(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023146356
(43)【公開日】2023-10-12
(54)【発明の名称】タオル
(51)【国際特許分類】
A47K 10/02 20060101AFI20231004BHJP
【FI】
A47K10/02 D
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022053500
(22)【出願日】2022-03-29
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-09-05
(71)【出願人】
【識別番号】722004388
【氏名又は名称】伊澤タオル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】弁理士法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】伊澤 正司
(57)【要約】
【課題】タオルの耐用期間を適正に判断することが可能なタオルを提供する。
【解決手段】マークが付与されたマーク生地を取り付けたタオルであって、洗濯を繰り返すことにより、マークが消えるか又はマークが現れ、耐用期間の判定が可能である。マークは文字及び/又は着色部が好ましい。着色部は洗濯堅牢度の高いインクと洗濯堅牢度の低いインクの少なくとも2種類のインクが印刷されて形成されており、洗濯堅牢度の低いインクで形成された着色部は洗濯とともに変色、褪色、脱色又は色落ちし、洗濯堅牢度の高いインクで形成された着色部が観察される構成としてもよい。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マークが付与されたマーク生地を取り付けたタオルであって、
洗濯を繰り返すことにより、前記マークが消えるか又は前記マークが現れ、耐用期間の判定が可能であることを特徴とするタオル。
【請求項2】
前記マークは文字及び/又は着色部である請求項1に記載のタオル。
【請求項3】
前記着色部は洗濯堅牢度の高いインクと洗濯堅牢度の低いインクの少なくとも2種類のインクが印刷されて形成されており、
前記洗濯堅牢度の低いインクで形成された着色部は洗濯とともに変色、褪色、脱色又は色落ちし、前記洗濯堅牢度の高いインクで形成された着色部が観察されようになる請求項1又は2に記載のタオル。
【請求項4】
前記洗濯堅牢度の高いインクで形成された着色部には文字が形成されており、前記文字の表面に前記文字を隠蔽する状態で洗濯堅牢度の低いインクで形成された着色部が積層されている請求項3に記載のタオル。
【請求項5】
前記洗濯堅牢度の高いインクで形成された着色部には文字が形成されており、その表面に文字部分を白抜きした状態で洗濯堅牢度の低いインクで形成された着色部が積層されている請求項4に記載のタオル。
【請求項6】
前記着色部は、インクリボン式熱転写とスクリーン印刷で形成されている請求項2~5のいずれか1項に記載のタオル。
【請求項7】
前記マーク生地に文字が印刷されており、前記文字の表面に前記文字を隠蔽する状態で被覆層が存在し、前記被覆層は洗濯とともに脱落する請求項1又は2に記載のタオル。
【請求項8】
前記マーク生地の表面に下地層を形成し、その表面に着色層を形成し、洗濯とともに前記着色層が脱落する請求項1又は2に記載のタオル。
【請求項9】
前記タオルは家庭洗濯50~300回で、前記マークが消えるか又は前記マークが現れる請求項1~8のいずれか1項に記載のタオル。
【請求項10】
