(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023146330
(43)【公開日】2023-10-12
(54)【発明の名称】薬液散布装置
(51)【国際特許分類】
B05B 17/00 20060101AFI20231004BHJP
A01M 7/00 20060101ALI20231004BHJP
【FI】
B05B17/00
A01M7/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022053463
(22)【出願日】2022-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000141174
【氏名又は名称】株式会社丸山製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140682
【弁理士】
【氏名又は名称】妙摩 貞茂
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 貴幸
【テーマコード(参考)】
2B121
4D074
【Fターム(参考)】
2B121CB03
2B121CB23
2B121CB33
2B121CB42
2B121CB47
2B121CB51
2B121CB53
2B121CB54
2B121CB62
2B121CB63
2B121CB66
2B121CC33
2B121EA21
2B121FA06
4D074CC32
4D074CC34
4D074CC38
4D074CC44
(57)【要約】
【課題】ストレーナのメンテナンスの手間を低減できる薬液散布装置を提供する。
【解決手段】薬液散布装置100の給水ポンプ22は、給水ホース23側から第1の流路切替部25とストレーナ26と第2の流路切替部27とを順番に介して給水ホース23に接続されている。噴霧ポンプ21は、薬液タンク9側から第1の流路切替部25とストレーナ26と第2の流路切替部27とを順番に介して薬液タンク9に接続されている。第1の流路切替部25は、給水ホース23とストレーナ26とを連通する状態と、薬液タンク9とストレーナ26とを連通する状態と、に切替可能であり、第2の流路切替部27は、ストレーナ26と給水ポンプ22とを連通する状態と、ストレーナ26と噴霧ポンプ21とを接続する状態と、に切替可能である。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬液が貯留される薬液タンク(9)と、
前記薬液タンク(9)に貯留された薬液を吸い出す噴霧ポンプ(21)と、
前記薬液タンク(9)に給水するための給水ポンプ(22)と、
前記給水ポンプ(22)に給水するための給水ホース(23)と、を備え、
前記給水ポンプ(22)は、前記給水ホース(23)側から第1の流路切替部(25)とストレーナ(26)と第2の流路切替部(27)とを順番に介して前記給水ホース(23)に接続され、
前記噴霧ポンプ(21)は、前記薬液タンク(9)側から前記第1の流路切替部(25)と前記ストレーナ(26)と前記第2の流路切替部(27)とを順番に介して前記薬液タンク(9)に接続され、
前記第1の流路切替部(25)は、前記給水ホース(23)と前記ストレーナ(26)とを連通する状態と、前記薬液タンク(9)と前記ストレーナ(26)とを連通する状態と、に切替可能であり、
前記第2の流路切替部(27)は、前記ストレーナ(26)と前記給水ポンプ(22)とを連通する状態と、前記ストレーナ(26)と前記噴霧ポンプ(21)とを接続する状態と、に切替可能である、薬液散布装置。
【請求項2】
前記ストレーナ(26)は、32以上80以下の範囲のメッシュ数を有する、請求項1に記載の薬液散布装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、薬液散布装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、薬液散布装置として、スピードスプレーヤを開示している。この薬液散布装置では、薬剤タンクから、送液バルブ、ストレーナ、噴霧ポンプ、三方コックを介して分水器へ送られた薬液が、噴霧用のノズルに送られる。また、薬剤タンクへの給水は、ストレーナに接続された給水ポンプによって行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような薬液散布装置においては、一般に、給水ポンプに設けられたストレーナの目が粗いため、薬液タンクにゴミ等が混入し易いと考えられる。また、上記の薬液散布装置では、給水ポンプと噴霧ポンプとにそれぞれストレーナを必要とするため、ストレーナのメンテナンスに掛かる時間が増大し易い。
