(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023146320
(43)【公開日】2023-10-12
(54)【発明の名称】模擬地震動の作成方法
(51)【国際特許分類】
G01M 7/02 20060101AFI20231004BHJP
【FI】
G01M7/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022053452
(22)【出願日】2022-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】507250427
【氏名又は名称】日立GEニュークリア・エナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】小杉 慎司
(57)【要約】
【課題】目標スペクトルに対して検定されており、かつ、加振装置の加振限界の範囲に収まる模擬地震動の作成方法を提供する。
【解決手段】模擬地震動の作成方法は、候補模擬地震動を作成する第6ステップ(S106)の検定において作成される候補模擬地震動が加振装置の加振限界スペクトル(6)以下であることを判定するとともに、作成した候補模擬地震動のうち加振限界スペクトル(6)を超えていた場合に作成した候補模擬地震動のうち加振装置の加振限界スペクトル(6)を超過する振動数範囲の成分を補正して模擬地震動を作り直す第9ステップ(S109)を含む。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
模擬地震動の作成方法であって、
候補模擬地震動を作成するステップの検定において作成される前記候補模擬地震動が加振装置の加振限界スペクトル以下であることを判定し、
作成した前記候補模擬地震動が前記加振限界スペクトルを超えていた場合には、作成した前記候補模擬地震動のうち前記加振装置の前記加振限界スペクトルを超過する振動数範囲の成分を補正して前記模擬地震動を作り直すステップを含む
模擬地震動の作成方法。
【請求項2】
請求項1に記載の模擬地震動の作成方法であって、
作成する前記候補模擬地震動の検定条件として、
目標スペクトルの振幅に対する前記候補模擬地震動の応答スペクトルの振幅比として求める応答スペクトル誤差の許容値と前記加振限界スペクトルとを設定し、
前記加振限界スペクトルに対する前記候補模擬地震動の応答スペクトルの振幅比として求まるスペクトル超過比を算定し、
前記候補模擬地震動の作成結果が前記検定条件を満足しない場合には、前記応答スペクトル誤差の許容値と、前記スペクトル超過比が1を超過する振動数範囲における前記スペクトル超過比の逆数と、をフーリエ振幅スペクトルに掛け合わせることで前記候補模擬地震動の作成条件を補正し、再び前記候補模擬地震動の作成及び前記検定を行い、
前記候補模擬地震動の作成結果が前記検定条件を満足した場合には、前記候補模擬地震動を前記模擬地震動として取得する
模擬地震動の作成方法。
【請求項3】
請求項2に記載の模擬地震動の作成方法であって、
前記模擬地震動の作成条件として位相スペクトルの初期乱数と前記フーリエ振幅スペクトルの許容補正回数とを設定して前記候補模擬地震動の作成を行い、
前記フーリエ振幅スペクトルの許容補正回数までに前記候補模擬地震動の作成結果が前記検定条件を満足しない場合には、前記位相スペクトルの初期乱数を更新して再び前記候補模擬地震動の作成を行う
模擬地震動の作成方法。
【請求項4】
請求項2に記載の模擬地震動の作成方法であって、
前記候補模擬地震動の前記検定条件を設定するステップにおいて、
前記加振限界スペクトルの振幅に対する前記目標スペクトルの振幅として目標/加振限界スペクトル比を計算し、
前記目標/加振限界スペクトル比と前記応答スペクトル誤差の許容値との積が1以上となって、前記加振装置の前記加振限界スペクトルを超えた場合には、
前記目標スペクトルの入力データを再登録する修正方法と、
前記目標スペクトルの振幅を除去する修正方法と、
前記加振限界スペクトルにより修正する方法と、
を提示する
模擬地震動の作成方法。
【請求項5】
請求項4に記載の模擬地震動の作成方法であって、
前記目標スペクトルの振幅を除去する修正方法が指定された場合には、
振幅を除去する範囲を指定し、指定された範囲の振幅成分を除去した前記目標スペクトルの計算を行い、
前記加振限界スペクトルにより修正する方法が指定された場合には、
前記加振装置の前記加振限界スペクトルを超過する振動数範囲の成分において前記加振限界スペクトルから前記応答スペクトル誤差の許容値を引いた値として前記目標スペクトルの振幅を修正する
模擬地震動の作成方法。
【請求項6】
請求項2に記載の模擬地震動の作成方法であって、
前記加振限界スペクトルを予め設定した前記加振装置のデータ及び前記加振装置の加振限界条件をデータベースから選択する
模擬地震動の作成方法。
【請求項7】
模擬地震動の作成方法であって、
前記模擬地震動の作成条件及び加振限界スペクトルの設定を実施する第1ステップと、
初期条件のフーリエ振幅スペクトルを作成し、フーリエ振幅初期条件を設定する第2ステップと、
前記初期条件のフーリエ振幅スペクトルと、位相スペクトルの初期乱数を用いて一様乱数を作成することで得られるフーリエ位相スペクトルと、で構成される複素フーリエ係数を算定し、算定した複素フーリエ係数をフーリエ逆変換することで加速度時刻歴波形を得る第3ステップと、
