(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023146314
(43)【公開日】2023-10-12
(54)【発明の名称】クレーンの制御システム
(51)【国際特許分類】
B66C 15/00 20060101AFI20231004BHJP
B66C 23/00 20060101ALI20231004BHJP
【FI】
B66C15/00 A
B66C23/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022053443
(22)【出願日】2022-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】503032946
【氏名又は名称】住友重機械建機クレーン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】弁理士法人武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】船渡 孝次
【テーマコード(参考)】
3F204
3F205
【Fターム(参考)】
3F204AA04
3F204CA05
3F204CA07
3F204FA04
3F204FC08
3F205AA07
(57)【要約】
【課題】コントローラの異常時でもアクチュエータの動作が可能なクレーンの制御システムを提供する。
【解決手段】本発明に係るクレーンの制御システムは、第1入力装置(23)と、第1入力装置からの操作指令に基づいて、第1アクチュエータ(231)を制御する第1コントローラ(50)と、第2入力装置(25)と、第2入力装置からの操作指令に基づいて、第2アクチュエータを制御する、第1コントローラとは異なる第2コントローラ(60)と、を備え、第2コントローラは、第1コントローラの異常時に、第1アクチュエータを制御する第1非常用制御を実行可能であることを特徴とする。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1入力装置と、
前記第1入力装置からの操作指令に基づいて、第1アクチュエータを制御する第1コントローラと、
第2入力装置と、
前記第2入力装置からの操作指令に基づいて、第2アクチュエータを制御する、前記第1コントローラとは異なる第2コントローラと、を備え、
前記第2コントローラは、前記第1コントローラの異常時に、前記第1アクチュエータを制御する第1非常用制御を実行可能であることを特徴とするクレーンの制御システム。
【請求項2】
請求項1に記載のクレーンの制御システムにおいて、
前記第1コントローラは、前記第2コントローラの異常時に、前記第2アクチュエータを制御する第2非常用制御を実行可能であることを特徴とするクレーンの制御システム。
【請求項3】
請求項1または2に記載のクレーンの制御システムにおいて、
前記第2コントローラは、前記第1コントローラと電気的に独立して設けられることを特徴とするクレーンの制御システム。
【請求項4】
請求項1~3の何れか1項に記載のクレーンの制御システムにおいて、
前記第1コントローラの異常時には、前記第2コントローラのバックアップポートを介して、前記第1入力装置と前記第1アクチュエータとが電気的に接続可能であることを特徴とするクレーンの制御システム。
【請求項5】
請求項4に記載のクレーンの制御システムにおいて、
前記バックアップポートの分解能は、前記第2コントローラの入力ポートの分解能よりも低いことを特徴とするクレーンの制御システム。
【請求項6】
請求項4または5に記載のクレーンの制御システムにおいて、
前記第1入力装置は、前記第1入力装置の操作に対応した第1信号と、前記第1入力装置の操作に対応し、かつ前記第1信号とは異なる第2信号と、を前記第1コントローラに出力し、
前記第1コントローラは、前記第1信号と前記第2信号とから前記第1コントローラの異常の有無を判定すると共に、前記第1コントローラが正常であると判定した場合に、前記第1信号または前記第2信号に基づいて前記第1アクチュエータを制御し、
前記第1コントローラの異常時には、前記第1信号と前記第2信号のうち一方を前記第2コントローラのバックアップポートに入力して、前記第2コントローラが前記第1アクチュエータを制御することを特徴とするクレーンの制御システム。
【請求項7】
請求項1~6の何れか1項に記載のクレーンの制御システムにおいて、
前記第1入力装置の異常時に、予備用入力装置からの操作指令に基づいて、前記第1アクチュエータを制御可能であることを特徴とするクレーンの制御システム。
【請求項8】
請求項1~7の何れか1項に記載のクレーンの制御システムにおいて、
前記第1非常用制御は、通常の制御に比べて、前記第1アクチュエータの動作速度が遅いことを特徴とするクレーンの制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クレーンの制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
