(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023146338
(43)【公開日】2023-10-12
(54)【発明の名称】管継手の屈曲角測定方法および管継手の屈曲角測定用の基準治具
(51)【国際特許分類】
G01B 3/56 20060101AFI20231004BHJP
F16L 1/00 20060101ALI20231004BHJP
【FI】
G01B3/56
F16L1/00 X
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022053472
(22)【出願日】2022-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000142595
【氏名又は名称】株式会社栗本鐵工所
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【代理人】
【識別番号】100130177
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 弥一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100187827
【弁理士】
【氏名又は名称】赤塚 雅則
(72)【発明者】
【氏名】森本 皓一
(72)【発明者】
【氏名】吉田 義徳
(72)【発明者】
【氏名】橋本 健吾
(72)【発明者】
【氏名】魚津 颯二郎
(72)【発明者】
【氏名】小仲 正純
【テーマコード(参考)】
2F061
【Fターム(参考)】
2F061AA46
2F061AA50
2F061BB02
2F061DD27
2F061FF04
2F061FF09
2F061FF36
2F061FF43
2F061FF56
2F061FF73
2F061GG05
2F061GG08
2F061JJ71
2F061JJ74
2F061UU30
(57)【要約】
【課題】管路の屈曲方向にかかわらず、正確かつ簡便に屈曲角を測定することか可能な管継手の屈曲角測定方法を提供する。
【解決手段】管軸方向に対し垂直な方向の水平状態を検出する水準器7と、水準器7が水平を示した状態において水平位置または鉛直位置の少なくとも一方を示す基準部8と、を有する基準治具3を、水準器7が水平状態を示すように挿し側管体2にセットする治具取り付け工程と、第一辺9と、第一辺9に対し回動可能な第二辺10と、第一辺9と第二辺10との間の角度を表示する角度表示部11と、を有する角度計4の第一辺9を基準部8に合わせつつ挿し側管体2の管軸方向に沿わせるとともに、第二辺10を受け側管体1の端面に沿わせた上で、角度表示部11に表示された角度を読み取る角度読み取り工程と、を有する構成とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
接続された受け側管体(1)と挿し側管体(2)との間の屈曲角を測定する管継手の屈曲角測定方法において、
管軸方向に対し垂直な方向の水平状態を検出する水準器(7)と、前記水準器(7)が水平を示した状態において水平位置または鉛直位置の少なくとも一方を示す基準部(8)と、を有する基準治具(3)を、前記水準器(7)が水平状態を示すように前記挿し側管体(2)にセットする治具取り付け工程と、
第一辺(9)と、前記第一辺(9)に対し回動可能な第二辺(10)と、前記第一辺(9)と前記第二辺(10)との間の角度を表示する角度表示部(11)と、を有する角度計(4)の前記第一辺(9)を前記基準部(8)に合わせつつ前記挿し側管体(2)の管軸方向に沿わせるとともに、前記第二辺(10)を前記受け側管体(1)の端面に沿わせた上で、前記角度表示部(11)に表示された角度を読み取る角度読み取り工程と、
を有することを特徴とする管継手の屈曲角測定方法。
【請求項2】
前記基準治具(3)が前記挿し側管体(2)の周方向に沿う基部(5)を有し、前記基部(5)の周方向端部(8a)と当該周方向端部(8a)から周方向に90度の位置が、前記水準器(7)の水平状態において、前記水平位置と前記鉛直位置を示す基準部(8)となっている請求項1に記載の管継手の屈曲角測定方法。
