(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023146366
(43)【公開日】2023-10-12
(54)【発明の名称】クッション
(51)【国際特許分類】
A47C 27/22 20060101AFI20231004BHJP
B68G 7/06 20060101ALI20231004BHJP
A47C 27/00 20060101ALI20231004BHJP
【FI】
A47C27/22 A
B68G7/06 C
A47C27/00 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022053512
(22)【出願日】2022-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】397035025
【氏名又は名称】タキヒヨー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】青山 隆
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 敏基
(72)【発明者】
【氏名】滝 英夫
【テーマコード(参考)】
3B096
【Fターム(参考)】
3B096AA04
3B096AB08
3B096AD04
(57)【要約】
【課題】これまでのクッションとは異なる押圧感を有するクッションを提供する。
【解決手段】このクッション1は、空気を通過させない非空気通過領域11aと、空気を通過させる空気通過領域11bとを含み、非空気通過領域11aは、生地111等に空気を通過させない材料を用い、空気通過領域11bは、生地111等の縫い合わせ領域で構成される。生地111等は、表生地A1と裏生地B1との2重構造であり、裏生地B1は、空気を容易に通過させないEVA樹脂等の材料である。このクッション1により、たとえば、美容サロンで用いた場合には、カット時、カラーリング時に、顧客が膝の上にクッション1を載置して両腕を載せる等することで、雑誌やタブレットをリラックスして読むことができ、快適な時間を顧客に対して提供することを可能とし、美容サロンに限定されず他のあらゆる場面での使用も同様である。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
袋体と、
前記袋体内に封入された充填材と、を備え、
前記袋体は、
空気を容易に通過させない非空気通過領域と、
空気を通過させる空気通過領域と、を含み、
前記袋体表面積において、前記空気通過領域は、前記非空気通過領域よりも小さい、クッション。
【請求項2】
前記袋体は、1または2以上の空気を通過させない生地の端部を縫い合わされており、
前記生地に空気を容易に通過させない材料を用いることで、前記非空気通過領域が構成され、
前記生地の縫い合わせ領域で前記空気通過領域が構成される、
請求項1に記載のクッション。
【請求項3】
前記生地は、表生地と裏生地との2重構造であり、
前記裏生地は、空気を容易に通過させない樹脂材料を用いた生地である、
請求項2に記載のクッション。
【請求項4】
前記裏生地は、EVA樹脂である、
請求項3に記載のクッション。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、クッションの構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
袋体の中に充填材を封入したクッションの構造が、たとえば、特開2017-131443号公報(特許文献1)、実用新案登録第3050136号公報(特許文献2)、実用新案登録第3181787号公報(特許文献3)、実用新案登録第3225037号公報(特許文献4)、実用新案登録第3230083号公報(特許文献5)、特開2002-336093号公報(特許文献6)、特開2015-112191号公報(特許文献7)、特開2021-146064号公報(特許文献8)、および、実開平3-118066号公報(特許文献9)等に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-131443号公報
【特許文献2】実用新案登録第3050136号公報
【特許文献3】実用新案登録第3181787号公報
【特許文献4】実用新案登録第3225037号公報
【特許文献5】実用新案登録第3230083号公報
【特許文献6】特開2002-336093号公報
【特許文献7】特開2015-112191号公報
【特許文献8】特開2021-146064号公報
【特許文献9】実開平3-118066号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記各文献に開示されるクッションにおいては、袋体には布部材が用いられている。布部材自体は通気性を有するため、クッションの張りは、充填材の量、材質等によって調整される。
【0005】
近年、様々領域でクッションが用いられるようになってきており、他の商品との差別を図るため、新たな感覚を有するクッションが求められるようになってきている。
【0006】
この発明はこのような課題に鑑みてなされたもので、これまでのクッションとは異なる押圧感を有するクッションを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に基づくクッションは、袋体と、上記袋体内に封入された充填材とを備え、上記袋体は、空気を容易に通過させない非空気通過領域と、空気を通過させる空気通過領域と、を含み、上記袋体の表面積において、上記空気通過領域は、上記非空気通過領域よりも小さい。
