(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023146358
(43)【公開日】2023-10-12
(54)【発明の名称】外装材補修シート、剥離層付外装材補修シート、および外装用化粧材の補修方法
(51)【国際特許分類】
B32B 27/00 20060101AFI20231004BHJP
C09J 7/38 20180101ALI20231004BHJP
C09J 7/30 20180101ALI20231004BHJP
C09J 133/00 20060101ALI20231004BHJP
C09D 5/00 20060101ALI20231004BHJP
C09D 201/00 20060101ALI20231004BHJP
C09J 201/00 20060101ALI20231004BHJP
【FI】
B32B27/00 E
B32B27/00 M
C09J7/38
C09J7/30
C09J133/00
C09D5/00 D
C09D201/00
C09J201/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022053502
(22)【出願日】2022-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122529
【弁理士】
【氏名又は名称】藤枡 裕実
(74)【代理人】
【識別番号】100135954
【弁理士】
【氏名又は名称】深町 圭子
(74)【代理人】
【識別番号】100119057
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英生
(74)【代理人】
【識別番号】100131369
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100171859
【弁理士】
【氏名又は名称】立石 英之
(72)【発明者】
【氏名】関 将志
【テーマコード(参考)】
4F100
4J004
4J038
4J040
【Fターム(参考)】
4F100AK01A
4F100AK03
4F100AK04
4F100AK25
4F100AK25E
4F100AR00A
4F100AR00B
4F100AR00E
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4J004AA10
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4J040HD30
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4J040JA09
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4J040LA06
4J040MA10
4J040MB03
4J040NA12
(57)【要約】
【課題】 貼り付け対象面の表面凹凸が貼り付け後の外装材補修シート上から視認されることによる意匠性の低下を軽減するとともに、貼り付け対象の外装用化粧材からブリードアウトした耐候剤成分による絵柄模様層の変色による意匠性の低下を軽減することができる、外装材補修シート、剥離層付外装材補修シート、および外装用化粧材の補修方法を提供する。
【解決手段】 本開示の外装材補修シートは、表面保護層、絵柄模様層、および基材層がこの順に積層された化粧シートと、化粧シートの基材層の表面保護層の側の面とは反対の面側に積層された粘着層と、を有する外装材補修シートであって、化粧シートの基材層と粘着層との間に芯材層を有し、化粧シートの基材層と芯材層との間に、芯材層と基材層とを接着させるための接着層を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面保護層、絵柄模様層、および基材層がこの順に積層された化粧シートと、
前記化粧シートの前記基材層の前記表面保護層の側の面とは反対の面側に積層された粘着層と、を有する外装材補修シートであって、
前記化粧シートの前記基材層と前記粘着層との間に芯材層を有し、
前記化粧シートの前記基材層と前記芯材層との間に、前記芯材層と前記基材層とを接着させるための接着層を有する、外装材補修シート。
【請求項2】
前記表面保護層は、耐候剤を含有し、樹脂組成物の架橋硬化物である、請求項1に記載の外装材補修シート。
【請求項3】
前記粘着層がアクリル系樹脂を含み、かつ下記の測定条件での粘着力が10N/25mm以上である、請求項1あるいは請求項2のいずれか1項に記載の外装材補修シート。
測定条件:幅25mm、長さ100mmの前記外装材補修シートの試験片を、被着基材(SUS304板)に2Kgのローラーを1往復させて圧着し、24時間放置後、引張試験機にて180°方向に300mm/分の速度で測定。
【請求項4】
前記芯材層の材料は、前記基材層の材料と同じである、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の外装材補修シート。
【請求項5】
前記芯材層は、着色されている、請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の外装材補修シート。
【請求項6】
前記粘着層には、空気抜きパターンが形成されている、請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の外装材補修シート。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の外装材補修シートの前記粘着層に対し、前記芯材層の側の面とは反対の面側に剥離層を有する、剥離層付外装材補修シート。
【請求項8】
絵柄が形成された被着化粧シートが被着構造材に積層された外装用化粧材の補修方法であって、
前記外装用化粧材から前記被着化粧シートの一部を除去する除去工程と、
前記除去工程により露出した前記外装用化粧材の露出面にプライマー層を積層するプライマー層積層工程と、
前記外装用化粧材の前記プライマー層が積層された面に、請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の外装材補修シートの前記粘着層を押し当てることにより、前記外装用化粧材に前記外装材補修シートを貼り付ける貼り付け工程と、を有する、外装用化粧材の補修方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、外装材補修シート、剥離層付外装材補修シート、および外装用化粧材の補修方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
外装用化粧材は、耐久消費財であって一定の耐久性、耐傷性、耐候性が求められることが一般的である。しかし、長期間に及ぶ使用や想定以上の環境下での使用、その他外的要因等により、意匠や機能が劣化する恐れがある。
【0003】
上記問題などを背景に、特許文献1、特許文献2には、補修用化粧シートが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002-127291号公報
【特許文献2】特開2000-094566号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
補修用の化粧シートは一般的には、基材層と、基材層の一方の面側の絵柄層とを含む。屋外で使用される外装用の補修用の化粧シートにおいては、絵柄層あるいは絵柄層の基材層とは反対の面側に積層される保護層は通常は耐候剤を含む。施工時には、補修用の化粧シートに係る基材層の他方の面側と被着体との間に粘着層を形成し、補修用の化粧シートを被着体に貼り付ける。あるいは、補修用の化粧シートの他方の面側にあらかじめ粘着層が積層しておくことにより施工性を向上させた形態も一般的である。このような一般的な補修用の化粧シートにおいては、施工時における被着材の表面状態、および補修用の化粧シートに係る基材層の層厚や材質によっては、貼り付け対象面の表面凹凸が貼り付け後の補修用の化粧シートの上からも視認できてしまう問題が懸念される。また劣化した既存の外装用化粧シートからブリードアウトした耐候剤成分により、粘着層の粘着力が低下したり、該耐候剤成分が補修用の化粧シートに係る絵柄模様層に至り、絵柄模様層を構成するインキを劣化、変色などさせたりする問題が懸念される。