前記加速度時刻歴波形と包絡関数とを掛け合わせることで、候補模擬地震動の加速度時刻歴波形を得る時間関数の計算を実施する第4ステップと、
前記候補模擬地震動の加速度時刻歴波形に対して応答スペクトル解析を行い、候補模擬地震動の応答スペクトルを算定する第5ステップと、
前記候補模擬地震動の応答スペクトルが目標スペクトルに対する候補模擬地震動の応答スペクトル誤差の許容値を満足し、かつ、加振限界スペクトル以下となっているかどうかを判定する第6ステップと、
前記候補模擬地震動の応答スペクトルが前記第6ステップの判定条件を満足する場合に、前記候補模擬地震動を模擬地震動として採用し、出力データを書き出す第7ステップと、
前記候補模擬地震動の応答スペクトルが前記第6ステップの判定条件を満足しない場合に、試行回数iがフーリエ振幅の許容補正回数Nに達したかどうかを判定する第8ステップと、
前記試行回数iがフーリエ振幅の許容補正回数Nに達していない場合に、フーリエ振幅の補正を行う第9ステップと、
前記フーリエ振幅の補正を行った後、前記試行回数iを1増やして、補正したフーリエ振幅を用いて前記第3ステップに戻る第10ステップと、
前記試行回数iがフーリエ振幅の許容補正回数Nに達した場合に、前記位相スペクトルの初期乱数を用いた場合の模擬地震動の作成の検討が発散したと判定される第11ステップと、
前記第11ステップに引き続き、前記位相スペクトルの初期乱数を異なる値に変更して当該初期乱数を更新し、その後、更新された前記初期乱数に基づいて前記加速度時刻歴波形を求める前記第3ステップに戻る第12ステップと、
を含む
模擬地震動の作成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、模擬地震動の作成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
構造物や機器の地震に対する耐久性を調査する方法として、耐震試験が挙げられる。この試験では、構造物や機器やその一部を試験体として加振機や振動台といった加振装置に試験体を設置して構造物や機器に作用することが想定される地震荷重を入力する。構造物や機器に求められている地震に対する耐久性である耐震性能や構造物や機器に作用する地震荷重は、応答スペクトルで提示される場合が多い。耐震試験で入力として用いる地震動として、それらの応答スペクトル(目標スペクトルと称す)に適合する模擬地震動の時刻歴波形が作成される。
【0003】
耐震試験の実施にあたっては、作成した模擬地震動の加速度、速度、変位の成分が耐震試験で使用する加振装置の加速度、速度、変位の加振限界以下となっており、加振が可能であるかどうかを事前に確認する。確認の結果、模擬地震動が加振限界を超過する場合には、加振可能となるように模擬地震動の修正や耐震試験に使用する加振装置の変更などの対策が取られる。
【0004】
昨今の地震による構造物や機器への被害やそれらの被害の波及的影響を背景に、構造物や機器に要求される耐震性能は高まり続けている。そのため、耐震試験では、加振装置の加振性能の限界に近い加振条件まで構造物や機器の耐震性能を評価することが求められることが多くなっており、入力として用いる模擬地震動の成立条件が限られることとなる。
【0005】
特許文献1では、目標スペクトルに対して検定されており、かつ、加振装置の加振限界の範囲に収まる模擬地震動の時刻歴波形を作成する振動試験装置が提案されている。この振動試験装置は、試験体を搭載する加振装置と少なくとも水平面内の異なる2つの方向にそれぞれ加振装置を振動させる駆動機構とを有する加振機を備える。振動試験装置は、加振機の駆動機構の駆動を制御する制御部を備える。振動試験装置は、加振機に加える振動の波形を作成して、作成した波形を制御部に付与する演算部を備える。そして、振動試験装置は、作成した2つの波形の加振範囲が加振機の加振可能範囲に収まるかどうかを検定するステップと検定で加振範囲が加振可能範囲に収まらない場合に再度2つの波形を作成するステップとを含む。これによって、振動試験装置は、目標スペクトルに対して検定されており、その後加振装置の加振限界の範囲に収まる模擬地震動を作成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このように、従来の模擬地震動の作成方法では、目標スペクトルに対して検定された模擬地震動を作成するステップの後に、作成した模擬地震動が加振装置の加振限界の範囲に収まるかどうかを判定する。このため、目標スペクトルに対して検定されており、かつ、加振装置の加振限界の範囲に収まる模擬地震動を作成するためには、2つのステップの処理の落ち着く所を求めるために多くの試行回数が必要になるという問題があった。
【0008】