前記マークが消えるか又は前記マークが現れる状態は、日本工業規格JIS L 1096.8.5で規定されているかさ高性が、未洗濯品に比較して15%以上低下した状態で発現する請求項1~9のいずれか1項に記載のタオル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維製タオルに関する。さらに詳しくは、耐用期間の判定が可能なタオルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、タオル生地は経パイル糸と経地糸及び緯地糸を使用し、パイル織物とするのが基本である。このタオルは、吸水性があり、風合いは柔軟であり、嵩高で、色調も良好であるが、洗濯を繰り返し耐用期間が過ぎると、風合いは硬くなり、毛羽が落ちて糸やせが生じ、嵩高性が低下し、色調は黒ずみ薄くなる。しかし、このような変化は日々連続的に起こっており、消費者はタオルの耐用期間を適正に判断することは難しい。
特許文献1には、インディゴ染料を含む染料で染色されたデニム生地を架橋処理することにより、色変化を低くすることが提案されている。特許文献2には透明なプラスチック製フィルムの裏面に印刷などによりバーコードを表示し、裏地層に接着層を設けて繊維生地に貼り付け、バーコードを保護することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000-178877号公報
【特許文献2】実用新案登録第3112491号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、前記各特許文献で提案されているのは、染色物の色変化を防止すること、あるいは印刷箇所の保護であり、タオルの耐用期間を適正に判断することは難しいという問題があった。
【0005】
本発明は、前記従来の問題を解決するため、タオルの耐用期間を適正に判断することが可能なタオルを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、マークが付与されたマーク生地を取り付けたタオルであって、洗濯を繰り返すことにより、前記マークが消えるか又は前記マークが現れ、耐用期間の判定が可能であるタオルである。
【発明の効果】
【0007】
本発明のタオルは、マークが付与されたマーク生地を取り付けたタオルであって、洗濯を繰り返すことにより、前記マークが消えるか又は前記マークが現れることにより、使用者が適正に耐用期間が経過したか否かを判定できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は本発明の一実施形態におけるタオルの模式的正面図である。
【
図2】
図2Aは同、洗濯前のマーク生地の模式的断面図、
図2Bは所定回数洗濯後のマーク生地の模式的断面図である。
【
図3】
図3Aは本発明の別の実施形態の洗濯前のマーク生地の模式的断面図、
図3Bは所定回数洗濯後のマーク生地の模式的断面図である。
【
図4】
図4Aは本発明のさらに別の実施形態の洗濯前のマーク生地の模式的断面図、
図4Bは所定回数洗濯後のマーク生地の模式的断面図である。
【
図5】
図5Aは本発明のさらに別の実施形態の1層目の取れにくいインクの印刷部分、
図5Bは同、2層目の取れやすいインクの印刷部分、
図5Cは1層目の上に2層目を印刷した状態、
図5Dは洗濯途中の状態、
図5Eは耐用期間経過後のそれぞれ模式的正面図である。
【
図6】
図6Aは本発明のさらに別の実施形態の1層目の取れにくいインクの印刷部分、
図6Bは同、2層目の取れやすいインクの印刷部分、
図6Cは1層目の上に2層目を印刷した状態、
図6Dは洗濯途中の状態、
図6Eは耐用期間経過後のそれぞれ模式的正面図である。
【
図7】
図7Aは本発明のさらに別の実施形態の1層目の取れにくいインクの印刷部分、
図7Bは同、2層目の取れやすいインクの印刷部分、
図7Cは1層目の上に2層目を印刷した状態、
図7Dは耐用期間経過後のそれぞれ模式的正面図である。
【
図8】
図8は本発明の一実施例のマーク生地の洗濯前の正面写真である。
【
図9】
図9は同、マーク生地の洗濯10回後の正面写真である。
【
図10】
図10は同、マーク生地の洗濯20回後の正面写真である。
【
図11】
図11は同、マーク生地の洗濯100回後の正面写真である。
【
図12】
図12は本発明の一実施例のタオル生地のかさ高性試験の測定箇所を示す模式的平面図である。
【
図13】
図13は本発明の一実施例の未洗濯タオルと洗濯100回後のタオルのパイル部分を観察した写真(倍率50倍)である。