【0006】
上記問題を鑑み、本開示の目的は、貼り付け対象面の表面凹凸が貼り付け後の外装材補修シート上から視認されることによる意匠性の低下を軽減するとともに、貼り付け対象の外装用化粧材からブリードアウトした耐候剤成分による絵柄模様層の変色による意匠性の低下を軽減することができる、外装材補修シート、剥離層付外装材補修シート、および外装用化粧材の補修方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の外装材補修シートは、表面保護層、絵柄模様層、および基材層がこの順に積層された化粧シートと、化粧シートの基材層の表面保護層の側の面とは反対の面側に積層された粘着層と、を有する外装材補修シートであって、化粧シートの基材層と粘着層との間に芯材層を有し、化粧シートの基材層と芯材層との間に、芯材層と基材層とを接着させるための接着層を有する外装材補修シートである。
【0008】
上記外装材補修シートにおいて、表面保護層は、耐候剤を含有し、樹脂組成物の架橋硬化物であってもよい。
【0009】
上記外装材補修シートにおいて、粘着層がアクリル系樹脂を含み、かつ下記の測定条件での粘着力が10N/25mm以上であってもよい。
測定条件:幅25mm、長さ100mmの前記外装材補修シートの試験片を、被着基材(SUS304板)に2Kgのローラーを1往復させて圧着し、24時間放置後、引張試験機にて180°方向に300mm/分の速度で測定。
【0010】
上記外装材補修シートにおいて、芯材層の材料は、基材層の材料と同じであってもよい。
【0011】
上記外装材補修シートにおいて、芯材層は、着色されていてもよい。
【0012】
上記外装材補修シートにおいて、粘着層には、空気抜きパターンが形成されていてもよい。
【0013】
本開示の剥離層付外装材補修シートは、上記外装材補修シートの粘着層に対し、芯材層の側の面とは反対の面側に剥離層を有する剥離層付外装材補修シートである。
【0014】
本開示の外装用化粧材の補修方法は、絵柄が形成された被着化粧シートが被着構造材に積層された外装用化粧材の補修方法であって、外装用化粧材から被着化粧シートの一部を除去する除去工程と、除去工程により露出した外装用化粧材の露出面にプライマー層を積層するプライマー層積層工程と、外装用化粧材のプライマー層が積層された面に上記外装材補修シートの粘着層を押し当てることにより、外装用化粧材に外装材補修シートを貼り付ける貼り付け工程と、を有する外装用化粧材の補修方法である。
【発明の効果】
【0015】
本開示によれば、貼り付け対象面の表面凹凸が貼り付け後の外装材補修シート上から視認されることによる意匠性の低下を軽減するとともに、貼り付け対象の外装用化粧材からブリードアウトした耐候剤成分による絵柄層の変色による意匠性の低下を軽減することができる、外装材補修シート、剥離層付外装材補修シート、および外装用化粧材の補修方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本開示の実施形態の外装材補修シートの層構成の概略を示す断面図
【
図2】本開示の実施形態に係る外装用化粧材の補修方法を説明する層構成の概略を示す断面図
【
図3】本開示の実施形態に係る外装用化粧材の補修方法を説明する層構成の概略を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、外装材補修シート、剥離層付外装材補修シート、および外装用化粧材の補修方法について、図面を参照しながら詳細に説明する。
以下の説明では、具体的な数値、形状、材料等を示して説明を行うが、これらは、適宜変更することができる。
本明細書において、板、シート、フィルム等の言葉を使用しているが、これらは、一般的な使い方として、厚さの厚い順に、板、シート、フィルムの順で使用されており、本明細書でもそれに倣って使用している。層を形成するために、板、シート、フィルム等を用いる場合がある。しかし、このような使い分けには、技術的な意味は無いので、これらの文言は適宜置き換えても、本開示の本質も特許請求の範囲の解釈も不変である。本開示においては、シートの語を、いわゆる板、シート、およびフィルムと通常呼称されている厚みの形態のものも包含する広義の意味で用いるものとする。
【0018】
また、「面」とは、対象となるシート状の部材を全体的かつ大局的に見た場合において、対象となるシート状の部材の平面方向と一致する面のことを指す。シート状の部材に対して用いる法線方向とは、部材の面に対する法線方向のことを指す。本明細書において用いる、形状や幾何学的条件並びにそれらの程度を特定する、例えば、「平行」や「直交」等の用語や長さや角度の値等については、厳密な意味に縛られることなく、同様の機能を期待し得る程度の範囲を含めて解釈する。
また、本明細書において表面、裏面の言葉を使用しているが、表面、裏面の区別に技術的な意味は無く、シートの一方の面を表面としたときに、他方の面が裏面である。本明細書における化粧シートにおいては、化粧シートを使用する際に通常の観察面となる側の面を表面と、その反対側の裏面として説明している。
【0019】
さらに、本明細書において、あるパラメータに関して複数の上限値の候補及び複数の下限値の候補が挙げられている場合、そのパラメータの数値範囲は、任意の1つの上限値の候補と任意の1つの下限値の候補とを組み合わせることによって構成されてもよい。例えば、「パラメータBは、例えばA1以上であり、A2以上であってもよく、A3以上であってもよい。パラメータBは、例えばA4以下であり、A5以下であってもよく、A6以下であってもよい。」と記載されている場合を考える。この場合、パラメータBの数値範囲は、A1以上A4以下であってもよく、A1以上A5以下であってもよく、A1以上A6以下であってもよく、A2以上A4以下であってもよく、A2以上A5以下であってもよく、A2以上A6以下であってもよく、A3以上A4以下であってもよく、A3以上A5以下であってもよく、A3以上A6以下であってもよい。
【0020】
〔外装材補修シート〕
(実施形態)
以下、本開示の実施形態について、
図1を参照して説明する。なお、以下に示す各図は、模式的に示した図であり、各部の大きさ、形状、装飾などは理解を容易にするため適宜誇張、単純化などしている。また説明に直接的に関係しない構成などについては適宜省略している。なお、以下の各図において、同一部分には同一の符号を付しており、一部詳細な説明を省略する場合がある。
【0021】
図1に本開示の実施形態に係る外装材補修シート1の層構成の概略を示す断面図を示す。外装材補修シート1は、
図1における上から、化粧シート10、接着層20、芯材層30、粘着層40がこの順に積層されてなる。そして化粧シート10は、
図1における上から、表面保護層14、絵柄模様層12、基材層11がこの順に積層されてなる。すなわち、外装材補修シート1は、
図1における上から、表面保護層14、絵柄模様層12、基材層11、接着層20、芯材層30、粘着層40がこの順に積層されてなる。
図1の例の様に、表面保護層14と絵柄模様層12との間に透明樹脂層13を有していても良い。外装材補修シート1における化粧シート10の側、換言すれば化粧シート10における表面保護層14の側、が観察面である。
【0022】
換言すれば、外装材補修シート1は、表面保護層14、絵柄模様層12、および基材層11がこの順に積層された化粧シート10と、化粧シート10の基材層11の表面保護層14側の面とは反対の面側に積層された粘着層40と、を有する外装材補修シート1であって、化粧シート10の基材層11と粘着層40との間に芯材層30を有し、化粧シート10の基材層11と芯材層30との間に、芯材層30と基材層11とを接着させるための接着層20を有する、外装材補修シート1である。