クレーンでは、ウインチを巻上げ/巻下げ操作するウインチ操作レバー、走行レバー、旋回レバーなどの各種操作レバーとコントローラとが電気的に接続されている。コントローラは、各種操作レバーの操作指令に基づいて、アクチュエータである油圧モータ、走行モータ、旋回モータ等の駆動を制御している。従来、クレーンに搭載されているコントローラは1つである(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の従来技術では、1つのコントローラでアクチュエータが制御されているため、例えば落雷等によるサージ電圧がコントローラに印加するなどして、コントローラが故障した場合に、クレーンの各種動作を行うことができないといった課題がある。
【0005】
本発明は、コントローラの異常時でもアクチュエータの動作が可能なクレーンの制御システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係るクレーンの制御システムの一態様は、第1入力装置と、前記第1入力装置からの操作指令に基づいて、第1アクチュエータを制御する第1コントローラと、第2入力装置と、前記第2入力装置からの操作指令に基づいて、第2アクチュエータを制御する、前記第1コントローラとは異なる第2コントローラと、を備え、前記第2コントローラは、前記第1コントローラの異常時に、前記第1アクチュエータを制御する第1非常用制御を実行可能であることを特徴とする。
【0007】
本発明において、「アクチュエータを制御する」とは、アクチュエータの動作を直接制御する場合と、アクチュエータの動作を間接的に制御する場合とを含む概念で用いられる。例えば、アクチュエータが圧油により動作する場合において、アクチュエータに圧油を供給するための弁を制御すれば、間接的にアクチュエータの動作を制御することになる。よって、コントローラが弁を制御することは、本発明のアクチュエータを制御することに相当する。より具体的には、油圧ポンプから供給される圧油によってウインチ用の油圧モータ(アクチュエータ)を駆動する場合において、油圧ポンプと油圧モータとの間に設けられた方向制御弁の動作を制御することは、間接的に油圧モータを制御することになるから、本発明のアクチュエータを制御することに相当する。また同様に、方向制御弁にパイロット圧を供給するための電磁切換弁を制御することは、間接的に油圧モータを制御することになるから、本発明のアクチュエータを制御することに相当する。
【0008】
そして、本発明によれば、コントローラの異常時でもアクチュエータの動作が可能となる。なお、上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施形態に係るクレーンの側面図である。
【
図2】クレーンの油圧回路の全体構成を示す概略図である。
【
図3】起伏ウインチの駆動装置の全体構成図(油圧回路図)である。
【
図4】第1実施形態に係るクレーンの電気的構成を示すブロック図である。
【
図5】起伏操作レバーのレバー操作量と電圧信号との関係を示す図である。
【
図6】変形例2に係るクレーンの電気的構成を示すブロック図である。
【
図7】第2実施形態に係るクレーンの電気的構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第1実施形態)
以下、本発明に係るクレーンの実施形態について、図面を参照して説明する。
【0011】
図1は、本発明の実施形態に係るクレーンの側面図である。
図1に示すクレーン1は、クローラクレーンであり、走行体2と、旋回モータ531を含む旋回装置3と、旋回装置3を介して走行体2上に旋回可能に搭載された旋回体4と、旋回体4の先端部に起伏可能に取り付けられたブーム5と、ブーム5の先端に設けられたシーブ10,11及びシーブ17,18とを有している。シーブ10及びシーブ17を経由した主巻ロープ12と、シーブ11及びシーブ18を経由した補巻ロープ13とによって、アタッチメントの一例であるバケット16が吊り下げられている。勿論、バケット16の他に、荷物等も吊り上げられる。
【0012】
旋回体4にはキャブ9が設けられている。キャブ9には、入力装置としての各種操作レバー(主巻操作レバー21、補巻操作レバー22、起伏操作レバー23、走行レバー24L,24R、旋回レバー25など)が設けられており、オペレータはこれらの操作レバーを操作して、クレーン1の吊り荷作業や掘削作業、旋回操作、並びに走行操作を行う。なお、操作レバー21,22,23,24L,24R,25の代わりに操作ダイヤル等の入力装置を用いても良い。また、キャブ9には、クレーン1の運転状態や警告などの各種情報を表示するための表示装置79(
図4参照)が設けられている。
【0013】
主巻ロープ12、補巻ロープ13は旋回体4に搭載された主巻ウインチ6、補巻ウインチ7にそれぞれ巻回され、各ウインチ6,7の駆動によって各ロープ12,13が巻き取りまたは繰り出されて、吊り荷が昇降する。そして、バケット16を主巻ロープ12及び補巻ロープ13で吊り下げて、主巻ウインチ6と補巻ウインチ7とを同時に駆動することで、バケット16を巻上げまたは巻下げることができる。
【0014】
また、ブーム5の先端部にはペンダントロープ14が接続されており、旋回体4に搭載された起伏ウインチ8の駆動により起伏ロープ15が巻き取りまたは繰り出されると、ペンダントロープ14を介してブーム5が起伏される。
【0015】
図2は、クレーン1の油圧回路の全体構成を示す概略図である。
図2に示すように、クレーン1は、主巻ウインチ6を駆動する油圧モータ31、補巻ウインチ7を駆動する油圧モータ131の他に、起伏ウインチ8を駆動する油圧モータ231、走行用の油圧モータ331,431、及び旋回モータ531(
