている。上側のストッパ板22Dは、上側弾性体22Aとフロア支持部材21とに挟持される。また、下側のストッパ板22Dは、ボルト22Eに螺合したナット22Fと下側弾性体22Bとにより挟持される。
【0045】
フロア支持部材21は、上側弾性体22Aと下側弾性体22Bとを含んで構成される防振部材22を介して、カウンタウエイト12の防振部材ブラケット12B上に弾性的に取付けられる。防振部材22は、油圧ショベル1の作業時等に、旋回フレーム5(カウンタウエイト12)からフロア支持部材21(フロア部材8)に伝わる振動を、上側弾性体22Aおよび下側弾性体22Bの弾性変形によって吸収して緩和する。即ち、防振部材22は、カウンタウエイト12の防振部材ブラケット12Bを上側弾性体22Aと下側弾性体22Bとにより上下方向に挟む形で配置される。そして、防振部材22は、ボルト22Eとナット22Fとの締め付けに基づいてフロア支持部材21に固定される。フロア支持部材21には、フロア部材8の取付板部8Eが図示しないボルト等を用いて取付けられる。これにより、フロア部材8の後側は、カウンタウエイト12延いては旋回フレーム5に防振状態で支持される。
【0046】
ところで、前述の特許文献1および特許文献2には、液化石油ガス(LPG:Liquefied Petroleum Gas)、天然ガス(NG:Natural Gas)等を燃料とするガスエンジンを搭載した油圧ショベルが記載されている。ガスエンジンが搭載された油圧ショベルは、ガス燃料を貯えるためのガス容器(ガスボンベ)を備えている。ガス容器は、強度が高い金属製の容器からなり、ガス容器の内部には、例えば液状となったガス燃料が充填されている。ガス容器のガス供給部は、燃料供給ラインを介してガスエンジンに接続される。ここで、油圧ショベル等の建設機械は、走行、掘削作業等に伴って大きく振動する。従来技術の場合、油圧ショベルの走行、掘削作業等に伴う振動がガス容器に直接的に伝達される可能性がある。そこで、実施形態では、ガス容器25に伝達される振動を低減すべく、防振支持されたフロア部材8にガス容器25を搭載している。以下、この点について説明する。
【0047】
図1に示すように、建設機械としての油圧ショベル1は、走行可能な車体としての下部走行体2および上部旋回体3と、上部旋回体3に取付けられた作業装置4とを備えている。
図2ないし
図8に示すように、上部旋回体3は、作業装置4が取付けられた車体フレームとしての旋回フレーム5と、旋回フレーム5に搭載されたガスエンジン13と、旋回フレーム5に弾性部材としての防振ゴム18C、上側弾性体22Aおよび下側弾性体22Bを介して支持されたフロア部材8とを備えている。この上で、
図2および
図3に示すように、フロア部材8には、ガスエンジン13のガス燃料を貯留するガス容器25および運転席7が載置されている。
【0048】
ここで、ガス容器25は、人手によって運搬可能な密閉容器からなり、ガスエンジン13に供給されるLPG等のガス燃料が貯留されている。ガス容器25は、密閉された円筒体からなる容器本体25Aと、容器本体25Aの長さ方向の一端側の中心部に設けられたコック25Bと、コック25Bの周囲を取囲むように容器本体25Aに設けられた半円筒状の一対のプロテクタ25Cと、プロテクタ25Cの先端に設けられたリング部材25Dとを含んで構成されている。
【0049】
コック25Bには、図示しないホースが接続される。即ち、コック25Bは、ホースを含んで構成される燃料供給ラインを介してガスエンジン13に接続される。コック25Bは、ガスエンジン13に供給されるガス燃料の供給量を調整する。プロテクタ25Cの周方向の複数個所、例えばコック25Bを挟んで径方向で対面する2箇所には、開口部25Eが形成されている。これにより、リング部材25Dのうち開口部25Eに対応する2箇所は把手25Fとなり、作業者は、把手25Fを把持した状態でガス容器25を運搬する。
【0050】