本発明は、上記の問題を解決するために発明されたものであり、その目的は、目標スペクトルに対して検定されており、かつ、加振装置の加振限界の範囲に収まる模擬地震動を効率よく作成可能な模擬地震動の作成方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様による模擬地震動の作成方法は、候補模擬地震動を作成するステップの検定において作成される前記候補模擬地震動が加振装置の加振限界スペクトル以下であることを判定し、作成した前記候補模擬地震動が前記加振限界スペクトルを超えていた場合には、作成した前記候補模擬地震動のうち前記加振装置の前記加振限界スペクトルを超過する振動数範囲の成分を補正して前記模擬地震動を作り直すステップを含む。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、模擬地震動を作成するステップにおいて、加振装置の加振限界を超えないことを併せて検定する。これにより、目標スペクトルに対して検定されており、かつ、加振装置の加振限界の範囲に収まる模擬地震動を効率よく作成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、実施形態に係る模擬地震動作成装置のシステム構成を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る模擬地震動の作成方法を示すフローチャートである。
【
図3A】
図3Aは、実施形態に係る模擬地震動の作成方法における入力データの一部を示す図であり、包絡関数について示す。
【
図3B】
図3Bは、実施形態に係る模擬地震動の作成方法における入力データの一部を示す図であり、目標スペクトルと加振限界スペクトルについて示す。
【
図4A】
図4Aは、実施形態に係る模擬地震動の作成方法における出力結果の一部を示す図であり、目標スペクトルと加振限界スペクトルと模擬地震動の応答スペクトルについて示す。
【
図4B】
図4Bは、実施形態に係る模擬地震動の作成方法における出力結果の一部を示す図であり、時刻歴波形について示す。
【
図5】
図5は、実施形態に係る表示部が表示する加振限界スペクトル設定画面の一例を示す図である。
【
図6】
図6は、実施形態に係る表示部が表示する模擬地震動作成結果の表示画面の一例を示す図である。
【
図7】
図7は、従来手法による模擬地震動の作成方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について文章もしくは図面を参照して説明する。本発明に示す具体的な各種の構成は、ここで取り上げる実施形態に限定されることはなく、要旨を変更しない範囲で適宜組み合わせや改良が可能である。また、本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0013】
<<模擬地震動の作成方法>>
図1~
図4を用いて本実施形態の模擬地震動の作成方法を説明する。
図1は、本実施形態の模擬地震動の作成方法による模擬地震動の作成を実行するための装置のシステム構成を示すブロック図である。
図2は、本実施形態の模擬地震動の作成方法を採用した場合の模擬地震動の作成手順を示すフローチャートである。
図3Aは、本実施形態の模擬地震動の作成方法における一部の入力データを示す図であり、包絡関数について示す。
図3Bは、本実施形態の模擬地震動の作成方法における一部の入力データを示す図であり、目標スペクトルと加振限界スペクトルについて示す。
図4Aは、本実施形態の模擬地震動の作成方法における一部の出力データを示す図であり、目標スペクトルと加振限界スペクトルと模擬地震動の応答スペクトルについて示す。
図4Bは、本実施形態の模擬地震動の作成方法における一部の出力データを示す図であり、時刻歴波形について示す。
【0014】
<<模擬地震動作成装置1>>
まず、
図1を用いて模擬地震動の作成を実行するための装置のシステム構成について説明する。
図1に示す模擬地震動作成装置1は、記憶部101と演算部102とにより構成され、入出力表示部2に接続される。模擬地震動作成装置1の使用者は、入出力表示部2を介して、入力データDa1の入力と出力データDa2の出力と、模擬地震動作成装置1の操作と、を行う。入力データDa1は、記憶部101に記憶される。模擬地震動の作成が実行された場合には、必要となるデータが記憶部101から演算部102に送られる。そして、演算部102では、後述する模擬地震動の作成手順に従って模擬地震動作成の演算が行われる。演算部102は、マイクロコンピュータ及びその周辺機器で構成されている。演算部102での演算の結果が記憶部101に保管される。模擬地震動作成装置1の使用者は、入出力表示部2で出力データDa2を確認することができる。
【0015】
入力データDa1は、地震動作成のための条件と検定に用いる条件に大別される。地震動作成のための条件として、位相スペクトルの初期乱数、包絡関数4(
図3A参照)、目標スペクトル5(
図3B参照)、フーリエ振幅の許容補正回数、検定に用いる条件として目標スペクトルに対する候補模擬地震動の応答スペクトル誤差の許容値、加振限界スペクトル6(
図3B参照)を設定する。
【0016】
ここで、模擬地震動の作成段階における検定を行う前の模擬地震動を候補模擬地震動と称す。包絡関数4は、作成する模擬地震動の経時特性を指定するために設定するもので、
図3Aに示す時間と正規化した振幅の関数である。また、目標スペクトル5と加振限界スペクトル6とは
図3Bに示すような周波数成分に対する地震動の振幅成分の関係として定義されるもので、
図3B中では周波数成分として振動数、地震動の振幅成分として速度をとっている。目標スペクトル5は、構造物や機器に求められている耐震性能や構造物や機器に作用する地震荷重を指定する応答スペクトルである。加振限界スペクトル6は、加振装置の加振可能範囲を示す応答スペクトルである。
