(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023146377
(43)【公開日】2023-10-12
(54)【発明の名称】そばの処理装置、及び、そばの処理方法
(51)【国際特許分類】
A61L 2/10 20060101AFI20231004BHJP
A23L 7/10 20160101ALI20231004BHJP
A23L 3/005 20060101ALI20231004BHJP
【FI】
A61L2/10
A23L7/10 H
A23L3/005
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022053526
(22)【出願日】2022-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000003757
【氏名又は名称】東芝ライテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100146592
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 浩
(74)【代理人】
【氏名又は名称】白井 達哲
(74)【代理人】
【識別番号】100176751
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 耕平
(72)【発明者】
【氏名】前田 晶子
【テーマコード(参考)】
4B021
4B023
4C058
【Fターム(参考)】
4B021LA44
4B021LP06
4B021LW09
4B021MC01
4B023LC08
4B023LE30
4B023LG10
4B023LP13
4C058AA21
4C058AA24
4C058BB06
4C058KK05
4C058KK11
4C058KK28
(57)【要約】
【課題】減菌効果を向上させることができる、そばの処理装置、及び、そばの処理方法を提供することである。
【解決手段】実施形態に係るそばの処理装置は、玄そば、そばのむき身、及び、そば粉の少なくともいずれかを載置する載置面を有する載置部と;前記載置面と対向して設けられ、赤外線を照射する照射モジュールと;を具備している。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
玄そば、そばのむき身、及び、そば粉の少なくともいずれかを載置する載置面を有する載置部と;
前記載置面と対向して設けられ、赤外線を照射する照射モジュールと;
を具備したそばの処理装置。
【請求項2】
前記照射モジュールは、ランプヒータを有し、
前記ランプヒータは、波長が800nm以上、4000nm以下の前記赤外線を照射する請求項1記載のそばの処理装置。
【請求項3】
前記ランプヒータは、カーボンランプヒータ、アロイランプヒータ、およびハロゲンランプヒータの少なくともいずれかである請求項1または2に記載のそばの処理装置。
【請求項4】
前記載置部は、所定の方向に移動可能である請求項1~3のいずれか1つに記載のそばの処理装置。
【請求項5】
玄そば、そばのむき身、及び、そば粉の少なくともいずれかに、赤外線を照射して減菌を行う、そばの処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、そばの処理装置、及び、そばの処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
食品市場においては、HACCP(Hazard Analysis and Critical Control Point)などへの対応により食品に対する安全意識が高まっている。また、食品市場には、腐敗などによるフードロスなどの問題もある。
【0003】
ここで、玄そば(収穫されたままの殻つきのそばの実)は、他の穀類に比べて、付着している細菌の数が多い。そのため、殻を除去したそばのむき身や、製粉されたそば粉にも多数の細菌が残留している。
多数の細菌が付着している、そばのむき身や、そば粉を用いて、生麺などを製造すると、製造後の日持ちが悪いなどの品質劣化の問題が生じやすい。この場合、生麺などの製造の際に、酒精などの添加物を添加すれば、品質劣化を抑制することができる。しかしながら、酒精などのアルコールを含む添加物を添加すると、アルコールにより風味が損なわれるという新たな問題が生じる。