【
図14】
図14Aは本発明の実施例2の1層目の取れやすいインクリボン式熱転写で印刷した状態を示す平面図、
図14Bは1層目の上に2層目の取れにくいインクをスクリーン印刷で印刷した状態(未洗濯状態)を示す平面図、
図14Cは洗濯100回後の平面図、
図14Dは洗濯150回後の平面図である。
【
図15】
図15は、本発明の実施例2のマーク生地の洗濯100回後の写真と、洗濯150回後の写真である。
【
図16】
図16は、タオル使用者はどのようにしてタオルの買い替え時期あるいは換え時を判断しているかのアンケート結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
タオル使用者(消費者)はどのようにしてタオルの買い替え時期あるいは換え時を判断しているか、アンケート調査をしたところ
図16のグラフに示す結果が得られた。調査期間は2021年6月1日~同年6月30日まで、調査対象者は18~69歳の男女500名であった。その結果、風合い、色の変化、においが取れないが上位であり、糸のほつれ、破れなどの様々な原因があることが分かった。また、タオル使用者(消費者)はタオルの買い替え時期あるいは換え時を判断するのは容易ではないことも分かった。
そこで本発明者は、使用者が適正に耐用期間が経過したか否かを容易に判定できる耐用期間判定マークの作成を着想し、本発明に至った。
【0010】
本発明のタオルは、マーク生地が取り付けてある。ここでマーク生地とは、ネーム生地、品質表示生地、又は出所表示生地などと同様にタオルに縫製により取り付けた生地である。マーク生地は単独で取り付けてもよいし、ネーム生地、品質表示生地、又は出所表示生地などと兼用させてもよい。ネームとして主に使用されているベース生地には、ポリエステルタフタ、ナイロンタフタ、アセテート織物、綿織物で表面にコーティングありの生地となしの生地等がある。
【0011】
本発明のタオルは、マークが付与されたマーク生地を取り付け、洗濯を繰り返すことにより、前記マークが消えるか又は前記マークが現れ、耐用期間の判定が可能である。前記マークが消えるとは、洗濯を繰り返すことにより例えば着色マークが消えることをいう。前記マークが現れるとは、例えば着色マークの表面を被膜で覆い、洗濯を繰り返すことにより被膜が脱落して着色マークが現れることをいう。前記マークは文字及び/又は着色部であることが好ましい。
【0012】
前記着色部は洗濯堅牢度の高いインクと洗濯堅牢度の低いインクの少なくとも2種類のインクが印刷されて形成されており、前記洗濯堅牢度の低いインクで形成された着色部は洗濯とともに変色、褪色、脱色又は色落ちし、前記洗濯堅牢度の高いインクで形成された着色部が観察されようにしてもよい。前記変色、褪色、脱色又は色落ちはそれぞれ厳密なものではなく、耐用期間が経過したか否かが判定できればよい。前記着色部は有彩色(カラー)でもよいし、無彩色(白色、灰色、黒色)でもよい。有彩色、灰色、黒色の場合は、変色、褪色、脱色又は色落ちで判断でき、白色の場合は色落ちで判断できる。本明細書において、洗濯堅牢度が高いとは、家庭洗濯50~300回の耐洗濯性があることをいい、洗濯堅牢度が低いとは、家庭洗濯50~300回の耐洗濯性がないことをいう。
【0013】
前記洗濯堅牢度の高いインクで形成された着色部には文字が形成されており、前記文字の表面に前記文字を隠蔽する状態で洗濯堅牢度の低いインクで形成された着色部が積層されていてもよい。
【0014】
前記洗濯堅牢度の高いインクで形成された着色部には文字が形成されており、その表面に文字部分を白抜きした状態で洗濯堅牢度の低いインクで形成された着色部が積層されていてもよい。
【0015】
前記着色部は、インクリボン式熱転写とスクリーン印刷で形成されていてもよい。インクリボン式熱転写の場合は熱転写用インクを使用できる。
【0016】
前記マーク生地に文字が印刷されており、前記文字の表面に前記文字を隠蔽する状態で被覆層が存在し、前記被覆層は洗濯とともに脱落するようにしてもよい。また、前記マーク生地の表面に下地層を形成し、その表面に着色層を形成し、洗濯とともに前記着色層が脱落するようにしてもよい。