【0017】
また、出力データDa2として、作成した模擬地震動の応答スペクトル7(
図4A参照)、時刻歴波形8(
図4B参照)、最大加速度、最大速度、最大変位、模擬地震動の応答スペクトル7の目標スペクトル5あるいは加振限界スペクトル6に対する比率として求められるスペクトル比が挙げられる。出力データDa2の例として、
図4Aには、作成した模擬地震動の応答スペクトル7(実線)が、目標スペクトル5(点線)と加振限界スペクトル6(破線)と併せて図示されている。
図4Bには、模擬地震動の加速度時刻歴波形8が示されている。
【0018】
<<模擬地震動の作成手順>>
次に、
図2を用いて本実施形態の模擬地震動の作成手順について説明する。なお、本実施形態の模擬地震動の作成方法では一部に、スペクトル適合法と呼ばれる手法(例えば、『新・地震動のスペクトル解析入門』大崎順彦、鹿島出版を参照)を用いており、スペクトル適合法の具体的計算内容については説明を省略する。また、スペクトル適合法のうち、特に、模擬地震動の位相特性を一様乱数に基づいて設定する模擬地震動の作成方法が対象である。スペクトル適合法では、フーリエ振幅スペクトルとフーリエ位相スペクトルからなる複素フーリエ係数を設定し、その複素フーリエ係数のフーリエ逆変換によって加速度時刻歴波形を得る。得られた時刻歴波形に包絡関数を掛け合わせることで、経時特性を有する候補模擬地震動を作成し、作成した候補模擬地震動の応答スペクトル7を計算する。得られた候補模擬地震動の応答スペクトル7に対して目標応答スペクトルとの適合度を検定する。検定条件が満足される場合には、候補模擬地震動を模擬地震動として採用して模擬地震動の作成プロセスが完了する。一方、検定条件が満足されない場合には、候補模擬地震動の応答スペクトル7と目標応答スペクトルとの比率によりフーリエ振幅スペクトルを補正し、フーリエ逆変換の手順から候補模擬地震動の作成、検定を繰り返す。
【0019】
<<模擬地震動の作成の処理の流れ>>
本実施形態の模擬地震動の作成では、演算部102は、まず、
図2に示す第1ステップS101の模擬地震動の作成条件及び加振限界スペクトル6の設定において、
図2に示した入力データDa1を読み込む。模擬地震動の作成条件としては、位相スペクトルの初期乱数とフーリエ振幅スペクトルの許容補正回数とを設定する。
【0020】
次に、演算部102は、第2ステップS102のフーリエ振幅初期条件設定において、初期条件のフーリエ振幅スペクトルを作成する。初期フーリエ振幅スペクトルの与え方にはさまざまな方法があるが、1例を挙げるならば、
図2に示した入力データDa1で設定した目標スペクトル5を正規化したものを採用する方法がある。
【0021】
続いて、演算部102は、第3ステップS103の正弦波合成において、第2ステップS102で得られたフーリエ振幅スペクトルと、
図1に示した入力データDa1で設定した位相スペクトルの初期乱数を用いて一様乱数を作成することで得られるフーリエ位相スペクトルと、で構成される複素フーリエ係数を算定する。算定した複素フーリエ係数をフーリエ逆変換することで、加速度時刻歴波形を得る。
【0022】
続いて、演算部102は、第4ステップS104の時間関数の計算において、第3ステップS103で得られた加速度時刻歴波形と
図1に示した入力データDa1で設定した包絡関数4とを掛け合わせることで、候補模擬地震動の加速度時刻歴波形を得る。
【0023】
続いて、演算部102は、第5ステップS105の応答スペクトルの計算にて、第4ステップS104で得られた候補模擬地震動の加速度時刻歴波形に対して応答スペクトル解析を行い、候補模擬地震動の応答スペクトル7を算定する。
【0024】
次に、演算部102は、第6ステップS106の目標スペクトル5に対する検定条件、加振限界スペクトル6以下を満足するかの判定において、候補模擬地震動の応答スペクトル7が目標スペクトル5に対する候補模擬地震動の応答スペクトル誤差の許容値を満足し、かつ、加振限界スペクトル6以下となっているかどうかを判定する。この判定では、加振限界スペクトル6に対する候補模擬地震動の応答スペクトル7の振幅比として求まるスペクトル超過比を算定する。
【0025】
候補模擬地震動の応答スペクトル7が第6ステップS106の判定条件を満足する場合には、候補模擬地震動を模擬地震動として採用し、
図1に示した出力データDa2を書き出す第7ステップS107に進み、模擬地震動作成プロセスが終了する。
【0026】
一方、演算部102は、候補模擬地震動の応答スペクトル7が第6ステップS106の判定条件を満足しない場合には、第8ステップS108に移行し、試行回数iがフーリエ振幅の許容補正回数Nに達したかどうかを判定する。試行回数iがフーリエ振幅の許容補正回数Nに達していない場合には、演算部102は、第9ステップS109としてフーリエ振幅の補正を行う。
【0027】
その後、演算部102は、第10ステップS110として、試行回数iを1増やして、補正したフーリエ振幅を用いて第3ステップS103の正弦波合成に戻って候補模擬地震動の作成を行う。
【0028】