【0008】
他の形態におけるクッションにおいては、上記袋体は、1または2以上の空気を通過させない生地の端部を縫い合わされており、上記生地に空気を容易に通過させない材料を用いることで、上記非空気通過領域が構成され、上記生地の縫い合わせ領域で上記空気通過領域が構成される。
【0009】
他の形態におけるクッションにおいては、上記生地は、表生地と裏生地との2重構造であり、上記裏生地は、空気を容易に通過させない樹脂材料を用いた生地である。
【0010】
他の形態におけるクッションにおいては、上記裏生地は、EVA樹脂である。
【発明の効果】
【0011】
この開示によれば、これまでのクッションとは異なる押圧感を有するクッションの提供を可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図6】本実施の形態のクッションに用いられる生地の断面図である。
【
図7】本実施の形態のクッションを押圧した場合の空気の逃げを示す第1模式図である。
【
図8】本実施の形態のクッションを押圧した場合の空気の逃げを示す第2模式図である。
【
図9】本実施の形態のクッションを押圧した場合の空気の逃げを示す第3模式図である。
【
図10】他の実施の形態のクッションの形状を示す図である。
【
図11】他の実施の形態のクッションの形状を示す図である。
【
図12】他の実施の形態のクッションの形状を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に基づいた実施の形態のクッションについて、以下、図面を参照しながら説明する。以下に説明する実施の形態において、個数、量などに言及する場合、特に記載がある場合を除き、本発明の範囲は必ずしもその個数、量などに限定されない。同一の部品、相当部品に対しては、同一の参照番号を付し、重複する説明は繰り返さない場合がある。実施の形態における構成を適宜組み合わせて用いることは当初から予定されていることである。
【0014】
(全体構成:クッション1)
クッション1は、たとえば、美容サロンで用いた場合には、カット時、カラーリング時に、顧客が膝の上にクッション1を載置して両腕を載せる等することで、雑誌やタブレットをリラックスして読むことができ、快適な時間を顧客に対して提供することを可能とするものである。また、美容サロンに限定されず、待合室やオフィス、移動中の車両内、自宅のリビング等、あらゆる場面で、本実施の形態のクッション1を使用することで、リラックス時間の提供を可能とする。以下、
図1から
図5を参照して、本実施の形態のクッション1の全体構成について説明する。
図1は、本実施の形態のクッション1の正面図、
図2は右面図、
図3は平面図、
図4は底面図、
図5は斜視図である。
【0015】
本実施の形態のクッション1は、三日月型の外形を有し、たとえば、幅(W)は約60cm~70cm、高さ(H1)は約40cm~50cm、湾曲状のくぼみ部の高さ(H2)は約30cm~40cm、最大幅(D1)は約20cm~30cm、底面幅(D2)は約10cm~20cm程度の大きさである。なお、クッション1は、このサイズに限定されず、クッション1の用途に応じて最適なサイズを採用することが可能である。
【0016】
例えば、使用者が椅子に座った状態で、くぼみ部側を腹部側に配置し、膝の上にクッション1を置いた場合、くぼみ部が腹部周りにフィットし、腕をこのクッションの上に置くことで、快適に雑誌等を読むことができる快適な大きさである。
【0017】
本実施の形態では、このクッション1は、袋体10と、この袋体10の内部に封入される充填材20と、を備えている。袋体10は、第1生地111、第2生地112および第3生地113を有し、各生地の端部が縫い合わされて袋体10を構成している。第1生地111および第2生地112は、三日月型を有し、第3生地113は、両端が窄んだ細長い舟形を有している。第1生地111、第2生地112、および、第3生地113はいずれも、空気を容易に通過させない生地で構成されている。したがって、この第1生地111、第2生地112、および、第3生地113の表面が、非空気通過領域11aを構成する。なお、袋体10を構成する生地は、1枚の生地を折り返して袋状にして周囲を縫い合わせる構造であってもよいし、2枚の生地を袋状にして周囲を縫い合わせる構造であってもよいし、本実施の形態の3枚の生地に限定されず、4枚以上の生地を袋状にして周囲を縫い合わせる構造であってもよい。
【0018】
ここで、空気を容易に通過させない生地とは、100%空気を通過させない場合以外に、たとえば、長時間放置した場合に、微細な孔から空気が徐々に抜けるものの、圧を加えた場合には、即時に空気を通過させないような材料も含むものとする。この生地として最適な材料については、後述する。
【0019】
袋体10の中には、所定量の充填材が封入されている。充填材には、クションに最適な材料として様々な材料を採用できるが、本実施の形態では、100%のポリエステル材を中綿として採用している。中綿としては、直径70tex、長さ51mm、フィラメント内容:レギュラーのものを使用している。さらに、中綿の繊維の絡み具合は、中空繊維状、中綿の重量は、クッション1の総重量が約830gに対して600gを使用している。
【0020】
第1生地111、第2生地112、および、第3生地113の端部が相互に縫い合わされている。縫い合わせにおいては、仕様は素縫いであり、1インチ間あたり、11運針数である。縫糸には、ポリエステル素材糸(番手40SX2)を用いるとよい。
【0021】