【0004】
一般的に、食品に付着している細菌やウィルスの減菌には、紫外線が用いられている。そのため、玄そば、そばのむき身、及び、そば粉に、紫外線を照射して減菌を行うことも考えられる。しかしながら、玄そば、そばのむき身、及び、そば粉の場合には、紫外線による減菌がほとんど生じない。
【0005】
そのため、そば粉の減菌方法として、加熱蒸気による加熱、二軸のスクリューによる混捏、マイクロ波や放射線の照射などが行われる場合がある。しかしながら、加熱蒸気による加熱には、細菌数の低減に限度があるという問題がある。また、これらの方法を実施可能な処理装置は、高額となるという問題もある。
【0006】
そこで、減菌効果を向上させることができる、そばの処理装置、及び、そばの処理方法の開発が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、減菌効果を向上させることができる、そばの処理装置、及び、そばの処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
実施形態に係るそばの処理装置は、玄そば、そばのむき身、及び、そば粉の少なくともいずれかを載置する載置面を有する載置部と;前記載置面と対向して設けられ、赤外線を照射する照射モジュールと;を具備している。
【発明の効果】
【0010】
本発明の実施形態によれば、減菌効果を向上させることができる、そばの処理装置、及び、そばの処理方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図2】照射モジュールを例示するための模式図である。
【
図3】カーボンランプヒータの一例を例示するための模式断面図である。
【
図4】アロイランプヒータの一例を例示するための模式断面図である。
【
図5】ハロゲンランプヒータの一例を例示するための模式断面図である。
【
図6】カーボンランプヒータ、アロイランプヒータ、およびハロゲンランプヒータの放射照度と波長との関係を例示するためのグラフである。
【
図7】そばのむき身に赤外線を照射した場合の減菌効果を例示するためのグラフである。
【
図8】そば粉に赤外線を照射した場合の減菌効果を例示するためのグラフである。
【
図9】他の実施形態に係る照射モジュールを例示するための模式断面図である。
【
図10】他の実施形態に係る処理装置を例示するための模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(そばの処理装置)
以下、図面を参照しつつ、実施の形態について例示をする。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。また、各図中の矢印X、Y、Zは、互いに直交する三方向を表している。例えば、X方向とY方向は水平方向とし、X方向は処理物100の搬送方向としている。例えば、Z方向は鉛直方向としている。
また、本明細書において「減菌」は、付着している細菌やウィルスの数を減らすことだけではなく、細菌やウィルスを死滅させる滅菌をも含むものとする。
【0013】
ここで、一般的に、食品に付着している細菌やウィルスを減菌する際には、紫外線が用いられている。しかしながら、収穫されたままの殻つきのそばの実である「玄そば」、玄そばの殻を除去した「そばのむき身」、及び、そばのむき身を製粉した「そば粉」に紫外線を照射しても紫外線による減菌がほとんど生じない。
【0014】
そのため、本実施の形態に係るそばの処理装置1(以下、単に、処理装置1と称する)は、処理物100に紫外線を照射するのではなく、処理物100に赤外線を照射する。なお、後述する照射部として赤外線を照射するランプヒータを用いる場合には、主に赤外線が照射されるが、可視光(例えば、赤色領域の光)が混じる場合がある。
【0015】
図1は、処理装置1を例示するための模式図である。
図1に示すように、処理装置1は、例えば、供給部10、移動部20、照射モジュール30、収容部40、およびコントローラ50を有する。
【0016】
供給部10は、例えば、移動部20の搬入側の端部の近傍に設けられている。例えば、供給部10は、処理対象となる処理物100を内部に収容し、所定の量の処理物100を移動部20に供給する。
