(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023146324
(43)【公開日】2023-10-12
(54)【発明の名称】画像処理装置
(51)【国際特許分類】
H04N 1/403 20060101AFI20231004BHJP
【FI】
H04N1/403
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022053456
(22)【出願日】2022-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000250502
【氏名又は名称】理想科学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(72)【発明者】
【氏名】下村 健二
(72)【発明者】
【氏名】足立 寛直
【テーマコード(参考)】
5C077
【Fターム(参考)】
5C077LL19
5C077MP02
5C077NN04
5C077PP54
5C077RR13
5C077TT05
(57)【要約】
【課題】地紋を含む印刷物を複写した際に潜像部が鮮明に浮き出る、地紋画像データを作成する。
【解決手段】入力された原稿から地紋の潜像部と、潜像部と隣接する画素情報から地紋の背景部とを検出する検出部22と、潜像部および背景部の画像率を算出する画像率算出部23と、潜像部の画像率と背景部の画像率の組み合わせの閾値を記憶する画像率閾値記憶部24と、潜像部の画像率と背景部の画像率との組み合わせが閾値以内か否かを判定する判定部25と、判定部25により閾値以内でないと判定した場合に、入力された原稿の地紋の潜像部及び背景部の画像率を、閾値以内となる潜像部及び背景部の画像率に変換する変換部26とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力された原稿から地紋の潜像部と、前記潜像部と隣接する画素情報から地紋の背景部とを検出する検出手段と、
前記潜像部および前記背景部の画像率を算出する画像率算出手段と、
前記潜像部の画像率と前記背景部の画像率の組み合わせの閾値を記憶する画像率閾値記憶手段と、
前記潜像部の画像率と前記背景部の画像率との組み合わせが前記閾値以内か否かを判定する判定手段と、
前記判定手段により閾値以内でないと判定した場合に、前記入力された原稿の地紋の潜像部及び背景部の画像率を、前記閾値以内となる潜像部及び背景部の画像率に変換する変換手段と、
を備えることを特徴とする画像処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置に係り、特に、地紋の印刷に適した画像処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
領収書や証券、証明書には、簡単に複写されることがないように、複写すると、文字や画像が浮かび上がる特殊な模様が背景に印刷されているものがある。この特殊な模様は、一般に「地紋」と呼ばれ、複写によって原本が容易に複製できないような仕掛けを施し、原本の複写を抑止する効果を実現している。
【0003】
特許文献1には、プリンタのエンジン特性や出力用紙、個体差等に基づく潜像部と背景部の階調特性が未知のプリンタや印刷環境や耐久変動等に依存して潜像部の濃度と背景部の濃度変化が大きいプリンタにおいても、潜像部と背景部の印刷濃度がほぼ等しい地紋画像を生成する際に必要な最適な地紋濃度パラメータを決定する画像処置装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の画像処置装置では、地紋濃度パラメータを決定することにより、地紋の網点部分(潜像部)の領域を検知できるが、地紋の背景部は検知することができないという問題があった。
【0006】
また、地紋の濃度調整手段では視覚的に濃度差が少ないパッチを抽出するが、潜像部と背景部の濃度自体が極端に薄い方向や濃い方向に調整してしまった場合、複写時に潜像部が浮き出辛い場合があった。
【0007】
さらに、特許文献1に記載の画像処置装置では、最適な地紋印刷を行うためには、調整用のテストチャートを追加で印刷する必要があり、最適な画像を取得するためには本来の印刷作業には関係のない作業が必要であった。
【0008】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたもので、地紋を含む印刷物を複写した際に潜像部が鮮明に浮き出る、地紋画像データを作成する画像処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明に係る画像処理装置の特徴は、
入力された原稿から地紋の潜像部と、前記潜像部と隣接する画素情報から地紋の背景部とを検出する検出手段と、
前記潜像部および前記背景部の画像率を算出する画像率算出手段と、
前記潜像部の画像率と前記背景部の画像率の組み合わせの閾値を記憶する画像率閾値記憶手段と、
前記潜像部の画像率と前記背景部の画像率との組み合わせが前記閾値以内か否かを判定する判定手段と、
前記判定手段により閾値以内でないと判定した場合に、前記入力された原稿の地紋の潜像部及び背景部の画像率を、前記閾値以内となる潜像部及び背景部の画像率に変換する変換手段と、
