(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023146372
(43)【公開日】2023-10-12
(54)【発明の名称】伸縮継手
(51)【国際特許分類】
F16L 27/10 20060101AFI20231004BHJP
C21B 7/16 20060101ALI20231004BHJP
F16L 39/04 20060101ALI20231004BHJP
【FI】
F16L27/10 A
C21B7/16 306
F16L39/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022053521
(22)【出願日】2022-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001542
【氏名又は名称】弁理士法人銀座マロニエ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】堀川 透理
(72)【発明者】
【氏名】楠本 久夫
(72)【発明者】
【氏名】北村 洋平
【テーマコード(参考)】
3H104
3J106
4K015
【Fターム(参考)】
3H104LB01
3H104LB18
3H104LB22
3H104LB38
3J106FA08
3J106FA09
4K015FA01
(57)【要約】
【課題】脱落したレンガ等の異物による配管系統の閉塞あるいは高炉の羽口における詰まりを回避することができる伸縮継手を提案する。
【解決手段】高温気体を流通させる配管に設けられ、該配管の熱影響による膨張、収縮に伴う変位をそれ自身の伸縮によって吸収する伸縮継手において、前記配管の流路につながる内部経路を有し、該配管の端面相互間において連結可能な継手本体を備え、該継手本体の内部経路に、該配管の流路を流通する高温気体の通り抜けを可能とする複数の開口部が形成された多孔体を設ける。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高温気体を流通させる配管に設けられ、該配管の熱影響による膨張、収縮に伴う変位をそれ自身の伸縮によって吸収する伸縮継手であって、
前記配管の流路につながる内部経路を有し、該配管の端面相互間において連結可能な継手本体を備え、該継手本体の内部経路に、該配管の流路を流通する高温気体の通り抜けを可能とする複数の開口部が形成された多孔体を設けたことを特徴とする伸縮継手。
【請求項2】
前記多孔体は、前記流路の下流側に向けて凸となる形状を有することを特徴とする請求項1に記載した伸縮継手。
【請求項3】
前記多孔体は、前記継手本体の軸芯に沿い間隔を隔てて配置された多段配列になることを特徴とする請求項1または2に記載した伸縮継手。
【請求項4】
前記多段配列になる多孔体のうち、前記内部経路の最上流側に位置する多孔体は、該内部経路の下流側のいずれかに位置する多孔体の開口部の最大サイズよりも大きいサイズの開口部を有することを特徴とする請求項3に記載した伸縮継手。
【請求項5】
前記継手本体は、その内壁面に、該多孔体を少なくとも2箇所において支持する支持部を有することを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載した伸縮継手。
【請求項6】
前記多孔体は、前記支持部の通り抜けを可能とする切り欠き部を有することを特徴とする請求項5に記載した伸縮継手。
【請求項7】
前記支持部は、平面視における形状および側面視における形状の少なくとも一つが、先端先細り形状をなすものであることを特徴とする請求項5または6に記載した伸縮継手。
【請求項8】
前記継手本体は、該継手本体の周壁に蓋体を介して開閉可能に設けられ、前記多孔体にて捕集された捕集物の外部への取り出しを可能とする貫通開口を有することを特徴とする請求項1~7のいずれかに記載した伸縮継手。
【請求項9】