【0017】
処理物100は、玄そば、そばのむき身、及び、そば粉の少なくともいずれかとすることができる。
そのため、供給部10は、複数の粒状体(玄そば、そばのむき身)、または複数の粉状体(そば粉)を収納するホッパと、ホッパに収納されている複数の粒状体、または複数の粉状体を所定の量取り出して移動部20に供給する供給装置と、を有する。供給装置は、例えば、振動装置が設けられたシュートなどとすることができる。なお、供給部10の構成は例示をしたものに限定されるわけではない。供給部10は、所定の量の粒状体、または所定の量の粉状体を移動部20に供給できるものであればよい。
なお、供給部10は、必ずしも必要ではなく省くこともできる。供給部10を省く場合には、例えば、作業者が、処理物100を移動部20(載置部21)に供給すればよい。
【0018】
移動部20は、載置部21を備えている。載置部21は、処理物100を載置する載置面を有する。載置部21は、所定の方向に移動可能となっている。
図1に例示をした移動部20は、処理物100が載置された載置部21をX方向に移動する。例えば、移動部20は、処理前の処理物100の供給位置(供給部10の位置)から、処理済みの処理物100aの排出位置(収容部40の位置)まで処理物100を移動する。
【0019】
図1に例示をした様に、移動部20は、例えば、コンベアとすることができる。移動部20がコンベアの場合には、載置部21は、例えば、ベルトとすることができる。また、移動部20はパレットコンベアなどであってもよい。移動部20がパレットコンベアの場合には、載置部21は、例えば、処理物100が載置されるパレットとすることができる。
【0020】
また、
図1においては、移動部20がコンベアの場合を例示したが、移動部20は、処理物100を載置するテーブルを有し、処理物100が載置されたテーブルを所定の方向に回転、または旋回するものであってもよい。この場合、テーブルが、処理物100を載置する載置部となる。
【0021】
なお、移動部20の構成は、例示をしたものに限定されるわけではない。移動部20は、照射モジュール30における赤外線の照射領域に処理前の処理物100を移動させることができ、処理済みの処理物100aを赤外線の照射領域の外側に移動させることができるものであればよい。
【0022】
また、移動部20においては、供給された複数の粒状体(玄そば、そばのむき身)が、互いに重ならないようにすることが好ましい。供給された複数の粒状体が互いに重なっていなければ、複数の粒状体のそれぞれに、赤外線を照射することができる。そのため、複数の粒状体を均一に減菌することが容易となる。
【0023】
移動部20においては、供給された複数の粉状体(そば粉)を含む層の厚みが薄くなる様にすることが好ましい。複数の粉状体を含む層の厚みが薄ければ、赤外線の照射を行った際に、層の下方にある粉状体を減菌することが容易となる。そのため、複数の粉状体を均一に減菌することが容易となる。
【0024】
この場合、例えば、供給部10にブレード22をさらに設けることができる。ブレード22と、載置部21との間には所定の隙間を設けることができる。ブレード22と、載置部21との間の隙間は、例えば、重なっていない粒状体が通過できる寸法、あるいは、複数の粉状体を含む層が所定の厚みとなる寸法とすることができる。なお、ブレード22に代えて、あるいはブレード22とともに、載置部21に振動を加える振動装置や、載置部21に載置された処理物100に気体を供給するブロー装置などを設けることもできる。 すなわち、載置部21に載置された処理物100を均す装置を適宜設けることができる。なお、作業者が、載置部21に載置された処理物100を均すようにしてもよい。
【0025】
照射モジュール30は、載置部21の載置面と対向して設けられている。照射モジュール30は、処理物100に赤外線を照射する。照射モジュール30は、載置部21に載置され、所定の方向(例えば、X方向)に移動する処理物100に赤外線を照射する。
【0026】
図2は、照射モジュール30を例示するための模式図である。
図2に示すように、照射モジュール30は、例えば、リフレクタ31、および照射部32を有する。