を備えたことにある。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る画像処理装置の特徴によれば、地紋を含む印刷物を複写した際に潜像部が鮮明に浮き出る、地紋画像データを作成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態に係る画像処理装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図2】(a)は、本発明の一実施形態に係る画像処理装置における画像生成部により生成された原稿画像の一例を示した図であり、(b),(c)は、本発明の一実施形態に係る画像処理装置における検出部の処理を説明した図である。
【
図3】(a)は、本発明の一実施形態に係る画像処理装置における画像率算出部による潜像部における画像率の算出を説明した図であり、(b)は、本発明の一実施形態に係る画像処理装置における画像率算出部による背景部における画像率の算出を説明した図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る画像処理装置が備える画像率閾値記憶部に記憶された、潜像部の画像率と背景部の画像率の組み合わせの閾値を示す閾値テーブルの一例を示した図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る画像処理装置における処理内容を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。各図面を通じて同一若しくは同等の部位や構成要素には、同一若しくは同等の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、現実のものとは異なることに留意すべきである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている。
【0013】
また、以下に示す実施の形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置等を例示するものであって、この発明の技術的思想は、各構成部品の配置等を下記のものに特定するものでない。この発明の技術的思想は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
【0014】
図1は、本発明の一実施形態に係る画像処理装置1のハードウェア構成を示すブロック図である。本図に示すように、画像処理装置1は、画像生成部10と、データ処理部20と、インクジェットヘッド制御部30とを備えている。
【0015】
画像生成部10は、アプリケーションソフトウェアなどを用いて原稿画像を生成する。
【0016】
図2(a)は、本発明の一実施形態に係る画像処理装置1における画像生成部10により生成された原稿画像の一例を示した図である。
【0017】
原稿画像101は、印刷する原稿画像の一例である。原稿画像101には、地紋201が含まれている。地紋201は、簡単に複写されることがないように、複写すると、文字や画像が浮かび上がる特殊な模様が背景に印刷される画像である。ここでは、「複写禁止」の文字が浮かび上がる地紋の例を示している。
【0018】
データ処理部20は、画像生成部10により生成された原稿画像に対して、地紋の潜像部と背景部の検知を行い地紋印刷の品質を改善する。
【0019】
インクジェットヘッド制御部30は、データ処理部20から出力された出力画像(地紋画像データ)に基づいて、搬送される用紙に対して図示しないインクジェットヘッドのノズルからインクを吐出させることにより印刷を行う。
【0020】
データ処理部20は、画像入力部21と、検出部22と、画像率算出部23と、画像率閾値記憶部24と、判定部25と、変換部26とを備える。
【0021】
画像入力部21は、画像生成部10により生成された原稿画像を受信する。
【0022】
検出部22は、画像入力部21が受信した原稿画像から地紋201の潜像部と、潜像部と隣接する画素情報から地紋201の背景部とを検出する。
【0023】
図2(b),(c)は、本発明の一実施形態に係る画像処理装置1における検出部22の処理を説明した図である。
【0024】
図2(b)に示すように、地紋201は、潜像部201aと、背景部201bとを含んでおり、潜像部201aと背景部201bとは隣接している。
【0025】
まず、検出部22は、従来技術を用いて、原稿画像101が地紋を含む原稿か否かを判定し、地紋を含む原稿であると判定した場合、潜像部201aを抽出する。
【0026】
そして、検出部22は、潜像部201aと背景部201bとが隣合う画素で形成されることを利用し、潜像部201aの周囲の画素情報から背景部201bの位置情報を検知する。
【0027】
検出部22は、白画素を除いた画素情報から背景部201bの端部の位置情報と色情報を検知する。
【0028】
検出部22は、
図2(c)に示すように、背景部201bの端部の位置情報と色情報から背景部201bのエッジ201b1を検出し、背景部201bを抽出する。
【0029】
画像率算出部23は、潜像部201aと背景部201bとに対して、任意に所定面積の画像情報を抽出し、所定面積内の画素情報から画像率をそれぞれ算出する。
【0030】
図3(a)は、本発明の一実施形態に係る画像処理装置1における画像率算出部23による潜像部201aにおける画像率の算出を説明した図であり、
図3(b)は、本発明の一実施形態に係る画像処理装置1における画像率算出部23による背景部201bにおける画像率の算出を説明した図である。
【0031】