実施形態では、ガス容器25は、フロア部材8の仕切り板部8F(キャブボックス9の右側面9D)と作動油タンク15を囲むように形成される外装カバー16(前カバー16C、仕切りカバー16D)との間に配置されている。この場合、ガス容器25は、フロア部材8の足乗せ部8Aと同一部材上にガス容器取付ブラケット26を介して搭載されている。このために、フロア部材8は、旋回フレーム5の作業装置4側に設けられた足乗せ部8Aと、足乗せ部8Aから旋回フレーム5の幅方向の他側となる右側(オペレータが出入りする乗降口とは左右方向の反対側)に延び、ガス容器25が載置された第1延長部としてのガス容器載置部8Gとを備えている。
【0051】
また、フロア部材8は、足乗せ部8Aから上方に向けて立ち上がった壁面部としての仕切り板部8Fを備えている。
図8に示すように、ガス容器載置部8Gは略長方形状の板体としてフロア部材8と一体に形成されている。ガス容器載置部8Gの前後方向の長さ寸法は、ガス容器25の全長とほぼ等しい。ガス容器載置部8Gは、仕切り板部8Fを挟んで運転席7とは反対側に配置されている。これにより、ガス容器25は、運転席7の側方(オペレータが出入りする乗降口とは左右方向の反対側となる右側方)に配置されている。即ち、ガス容器25は、仕切り板部8Fを挟んで運転席7とは反対側に配置されている。
【0052】
ガス容器25は、フロア部材8(ガス容器載置部8G)に設けられたガス容器取付ブラケット26に取付け取外し可能に載置されている。ガス容器取付ブラケット26は、ガス容器25が取付けられた取付け台27と、取付け台27をフロア部材8(ガス容器載置部8G)に対して移動させるスライド機構28とを備えている。スライド機構28は、取付け台27を旋回フレーム5の外側に向けて移動(スライド)させる。取付け台27には、取付け台27を上下方向に貫通する貫通孔31(
図11)が設けられている。
【0053】
【0054】
ガス容器取付ブラケット26は、フロア部材8のガス容器載置部8Gに設けられている。ガス容器取付ブラケット26は、取付け台27と、取付け台27と共にガス容器25をガス容器載置部8Gに対して水平方向、より具体的には、旋回フレーム5の前後方向に移動するスライド機構28とを備えている。また、ガス容器取付ブラケット26は、取付け台27にガス容器25を取付け取外し可能に固定するための固定バンド29および固定フック30を備えている。
【0055】
ガス容器取付ブラケット26は、スライド機構28により取付け台27を、ガス容器25の取付け取外しをし易い位置に移動させることが可能となっている。即ち、ガス容器25の取付け取外しは、スライド機構28により取付け台27を旋回フレーム5の前側に移動させた状態で行うことができる。後述するように、ガス容器25は、固定バンド29および固定フック30で取付け台27に拘束されることにより、ガス容器取付ブラケット26に固定される。
【0056】
ここで、スライド機構28は、フロア部材8のガス容器載置部8Gの上面側に取付けられている。即ち、スライド機構28は、ガス容器載置部8Gの上面に固定された左右一対(2列)のレール28Aと、レール28Aに沿って移動する左右一対(2列)のスライダ28Cとを有している。一対のレール28Aは、ガス容器載置部8Gと同等な前後方向の長さ寸法を有し、左右方向に一定の間隔を保った状態でガス容器載置部8Gの上面に固定され、前後方向に延びている。一対のレール28Aの上面側には、長さ方向の全域に亘って上側が開口した溝状の切欠部28Bが形成されている。
【0057】
一対のスライダ28Cは、レール28Aと同等な前後方向の長さ寸法を有し、レール28Aの上面に移動可能に取付けられた状態で前後方向に延びている。一対のスライダ28Cの下面側には前後方向に延びる直線状の突起部28Dが設けられ、この突起部28Dは、レール28Aの切欠部28Bに摺動可能に嵌合している。また、一対のスライダ28Cの上面側には、取付け台27の脚部27Aが固定されている。従って、スライド機構28のスライダ28Cは、突起部28Dがレール28Aの切欠部28Bに嵌合することにより、取付け台27と共にレール28Aに沿って前後方向に移動する。