外装材補修シート1は上記以外の層を含んでいても良い。例えば
図1に示す様に、粘着層40に対し芯材層30側の面とは反対の面側に剥離層50を有していても良い。剥離層50を有する形態においては、粘着性を有する粘着層40が露出しないため、施工前の外装材補修シート1のハンドリング性が向上する。剥離層50を有する状態の外装材補修シート1を剥離層付外装材補修シート2と呼ぶ場合もある。
【0023】
以下、外装材補修シート1に係る各層について説明する。
化粧シート10は屋外での使用を想定した耐候性の高い化粧シートである。化粧シート10は上記の通り、表面保護層14、絵柄模様層12、基材層11を含み、表面保護層14と絵柄模様層12との間に透明樹脂層13を含んでいても良い。
【0024】
<表面保護層>
表面保護層14は、化粧シート10および外装材補修シート1の最表層に位置し、外装材補修シート1に耐汚染性、耐候性、耐溶剤性、耐摩耗性、耐傷性などの表面保護特性を付与する層であり、電離放射線硬化性樹脂を含む電離放射線硬化性樹脂組成物の架橋硬化物により構成される層である。表面保護層14は、好ましくは耐候剤を含有する。
ここで、電離放射線硬化性樹脂組成物は電離放射線を照射することにより硬化する樹脂組成物であり、電離放射線としては、電磁波又は荷電粒子線のうち、分子を重合あるいは架橋し得るエネルギー量子を有するもの、例えば、紫外線(UV)又は電子線(EB)が用いられるほか、その他、X線、γ線などの電磁波、α線、イオン線などの荷電粒子線も用いられる。
絵柄模様層12に係る意匠を外装材補修シート1の観察面(表面保護層14)側から良好に視認できるよう、表面保護層14は無色透明であることが好ましい。しかしこれに限らず、有色透明、半透明であってもよい。
【0025】
電離放射線硬化性樹脂は、慣用されている重合性モノマー及び重合性オリゴマーないしはプレポリマーの中から適宜選択して用いることができる。
重合性モノマーとしては、分子中にラジカル重合性不飽和基を持つ(メタ)アクリレート系モノマーが好適であり、なかでも多官能(メタ)アクリレートモノマーが好ましい。多官能(メタ)アクリレートモノマーとしては、分子内にエチレン性不飽和結合を2個以上有する(メタ)アクリレートモノマーであればよく、特に制限はなく、例えば、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキサイドトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどが好ましく挙げられる。これらの(メタ)アクリレートモノマーは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本開示において、多官能(メタ)アクリレートモノマーの官能基数は2以上であれば特に制限はないが、表面保護特性を優れたものとする観点から、2~8が好ましく、より好ましくは3~6である。
【0026】
次に、重合性オリゴマーとしては、分子中にラジカル重合性不飽和基を持つオリゴマー、例えばウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエーテル(メタ)アクリレートオリゴマー、アクリル(メタ)アクリレートオリゴマーなどの(メタ)アクリレートオリゴマーが好ましく挙げられ、これらのオリゴマーを1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0027】
ここで、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーは、例えば、ポリエーテルポリオールやポリエステルポリオールとポリイソシアネートの反応によって得られるポリウレタンオリゴマーを、(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。
エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマーは、例えば、比較的低分子量のビスフェノール型エポキシ樹脂やノボラック型エポキシ樹脂のオキシラン環に、(メタ)アクリル酸を反応しエステル化することにより得ることができる。また、このエポキシ(メタ)アクリレートオリゴマーを部分的に二塩基性カルボン酸無水物で変性したカルボキシル変性型のエポキシ(メタ)アクリレートオリゴマーも用いることができる。
ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、例えば多価カルボン酸と多価アルコールの縮合によって得られる両末端に水酸基を有するポリエステルオリゴマーの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより、あるいは、多価カルボン酸にアルキレンオキシドを付加して得られるオリゴマーの末端の水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。
ポリエーテル(メタ)アクリレートオリゴマーは、ポリエーテルポリオールの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。
また、アクリル(メタ)アクリレートオリゴマーは、(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、これと共重合可能な、グリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルなどの官能基含有(メタ)アクリル系化合物、あるいは(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などのカルボン酸とを共重合してなるオリゴマーである。
【0028】
以上の重合性(メタ)アクリレートオリゴマーの内、多官能ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーが好ましい。本開示の外装材補修シートに優れた表面保護特性を付与することができ、また製造過程において収縮が生じることがないからである。
【0029】
本開示において、多官能(メタ)アクリレートオリゴマーの官能基数は2以上であれば特に制限はないが、2~8が好ましく、より好ましくは2~6である。官能基数が上記の範囲内であると、本開示の外装材補修シートに優れた表面保護特性を付与することができ、また製造過程において収縮が生じることがないからである。
また、多官能(メタ)アクリレートオリゴマーの重量平均分子量(GPC法で測定したポリスチレン換算の重量平均分子量)は、1,000~20,000であることが好ましく、1,000~10,000であることがより好ましい。
【0030】
単官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらの単官能性(メタ)アクリレートは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0031】
電離放射線硬化性樹脂として紫外線硬化性樹脂を用いる場合には、光重合用開始剤を樹脂100質量部に対して、0.1~5質量部程度添加することが望ましい。光重合用開始剤としては、従来慣用されているものから適宜選択することができ、特に限定されず、例えば、ベンゾイン系、アセトフェノン系、フェニルケトン系、ベンゾフェノン系、アントラキノン系などの光重合用開始剤が好ましく挙げられる。
また、光増感剤としては、例えばp-ジメチル安息香酸エステル、第三級アミン類、チオール系増感剤などを用いることができる。
【0032】
本開示においては、電離放射線硬化性樹脂として電子線硬化性樹脂を用いることが好ましい。電子線硬化性樹脂は無溶剤化が可能であって、環境や健康の観点からより好ましく、かつ、光重合用開始剤を必要とせず、安定な硬化特性が得られるからである。さらに、硬化の際に電離放射線を照射する時間が短くてすみ、製造過程における収縮を抑えることができるからである。また、表面保護層14の表面物性として、電子線硬化性樹脂は紫外線硬化性樹脂と比較して、耐傷性、耐候性、機能の持続性などに優れる。