【0017】
前記着色部は、マーク生地の染色又はマーク生地への顔料インクの印刷によって形成されているのが好ましい。染色の場合は、耐染色堅牢度の高くない染料を使用する。このような染料としては、一例として植物を原料とする草木染染料などがある。
【0018】
顔料インクの印刷の場合は、マーク生地に対し樹脂と粒子の混合物をコーティングした被膜(下地層)の表面に、顔料インクを印刷するのが好ましい。マーク生地に対し樹脂と粒子の混合物をコーティングした被膜は、洗濯とともに脱落しやすい。樹脂としてはナイロン樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂などが好ましい。粒子としては炭酸カルシウム、タルク、シリカ、クレー、マイカ、カオリン、雲母、ケイ藻土、ケイ酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、硫酸バリウムなどが好ましい。粒子の平均粒子は、レーザー回折光散乱法による粒度分布測定において、体積基準による累積粒度分布のD50(メジアン径)0.1~100μmが好ましい。樹脂と粒子の割合は、樹脂と粒子の合計の乾燥質量を100質量%としたとき、樹脂30~70質量%、粒子70~30質量%が好ましい。下地層は樹脂分散液(エマルジョン)として塗布し、乾燥させるのが好ましい。下地層の乾燥後の厚さは10~200μmが好ましい。
【0019】
前記マーク生地には予め文字が印刷されており、前記着色部の変色、褪色、脱色又は色落ちにより、前記文字が発現するようにしてもよい。あるいは前記マーク生地と着色部との間には印刷文字及び/又は印刷模様を入れてもよい。例えば「期限切れ」、「耐用期限」、「換え時」、「おわり」などの文字を入れておくと、着色部の変色、褪色、脱色又は色落ちにより前記文字が視認でき、耐用期間が経過したことが分かる。
【0020】
前記タオルは家庭洗濯50~300回で、前記着色部は変色、褪色、脱色又は色落ちするのが好ましい。家庭洗濯50~300回が通常のタオルの耐用年数である。洗濯回数に幅があるのは、タオルの種類、構造、大きさ、目付、ループ長さ、糸構造などによって異なることもあるからである。前記洗濯回数と耐用年数の関係はあらかじめ検査しておく。
【0021】
前記マークが消えるか又は前記マークが現れる状態は、日本工業規格JIS L 1096.8.5で規定されているかさ高性が、未洗濯品に比較して15%以上低下した状態で発現するのが好ましい。かさ高性が、未洗濯品に比較して15%以上低下すると、家庭洗濯を繰り返した時のタオルのパイル部分の毛羽落ちと、糸痩せなどにより糸の中の空気層が少なくなり、パイルのねじれも強くなり、弾力性もなくなり、風合いも硬くなる状態とほぼ一致し、この状態は、耐用期間が経過したと判断できる。タオルの種類により耐用期間は異なるが、この耐用期間に応じて洗濯堅牢度を調整したマーク生地を作る。
【0022】
本発明のタオルは、バスタオル(湯上りタオル)、浴用タオル、フェイスタオル、タオルハンカチ(タオルチーフ)、おしぼりタオル、ウォッシュタオル、ハンドタオル、バスマット、スポーツタオル、ビーチタオル(ボディタオル)などを含む。タオルは織物、編み物を問わず適用できる。以下は織物製バスタオル(湯上りタオル)の例に挙げて説明する。
【0023】
以下図面を用いて説明する。以下の図面において、同一符号は同一物を示す。
図1は本発明の一実施形態におけるタオルの模式的正面図である。このタオル1はタオル本体2の両端部3a,3bが折り返されて縫製され、端処理されている。一端にはマーク生地4が取り付けられている。
【0024】
図2Aは同、洗濯前のマーク生地4の模式的断面図、
図2Bは所定回数洗濯後のマーク生地4の模式的断面図である。マーク生地本体5の表面に、樹脂と粒子の混合物をコーティングした下地層6があり、その表面に、顔料インクを印刷した着色層7がある。所定回数の洗濯を繰り返すことにより、着色層7が脱落し、色落ちし、