【請求項3】
前記基準部(8)が管軸方向に延びるように形成されたスリット(8b)であって、前記スリット(8b)に前記第一辺(9)を挿入した状態で前記角度読み取り工程を行う請求項1または2に記載の管継手の屈曲角測定方法。
【請求項4】
挿し側管体(2)の外周面に沿って設けられる基部(5)と、
管軸方向に対し垂直な方向の水平状態を検出する水準器(7)と、
前記水準器(7)が水平を示した状態において水平位置または鉛直位置の少なくとも一方を示す基準部(8)と、
を有する管継手の屈曲角測定用の基準治具。
【請求項5】
前記基準部(8)が、受け側管体(1)と前記挿し側管体(2)との間の屈曲角を測定する角度計(4)を保持するスリット(8b)である請求項4に記載の管継手の屈曲角測定用の基準治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、管継手の屈曲角測定方法、および、この屈曲角測定方法に用いられる基準治具に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、水道管などの管路を曲線状に配管する場合、曲管を用いる代わりに直管の継手を屈曲させることによって曲線を構成させる方法がある。このように、継手を屈曲させる際には、
図11に示すように、継手の屈曲外側と屈曲内側とで、挿し側管体20の端部に形成された環状の白線21と受け側管体22の受口端面との間の寸法a1、a2をそれぞれ測定し、次の(1)式に基づいて継手の屈曲角θを算出している。
θ=tan
-1((a1-a2)/D) (1)
【0003】
この屈曲角の測定においては、例えば下記特許文献1に示すように、接合部を撮像装置で上方から撮像し、その画像からエッジを抽出して屈曲角を求める手法も提案されている(特許文献1の段落0081、
図9(b)などを参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図11に示すように白線21と受口端面との間の寸法差から継手の屈曲角θを算出する方法は、上記の(1)式に基づいてその測定値から屈曲角に換算する必要があり手間を要する。また、受け側管体22の受口端面には、鋳出し部としてメーカマークがあり、管の敷設作業ではメーカマークを管頂とする作業要領が規定されているが、実際にはメーカマークが正確に管頂となるように敷設されているとは限らず、この鋳出し部を基準として管頂、管底、管横の位置を正確に把握することは容易ではない。このため、測定誤差が生じやすいとともに測定作業に手間取ることがある。
【0006】
管路が水平面内で屈曲している場合は、管横部で寸法を測定すればよいが、管路が鉛直面内でも屈曲している場合は、管頂部と管底部で寸法を測定する必要がある。また、管路が傾斜地に埋設されている場合や、管路が他の埋設物と交差するように埋設されている場合は、管路が水平面内と鉛直面内の両方で屈曲している場合があり、この場合は、管横部、管頂部、および、管底部で寸法を測定する必要がある。ところが、特に管底部での測定作業は管底付近の土砂を掘り起こす必要があるため難しく、作業者の熟練度などによって誤差も生じやすい。また、特許文献1の構成は、水平面内での屈曲角を求めることができても、鉛直面内での屈曲角を求めることはできない。
【0007】
そこで、この発明は、管路の屈曲方向にかかわらず、正確かつ簡便に屈曲角を測定することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、この発明では、
接続された受け側管体と挿し側管体との間の屈曲角を測定する管継手の屈曲角測定方法において、
管軸方向に対し垂直な方向の水平状態を検出する水準器と、前記水準器が水平を示した状態において水平位置または鉛直位置の少なくとも一方を示す基準部と、を有する基準治具を、前記水準器が水平状態を示すように前記挿し側管体にセットする治具取り付け工程と、
第一辺と、前記第一辺に対し回動可能な第二辺と、前記第一辺と前記第二辺との間の角度を表示する角度表示部と、を有する角度計の前記第一辺を前記基準部に合わせつつ前記挿し側管体の管軸方向に沿わせるとともに、前記第二辺を前記受け側管体の端面に沿わせた上で、前記角度表示部に表示された角度を読み取る角度読み取り工程と、
