(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023146310
(43)【公開日】2023-10-12
(54)【発明の名称】2液硬化型ポリウレア樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
C08G 18/32 20060101AFI20231004BHJP
C08G 18/10 20060101ALI20231004BHJP
C08G 18/79 20060101ALI20231004BHJP
【FI】
C08G18/32 096
C08G18/10
C08G18/79 020
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022053437
(22)【出願日】2022-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103517
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 寛之
(74)【代理人】
【識別番号】100149607
【弁理士】
【氏名又は名称】宇田 新一
(72)【発明者】
【氏名】片岡 康彦
(72)【発明者】
【氏名】川那部 恒
【テーマコード(参考)】
4J034
【Fターム(参考)】
4J034BA08
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4J034RA10
(57)【要約】
【課題】適度なポットライフを有し、かつ、機械物性に優れる硬化物を得ることができる2液硬化型ポリウレア樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】2液硬化型ポリウレア樹脂組成物が、A液およびB液を備える。A液が、脂肪族ポリイソシアネートのイソシアネート基末端プレポリマーと、脂肪族ポリイソシアネート誘導体と、水と反応することによって活性水素基を生じさせる潜在性活性水素化合物とを含む。脂肪族ポリイソシアネート誘導体が、イソシアヌレート誘導体を含む。B液は、活性水素化合物を含む。活性水素化合物が、ポリアミンからなる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
A液およびB液を備える2液硬化型ポリウレア樹脂組成物であって、
前記A液が、
脂肪族ポリイソシアネートのイソシアネート基末端プレポリマーと、
脂肪族ポリイソシアネート誘導体と、
水と反応することによって活性水素基を生じさせる潜在性活性水素化合物とを含み、
前記脂肪族ポリイソシアネート誘導体が、イソシアヌレート誘導体を含み、
前記B液は、活性水素化合物を含み、
前記活性水素化合物が、ポリアミンからなる、
2液硬化型ポリウレア樹脂組成物。
【請求項2】
前記脂肪族ポリイソシアネートの前記イソシアネート基末端プレポリマーが、
直鎖脂肪族ポリイソシアネートのイソシアネート基末端プレポリマーであり、
前記脂肪族ポリイソシアネート誘導体が、
脂環族ジイソシアネートのイソシアヌレート誘導体である、
請求項1に記載の2液硬化型ポリウレア樹脂組成物。
【請求項3】
潜在性活性水素化合物は、脂肪族ポリイソシアネートと、N-ヒドロキシアルキルオキサゾリジンとの反応生成物である、
請求項1または2に記載の2液硬化型ポリウレア樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2液硬化型ポリウレア樹脂組成物に関し、詳しくは、建材に用いられる2液硬化型ポリウレア樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、各種施設の舗装材では、ポリウレタン樹脂および/またはポリウレア樹脂が使用されている。ポリウレタン樹脂および/またはポリウレア樹脂により舗装される被舗装物としては、例えば、床面、廊下面、ベランダ、駐車場および屋上屋根が挙げられる。ポリウレタン樹脂としては、例えば、A液およびB液を含有する2液硬化型ポリウレタン樹脂組成物が、知られている。
【0003】
このような2液硬化型ポリウレタン樹脂組成物としては、例えば、以下の2液硬化型ポリウレタン樹脂組成物が、提案されている。すなわち、A液が、トリレンジイソシアネートのイソシアネート基末端プレポリマー(TDI系プレポリマー)と、トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加体(TDIのTMP付加体)と、ウレタンポリオキサゾリジン化合物とを含む。B液が、ポリアミンと、ポリオール化合物と、モノオール化合物と、吸水性フィラーとを含む(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
このような2液硬化型ウレタン樹脂組成物では、A液とB液との混合時に、ウレタンポリオキサゾリジン化合物が、大気中の水と反応して、活性水素基(水酸基および/またはアミノ基)を生じさせる。
【0005】
そして、ポリイソシアネート成分に由来するイソシアネート基と、活性水素基(ポリオール化合物の水酸基、モノオール化合物の水酸基、および、ウレタンポリオキサゾリジン化合物に由来する活性水素基)とが、ウレタン化反応して、硬化物を生成させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の樹脂組成物を、舗装材以外の建材、例えば、目地材として用いることが検討される。しかし、上記の2液硬化型ウレタン樹脂組成物の硬化物は、そのような用途に要求される機械物性(とりわけ、破断伸び)を、満たさない場合がある。
【0008】
また、上記の樹脂組成物には、適度なポットライフを有することが要求される。
【0009】
本発明は、適度なポットライフを有し、かつ、機械物性に優れる硬化物を得ることができる2液硬化型ポリウレア樹脂組成物である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明[1]は、A液およびB液を備える2液硬化型ポリウレア樹脂組成物であって、前記A液が、脂肪族ポリイソシアネートのイソシアネート基末端プレポリマーと、脂肪族ポリイソシアネート誘導体と、水と反応することによって活性水素基を生じさせる潜在性活性水素化合物とを含み、前記脂肪族ポリイソシアネート誘導体が、イソシアヌレート誘導体を含み、前記B液は、活性水素化合物を含み、前記活性水素化合物が、ポリアミンからなる、2液硬化型ポリウレア樹脂組成物を、含んでいる。
【0011】
本発明[2]は、前記脂肪族ポリイソシアネートの前記イソシアネート基末端プレポリマーが、直鎖脂肪族ポリイソシアネートのイソシアネート基末端プレポリマーであり、前記脂肪族ポリイソシアネート誘導体が、脂環族ジイソシアネートのイソシアヌレート誘導体である、上記[1]に記載の2液硬化型ポリウレア樹脂組成物を、含んでいる。
【0012】
本発明[3]は、潜在性活性水素化合物は、脂肪族ポリイソシアネートと、N-ヒドロキシアルキルオキサゾリジンとの反応生成物である、上記[1]または[2]に記載の2液硬化型ポリウレア樹脂組成物を、含んでいる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の2液硬化型ポリウレア樹脂組成物は、A液およびB液を備える。そして、A液が、脂肪族ポリイソシアネートのイソシアネート基末端プレポリマーと、脂肪族ポリイソシアネート誘導体と、水と反応することによって活性水素基を生じさせる潜在性活性水素化合物とを含み、脂肪族ポリイソシアネート誘導体が、イソシアヌレート誘導体を含む。
【0014】
そのため、上記の2液硬化型ポリウレア樹脂組成物によれば、機械物性(とりわけ、破断伸び)に優れた硬化物を得ることができる。
【0015】
また、本発明の2液硬化型ポリウレア樹脂組成物では、B液が、活性水素化合物を含み、活性水素化合物が、ポリアミンからなる。
【0016】
そのため、上記の2液硬化型ポリウレア樹脂組成物は、適度なポットライフを有する。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の2液硬化型ポリウレア樹脂組成物は、別々に用意されたA液およびB液を備える2液キットの樹脂組成物である。
【0018】
A液およびB液は、ポリウレタン樹脂硬化物(以下、単に硬化物と称する。)を形成するための2液キットである。A液およびB液は、使用時に配合(混合)され、硬化することにより、硬化物を生じさせる。
【0019】
<A液>
A液は、2液硬化型ポリウレア樹脂組成物の主剤である。A液は、イソシアネート基末端プレポリマー(a成分)と、ポリイソシアネート誘導体(b成分)と、潜在性活性水素化合物(c成分)とを含有している。
【0020】
(a成分)脂肪族ポリイソシアネートのイソシアネート基末端プレポリマー