【0033】
また、電離放射線硬化性樹脂組成物は、電離放射線硬化性樹脂の電離放射線の照射による硬化を阻害しない範囲内で、熱可塑性樹脂を含有してもよい。熱可塑性樹脂としては、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、塩化ビニル樹脂、ウレタン樹脂、ポリオレフィン樹脂、スチレン樹脂などが挙げられ、これらは1種単独でも又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。2種以上組み合わせる場合は、これらの樹脂を構成するモノマーの共重合体でもよいし、それぞれの樹脂を混合して用いてもよい。熱可塑性樹脂としては、本開示の外装材補修シートに優れた表面保護特性を付与する観点から、アクリル樹脂が好ましく、少なくとも(メタ)アクリル酸エステルモノマーを構成単位として有するアクリル樹脂がより好ましい。
【0034】
電離放射線硬化性樹脂組成物には、各種添加成分として、耐摩耗フィラー、マット形成フィラー、耐傷フィラーなどのフィラー(充填剤)、あるいは耐候性向上のために、紫外線吸収剤(UVA)やヒンダードアミン系の光安定剤(HALS)などの耐候剤を含有させることができる。
【0035】
耐候剤としての紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤等が挙げられ、トリアジン系紫外線吸収剤が好ましい。また、トリアジン系紫外線吸収剤の中でも、トリアジン環に、ヒドロキシフェニル基、アルコキシフェニル基及びこれらの基を含む有機基から選ばれる少なくとも一つの有機基が三つ連結したヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤がより好ましい。ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤は、分岐構造を有するため、表面保護層からブリードアウトしにくくなることが期待され、より長期的に優れた耐候性が得られる。また、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基等のエチレン性二重結合を有する紫外線吸収剤は、ブリードアウトを抑制しやすい点で好ましい。
紫外線吸収剤の含有量は、電離放射線硬化性樹脂組成物100質量部に対して0.2質量部以上10.0質量部以下が好ましく、0.5質量部以上5.0質量部以下がより好ましく、1.0質量部以上4.0質量部以下がさらに好ましい。また、使用する紫外線吸収剤の種類は1種類単独でも良いし、又は複数種類組み合わせて用いることもできる。
【0036】
表面保護層14の厚さは、1μm以上30μm以下が好ましく、1μm以上10μm以下がより好ましい。表面保護層14の厚さが上記範囲内であると、本開示の外装材補修シート1に優れた表面保護特性を付与することができ、また化粧シート10の製造過程において収縮が生じることがない。
【0037】
<透明樹脂層>
透明樹脂層13は、透明性を有するポリエステル樹脂を有する。なお、ここで透明とは、無色透明の他、着色透明及び半透明も含むものである。
ポリエステル樹脂としては特に限定されず、化粧シートの分野で通常用いられているものが使用できる。例えば、ポリエチレンテレフタレート(以下「PET」ということがある。)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアリレート、ポリカーボネート、エチレンテレフタレート-イソフタレート共重合体、ポリアリレート等が挙げられる。この中でも、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等が好ましく、特にポリエチレンテレフタレートが好ましい。
また、ポリエステル樹脂は各種ホモポリマーの他、樹脂の柔軟化等の目的で各種の共重合成分又は改質成分を添加した共重合ポリエステル系樹脂、ポリエステル系熱可塑性エラストマー等が使用できる。例えばPETであれば、テレフタル酸とエチレングリコールとの縮合重合反応において、ジカルボン酸成分として、例えば、セバシン酸、エイコ酸、ドデカンジオン酸、ダイマー酸、シクロヘキサンジカルボン酸等の長鎖脂肪族ジカルボン酸及び/又は脂環式ジカルボン酸を導入することができる。また、ジオール成分としてポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等の両末端に水酸基を有するポリエーテル系ジオールを導入することができる。
【0038】
本開示において、透明樹脂層13として用いるポリエステルフィルムは、例えば、カレンダー法、インフレーション法、Tダイ押し出し法等によりフィルム化され、2軸延伸することで調製される。
透明樹脂層13の厚さとしては、30μm以上400μm以下程度である。厚さが50μm以上であると化粧板に加工する際、被着体の凹凸を拾いにくく、表面が美しく仕上がる。一方、400μm以下であると、成形加工性の点で有利である。以上の観点から、透明樹脂層13の厚さは、100μm以上300μm以下の範囲が好ましい。
また、絵柄模様層12を有する基材層11に対して透明樹脂層13を積層する方法としては、接着性の材料を介してドライラミネーション、又は熱融着による方法などを用いることができる。
【0039】
透明樹脂層13においても耐候性向上のために、紫外線吸収剤(UVA)やヒンダードアミン系の光安定剤(HALS)などの耐候剤を含むことが好ましい。耐候剤については、表面保護層14にて説明したものと同様である。
また、透明樹脂層13の観察面側の表面にエンボス加工のような凹凸加工を施しても良い。絵柄模様層12に係る絵柄模様のみの意匠に比べ、視覚的な凹凸感や触覚による凹凸感が付加されることにより意匠性が向上する。この場合には、絵柄模様層12に係る絵柄模様と凹凸加工による凹凸とを同調させると意匠性が一層向上するため好ましい。
【0040】
以上、表面保護層14および透明樹脂層13について説明してきた。上記の通り、両者とも耐候剤を含み、透明であることが好ましいなど両層で類似しているため、両層を区別できず1層として認識できる場合や、もともと1層である場合もある。そのような場合、便宜的にその層を表面保護層14と呼ぶが、組成などは透明樹脂層13として説明したものであっても構わない。また、1層はある場合の表面保護層14の厚さは、上記表面保護層14の厚さであってもよく、上記透明樹脂層13の厚さであってもよい。
【0041】
<絵柄模様層>
絵柄模様層12は、本開示の外装材補修シート1に意匠性を付与するものである。絵柄模様層12は、全面を被覆する一様均一な着色層であってもよいし、種々の模様をインキと印刷機を使用して印刷することにより形成される絵柄層であってもよい。また、これらの両者を有していてもよい。
絵柄模様層12に用いられるインキとしては、バインダーに顔料、染料などの着色剤、体質顔料、溶剤、安定剤、可塑剤、触媒、硬化剤などを適宜混合したものが使用される。
【0042】
バインダーとしては特に制限はなく、例えば、ポリウレタン系樹脂、ウレタンアクリル系樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル系共重合体樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル/アクリル系共重合体樹脂、塩素化ポリプロピレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ブチラール系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ニトロセルロース系樹脂、酢酸セルロース系樹脂などの中から任意のものが、1種単独で又は2種以上を混合して用いられる。
着色剤としては、カーボンブラック(墨)、鉄黒、チタン白、アンチモン白、黄鉛、チタン黄、弁柄、カドミウム赤、群青、コバルトブルー等の無機顔料、キナクリドンレッド、イソインドリノンイエロー、フタロシアニンブルー等の有機顔料又は染料、アルミニウム、真鍮等の鱗片状箔片からなる金属顔料、二酸化チタン被覆雲母、塩基性炭酸鉛等の鱗片状箔片からなる真珠光沢(パール)顔料等が用いられる。