図1参照)を備えている。なお、
図2において旋回モータ531は省略している。各油圧モータ31,131,231,331,431,531(アクチュエータ)は、油圧ポンプ30及び/または油圧ポンプ130から供給される圧油によって駆動される。なお、油圧ポンプ30,130は何れも可変容量式であり、例えば斜板式のピストンポンプである。また、油圧モータ31,131,231,331,431も可変容量式のものが用いられている。
【0016】
なお、主巻ウインチ6用の油圧モータ31は主巻操作レバー21の操作により駆動され、補巻ウインチ7用の油圧モータ131は補巻操作レバー22の操作により駆動され、起伏ウインチ8用の油圧モータ231は起伏操作レバー23の操作により駆動される。また、走行用の油圧モータ331は走行レバー24Lの操作により駆動され、走行用の油圧モータ431は走行レバー24Rの操作により駆動され、旋回モータ531は旋回レバー25の操作により駆動される。
【0017】
油圧モータ31,131,431は、油圧ポンプ30に対して直列的に接続されてシリーズ回路S1を構成する。具体的には、油圧ポンプ30に対して圧油の流れの上流側から順に、走行用の油圧モータ431、補巻ウインチ7用の油圧モータ131、主巻ウインチ6用の油圧モータ31が、それぞれ方向制御弁432,132-1,32を介してセンター管路L1上に直列に配置されている。
【0018】
油圧ポンプ30から吐出された圧油は、センター管路L1を流れて、まず、油圧モータ431に流入する。油圧モータ431から流出した圧油は、次に油圧モータ131に流入する。油圧モータ131から流出した圧油は、次に油圧モータ31へと流入し、油圧モータ31から流出した圧油は、タンク34に戻る。このように、シリーズ回路S1は、1つの油圧ポンプ30によって、油圧モータ431,131,31に順番に圧油を供給して、3つの油圧モータを駆動できる。
【0019】
同様に、油圧モータ31,131,231,331は、油圧ポンプ130に対して直列的に接続されてシリーズ回路S2を構成する。具体的には、油圧ポンプ130に対して圧油の流れの上流側から順に、走行用の油圧モータ331、起伏ウインチ8用の油圧モータ231、補巻ウインチ7用の油圧モータ131、主巻ウインチ6用の油圧モータ31が、それぞれ方向制御弁332,232,132,32-1を介してセンター管路L2上に直列に配置されている。
【0020】
油圧ポンプ130から吐出された圧油は、センター管路L2を流れて、まず、油圧モータ331に流入する。油圧モータ331から流出した圧油は、次に油圧モータ231に流入する。油圧モータ231から流出した圧油は、次に油圧モータ131へと流入する。油圧モータ131から流出した圧油は、次に油圧モータ31に流入する。油圧モータ31から流出した圧油は、タンク34に戻る。このように、シリーズ回路S2は、1つの油圧ポンプ130によって、油圧モータ331,231,131,31に順番に圧油を供給して、4つの油圧モータを駆動できる。
【0021】
なお、
図2において、補巻ウインチ7用の油圧モータ131が主巻ウインチ6用の油圧モータ31よりも油圧ポンプ30及び油圧ポンプ130に対してそれぞれ上流側に設けられているが、両者の位置は逆でも良い。
【0022】
さらに、本実施形態では、シリーズ回路S1とシリーズ回路S2とを合流させる合流回路M1,M2が設けられている。
【0023】
合流回路M1は、油圧ポンプ30から油圧モータ31へ圧油を供給するメイン管路37,38に対して油圧ポンプ130からの圧油を合流させるための回路であって、管路71,72を備える。管路71はメイン管路37と、管路72はメイン管路38とそれぞれ接続されており、油圧ポンプ130からの圧油が、管路71,72を介して油圧モータ31へ供給可能となっている。よって、油圧モータ31を、2つの油圧ポンプ30,130によって駆動できる。
【0024】
合流回路M2は、油圧ポンプ130から油圧モータ131へ圧油を供給するメイン管路137,138に対して油圧ポンプ30からの圧油を合流させるための回路であって、管路171,172を備える。管路171はメイン管路137と、管路172はメイン管路138とそれぞれ接続されており、油圧ポンプ30からの圧油が、管路171,172を介して油圧モータ131へ供給可能となっている。よって、油圧モータ131を、2つの油圧ポンプ30,130によって駆動できる。
【0025】
また、シリーズ回路S1では、回路内の圧力を制限するために、油圧ポンプ30と方向制御弁432との間の位置にリリーフ弁35が設けられている。シリーズ回路S2も同様に、リリーフ弁36を備えている。
【0026】
次に、油圧モータと方向制御弁との間の油圧回路の構成の詳細について、起伏ウインチ8を駆動する油圧モータ231の油圧回路を例に挙げて説明する。
【0027】
図3は、起伏ウインチ8の駆動装置の全体構成図(油圧回路図)である。
図3に示すように、起伏ウインチ8の駆動装置は、可変容量式の油圧ポンプ130と、一対のメイン管路237,238を介して供給される油圧ポンプ130からの圧油によって駆動する可変容量式の油圧モータ231と、油圧ポンプ130から油圧モータ231への圧油の流れを制御する方向制御弁232と、方向制御弁232と油圧モータ231の間に介装されるカウンターバランス弁233と、ポンプ吐出圧を制限するリリーフ弁36(