を有することを特徴とする管継手の屈曲角測定方法を構成した。
【0009】
このようにすると、基準治具によって管頂および管横の位置を正確に把握することができ、水平面内および鉛直面内での屈曲角を正確に測定することができる。また、角度計の表示を読み取ることで屈曲角が直接求まるため、作業時間の短縮を図ることができる。また、管底での測定作業が不要となるためその作業が簡便となるとともに、作業者の熟練度などによる誤差を低減することができる。
【0010】
前記構成においては、
前記基準治具が前記挿し側管体の周方向に沿う基部を有し、前記基部の周方向端部と当該周方向端部から周方向に90度の位置が、前記水準器の水平状態において、前記水平位置と前記鉛直位置を示す基準部となっているのが好ましい。
【0011】
このようにすると、水平位置と鉛直位置を示す基準部に角度計を宛がうことによって、水平面内と鉛直面内の屈曲角を速やかにかつ正確に測定することができる。
【0012】
前記構成においては、
前記基準部が管軸方向に延びるように形成されたスリットであって、前記スリットに前記第一辺を挿入した状態で前記角度読み取り工程を行うのが好ましい。
【0013】
このようにすると、スリットによって第一辺が固定されて角度計を安定的に保持することができるため、この角度計による測定を一層正確に行うことができる。
【0014】
また、上記の課題を解決するため、この発明では、
挿し側管体の外周面に沿って設けられる基部と、
管軸方向に対し垂直な方向の水平状態を検出する水準器と、
前記水準器が水平を示した状態において水平位置または鉛直位置の少なくとも一方を示す基準部と、
を有する管継手の屈曲角測定用の基準治具を構成した。
【0015】
このようにすると、基準部に基づいて挿し側管体の管頂または管横の少なくとも一方の位置を正確に把握することができ、管継手の屈曲角の測定工程において、作業者の熟練度などによる誤差を低減することができる。
【0016】
前記構成においては、
前記基準部が、受け側管体と前記挿し側管体との間の屈曲角を測定する角度計を保持するスリットであるのが好ましい。
【0017】
このようにすると、スリットによって角度計を安定的に保持することができるため、この角度計による測定を一層正確に行うことができる。
【発明の効果】
【0018】
この発明では、水準器が水平を示した状態において水平位置または鉛直位置の少なくとも一方を示す基準部を有する基準治具を用いた上で、角度計の第一辺を基準部に合わせつつ挿し側管体の管軸方向に沿わせるとともに、第二辺を受け側管体の端面に沿わせるようにして角度を読み取るようにしたので、基準治具によって管頂および管横の位置を正確に知ることができ、水平面内および鉛直面内での屈曲角の大きさを正確に測定することができる。また、角度計の表示を読み取ることで屈曲角が直接求まるため、作業時間の短縮を図ることができる。また、管底での測定作業が不要となるためその作業が簡便となるとともに、作業者の熟練度などによる誤差を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】この発明に係る管継手の屈曲角測定方法のフローを示す図
【
図2】
図1に示す管継手の屈曲角測定方法で用いられる基準治具の第一例を示し、(a)は側面図、(b)は平面図
【
図3】
図1に示す管継手の屈曲角測定方法で用いられる角度計の一例を示す正面図
【
図4】水平面内での屈曲角を測定している状態を示す平面図であって、(a)はその全体図、(b)はその要部の拡大図
【
図5】鉛直面内での屈曲角を測定している状態を示し、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は(b)の要部
【
図7】(a)は受口端面に補助治具を取り付ける前の状態を示す側面図、(b)は補助治具を取り付けた後の状態を示す側面図、(c)は要部の断面図
【
図8】
図1に示す管継手の屈曲角測定方法で用いられる基準治具の第二例を管頂にセットした状態を示し、(a)は側面図、(b)は平面図
【
図9】
