(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023146352
(43)【公開日】2023-10-12
(54)【発明の名称】円筒形二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 10/04 20060101AFI20231004BHJP
H01M 50/107 20210101ALI20231004BHJP
H01M 4/70 20060101ALI20231004BHJP
H01M 50/533 20210101ALI20231004BHJP
H01M 50/548 20210101ALI20231004BHJP
【FI】
H01M10/04 W
H01M50/107
H01M4/70 A
H01M50/533
H01M50/548 201
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022053494
(22)【出願日】2022-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000237721
【氏名又は名称】FDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090022
【弁理士】
【氏名又は名称】長門 侃二
(72)【発明者】
【氏名】横澤 友美
【テーマコード(参考)】
5H011
5H017
5H028
5H043
【Fターム(参考)】
5H011AA03
5H011AA09
5H011CC06
5H011DD10
5H011KK01
5H017AA02
5H017AS10
5H017CC05
5H017HH03
5H017HH05
5H028AA07
5H028BB07
5H028CC08
5H028CC13
5H028HH05
5H043AA19
5H043BA16
5H043CA03
5H043CA12
5H043DA03
5H043DA20
5H043EA07
5H043EA35
5H043EA60
5H043LA02E
5H043LA21D
5H043LA21E
(57)【要約】
【課題】 正極板及び負極板を巻回してなる円筒形の電極群を外装缶に簡単な構成で固定する円筒形二次電池を提供する。
【解決手段】 円筒形二次電池1は、有底円筒形の外装缶10と、正極板16と負極板18とがセパレータ20を介して巻回形成され、外装缶内に電解液と共に収容される電極群12と、外装缶の缶底10Aと電極群との間に配置されて負極板を外装缶に電気的に接続する負極集電体21とを備える。電極群の側面となる負極板において、負極集電体側の端縁部18Aの厚みは、端縁部を除く部分の厚みより厚い。外装缶は、底部近傍の側面の内径が他の部分よりも小さい厚肉部を有する。厚肉部により、電極群の端縁部が外装缶に固定される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
閉塞された一端を底部として含む円筒形の外装缶と、
各々が帯状の正極板と負極板とをセパレータを挟んで重ね合わせて前記正極板及び前記負極板の幅方向を軸として渦巻状に巻回されて、渦巻状に巻回された最外周面は前記負極板からなり、前記外装缶内に電解液と共に収容される電極群と、
前記外装缶の底部と前記電極群との間に配置されて前記底部と接すると共に前記負極板と接する板状の負極集電体と、
を備え、
前記負極板は、前記負極集電体側の縁部の厚みが、残りの部分の厚みより厚く、
前記最外周面を構成する負極板の前記縁部及び前記負極集電体の縁部の少なくとも一方が、前記外装缶の軸方向に延びる内周面に接して固定される、円筒形二次電池。
【請求項2】
前記外装缶は、前記底部近傍の側面の内径が、残りの側面の内径よりも小さい、請求項1記載の円筒形二次電池。
【請求項3】
前記外装缶は、前記底部近傍の側面において、前記外装缶の軸に向けて凹むと共に円周方向に線条に延びる窪み部を有し、
前記負極板の前記縁部は、前記外装缶の内側で前記窪み部に係止されることにより、前記電極群が前記外装缶に対して固定される、請求項1または2記載の円筒形二次電池。
【請求項4】
前記負極板は、帯状の芯体と、負極合剤が前記芯体に塗布された負極合剤層とからなり、
前記芯体は、
前記幅方向における一端部及び他端部の各々に位置し、且つ前記幅方向と交差する巻回方向に延びる平坦な無孔部と、
前記無孔部の間に位置し、前記芯体の厚み方向に貫通して前記負極合剤が入り込む複数の貫通孔を有する有孔部と、
を有する請求項1から3のいずれか一記載の円筒形二次電池。
【請求項5】