生地の縫い合わせ部が、袋体10の内部への空気の出し入れを可能とする空気通過領域11bを構成する。袋体10表面積において、空気通過領域11bは、非空気通過領域11aよりも小さいこととなる。
【0022】
(生地の構成)
次に、
図6を参照して、第1生地111、第2生地112、および、第3生地113に採用される生地について説明する。
図6は、第1生地111、第2生地112、および、第3生地113の断面図である。
【0023】
生地は、仕様者が触れる側の表生地A1と内側に位置する裏生地B1との2重構造である。裏生地B1には、空気を容易に通過させない樹脂材料を用いた生地を用いている。表生地A1には、使用者が触れた際に心地良さを感じる生地を用いるとよい。本実施の形態では、表生地A1には、厚さ(X1)が約3mm程度のマイクロベロアを用いている。マイクロベロアは、光沢感のある起毛素材であり、心地よい触感を得ることができる。表生地A1には、クッションの表生地として適切な様々な生地を用いることができる。
【0024】
裏生地B1には、空気を容易に通過させない樹脂材料を用いた生地として、厚さ(X2)が約1.2mm程度のEVA樹脂(エチレン酢酸ビニル)を用いている。EVA樹脂を用いることで、空気を容易に通過させず、表生地A1の風合いを損ねずに、生地に弾性力を持たせることができる。裏生地B1としての樹脂材料は、表生地A1の裏面にEVA樹脂をボンディング加工している。
【0025】
EVA樹脂は、次の利点を挙げることができる。「弾力性と柔軟性」の観点では、ポリエチレン樹脂と比べて、弾力があり、柔軟である。低温下でも硬くなりにくい。「軽量」の観点では、発泡体のため空気を多く含んでおり、単純にゴムのみを使った素材と比較するとかなり軽量である。「耐久性弾力性と柔軟性」の観点では、水分に強く、水回りの使用にも耐えられます(耐光性、耐オゾン性にも優れているので、紫外線にも強い)。「環境性」の観点では、環境にやさしく安全であり、塩素を含まない材料なので、焼却してもダイオキシンが発生せず、リサイクルも容易である(有害物質を含まないため安全)。
【0026】
なお、裏生地B1としてEVA樹脂に限定されることなく、同等の特性を有する素材を用いてもよい。
【0027】
(作用・効果)
図7から
図9を参照して、上記構成を備えたクッション1の作用効果について説明する。
図7から
図9は、クッション1を押圧した場合の空気の逃げを示す第1から第3模式図である。
【0028】
上記したように、このクッション1は、生地の表面が非空気通過領域11aを構成し、生地の縫い合わせ部が空気通過領域11bを構成している。その結果、クッション1の表面積で見た場合、空気通過領域11bは非空気通過領域11aに比べてかなり小さい。これにより、使用者がクッション1に圧力Fを加えた場合には、非空気通過領域11aからは内部の空気は抜けず、空気通過領域11bから徐々に空気(
図7、
図8中の矢印A)が抜け出ることとなる。
【0029】
このように、このクッション1は、充填材20で膨らんだ風船のように内部に空気を閉じ込め、クッション1に張りのある使用感を持たせることができる。同時に、クッション1の生地の縫い合わせ部である空気通過領域11bから、クッション1の内部の空気が徐々に外部に抜けるため、クッション1に張りのある状態を維持したまま、
図9に示すように、クッション1を圧縮させることができる。
【0030】
一方、圧力Fを開放した場合には、内部の充填材20の反発力によって、再び、空気通過領域11bから内部に空気が徐々に充填される。
【0031】
このように、本実施の形態におけるクッション1においては、クッション1に一定の張りを持たせた状態で柔らかな浮き沈みの感覚を生じさせ、独特なリラックス感を得ることを可能とし、これまでのクッションとは異なる押圧感を有するクッションの提供を可能としている。
【0032】
たとえば、本実施の形態のクッション1を美容サロンで用いた場合には、カット時、カラーリング時に、顧客が膝の上にクッション1を載置して両腕を載せる等することで、雑誌やタブレットをリラックスして読むことができ、快適な時間を顧客に対して提供することを可能とする。また、美容サロンに限定されず、待合室やオフィス、移動中の車両内、自宅のリビング等、あらゆる場面で、本実施の形態のクッション1を使用することで、リラックス時間の提供を可能とする。
【0033】
(クッションの他の形状)
図10から
図12を参照して、クッションの他の外観形態について説明する。
図10から
図12は、他の実施の形態のクッションの形状を示す図である。
【0034】
上記実施の形態では、クッション1として三日月型の場合について説明したが、この形状に限定されるものではない。上述した非空気通過領域11aと空気通過領域11bとを備えるクッションであれば、
図10に示すハート型のクッション1A、
図11に示す円形のクッション1B、
図12に示す矩形のクッション1C、その他、クッションに採用可能な形態を有するすべてのクッションに上記クッション1と同様の構成を採用することが可能である。
【0035】
以上、実施の形態において本開示のクッションについて説明したが、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の範囲は請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0036】
1,1A,1B,1C クッション、10 袋体、11a 非空気通過領域、11b 空気通過領域、20 充填材、111 第1生地、112 第2生地、113 第3生地、A1 表生地、B1 裏生地。