【0043】
また、絵柄模様層12に係る絵柄模様としては、木目模様、大理石模様(例えばトラバーチン大理石模様)等の岩石の表面を模した石目模様、布目や布状の模様を模した布地模様、タイル貼模様、煉瓦積模様等があり、これらを複合した寄木、パッチワーク等の模様もある。これらの模様は通常の黄色、赤色、青色、及び黒色のプロセスカラーによる多色印刷によって形成される他、模様を構成する個々の色の版を用意して行う特色による多色印刷等によっても形成される。
絵柄模様層12の厚さとしては、1μm以上20μm以下程度である。
【0044】
<基材層>
基材層11は、化粧シート10のベースとなる層であり、化粧シート10の強度を担う、絵柄模様層12を積層形成する工程においては被積層対象となる、などの役目果たす層である。
基材層11には、例えば、紙、不織布、熱可塑性樹脂シート又はこれらの複合材料などが使用される。
紙としては、例えば、薄葉紙、クラフト紙、上質紙、リンター紙、バライタ紙、硫酸紙、和紙などが挙げられ、不織布としては、例えばポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ナイロン、ビニロン、ガラスなどの繊維からなる不織布が挙げられる。紙又は不織布の坪量は、通常20~100g/m2程度とすればよい。また、紙又は不織布は、樹脂含浸させたものでもよく、意匠性の向上を目的として、着色されたものであってもよい。
【0045】
熱可塑性樹脂シートとしては、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリスチレン、ABS樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂などが挙げられ、なかでもポリオレフィン系樹脂が好ましい。
ポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン(高密度、中密度、あるいは低密度)、ポリプロピレン(アイソタクチック型、あるいはシンジオタクチック型)、ポリブテン、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-プロピレン-ブテン共重合体、オレフィン系熱可塑性エラストマーなどのポリオレフィン系樹脂が挙げられる。オレフィン系熱可塑性エラストマーとしては、上記したような結晶質ポリオレフィン樹脂からなるハードセグメントとエチレン-プロピレンゴム、エチレン-プロピレン-ジエンゴム、アタクチックポリプロピレン、スチレン-ブタジエンゴム、水素添加スチレン-ブタジエンゴムなどのエラストマーからなるソフトセグメントを混合して得られるものが挙げられる。ハードセグメントとソフトセグメントとの混合比は、〔ソフトセグメント/ハードセグメント〕=5/95~40/60(質量比)程度である。必要に応じて、エラストマー成分は、硫黄、過酸化水素などの公知の架橋剤によって架橋する。また、熱可塑性樹脂シートは、意匠性の向上を目的として、着色されたものを用いてもよい。
【0046】
基材層11の層構成としては、上記したような紙、不織布、熱可塑性樹脂シートなどを単層又は2層以上に積層したものが挙げられる。これらのなかでも、熱可塑性樹脂シートが好ましく、ポリオレフィン系樹脂シートがより好ましく、特に着色又は未着色の、ポリエチレン又はポリプロピレン製シートが好ましい。
【0047】
また、基材層11として、上述の材料からなるシート等2種以上を接着剤、熱融着等の公知の手段により、複合、積層した基材等も用いることができる。
なお、基材層11が紙等の場合に、インキや塗液の浸透性を有することがある。その場合には該浸透性がその後の印刷や塗工に支障を生じさせることがあるため、基材層11上に、予め公知のシーラー層を形成しておいてもよい。また、絵柄模様層12の一部としてベタ印刷を行い、シーラー層を兼用させることもできる。
【0048】
基材層11の厚さ(基材層11が積層体の場合は合計した厚さ)は、限定されないが、一般的には25μm以上500μm以下程度とすればよく、80μm以上300μm以下が好ましく、80μm以上200μm以下がより好ましい。
【0049】
<接着層>
接着層20を構成する接着剤としては、通常化粧シートで用いられる接着剤を用いることができ、その厚さは0.1μm以上50μm以下程度である。厚さが0.1μm以上であると十分な接着性が得られ、50μm以下であると成形加工性の点で有利である。必要な粘着力が得られる範囲において薄い方が好ましく、0.1μm以上20μm以下であることが好ましい。
【0050】
接着剤としては、特に制限はなく、例えば、ウレタン系接着剤、アクリル系接着剤、エポキシ系接着剤、ゴム系接着剤等が挙げられ、なかでも、ウレタン系接着剤が接着力等の点で好ましい。なお、この様なウレタン系接着剤としては、2液硬化型ウレタン樹脂系接着剤などがあり、2液硬化型ウレタン樹脂系接着剤は、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、アクリルポリオール等の各種ヒドロキシル基含有化合物と、トリレンジイソシアネートやヘキサメチレンジイソシアネート等の各種ポリイソシアネート化合物を含む2液硬化型ウレタン樹脂を利用した接着剤である。また、アクリル-ポリエステル-塩酢ビ系樹脂なども加熱により容易に接着性を発現し、高温での使用でも接着強度を維持し得る好適な接着剤である。
接着層は、これら樹脂等からなる接着剤組成物を用いて、塗工法など公知の層形成法で形成することができる。
【0051】
<芯材層>
芯材層30は、外装材補修シート1のベースとなる層であり、化粧シート10に含まれる基材層11と共に外装材補修シート1の強度を担う、化粧シート10を接着層20を介して積層形成する工程においては被積層対象となる、被着体表面の凹凸を隠蔽する、などの役目果たす層である。
芯材層30には、例えば、紙、不織布、熱可塑性樹脂シート又はこれらの複合材料などが使用され、上述した基材層11の材料と同様のものを挙げることができる。中でも、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂などがよく用いられる。
芯材層30の材料は、基材層11の材料と同じであることが好ましい。厚さも同じとすれば、市販の同じ型番の製品を使用できるため、材料の調達コストを削減することができる。
芯材層30は、着色されていることが好ましい。被着体である外装用化粧材60に係る絵柄模様に対する隠蔽性が向上するからである。
芯材層30の厚さは、限定されないが、基材層11と同様に、一般的には25μm以上500μm以下程度とすればよく、30μm以上300μm以下が好ましく、40μm以上200μm以下がより好ましい。厚い方が被着体表面に係る凹凸を隠蔽する効果が高いが、厚いと外装材補修シート1全体としての厚さも厚くなり、ハンドリングや施工性に劣る様になるためである。
【0052】
<粘着層>
粘着層40は、外装材補修シート1の施工時に、外装材補修シート1を被着体である外装用化粧材60に粘着させ固定する層である。
粘着層40を形成する粘着剤としては、例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤等の粘着剤など単体又は2種以上の混合物として用いることが挙げられるが、アクリル系樹脂を含むことが好ましい。粘着層40はプライマー層70に対し貼り付けられるところ、プライマー層70に対する密着性が良好だからである。
アクリル系粘着剤を用いると密着性の向上などに好適である。アクリル系粘着剤としては、例えば、ブチルアクリレート(BA)とアクリル酸(AA)とを、BA/AAの重量比が99.9/0.1~70/30特に99.5/0.5~80/20の範囲内で共重合させる事によって得られる共重合体を挙げることができる。
【0053】