前記継手本体は、該継手本体の軸芯に交差する向きに少なくとも2分割され、ベローズを介して相互に連結された内管と、該継手本体の軸芯に交差する向きに少なくともに2分割され、ベローズを介して相互に連結されるとともに、該内管を隙間を隔てて取り囲む外管とを備え、
該内管は、前記高温気体を通す内部経路を有するものであり、該隙間は、冷却水の流通経路を形成するものであることを特徴とする請求項1~8のいずれか1項に記載した伸縮継手。
【請求項10】
前記内管は、その内壁面に耐火物を有することを特徴とする請求項9に記載した伸縮継手。
【請求項11】
前記高温気体を流通させる前記配管は、高炉の羽口と環状管とをつなぐ上部ベンドおよび下部ベンドであることを特徴とする請求項1~10のいずれか1項に記載した伸縮継手。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高温の気体が流通する配管系統の一部に設置される伸縮継手に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的な高炉の全体構成を
図8に模式的に示し、
図8の要部を拡大して
図9に示す。
【0003】
高炉の胴体下方には、
図8、
図9に示すように、その胴縁に沿って複数個の羽口9が設置されており、該羽口9からは熱風炉10で生成された1200℃程度の熱風が、耐火物が配置された上部熱風本管11、混冷管12、下部熱風本管13、環状管14の流路を通り、さらに、上部ベンド15、伸縮管16、球面短管17、下部ベンド18を経て各羽口9から高炉内へと吹き込まれる。
【0004】
一方、高炉の炉頂からは、鉄鉱石類、コークスおよび副原料が装入され、羽口9から吹き込まれた熱風(高温の還元ガス)に接して高炉内の鉄鉱石等の還元を促進し、溶融させて銑鉄を製造している。
【0005】
高炉操業において、安定操業は最重要課題の一つである。もし、高炉が安定操業できない場合、熱風の送風を一時的に停止する臨時休風を行うことがある。その臨時休風の一つの原因としては、羽口へのレンガ等の詰まりによるものがある。
【0006】
これは、熱風の流路(熱風炉~ミキシングチャンバ~環状管~羽口)において、配管の内部に断熱の目的でライニングされたレンガが脱落し、この脱落したレンガまたは、その破片等が、熱風とともに下流へ流されていき、流路中で最も狭い箇所となる羽口の先端部で閉塞することが原因である。
【0007】
かかるトラブルを防止するためには、レンガが脱落しないようにすることが大切であり、従来、高炉およびその付帯設備の設計・施工段階においてレンガの脱落防止対策は十分にとられてはいるものの、実際には、レンガの脱落を完全に防ぐことができないのが実情であった。
【0008】
従来、脱落・飛来してきたレンガ等に起因した羽口等の詰まり防止する方法としては、
図9に示すように、各羽口9への分岐点である環状管14の分岐部に筒状の堰19を設け、この堰19により脱落したレンガ片20の進入を防止するものが知られている。
【0009】
ところで、上記従来法では、脱落したレンガの進入の確率をある程度下げることはできたが、堰19の手前にレンガ片20が溜まった場合には、その溜まったレンガ片20を乗り越えて別のレンガ片が羽口9へと進入することが懸念されることから環状管14の分岐部におけるレンガ片20の溜まり具合の確認とその除去が必要であり、そのためには、上部ベンド15のみならず、該上部ベンド15につながる伸縮管16、球面短管17等の他設備を取り外すことが不可欠であってこれにかかる作業負荷が大きく、しかも、取り外し作業中に堰19が落下するおそれもあって危険な作業を伴うものであった。
【0010】
なお、伸縮継手に関連する先行技術としては、例えば、特許文献1に開示されたものが参照されるが、脱落したレンガによる羽口の詰まりや配管系統の閉塞を防止することまでは言及されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、脱落したレンガ等の異物による配管系統の閉塞や高炉の羽口における詰まりを回避できる伸縮継手を提案するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