イソシアネート基末端プレポリマー(a成分)は、脂肪族ポリイソシアネートのイソシアネート基末端プレポリマーである。
【0021】
脂肪族ポリイソシアネートのイソシアネート基末端プレポリマーは、脂肪族ポリイソシアネートと、ポリオールとを、ウレタン化反応させることによって、調製される。
【0022】
脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、脂肪族ポリイソシアネート単量体、および、脂肪族ポリイソシアネート誘導体が挙げられる。
【0023】
脂肪族ポリイソシアネート単量体としては、例えば、鎖状脂肪族ポリイソシアネート単量体、および、脂環族ポリイソシアネート単量体が挙げられる。
【0024】
鎖状脂肪族ポリイソシアネート単量体としては、例えば、鎖状脂肪族ジイソシアネートが挙げられる。鎖状脂肪族ジイソシアネートとしては、例えば、1,3-プロパンジイソシアネート、1,2-プロパンジイソシアネート、1,4-ブタンジイソシアネート、1,3-ブタンジイソシアネート、1,2-ブタンジイソシアネート、1,5-ペンタンジイソシアネート(ペンタメチレンジイソシアネート、PDI)、1,6-ヘキサンジイソシアネート(ヘキサメチレンジイソシアネート、HDI)、2,6-ジイソシアネートメチルカプロエート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、および、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートが挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。
【0025】
脂環族ポリイソシアネート単量体としては、例えば、脂環族ジイソシアネートが挙げられる。脂環族ジイソシアネートとしては、例えば、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(H6XDI)、1,3-シクロヘキサンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアナトエチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(イソシアナトエチル)シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、2,2’-ジメチルジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、2,5-ジイソシアナトメチルビシクロ〔2,2,1〕-ヘプタン、2,6-ジイソシアナトメチルビシクロ〔2,2,1〕-ヘプタン(NBDI)、2-イソシアナトメチル2-(3-イソシアナトプロピル)-5-イソシアナトメチルビシクロ-〔2,2,1〕-ヘプタン、2-イソシアナトメチル-2-(3-イソシアナトプロピル)-6-イソシアナトメチルビシクロ-〔2,2,1〕-ヘプタン、2-イソシアナトメチル3-(3-イソシアナトプロピル)-5-(2-イソシアナトエチル)-ビシクロ-〔2,2,1〕-ヘプタン、2-イソシアナトメチル3-(3-イソシアナトプロピル)-6-(2-イソシアナトエチル)-ビシクロ-〔2,2,1〕-ヘプタン、2-イソシアナトメチル2-(3-イソシアナトプロピル)-5-(2-イソシアナトエチル)-ビシクロ-〔2,2,1〕-ヘプタン、および、2-イソシアナトメチル2-(3-イソシアナトプロピル)-6-(2-イソシアナトエチル)-ビシクロ-〔2,2,1〕-ヘプタンが挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。
【0026】
脂肪族ポリイソシアネート誘導体としては、例えば、(b成分)として後述する脂肪族ポリイソシアネート誘導体と同様の脂肪族ポリイソシアネート誘導体が、挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。
【0027】
脂肪族ポリイソシアネートは、単独使用または2種類以上併用できる。脂肪族ポリイソシアネートとして、好ましくは、鎖状脂肪族ポリイソシアネート単量体、および、鎖状脂肪族ポリイソシアネート誘導体が挙げられ、より好ましくは、鎖状脂肪族ジイソシアネート、および、鎖状脂肪族ジイソシアネート誘導体が挙げられ、さらに好ましくは、ヘキサメチレンジイソシアネート、および、ヘキサメチレンジイソシアネート誘導体が挙げられる。
【0028】
ポリオールとしては、例えば、マクロポリオールを含んでいる。マクロポリオールは、分子中に水酸基を2つ以上有し、比較的高分子量の有機化合物である。比較的高分子量とは、数平均分子量が400を超過することを示す。
【0029】
マクロポリオールとしては、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリウレタンポリオール、エポキシポリオール、植物油ポリオール、ポリオレフィンポリオール、アクリルポリオール、および、ビニルモノマー変性ポリオールが挙げられる。マクロポリオールとしては、好ましくは、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオールおよびポリカーボネートポリオールが挙げられる。
【0030】
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、ポリオキシアルキレンポリオールが挙げられる。ポリオキシアルキレンポリオールとしては、例えば、ポリオキシアルキレン(C2-3)ポリオール、および、ポリテトラメチレンエーテルポリオールが挙げられる。ポリオキシアルキレン(C2-3)ポリオールとしては、例えば、ポリオキシエチレンポリオール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシトリメチレングリコールおよび、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレン(ランダム/ブロック)共重合体が挙げられる。
【0031】
ポリエステルポリオールとしては、例えば、縮合ポリエステルポリオールおよび開環ポリエステルポリオールが挙げられる。縮合ポリエステルポリオールとしては、例えば、アジペート系ポリエステルポリオール(例えば、ポリブチレンアジペート)およびフタル酸系ポリエステルポリオールが挙げられる。開環ポリエステルポリオールとしては、例えば、ラクトンベースポリエステルポリオールが挙げられ、より具体的には、ポリカプロクトンポリオールが挙げられる。
【0032】
ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、後述の低分子量ポリオールを開始剤とするエチレンカーボネートの開環重合物が挙げられる。
【0033】
これらマクロポリオールは、単独使用または2種類以上併用できる。マクロポリオールとして、好ましくは、ポリエーテルポリオールが挙げられ、より好ましくは、ポリオキシプロピレングリコールが挙げられる。さらに好ましくは、相対的に数平均分子量が小さいマクロポリオールと、相対的に数平均分子量が大きいマクロポリオールとの併用が挙げられる。
【0034】
マクロポリオールの数平均分子量は、400を超過し、好ましくは、500以上、より好ましくは、650以上、さらに好ましくは、1000以上である。また、マクロポリオールの数平均分子量は、例えば、5000以下、好ましくは、3000以下、より好ましくは、2000以下、さらに好ましくは、1500以下である。また、マクロポリオールの平均官能基数(平均水酸基数)は、例えば、2以上である。また、マクロポリオールの平均官能基数(平均水酸基数)は、例えば、6以下、好ましくは、4以下、より好ましくは、3以下、さらに好ましくは、2.5以下である。
【0035】
マクロポリオールの水酸基価は、例えば、50mgKOH/g以上、好ましくは、100mgKOH/g以上、より好ましくは、30mgKOH/g以上、さらに好ましくは,35mgKOH/g以上である。また、マクロポリオールの水酸基価は、例えば、400mgKOH/g以下、好ましくは、300mgKOH/g以下、より好ましくは、180mgKOH/g以下、さらに好ましくは、150mgKOH/g以下である。なお、水酸基価は、公知の水酸基価測定方法などによって測定できる。水酸基価測定方法としては、例えば、アセチル化法およびフタル化法が挙げられる。また、水酸基価は、マクロポリオールの原料割合から算出することもできる。
【0036】
ポリオールとしては、低分子量ポリオールを含むことができる。低分子量ポリオールは、分子中に水酸基を2つ以上有し、比較的低分子量の有機化合物である。比較的低分子量とは、数平均分子量が400以下であることを示す。すなわち、低分子量ポリオールの分子量は、例えば、400以下、好ましくは、300以下である。また、低分子量ポリオールの分子量は、通常、40以上である。