前記正極板は、前記負極板に対し前記幅方向に第1長さだけずらした状態で渦巻状に巻回されて前記電極群を構成し、
前記外装缶の側面は、前記底部から前記軸方向に第2長さの部位までを幅とする厚肉部を有し、前記第2長さは、前記第1長さよりも短く、且つ0.5mmから2.0mmまでの範囲にある、請求項1から4のいずれか一記載の円筒形二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円筒形二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、アルカリ蓄電池は、以下のようにして作製される。まず、正極板および負極板の間にセパレータを介在させ、これらを渦巻き状に捲回して略円柱状の電極群を形成し、電極群の負極側に負極集電体を溶接する。次に、電極群を有底外装缶に収容して、電極群の巻芯を抜いた中心孔に溶接棒を通して負極集電体を外装缶の底部に溶接する。このように、抵抗溶接により、電極群を集電体に固定し、さらに外装缶に固定することによって、電極群を外装缶に対し電気的に接続すると共に固定する。その後、電極群の正極側に、集電リードを有した正極集電体を溶接し、外装缶に電解液を充填する。さらに、集電リードを封口体に溶接し、封口体を外装缶の開口に絶縁ガスケットを介して装着してかしめることにより外装缶を密閉する(特開2003-168415号公報を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003-168415号公報
【特許文献2】特開2005-129433号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
集電体と外装缶との抵抗溶接は、高容量化した巻芯部の小さな電池では溶接性を低下させることがあった。また、外装缶底における集電体との溶接面積が小さいため溶接不良が発生しやすく、この溶接不良は外装缶内部で発生するために溶接直後では確認しにくいという問題があった。さらに、溶接に用いられる電極棒は、非常に細い径であるために摩耗や劣化が早く、溶接作業全体に対する工程数を多くしていた。
【0005】
そこで、例えば、特開2005-129433号公報に記載されるように、集電体を有底円筒形に成形して電極群の負極側を蓋するように取付け、一方、電池ケースの側面に円周方向に延びる凹溝を形成して、凹溝を集電体側面に当接させて電極群を電池ケースに対し固定する構成が提案されていた。しかし、集電体の形状が複雑であり電池作製の工程数が増える等の懸念があった。
【0006】
本発明の目的は、簡単な構成でありながらも電極群の外装缶への固定を確実なものとする円筒形二次電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の円筒形二次電池は、閉塞された一端を底部として含む円筒形の外装缶と、各々が帯状の正極板と負極板とをセパレータを挟んで重ね合わせて前記正極板及び前記負極板の幅方向を軸として渦巻状に巻回されて、渦巻状に巻回された最外周面は前記負極板からなり、前記外装缶内に電解液と共に収容される電極群と、前記外装缶の底部と前記電極群との間に配置されて前記底部と接すると共に前記負極板と接する板状の負極集電体と、を備え、前記負極板は、前記負極集電体側の縁部の厚みが、残りの部分の厚みより厚く、前記最外周面を構成する負極板の前記縁部及び前記負極集電体の縁部の少なくとも一方が、前記外装缶の軸方向に延びる内周面に接して固定される、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の円筒形二次電池によれば、抵抗溶接を行うことなく、電極群を負極集電体及び外装缶に対して接続または固定させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】一実施形態に係る円筒形ニッケル水素二次電池の一部切欠及び展開した斜視図である。
【
図4】負極板、セパレータ及び正極板を重ねた状態を示す平面図である。
【
図6】他の実施の形態に係る電池の負極側の断面図である。
【
図7】
図5に示す実施の形態の変形例である電池の負極側の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、一実施の形態に係る円筒形二次電池としてニッケル水素二次電池(以下、単に「電池」と称す)を図面を参照しながら説明する。
【0011】