リフレクタ31は、照射部32から照射され、載置部21(処理物100)の側とは反対側に向かう赤外線を反射して、載置部21(処理物100)の側に向かうようにする。リフレクタ31は、例えば、凹面鏡などである。
【0027】
照射部32は、リフレクタ31の内側に設けられる。照射部32は、例えば、赤外線を照射するランプヒータとすることができる。照射部32は、例えば、カーボンランプヒータ32a、アロイランプヒータ32b、ハロゲンランプヒータ32cなどとすることができる。カーボンランプヒータ32aは、単に、カーボンヒータなどと称される場合がある。アロイランプヒータ32bは、単に、アロイヒータなどと称される場合がある。ハロゲンランプヒータ32cは、単に、ハロゲンランプなどと称される場合がある。
なお、ランプヒータは、例示をしたものに限定されるわけではなく、赤外線を照射するランプヒータであればよい。
【0028】
なお、
図1においては、照射モジュール30が1つ設けられる場合を例示したが、照射モジュール30は少なくとも1つ設けられていればよい。複数の照射モジュール30が設けられる場合には、例えば、載置部21の移動方向(例えば、X方向)に、複数の照射モジュール30を並べて設けることができる。この場合、複数の照射モジュール30のそれぞれに設けられるランプヒータの種類は同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0029】
また、
図1および
図2においては、1つの照射モジュール30に、1つのランプヒータが設けられる場合を例示したが、ランプヒータは少なくとも1つ設けられていればよい。1つの照射モジュール30に、複数のランプヒータが設けられる場合には、例えば、載置部21の移動方向(例えば、X方向)に、複数のランプヒータを並べて設けることができる。また、1つの照射モジュール30に、複数のランプヒータが設けられる場合には、同じ種類のランプヒータを設けることもできるし、異なる種類のランプヒータを設けることもできる。
【0030】
例えば、ランプヒータは、カーボンランプヒータ32a、アロイランプヒータ32b、およびハロゲンランプヒータ32cの少なくともいずれかであればよい。
【0031】
図3は、カーボンランプヒータ32aの一例を例示するための模式断面図である。
図3に示すように、カーボンランプヒータ32aは、一方の方向に延びる形態を有する。
カーボンランプヒータ32aは、例えば、バルブ32a1、発熱体32a2、導電部32a3、インナーリード32a4、アウターリード32a5、および接続部32a6を有する。
【0032】
バルブ32a1は、例えば、円筒状を呈している。バルブ32a1は、例えば、石英ガラスから形成される。バルブ32a1の両側の端部は、封止部32a1aにより封止されている。バルブ32a1の内部空間には、不活性ガスが封入されている。バルブ32a1の内部空間に不活性ガスが封入されていれば、通電時に、内部空間の圧力が高くなるので、発熱体32a2の蒸発を抑制することができる。不活性ガスは、例えば、アルゴン(Ar)、キセノン(Xe)、クリプトン(Kr)、ネオン(Ne)などのうちの1種類、あるいは、これらを組み合わせた混合ガスとすることができる。
【0033】
バルブ32a1の内部空間の25℃における不活性ガスの圧力(封入圧力)は、例えば、0.6bar(60kPa)~0.9bar(90kPa)とすることができる。バルブ32a1の内部空間の25℃における不活性ガスの圧力(封入圧力)は、気体の標準状態(SATP(Standard Ambient Temperature and Pressure):温度25℃、1bar)により求めることができる。
【0034】
発熱体32a2は、バルブ32a1の内部空間に設けられている。発熱体32a2は、バルブ32a1の中央領域をバルブ32a1の管軸に沿って延びている。通電時において、発熱体32a2は、発熱するとともに赤外線を放出する。発熱体32a2は、炭素を含んでいる。発熱体32a2は、例えば、螺旋状を呈している。発熱体32a2は、例えば、炭素を含む帯状のメッシュ構造体や炭素繊維を含む線状体を螺旋状に巻くことで形成される。発熱体32a2の概観形状は、例えば、円筒状である。なお、発熱体32a2は、例えば、炭素繊維を含む筒状のメッシュ構造体、炭素を含む帯状体、炭素を含む線状体などであってもよい。
【0035】