図2参照)と、起伏ウインチ8の駆動を指令する電気式の起伏操作レバー23と、油圧モータ231のモータ容量(モータ傾転、モータ吸収量ともいう)を制御するレギュレータ240と、を備える。
【0028】
油圧モータ231の出力軸と起伏ウインチ8のドラム8aとは連結しており、油圧モータ231の回転に連動してドラム8aが回転し、起伏ロープ15が巻き取りまたは繰り出される。なお、油圧ポンプ130は、旋回体4内に設けられたエンジン(図示せず)により駆動される。
【0029】
起伏操作レバー23からの電圧信号(操作指令)は、コントローラ50,60を介して電磁切換弁255,256に入力される。電磁切換弁255,256は、常態では位置P1の状態である。オペレータが起伏操作レバー23を操作すると、コントローラ50,60から電磁切換弁255,256に操作信号が入力され、電磁切換弁255,256は位置P1から位置P2に切り換わる。そうすると、油圧源であるパイロットポンプ47からの圧油(パイロット圧)が、方向制御弁232の受圧部232aまたは受圧部232bに導入され、方向制御弁232が位置A40から位置A41または位置A42に切り換わる。方向制御弁232が位置A41に切り換わると、起伏ウインチ8が巻上げられ、方向制御弁232が位置A42に切り換わると、起伏ウインチ8は巻下げられる。起伏ウインチ8が巻上げられるとブーム5が起立し、起伏ウインチ8が巻下げられるとブーム5は倒伏する。なお、
図3において、符号E1~E8は電気配線を示している。
【0030】
ここで、方向制御弁232の代わりに電磁比例式の方向制御弁を用いても良い。この場合、パイロット圧を方向制御弁に導入する必要がないため、油圧配管を簡素化できる。
【0031】
起伏ウインチ8の巻上げ速度及び巻下げ速度は、レギュレータ240によって制御される。レギュレータ240は、油圧モータ231のモータ傾転を変化させるための装置であり、例えばピストンの移動に伴って斜板の角度が変更される構成であるが、この構成自体は公知であるため、ここでの説明は省略する。
【0032】
なお、図示は省略するが、主巻ウインチ6用の油圧モータ31及び補巻ウインチ7用の油圧モータ131についても上記と同様の回路構成となっており、主巻操作レバー21,補巻操作レバー22を操作することで主巻ウインチ6の油圧モータ31及び補巻ウインチ7の油圧モータ131が回転する。
【0033】
次に、クレーン1の電気的構成について説明する。本実施形態では、2つのコントローラ50,60でアクチュエータである油圧モータを制御している点に特徴がある。
図4は、第1実施形態に係るクレーン1の電気的構成を示すブロック図であり、起伏操作レバー23と、コントローラ50,60と、電磁切換弁255,256との電気的構成を示す。
【0034】
第1コントローラ50及び第2コントローラ60は、それぞれCPUや記憶装置であるROM及びRAM、その他の周辺回路などを有する演算処理装置を含んで構成される。
図4に示すように、第1コントローラ50は、その入力側が起伏操作レバー23と電気配線E1を介して接続され、その出力側が電気配線E3,E7を介して電磁切換弁255,256と接続されている。第2コントローラ60は、その入力側が起伏操作レバー23と電気配線E2を介して接続され、その出力側が電気配線E4,E8を介して電磁切換弁255,256と接続されている。第1コントローラ50と第2コントローラ60とは、電気配線E5,E6を介して接続されており、両者は互いにCAN通信可能に構成される。
【0035】
ここで、本実施形態において、電気配線E4,E8は、第2コントローラ60の出力ポートのうちバックアップ時以外で使用しない低分解能の出力ポートに接続されており、第2コントローラ60が、起伏操作レバー23の操作量に応じた電圧信号を電気配線E4,E8を介して電磁切換弁255,256に比例出力できない構成となっている。そのため、後述するように、通常時は、第1コントローラ50が電気配線E3,E7を介して電磁切換弁255,256を比例制御し、第1コントローラ50が異常の場合に限って、第2コントローラ60がバックアップとして電気配線E4,E8を介して電磁切換弁255,256を低精度で制御する。
【0036】
起伏操作レバー23が操作されると、レバー操作量に応じた電圧信号(例えば0-5V)が第1コントローラ50と第2コントローラ60とに分かれて入力される。
図5は、起伏操作レバー23のレバー操作量と電圧信号V1,V2との関係を示す図である。
図5に示すように、電圧信号V1(第1信号)は、起伏操作レバー23のレバー操作量の増加に比例して電圧が0V~5Vの範囲で大きくなる線形特性の信号である。一方、電圧信号V2(第2信号)は、起伏操作レバー23のレバー操作量の増加に反比例して電圧が5V~0Vの範囲で小さくなる線形特性の信号である。
【0037】
例えば、起伏操作レバー23のレバー操作量がF1のとき、電圧信号V1は3V、電圧信号V2は2Vであり、電圧信号V1+電圧信号V2=5Vとなる。そして、
図5から明らかなように、電圧信号V1と電圧信号V2の合計値Vtは、レバー操作量の値にかかわらず5V(一定値)となる。
【0038】