例えば、アクリル系樹脂としては、エチルアクリレート、n-プロピルアクリレート、n-ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、n-ペンチルアクリレート、2-メチルブチルアクリレート、n-ヘキシルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、n-オクチルアクリレート、イソオクチルアクリレート、n-ノニルアクリレート、イソノニルアクリレート等のアクリル酸のC2~C12アルキルエステルの少なくとも1種(モノマーA)と、アクリル酸、メタクリル酸、アクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート等の官能基含有アクリル系モノマーの少なくとも1種(モノマーB)と、が共重合されることにより得られるものを挙げることができる。上記モノマーAとモノマーBの共重合割合はモノマーA/モノマーBの重量比で99.5/0.1~70/30特に99/1~75/25の範囲内が好適である。
【0054】
必要に応じ適宜、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤等の公知のカップリング剤による接着強化処理を行っても良い。また、接着力強化の点で、接着層と接触する外装用化粧材60の表面を粗面化処理しておくことが好ましい。
粘着層40の厚さは0.1μm以上50μm以下程度であり、10μm以上40μm以下であることが好ましい。
【0055】
粘着層40の芯材層30側の面とは反対側の面には、空気抜きパターンが形成されていることが好ましい。空気抜きパターンは通常は溝であり、溝は格子状に形成されていることが好ましい。外装材補修シート1の施工時に、溝に沿って空気が逃げ出すことができるため、外装材補修シート1の粘着層40と被着体である外装用化粧材60との間に空気が挟み込まれてしまうこと、すなわち気泡の噛み込みを抑制することができる。溝の幅は0.5mm以上20mm以下であることが好ましく、また溝のピッチは1mm以上100mm以下であることが好ましい。
【0056】
外装材補修シート1は高い粘着力を有する。粘着力は、被着体である外装用化粧材60の表面状態に大きく依存するため、実際の施工時における粘着力を外装材補修シート1の粘着力として定量化することは困難である。そこで、外装材補修シート1の粘着力として好ましくは、下記の測定条件における粘着力が10N/25mm以上である。
測定条件:幅25mm、長さ100mmの外装材補修シート1の試験片を、被着基材(SUS304板)に2Kgのローラーを1往復させて圧着し、24時間放置後、引張試験機にて180°方向に300mm/分の速度で測定。
【0057】
<剥離層>
上述の通り、施工前の外装材補修シート1においては、外装材補修シート1の粘着層40に対し芯材層30側の面とは反対の面側に剥離層50を有する剥離層付外装材補修シート2の形態であることが好ましい。剥離層付外装材補修シート2においては、粘着性を有する粘着層40が露出しないため、施工前の外装材補修シート1のハンドリング性が向上する。
剥離層50としては、従来公知の離型フィルム、セパレート紙、セパレートフィルム、セパ紙、剥離フィルム、剥離紙等と呼称される各種形態のものを適宜使用できる。例えば、上質紙、コート紙、含浸紙、プラスチックフィルム等の片面又は両面に離型層を形成したものを用いてもよい。離型層としては、離型性を有する材料であれば、特に限定されないが、例えば、シリコーン樹脂、有機樹脂変性シリコーン樹脂、フッ素樹脂、アミノアルキド樹脂、メラミン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル樹脂等を挙げることができる。これらの樹脂は、エマルジョン型、溶剤型又は無溶剤型のいずれもが使用できる。離型層を備えた離型フィルムを用いる場合には、例えば、シリコーン離型タイプのPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム、未処理PETフィルム、PPフィルム、シリコーン離型タイプの紙等を用いることができる。
【0058】
剥離層50の厚さは、例えば、10μm以上200μm以下とすることが望ましく、50μm以上150μm以下とすることがさらに望ましい。上記層厚範囲の下限値を下回ると、コシがなく、剥離しにくくなる。また、上記層厚範囲の上限値を越えると、コシが強すぎて貼り付け時の作業性が低下するからである。
また、剥離層50としては、市販のものを使用してもよく、例えば、片面にシリコーン系剥離剤による易剥離処理が施されている厚さ38μmのポリエステルフィルム(三井化学東セロ株式会社製、商品名:SP-PET-01)等が挙げられる。
【0059】
以上説明した外装材補修シート1においては、以下の効果を得ることができる。
本開示の外装材補修シート1に係る1つ目の効果として、外装材補修シート1においては、被着体である外装用化粧材60の表面の凹凸の影響により外装材補修シート1の観察面側表面に生じる凹凸の程度を軽減することができる。すなわち、外装材補修シート1の貼り付け対象である外装用化粧材60の表面の凹凸(被着体表面の凹凸)を隠蔽する効果がある。
基材層、絵柄模様層、透明樹脂層、表面保護層を含む従来の外装用化粧シートを粘着層を介して被着体である外装用化粧材60の表面に貼り付けた場合と、本開示に係る外装材補修シート1を被着体である外装用化粧材60の表面に貼り付けた場合と、を比較する。
後者は前者の基材層に加え更に芯材層30を有する。
【0060】
基材層11、および芯材層30は、外装材補修シート1を構成する各層の中では、厚さが厚い層であるため、被着体である外装用化粧材60の表面の凹凸に対する追従性が悪い。そのため、被着体である外装用化粧材60の表面に対して、従来の外装用化粧シートを貼り付けた場合と、本開示に係る外装材補修シート1を貼り付けた場合とにおける、外装用化粧材60の表面の凹凸に対する追従性を比較すると、本開示に係る外装材補修シート1を貼り付けた場合の方が、芯材層30の存在により追従性が悪い。追従性が悪いために、観察面に現れる凹凸に係る輪郭が滑らかとなる結果、凹凸の輪郭を不明瞭なものとすることができ、観察面側表面に生じる凹凸を軽減することができる。
また、従来の外装用化粧シートを用いた場合の厚さは、外装用化粧シートの厚さに、貼り付けのための粘着層の厚さを加えた厚さであるのに対し、本開示に係る外装材補修シート1を用いた場合の厚さは、更に少なくとも芯材層30の厚さが加わった厚さとなる。外装材補修シート1の厚さが厚いことにより、観察面側表面に生じる凹凸を軽減する効果もある。
【0061】
本開示の外装材補修シート1に係る2つ目の効果として、被着体である外装用化粧材60に残存する耐候剤などが、ブリードアウトすることにより、外装材補修シート1に悪影響を及ぼすことを抑制する効果が高いことが挙げられる。ブリードアウトとは、合成樹脂などの高分子材料に添加される耐候剤などの添加剤が、時間の経過とともに添加剤が表面に浮き出てくる現象である。
被着体である外装用化粧材60には、通常は、意匠に係る絵柄像を保護するための透明な保護層が存在するが、その透明な保護層には通常耐候剤が含まれる。外装用化粧材60は補修を要する程度に経年劣化しているため、耐候剤のブリードアウトもある程度進行しているものと考えられる。その様なブリードアウトがある程度進行した外装用化粧材60の表面に貼られる外装材補修シート1においては、外装用化粧材60からブリードアウトした耐候剤などが外装材補修シート1に侵入して、外装材補修シート1に係る各層に悪影響をもたらすことが懸念される。悪影響としては例えば、外装材補修シート1に係る接着層20の接着力が弱まったり、化粧シート10にまで侵入して、絵柄模様層12が変色したりすることである。
【0062】
しかし、本開示に係る外装材補修シート1は、従来の外装用化粧シートを粘着層を介して被着体である外装用化粧材60の表面に貼り付けた場合に比べ、芯材層30を更に有している。そのため、例えば、外装用化粧材60からブリードアウトした耐候剤が、外装材補修シート1に係る絵柄模様層12にまで到達するには、基材層11に加え、芯材層30をも透過する必要がある。そのため、本開示に係る外装材補修シート1における外装用化粧材60からブリードアウトする添加剤に対するバリア性は、芯材層30を有する分、従来の外装用化粧シートに比べが高いものとなる。