フーリエ振幅スペクトルの補正は、目標スペクトル5に対する判定条件を満足しない場合には、当該ステップで用いたフーリエ振幅スペクトルに候補模擬地震動の応答スペクトル7に対する目標スペクトル5の比率を掛け合わせたものとしてフーリエ振幅スペクトルを補正する。また、加振限界スペクトル6に対する判定条件を満足しない場合には、作成した候補模擬地震動の応答スペクトル7のうち加振限界スペクトル6を超過しない振動数範囲において、1を超過する振動数範囲での候補模擬地震動の応答スペクトル7に対する加振限界スペクトル6の比率を掛け合わせたものとしてフーリエ振幅スペクトルを補正する。すなわち、模擬地震動の作成結果が検定条件を満足しない場合には、応答スペクトル誤差の許容値と、スペクトル超過比が1を超過する振動数範囲におけるスペクトル超過比の逆数と、をフーリエ振幅スペクトルに掛け合わせることで候補模擬地震動の作成条件を補正する。
【0029】
一方、演算部102は、第8ステップS108にて試行回数iがフーリエ振幅の許容補正回数Nに達した場合には、演算部102は、第11ステップS111として入力データDa1で指定した位相スペクトルの初期乱数を用いた場合の模擬地震動の作成の検討が発散したと判定される。その場合には、演算部102は、第12ステップS112の初期乱数の更新において、
図1に示した入力データDa1で設定した位相スペクトルの初期乱数を異なる値に変更する。その後、更新された初期乱数に基づいてフーリエ位相スペクトルを求め、再び第3ステップS103の正弦波合成を行う。
【0030】
<<システムの入力画面と出力画面の一例>>
続いて、
図5と
図6に本発明の模擬地震動の作成方法を適用したシステムの入力画面と出力画面の一例をそれぞれ示す。
【0031】
図5は、本実施形態の模擬地震動の作成方法のうち、
図2の第1ステップS101に示した模擬地震動の作成条件、加振限界スペクトル6の設定を
図2の入出力表示部2に表示させる場合の一例であり、加振限界スペクトル設定画面9を示した図である。加振限界スペクトル設定画面9は、加振限界スペクトル入力方法選定ボタン10、応答スペクトル周波数軸表示条件設定ボタン11、応答スペクトル振幅表示条件設定ボタン12、加振限界スペクトル入力テーブル13、加振限界スペクトル6及び目標スペクトル5の図示で構成されている。まず、加振限界スペクトル入力方法選定ボタン10で加振限界スペクトル6の入力方法を選択する。加振限界スペクトル入力方法選定ボタン10で“テーブル”を選択した場合には、加振限界スペクトル入力テーブル13に加振限界スペクトル6の振動数と振幅データがそれぞれ入力される。そして、加振限界スペクトル入力方法選定ボタン10で“DB参照”を選択した場合には、予め準備しておく振動試験に使用する加振装置の加振限界スペクトルデータが読み込まれる。つまり、加振限界スペクトル6を予め設定した加振装置のデータ及び加振装置の加振限界条件がデータベースから選択される。応答スペクトル周波数軸表示条件設定ボタン11では、加振限界スペクトル入力テーブル13や加振限界スペクトル6及び目標スペクトル5の図示で参照される周波数軸が設定される。応答スペクトル振幅表示条件設定ボタン12では、同様に模擬地震動の応答スペクトル7の振幅が設定される。加振限界スペクトル6のデータが入力された後、表示実行ボタンを押すことで、加振限界スペクトル6が別途設定される目標スペクトル5と併せて加振限界スペクトル6及び目標スペクトル5の図示に示される。
【0032】
ここで、模擬地震動作成条件として、
図2の第1ステップS101にて設定する目標スペクトル5に応答スペクトル誤差の許容値を追加した応答スペクトル(許容目標スペクトルと称す)は必ず加振限界スペクトル6より小さい振幅として設定されている必要がある。しかし、目標スペクトル5は、構造物や機器に求められている耐震性能や構造物や機器に作用する地震荷重により決定されるものである。これに対して、加振限界スペクトル6は、加振装置の加振可能範囲として決定されるもので、必ずしも許容目標スペクトルが加振限界スペクトル6より小さいという関係にならない。許容目標スペクトルが加振限界スペクトル6を超過する場合には、許容目標スペクトルが加振限界スペクトル6以下となるよう修正する必要がある。言い換えれば、加振限界スペクトル6の振幅に対する目標スペクトル5の振幅として目標/加振限界スペクトル比を計算し、目標/加振限界スペクトル比と応答スペクトル誤差の許容値との積が1以上となって超えた場合には、許容目標スペクトルが加振限界スペクトル6以下となるよう修正する必要がある。
【0033】
その表示画面で提示可能な修正方法として、目標スペクトル5の入力データを再登録する修正方法と、目標スペクトル5で加振限界スペクトル6を超過する振動数成分を除去する修正方法と、加振限界スペクトル6に基づき修正する方法と、が挙げられる。
【0034】
目標スペクトル5で加振限界スペクトル6を超過する振動数成分を除去する修正方法では、以下の式1を用いて目標スペクトル5の加振限界スペクトル6を超過する振動数範囲の振幅を0とする修正を行う。言い換えれば、目標スペクトル5の振幅を除去する修正方法が指定された場合には、振幅を除去する範囲を指定し、指定された範囲の振幅成分を除去した目標スペクトル5の計算を行う。
【0035】
【0036】
ここで、kは振動数、Sv
Tは目標スペクトル、Raは応答スペクトル誤差の許容値、Sv
Lは加振限界スペクトルを示す。
【0037】