図4に示すように、電圧信号V1は第1コントローラ50に入力され、電圧信号V2は第2コントローラ60に入力される。第1コントローラ50と第2コントローラ60とはCAN通信が行われているから、第2コントローラ60に入力された電圧信号V2は電気配線E6を介して第1コントローラ50に送信される。よって、第1コントローラ50は、起伏操作レバー23から直接入力された電圧信号V1と、第2コントローラ60から送信された電圧信号V2とから、電圧信号の合計値Vtを求めることができる。
【0039】
例えば、起伏操作レバー23が操作量F1だけ操作されると、3Vの電圧信号V1が第1コントローラ50に入力され、2Vの電圧信号V2が第2コントローラ60を介して送信される(
図5参照)。第1コントローラ50は、電圧信号V1(3V)と電圧信号V2(2V)との合計値Vtを求める。第2コントローラ60が正常であれば、第2コントローラ60から第1コントローラ50に電圧信号V2が送信されているため、合計値Vtは5Vとなる。よって、合計値Vtが5Vであれば、第1コントローラ50は第2コントローラ60が正常であると判定する。
【0040】
そして、第1コントローラ50は、起伏操作レバー23から入力された電圧信号V1に対応した電流指令値を電磁切換弁255または電磁切換弁256に出力する。即ち、第1コントローラ50は、起伏操作レバー23の操作方向とレバー操作量に応じて、油圧モータ231を正転または逆転させて、起伏ウインチ8による巻上げまたは巻下げ動作を制御する。
【0041】
第2コントローラ60も第1コントローラ50と同様に電圧信号V1と電圧信号V2の合計値Vtを求めている。起伏操作レバー23のレバー操作量がF1で、第1コントローラ50が正常であれば、第2コントローラ60が求める合計値Vtも5Vとなる。しかし、第1コントローラ50が異常の場合には、第1コントローラ50から第2コントローラ60に電圧信号V1が送信されない。そのため、第2コントローラ60には電圧信号V2(2V)しか入力されず、第2コントローラ60が求める合計値Vtは2Vとなる。この場合、第2コントローラ60は、第1コントローラ50が異常であると判定する。そして、第2コントローラ60は、表示装置79にエラー信号を出力し、表示装置79は、第1コントローラ50が異常である旨の報知を行う。
【0042】
第1コントローラ50が異常の場合、第1コントローラ50が起伏操作レバー23の操作指令に基づいて電磁切換弁255,256を制御することができなくなるため、第1コントローラ50の修理または交換を行わなければならない。クレーン1の通常作業中に第1コントローラ50を修理または交換する際には、起立した状態のブーム5を倒伏状態にさせるのが好ましい。
【0043】
そこで、第1実施形態では、第1コントローラ50の異常時には、起伏操作レバー23の操作指令に基づいて、第2コントローラ60が電磁切換弁255,256を制御して、ブーム5を倒伏状態にできるようにしている。
【0044】
具体的には、第2コントローラ60が第1コントローラ50の異常を検出すると、電気配線E2を介して入力された電圧信号V2(2V)に基づいて、電気配線E4,E8を介して電磁切換弁255または電磁切換弁256に出力し、油圧モータ231を正転または回転させるよう制御する(第1非常用制御)。このとき、電気配線E4,E8は、第1コントローラ50の電気配線E3,E7に接続される出力ポートよりも低分解能の出力ポートに接続されているため、第2コントローラ60は、電圧信号V2に対応する電流指令値を比例出力するのではなく、階段状に出力する。つまり、第1コントローラ50が異常の場合、第2コントローラ60が起伏操作レバー23のレバー操作に基づいて、低精度で電磁切換弁255,256を制御する。
【0045】
なお、本実施形態では、第1コントローラ50が正常である場合には、第2コントローラ60が起伏操作レバー23に基づいて電磁切換弁255,256を制御することはない。つまり、第2コントローラ60は、第1コントローラ50のバックアップとして機能する。主巻操作レバー21及び補巻操作レバー22についても同様で、第1コントローラ50が異常の場合に限って、第2コントローラ60によるそれぞれの第1非常用制御が行われる。
【0046】
一方、走行レバー24L,24R及び旋回レバー25は、通常、第2コントローラ60による制御が行われ、第2コントローラ60が異常の場合に限って第1コントローラ50によるそれぞれの第2非常用制御が行われる。
【0047】
即ち、本実施形態では、第1コントローラ50は、主としてウインチ6,7,8の制御を行い、第2コントローラ60の異常時にバックアップとして走行、旋回の制御を行う(第2非常用制御)。一方、第2コントローラ60は、主として走行、旋回の制御を行い、第1コントローラ50の異常時にバックアップとして、ウインチ6,7,8の制御を行う(第1非常用制御)。
【0048】
以上説明したように、第1実施形態によれば、第1コントローラ50と第2コントローラ60のうち一方に異常があった場合に、他方が操作レバーの操作に基づいて油圧モータ(アクチュエータ)を制御できるため、クレーン1の制御システムの信頼性が向上する。例えば、起伏操作レバー23の操作中に第1コントローラ50が故障すると、従来であれば、電磁切換弁255,256に電流指令値が出力されないため、ブーム5を倒伏動作させることはできなかったが、本実施形態では、第1コントローラ50が故障しても、第2コントローラ60が起伏操作レバー23の電圧信号に基づいて電磁切換弁255,256を動作させることができる。そのため、ブーム5を倒伏動作させてクレーン1の姿勢を安定させた状態で、第1コントローラ50の修理または交換を行うことができる。また、第2コントローラ60の電気配線E4,E8に接続される出力ポートは、第1コントローラ50の電気配線E3,E7に接続される出力ポートよりも低分解能で十分であるため、第2コントローラ60のコストを抑えることができる。