図1に、例えば高さが50.5mmで外径が14.5mmのAAサイズの円筒形電池1を示す。電池1は、有底円筒形状の外装缶10内に、略円柱状の電極群12がアルカリ電解液とともに収容され、外装缶10の開口が封口体24によって封止されている。外装缶10の封止された端部は、正極として機能し、外装缶10の外面は、負極として機能する。
【0012】
外装缶10は、ニッケルメッキ鋼板を多段プレスにより円筒形に成形され、軸方向における一端部が缶底10Aとなり、他端部が開口している。外装缶10は、側面の厚みが0.15~0.2mmであり、缶底10Aの厚みが0.3~0.35mmであり、缶底10Aの方が側面10Bよりも厚く形成されている。
【0013】
また、外装缶10は、
図2に示すように、側面10Bは、電池1としての組立前は、缶底10A側の円筒状の厚肉部10B1と、厚肉部10B1と連続して電池1の正極側に向けて延びる円筒状の側面部10B2とを備える。厚肉部10B1は、缶底10Aの縁部10aを幅の一端とし、縁部10aから外装缶10の軸方向に沿った高さH1の箇所を幅の他端とする円筒形になっている。厚肉部10B1の厚みは、側面部10B2の厚みより厚く形成されている。従って、厚肉部が側面部よりも外装缶の中心軸に向けて突出する場合は、外装缶の厚肉部の内径は、側面部の内径よりは小さくなる。なお、上記した0.15~0.2mmの側面の厚みは、側面部10B2の厚みである。また、高さH1は、第2長さの一例である。
【0014】
電極群12は、それぞれ帯状の正極板16、負極板18及びセパレータ20からなる。電極群12は、正極板16と負極板18との間にセパレータ20を介在させて渦巻状に巻回されて、全体として略円柱形状を有する。電極群12の最外周部、いわゆる円柱の側面は、負極板18のみより構成され、正極板16が側面に露出しない。電極群12の最外周を構成する負極板18が外装缶10の内周面と接することで、負極板18は外装缶10に接続される。
【0015】
正極板16は、長手方向に帯状に延び多孔質構造をなし多数の空孔を有する導電性の正極基体と、空孔内及び正極基体の表面に保持される正極合剤とからなる。正極基体は、例えば導電性を呈するニッケル等の金属でメッキされ、メッキ後の正極基体には正極合剤が充填される。正極合剤は、正極活物質粒子、導電材、正極添加剤及び結着剤を含む。正極合剤が塗布された正極基体は、圧延されると正極板16が完成する。
【0016】
負極板18は、水素吸蔵合金を含む電極であり、帯状の導電性の負極芯体19と、負極芯体19に保持される負極合剤とからなる。負極芯体19は、
図3に示すように、厚み方向に多数の貫通孔が形成された金属シートからなる。負極芯体19は、電極群12の巻回方向を長手方向とする帯形状に作製される。本実施の形態において、負極芯体19は、例えば幅が59.5mm、厚みが60μmのメタルシートからなる。
【0017】
負極芯体19は、より詳しくは、幅方向における一端部E1及び他端部E2の各々から所定幅Wに亘る帯状の無孔部A1,A2と、無孔部A1,A2の間に位置する有孔部A3とからなる。本実施の形態では、Wは3.1mmである。無孔部A1,A2は、厚み方向に貫通する貫通孔がないため表面が平坦であり、負極芯体19に機械的な強度を付与する。有孔部A3は、厚み方向に貫通する貫通孔が多数形成され、負極芯体19の表面のみならず貫通孔の内部においても負極合剤を保持する。
【0018】
負極芯体19は、負極合剤が塗布された後、乾燥されてロール圧延される。本実施の形態では、圧延後の負極板18の厚みは、無孔部A1,A2に相当する領域はそれぞれ0.342mmになり、有孔部A3に相当する領域は0.334mmになる。すなわち、無孔部A1,A2に相当する負極板の厚みは、有孔部A3に相当する負極板の厚みより厚くなり、その差は8μmになる。これは、負極芯体19に塗布された負極合剤は、有孔部A3では貫通孔に充填された合剤が圧延により有孔部A3での厚みを減らすが、無孔部A1,A2では貫通孔がないために圧延されても圧縮率が有孔部A3よりも小さいためと推定される。このように、無孔部A1,A2の厚みは、有孔部A3の厚みよりも厚くなっている。
【0019】
セパレータ20は、例えばポリオレフィン系繊維の不織布に親水基を付加したものからなる。
【0020】
アルカリ電解液は、例えば、水酸化カリウム水溶液、水酸化リチウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液又はこれらの混合溶液が用いられる。
【0021】
上記のようにして組み立てられた電極群12は、外装缶10内部に板状の負極集電体21を介して収容される。
【0022】