また、加振限界スペクトル6に基づき修正する方法では、以下の式2を用いて許容目標スペクトルが加振限界スペクトル6に一致するよう目標スペクトル5を修正する。言い換えれば、加振限界スペクトル6により修正する方法が指定された場合には、加振装置の加振限界を超過する振動数範囲の成分において加振限界スペクトル6から応答スペクトル誤差の許容値を引いた値として目標スペクトル5の振幅を修正する。
【0038】
【0039】
ここで、kは振動数、Sv
Tは目標スペクトル、Raは応答スペクトル誤差の許容値、Sv
Lは加振限界スペクトルを示す。
【0040】
<<模擬地震動の作成結果>>
図6は、本実施形態の模擬地震動の作成方法のうち、模擬地震動の作成結果を
図1の入出力表示部2に表示させた一例であり、模擬地震動作成結果表示画面14を示している。模擬地震動作成結果表示画面14は、応答スペクトル周波数軸表示条件設定ボタン11、応答スペクトル振幅表示条件設定ボタン12、模擬地震動作成結果のサマリ15、図示実行ボタン及び模擬地震動の応答スペクトル7の図示で構成されている。応答スペクトル周波数軸表示条件設定ボタン11では、周波数軸が設定される。応答スペクトル振幅表示条件設定ボタン12では、応答スペクトル図示の表示条件が設定される。設定後に図示実行ボタンを押すことで、応答スペクトル図示に模擬地震動の応答スペクトル7が目標スペクトル5と加振限界スペクトル6と併せて表示される。また、模擬地震動作成結果のサマリ15には、模擬地震動の応答スペクトル7の目標スペクトル5に対するスペクトル比、模擬地震動の応答スペクトル7の加振限界スペクトル6に対するスペクトル比、最大加速度、最大速度、最大変位といった模擬地震動作成結果の主要情報が表示される。
【0041】
<<従来手法による模擬地震動の作成方法>>
本実施形態との比較のために、従来手法による目標スペクトル5に対して検定されており、かつ、加振装置の加振限界の範囲に収まる模擬地震動の作成方法について
図7を用いて説明する。
図7は、従来手法による模擬地震動の作成方法を示すフローチャートである。特に、本実施形態の模擬地震動の作成方法との差異に着目するため、
図2に示した本実施形態の模擬地震動の作成方法のフローチャートのステップに言及する。
【0042】
図7のステップS201に示す模擬地震動の作成条件設定では、演算部102は、位相スペクトルの初期乱数、包絡関数4、目標スペクトル5、フーリエ振幅の許容補正回数、検定に用いる条件として目標スペクトル5に対する模擬地震動の応答スペクトル誤差の許容値を設定する。
【0043】
続いて、
図7のステップS202に示すフーリエ振幅初期条件設定では、演算部102は、
図2に示された第2ステップS102と同様の処理を実施する。
図7のステップS203に示す正弦波合成では、演算部102は、
図2に示された第3ステップS103と同様の処理を実施する。
図7のステップS204に示す時間関数の計算では、演算部102は、
図2に示された第4ステップS104と同様の処理を実施する。
図7のステップS205に示す模擬地震動の応答スペクトル7の計算では、演算部102は、
図2に示された第5ステップS105と同様の処理を実施する。
【0044】
続いて、
図7のステップS206に示す検定条件を満足の判定では、演算部102は、ステップS205で得られた候補模擬地震動の応答スペクトル7が目標スペクトル5に対する適合条件を満足しているかどうかを判定する。候補模擬地震動の応答スペクトル7がステップS206の判定条件を満足する場合には、演算部102は、
図7のステップS207に示す模擬地震動生成において、候補模擬地震動を模擬地震動として採用する。
【0045】
続いて、
図7のステップS208に示す加振可否条件の設定において、演算部102は、加振限界スペクトル6を設定する。そして、
図7のステップS209に示す模擬地震動の応答スペクトル7が加振限界スペクトル6以下の判定では、演算部102は、ステップS207で得られた模擬地震動の応答スペクトル7がステップS208で設定した加振限界スペクトル6以下であるかどうかを判定する。模擬地震動の応答スペクトル7がステップS208の判定条件を満足する場合には、演算部102は、ステップS207で得られた模擬地震動の応答スペクトル7を目標スペクトル5に対して検定されており、かつ、加振装置の加振限界の範囲に収まる模擬地震動として採用して模擬地震動作成プロセスを終了する。
【0046】
一方、候補模擬地震動の応答スペクトル7が
図7のステップS206の判定条件を満足しない場合には、演算部102は、
図7のステップS210として、
図2に示された第7ステップS107と同様に試行回数iがフーリエ振幅の許容補正回数Nに達したかどうかを判定する。ステップS210の試行回数iがフーリエ振幅の許容補正回数Nに達していない場合には、演算部102は、ステップS211としてフーリエ振幅の補正を行い、ステップS212として
図1に示したステップS111と同様に試行回数iを1回増やして、補正したフーリエ振幅を用いてステップS203の正弦波合成に戻って候補模擬地震動の作成を行う。
【0047】
また、
図7のステップS210で試行回数iがフーリエ振幅の許容補正回数Nに達した場合には、演算部102は、ステップS213としての模擬地震動の作成の検討が発散したと判定する。その場合には、ステップS214に示す作成条件の見直しにおいて、演算部102は、ステップS206で設定した模擬地震動の作成条件の一部を変更して、再びステップS202のフーリエ振幅初期条件設定から計算をやり直す。