【0049】
(変形例1)
ここで、第2コントローラ60により実行される上記の第1非常用制御において、第1コントローラ50が起伏操作レバー23のレバー操作量に応じて行う通常制御と比べて、起伏ウインチ8の回転速度(動作速度)を低速にする構成としても良い。より具体的には、第2コントローラ60が、レバー操作量に対して例えば、正常時の半分程度の電流指令値を電磁切換弁255,256に出力し、油圧モータ231を通常より低速で回転させる。こうすれば、第1コントローラ50の異常時に、ゆっくりと起伏ウインチ8を回転させて、より安全にブーム5を倒伏させてクレーン1を安定した姿勢にすることができる。また、第2コントローラ60は、第1コントローラ50の異常を検出した場合に、油圧モータ231のモータ傾転を強制的に大きくしたり、エンジンのコントローラ(ECU)に指令を出力して、エンジンの回転数を強制的に減速させたりすることで、起伏ウインチ8をゆっくりと回転させるようにしても良い。
【0050】
また、バックアップ時は起伏操作レバー23の操作量に対して、正常時の半分程度の電流指令値を電磁切換弁255,256に出力し、油圧モータ231を通常より低速で回転させる構成としたので、その電流指令値の解像度も低く出力が階段状になっても、油圧モータ231の速度の変化が現れにくく、比例出力に対応してない出力ポートや低解像比例出力ポートもバックアップ用に使用できる。つまり、電気配線E4,E8が接続される第2コントローラ60の出力ポートが低解像比例出力ポートであっても、異常時において十分にバックアップとして機能する。
【0051】
(変形例2)
また、第1コントローラ50と第2コントローラ60の構成を以下の通り変形しても良い。
図6は、変形例2に係るクレーン1の電気的構成を示すブロック図であり、起伏操作レバー23と、コントローラ50,60と、電磁切換弁255,256との電気的構成を示す。
図6に示すように、変形例2では、正常時は、起伏ウインチ8の巻上げの制御を第1コントローラ50が行って、起伏ウインチ8の巻下げの制御を第2コントローラ60で行う構成となっている。つまり、正常時は、第1コントローラ50が電磁切換弁255を比例制御し、第2コントローラ60が電磁切換弁256を比例制御する。そして、第1コントローラ50と第2コントローラ60の一方が異常の場合には、他方がバックアップとして起伏ウインチ8の巻上げまたは巻下げを行う構成となっている。
【0052】
具体的には、第2コントローラ60が第1コントローラ50の異常を検出すると、電気配線E2を介して入力された電圧信号V2(2V)に対応する電流指令値を、電気配線E4を介して電磁切換弁256に出力すると共に、電気配線E8を介して正常時には出力しない電磁切換弁255に出力し、油圧モータ231を正転または回転させるよう制御する(第1非常用制御)。つまり、第1コントローラ50が異常の場合、第2コントローラ60が起伏操作レバー23からの操作指令に基づいて低精度で油圧モータ231を制御し、起伏ウインチ8の巻上げまたは巻下げの動作を行っている。
【0053】
逆に、第2コントローラ60の異常が第1コントローラ50で検出されると、第1コントローラ50は、電気配線E1を介して入力された電圧信号V1(3V)に対応する電流指令値を、電気配線E3を介して電磁切換弁255に出力すると共に、電気配線E7を介して正常時には出力しない電磁切換弁256に出力し、油圧モータ231を正転または回転させるよう制御する(第2非常用制御)。
【0054】
なお、変形例2では、第1コントローラ50が正常である場合には、第2コントローラ60が起伏操作レバー23に基づいて電磁切換弁256を制御するが、電磁切換弁255は制御することはなく、また、第2コントローラ60が正常である場合には、第1コントローラ50が起伏操作レバー23に基づいて電磁切換弁255を制御するが、電磁切換弁256は制御することはない。この変形例2においても、第2コントローラ60は第1コントローラ50のバックアップとして、第1コントローラ50は第2コントローラ60のバックアップとして、機能する。
【0055】
なお、主巻操作レバー21及び補巻操作レバー22についても同様で、第1コントローラ50が異常の場合に限り第2コントローラ60によるそれぞれの第1非常用制御が行われ、第2コントローラ60が異常の場合に限り第1コントローラ50によるそれぞれの第2非常用制御が行われる。
【0056】
更に巻き上げ系だけでなく、走行レバー24L,24R及び旋回レバー25も同様である。
【0057】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係るクレーンについて説明する。第2実施形態に係るクレーンは、第1実施形態と比べて、第1コントローラ50と第2コントローラ60の電気的構成が異なっている点に特徴がある。そこで、以下、第2実施形態の特徴点について説明し、第1実施形態と同じ構成についての説明は省略する。
【0058】