【0005】
本開示の一側面は、ストレーナのメンテナンスの手間を低減できる薬液散布装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一例の薬液散布装置は、薬液が貯留される薬液タンク(9)と、薬液タンク(9)に貯留された薬液を吸い出す噴霧ポンプ(21)と、薬液タンク(9)に給水するための給水ポンプ(22)と、給水ポンプ(22)に給水するための給水ホース(23)と、を備え、給水ポンプ(22)は、給水ホース(23)側から第1の流路切替部(25)とストレーナ(26)と第2の流路切替部(27)とを順番に介して給水ホース(23)に接続され、噴霧ポンプ(21)は、薬液タンク(9)側から第1の流路切替部(25)とストレーナ(26)と第2の流路切替部(27)とを順番に介して薬液タンク(9)に接続され、第1の流路切替部(25)は、給水ホース(23)とストレーナ(26)とを連通する状態と、薬液タンク(9)とストレーナ(26)とを連通する状態と、に切替可能であり、第2の流路切替部27は、ストレーナ(26)と給水ポンプ(22)とを連通する状態と、ストレーナ(26)と噴霧ポンプ(21)とを接続する状態と、に切替可能である。
【0007】
上記の薬液散布装置では、第1の流路切替部(25)によって給水ホース(23)とストレーナ(26)とが連通され、第2の流路切替部(27)によってストレーナ(26)と給水ポンプ(22)とが連通されることにより、給水ポンプ(22)がストレーナ(26)を介して給水ホース(23)に接続される。これにより、給水ポンプ(22)は、ストレーナ(26)によって濾過された水を薬液タンク(9)へ供給できる。また、第1の流路切替部(25)によって薬液タンク(9)とストレーナ(26)とが連通され、第2の流路切替部(27)によってストレーナ(26)と噴霧ポンプ(21)とが連通されることにより、噴霧ポンプ(21)がストレーナ(26)を介して薬液タンク(9)に接続される。これにより、噴霧ポンプ(21)は、ストレーナ(26)によって濾過された薬液を圧送することができる。このように、薬液散布装置では、噴霧ポンプ(21)に流入する薬液の濾過と給水ポンプ(22)に流入する水の濾過とが1つのストレーナ(26)によって実施される。したがって、ストレーナ(26)のメンテナンスに掛かる時間が増大することを抑制できる。
【0008】
一例のストレーナ(26)は、32以上80以下の範囲のメッシュ数を有してもよい。この構成では、給水ポンプ(22)によって薬液タンク(9)への給水が実施される際に、薬液タンク(9)へのゴミ等の混入を効果的に抑制できる。
【発明の効果】
【0009】
本開示の薬液散布装置によれば、ストレーナのメンテナンスの手間を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】一例の薬液散布装置を備えたブームスプレーヤの例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の実施形態の一例について、図面を参照しながら説明する。図面の説明において同一要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。なお、以下においては、薬液散布装置を含むブームスプレーヤについて説明するが、ブームスプレーヤ全体を薬液散布装置と捉えてもよい。
【0012】
図1は、一例のブームスプレーヤを斜め前方から見た斜視図である。ブームスプレーヤ1は、自走式の乗用管理機であり、圃場において農地または作物に薬液等の液体散布を行う。ブームスプレーヤ1は、機体フレームを有する走行機体3と、走行機体3の前部に取り付けられたブーム装置4とを備える。ブーム装置4は、走行機体3に支持された昇降装置30と、昇降装置30に支持されたブーム部40とを含む。ブーム部40は、センターブーム41と、センターブーム41の両端に配置された一対のサイドブーム43とを含んでいる。センターブーム41及びサイドブーム43は、複数の噴霧ノズルNが設けられた薬液散布用の送液管を有する。薬液散布を行う場合、サイドブーム43は、センターブーム41に対して一直線状となるように展開される。サイドブーム43は、
図1に示すように、薬液散布を行わないときには折り畳まれた状態で格納されている。なお、図示例のサイドブーム43は、多段式の伸縮ブームであり、ブーム展開時において伸長状態となり、ブーム格納時において縮小状態となる。
【0013】
走行機体3の前部には、作業者が着座する空間を形成するキャビン7が設けられている。走行機体3の後部には、エンジンルーム8が設けられている。このエンジンルーム8には、駆動源であるエンジン(図示せず)、噴霧ポンプ21(
図2参照)、給水ポンプ2222(