導電部32a3は、1つの封止部32a1aに対して1つ設けることができる。導電部32a3は、封止部32a1aの内部に設けられる。導電部32a3は、例えば、モリブデン箔から形成される。
【0036】
インナーリード32a4は、導電部32a3の、アウターリード32a5側とは反対側に設けられる。インナーリード32a4は、導電部32a3と接続部32a6とに接続されている。インナーリード32a4は、1つの導電部32a3に対して少なくとも1つ設けることができる。インナーリード32a4は、線状を呈し、例えば、モリブデンなどを含んでいる。
【0037】
アウターリード32a5の一方の端部は導電部32a3と接続され、他方の端部は封止部32a1aから露出している。アウターリード32a5は、線状を呈し、例えば、モリブデンなどを含んでいる。
【0038】
接続部32a6は、発熱体32a2とインナーリード32a4との間に設けられている。接続部32a6は、発熱体32a2の端部と、インナーリード32a4の端部を保持する。接続部32a6は、耐熱性と導電性を有する材料から形成される。接続部32a6は、例えば、ニッケルやニッケル合金などの金属を含んでいる。
【0039】
図4は、アロイランプヒータ32bの一例を例示するための模式断面図である。
図4に示すように、アロイランプヒータ32bは、一方の方向に延びる形態を有する。 アロイランプヒータ32bは、例えば、バルブ32b1、発熱体32b2、リード32b3、およびホルダ32b4を有する。
【0040】
バルブ32b1は、例えば、円筒状を呈している。バルブ32b1は、例えば、石英ガラスから形成される。バルブ32b1の両側の端部は開口している。バルブ32b1の内部空間のガスは、外気と同じガス(例えば、大気圧の空気)である。すなわち、アロイランプヒータ32bは、いわゆる開放型のランプヒータである。
【0041】
発熱体32b2は、バルブ32b1の内部空間に設けられている。発熱体32b2は、バルブ32b1の中央領域をバルブ32b1の管軸に沿って延びている。通電時において、発熱体32b2は、発熱するとともに赤外線を放出する。発熱体32b2は、例えば、螺旋状を呈している。発熱体32b2は、例えば、合金を含む線状体を螺旋状に巻くことで形成される。発熱体32b2の概観形状は、例えば、円筒状である。発熱体32b2に含まれる合金は、例えば、鉄・クロム・アルミニウム合金である。鉄・クロム・アルミニウム合金は、例えば、カンタル(Kanthal:登録商標)とすることができる。
【0042】
リード32b3は、一対設けられている。リード32b3は、線状を呈し、ホルダ32b4の内部に設けられている。リード32b3の一方の端部は、ホルダ32b4からバルブ32b1の内部に突出している。リード32b3の一方の端部は、発熱体32b2の端部に接続されている。リード32b3の他方の端部は、ホルダ32b4から外部に突出している。リード32b3は、例えば、ステンレス、ニッケル、ニッケル合金などの金属から形成される。
【0043】
ホルダ32b4は、バルブ32b1の両側の端部のそれぞれに設けられている。ホルダ32b4は、例えば、無機接着剤などを用いてバルブ32b1の端部に固定される。ホルダ32b4は、絶縁性と耐熱性を有する材料から形成される。ホルダ32b4は、例えば、酸化アルミニウムなどのセラミックスから形成される。
【0044】
図5は、ハロゲンランプヒータ32cの一例を例示するための模式断面図である。
図5に示すように、ハロゲンランプヒータ32cは、一方の方向に延びる形態を有する。
ハロゲンランプヒータ32cは、例えば、バルブ32c1、発熱体32c2、導電部32c3、およびリード32c4を有する。
【0045】
バルブ32c1は、例えば、円筒状を呈している。バルブ32c1は、例えば、石英ガラスから形成される。バルブ32c1の両側の端部は、封止部32c1aにより封止されている。バルブ32c1の内部空間には、不活性ガスが封入されている。不活性ガスは、例えば、キセノン、クリプトン、アルゴンなどのうちの1種類、あるいは、クリプトンと窒素ガスの混合ガスなどとすることができる。また、臭素やヨウ素などのハロゲン物質をさらに含めることもできる。例えば、キセノンやクリプトンなどに、微量の臭化物などを含めることができる。
【0046】