脱落したレンガ等の異物による配管系統の閉塞や高炉の羽口における詰まりを防止するべく、種々検討を重ねた結果、発明者らは、配管に設置されている伸縮管に着目することによりかかる課題を解決するに至ったものである。なお、伸縮管は、伸縮継手とも呼ばれ、これは、上記特許文献1に例示されているように、高炉の羽口の上流部の配管系統の一部に設置され、配管の熱膨張、収縮にともなう変位を吸収する機能を有するものである。
【0014】
すなわち、本発明は、高温気体を流通させる配管に設けられ、該配管の熱影響による膨張、収縮に伴う変位をそれ自身の伸縮によって吸収する伸縮継手であって、
前記配管の流路につながる内部経路を有し、該配管の端面相互間において連結可能な継手本体を備え、該継手本体の内部経路に、該配管の流路を流通する高温気体の通り抜けを可能とする複数の開口部が形成された多孔体を設けたことを特徴とする伸縮継手である。
【0015】
上記の構成からなる伸縮継手において、前記多孔体は、前記流路の下流側に向けて凸となる形状を有すること、前記多孔体は、前記継手本体の軸芯に沿い間隔を隔てて配置された多段配列になること、前記多段配列になる多孔体のうち、前記内部経路の最上流側に位置する多孔体は、該内部経路の下流側のいずれかに位置する多孔体の開口部の最大サイズよりも大きいサイズの開口部を有すること、前記継手本体は、その内壁面に、該多孔体を少なくとも2箇所において支持する支持部を有すること、前記多孔体は、前記支持部の通り抜けを可能とする切り欠き部を有すること、前記支持部は、平面視における形状および側面視における形状の少なくとも一つが、先端先細り形状をなすものであること、前記継手本体は、該継手本体の周壁に蓋体を介して開閉可能に設けられ、前記多孔体にて捕集された捕集物の外部への取り出しを可能とする貫通開口を有すること、前記継手本体は、該継手本体の軸芯に交差する向きに少なくとも2分割され、ベローズを介して相互に連結された内管と、該継手本体の軸芯に交差する向きに少なくともに2分割され、ベローズを介して相互に連結されるとともに、該内管を隙間を隔てて取り囲む外管とを備え、該内管は、前記高温気体を通す内部経路を有するものであり、該隙間は、冷却水の流通経路を形成するものであること、前記内管は、その内壁面に耐火物を有すること、さらに、前記高温気体を流通させる前記配管は、高炉の羽口と環状管とをつなぐ上部ベンドおよび下部ベンドであること、が課題解決のための具体的手段として好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、配管内を飛来するレンガを、収縮継手内部に設置された多孔体にて捕集することができるので、配管系統の閉塞あるいは高炉の羽口における詰まりを起こすことがない。
【0017】
とくに、本発明の伸縮継手を、高炉の環状管につながる上流側配管と、高炉の羽口のブローパイプにつながる下流側配管との相互間に配置し、該上流側配管、該伸縮継手、該下流側配管を経由して供給された高温気体を羽口を通して高炉内に吹き込むことにより、羽口のレンガ片による詰まりに起因した高炉の臨時休風を避けることができる。また、高炉においては羽口を交換する作業はしばしば行われるため、その際に伸縮継手において捕集されたレンガ片を容易に回収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明にしたがう伸縮継手の実施の形態を模式的に示した図であり、(a)は、その平面図、(b)は、(a)のA-A断面図である。
【
図2】本発明にしたがう伸縮継手の他の実施の形態を模式的に示した図である。
【
図3】本発明にしたがう伸縮継手のさらに他の実施の形態を模式的に示した図である。
【
図4】本発明にしたがう伸縮継手の別の実施の形態を模式的に示した図である。
【
図5】本発明にしたがう伸縮継手のさらに別の実施の形態を模式的に示した図であり、(a)は、その平面図、(b)は、(a)のB-B断面図である。
【
図6】