【0048】
さらに、候補模擬地震動の応答スペクトルが
図7のステップS209の判定条件を満足しない場合にも、演算部102は、ステップS214に示す作成条件の見直しを行い、再びステップS202のフーリエ振幅初期条件設定から計算をやり直す。
【0049】
以上より、従来手法による目標スペクトル5に対して検定されており、かつ、加振装置の加振限界の範囲に収まる模擬地震動の作成で、目標スペクトル5に対して検定された時刻歴波形8が作成される。その後に、作成した時刻歴波形8が加振装置の加振限界の範囲に収まるかどうかを判定する。このため、目標スペクトル5に対する検定を満足した場合でも、加振装置の加振限界の範囲を超過する時刻歴波形8が作成される場合がある。このため、模擬地震動の作成のための試行回数が増大する。
【0050】
<<本実施形態の効果>>
これに対して、本実施形態の模擬地震動の作成方法では、模擬地震動の作成ステップにおいて、目標スペクトル5に対する適合度と加振装置の加振限界以下であることが判定条件に含まれる。これにより、目標スペクトル5に対して検定されており、かつ、加振装置の加振限界の範囲に収まる模擬地震動を効率よく作成することが可能となる。
【0051】
さらに、本実施形態の模擬地震動の作成方法では、検定条件を満足せずに、試行回数がフーリエ振幅の許容補正回数に至った場合に、作成条件の変更条件として初期乱数を更新することを指定して計算を繰り返す。このため、従来手法による作成条件の見直し作業を必要としない。このため、模擬地震動作成結果の確認作業、条件の再検討作用や設定作業に要する作業時間を短縮できる。
【0052】
さらに、本実施形態の模擬地震動の作成方法では、目標スペクトル5に対して検定されており、かつ、加振装置の加振限界の範囲に収まる模擬地震動で必須の条件となる目標スペクトル5と加振限界スペクトル6の大小関係について最初の設定段階において確認して必要に応じて適切な条件に修正する。このため、模擬地震動作成時に加振限界スペクトル6を考慮しない従来手法の模擬地震動の作成方法よりも目標スペクトル5に対して検定されており、かつ、加振装置の加振限界の範囲に収まる模擬地震動を効率よく作成することが可能となる。
【0053】
<<相違点の効果>>
(A)
模擬地震動の作成方法は、候補模擬地震動を作成する第6ステップS106の検定において作成される候補模擬地震動が加振装置の加振限界スペクトル6以下であることを判定する。そして、模擬地震動の作成方法は、候補模擬地震動の応答スペクトル7が第6ステップS106の判定条件を満足しない場合には、作成した候補模擬地震動のうち加振装置の加振限界スペクトル6を超過する振動数範囲の成分を補正して模擬地震動を作り直すステップを含む。
【0054】
この構成によれば、模擬地震動を作成する第6ステップS106において、作成される模擬地震動が加振装置の加振限界スペクトル6を超えないことを併せて検定することで、目標スペクトル5が検定され、かつ、加振装置の加振限界の範囲に収まる模擬地震動を効率よく作成することが可能となる。
【0055】
(B)
模擬地震動の作成方法は、作成する候補模擬地震動の検定条件として、目標スペクトル5の振幅に対する候補模擬地震動の応答スペクトル7の振幅比として求める応答スペクトル誤差の許容値と加振限界スペクトル6とを設定する。模擬地震動の作成方法は、加振限界スペクトル6に対する候補模擬地震動の応答スペクトル7の振幅比として求まるスペクトル超過比を算定する。模擬地震動の作成方法は、候補模擬地震動の作成結果が検定条件を満足しない場合には、応答スペクトル誤差の許容値と、スペクトル超過比が1を超過する振動数範囲におけるスペクトル超過比の逆数と、をフーリエ振幅スペクトルに掛け合わせることで候補模擬地震動の作成条件を補正し、再び候補模擬地震動の作成及び検定を行う。模擬地震動の作成方法は、候補模擬地震動の作成結果が検定条件を満足した場合には、候補模擬地震動を模擬地震動として取得する。
【0056】
この構成によれば、模擬地震動の作成結果が検定条件を満足しない場合に自動的に候補模擬地震動の作成条件を補正し、加振装置の加振限界の範囲に収まる模擬地震動を効率よく作成することが可能となる。
【0057】
(C)
模擬地震動の作成方法は、模擬地震動の作成条件として位相スペクトルの初期乱数とフーリエ振幅スペクトルの許容補正回数とを設定して候補模擬地震動の作成を行う。模擬地震動の作成方法は、フーリエ振幅スペクトルの許容補正回数までに候補模擬地震動の作成結果が検定条件を満足しない場合には、位相スペクトルの初期乱数を更新して再び候補模擬地震動の作成を行う。
【0058】
この構成によれば、フーリエ振幅スペクトルの許容補正回数までに候補模擬地震動の作成結果が検定条件を満足しない場合には、位相スペクトルの初期乱数を更新して再び候補模擬地震動の作成を行うので、使用者が初期乱数を更新する手間が省け、加振装置の加振限界の範囲に収まる模擬地震動を効率よく作成することが可能となる。
【0059】
(D)