バルブ32c1の内部空間の25℃における不活性ガスの圧力(封入圧力)は、例えば、0.6bar(60kPa)~0.9bar(90kPa)とすることができる。バルブ32c1の内部空間の25℃における不活性ガスの圧力(封入圧力)は、気体の標準状態(SATP(Standard Ambient Temperature and Pressure):温度25℃、1bar)により求めることができる。
【0047】
発熱体32c2は、バルブ32c1の内部空間に設けられている。発熱体32c2は、バルブ32c1の中央領域をバルブ32c1の管軸に沿って延びている。また、発熱体32c2を支持するアンカ32c2aを設けることもできる。通電時において、発熱体32c2は、発熱するとともに赤外線を放出する。発熱体32c2は、例えば、螺旋状を呈している。発熱体32c2は、例えば、タングステンを含む線状体を螺旋状に巻くことで形成される。発熱体32c2の概観形状は、例えば、円筒状である。発熱体32c2の端部は、封止部32c1aの内部において、導電部32c3に接続されている。
【0048】
導電部32c3は、1つの封止部32c1aに対して1つ設けることができる。導電部32c3は、封止部32c1aの内部に設けられる。導電部32c3は、例えば、モリブデン箔から形成される。
【0049】
リード32c4の一方の端部は、封止部32c1aの内部において、導電部32c3に接続されている。リード32c4の他方の端部は、封止部32c1aから露出している。リード32c4は、線状を呈し、例えば、モリブデンなどを含んでいる。
【0050】
ここで、ランプヒータは、熱とともに赤外線を照射する。また、ランプヒータの場合には、照射可能な赤外線の波長領域が広い。例えば、ランプヒータは、波長が800nm以上、4000nm以下の赤外線を照射することができる。
なお、ランプヒータは、主に赤外線を照射するが、可視光(例えば、赤色領域の光)が混じる場合がある。
【0051】
図6は、カーボンランプヒータ32a、アロイランプヒータ32b、およびハロゲンランプヒータ32cの放射照度と波長との関係を例示するためのグラフである。
図6から分かるように、カーボンランプヒータ32a、アロイランプヒータ32b、およびハロゲンランプヒータ32cとすれば、波長が800nm以上の赤外線を照射することができる。
【0052】
また、カーボンランプヒータ32a、およびアロイランプヒータ32bは、ハロゲンランプヒータ32cに比べて、ピーク波長が長波長側にある。また、放射強度は、カーボンランプヒータ32a、アロイランプヒータ32b、ハロゲンランプヒータ32cの順に高くなる。
【0053】
図7は、そばのむき身に赤外線を照射した場合の減菌効果を例示するためのグラフである。
図8は、そば粉に赤外線を照射した場合の減菌効果を例示するためのグラフである。
なお、赤外線の照射時間は120分としている。赤外線の放射強度と波長は、
図6に例示をしたものとしている。また、細菌は大腸菌群としている。
図7、および
図8から分かるように、そばのむき身、および、そば粉に赤外線を照射すれば、細菌の数を減らすことができる。
また、カーボンランプヒータ32a、およびアロイランプヒータ32bを用いれば、ハロゲンランプヒータ32cを用いる場合に比べて減菌効果を向上させることができる。また、カーボンランプヒータ32aを用いれば、アロイランプヒータ32bを用いる場合に比べて減菌効果を向上させることができる。すなわち、照射される赤外線のピーク波長が長波長側にあり、ピーク波長における放射照度がより高いランプヒータとすれば、高い減菌効果を得ることができる。
なお、玄そばの場合も、そばのむき身の場合と同様の減菌効果を享受することができる。
【0054】
図9は、他の実施形態に係る照射モジュール30aを例示するための模式断面図である。
図9に示すように、照射モジュール30aは、例えば、照射部131、冷却部132、回路基板133、および筐体134を有する。
【0055】
照射部131は、例えば、基板131a、および複数の発光素子131bを有する。
基板131aは、板状を呈し、放熱部132aの端部に設けられている。