図2Bに示す状態となり、耐用期間を判定できる。ここで所定回数とは、家庭洗濯50~300回であるのが好ましい。洗濯回数に幅があるのは、タオルの種類、構造、大きさ、目付、ループ長さ、糸構造などによって異なることもあるからである。前記洗濯回数と耐用年数の関係はあらかじめ検査しておく。
【0025】
図3Aは本発明の別の実施形態の洗濯前のマーク生地8の模式的断面図、
図3Bは所定回数洗濯後のマーク生地8の模式的断面図である。
図2と異なる点は、着色層7の下に文字層9が印刷されている。洗濯を繰り返すことにより、着色層7と下地層6が脱落し、下の文字層9が発現し、耐用期間を判定できる。
【0026】
図4Aは本発明のさらに別の実施形態の洗濯前のマーク生地10の模式的断面図、
図4Bは所定回数洗濯後のマーク生地10の模式的断面図である。マーク生地本体5の表面に、文字層9が印刷され、その表面に、樹脂と粒子の混合物をコーティングした被覆層11が積層されている。洗濯を繰り返すことにより、被覆層11が脱落し、下の文字層9が発現し、耐用期間を判定できる。
【0027】
図5Aは本発明のさらに別の実施形態の1層目の取れにくいインクの印刷部分の模式的正面図である。1層目は例えばインクリボン式熱転写印刷により、洗濯堅牢度の高い印刷をする。この例では濃紺色で「おわり」の文字を白抜きしている。
図5Bは同、2層目の取れやすいインクの印刷部分である。2層目は洗濯堅牢度の低い空色のインクを使用したスクリーン印刷で一様(ベタ)に覆っている。
図5Cは1層目の上に2層目を印刷した状態である。
図5Dは洗濯途中の状態を示し、「おわり」の文字が薄く見える。
図5Eは耐用期間経過後であり、「おわり」の文字が明瞭に見える。
【0028】
図6Aは本発明のさらに別の実施形態の1層目の取れやすいインクの印刷部分の模式的正面図である。1層目は洗濯堅牢度の低いインクリボン式熱転写印刷により空色で一様(ベタ)に覆っている。
図6Bは同、2層目の洗濯堅牢度の高いインクのスクリーン印刷部分で、「おわり」の文字を白抜きした濃紺色である。
図6Cは1層目の上に2層目を印刷した状態であり、「おわり」の文字は1層目の空色である。
図6Dは洗濯途中の状態であり、1層目の空色及び「おわり」の文字は薄い色となる。
図6Eは耐用期間経過後であり、1層目の空色及び「おわり」の文字はほぼ消失している。
【0029】
図7Aは本発明のさらに別の実施形態の1層目の取れにくいインクの文字印刷部分、
図7Bは2層目の取れやすいインクの印刷部分、
図7Cは1層目の上に2層目を印刷した状態、
図7Dは耐用期間経過後のそれぞれ模式的正面図である。耐用期間経過後は1層目の取れにくいインクの文字印刷部分のみが残る。取れにくいインクとしては、例えばインクリボン式熱転写があり、取れやすいインクとしては、例えばスクリーン印刷がある。
【実施例0030】
以下、実施例を用いてさらに具体的に説明する。本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
<洗濯方法>
JIS L1930 C4Mに従って家庭洗濯し、すすぎ、室内で吊り干しした。
<かさ高性試験>
JIS L 1096.8.5(織物、編み物試験方法)及びISO 10012-1に規定されている厚み測定器(インテック社製、型式TH-2)を使用し、直径50.5mmのプレッサーフット、0.7KPaの荷重をかけ、10秒後の厚さを測定した。測定箇所は
図12に示すように、タオル生地12の経糸13と緯糸14が交差しない位置とし、表面測定箇所15a,15bと裏面測定箇所16a,16bの4か所の厚さを測定し、平均値を求め、次の式で算出した。
Bu=(t/Sm)×1000
但し、Bu:かさ高性(cm
3/g)
Sm:標準状態における単位面積当たりの質量(g/m
2)
t:厚さ(mm)
【0031】
(実施例1)
本出願人が製造販売している白タオル(34cm×80cm、目付331g/m
2、商品名UL-FT1OW)の未洗濯タオルと家庭洗濯100回実施した後のタオルのパイル部分を観察した写真(倍率50倍)を