図7は、第2実施形態に係るクレーンの電気的構成の要部を示すブロック図である。
図7に示すように、第2実施形態では、第1コントローラ50と第2コントローラ60とが電気的に独立している。即ち、第1コントローラ50と第2コントローラ60との間でCAN通信を行っていない。
【0059】
第2実施形態では、第1実施形態と同様に、主巻操作レバー21、補巻操作レバー22、及び起伏操作レバー23が第1コントローラ50と接続され、走行レバー24L,24R及び旋回レバー25が第2コントローラ60と接続されている。即ち、ウインチ6,7,8の操作に関する制御を第1コントローラ50が行い、旋回、走行の操作に関する制御を第2コントローラ60が行っている。なお、
図7では、説明の簡略化のために起伏操作レバー23及び旋回レバー25のみを示しており、その他のレバーについては図示を省略している。
【0060】
図7に示すように、第1コントローラ50は、その入力側に電気配線E21,E22を介して起伏操作レバー23が接続され、その出力側に電気配線E23,E24を介して電磁切換弁255,256が接続されている。第1コントローラ50は、起伏操作レバー23からの操作指令に基づいて、電磁切換弁255,256を開閉して油圧モータ231を制御する(起伏ウインチ8の巻上げ/巻下げを制御する)。第1コントローラ50の入力側には入力ポート51と、予備用のバックアップポート52とが設けられている。起伏操作レバー23は入力ポート51に接続される。バックアップポート52の分解能(入力信号の分解能)は、入力ポート51より低い。例えば、入力ポート51の分解能は24ビットであり、バックアップポート52の分解能は8ビットである。そのため、バックアップポート52は、入力ポート51に比べて大きな電圧変化しか判別できない。
【0061】
また、第2コントローラ60は、その入力側に電気配線E27,E28を介して旋回レバー25が接続され、その出力側に電気配線E29,E30を介して旋回モータ531の方向制御弁(図示せず)にパイロット圧を供給するための電磁切換弁555,556が接続されている。第2コントローラ60は、旋回レバー25からの操作指令に基づいて、電磁切換弁555,556を開閉して旋回モータ531を制御する(旋回体4の回転を制御する)。第2コントローラ60の入力側には、第1コントローラ50と同様に、入力ポート61と、入力ポート61より入力信号の分解能が低いバックアップポート62が設けられている。なお、旋回レバー25は入力ポート61に接続される。
【0062】
第2実施形態では、起伏操作レバー23からの電圧信号V1と電圧信号V2とは、共に第1コントローラ50に入力される。そして、第1コントローラ50が電圧信号V1と電圧信号V2の合計値Vtを算出する。
【0063】
第1コントローラ50は、その合計値Vtが5V(
図5参照)であった場合に、自身が正常であると判定し、電気配線E23,E24を介して電磁切換弁255,256に起伏操作レバー23の操作量に応じた電流指令値を出力する。一方、第1コントローラ50は、合計値Vtが5Vでない場合には、自身が異常であると判定し、電磁切換弁255,256に電流指令値を出力せず、表示装置79に異常を報知する。この場合、第1コントローラ50による油圧モータ231の制御(起伏ウインチ8の制御)が行われない。
【0064】
第2実施形態において、第1コントローラ50に異常が生じた場合には、次に述べる方法により第1非常用制御が行われる。
【0065】
具体的には、第1コントローラ50に異常が発生した場合、電気配線E22を第1コントローラ50の入力ポート51から外して、第2コントローラ60のバックアップポート62に差し込み、起伏操作レバー23と第2コントローラ60の入力側とを接続する。また、第1コントローラ50の出力側に接続された電気配線E23,E24を外して、第2コントローラ60の出力側のバックアップポート(図示せず)に接続する。このように、起伏操作レバー23と電磁切換弁255,256とを第2コントローラ60を介して接続する。
【0066】
バックアップポート62の分解能は入力ポート61より低いため、第2コントローラ60は、起伏操作レバー23の操作量に応じた制御はできないが、バックアップポート62を介して、起伏ウインチ8を巻下げてブーム5を倒伏させてクレーンを安定した姿勢にすることができる。
【0067】
さらに、第2実施形態では、第1コントローラ50と起伏操作レバー23の両方が故障した場合に、予備用の操作端末(予備用入力装置)であるジャッキアップリモコン80から第2コントローラ60を介して起伏ウインチ8を駆動できる構成としている。このジャッキアップリモコン80は、主巻操作レバー21、補巻操作レバー22、起伏操作レバー23、走行レバー24L,24R、及び旋回レバー25の操作指令を簡易的に出力できる機能を有している。
【0068】
そこで、
図7に示すように、ジャッキアップリモコン80を第2コントローラ60と電気配線E31を介して接続し、ジャッキアップリモコン80を操作することで、起伏ウインチ8を巻上げまたは巻下げることができる。よって、第2実施形態によれば、第1コントローラ50と起伏操作レバー23が同時に故障した場合であっても、ジャッキアップリモコン80から第2コントローラ60を介して起伏ウインチ8を動作させ、クレーンを安定した姿勢にすることができる。
【0069】