【0037】
低分子量ポリオールとしては、例えば、2価アルコール、3価アルコール、および、4価以上のアルコールが挙げられる。2価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールおよびジプロピレングリコールが挙げられる。3価アルコールとしては、例えば、グリセリンおよびトリメチロールプロパンが挙げられる。4価以上のアルコールとしては、例えば、ペンタエリスリトールおよびジグリセリンが挙げられる。また、低分子量ポリオールとしては、数平均分子量が400以下になるように、2~4価アルコールに対してアルキレン(C2~3)オキサイドを付加重合した重合物も挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。
【0038】
低分子量ポリオールの含有割合は、ポリオールの総量に対して、例えば、10質量%以下、好ましくは、5質量%以下、より好ましくは、1質量%以下、とりわけ好ましくは、0質量%である。
【0039】
換言すると、マクロポリオールの含有割合は、ポリオールの総量に対して、例えば、90質量%以上、好ましくは、95質量%以上、より好ましくは、99質量%以上、とりわけ好ましくは、100質量%である。
【0040】
すなわち、ポリオールは、とりわけ好ましくは、マクロポリオールからなる。
【0041】
脂肪族ポリイソシアネートとポリオールとは、所定の比率で配合され、公知の方法でウレタン化反応する。より具体的には、ポリオール中の水酸基に対する、脂肪族ポリイソシアネート中のイソシアネート基の当量比(NCO/OH)が、例えば、1.0を超過し、好ましくは、1.1以上、より好ましくは、1.2以上である。また、ポリオール中の水酸基に対する、脂肪族ポリイソシアネート中のイソシアネート基の当量比(NCO/OH)が、例えば、10.0以下、好ましくは、6.0以下である。
【0042】
反応方法としては、例えば、バルク重合および溶液重合が挙げられる。バルク重合では、例えば、ポリイソシアネートおよびポリオールを、窒素気流下で反応させる。反応温度は、例えば、50℃以上である。また、反応温度は、例えば、250℃以下、好ましくは、200℃以下である。また、反応時間が、例えば、0.5時間以上、好ましくは、1時間以上である。また、反応時間が、例えば、15時間以下である。
【0043】
溶液重合では、ポリイソシアネートおよびポリオールを、公知の有機溶剤の存在下で反応させる。反応温度は、例えば、50℃以上である。また、反応温度は、例えば、120℃以下、好ましくは、100℃以下である。また、反応時間が、例えば、0.5時間以上、好ましくは、1時間以上である。また、反応時間が、例えば、15時間以下である。
【0044】
また、上記ウレタン化反応においては、必要に応じて、公知のウレタン化触媒を、適宜の割合で添加することができる。なお、ウレタン化触媒の添加のタイミングは、目的および用途に応じて、適宜設定される。
【0045】
このようなウレタン化反応により、イソシアネート基末端プレポリマーを含む反応生成液が得られる。反応生成液は、必要に応じて、公知の方法で精製される。精製方法として、例えば、蒸留および抽出が挙げられ、好ましくは、蒸留が挙げられる。これにより、有機溶剤および/またはウレタン化触媒が除去され、イソシアネート基末端プレポリマーの精製物が得られる。
【0046】
イソシアネート基末端プレポリマーのイソシアネート基濃度は、例えば、3.0質量%以上、好ましくは、5.0質量%以上である。また、イソシアネート基末端プレポリマーのイソシアネート基濃度は、例えば、20.0質量%以下、好ましくは、15.0質量%以下、より好ましくは、10.0質量%以下である。なお、イソシアネート基濃度は、公知の測定方法によって求めることができる。測定方法としては、例えば、ジ-n-ブチルアミンによる滴定法、および、FT-IR分析が挙げられる(以下同様)。
【0047】
イソシアネート基末端プレポリマーの平均イソシアネート基数は、例えば、1.2以上、好ましくは、1.5以上、より好ましくは、2以上である。また、イソシアネート基末端プレポリマー(固形分)の平均イソシアネート基数は、例えば、4以下、好ましくは、3以下、より好ましくは、2.5以下である。イソシアネート基末端プレポリマーの平均イソシアネート基数は、とりわけ好ましくは、2である。
【0048】
脂肪族ポリイソシアネートのイソシアネート基末端プレポリマー(a成分)は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0049】
脂肪族ポリイソシアネートのイソシアネート基末端プレポリマー(a成分)として、好ましくは、直鎖脂肪族ポリイソシアネート(直鎖脂肪族ポリイソシアネート単量体および/または直鎖脂肪族ポリイソシアネート誘導体)のイソシアネート基末端プレポリマーが挙げられ、より好ましくは、直鎖脂肪族ポリイソシアネートとポリエーテルポリオールとの反応生成物であるイソシアネート基末端プレポリマーが挙げられる。
【0050】
脂肪族ポリイソシアネートのイソシアネート基末端プレポリマー(a成分)として、さらに好ましくは、ヘキサメチレンジイソシアネートおよび/またはヘキサメチレンジイソシアネート誘導体のイソシアネート基末端プレポリマーが挙げられ、とりわけ好ましくは、ヘキサメチレンジイソシアネートおよび/またはヘキサメチレンジイソシアネート誘導体と、ポリエーテルポリオールとの反応生成物であるイソシアネート基末端プレポリマーが挙げられる。
【0051】
脂肪族ポリイソシアネートのイソシアネート基末端プレポリマー(a成分)の含有割合は、固形分基準で、2液硬化型ポリウレア樹脂組成物の総量に対して、例えば、20質量%以上、好ましくは、40質量%以上である。また、脂肪族ポリイソシアネートのイソシアネート基末端プレポリマー(a成分)の含有割合は、固形分基準で、2液硬化型ポリウレア樹脂組成物の総量に対して、例えば、90質量%以下、好ましくは、70質量%以下である。
【0052】
また、脂肪族ポリイソシアネートのイソシアネート基末端プレポリマー(a成分)の含有割合は、固形分基準で、A液の総量に対して、例えば、50質量%以上、好ましくは、60質量%以上、より好ましくは、70質量%以上、さらに好ましくは、80質量%以上である。また、脂肪族ポリイソシアネートのイソシアネート基末端プレポリマー(a成分)の含有割合は、固形分基準で、A液の総量に対して、例えば、99質量%以下、好ましくは、95質量%以下、より好ましくは、90質量%以下である。
【0053】
また、脂肪族ポリイソシアネートのイソシアネート基末端プレポリマー(a成分)の割合は、イソシアネート基の割合としても、調整される。
【0054】
また、イソシアネート基の総モル(脂肪族ポリイソシアネートのイソシアネート基末端プレポリマー(a成分)のイソシアネート基と、脂肪族ポリイソシアネート誘導体(b成分)のイソシアネート基との総モル)に対して、脂肪族ポリイソシアネートのイソシアネート基末端プレポリマー(a成分)のイソシアネート基が、例えば、50モル%以上、好ましくは、60モル%以上、より好ましくは、70モル%以上、さらに好ましくは、80モル%以上である。また、イソシアネート基の総モル(脂肪族ポリイソシアネートのイソシアネート基末端プレポリマー(a成分)のイソシアネート基と、脂肪族ポリイソシアネート誘導体(b成分)のイソシアネート基との総モル)に対して、脂肪族ポリイソシアネートのイソシアネート基末端プレポリマー(a成分)のイソシアネート基が、例えば、99モル%以下、好ましくは、98モル%以下、より好ましくは、95モル%以下である。
【0055】
(b成分)脂肪族ポリイソシアネート誘導体
脂肪族ポリイソシアネート誘導体は、イソシアヌレート誘導体を含んでいる。
【0056】
イソシアヌレート誘導体は、例えば、上記した脂肪族ポリイソシアネート単量体を、公知のイソシアヌレート化触媒の存在下において、イソシアヌレート化することにより得られる。つまり、イソシアヌレート誘導体は、脂肪族ポリイソシアネート単量体のイソシアヌレート誘導体である。
【0057】
脂肪族ポリイソシアネート単量体としては、例えば、上記の鎖状脂肪族ポリイソシアネート単量体、および、上記の脂環族ポリイソシアネート単量体が挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。脂肪族ポリイソシアネート単量体として、好ましくは、脂環族ポリイソシアネート単量体が挙げられ、より好ましくは、脂環族ジイソシアネートが挙げられ、さらに好ましくは、イソホロンジイソシアネートが挙げられる。
【0058】
なお、イソシアヌレート化の反応方法および反応条件は、目的および用途に応じて、適宜設定される。
【0059】