【0058】
取付け台27は、スライド機構28のスライダ28Cに取付けられている。取付け台27は、スライド機構28のスライダ28Cの上面に固定される脚部27Aと、脚部27Aの上側に固定されガス容器25を横向きに寝かした状態で支持する支持部27Bとにより構成されている。脚部27Aは、スライダ28Cの上面に溶接等により固定され前後方向に延びる下側固定板27A1と、下側固定板27A1と同様に前後方向に延びると共に下側固定板27A1から上方に向けて立ち上がる立ち上がり板27A2と、立ち上がり板27A2と同様に前後方向に延びると共に立ち上がり板27A2の上端からガス容器25の周面に接する方向となる斜め上側に延びる上側固定板27A3とを備えている。
【0059】
脚部27Aを構成する下側固定板27A1、立ち上がり板27A2および上側固定板27A3は、板材を折り曲げ形成することにより一体に形成されている。上側固定板27A3には、支持部27Bの下面が固定される。
図9および
図10に示すように、上側固定板27A3の下面には、前後方向に離間する3個所位置に、固定バンド29の取付け具29Bを引っ掛けるフック27A4が設けられている。
【0060】
支持部27Bは、全体として下側に向けて凹む谷状の板体として形成されている。即ち、支持部27Bは、前後方向に延びる底部27B1と、底部27B1と同様に前後方向に延びると共に底部27B1から互いに離れる方向に斜め上側に延びる一対の板部27B2とを備えている。板部27B2は、脚部27Aの上側固定板27A3に溶接等により固定される。支持部27Bの底部27B1には、長さ方向に離間して上下方向に貫通する複数の貫通孔31が設けられている。また、支持部27Bの板部27B2と脚部27Aの上側固定板27A3とにも、長さ方向に離間して上下方向に互いに貫通する複数の貫通孔31が設けられている。貫通孔31は、取付け台27(支持部27B)の排水口となっている。
【0061】
固定バンド29は、前後方向に離間して複数(例えば3個)設けられている。固定バンド29は、ガス容器25の外周に巻き付けられるベルト部29Aと、ベルト部29Aの両端に設けられ取付け台27(脚部27A)のフック27A4に係合する取付け具29Bとを有している。固定バンド29は、取付け台27にガス容器25を載置した状態で、ベルト部29Aをガス容器25に架け渡し、かつ、取付け具29Bをフック27A4に係合する。これにより、ガス容器25は、取付け台27に固定バンド29によって拘束される。
【0062】
固定フック30は、ガス容器25の把手25Fとガス容器載置部8Gとを連結する。固定フック30は、全体としてJ字状の棒状体として形成されており、一端側(上端側)がガス容器25の把手25Fに引っ掛けられる鉤部30Aとなり、他端側(下端側)がガス容器載置部8Gの固定穴(図示省略)に挿通され固定ナット30Cが螺着される雄ねじ30Bとなっている。
【0063】
図3に示すように、ガス容器25は、ガス容器取付ブラケット26の取付け台27上で固定バンド29によって拘束された状態で、スライド機構28によって旋回フレーム5の前後方向の後側に移動される。この状態で、
図2および
図10に示すように、固定フック30の雄ねじ30Bをガス容器載置部8Gの固定穴に挿通しつつ鉤部30Aをガス容器25の把手25Fに係合させ、かつ、雄ねじ30Bに固定ナット30Cを螺着する。これにより、ガス容器25は、スライド機構28によって取付け台27と共に旋回フレーム5の前後方向の前側に移動することが制限される。
【0064】