図1に示す管継手の屈曲角測定方法で用いられる基準治具の第二例を管横にセットした状態を示し、(a)は側面図、(b)は平面図
【
図10】
図1に示す管継手の屈曲角測定方法で用いられる基準治具の第三例を管頂にセットした状態を示す側面図
【発明を実施するための形態】
【0020】
この発明に係る管継手の屈曲角測定方法(以下、屈曲角測定方法と略称する。)は、接続された受け側管体1と挿し側管体2との間の屈曲角の測定方法であって、この測定方法は、
図1に示すように、基準治具3を挿し側管体2にセットする治具取り付け工程(
図1中のステップS1)と、角度計4を用いて受け側管体1と挿し側管体2との間の屈曲角を読み取る角度読み取り工程(
図1中のステップS2)と、を主要な構成要素としている。
【0021】
治具取り付け工程に用いられる基準治具3の第一例を
図2(a)(b)に示す。この基準治具3は、中心角が180度で周方向に帯状をなす円弧状の基部5を有している。この基部5の内面は、挿し側管体2の外周面に沿う曲面となっている。この基部5の周方向両端には、径方向外向きにフランジ6が延設されている。
【0022】
各フランジ6の上面(基部5の凸側の面)には、管軸方向に対し垂直な方向の水平状態を検出する水準器7が設けられている。ここでは、水準器7として気泡管水準器を採用している。この水準器7は、水平状態を示す内部の気泡がフランジ6の延設方向に沿って移動可能な向きに配置されている。なお、この実施形態で用いた基準治具3においては、両フランジ6にそれぞれ水準器7を設けた構成としたが、一方のフランジ6のみに水準器7を設けた構成とすることもできる。
【0023】
各フランジ6の下面8a(基部5の凹側の面(周方向端部))は、水準器7が水平状態を示した状態で基準治具3が挿し側管体2にセットされたときに挿し側管体2の管横に位置(水平位置)するように構成されており、水平位置の基準部8として機能している。このとき、
図2(a)に示すように、各フランジ6の下面8aを含む平面は、挿し側管体2の管軸中心を通っている。
【0024】
基部5の周方向中央(各フランジ6の下面8aから周方向に90度の位置)には、管軸方向に延びるスリット8bが形成されている。このスリット8bは、水準器7が水平状態を示した状態で基準治具3が挿し側管体2にセットされたときに挿し側管体2の管頂に位置(垂直位置)するように構成されており、鉛直位置の基準部8として機能している。このスリット8bの管軸方向の長さ、および、周方向幅は適宜決めることができるが、このスリット8bに挿入される後述する角度計4の第一辺9を管軸方向に沿って安定的に保持することができる程度の長さおよび周方向幅とされる。
【0025】
基準治具3の素材は特に限定されないが、使用時においてこの基準治具3には特に大きな力は作用しないため、樹脂を採用することができる。このようにすれば、基準治具3を軽量化することができ、その設置や運搬を容易に行うことができる。
【0026】
この実施形態においては基部5の中心角が180度の基準治具3を用いたが、例えば、中心角が100度でその周方向の一端側にフランジ6が形成されるとともに水準器7が設けられており、他端側から周方向に10度の位置にスリット8bが形成された基準治具3を採用することもできる。
【0027】
治具取り付け工程においては、水準器7が水平状態を示すように目視で確認しながら、基準治具3を挿し側管体2の端部近傍にセットする。このとき、単に挿し側管体2に基準治具3を載せるだけでもよいが、基部5の凹側の面に磁石を設けておき、この磁石が挿し側管体2の外周面に吸着するようにしておけば、基準治具3を安定的にセットすることができる。
【0028】
角度読み取り工程に用いられる角度計4の一例を
図3に示す。この角度計4は、長尺板状の第一辺9と、第一辺9に対し回動可能な長尺板状の第二辺10と、第一辺9と第二辺10との間の角度を表示する角度表示部11と、を有する。第一辺9と第二辺10がちょうど重なり合ったときは角度表示部11の表示は0度となり、第一辺9と第二辺10が直交するときは角度表示部11の表示は90度となる。
【0029】
角度読み取り工程において水平方向の屈曲角を測定する際は、