電極群12を外装缶10に収容した後、外装缶10の開口部近傍の正極板16に、正極集電体22の一端が電気的に接続され、他端が導電性を有する円形の封口体24の内面に溶接される。封口体24は、中央にガス抜き孔26を有し、封口体24の外面上にはガス抜き孔26を塞ぐようにゴム製の弁体28が配置される。更に、封口体24の外面上には、弁体28を覆うフランジ付き円筒形状の正極端子30が固定され、正極端子30が弁体28を封口体24に押圧する。
【0023】
封口体24は、外装缶10の開口端に位置し、封口体24の外周部と外装缶10の内周面との間には絶縁ガスケット32が挟まれている。封口体24及び絶縁ガスケット32は、電極群12よりも開口端側の外装缶10の部分をかしめ加工することによって外装缶10の開口端に固定される。絶縁ガスケット32によって、封口体24の外周部と外装缶10との間が絶縁されるとともにシールされる。
【0024】
上述のようにして電池1が組み立てられる。
【0025】
電極群12を作製するために、正極板16と負極板18とを両極板16、18の間にセパレータ20を介在させて巻回するとき、
図4に示すように、例えば、負極板18、セパレータ20及び正極板16の順に重ね合わせる。このとき、負電極板18及び正極板16の長手方向を揃えながらも、負極板18に対し正極板16を幅方向の一方に対して長さLだけずらしたのち、正極板16及び負極板18をその幅方向を軸として、すなわち電極板16、18の長手方向を巻回方向として巻回する。なお、長さLは第1長さの一例である。これにより、電極群12では、一端部からは負極板18の端部E1が渦巻状に突出し、他端部からは正極板16の端縁部が渦巻状に突出する。渦巻状に突出する負極板18の端部E1は、電極群12の負極側端部18Aとなる。なお、巻きずらし長さLは、負極板18の無孔部A1の幅に相当する長さWを超えない長さに設定される(L<W)。無孔部A1の幅W以上に正極板16を負極板18に対してずらしてしまうと、電極群12全体としての機械的強度を損なうことになるからである。
【0026】
上記のようにして組み立てられた電極群12は、外装缶10内に、電極群12の負極側端部18Aが、缶底10Aに、厚みT
0の板状の負極集電体21を介して接するように収容される。このとき、
図5に示すように、電極群12の負極側端部18Aが、外装缶側面10Bの厚肉部10B1の内周面に摺接する。また、電極群12は渦巻状に巻回されているだけなので、巻き戻ろうとして外装缶10の半径方向外側に向かう力を外装缶10の内周面に作用させる。その結果、電極群12は外装缶10に対して固定されて不動になる。また、電極群12が外装缶10に固定されたことにより、電極群12の負極側端部18Aと外装缶缶底10Aとの間に位置する負極集電体21も、外装缶10の内周面と電極群12の負極側端部18Aとの間に挟まれて固定される。
【0027】
このようにして、負極集電体21は、外装缶10の内周面と電極群12の負極側端部18Aとの間に固定されて不動となるので、電極群12と外装缶10とのいずれに対しても負極集電体21との接続が継続される。また、負極集電体21は、電極群12と外装缶10とのいずれに対しても電気的に接続され、電池1の内部抵抗を低く抑えると共に、内部抵抗の増加を抑制する。
【0028】
なお、外装缶10を封口体24により密閉した後、電池径を減らすために、外装缶10に対し缶底10Aから開口端部に向けて絞り加工を行なうこともできる。この場合、外装缶厚肉部10B1の内径がより小さくなるので、厚肉部10B1による電極群12の圧接をより確実に行うことができる。また、電池1の絞り加工を行う場合は、組立前の外装缶10の内径は、厚肉部および側面部のいずれにおいても等しくても良い。
【0029】
上記電池1の構成において、厚肉部の高さH1は、負極板18に対する正極板16の巻きずらし長さLより小さくする。この高さH1は、0.5mm以上2.0mmまでの範囲にある長さである。厚肉部10B1の高さH1が0.5mm未満であると、缶底10Aの厚み(0.3~0.35mm)と略同程度の数値になり、負極側端部18Aと厚肉部10B1との接触による接触面積が小さいために、外装缶10の絞り加工を行っても、外装缶10の径を絞り込む効果が期待できず、電極群12を外装缶10に固定できないことがあり得るからである。
【0030】
一方、厚肉部10B1の高さH1が2.0mmを超えると、径を絞られた厚肉部10B1が最外周に位置する負極板18を外装缶10の中心軸に向けて押し込み、押し込まれた負極板18が隣接する正極板16に近接しすぎて極板16、18を短絡させてしまうことがある。従って、厚肉部の高さH1として、0.5mm以上2.0mmまでの範囲にある長さであることが好ましい。
【0031】