図2参照)等が設けられている。キャビン7とエンジンルーム8との間には、センターブーム41及びサイドブーム43から散布される薬液を収容する薬液タンク9が設けられている。走行機体3は、一対の前輪11と、一対の後輪12とを含んでいる。
【0014】
図2は、ブームスプレーヤ1における薬液散布装置100の配管系統図を示す。一例の薬液散布装置100は、薬液タンク9、噴霧ポンプ21及び給水ポンプ22に加え、各種の配管、機器等によって構成される。
図2に示す薬液散布装置100において、薬液タンク9は、散布のための薬液が貯留されるタンクであり、薬液タンク9に給水するための給水系統と、薬液タンク9内の薬液を噴霧するための噴霧系統と、に接続されている。
【0015】
薬液タンク9に接続される給水系統は、給水ホース23と、給水ポンプ22と、を含む。給水ホース23は、水源Sから水を汲み上げるためのホースである。給水ホース23は、給水ポンプ22に連通可能に接続されている。給水ポンプ22は、吸入口から吸入した液体を吐出口から吐出する。一例において、給水ポンプ22の吸入口は、給水ホース23側から第1の流路切替部25とストレーナ26と第2の流路切替部27とを順番に介して給水ホース23に接続されている。給水ポンプ22の吐出口は、ホース等によって構成される供給ラインL1を介して薬液タンク9に接続されている。
【0016】
薬液タンク9に接続される噴霧系統は、噴霧ポンプ21と、ブーム部40とを含む。噴霧ポンプ21は、吸入口から吸入した液体を吐出口から吐出する。なお、一例においては、噴霧ポンプ21の吐出圧力は給水ポンプ22の吐出圧力よりも大きく、噴霧ポンプ21の吐出流量は給水ポンプ22の吐出流量よりも小さくなっている。噴霧ポンプ21の吐出口には、噴霧ポンプ21による噴霧圧力を調整するための調圧弁31を備えたメインコック32が接続されている。さらに、メインコック32の流出側は、分水器34を介してセンターブーム41及びサイドブーム43の噴霧ノズルNに接続されている。例えば、分水器34は、ブーム毎に対応するコックを有している。図示例では、サイドブーム43が第1ブーム43a、第2ブーム43b及び第3ブーム43cの3段に分割されており、メインコック32は、分水器34のコック34aを介してセンターブーム41に接続され、コック34bを介して第1ブーム43aに接続され、コック34cを介して第2ブーム43b及び第3ブーム43cに接続されている。
【0017】
なお、メインコック32には、薬液タンク9に薬液を戻すための戻りラインL2が設けられており、ブーム部40側に送出されなかった薬液が薬液タンク9に戻るようになっている。戻りラインL2は、例えばホースによって構成されていてよい。また、分水器34には圧力計35が設けられている。例えば、調圧弁31による噴霧圧力は、分水器34の圧力計35によって検出された圧力に基づいて制御されてもよい。また、分水器34は、ストレーナを含んでいてもよい。
【0018】
噴霧ポンプ21の吸入口は、薬液タンク9側から第1の流路切替部25とストレーナ26と第2の流路切替部27とを順番に介して薬液タンク9に接続されている。上述のとおり、第1の流路切替部25、ストレーナ26及び第2の流路切替部27は、給水系統にも利用されている。すなわち、第1の流路切替部25は、ストレーナ26の流入側と、給水ホース23の流出側と、薬液タンク9に繋がる供給ラインL3の流出側とに接続されており、第2の流路切替部27は、ストレーナ26の流出側と、給水ポンプ22の吸入口に繋がる供給ラインL4と、噴霧ポンプ21の吸入口に繋がる供給ラインL5とに接続されている。
【0019】
第1の流路切替部25は、給水ホース23とストレーナ26とを連通する給水状態と、薬液タンク9とストレーナ26とを連通する噴霧状態と、に切替可能に構成されている。給水状態においては、薬液タンク9とストレーナ26とは連通されず、噴霧状態においては、給水ホース23とストレーナ26とは連通されない。また、第2の流路切替部27は、ストレーナ26と給水ポンプ22とを連通する給水状態と、ストレーナ26と噴霧ポンプ21とを接続する噴霧状態と、に切替可能である。給水状態においては、ストレーナ26と噴霧ポンプ21とは連通されず、噴霧状態においては、ストレーナ26と給水ポンプ22とは連通されない。
【0020】
一例において、第1の流路切替部25及び第2の流路切替部27は、それぞれ三方コック(三方切替弁)等の流路切替弁によって構成されていてよい。また、ストレーナ26は、32以上80以下の範囲のメッシュ数を有していてよい。なお、メッシュ数は、1インチ(25.4mm)の長さの間に形成されたメッシュの数を表す。
【0021】