図4(a)(b)に示すように、挿し側管体2の管横位置(水平位置)を示す基準部8としてのフランジ6の下面8aに角度計4の第一辺9を合わせつつこの第一辺9を挿し側管体2の管軸方向に沿わせるとともに、第二辺10を受け側管体1の受口の端面に沿わせる。そして、その状態で、角度計4の角度表示部11に表示された角度θ
MHを読み取る。
【0030】
また、角度読み取り工程において鉛直方向の屈曲角を測定する際は、
図5(a)~(c)に示すように、挿し側管体2の管頂位置(鉛直位置)を示す基準部8としてのスリット8bに角度計4の第一辺9を挿し込みつつこの第一辺9を挿し側管体2の管軸方向に沿わせるとともに、第二辺10を受け側管体1の受口の端面に沿わせる。そして、その状態で、角度計4の角度表示部11に表示された角度θ
MVを読み取る。
【0031】
なお、屈曲方向が水平方向または鉛直方向の一方向のみであることが明らかな場合は、他方向の屈曲角の測定を省略できる場合もある。
【0032】
図6に合成屈曲角θの算出フローを示す。まず、角度読み取り工程において読み取られた、水平面内における挿し側管体2の外周面と受け側管体1の受口端面との角度θ
MH、および、鉛直面内における挿し側管体2の外周面と受け側管体1の受口端面との角度θ
MV(
図6中のステップS11)から、次の(2)式および(3)式に基づいて、水平面内での屈曲角θ
Hおよび鉛直面内での屈曲角θ
Vをそれぞれ算出する(
図6中のステップS12)。
θ
H=|θ
MH-90| (2)
θ
V=|θ
MV-90| (3)
【0033】
さらに、水平面内での屈曲角θ
Hおよび鉛直面内での屈曲角θ
Vから、次の(4)式に基づいて、合成屈曲角θを算出する(
図6中のステップS13)。
θ=cos
-1(cosθ
H・cosθ
V) (4)
【0034】
上記において説明した屈曲角測定方法は、管の継手方式や呼び径に関係なく広く適用することが可能である。
【0035】
受け側管体1の受口端面には、メーカマークや管種などを示す凹凸状の鋳出し部12が形成されており、管の敷設作業では鋳出し部12内のメーカマークを管頂とするよう作業要領が規定されている。この鋳出し部12が形成されていると、角度読み取り工程において角度計4の第二辺10を受口の端面に沿わせることができず、十分な測定精度を得ることができないおそれがある。
【0036】
この場合、
図7(a)~(c)に示すように、補助治具13を適用することで鋳出し部12の凹凸に起因する測定精度の低下を解消することができる。この補助治具13は、表面に凹凸がない板状の部材の両端に、鋳出し部12の高さよりも厚みがある一対の磁石14が設けられた構成となっている。鋳出し部12を跨ぐように一対の磁石14を受口の端面に吸着させた上で、この補助治具13の表面に角度計4の第二辺10を沿わせることにより、管頂において屈曲角を精度よく測定することができる。
【0037】
上記の屈曲角測定方法によると、基準治具3によって管頂および管横の位置を基準部8(フランジ6の下面8aおよびスリット8b)に基づいて正確に把握した上で角度計4を適用することができるため、水平面内および鉛直面内での屈曲角の大きさを正確に測定することができる。また、角度計4の表示を読み取ることで屈曲角が直接求まるため、作業時間の短縮を図ることができる。また、管底での測定作業が不要となるためその作業が簡便となるとともに、作業者の熟練度などによる誤差を低減することができる。
【0038】
また、基準部8としてスリット8bを採用したことにより、その基準部8に角度計4を安定的に保持することができ、この角度計4による測定を一層正確に行うことができる。
【0039】
治具取り付け工程に用いられる基準治具3の第二例を
図8(a)(b)および
図9(a)(b)に示す。この基準治具3は、略直方体状の基部5を有している。この基部5の内面は、挿し側管体2の外周面に沿う曲面となっている。この曲面には磁石(図示せず)が設けられており、この磁石が挿し側管体2の外周面に吸着して、基準治具3を安定的にセットすることができる。
【0040】