このように、上記実施の形態では、負極集電体21の電極群12との接続、さらには、電極群12の外装缶10に対する接続に抵抗溶接を用いないので、電池1を少ない工程数で組み立てることができる。また、外装缶10の厚肉部10B1は、負極板18の無孔部A1と対向接触し、負極板18の無孔部A1は、貫通孔がないために有孔部A3よりも機械的強度を有する。従って、電極群12をより確実に外装缶10に対し固定することができる。
【0032】
また、負極板18を作成するときに生じる無孔部A1,A2の厚みと有孔部A3との厚みの差を利用して電極群12の外装缶10の軸方向への移動を抑制して電極群12を外装缶10に固定接続するので、電池1の製造工程数を従来の比較して増やさずに済む。
【0033】
さらに、抵抗溶接を行わないために、電極板16、18を巻回した後の電極群12の中心に溶接棒などの治具を挿入せずにすむため、治具と電極板16、18との干渉による電池1の不良品の発生が抑制される。
【0034】
また、電極群12を外装缶10に抵抗溶接するさいに、溶接不良が生じていても溶接個所は目視確認することができなかったが、係る不良の発生の有無を確認する必要がなくなり、電池1の製造工程を減らすことができる。
【0035】
なお、上記実施の形態では、外装缶10の側面10Bは、厚肉部10B1と、側面部10B2とを有し、缶底10Aから軸方向に沿ってその厚みを変える構成をとった。上記実施の形態とは別の第2の実施の形態において、外装缶10’は、側面10B’が缶底10A’から軸方向に沿って厚みが一定となる構成を採ることができる。以下に、第2の実施の形態について説明する。
【0036】
第2の実施の形態において、電池1’を構成する部品は、外装缶10’を除いて上記実施の形態と同じである。
【0037】
電極群12を外装缶10’に収容した後、外装缶10’の缶底10A’から軸方向において、外装缶缶底10A’の厚みTbよりも長く、且つ長さ(Tb+L)を超えない範囲にある高さH2の箇所が底部となる溝10Gを、
図7に示すように円周方向に形成する。いわゆる、ビーディング加工を外装缶10’に対して行う。これにより、外装缶10’の軸に直交する断面において、溝10Gに相当する外装缶内面部10Hが、電極群12の側面を構成する負極板18の端縁部18A近傍に当接して係止される。なお、溝10Gは、窪み部の一例である。
【0038】
また、このとき、外装缶内面部10Hに形成される溝10Gの内径は、電極群12の負極側端部18Aの径よりも小さい。従って、電極群12の外装缶10’の軸方向に対する移動は抑制される。
【0039】
上記電池1’の組立において、負極集電体21を電極群12の負極側端部18Aに接続するために抵抗溶接を行わない。また、電極群12を外装缶10’に収容した後の外装缶10’に対する固定にも抵抗溶接を行っていない。この2つの溶接プロセスに替えて、外装缶10の溝10Gを、電極群12の負極側端部18Aとなる負極板の無孔部A1に当接させることにより、電極群12を、負極集電体21を介して外装缶10’の缶底10Aに固定接続している。この構成により、負極集電体21は、電極群12の負極側端部18Aに対して動くことが抑制される。故に、電極群12や負極集電体21が外装缶10’に対しても動くことが抑制され、電池1の交流抵抗値の増加を防止する。
【0040】
また、負極板18を作成するときに生じる無孔部A1,A2の厚みと有孔部A3との厚みの差を利用して電極群12の外装缶10の軸方向への移動を抑制して電極群12を外装缶10に固定接続するので、電池1の製造工程数を従来の比較して増やさずに済む。
【0041】
さらに、抵抗溶接を行わないために、電極板16、18を巻回した後の電極群12の中心に溶接棒などの治具を挿入せずにすむため、治具と電極板16、18との干渉による電池1’の不良品の発生が抑制される。
【0042】
また、電極群12を外装缶10’に抵抗溶接するさいに、溶接不良が生じていても溶接個所は目視確認することができなかったが、係る不良の発生の有無を確認する必要がなくなり、電池1’の製造工程を減らすことができる。
【0043】
上記実施の形態では、いずれも電極群の負極側を外装缶10に接触させることにより固定させる構成としたが、負極集電体21の径を電極群の径よりも大きく形成し、外装缶の缶底近傍の側面に当接させても、上記実施の形態と同様な効果が得られる。
【0044】
なお、上記実施の形態に係る電池のサイズは、AAサイズであるが、電池のサイズはこれに限定されない。
【符号の説明】
【0045】
1 電池
10 外装缶
10A 缶底
12 電極群
16 正極板
18 負極板
18A 負極側端部
20 セパレータ
21 負極集電体