図3(a)に示すように、画像率算出部23は、潜像部201aに対して、任意に所定面積を有するサンプル領域201a2の画像情報を抽出し、サンプル領域201a2内の画素情報から画像率を算出する。
【0032】
また、
図3(b)に示すように、画像率算出部23は、背景部201bに対して、任意に所定面積を有するサンプル領域201b2の画像情報を抽出し、サンプル領域201b2内の画素情報から画像率を算出する。
【0033】
画像率閾値記憶部24は、潜像部の画像率と背景部の画像率の組み合わせの閾値を記憶している。
【0034】
図4は、画像率閾値記憶部24に記憶された、潜像部の画像率と背景部の画像率の組み合わせの閾値を示す閾値テーブルの一例を示した図である。
【0035】
図4に示すように、閾値テーブルは、潜像部の画像率と背景部の画像率の組み合わせで、地紋として適切な画像率の組み合わせとなっているか否かを示している。
【0036】
具体的には、閾値テーブルには、ドットで示す濃度不一致領域301と、斜線で示す濃度一致領域302と、「OK」の文字で示す最適領域303とを有している。
【0037】
濃度不一致領域301は、潜像部と背景部の濃度が一致しない組み合わせ、すなわち、地紋として成立しない組み合わせであることを示す領域である。
【0038】
濃度一致領域302は、潜像部と背景部の濃度が一致する組み合わせ、すなわち、地紋として成立する組み合わせであることを示す領域である。
【0039】
例えば、濃度一致領域302の中にある領域302aは、複写時の濃度が薄すぎて、地紋印刷として成立するが最適ではない。また、濃度一致領域302の中にある領域302bは、複写時の濃度が濃すぎて、地紋印刷として成立するが最適ではない。
【0040】
最適領域303は、複写時に、潜像部が浮き出る組み合わせ、すなわち、地紋として最適な組み合わせであることを示す領域である。
【0041】
判定部25は、潜像部の画像率と背景部の画像率との組み合わせが閾値以内か否かを判定する。具体的には、判定部25は、画像率閾値記憶部24に記憶された閾値テーブルに基づいて、印刷しようとしている地紋が最適領域303にある場合、潜像部の画像率と背景部の画像率との組み合わせが閾値以内であると判定する。
【0042】
変換部26は、判定部25により閾値以内でないと判定した場合に、入力された原稿の地紋の潜像部及び背景部の画像率を、閾値以内となる潜像部及び背景部の画像率に変換する。具体的には、変換部26は、画像率閾値記憶部24に記憶された閾値テーブルに基づいて、潜像部と背景部の濃度差が最小になる組み合わせかつ、潜像部と背景部の平均濃度が閾値以内の組み合わせとなる画像へ変更する。
【0043】
図5は、本発明の一実施形態に係る画像処理装置1における処理内容を示したフローチャートである。
【0044】
図5に示すように、ステップS101において、検出部22は、原稿画像が地紋を含む原稿か否かを判定する。
【0045】
原稿画像が地紋を含む原稿であると判定された場合(ステップS101;YES)、ステップS103において、検出部22は、原稿画像の地紋から潜像部と背景部とを抽出する。
【0046】
ステップS105において、画像率算出部23は、潜像部と背景部とに対して、任意に所定面積の画像情報を抽出し、所定面積内の画素情報から画像率をそれぞれ算出する。
【0047】
ステップS107において、判定部25は、潜像部の画像率と背景部の画像率との組み合わせが閾値以内か否かを判定する。
【0048】
潜像部の画像率と背景部の画像率との組み合わせが閾値を超えていると判定された場合(ステップS107;NO)、ステップS109において、変換部26は、画像率閾値記憶部24に記憶された閾値テーブルに基づいて、入力された原稿の地紋の潜像部及び背景部の画像率を、閾値以内となる潜像部及び背景部の画像率に変換し、地紋画像データを生成する。
【0049】
ステップS111において、インクジェットヘッド制御部30は、データ処理部20から出力された地紋画像データ(ステップS109により変換された場合は、変換された地紋画像データ)に基づいて、搬送される用紙に対して図示しないインクジェットヘッドのノズルからインクを吐出させることにより印刷を行う。
【0050】
(付記)
本出願は、以下の発明を開示する。
【0051】
(付記1)
入力された原稿から地紋の潜像部と、前記潜像部と隣接する画素情報から地紋の背景部とを検出する検出手段と、
前記潜像部および前記背景部の画像率を算出する画像率算出手段と、
前記潜像部の画像率と前記背景部の画像率の組み合わせの閾値を記憶する画像率閾値記憶手段と、
前記潜像部の画像率と前記背景部の画像率との組み合わせが前記閾値以内か否かを判定する判定手段と、
前記判定手段により閾値以内でないと判定した場合に、前記入力された原稿の地紋の潜像部及び背景部の画像率を、前記閾値以内となる潜像部及び背景部の画像率に変換する変換手段と、
を備えることを特徴とする画像処理装置。
【0052】
これにより、潜像部と背景部を検出して各画像率を算出し、複写した際に鮮明に浮き出る画像率の組み合わせか否か判定し、もし否ならば適した組み合わせに変換して、地紋画像データを生成するので、地紋印刷物を複写した際に潜像部が鮮明に浮き出る、地紋画像データを作ることができる。そのため、ユーザーがテスト複写などで確認・選択する作業が不要となる。
【符号の説明】
【0053】
1 画像処理装置
10 画像生成部
20 データ処理部
21 画像入力部
22 検出部
23 画像率算出部
24 画像率閾値記憶部
25 判定部
26 変換部
30 インクジェットヘッド制御部