基部5の径方向外側の面および周方向一方側の面には、管軸方向に対し垂直な方向の水平状態を検出する水準器7が設けられている。以下においては、基部5の径方向外側の面に設けられた水準器7を第一水準器7a、周方向一方側の面に設けられた水準器7を第二水準器7bと称する。ここでは、第一例と同様に、水準器7として気泡管水準器を採用している。この水準器7は、各水準器7が基部5の上面となるように挿し側管体2にセットされたときに、水平状態を示す内部の気泡が挿し側管体2の周方向に沿って移動可能な向きに配置されている。
【0041】
基部5の周方向中央には、管軸方向に延びるスリット8bが形成されている。このスリット8bは、
図8(a)(b)に示すように、第一水準器7aが水平状態を示した状態で基準治具3が挿し側管体2にセットされたときに挿し側管体2の管頂に位置して、鉛直位置の基準部8として機能する一方で、
図9(a)(b)に示すように、第二水準器7bが水平状態を示した状態で基準治具3が挿し側管体2にセットされたときに挿し側管体2の管横に位置して、水平位置の基準部8として機能するように構成されている。
【0042】
この第二例に係る基準治具3は、第一例に係る基準治具3と比較して大幅に小型化・軽量化されているため、容易に運搬することが可能である。
【0043】
第二例に係る基準治具3を用いた屈曲角測定方法においては、まず、第一水準器7aが水平状態を示すように目視で確認しながら、基準治具3を挿し側管体2の端部近傍の頂部にセットする(治具取り付け工程)。そして、挿し側管体2の管頂位置(鉛直位置)を示す基準部8としてのスリット8bに角度計4の第一辺9を挿し込みつつこの第一辺9を挿し側管体2の管軸方向に合わせるとともに、第二辺10を受け側管体1の受口の端面に沿わせる。そして、その状態で、角度計4の角度表示部11に表示された角度θMVを読み取る(角度読み取り工程)。
【0044】
次に、第二水準器7bが水平状態を示すように目視で確認しながら、基準治具3を挿し側管体2の端部近傍の管横にセットする(治具取り付け工程)。そして、挿し側管体2の管横位置(水平位置)を示す基準部8としてのスリット8bに角度計4の第一辺9を挿し込みつつこの第一辺9を挿し側管体2の管軸方向に合わせるとともに、第二辺10を受け側管体1の受口の端面に沿わせる。そして、その状態で、角度計4の角度表示部11に表示された角度θMHを読み取る(角度読み取り工程)。
【0045】
さらに、測定された角度θ
MV、θ
MHから
図6に示す算出フローに基づいて合成屈曲角θを算出し、合成屈曲角θが許容値以下であるか確認する。なお、算出工程においては、エクセルなどのソフトウェアを用いるのが望ましい。
【0046】
治具取り付け工程に用いられる基準治具3の第三例を
図10に示す。この基準治具3は、基本的な構成は第二例に係る基準治具3と共通するが、基部5の内面が側面視逆V字形となっており、周方向の2か所で挿し側管体2と基部5が当接するようになっている点において相違する。この逆V字形部分には、磁石(図示せず)が設けられており、この磁石が挿し側管体2の外周面に吸着して、基準治具3を安定的にセットすることができる。
【0047】
この第三例に係る基準治具3は、第一例および第二例に係る基準治具3と異なり、挿し側管体2の呼び径に関係なく共通の基準治具3を使用することができるため、呼び径に対応する基準治具3を数多く用意する必要がなくコストを削減することができる。なお、第三例に係る基準治具3を用いた屈曲角測定方法は、第二例に係る基準治具3を用いた場合と共通するので説明は省略する。
【0048】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。したがって、本発明の範囲は上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味およびすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0049】
1 受け側管体
2 挿し側管体
3 基準治具
4 角度計
5 基部
6 フランジ
7 水準器
7a 第一水準器
7b 第二水準器
8 基準部
8a 周方向端部(フランジの下面)
8b スリット
9 第一辺
10 第二辺
11 角度表示部
12 鋳出し部
13 補助治具
14 磁石