脂肪族ポリイソシアネート単量体のイソシアヌレート誘導体のイソシアネート基濃度は、例えば、3.0質量%以上、好ましくは、5.0質量%以上である。また、脂肪族ポリイソシアネート単量体のイソシアヌレート誘導体のイソシアネート基濃度は、例えば、40.0質量%以下、好ましくは、30.0質量%以下である。
【0060】
脂肪族ポリイソシアネート単量体のイソシアヌレート誘導体の平均イソシアネート基数は、例えば、2.1以上、好ましくは、2.5以上である。また、脂肪族ポリイソシアネート単量体のイソシアヌレート誘導体の平均イソシアネート基数は、例えば、6.0以下、好ましくは、4.0以下、より好ましくは、3.5以下である。
【0061】
脂肪族ポリイソシアネート単量体のイソシアヌレート誘導体は、単独使用または2種類以上併用できる。脂肪族ポリイソシアネート単量体のイソシアヌレート誘導体として、ポットライフおよび機械物性の観点から、好ましくは、脂環族ポリイソシアネート単量体のイソシアヌレート誘導体が挙げられ、より好ましくは、脂環族ジイソシアネートのイソシアヌレート誘導体が挙げられ、さらに好ましくは、イソホロンジイソシアネートのイソシアヌレート誘導体が挙げられる。
【0062】
脂肪族ポリイソシアネート誘導体(b成分)は、さらに、その他の誘導体を含有できる。その他の誘導体は、イソシアヌレート誘導体を除く誘導体である。その他の誘導体としては、例えば、上記した脂肪族ポリイソシアネート単量体を公知の方法で変性した変性体(イソシアヌレート誘導体を除く。)が、挙げられる。その他の誘導体としては、例えば、アロファネート誘導体、ポリオール誘導体、ビウレット誘導体、ウレア誘導体、オキサジアジントリオン誘導体、および、カルボジイミド誘導体が挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。
【0063】
脂肪族ポリイソシアネート誘導体(b成分)は、好ましくは、脂肪族ポリイソシアネートのイソシアヌレート誘導体からなる。すなわち、脂肪族ポリイソシアネート誘導体(b成分)は、好ましくは、脂肪族ポリイソシアネート単量体のイソシアヌレート誘導体であり、より好ましくは、脂環族ポリイソシアネート単量体のイソシアヌレート誘導体であり、さらに好ましくは、脂環族ジイソシアネートのイソシアヌレート誘導体であり、とりわけ好ましくは、イソホロンジイソシアネートのイソシアヌレート誘導体である。
【0064】
脂肪族ポリイソシアネート誘導体(b成分)の含有割合は、固形分基準で、2液硬化型ポリウレア樹脂組成物の総量に対して、例えば、0.1質量%以上、好ましくは、1質量%以上である。また、脂肪族ポリイソシアネート誘導体(b成分)の含有割合は、固形分基準で、2液硬化型ポリウレア樹脂組成物の総量に対して、例えば、10質量%以下、好ましくは、5質量%以下である。
【0065】
また、脂肪族ポリイソシアネート誘導体(b成分)の含有割合は、固形分基準で、A液の総量に対して、例えば、0.1質量%以上、好ましくは、1質量%以上、より好ましくは、2質量%以上、さらに好ましくは、3質量%以上である。また、脂肪族ポリイソシアネート誘導体(b成分)の含有割合は、固形分基準で、A液の総量に対して、例えば、30質量%以下、好ましくは、20質量%以下、より好ましくは、10質量%以下である。
【0066】
また、脂肪族ポリイソシアネート誘導体(b成分)の含有割合は、固形分基準で、脂肪族ポリイソシアネートのイソシアネート基末端プレポリマー(a成分)100質量部に対して、例えば、0.1質量部以上、好ましくは、1質量部以上、より好ましくは、2質量部以上、さらに好ましくは、3質量部以上である。また、脂肪族ポリイソシアネート誘導体(b成分)の含有割合は、固形分基準で、脂肪族ポリイソシアネートのイソシアネート基末端プレポリマー(a成分)100質量部に対して、例えば、30質量部以下、好ましくは、20質量部以下、より好ましくは、10質量部以下である。
【0067】
また、脂肪族ポリイソシアネート誘導体(b成分)の割合は、イソシアネート基の割合としても、調整される。
【0068】
より具体的には、イソシアネート基の総モル(脂肪族ポリイソシアネートのイソシアネート基末端プレポリマー(a成分)のイソシアネート基と、脂肪族ポリイソシアネート誘導体(b成分)のイソシアネート基との総モル)に対して、脂肪族ポリイソシアネート誘導体(b成分)のイソシアネート基が、例えば、1モル%以上、好ましくは、2モル%以上、より好ましくは、5モル%以上である。また、イソシアネート基の総モル(脂肪族ポリイソシアネートのイソシアネート基末端プレポリマー(a成分)のイソシアネート基と、脂肪族ポリイソシアネート誘導体(b成分)のイソシアネート基との総モル)に対して、脂肪族ポリイソシアネート誘導体(b成分)のイソシアネート基が、例えば、50モル%以下、好ましくは、40モル%以下、より好ましくは、30モル%以下、さらに好ましくは、20モル%以下、とりわけ好ましくは、10モル%以下である。
【0069】
(c成分)潜在性活性水素化合物
【0070】
潜在性活性水素化合物は、水と反応することによって活性水素基(水酸基および/またはアミノ基)を生じさせる化合物である。潜在性活性水素化合物は、貯蔵安定性の観点から、A液に含まれ、B液に含まれない。潜在性活性水素化合物としては、例えば、ウレタンポリオキサゾリジン化合物、アルジミン化合物およびケチミン化合物が挙げられる。
【0071】
ウレタンポリオキサゾリジン化合物は、例えば、ポリイソシアネートと、N-ヒドロキシアルキルオキサゾリジンとの反応生成物として得ることができる。
【0072】
ポリイソシアネートとしては、例えば、脂肪族ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネートおよび方向脂肪族ポリイソシアネートが挙げられる。
【0073】
脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、上記した脂肪族ポリイソシアネート単量体、および、上記した脂肪族ポリイソシアネート誘導体が挙げられる。より具体的には、鎖状脂肪族ポリイソシアネート単量体、鎖状脂肪族ポリイソシアネート誘導体、脂環族ポリイソシアネート単量体、および、脂環族ポリイソシアネート誘導体が挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。
【0074】
芳香族ポリイソシアネートとしては、芳香族ポリイソシアネート単量体、および、芳香族ポリイソシアネート誘導体が挙げられる。芳香族ポリイソシアネート単量体としては、例えば、芳香族ジイソシアネートが挙げられる。芳香族ジイソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、トルイジンジイソシアネート(TODI)、パラフェニレンジイソシアネート、および、ナフタレンジイソシアネート(NDI)が挙げられる。芳香族ポリイソシアネート誘導体としては、例えば、芳香族ポリイソシアネート単量体を公知の方法で変性した上記変成体が、挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。
【0075】
芳香脂肪族ポリイソシアネートとしては、芳香脂肪族ポリイソシアネート単量体、および、芳香脂肪族ポリイソシアネート誘導体が挙げられる。芳香脂肪族ポリイソシアネート単量体としては、例えば、芳香脂肪族ジイソシアネートが挙げられる。芳香脂肪族ジイソシアネートとしては、例えば、キシリレンジイソシアネート(XDI)、および、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)が挙げられる。芳香族ポリイソシアネート誘導体としては、例えば、芳香脂肪族ポリイソシアネート単量体を公知の方法で変性した上記変成体が、挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。
【0076】
ポリイソシアネートとして、好ましくは、脂肪族ポリイソシアネートが挙げられ、より好ましくは、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、および、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンが挙げられ、さらに好ましくは、イソホロジイソシアネートが挙げられる。
【0077】
N-ヒドロキシアルキルオキサゾリジンは、オキサゾリジン環の窒素原子に、末端に水酸基を有する置換基が結合した化合物である。N-ヒドロキシアルキルオキサゾリジンは、例えば、下記式(1)で表される。
【化1】
(式中、R1は水素原子または1価の有機基を示し、R2は2価の有機基を示す。)
上記式(1)において、R1は、水素原子または1価の有機基である。
【0078】