複数の発光素子131bは、基板131aの、放熱部132a側とは反対側の面に並べて設けられている。複数の発光素子131bの配設形態や数は、載置部21の大きさなどに応じて適宜変更することができる。発光素子131bは、例えば、赤外線を照射する発光ダイオードとすることができる。発光素子131bは、例えば、ピーク波長が700nm以上、1500nm以下の領域にある赤外線を照射するものとすることができる。
【0056】
冷却部132は、例えば、放熱部132a、および送風部132bを有する。
放熱部132aは、例えば、照射部131が取り付けられるブロック状のベースと、複数のフィンを有する。放熱部132aは、例えば、アルミニウム合金などの熱伝導率の高い材料から形成される。
【0057】
送風部132bは、放熱部132aに設けられた複数のフィンに気体Gを供給する。気体Gは、例えば、処理装置1が設置された雰囲気に含まれている空気である。送風部132bは、筐体134の内部に設けられている。送風部132bは、例えば、筐体134の内壁に取り付けられる。送風部132bは、例えば、軸流ファンとすることができる。
【0058】
回路基板133は、筐体134の内部に設けられている。回路基板133は、例えば、複数の発光素子131bの点灯と消灯とを切り替えたり、複数の発光素子131bに印加する電力を制御したり、送風部132bによる気体Gの供給と供給の停止とを切り替えたりする。
【0059】
筐体134は、箱状を呈し、内部に、例えば、照射部131、冷却部132、および回路基板133を収納する。筐体134の側面には、複数の排気口134aを設けることができる。また、筐体134には、電力用のコネクタ134b、通信用のコネクタ134c、およびフィルタ134dなどを設けることができる。
【0060】
また、筐体134の、照射部131が設けられる側の端部には、窓134eを設けることができる。窓134eは、照射部131(発光素子131b)から照射された赤外線を透過する。窓134eは、例えば、石英ガラスから形成される。
【0061】
前述した様に、照射モジュール30aは、赤外線を照射する複数の発光素子131bを備えている。そのため、照射モジュール30aは、処理物100に赤外線を照射することができる。すなわち、赤外線を照射する複数の発光素子131bを有する照射モジュール30aを用いても、玄そば、そばのむき身、及び、そば粉における減菌を行うことができる。
【0062】
ただし、ランプヒータは、発光素子131bに比べて、より広い波長領域の赤外線を照射することができる。また、ランプヒータは、発光素子131bに比べて、より放射強度の高い赤外線を照射することができる。また、ランプヒータは、赤外線とともに熱を照射することができる。
そのため、ランプヒータを用いれば、発光素子131bを用いる場合に比べて、より高い減菌効果を得ることができる。また、ランプヒータを用いれば、発光素子131bを用いる場合に比べて、処理装置1の製造コストの低減を図ることができる。
【0063】
次に、
図1に戻って、収容部40、およびコントローラ50について説明する。
収容部40は、処理済みの処理物100aを収容する。収容部40は、例えば、移動部20の排出側の端部の近傍に設けられたコンテナなどとすることができる。また、収容部40には、移動部20からの処理物100aの排出を促進させるためのシュートや振動装置などを設けることもできる。
【0064】
コントローラ50は、処理装置1に設けられた各要素の動作を制御する。コントローラ50は、例えば、CPU(Central Processing Unit)などの演算部と、半導体メモリなどの記憶部を有する。コントローラ50は、例えば、コンピュータである。記憶部には、例えば、処理装置1に設けられた各要素の動作を制御する制御プログラムを格納することができる。
【0065】
例えば、センサ23により、照射モジュール30(30a)の照射領域に処理物100が搬入されたことが検出された場合には、コントローラ50は、照射モジュール30(30a)を制御して、照射モジュール30(30a)に赤外線を照射させる。
【0066】
例えば、コントローラ50は、照射モジュール30(30a)、および移動部20を制御して、処理物100に照射される赤外線の積算量を制御する。例えば、コントローラ50は、移動部20における移動速度を制御して、赤外線が処理物100に照射される時間を5分~120分の範囲で変化させる。なお、赤外線の適切な積算量は、実験やシミュレーションを行うことで求めることができる。