即ち、ガス容器25は、取付け台27に固定バンド29によって拘束されると共に、固定フック30によってガス容器載置部8Gと連結されることにより、スライド機構28による移動が制限された状態でガス容器載置部8Gに載置される。これにより、ガス容器25は、フロア部材8のガス容器載置部8Gにガス容器取付ブラケット26によって安定して支持される。一方、ガス容器25を交換するときは、固定フック30の雄ねじ30Bから固定ナット30Cを取外し、固定フック30をガス容器25およびガス容器載置部8Gから取外す。
【0065】
そして、スライド機構28により取付け台27を旋回フレーム5の前後方向の前側に移動する。この状態で、取付け台27から固定バンド29を取外すことにより、ガス容器取付ブラケット26からガス容器25を取外すことができる状態となる。今まで使用していたガス容器25を取外したら、新しいガス容器25を取付け台27に取付ける。この状態で、固定バンド29を用いてガス容器25を取付け台27に拘束する。そして、スライド機構28により取付け台27と共にガス容器25を旋回フレーム5の前後方向の後側に移動したら、固定フック30によりガス容器25の把手25Fとフロア部材8(ガス容器載置部8G)とを連結する。
【0066】
このように、実施形態によれば、ガス容器25は、ガス容器取付ブラケット26を介してフロア部材8(ガス容器載置部8G)に載置される。このとき、ガス容器25は、ガス容器取付ブラケット26の取付け台27に固定バンド29によって固定される。ガス容器取付ブラケット26は、取付け台27、スライド機構28、固定バンド29および固定フック30を備えている。ガス容器取付ブラケット26は、スライド機構28のレール28Aをフロア部材8(ガス容器載置部8G)に溶接することにより、または、ボルト・ナットを用いて締結することにより、固定されている。
【0067】
ガス容器25は、固定フック30をガス容器25の把手25Fに引っ掛け、固定フック30の固定ナット30Cをフロア部材8(ガス容器載置部8G)と共締めになる形で締め付けることにより、前後方向の動きが制限される。さらに、固定バンド29は、取付け台27のフック27A4に引っ掛けられることにより、自身の張力によりガス容器25を取付け台27に抑え付ける。また、取付け台27には、水抜き孔となる貫通孔31が設けられているため、ガス容器25の搭載面に水が溜まることを抑制できる。
【0068】
実施の形態による油圧ショベル1は、上述の如き構成を有するもので、次に、その動作について説明する。
【0069】
油圧ショベル1を用いて掘削作業等を行う場合には、ガス容器25は旋回フレーム5の前後方向の後側(旋回フレーム5の中央側)となる容器固定位置に固定フック30によって位置決めされている。この状態で、オペレータは、キャブボックス9内に搭乗してガスエンジン13を作動させる。オペレータが走行用レバー・ペダル10を操作すると、油圧ポンプ14からコントロールバルブ装置を介して下部走行体2の走行用油圧モータに圧油が供給される。これにより、油圧ショベル1を走行させることができる。また、オペレータが作業用レバー11を操作すると、油圧ポンプ14からコントロールバルブ装置を介して旋回用油圧モータ、スイングシリンダ、ブームシリンダ4E、アームシリンダ4F、バケットシリンダ4Gに圧油が供給される。これにより、上部旋回体3を旋回させつつ作業装置4によって土砂等の掘削作業を行うことができる。
【0070】
次に、ガス燃料を補充するために新たなガス容器25に交換する場合には、ガス容器取付ブラケット26の取付け台27とフロア部材8(ガス容器載置部8G)とを連結する固定フック30を取外す。そして、スライド機構28によりガス容器25を取付け台27と共に、旋回フレーム5の前後方向の前側(外側:旋回フレーム5の中央から遠ざかる側)となる容器取外し位置に移動させる。このとき、ガス容器25は、取付け台27に固定バンド29によって固定されているため、ガス容器25を取付け台27と共に安定して容器取外し位置に移動させることができる。
【0071】