1価の有機基としては、例えば、炭素数1~5の炭化水素基が挙げられる。1価の有機基として、好ましくは、炭素数1~5のアルキル基が挙げられる。より具体的には、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、および、ペンチル基が挙げられ、好ましくは、プロピル基、および、イソプロピル基が挙げられ、より好ましくは、イソプロピル基が挙げられる。
【0079】
上記式(1)において、R2は、2価の有機基である。
【0080】
2価の有機基としては、例えば、炭素数2~5のアルキレン鎖が挙げられる。2価の有機基として、好ましくは、炭素数2~4のアルキレン基が挙げられる。より具体的には、例えば、エチレン基、プロピレン基、および、ブチレン基が挙げられ、好ましくは、エチレン基が挙げられる。
【0081】
R1およびR2の組み合わせとして、とりわけ好ましくは、ポットライフの観点から、R1がイソプロピル基であり、R2がエチレン基である。
【0082】
N-ヒドロキシアルキルオキサゾリジンは、特に制限されず、公知の方法により得られる。例えば、N-ヒドロキシアルキルオキサゾリジンは、分子中に2つの水酸基と1つのアミノ基とを有する化合物と、アルデヒド類とを反応させることにより得られる。分子中に2つの水酸基と1つのアミノ基とを有する化合物としては、例えば、アミノアルコール類が挙げられ、より具体的には、ジエタノールアミンが挙げられる。また、アルデヒド類としては、例えば、プロピオンアルデヒド、イソブチルアルデヒド、n-ヘキサナール、および、ベンズアルデヒドが挙げられる。
【0083】
より具体的には、この方法では、例えば、アミノアルコール類とアルデヒド類とを、公知の有機溶媒中で、例えば、70~150℃に加熱し、脱水反応させ、生成水を除去する。これにより、N-ヒドロキシアルキルオキサゾリジンが得られる。
【0084】
N-ヒドロキシアルキルオキサゾリジンとして、より具体的には、例えば、2-イソプロピル3-(2-ヒドロキシエチル)-1,3オキサゾリジン、2-ペンチル-3-オキサゾリジンエタノール、および、2-(1-メチルブチル)-3-オキサゾリジンエタノールが挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用することができる。N-ヒドロキシアルキルオキサゾリジンとして、好ましくは、2-イソプロピル-3-(2-ヒドロキシエチル)-1,3-オキサゾリジンが挙げられる。
【0085】
ウレタンポリオキサゾリジン化合物を得る方法は、特に制限されない。例えば、ポリイソシアネートと、N-ヒドロキシアルキルオキサゾリジンとを、所定の割合で配合し、これらを反応させる。例えば、ポリイソシアネートのイソシアネート基1モルに対するN-ヒドロキシアルキルオキサゾリジンの水酸基の当量比(水酸基/イソシアネート基)が、例えば、0.5以上、好ましくは、0.9以上である。また、ポリイソシアネートのイソシアネート基1モルに対するN-ヒドロキシアルキルオキサゾリジンの水酸基の当量比(水酸基/イソシアネート基)が、例えば、2.0以下、好ましくは、1.1以下である。また、必要に応じて、公知の触媒および有機溶剤が配合される。反応温度は、原料成分の種類に応じて、適宜設定される。これにより、ウレタンポリオキサゾリジン化合物が得られる。
【0086】
なお、ウレタンポリオキサゾリジン化合物の生成は、赤外分光測定において2250cm-1のピークの消失により確認できる。
【0087】
ウレタンポリオキサゾリジン化合物は、水との反応によりオキサゾリジン環が開環して、水酸基およびアミノ基を生成させる。すなわち、ウレタンポリオキサゾリジン化合物は、水と反応することによって活性水素基を生じさせる。
【0088】
ウレタンポリオキサゾリジン化合物として、好ましくは、脂肪族ポリイソシアネートと、N-ヒドロキシアルキルオキサゾリジンとの反応生成物が挙げられ、より好ましくは、脂環族ポリイソシアネート(脂環族ポリイソシアネート単量体および/または脂環族ポリイソシアネート誘導体)と、N-ヒドロキシアルキルオキサゾリジンとの反応生成物が挙げられ、さらに好ましくは、脂環族ポリイソシアネート単量体と、N-ヒドロキシアルキルオキサゾリジンとの反応生成物が挙げられ、とりわけ好ましくは、イソホロンジイソシアネートと、N-ヒドロキシアルキルオキサゾリジンとの反応生成物が挙げられる。
【0089】
アルジミン化合物は、例えば、ポリアミンとアルデヒドとの反応生成物として得ることができる。
【0090】
ポリアミンとしては、例えば、(d成分)として後述するポリアミンが挙げられる。より具体的には、脂肪族ポリアミン(後述)、芳香族ポリアミン(後述)、および、芳香脂肪族ポリアミン(後述)が挙げられる。ポリアミンとして、好ましくは、脂肪族ポリアミンが挙げられ、より好ましくは、テトラメチレンジアミンが挙げられる。
【0091】
アルデヒドとしては、例えば、脂肪族アルデヒド、および、芳香族アルデヒドが挙げられる。脂肪族アルデヒドとしては、例えば、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、および、アリルアルデヒドが挙げられる。芳香族アルデヒドとしては、例えば、ベンズアルデヒド、o-トルアルデヒド、m-トルアルデヒド、p-トルアルデヒド、4-エチルベンズアルデヒド、4-プロピルベンズアルデヒド、4-ブチルベンズアルデヒド、2,4-ジメチルベンズアルデヒド、2,4,5-トリメチルベンズアルデヒド、および、p-アニスアルデヒド、p-エトキシベンズアルデヒドが挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0092】
アルジミン化合物を得る方法は、特に制限されない。例えば、ポリアミンとアルデヒドとを所定の割合で配合し、これらを反応させる。例えば、ポリアミンのアミノ基に対するアルデヒドのカルボニル基の当量比(カルボニル基/アミノ基)が、例えば、0.5以上、好ましくは、1.0以上である。また、ポリアミンのアミノ基に対するアルデヒドのカルボニル基の当量比(カルボニル基/アミノ基)が、例えば、2.0以下である。また、必要に応じて、公知の触媒および有機溶剤が配合される。反応温度は、原料成分の種類に応じて、適宜設定される。これにより、アルジミン化合物が得られる。
【0093】
なお、アルジミン化合物の生成は、赤外分光測定における1640cm-1のピークにより確認できる。
【0094】
アルジミン化合物は、水との反応により分解(加水分解)され、アミノ基を生成させる。すなわち、アルジミン化合物は、水と反応することによって活性水素基を生じさせる潜在性活性水素化合物である。
【0095】
ケチミン化合物は、例えば、ポリアミンとケトンとの反応生成物として得ることができる。
【0096】
ポリアミンとしては、例えば、(d成分)として後述するポリアミンが挙げられる。より具体的には、脂肪族ポリアミン(後述)、芳香族ポリアミン(後述)、および、芳香脂肪族ポリアミン(後述)が挙げられる。ポリアミンとして、好ましくは、脂肪族ポリアミンが挙げられ、より好ましくは、ポリオキシアルキレンポリアミンが挙げられ、さらに好ましくは、ポリオキシプロピレンポリアミンが挙げられる。
【0097】
ケトンとしては、例えば、脂肪族ケトン、および、芳香族ケトンが挙げられる。脂肪族ケトンとしては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソプロピルケトン、メチルヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、シクロペンタノン、および、シクロヘプタノンが挙げられる。芳香族ケトンとしては、例えば、フェニルメチルケトン、および、ジフェニルケトンが挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0098】
ケチミン化合物を得る方法は、特に制限されない。例えば、ポリアミンとケトンとを所定の割合で配合し、これらを反応させる。例えば、ポリアミンのアミノ基に対するケトンのカルボニル基の当量比(カルボニル基/アミノ基)が、例えば、0.5以上、好ましくは、1.0以上である。また、ポリアミンのアミノ基に対するケトンのカルボニル基の当量比(カルボニル基/アミノ基)が、例えば、2.0以下である。また、必要に応じて、公知の触媒および有機溶剤が配合される。反応温度は、原料成分の種類に応じて、適宜設定される。これにより、ケチミン化合物が得られる。
【0099】
ケチミン化合物は、水との反応により分解(加水分解)され、アミノ基を生成させる。すなわち、ケチミン化合物は、水と反応することによって活性水素基を生じさせる潜在性活性水素化合物である。
【0100】
潜在性活性水素化合物(c成分)は、単独使用または2種類以上併用できる。潜在性活性水素化合物(c成分)として、ポットライフおよび機械物性(とりわけ、硬度および破断伸び)の観点から、好ましくは、ウレタンポリオキサゾリジン化合物が挙げられ、より好ましくは、脂肪族ポリイソシアネートと、N-ヒドロキシアルキルオキサゾリジンとの反応生成物であるウレタンポリオキサゾリジン化合物が挙げられる。