図13に示す。未洗濯タオルに比べて家庭洗濯100回実施した後のタオルのパイル部分は、毛羽落ちし、糸が痩せている。そのため糸の中の空気層も少なくなっており、パイルのねじれも強くなり、弾力性もなくなり、風合いも硬くなっている。この状態は、耐用期間が経過したと判断できる。
未洗濯タオルと家庭洗濯100回実施した後のタオルのかさ高性を測定したところ次の表1のようになった。
【0032】
【0033】
表1から明らかなとおり、かさ高性低下率が17%であり、耐用期間が経過したと判断できる。
次に、このタオルの一端に
図1に示す着色マークを印刷したマーク生地を取り付けた。マーク生地本体はナイロン糸使いのタフタ織物とし、この織物生地の上に下地層をコーティングした。下地層は、ナイロン樹脂エマルジョン(水分散液)に平均粒子径20μmの炭酸カルシウムを、固形分重量比で樹脂:炭酸カルシウム=70:30で混合し、乾燥厚み100μmでコーティングした後、乾燥し、120℃で熱セットした。得られた下地層の上に
図2及び
図8に示す着色マークをスクリーン印刷した。
図8に示す着色マークは、左から黄色、橙色、濃紺色である。
このタオルの家庭洗濯10回後の正面写真を
図9に、20回後の正面写真を
図10に、100回後の正面写真を
図11にそれぞれ示す。
図11から明らかなとおり、3色すべて、あるいは3色の内の一部の色が消失した時点で、耐用期間が経過したと判断できる。
【0034】
(実施例2)
本出願人が製造販売している白タオル(34cm×80cm、目付274g/m2、商品名KP-FT5WH)の未洗濯タオルと家庭洗濯150回実施した後のタオルのかさ高性を測定したところ次の表2のようになった。
【0035】
【0036】
表2から明らかなとおり、かさ高性低下率が18%であり、耐用期間が経過したと判断できる。
次に、このタオルの一端に
図14Bに示す着色マークを印刷したマーク生地を取り付けた。マーク生地本体はポリエステル糸使いのタフタ織物とした。
図14Aはマーク生地に1層目の取れやすいインクリボン式熱転写で「おわり」の文字を印刷した状態を示す平面図であり、
図14Bは1層目の上に2層目の取れにくいインクをベタでスクリーン印刷した状態を示す平面図である。1層目と2層目のインクの色は同色(紺色)とした。1層目の文字は2層目のベタ印刷インクで覆われるが、文字部分の上のベタ印刷のインク部分は洗濯堅牢度が低くなる。このタオルの洗濯100回後の平面図を
図14Cに示し、洗濯150回後の平面図を
図14Dに示す。また
図15にマーク生地の洗濯100回後の写真と、洗濯150回後の写真を示す。
図14及び
図15から明らかなとおり、洗濯100回で文字部分はわずかに判別できるようになり、150回洗濯では明瞭に判別できる。これにより洗濯150回で耐用期間が経過したと判断できる。
本発明は、バスタオル(湯上りタオル)、浴用タオル、フェイスタオル、タオルハンカチ(タオルチーフ)、おしぼりタオル、ウォッシュタオル、ハンドタオル、バスマット、スポーツタオル、ビーチタオル(ボディタオル)などのタオルに適用できる。
前記洗濯堅牢度の高いインクで形成された着色部には文字が形成されており、前記文字の表面に前記文字を隠蔽する状態で洗濯堅牢度の低いインクで形成された着色部が積層されている請求項3に記載のタオル。
前記洗濯堅牢度の高いインクで形成された着色部には文字が形成されており、その表面に文字部分を白抜きした状態で洗濯堅牢度の低いインクで形成された着色部が積層されている請求項4に記載のタオル。
前記マーク生地に文字が印刷されており、前記文字の表面に前記文字を隠蔽する状態で被覆層が存在し、前記被覆層は洗濯とともに脱落する請求項1又は2に記載のタオル。
本発明のタオルは、マークが付与されたマーク生地を取り付けたタオルであって、洗濯を繰り返すことにより、前記マークが消えるか又は前記マークが現れ、耐用期間の判定が可能であり、前記マークが消えるか又は前記マークが現れる状態は、日本工業規格JIS L 1096.8.5で規定されているかさ高性が、未洗濯品に比較して15%以上低下した状態で発現することを特徴とする。