以上説明のとおり、一例の薬液散布装置100は、薬液が貯留される薬液タンク9と、薬液タンク9に貯留された薬液を吸い出す噴霧ポンプ21と、薬液タンク9に給水するための給水ポンプ22と、給水ポンプ22に給水するための給水ホース23と、を備える。給水ポンプ22は、給水ホース23側から第1の流路切替部25とストレーナ26と第2の流路切替部27とを順番に介して給水ホース23に接続されている。噴霧ポンプ21は、薬液タンク9側から第1の流路切替部25とストレーナ26と第2の流路切替部27とを順番に介して薬液タンク9に接続されている。第1の流路切替部25は、給水ホース23とストレーナ26とを連通する状態と、薬液タンク9とストレーナ26とを連通する状態と、に切替可能であり、第2の流路切替部27は、ストレーナ26と給水ポンプ22とを連通する状態と、ストレーナ26と噴霧ポンプ21とを接続する状態と、に切替可能である。
【0022】
上記の薬液散布装置100では、第1の流路切替部25及び第2の流路切替部27の両方が給水状態に切り替えられているとき、給水ポンプ22による給水が可能となる。すなわち、第1の流路切替部25によって給水ホース23とストレーナ26とが連通され、第2の流路切替部27によってストレーナ26と給水ポンプ22の吸入口とが連通されることにより、給水ポンプ22の吸入口がストレーナ26を介して給水ホース23に連通される。この状態で、給水ホース23の先端を水源Sに浸漬させて給水ポンプ22を動作させることにより、水源Sの水は、給水ポンプ22によって汲み上げられ、給水ポンプ22の吐出口に接続された薬液タンク9に貯留される。そして、給水ポンプ22に汲み上げられる水は、ストレーナ26を通過する。
【0023】
また、薬液散布装置100では、第1の流路切替部25及び第2の流路切替部27の両方が噴霧状態に切り替えられているときに、噴霧ポンプ21による薬液の噴霧(散布)が可能となる。すなわち、第1の流路切替部25によって薬液タンク9とストレーナ26とが連通され、第2の流路切替部27によってストレーナ26と噴霧ポンプ21の吸入口とが連通されることにより、噴霧ポンプ21の吸入口がストレーナ26を介して薬液タンクに連通される。この状態で、噴霧ポンプ21を動作させ、メインコック32等のコックを開くことにより、薬液タンク9内の薬液は、ストレーナ26を通過した後に、噴霧ポンプ21によって圧送され、ブーム部40の噴霧ノズルNから噴霧される。
【0024】
このように、薬液散布装置100では、噴霧ポンプ21に流入する薬液がストレーナ26で濾過されるとともに、給水ポンプ22に流入する水もストレーナ26で濾過される。したがって、噴霧ポンプ21用のストレーナと給水ポンプ22用のストレーナとがそれぞれ設けられている場合に比べて、ストレーナのメンテナンスに掛かる時間が増大することを抑制できる。また、ストレーナの数を減らすことにより、製造コストを抑えることができる。
【0025】
また、上記の薬液散布装置100では、噴霧ポンプ21の他に、給水のための給水ポンプ22を有している。この場合、いわゆる潅水ポンプ、モノフレックスポンプのような吐出流量の大きいポンプを給水ポンプとして利用できるため、給水時間を短縮できる。
【0026】
一例のストレーナ26は、32以上80以下の範囲のメッシュ数を有している。従来のように、噴霧ポンプ用のストレーナと給水ポンプ用のストレーナとがそれぞれ設けられている場合には、給水ポンプ用のストレーナのメッシュは、一般に粗く設定される。この場合、給水の工程において、ストレーナで濾過しきれないゴミ等が薬液タンク内に混入することが考えられる。上記のように、32以上80以下の範囲のメッシュ数を有するストレーナ26が用いられる場合、薬液タンク9にゴミ等が混入することが抑制される。
【0027】
以上、一実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られない。
【0028】
例えば、噴霧ノズルが設けられたブームを有するブームスプレーヤについて説明したが、本開示の薬液散布装置は、噴霧ノズルを有するスピードスプレーヤに適用することもできる。
【0029】
また、本開示においては、噴霧ポンプと給水ポンプとで1つのストレーナを共用することにより、ストレーナのメンテナンスの手間を低減するという側面の他にも、例えば、噴霧ポンプに接続されたストレーナを給水作業でも有効に利用できる、という側面も有する。したがって、上記においては給水ホースの先端にストレーナが接続されていない例を示したが、例えば、メッシュの粗いストレーナを給水ホースの先端に接続して、水源から水を汲み上げてもよい。
【符号の説明】
【0030】
1…ブームスプレーヤ(薬液散布装置)、9…薬液タンク、21…噴霧ポンプ、22…給水ポンプ、23…給水ホース、25…第1の流路切替部、26…ストレーナ、27…第2の流路切替部、100…薬液散布装置。