ガス容器25を容器取外し位置に移動させたら、取付け台27から固定バンド29を取外し、取付け台27からガス容器25を取外す。そして、交換すべき新たなガス容器25を取付け台27に載置したら、固定バンド29をガス容器25に巻き付けつつ取付け台27のフック27A4に引っ掛ける。これにより、ガス容器25が取付け台27上で拘束される。この状態で、スライド機構28によりガス容器25を取付け台27と共に、旋回フレーム5の前後方向の後側(旋回フレーム5の中央側)となる容器固定位置に移動させる。ガス容器25を容器固定位置に移動させたら、ガス容器25の把手25Fとフロア部材8(ガス容器載置部8G)とを固定フック30によって連結する。
【0072】
ここで、実施形態によれば、旋回フレーム5に防振ゴム18C、上側弾性体22Aおよび下側弾性体22Bを介して支持されるフロア部材8にガス容器25および運転席7が載置されている。即ち、ガス容器25は、旋回フレーム5に対して防振ゴム18C、上側弾性体22Aおよび下側弾性体22Bによって防振支持されるフロア部材8に運転席7と共に載置されている。このため、ガス容器25は、運転席7と共に防振支持される。これにより、油圧ショベル1が悪路を走行したときにも、ガス容器25の振動を抑制できる。即ち、ガス容器25への振動負荷を低減できる。しかも、ガス容器25は、運転席7と同一振動系となるため、オペレータは、ガス容器25に加わる振動と同一の振動を体感することができる。このため、オペレータは、例えば作業中に作業装置4の衝突、干渉等に伴って大きな振動を感じたときに、ガス容器25に対して大きな振動が加わったことを速やかに認識することができる。その後、オペレータは、ガス容器25の状況を確認することで、ガス容器25に大きな振動が加わることによって生じた不具合の状態のまま運転が継続されることを抑制できる。
【0073】
実施形態によれば、フロア部材8の足乗せ部8Aから旋回フレーム5の幅方向に延びるガス容器載置部8Gにガス容器25が載置される。このため、足乗せ部8Aから延びるガス容器載置部8Gにガス容器25を安定して防振支持できる。
【0074】
実施形態によれば、ガス容器25は、運転席7の側方に配置されている。このため、オペレータからのガス容器25の視認性を向上できる。
【0075】
実施形態によれば、ガス容器25は、フロア部材8の仕切り板部8Fを挟んで運転席7とは反対側に配置されている。このため、オペレータとガス容器25との間を、仕切り板部8Fにより区画することができる。また、オペレータは、ガス容器25を仕切り板部8F越しに視認することができる。
【0076】
実施形態によれば、ガス容器25は、ガス容器取付ブラケット26に取付けられる。このため、ガス容器取付ブラケット26を用いてガス容器25をフロア部材8に安定して支持することができる。
【0077】
実施形態によれば、ガス容器25が取付けられる取付け台27をフロア部材8に対して移動させるスライド機構28を備えている。このため、ガス容器25の交換(取付け取外し)を行うときに、取付け台27をフロア部材8に対して移動させることができ、ガス容器25の交換の容易化を図ることができる。
【0078】
実施形態によれば、スライド機構28は、取付け台27を旋回フレーム5の外側(旋回フレーム5の中央から遠ざかる側)に向けて移動(スライド)させる。このため、取付け台27を旋回フレーム5の外側に移動させた状態で、ガス容器25を交換することができる。このため、ガス容器25の交換を容易に行うことができる。
【0079】
実施形態によれば、取付け台27に貫通孔31が設けられている。このため、取付け台27に雨水等が溜まることを抑制でき、ガス容器25の周囲の排水性を向上できる。
【0080】
なお、実施の形態では、ガス容器25をフロア部材8の足乗せ部8Aから延びるガス容器載置部8Gに載置する構成とした場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、フロア部材8の取付板部8E、または、取付板部8Eから(例えば、後方に)延びるガス容器載置部に載置する構成としてもよい。