【0101】
潜在性活性水素化合物(c成分)の含有割合は、固形分基準で、2液硬化型ポリウレア樹脂組成物の総量に対して、例えば、0.1質量%以上、好ましくは、1質量%以上、より好ましくは、2質量%以上、さらに好ましくは、3質量%以上である。また、潜在性活性水素化合物(c成分)の含有割合は、固形分基準で、2液硬化型ポリウレア樹脂組成物の総量に対して、例えば、20質量%以下、好ましくは、15質量%以下、より好ましくは、10質量%以下である。
【0102】
また、潜在性活性水素化合物(c成分)の含有割合は、固形分基準で、A液の総量に対して、例えば、0.1質量%以上、好ましくは、1質量%以上、より好ましくは、2質量%以上、さらに好ましくは、5質量%以上である。また、潜在性活性水素化合物(c成分)の含有割合は、固形分基準で、A液の総量に対して、例えば、30質量%以下、好ましくは、20質量%以下、より好ましくは、10質量%以下である。
【0103】
また、潜在性活性水素化合物(c成分)の含有割合は、固形分基準で、脂肪族ポリイソシアネートのイソシアネート基末端プレポリマー(a成分)100質量部に対して、例えば、1質量部以上、好ましくは、2質量部以上、より好ましくは、3質量部以上、さらに好ましくは、5質量部以上である。また、潜在性活性水素化合物(c成分)の含有割合は、固形分基準で、脂肪族ポリイソシアネートのイソシアネート基末端プレポリマー(a成分)100質量部に対して、例えば、30質量部以下、好ましくは、20質量部以下、より好ましくは、10質量部以下である。
【0104】
また、潜在性活性水素化合物(c成分)の割合は、活性水素基の割合としても、調整される。
【0105】
より具体的には、活性水素基の総モル(潜在性活性水素化合物(c成分)が水と反応して生じる活性水素基と、後述するポリアミン(d成分)中の活性水素基(アミノ基)との総モル)に対して、潜在性活性水素化合物(c成分)が水と反応して生じる活性水素基の割合が、例えば、1モル%以上、好ましくは、5モル%以上、より好ましくは、10モル%以上である。また、活性水素基の総モル(潜在性活性水素化合物(c成分)が水と反応して生じる活性水素基と、後述するポリアミン(d成分)中の活性水素基(アミノ基)との総モル)に対して、潜在性活性水素化合物(c成分)が水と反応して生じる活性水素基の割合が、例えば、50モル%以下、好ましくは、40モル%以下、より好ましくは、30モル%以下である。
【0106】
A液を調製する方法は、特に制限されない。例えば、イソシアネート基末端プレポリマー(a成分)と、ポリイソシアネート誘導体(b成分)と、潜在性活性水素化合物(c成分)とを、上記の割合で配合し、混合する。これにより、A液が調製される。
【0107】
A液は、必要に応じて、後述する添加剤を含むことができる。なお、添加剤の含有割合は、目的および用途に応じて、適宜設定される。
【0108】
<B液>
B液は、活性水素化合物を含んでいる。活性水素化合物は、上記の潜在性活性水素化合物に対する顕在性活性水素化合物であり、少なくとも1つの活性水素基を有する。活性水素化合物は、ポリアミン(d成分)からなる。
【0109】
(d成分)ポリアミン
ポリアミン(d成分)としては、例えば、脂肪族ポリアミン、芳香族ポリアミン、および、芳香脂肪族ポリアミンが挙げられる。
【0110】
脂肪族ポリアミンとしては、例えば、鎖状脂肪族ポリアミンおよび脂環族ポリアミンが挙げられる。
【0111】
鎖状脂肪族ポリアミンとしては、例えば、鎖状脂肪族ジアミンが挙げられる。鎖状脂肪族ジアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヒドラジン、1,2-ジアミノエタン、1,2-ジアミノプロパン、1,3-ジアミノペンタン、ポリオキシエチレンポリアミン、ポリオキシプロピレンポリアミン、ポリオキシテトラメチレンポリアミン、および、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンポリアミンが挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。
【0112】
脂環族ポリアミンとしては、例えば、脂環族ジアミンが挙げられる。脂環族ジアミンとしては、例えば、1-アミノ-3-アミノメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン、ビス-(4-アミノシクロヘキシル)メタン、ジアミノシクロヘキサン、3,9-ビス(3-アミノプロピル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,3-ビス(アミノエチル)シクロヘキサン、および、1,4-ビス(アミノエチル)シクロヘキサンが挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。
【0113】
芳香族ポリアミンとしては、例えば、芳香族ジアミンが挙げられる。芳香族ジアミンとしては、例えば、4,4’-ジフェニルメタンジアミン、3,3’-ジクロロ-4,4’-ジフェニルメタンジアミン、2,4-ジエチルトルエンジアミン、2,6-ジエチルトルエンジアミン、ジメチルチオトルエンジアミン、4,4’-メチレンビス(3-クロロ-2,6-ジエチルアニリン)、N,N’-ジ-セカンダリ-ブチル-パラ-フェニレンジアミン、4,4’-ビス(セカンダリ-ブチルアミノ)ジフェニルメタン、4,4’-ビス(メチルアミノ)ジフェニルメタン、トリメチレン-ビス(4-アミノベンゾエート)、ポリテトラメチレンオキシド-ジ-p-アミノベンゾエート、N-フェニル-N’-イソプロピル-p-フェニレンジアミン、N-フェニル-N’-(1,3-ジメチルブチル)-p-フェニレンジアミン、および、4,4’-メチレンビス(2-クロロアニリン)(略称:MOCA)が挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。
【0114】
芳香脂肪族ポリアミンとしては、例えば、芳香脂肪族ジアミンが挙げられる。芳香脂肪族ジアミンとしては、例えば、1,3-キシリレンジアミン、および、1,4-キシリレンジアミンが挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。
【0115】
また、ポリアミンとしては、市販品も挙げられる。市販品としては、例えば、エタキュア100(商品名:アルベマール製)、エタキュア300(商品名:アルベマール製)、エタキュア534(商品名:アルベマール製)、TCDAM(商品名:イハラケミカル製)、および、エラスマー1000P(商品名、クミアイ化学製)が挙げられる。
【0116】
ポリアミン(d成分)は、単独使用または2種類以上併用できる。ポリアミン(d成分)として、好ましくは、芳香族ポリアミンが挙げられ、より好ましくは、芳香族ジアミンが挙げられる。
【0117】
ポリアミン(d成分)の含有割合は、固形分基準で、2液硬化型ポリウレア樹脂組成物の総量に対して、例えば、1質量%以上、好ましくは、5質量%以上である。また、ポリアミン(d成分)の含有割合は、固形分基準で、2液硬化型ポリウレア樹脂組成物の総量に対して、例えば、30質量%以下、好ましくは、20質量%以下である。
【0118】
また、ポリアミン(d成分)の含有割合は、固形分基準で、B液の総量に対して、例えば、10質量%以上、好ましくは、20質量%以上、より好ましくは、30質量%以上である。また、ポリアミン(d成分)の含有割合は、固形分基準で、B液の総量に対して、例えば、90質量%以下、好ましくは、80質量%以下、より好ましくは、70質量%以下である。
【0119】
また、ポリアミン(d成分)の含有割合は、固形分基準で、脂肪族ポリイソシアネートのイソシアネート基末端プレポリマー(a成分)100質量部に対して、例えば、1質量部以上、好ましくは、5質量部以上、より好ましくは、10質量部以上、さらに好ましくは、20質量部以上である。また、ポリアミン(d成分)の含有割合は、固形分基準で、脂肪族ポリイソシアネートのイソシアネート基末端プレポリマー(a成分)100質量部に対して、例えば、50質量部以下、好ましくは、40質量部以下、より好ましくは、30質量部以下である。
【0120】
また、ポリアミン(d成分)の割合は、B液の活性水素化合物の総量に対して、100質量%である。
【0121】
また、ポリアミン(d成分)の割合は、活性水素基の割合としても、調整される。
【0122】
より具体的には、活性水素基の総モル(潜在性活性水素化合物(c成分)が水と反応して生じる活性水素基と、ポリアミン(d成分)中の活性水素基(アミノ基)との総モル)に対して、ポリアミン(d成分)中の活性水素基の割合が、例えば、50モル%以上、好ましくは、60モル%以上、より好ましくは、70モル%以上である。また、活性水素基の総モル(潜在性活性水素化合物(c成分)が水と反応して生じる活性水素基と、ポリアミン(d成分)中の活性水素基(アミノ基)との総モル)に対して、ポリアミン(d成分)中の活性水素基の割合が、例えば、99モル%以下、好ましくは、95モル%以下、より好ましくは、90モル%以下である。