同様に、第2コントローラ60が故障した場合には、旋回レバー25の電気配線E7を第1コントローラ50のバックアップポート52に繋いで、電磁切換弁555,556と第1コントローラ50とを電気配線E29,E30で繋げば、第1コントローラ50を介して旋回レバー25の操作に基づく旋回モータ531の制御が可能である。さらに、第2コントローラ60及び旋回レバー25が同時に故障した場合には、ジャッキアップリモコン80を第1コントローラ50のバックアップポート52に接続すれば、ジャッキアップリモコン80から第1コントローラ50を介して旋回モータ531を駆動することができる。
【0070】
ここで、第1コントローラ50及び第2コントローラ60の出力側の異常は、電磁切換弁255,256,555,556に出力した電流指令値のフィードバック電流を監視することで判定できる。そして、フィードバック電流が検出されない場合、第1コントローラ50及び第2コントローラ60は、自身の異常を検出し、表示装置79に異常を報知する。
【0071】
以上説明したように、第2実施形態によれば、第1実施形態と同様の作用効果を奏することができる。加えて、第1コントローラ50と第2コントローラ60とが電気的に独立しているため、例えば落雷等により一方のコントローラが故障したとしても、他方のコントローラにサージ電圧が印加しないため、2つのコントローラが同時に故障するリスクを回避できる。よって、より信頼性の高いクレーンの制御システムを構築できる。
【0072】
また、バックアップポート52,62は低分解能であるが、異常時にクレーンを安定した姿勢にする目的であれば十分であるし、予備として空いているポートを使用するだけで、低コストで異常時における非常用制御を実行できる。加えて、コントローラ50,60自体も高分解能用の電子部品を積まなくて良いため、コントローラ50,60を小型化し易い。また、予備のポート1つを使用するだけで良いため、バックアップ用にポートを増やす必要がなく、コントローラ50,60を小型化できる。
【0073】
なお、第2実施形態においても、第1実施形態の変形例1に記載した通りの制御、即ち、コントローラの異常時にウインチの回転速度を低速にする制御を実行しても良い。この場合、バックアップポート62にジャッキアップリモコン80が接続されたタイミングや、ジャッキアップリモコン80からの操作指令がコントローラに入力されたタイミングで、ウインチの回転速度を低速にする制御を開始すれば良い。
【0074】
また、第1実施形態では、第1コントローラ50と第2コントローラ60とでCAN通信を行う構成としていたため、第1コントローラ50に入力される電圧信号V1と、第2コントローラ60を介して送信される電圧信号V2との間にタイムラグが生じ、電圧信号V1と電圧信号V2の合計値Vtによる異常判定を精度良く行うことが困難な場合も考えられる。その点、第2実施形態では、第1コントローラ50と第2コントローラ60との間で通信を行うことなく高精度で異常判定を行える利点がある。しかも、異常の場合には、電気配線を一方のコントローラから他方のコントローラに繋ぎ変えるだけで良いため、コントローラ間の通信や複雑な制御も不要となる点においても、第1実施形態と比べて有利である。
【0075】
なお、本発明は前述した実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であり、特許請求の範囲に記載された技術思想に含まれる技術的事項の全てが本発明の対象となる。前記実施形態は、好適な例を示したものであるが、当業者ならば、本明細書に開示の内容から、各種の代替例、修正例、変形例あるいは改良例を実現することができ、これらは添付の特許請求の範囲に記載された技術的範囲に含まれる。
【0076】
また、クレーンの一例として、クローラクレーンを例示したが、本発明は、これに限らず、ホイールクレーン、トラッククレーン、ラフテレーンクレーン、オールテレーンクレーン等の他の移動式クレーンに加えて、タワークレーン、天井クレーン、ジブクレーン、引込みクレーン、スタッカークレーン、門型クレーン、アンローダ、アースドリル等の基礎機械等のあらゆるクレーンに適用可能である。
【符号の説明】
【0077】
1 クレーン
2 走行体
3 旋回装置
4 旋回体
5 ブーム
6 主巻ウインチ
7 補巻ウインチ
8 起伏ウインチ
9 キャブ
10,11 シーブ
12 主巻ロープ
13 補巻ロープ
14 ペンダントロープ
15 起伏ロープ
16 バケット
17,18 シーブ
21 主巻操作レバー(第1入力装置)
22 補巻操作レバー(第1入力装置)
23 起伏操作レバー(第1入力装置)
24L,25R 走行操作レバー(第2入力装置)
25 旋回操作レバー(第2入力装置)
30,130 油圧ポンプ
31,131,231 油圧モータ(第1アクチュエータ)
32,32-1,132,232,332,432 方向制御弁
34 タンク
35,36 リリーフ弁
47 パイロットポンプ
50 第1コントローラ
51 入力ポート
52 バックアップポート
60 第2コントローラ
61 入力ポート
62 バックアップポート
79 表示装置
80 ジャッキアップリモコン(予備用入力装置)
240 レギュレータ
255,256,555,556 電磁切換弁
331,431、531 油圧モータ(第2アクチュエータ)
E1~E31 電気配線
V1 電圧信号(第1信号)
V2 電圧信号(第2信号)