【0081】
実施の形態では、ガス容器25をフロア部材8の足乗せ部8Aから延びるガス容器載置部8Gに載置する構成とした場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、フロア部材8の足乗せ部8Aから前側(作業装置4側)に延びるガス容器載置部にガス容器を載置する構成としてもよい。即ち、フロア部材は、車体フレームの作業装置側に設けられる足乗せ部と、足乗せ部から作業装置側に延び、ガス容器が載置される第2延長部(ガス容器載置部)とを備える構成としてもよい。
【0082】
この場合は、フロア部材の足乗せ部から作業装置側に延びる第2延長部(ガス容器載置部)にガス容器が載置される。このため、足乗せ部から延びる第2延長部(ガス容器載置部)にガス容器を安定して防振支持できる。延長部(ガス容器載置部)は、フロア部材と一体部材としてもよいし、フロア部材とは別体とすると共にこの別体の延長部(ガス容器載置部)をフロア部材に固定する構成としてもよい。
【0083】
実施の形態では、ガス容器25をフロア部材8(ガス容器載置部8G)に設けたガス容器取付ブラケット26に載置する構成とした場合を例に挙げて説明した。即ち、実施の形態では、ガス容器25をフロア部材8(ガス容器載置部8G)にガス容器取付ブラケット26を介して載置する構成とした。しかし、これに限らず、例えば、フロア部材(ガス容器載置部)にガス容器取付ブラケットを介すことなく直接的にガス容器を載置する構成としてもよい。また、ガス容器は、例えば、フロア部材に直接固定された部材、即ち、フロア部材と同一振動系の部材に直接またはガス容器取付ブラケットを介して載置してもよい。いずれの場合も、フロア部材に対してガス容器を取付け取外し可能に載置することが好ましい。
【0084】
実施の形態では、スイング式の作業装置4を備えた油圧ショベル1を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、モノブーム式の作業装置を備えた油圧ショベル、オフセット式の作業装置を備えた油圧ショベル等、他の型式の作業装置(フロント装置)を備えた油圧ショベルにも適用することができる。また、作業装置4の作業具をバケット4Dとした場合を例に挙げて説明したが、例えば、圧砕機等の他の作業具を備えた作業装置を用いてもよい。
【0085】
実施の形態では、キャブボックス9を備えたキャブ仕様の油圧ショベル1を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、キャノピ仕様の油圧ショベルを用いてもよい。
【0086】
実施の形態では、小型の油圧ショベル1を例に挙げて説明したが、例えば、中型以上の油圧ショベルに適用してもよい。また、車体を下部走行体2と上部旋回体3とにより構成した場合を例に挙げて説明したが、旋回体を有しない車体(例えば、前輪を有する前部車体と後輪を有する後部車体とを連結軸を介して屈曲可能に連結してなるアーティキュレート式の車体)としてもよい。
【0087】
実施の形態では、建設機械として油圧ショベル1を例に挙げて説明したが、これに限らず、例えばホイールローダ等の各種の建設機械に広く適用することができる。
【符号の説明】
【0088】
1 油圧ショベル(建設機械)
2 下部走行体(車体)
3 上部旋回体(車体)
4 作業装置
5 旋回フレーム(車体フレーム)
7 運転席
8 フロア部材
8A 足乗せ部
8F 仕切り板部(壁面部)
8G ガス容器載置部(第1延長部)
13 ガスエンジン
18C 防振ゴム(弾性部材)
22A 上側弾性体(弾性部材)
22B 下側弾性体(弾性部材)
25 ガス容器
26 ガス容器取付ブラケット
27 取付け台
28 スライド機構
31 貫通孔