図5に示した伸縮継手において多孔体の取り付け要領の説明図である。
【
図7】本発明にしたがう伸縮継手の別の実施の形態を模式的に示した図であり、(a)は、平面図、(b)は、(a)のC-C断面図である。
【
図9】
図8の要部を拡大して示した図(一部断面表示)である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を用いて本発明をより具体的に説明する。
図1(a)、(b)は、本発明にしたがう伸縮継手の実施の形態を模式的に示した図であり、(a)は、その平面図、(b)は、(a)のA-A断面図である。
【0020】
図1(a)、(b)における符号1は、上流側の配管U1および下流側の配管U2の端面にそれぞれ連結可能な継手本体である。なお、
図1(a)、(b)において、高温気体は、
図1(b)中の矢印にしたがい上流側の配管U1から下流側の配管U2へ向けて、すなわち、紙面の上から下へ向けて流通するものとする。
【0021】
継手本体1は、該継手本体1の軸芯Lに直交する向きに2分割され、気密性を有するベローズB1を介して相互に連結された内管1a、1bと、該継手本体1の軸芯Lに直交する向きに2分割され、気密性を有するベローズB2を介して相互に連結されるとともに、該内管1a、1bを隙間Mを隔てて取り囲む外管1c、1dから構成されており、ベローズB1、B2が適宜伸縮することにより配管U1、U2の熱影響による膨張、収縮に伴う変位を吸収する。
【0022】
内管1aと外管1c、内管1bと外管1dは、それらの端部(上端部、下端部)に設けられたフランジF1、F2部分で一体連結されており、上流側に位置する配管U1、下流側に位置する配管U2との連結は、ボルト、ナット等の締結手段を用い、フランジF1、F2を介して行われる。図示の例では、内管1a、1b、外管1c、1dはそれぞれ2分割されたものを例として示したが、これらは、3分割あるいはそれ以上に分割されたものを用いることも可能であり、2分割したものに限定されない。なお、本発明にしたがう伸縮継手は、内管1a、1bと外管1c、1dとで構成された2重管構造になるものを例として示したが、単一管構造の伸縮継手にも適用することができる。
【0023】
また、
図1(a)、(b)における符号2a、2bは、内管1a、1bの内壁面に設けられた円筒形状をなす耐火物である。耐火物2a、2bの内側空間が高温気体(熱風等)を通すための内部経路Nになっている。内管1aの耐火物2aの端面2a1と、内管1bの耐火物2bの端面2b1との間には、隙間Eが設けられており、伸縮継手は、この隙間Eの範囲内で伸縮することになる。
【0024】
また、
図1(a)、(b)における符号3は、内部経路Nに配置され、配管U1、U2の流路を流通する高温気体(熱風)の通り抜けを可能とする複数の開口部が形成された板状の多孔体である。多孔体3としては、金属製の板材や網、例えば、パンチングメタルや金網、エキスパンドメタル等を用いることができる。
【0025】
また、
図1(a)、(b)における符号4は、内管1aの内壁面に一体的に設けられた支持部である。支持部4は、その上面が支持面4aとなっており、多孔体3の縁部3aの前面側、図示の例では、多孔体3の縁部3aの下面側を支持面4aに当接、好ましくは、係留部4bに引っ掛けた状態で載置することによって多孔体3を支持する。支持部4と多孔体3の縁部3aは、耐火物2aに埋設されており、支持部4は、内管1aの内壁面の対向位置の2箇所、もしくは、該内壁面の周りに等間隔で3箇所以上に設けることができる。
【0026】
本発明にしたがう伸縮継手は、継手本体1の内部経路Nに多孔体3が配置されているため、配管U1、U2内において飛来するレンガ片を該多孔体3によって捕集することが可能であり、配管系統内や羽口での詰まりを回避することができる。
【0027】
多孔体3としては、耐熱性を有する金属を用いることが好ましく、熱風等の高温気体の温度域でレンガ片が飛来しても破れない強度を確保することができるように金属の種類と構造(開口部の大きさや開口部と開口部の間隔、金網を用いる場合は開口部の大きさや線径など)を決定する。