【0067】
図10は、他の実施形態に係る処理装置1aを例示するための模式断面図である。
図1に例示をした処理装置1は、搬送される処理物100に対して赤外線を照射する。これに対して、
図10に例示をした処理装置1は、静止状態にある処理物100に対して赤外線を照射する。
【0068】
図10に示すように、処理装置1aは、例えば、載置部60、照射モジュール30b、筐体70、およびコントローラ50aを有する。
載置部60は、筐体70の内部に着脱自在に設けられている。載置部60の載置面60aには、処理物100が載置される。載置部60は、例えば、トレーなどとすることができる。載置部60は、例えば、赤外線を透過可能な材料から形成することができる。赤外線が載置部60を透過することができれば、より多くの方向から処理物100に赤外線を照射することができる。そのため、減菌効果の向上と、減菌効率の向上とを図ることができる。
【0069】
照射モジュール30bは、例えば、赤外線を照射するランプヒータ、または赤外線を照射する発光素子131bとすることができる。なお、
図10に例示をした照射モジュール30bは、ランプヒータである。ランプヒータは、例えば、カーボンランプヒータ32a、アロイランプヒータ32b、およびハロゲンランプヒータ32cなどである。照射モジュール30bは、例えば、筐体70の内壁に設けることができる。
【0070】
筐体70は、箱状を呈し、一方の側面に開口70aを有する。また、開口70aを開閉可能な扉70bを設けることができる。扉70bを有する筐体70とすれば、照射モジュール30bにより赤外線の照射を行う領域を密閉することができる。
また、筐体70の内壁は、赤外線に対する反射率が高い材料を含むことができる。例えば、筐体70の内壁は、アルミニウムなどの金属を含むことができる。この様にすれば、筐体70の内壁により反射された赤外線を処理物100に照射することができる。そのため、減菌効果の向上と、減菌効率の向上とを図ることができる。
【0071】
コントローラ50aは、処理装置1aに設けられた各要素の動作を制御する。コントローラ50aは、例えば、CPUなどの演算部と、半導体メモリなどの記憶部を有する。コントローラ50aは、例えば、コンピュータである。記憶部には、例えば、処理装置1aに設けられた各要素の動作を制御する制御プログラムを格納することができる。
【0072】
例えば、コントローラ50aは、照射モジュール30bを制御して、処理物100に照射される赤外線の積算量を制御する。例えば、コントローラ50aは、照射モジュール30bから照射される赤外線の照射時間を制御して、処理物100に照射される赤外線の積算量を制御する。
【0073】
本実施の形態に係る処理装置1aとしても、減菌効果の向上を図ることができる。例えば、処理物100の量が多い場合には、処理装置1とすることで作業効率を向上させることができる。例えば、処理物100の量が比較的少ない場合には、処理装置1aとすることで、作業スペースを小さくすることができる。
【0074】
(そばの処理方法)
次に、本実施の形態に係る、そばの処理方法について説明する。
本実施の形態に係る、そばの処理方法は、例えば、前述した処理装置1、1aを用いて実施することができる。
本実施の形態に係る、そばの処理方法は、処理物100(玄そば、そばのむき身、及び、そば粉の少なくともいずれか)に、赤外線を照射して減菌を行う。
なお、処理の内容は、処理装置1、1aにおいて説明したものと同様とすることができるので、詳細な説明は省略する。
【0075】
以上、本発明のいくつかの実施形態を例示したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更などを行うことができる。これら実施形態やその変形例は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。また、前述の各実施形態は、相互に組み合わせて実施することができる。
【符号の説明】
【0076】
1 処理装置、1a 処理装置、30 照射モジュール、30a 照射モジュール、30b 照射モジュール、32 照射部、32a カーボンランプヒータ、32b アロイランプヒータ、32c ハロゲンランプヒータ、100 処理物、100a 処理物、131 照射部、131b 発光素子