【0063】
外装材補修シート1は、市販の外装用の化粧シート10を用いて外装材補修シート1を制作することができる。そのため、本開示の外装材補修シート1に係る3つ目の効果としては、多彩な絵柄の外装材補修シート1を安価に得ることができることが挙げられる。外装材補修シート1を得るためには、市販の多彩な絵柄の外装用の化粧シート10の中から、好ましい絵柄のものを調達して、その化粧シート10と、接着層20、芯材層30、粘着層40とを積層することにより容易に外装材補修シート1を得ることができる。外装用の化粧シート10は市場に流通しているものから安価に調達することができる。外装材補修シート1の製造時においては、通常は粘着層40に対して芯材層30の側とは反対側の面に剥離層50が積層され、剥離層付外装材補修シート2として製造される。
【0064】
〔外装用化粧材〕
本開示に係る外装材補修シート1を用いた外装用化粧材60の補修方法を説明するにあたり、先ず外装用化粧材60について説明する。
外装用化粧材60は補修対象となる化粧材である。外装用化粧材60は経年劣化が進んでおり、ブリードアウトにより表面が白化したり、絵柄の退色が進んでいたりする場合がある。
図2(a)に示す通り、外装用化粧材60は、被着構造材61に対し、被着粘着層62を介して被着化粧シート63が積層されている。被着化粧シート63側が観察面である。
【0065】
被着構造材61は、外装用化粧材60の骨格をなす部分であり、建物の外壁や窓枠、柱、玄関ドア等の各種扉、門扉、門柱、手すり、柵、ルーフデッキ、テラス、濡れ縁、ウッドデッキ、もしくはバルコニーなどの骨格部分である。それらの材料としては、通常は鋼やアルミニウムなどの金属、樹脂、木材、石膏などに代表される各種材料およびそれらの組み合わせで構成され、それらの材料が用途に適した形状に中実あるいは中空の形態で加工される。
被着化粧シート63は、上述の化粧シート10と同様に屋外での使用に耐えうる耐候性の高い化粧シートである。被着化粧シート63の各層は上述の化粧シート10と同様であるため、説明は省略する。すなわち、被着化粧シート63においても、化粧シート10と同様に、基材層11、絵柄模様層12、透明樹脂層13、表面保護層14に相当する各層を有し、同様に透明樹脂層13に相当する層は必須の構成ではない。被着化粧シート63は屋外での使用が前提であるため、透明樹脂層13、表面保護層14に相当する各層には、通常、耐候剤が含まれる。
被着粘着層62は被着化粧シート63を被着構造材61に粘着させるための粘着剤であり、その組成は上述の粘着層40と同様であるため、説明は省略する
【0066】
〔外装用化粧材の補修方法〕
次に、
図2および
図3を参照して、本開示に係る外装材補修シート1を用いた外装用化粧材60の補修方法の概要を説明する。外装用化粧材60の補修方法は、除去工程と、プライマー層積層工程と、貼り付け工程と、をこの順に有する。以下、各工程について説明する。
【0067】
(除去工程)
除去工程は、外装用化粧材60に係る被着化粧シート63について、その観察面側からその厚さ方向の途中まで一部を除去する工程である。除去工程前の状態、すなわち施工前の状態を
図2(a)に、除去工程後の状態を
図2(b)に示す。除去する深さについては、表面保護層14、および透明樹脂層13に相当する層の大半が除去される深さまで除去することが好ましい。換言すれば、表面保護層14に相当する層が消滅する深さ以上に除去することが好ましい。上述の通り、屋外において使用される被着化粧シート63の表面保護層14、および透明樹脂層13に相当する層には、添加剤として耐候剤が含まれることが一般的である。被着化粧シート63は補修を要する程度に経年劣化しているため、表面保護層14、および透明樹脂層13に相当する層については、耐候剤などの添加剤のブリードアウトが進行している可能性が高い。ブリードアウトした添加剤が外装材補修シート1に悪影響を及ぼす懸念があるため、表面保護層14、および透明樹脂層13に相当する層の大半が除去されることにより、その懸念を軽減することができる。
上記理由により、被着化粧シート63に係る表面保護層14に相当する層が消滅する深さ以上に除去することが好ましい。
【0068】
除去する方法としては、被着化粧シート63の表面を除去することができる方法であれば特に限定はない。サンドペーパー(紙やすり、研磨紙)を用いて除去することが好ましい。その方法としては、サンドペーパーを被着化粧シート63の表面に対し手で往復運動させることで被着化粧シート63の表面を除去する方法や、サンドペーパーを取り付けた電動サンダー(電動やすり)を用いて被着化粧シート63の表面を除去する方法などがあり、これらを組み合わせても良い。除去対象の面積が少ない場合や、電動サンダーを使用するクリアランスが取れない場合には、人手によりサンドペーパーを使用することが好ましく、それ以外の場合には、作業効率の観点から電動サンダーに代表される様な動力付きの除去手段を用いることが好ましい。
また、除去工程後における被着化粧シート63の表面については、鏡面に近い仕上げよりもある程度粗い方が好ましい。表面がある程度粗い方が、次のプライマー層積層工程において塗布されるプライマー材料と被着化粧シート63との密着性がアンカー効果により高まるからである。サンドペーパーの番手を変更しながら複数回にわたって除去作業を行っても構わない。1回の場合においても複数回の場合においても、除去工程において最後に使用するサンドペーパーの番手は#100以上#400以下であることが好ましいが、これに限定されるものではない。
【0069】
(プライマー層積層工程)
プライマー層積層工程は、除去工程により露出した被着化粧シート63に係る透明樹脂層13あるいは絵柄模様層12に相当する層に対しプライマー材料を積層することによりプライマー層70を形成する工程である(
図2(c))。
プライマー層70を形成することにより、次の積層工程において、外装用化粧材60に対し外装材補修シート1を積層(貼り付け)する際における、外装用化粧材60と外装材補修シート1に係る粘着層40との密着性が向上する。
プライマー材料、すなわちプライマー層70の材料としては、上記の通り、粘着層40との密着性が向上するものであれば特に限定されないが、例えば、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、セルロース樹脂、ポリエステル樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体等を挙げることができる。
プライマー層積層工程においてプライマー材料を積層する方法は、特に限定されないが、液状のプライマー材料を塗布することが一般的である。塗布する方法としては、施工現場において作業者が液状のプライマー材料を例えば刷毛あるいはバーコーター(塗工バー)を用いて手塗りする方法を挙げることができる。
【0070】
(貼り付け工程)
貼り付け工程は、プライマー層が積層された外装用化粧材60に対し外装材補修シート1を貼り付けて積層する工程である。
外装材補修シート1は、施工前、すなわち貼り付け工程前までは、粘着層40面側に剥離層50を有する剥離層付外装材補修シート2の形態であることが一般的である(
図3(a))。施工時に、剥離層付外装材補修シート2から剥離層50を剥離して除去することで粘着層40を露出させる(
図3(b))。剥離層50の剥離作業は、手もしくは現場の剥離機材を用いて行われる。
剥離作業で露出した外装材補修シート1の粘着層40を外装用化粧材60のプライマー層70に対向させ、ヘラなどで外装材補修シート1を外装用化粧材60に押し当て、空気を逃がしながら外装用化粧材60に外装材補修シート1を貼り付ける(
図3(c))。この貼り付け工程により外装用化粧材の補修が完了する。
なお、外装用化粧材60に対する外装材補修シート1の粘着力が、所定の粘着力で安定するまでには、施工完了後24時間以上経過していることが好ましい。
【0071】