【0028】
なお、多孔体3の開口部の大きさは通気抵抗にも影響するので、通気抵抗も考慮して多孔体3の構造を選定する。通常の高炉操業の条件で使用可能な具体的な多孔体3の例としては、耐熱ステンレス鋼(SUS310S)やSUH鋼、耐熱合金を用いて製造された線径3~20mm程度、目開きが5~50mm程度になる金網を用いるのが好ましい。金網の目開きについては、脱落したレンガ等の異物が金網を通過して伸縮継手から羽口先端に至るまでの間で管内を閉塞させることがない大きさとするのが好ましい。また、多孔体3の強度を確保するために網を重ねて二重構造とすることもできる。
【0029】
図2は、本発明にしたがう伸縮継手の他の実施の形態を模式的に示した図である。この例は、多孔体3が高温気体の流れ方向に向かって窪んだ形状、すなわち、高温気体が流通する流路の下流側へ向けて凸となる形状を有するものである。
【0030】
多孔体3の形状は、支持部4で支持されている多孔体3の縁部3aよりも、多孔体3の中央部分が高温気体が流通する流路の下流側に向けて突出する形状になっているのが好ましい。これにより、高温気体が流通する部分の総面積を増やすことでき、レンガ片等が多数飛来して多孔体3で捕集されたとしても高温気体の流路面積が低下して必要な流量を確保することができなくなるのを防止することが可能となり、高温気体の流量が低下するに至るまでの期間を延長することができる利点がある。
【0031】
図3は、本発明にしたがうさらに他の実施の形態を模式的に示した図である。この例は、高温気体が流通する流路の下流側へ向けて凸となる形状を有する多孔体3、3′を2つ継手本体1の軸芯Lに沿い間隔を隔てて配置した多段配列からなるものである。多孔体3を間隔を隔てて複数配置した多段配列とすることにより、飛来するレンガ片が上流側に位置する多孔体3を通り抜けることがあっても下流側に位置する多孔体3′でレンガ片を捕集することができる。
【0032】
多孔体3、3′を多段配列とする場合、多孔体3、3′を支持する位置は図示したように同じ位置でもよいが、内部経路N内に位置する部分の相互間の間隔hは、下流側に位置する多孔体3′にてレンガ片を保持することができる程度の間隔となっていればよい。
【0033】
多孔体3、3′を多段配列とする際、上流側の多孔体3の最大通過サイズ(開口部の最大径)を、下流側の多孔体3′の最大通過サイズより大きくすることにより、比較的大きいサイズのレンガ片は、上流側の多孔体3で捕集することができ、上流側の多孔体3の最大通過サイズと下流側の多孔体3′の最大通過サイズの間の大きさのレンガについては、下流側の多孔体3′で捕集することができる。
【0034】
多孔体3、3′は、3つ以上設置することも可能であり、この場合は、最上流側の多孔体3の開口部の最大径が、下流側のいずれかの多孔体3′の最大径よりも大きければ、上記の機能を発揮され、これにより、各多孔体3、3′における流路面積の低下を抑制して高温気体の流量の低下が起きるまでの期間をさらに延長することができる。
【0035】
図4、
図5(a)、(b)は、本発明にしたがう伸縮継手の別の実施の形態を模式的に示した図である。かかる伸縮継手は、対向配置された各支持部4の先端部分4cをそれぞれ、耐火物2aを通り超して内部経路Nにまで張り出させ、多孔体3の縁部3aを支持部4の支持面4aに係留部4bを介して支持する構造のものである。
【0036】
かかる構造においては、例えば、
図5(a)に示すように、多孔体3の縁部3aに支持部4の先端部分4cの幅寸法よりも若干サイズの大きな切り欠き部3bを2つ設けておき、
図6に示す如く、多孔体3の切り欠き部3bを各支持部4の先端部分4cに合わせながら該多孔体3を伸縮継手の下流側から上流側、すなわち、支持部4の先端部分4cの下面側から上面側へと移行させ、次いで、多孔体3が支持部4の先端部分4cを通り抜けたならば