模擬地震動の作成方法は、候補模擬地震動の検定条件を設定する第6ステップS106において、加振限界スペクトル6の振幅に対する目標スペクトル5の振幅として目標/加振限界スペクトル比を計算する。模擬地震動の作成方法は、目標/加振限界スペクトル比と応答スペクトル誤差の許容値との積が1以上となって、加振装置の加振限界スペクトルを超えた場合には、目標スペクトル5の入力データを再登録する修正方法と、目標スペクトル5の振幅を除去する修正方法と、加振限界スペクトル6により修正する方法と、を提示する。
【0060】
この構成によれば、目標/加振限界スペクトル比と応答スペクトル誤差の許容値との積が1以上となって、加振装置の加振限界スペクトルを超えた場合に、加振装置の加振限界の範囲に収まる模擬地震動が作成できないと自動的に判断され、使用者の指示を促すことが可能となる。
【0061】
(E)
模擬地震動の作成方法は、目標スペクトル5の振幅を除去する修正方法が指定された場合には、振幅を除去する範囲を指定し、指定された範囲の振幅成分を除去した目標スペクトル5の計算を行う。模擬地震動の作成方法は、加振限界スペクトル6により修正する方法が指定された場合には、加振装置の加振限界スペクトル6を超過する振動数範囲の成分において加振限界スペクトル6から応答スペクトル誤差の許容値を引いた値として目標スペクトル5の振幅を修正する。
【0062】
この構成によれば、使用者の指示に応じた修正方法に合わせて、加振装置の加振限界の範囲に収まる模擬地震動を効率よく作成することが可能となる。
【0063】
(F)
模擬地震動の作成方法は、加振限界スペクトル6を予め設定した加振装置のデータ及び加振装置の加振限界条件をデータベースから選択する。
【0064】
この構成によれば、使用者がデータベースから加振装置のデータ及び加振装置の加振限界条件を適宜選択することが可能となる。
【0065】
(G)
模擬地震動の作成方法は、模擬地震動の作成条件及び加振限界スペクトル6の設定を実施する第1ステップS101を含む。模擬地震動の作成方法は、初期条件のフーリエ振幅スペクトルを作成し、フーリエ振幅初期条件を設定する第2ステップS102を含む。模擬地震動の作成方法は、初期条件のフーリエ振幅スペクトルと、位相スペクトルの初期乱数を用いて一様乱数を作成することで得られるフーリエ位相スペクトルと、で構成される複素フーリエ係数を算定し、算定した複素フーリエ係数をフーリエ逆変換することで加速度時刻歴波形を得る正弦波を合成する第3ステップS103を含む。模擬地震動の作成方法は、加速度時刻歴波形と包絡関数4とを掛け合わせることで、候補模擬地震動の加速度時刻歴波形を得る時間関数の計算を実施する第4ステップS104を含む。模擬地震動の作成方法は、候補模擬地震動の加速度時刻歴波形に対して応答スペクトル解析を行い、候補模擬地震動の応答スペクトル7を算定する応答スペクトルの計算を実施する第5ステップS105を含む。模擬地震動の作成方法は、候補模擬地震動の応答スペクトル7が目標スペクトル5に対する候補模擬地震動の応答スペクトル誤差の許容値を満足し、かつ、加振限界スペクトル6以下となっているかどうかを判定する目標スペクトル5に対する検定条件かつ加振限界スペクトル6以下を満足するかを判定する第6ステップS106を含む。模擬地震動の作成方法は、候補模擬地震動の応答スペクトル7が第6ステップS106の判定条件を満足する場合に、候補模擬地震動を模擬地震動として採用し、出力データDa2を書き出す第7ステップS107を含む。模擬地震動の作成方法は、候補模擬地震動の応答スペクトル7が第6ステップS106の判定条件を満足しない場合に、試行回数iがフーリエ振幅の許容補正回数Nに達したかどうかを判定する第8ステップS108を含む。模擬地震動の作成方法は、試行回数iがフーリエ振幅の許容補正回数Nに達していない場合に、フーリエ振幅の補正を行う第9ステップS109を含む。模擬地震動の作成方法は、フーリエ振幅の補正を行った後、試行回数iを1増やして、補正したフーリエ振幅を用いて候補模擬地震動の作成を行う第3ステップS103に戻る第10ステップS110を含む。模擬地震動の作成方法は、試行回数iがフーリエ振幅の許容補正回数Nに達した場合に、位相スペクトルの初期乱数を用いた場合の模擬地震動の作成の検討が発散したと判定される第11ステップS110を含む。模擬地震動の作成方法は、第11ステップS110に引き続き、位相スペクトルの初期乱数を異なる値に変更して当該初期乱数を更新し、その後、更新された初期乱数に基づいて加速度時刻歴波形を求める第3ステップS103に戻る第12ステップS112を含む。
【0066】
この構成によれば、模擬地震動を作成する第6ステップS106において、加振装置の加振限界スペクトル6を超えないことを併せて検定することで、目標スペクトル5が検定され、かつ、加振装置の加振限界の範囲に収まる模擬地震動を効率よく作成することが可能となる。
【0067】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【符号の説明】
【0068】
1…模擬地震動作成装置、2…入力表示部、4…包絡関数、5…目標スペクトル、6…加振限界スペクトル、7…模擬地震動の応答スペクトル、8…時刻歴波形、9…加振限界スペクトル設定画面、10…加振限界スペクトル入力方法選定ボタン、11…応答スペクトル周波数軸表示条件設定ボタン、12…応答スペクトル振幅表示条件設定ボタン、13…加振限界スペクトル入力テーブル、14…模擬地震動作成結果表示画面、15…模擬地震動作成結果のサマリ、101…記憶部、102…演算部。