外装材補修シート1を外装用化粧材60に押し当てる際に用いる道具としては、ヘラ、スキージ、撫で刷毛、ローラーなどを挙げることができ、また、道具を用いずに手で押し当ててもよい。
また粘着層40において説明した様に、粘着層40の芯材層30側の面とは反対側の面に溝状の空気抜きパターンを形成しておくことが好ましい。その場合には、積層工程において、外装材補修シート1の粘着層40と外装用化粧材60との間に空気が挟み込まれてしまうことを一層防止することができる。
【0072】
以上の通り、本開示の外装用化粧材の補修方法は、絵柄が形成された被着化粧シート63が被着構造材61に積層された外装用化粧材60の補修方法であって、外装用化粧材60から被着化粧シート63の一部を除去する除去工程と、除去工程により露出した外装用化粧材60の露出面にプライマー層を積層するプライマー層積層工程と、外装用化粧材60のプライマー層が積層された面に、外装材補修シート1の粘着層40を押し当てることにより、外装用化粧材60に外装材補修シート1を貼り付ける貼り付け工程と、を有する外装用化粧材の補修方法である。
【0073】
上記外装用化粧材の補修方法によれば、観察面側の化粧シートについて、外装用化粧材60に係る劣化した被着化粧シート63から、外装材補修シート1に係る新たな化粧シート10に容易に更新することができる。それにより外装用化粧材60の外観について、退色劣化やブリードアウトによる白化のほとんどない状態に容易に更新することができる。上記外装用化粧材の補修方法においては、簡便な工程であるにもかかわらず、新たな化粧シート10を含む外装材補修シート1を外装用化粧材60に高い密着力で貼り付けることできる。
【0074】
除去工程において、被着化粧シート63における透明樹脂層13、表面保護層14に相当する層は通常はともに透明であるため、表面保護層14に相当する層が消滅するまで適切に除去されたかが分かり難い場合がある。除去工程後において、仮に除去する深さが不足していて、透明樹脂層13、表面保護層14に相当する層が一部残存している場合には、両層に含まれる耐候層などの添加剤がブリードアウトすることによる外装材補修シート1への悪影響が懸念される。しかし、本開示の外装材補修シート1は芯材層30を有するため、そのような場合であっても、ブリードアウトした添加剤による化粧シート10への悪影響を軽減することができる。
【実施例0075】
〔実施例〕
以下、本開示に係る実施例および比較例について説明する。
実施例として、厚さ50μmである透明なポリエチレン樹脂である芯材(芯材層に相当)の両面にアクリル系粘着剤(接着層、および粘着層に相当)を有し、さらに各アクリル系粘着剤の芯材とは反対側の面に各剥離紙(粘着層側の剥離紙は剥離層に相当)を有する芯材付き両面粘着シート(日榮新化株式会社製 リッパーNT2600MX)を準備した。また別途、厚さ150μmである外装用オレフィン化粧シート(大日本印刷株式会社製 EB外装ファイル(柿渋柄))(化粧シートに相当)を準備した。芯材付き両面粘着シートの一方の面側の剥離紙を剥離しながら、露出したアクリル系粘着剤(接着層に相当)と、外装用オレフィン化粧シートの観察面側とは反対側の面と、を対向させラミネートすることで、剥離層付外装材補修シートに相当する層構成を有する、実施例に係る剥離層付外装材補修シートを得た。
【0076】
〔比較例〕
比較例として、材料として上質紙を用いた剥離紙(剥離層に相当)の剥離側の面上にアクリル系2液硬化型粘着剤(日榮新化株式会社製)(粘着層に相当)を乾燥後の厚さが30μmとなる様に塗布、乾燥させた。その後、該粘着剤面と、実施例と同様の外装用オレフィン化粧シート(大日本印刷株式会社製 EB外装ファイル(柿渋柄))(化粧シートに相当)の観察面側とは反対側の面と、を対向させラミネートすることで、剥離層付外装材補修シートに相当する層構成を有する、比較例に係る剥離層付外装材補修シートを得た。
【0077】
〔評価1:被着体表面の凹凸に対する隠蔽性評価〕
厚さ2mm、15cm角のアクリル板の中央に、直径8mmの丸形シール(コクヨ株式会社製 タックタイトル(丸形))を貼り、重ね貼りすることで厚さを0.5mm、1.0mm、1.5mmと変化させた複数の被着体サンプルを準備した。評価に係る各剥離層付外装材補修シートの剥離紙(剥離層)を剥離し外装材補修シートの形態とした上で、中央に丸形シールが貼られたアクリル板に対し、施工時に用いるヘラを用いて評価に係る各外装材補修シートを貼り付け、評価1に係る検証用の各サンプルを作成した。該検証用の各サンプルに対し、サンプルの延在平面と10°をなす角度で白色光を照射し、すなわち極端な斜光照明として、サンプルの延在平面に対し垂直方向から検証用の各サンプルを目視で観察し、丸形シールの影響により外装材補修シートの観察面側の表面に生じる凹凸の視認具合について、以下の基準で評価した。凹凸が判らない:◎、凹凸がわずかに判る程度で気にならない:○、凹凸が普通に判る:△、凹凸が明瞭に判る:×。
【0078】
〔評価2:絵柄変色評価〕
評価に係る各外装材補修シートを実際に施工して、施工1か月後における外装材補修シートに係る絵柄模様層の変色を目視評価した。施工は、家屋に設けられたサンルームの南面に配置された外装用化粧材による柱を評価2に係る外装用化粧材とし、その柱の屋外に露出した南面を施工対象面とした。該柱における被着構造体はアルミニウムを主体とする合金であった。実施例と比較例の差異が明確となる様、施工にあたり、除去工程における除去深さを故意に不足させることで、外装用化粧材に係る表面保護層、および透明樹脂層に相当する層が一部残存させた。これにより、添加剤として耐候剤を含む層を残存させることとなり、外装用化粧材からのブリードアウトが生じやすい状況を設定したこととなる。その後のプライマー層積層工程および貼り付け工程は好ましい条件で施工し、施工後1か月放置した。実施例に係る外装材補修シートと、比較例に係る外装材補修シートとは、サンルームの南面において隣接する柱に施工し、評価に係る両サンプルとした。施工1か月後の評価時において、未施工の実施例に係る外装材補修シートを評価に係る両サンプル(両柱)間に設置して劣化なしの標準サンプルとして、すなわち都合3つのサンプルについて、同等の条件で外光が当たる様にした。各サンプルの正面から絵柄模様層の色を観察し、劣化なしの標準サンプルと評価に係る両サンプルとの色の差異を以下の基準で目視評価した。色の差異が確認されなかった:○、色の差異が確認された:×。
【0079】
〔評価1結果〕
評価1の結果を表1に示す。
【表1】
表1に示す通り、丸形シールの厚さがいずれの場合であっても、実施例は比較例に対し、外装材補修シートの観察面側の表面に生じる凹凸が視覚的に目立ちにくいことが確認された。実施例と比較例の各外装材補修シートの差異は、主として芯材層に相当する層の有無であることを鑑みれば、芯材層を有する本開示に係る外装材補修シート1は、被着体表面の凹凸を隠蔽する効果が高いことが確認された。
【0080】
〔評価2結果〕
評価2の結果は、実施例は○、比較例は×であった。1か月間の環境暴露について、両サンプルに対し同等と考えて良いため、両者の差異は芯材層に相当する層の有無に起因していると考えられる。評価2は、外装用化粧材からのブリードアウトが発生しやすい状況を設定しているため、外装用化粧材からのブリードアウトが発生したものと考えられる。そして、絵柄模様層の変色は、ブリードアウトした添加剤が絵柄模様層に到達したことによる影響が主要因と考えられる。以上から、本開示に係る外装材補修シート1は、芯材層を有することにより、外装用化粧材からブリードアウトした耐候剤などの添加剤に対し高いバリア性を持つことが確認された。
【0081】
以上、本開示に係る外装材補修シート、剥離層付外装材補修シート、および外装用化粧材の補修方法について説明したが、本開示は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本開示の特許請求の範囲に記載された技術的思想と、実質的に同一の構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなる場合であっても本開示の技術的範囲に包含される。