【0123】
B液は、必要に応じて、後述する添加剤を含むことができる。なお、添加剤の含有割合は、目的および用途に応じて、適宜設定される。
【0124】
<2液硬化型ポリウレア樹脂組成物>
2液硬化型ポリウレア樹脂組成物は、上記のA液と、上記のB液とを、所定の割合で備えている。A液とB液との割合は、これらに含まれるイソシアネート基の量と、活性水素基の量とに基づいて、調整される。
【0125】
より具体的には、イソシアネート基の量は、A液に含まれる脂肪族ポリイソシアネートのイソシアネート基末端プレポリマー(a成分)のイソシアネート基と、脂肪族ポリイソシアネート誘導体(b成分)のイソシアネート基との総量である。
【0126】
また、活性水素基の量は、A液に含まれる潜在性活性水素化合物の活性水素基(すなわち、潜在性活性水素化合物(c成分)が水と反応して生じる活性水素基)と、B液に含まれるポリアミン(d成分)の活性水素基(すなわち、アミノ基)との総量である。
【0127】
そして、2液硬化型ポリウレア樹脂組成物において、活性水素基に対するイソシアネート基の当量比(イソシアネート基/活性水素基)は、例えば、0.8以上、好ましくは、0.9以上、より好ましくは、1.00以上、さらに好ましくは、1.00を超過する。また、活性水素基に対するイソシアネート基の当量比(イソシアネート基/活性水素基)は、例えば、1.2以下、好ましくは、1.1以下、より好ましくは、1.05以下である。
【0128】
2液硬化型ポリウレア樹脂組成物は、必要に応じて、添加剤を、適宜の割合で含むことができる。
【0129】
添加剤としては、例えば、可塑剤、硬化触媒、老化防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、耐熱安定剤、高分子光安定剤などの安定剤、有機溶媒、顔料、染料、消泡剤、トナー、分散剤、レベリング材、チクソ付与剤、ブロッキング防止剤、離型剤、滑剤および加水分解防止剤が挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。
【0130】
添加剤として、好ましくは、可塑剤が挙げられる。可塑剤としては、例えば、フタル酸エステル系可塑剤、アジピン酸エステル系可塑剤、脂肪族二塩基酸エステル系可塑剤、グリコールエステル系可塑剤、リン酸エステル系可塑剤およびエポキシ系可塑剤が挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。可塑剤として、好ましくは、フタル酸エステル系可塑剤およびアジピン酸エステル系可塑剤が挙げられる。
【0131】
フタル酸エステル系可塑剤としては、例えば、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジへプチル、フタル酸ジn-オクチル、フタル酸ジイソオクチル、フタル酸ジ2-エチルへキシル、フタル酸ジノニル、フタル酸ジイソデシル、フタル酸ジトリデシル、フタル酸ジブチルペンチルおよびフタル酸ジシクロヘキシルが挙げられる。アジピン酸エステル系可塑剤としては、例えば、アジピン酸ジメチル、アジピン酸ジエチル、アジピン酸ジブチル、アジピン酸ジヘプチル、アジピン酸ジイソノニル、アジピン酸ジn-オクチル、アジピン酸ジイソオクチル、アジピン酸ジ2-エチルへキシル、アジピン酸ジノニル、アジピン酸ジイソノニル、アジピン酸ジイソデシル、アジピン酸ジトリデシル、アジピン酸ジブチルペンチルおよびアジピン酸ジシクロヘキシルが挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。
【0132】
添加剤は、目的および用途に応じて、A液および/またはB液に含まれる。可塑剤は、好ましくは、B液に含まれる。
【0133】
可塑剤の含有割合は、例えば、2液硬化型ポリウレア樹脂組成物の総量に対して、例えば、1質量%以上、好ましくは、5質量%以上、より好ましくは、10質量%以上である。また、可塑剤の含有割合は、例えば、2液硬化型ポリウレア樹脂組成物の総量に対して、例えば、50質量%以下、好ましくは、40質量%以下、より好ましくは、30質量%以下である。
【0134】
また、可塑剤が、A液に含まれる場合、可塑剤の含有割合は、固形分基準で、A液の総量に対して、例えば、10質量%以上、好ましくは、20質量%以上、より好ましくは、30質量%以上である。また、可塑剤が、A液に含まれる場合、可塑剤の含有割合は、固形分基準で、A液の総量に対して、例えば、90質量%以下、好ましくは、80質量%以下、より好ましくは、70質量%以下である。
【0135】
また、可塑剤が、B液に含まれる場合、可塑剤の含有割合は、固形分基準で、B液の総量に対して、例えば、10質量%以上、好ましくは、20質量%以上、より好ましくは、30質量%以上である。また、可塑剤が、B液に含まれる場合、可塑剤の含有割合は、固形分基準で、B液の総量に対して、例えば、90質量%以下、好ましくは、80質量%以下、より好ましくは、70質量%以下である。
【0136】
このような2液硬化型ポリウレア樹脂組成物において、A液とB液とを混合すると、ポリイソシアネート基と活性水素基とがウレア化およびウレタン化反応する。
【0137】
より具体的には、潜在性活性水素化合物(c成分)の活性水素基は潜在性であるため、混合当初は、B液のポリアミン(d成分)の活性水素基と、A液の脂肪族ポリイソシアネートのイソシアネート基末端プレポリマー(a成分)のイソシアネート基、および、A液の脂肪族ポリイソシアネート誘導体(b成分)のイソシアネート基とが、ウレア化反応する。
【0138】
その後、潜在性活性水素化合物と大気中の水分とが反応し、潜在性活性水素化合物(c成分)の活性水素基が、徐々に顕在化する。そして、その潜在性活性水素化合物(c成分)の活性水素基と、上記のイソシアネート基とが、徐々に反応する。
【0139】
このような2液硬化型ポリウレア樹脂組成物によれば、適度なポットライフを得ることができ、かつ、機械物性に優れる硬化物を得ることができる。
【0140】
とりわけ、上記の2液硬化型ポリウレア樹脂組成物は、A液およびB液を備える。そして、A液が、脂肪族ポリイソシアネートのイソシアネート基末端プレポリマー(a成分)と、脂肪族ポリイソシアネート誘導体(b成分)と、水と反応することによって活性水素基を生じさせる潜在性活性水素化合物(c成分)とを含み、脂肪族ポリイソシアネート誘導体(b成分)が、イソシアヌレート誘導体を含む。
【0141】
そのため、上記の2液硬化型ポリウレア樹脂組成物によれば、機械物性(とりわけ、破断伸び)に優れた硬化物を得ることができる。
【0142】
一方、活性水素化合物が、ポリアミン(d成分)以外に、ポリオールおよび/またはモノオールを含有すると、ポットライフが過度に長く、十分な作業効率を得られない。
【0143】
これに対して、上記の2液硬化型ポリウレア樹脂組成物では、B液が、活性水素化合物を含み、活性水素化合物が、ポリアミン(d成分)からなる。
【0144】
そのため、上記の2液硬化型ポリウレア樹脂組成物は、適度なポットライフを有する。より具体的には、上記の2液硬化型ポリウレア樹脂組成物のポットライフは適度に短く、作業効率が良好である。
【0145】
さらに、活性水素化合物がポリアミン(d成分)からなるため、上記の2液硬化型ポリウレア樹脂組成物によれば、機械物性(とりわけ、硬度および引張強度)に優れた硬化物を得ることができる。
【0146】
換言すると、上記した2液硬化型ポリウレア樹脂組成物によれば、適度なポットライフが得られ、さらに、優れた機械物性(硬度および引張強度と、破断伸びとのバランス)の硬化物(後述)が得られる。
【0147】
なお、活性水素化合物が、ポリアミン(d成分)からなる場合に、A液が、脂肪族ポリイソシアネートのイソシアネート基末端プレポリマー(a成分)と、脂肪族ポリイソシアネート誘導体(b成分)とを含まず、例えば、A液が、芳香族ポリイソシアネートのイソシアネート基末端プレポリマー、および/または、芳香族ポリイソシアネート誘導体からなる場合には、ポットライフが過度に短く、十分な作業効率を得られない。
【0148】
これに対して、上記の2液硬化型ポリウレア樹脂組成物は、A液が、脂肪族ポリイソシアネートのイソシアネート基末端プレポリマー(a成分)と、脂肪族ポリイソシアネート誘導体(b成分)とを含んでいる。
【0149】
そのため、活性水素化合物がポリアミン(d成分)からなる場合にも、上記の2液硬化型ポリウレア樹脂組成物のポットライフは適度に長く、作業効率が良好である。
【0150】