図5(a)中の矢印の如く孔体3を周方向に回転させて切欠き部3bの位置を支持部4の先端部分4cからずらすとともに該多孔体3を支持部4の支持面4aにて支持すればよい。支持部4にて支持された多孔体3を取り外すには、多孔体3をその取り付け時とは逆向きに回転させて該対向体3の切欠き部3bを支持部4の先端部分4cに合わせたのち、該多孔体3を支持部4の上面側から下面側へと移行させる。
【0037】
通常、高炉の配管系統では、伸縮継手の下流側、すなわち、羽口側には、
図9に示すように、取り外しの比較的容易な下部ベンド18、球面短管17が位置しており、羽口9の交換に際しては下部ベンド18、球面短管17を取り外すことになるが、本発明にしたがう伸縮継手を用いると、下部ベンド18、球面短管17を取り外す際に、多孔体3を、伸縮継手の下流側から簡単に取り外すことができるため、多孔体3で捕集されたレンガ片を除去することが可能であり、また、新規な多孔体3への交換も行うことができる。
【0038】
支持部4は、側面視における形状(断面形状)が、
図4に示すように、内管1aにつながる基端から先端部分4cに至るまでの厚さが同じ厚さになるフラットな形状を有するものを用いることができる他、
図5(a)、(b)に示すように、平面視における形状(仮想線で表示)、側面視における形状(断面形状)が先端先細り形状をなすもの、すなわち、内管1aにつながる基端から先端部分4cに向けて厚さが漸次に、あるいは段階的に薄くなるものを用いるのが好ましく、このような形状にすることにより支持部4が内管1aの外側から冷却されやすくなり、支持部4の耐熱性が向上する。
【0039】
図7は、本発明にしたがう伸縮継手の別の実施の形態を模式的に示した図である。
図7における符号5は、継手本体1の周壁を構成する内管1aに設けられた貫通孔、6は、耐火物2aに設けられ、該貫通孔5につながる貫通孔、7は、継手本体1の外管1cを貫通して内管1aの周壁に連結され、貫通孔5、6につながる通路を備えた筒体、8は、筒体7の端部に着脱自在に設けられた蓋体である。
【0040】
貫通孔5、6および筒体7の通路は、多孔体3にて捕集された捕集物としてのレンガ片を外部へ取り出す貫通開口を構成するものであって、高炉の送風停止時等、熱風の供給が停止されたとき、蓋体8を取り外し、該貫通開口を開放して多孔体3で捕集されたレンガ片を外部へ掻き出すことができる。なお、
図7においては、多孔体3にて捕集されたレンガ片の掻き出しを容易にするため、板状の多孔体3を用いた場合を例として示してあるが、レンガ片の効率的な掻き出しが可能であるならば、上掲
図2に示すような多孔体3を用いてもかまわない。
【0041】
内管1a、1bと外観1c、1dの相互間に形成される隙間Mには、冷却水を流通させることもできる。冷却水を流通させれば、内部経路Nを流通する高温気体の熱から伸縮継手を保護することが可能であり、また、多孔体3を支持する支持部4を効果的に冷却することができる。
【0042】
高炉に熱風を送風するための配管系統の、環状管と羽口とをつなぐ上部ベント、下部ベントとの間に本発明にしたがう伸縮継手を設けて高炉の操業を行うことにより、高炉の羽口がレンガ片で詰まるのを防止でき、安定的な高炉の操業が可能になるが、本発明にしたがう伸縮継手は、高炉以外の設備の配管系統に用いることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明によれば、脱落したレンガ等の異物による配管系統の閉塞あるいは高炉の羽口における詰まりを回避し得る伸縮継手が提供できる。
【符号の説明】
【0044】
1 継手本体
1a、1b 内管
1c、1d 外管
2a、2b 耐火物
3、3′ 多孔体
3a 縁部
3b 切り欠き部
4 支持部
4a 支持面
4b 係留部
4c 先端部分
5 貫通孔
6 貫通孔
7 筒体
8 蓋体
9 羽口
10 熱風炉
11 上部熱風本管
12 混冷管
13 下部熱風本管
14 環状管
15 上部ベンド
16 伸縮管
17 球面短管
18 下部ベンド
19 堰
20 レンガ片
U1 上流側の配管
U2 下流側の配管
B1、B2 ベローズ
M 隙間
F1、F2 フランジ
N 内部経路
E 隙間
h 間隔