そして、上記の2液硬化型ポリウレア樹脂組成物およびその硬化物は、ポットライフおよび機械物性に優れるため、各種産業分野において、広汎に用いることができる。とりわけ、上記の2液硬化型ポリウレア樹脂組成物およびその硬化物は、建材として、好適に用いられる。より具体的には、上記の2液硬化型ポリウレア樹脂組成物およびその硬化物は、建材としての目地材または各種施設の舗装材として、好適に用いられる。例えば、上記した2液硬化型ポリウレア樹脂組成物は、公知の施工方法によって、各種施設の被舗装物に施行され、硬化する。被舗装物としては、例えば、床面、廊下面、ベランダ、駐車場および屋上屋根が挙げられる。施行方法としては、例えば、スプレーガン法、コテ法、ローラー法およびレーキ法が挙げられる。
【0151】
硬化温度は、例えば、0℃以上、好ましくは、5℃以上である。また、硬化温度は、例えば、50℃以下、好ましくは、40℃以下である。硬化時間は、例えば、5時間以上、好ましくは、8時間以上である。また、硬化時間は、例えば、24時間以下、好ましくは、18時間以下である。
【0152】
これにより、2液硬化型ポリウレア樹脂組成物を硬化させ、硬化物(例えば、目地材、床材)を得ることができる。
【0153】
このような硬化物(例えば、目地材、床材)は、上記した2液硬化型ポリウレア樹脂組成物から形成されているため、適度なポットライフで作業性よく得られ、さらに、機械物性(硬度および引張強度と、破断伸びとのバランス)に優れる。
【実施例0154】
次に、本発明を、実施例および比較例に基づいて説明するが、本発明は、下記の実施例によって限定されるものではない。なお、「部」および「%」は、特に言及がない限り、質量基準である。また、以下の記載において用いられる配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなどの具体的数値は、上記の「発明を実施するための形態」において記載されている、それらに対応する配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなど該当記載の上限値(「以下」、「未満」として定義されている数値)または下限値(「以上」、「超過」として定義されている数値)に代替することができる。
【0155】
(a成分)イソシアネート基末端プレポリマー
準備例1(HDI系プレポリマー(a1))
ポリエーテルポリオール(三井化学SKCポリウレタン製、商品名:アクトコールDiol3000、数平均分子量3000、平均水酸基数2) 504.4質量部と、ポリエーテルポリオール(三井化学SKCポリウレタン製、商品名:アクトコールDiol400、ポリオキシプロピレングリコール、数平均分子量400、平均水酸基数2)157.2質量部と、ヘキサメチレンジイソシアネート(東ソー製、HDI)338.4質量部とを、フラスコに入れ、窒素雰囲気下、95℃で4時間加熱混合した。これにより、イソシアネート基末端プレポリマーとしてのHDI系プレポリマー(a1)を得た。
【0156】
準備例2(MDI系プレポリマー(a2))
ポリエーテルポリオール(三井化学SKCポリウレタン製、商品名:アクトコールDiol3000、数平均分子量3000、平均水酸基数2)496.4質量部と、ポリエーテルポリオール(三井化学SKCポリウレタン製、商品名: アクトコールDiol400、数平均分子量400、平均水酸基数2)154.7質量部と、トルエンジイソシアネート(三井化学SKCポリウレタン製、T-80/20、TDI)348.9質量部とを、フラスコに入れ、窒素雰囲気下、95℃で4時間加熱混合した。これにより、イソシアネート基末端プレポリマーとしてのTDI系プレポリマー(a2)を得た。
【0157】
(b成分)イソシアヌレート誘導体
準備例3(IPDIイソシアヌレート(b1))
VESTANAT T 1890/100(イソホロンジイソシアネート(IPDI)のイソシアヌレート誘導体、エボニックジャパン製)を、IPDIイソシアヌレート(b1)として準備した。
【0158】
準備例4(HDIイソシアヌレート(b2))
タケネートD-170N(ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)のイソシアヌレート誘導体、三井化学社製)を、のHDIイソシアヌレート(b2)として、準備した。
【0159】
(c成分)潜在性活性水素化合物
準備例5(ウレタンポリオキサゾリジン(c1))
還流分液装置の付いた反応器に、ジエタノールアミン329.0質量部と、共沸溶媒のトルエン400.0質量部とを入れ、60℃で攪拌しながら、イソブチルアルデヒド271.0質量部を滴下し、その後、約130℃に昇温した。
【0160】
イソブチルアルデヒドの滴下による発熱反応によって系内を昇温するとともに、還流分液装置で脱水反応させ、水56質量部を除去した。次いで、減圧し、過剰のイソブチルアルデヒドおよびトルエンを除去した。
【0161】
これにより、N-ヒドロキシアルキルオキサゾリジンとして、2-イソプロピル-3-(2-ヒドロキシエチル)-1,3-オキサゾリジン(以下、OZと略する。)を得た。
【0162】
その後、得られた2-イソプロピル-3-(2-ヒドロキシエチル)-1,3-オキサゾリジン(OZ)582質量部と、イソホロンジイソシアネート(IPDI)418質量部とを、フラスコに仕込んだ(イソシアネート基:1モルに対してOZ: 1.03モル)。そして、これらを窒素雰囲気下、90℃で2時間反応させた。これにより、ウレタンポリオキサゾリジン(c1)を得た。
【0163】
なお、ウレタンポリオキサゾリジン化合物の生成は、赤外分光装置で2250cm-1(NCOの伸縮振動)のピークが消失したことにより確認した。
【0164】
(d成分)ポリアミン
準備例6(ポリアミン(d1))
エタキュア100(2,4-ジエチルトルエンジアミンと2,6-ジエチルトルエンジアミンの混合物、アルベマール社製)を、ポリアミン(d1)として準備した。
【0165】
(その他の成分)
準備例7(ポリオール)
アクトコールD-400(ポリオキシプロピレンジオール、PPG、数平均分子量400、MCNS社製)を、ポリオールとして準備した。
【0166】
準備例8(可塑剤)
フタル酸ジイソノニル(DINP、ジェイ・プラス製)を、可塑剤として準備した。
【0167】
実施例1~2および比較例1~4
表1に示す処方(質量比および当量比)となるように、表1に示す各成分を配合し、A液を調製した。また、表1に示す処方(質量比および当量比)となるように、表1に示す各成分を配合し、B液を調製した。これにより、A液およびB液を備える2液硬化型ポリウレア樹脂組成物を得た。
【0168】
評価
(1)ポットライフ
まず、A液(主剤)を撹拌容器に計り取り、次いで、B液(硬化剤)を加え、常温で3分間撹拌混合した。そして、得られた混合物を、増粘挙動の測定に使用した。より具体的には、得られた混合物100gを100ccのポリカップに入れ、25℃の恒温水槽中で、B-8M型回転粘度計を用いて、粘度を自動測定した。なお、測定条件はローターNo.4で6rpmとし、1分毎の粘度を測定した。
【0169】
そして、混合および撹拌後、粘度が10万mPa・s/25℃に到達するまでの時間を、可使時間(=ポットライフ)として測定した。
【0170】
(2)機械物性
まず、A液(主剤)を撹拌容器に計り取り、次いで、B液(硬化剤)を加え、常温で3分間撹拌混合した。そして、得られた混合物を、脱泡および硬化させて、樹脂の硬化物からなるシートを得た。
【0171】
より具体的には、JIS A6021(2011年)『「屋根用塗膜防水材」のウレタンゴム系』に記載の方法に準拠して、テフロン(登録商標)でコーティングした型に、混合物を流し込み、約2mm厚のシートを作製した。
【0172】
なお、シートは、23℃、相対湿度50%の条件で7日硬化させた後、脱型し、裏面を上にして、23℃、相対湿度50%の条件で2日間養生した。
【0173】
そして、得られたシートについて、JIS K 6253(2012)に準拠して、ショアA硬度を測定した。また、JIS A 6021(2011)に準拠して、引張強度、破断伸びおよび引裂強度を、それぞれ測定した。
【0174】
【0175】
なお、表中の略号の詳細を下記する。
HDI系プレポリマー;準備例1で得られたHDI系プレポリマー(a1)
TDI系プレポリマー;準備例2で得られたTDI系プレポリマー(a2)
T1890;準備例3で準備したIPDIイソシアヌレート(b1)
D-170N;準備例4で準備したHDIイソシアヌレート(b2)
ウレタンポリオキサゾリジン:準備例5で得られたウレタンポリオキサゾリジン(c1)
エタキュア100:準備例6で準備したポリアミン(d1)
アクトコールD-400;準備例7で準備したポリオキシプロピレンジオール(ポリオール)、PPG、数平均分子量400、MCNS社製
DINP;準備例8で準備したフタル酸ジイソノニル(可塑剤)、ジェイ・プラス製