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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023014640
(43)【公開日】2023-01-31
(54)【発明の名称】建材
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/94 20060101AFI20230124BHJP
   C09D 201/00 20060101ALI20230124BHJP
   C09D 161/28 20060101ALI20230124BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20230124BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20230124BHJP
   C09D 161/20 20060101ALI20230124BHJP
   C09K 21/04 20060101ALI20230124BHJP
   C09K 21/12 20060101ALI20230124BHJP
   C09K 21/02 20060101ALI20230124BHJP
   B27K 3/52 20060101ALI20230124BHJP
【FI】
E04B1/94 P
C09D201/00
C09D161/28
C09D7/63
C09D7/61
C09D161/20
C09K21/04
C09K21/12
C09K21/02
B27K3/52 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021118703
(22)【出願日】2021-07-19
(71)【出願人】
【識別番号】501352619
【氏名又は名称】三商株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】服部 絵美
(72)【発明者】
【氏名】加藤 圭一
(72)【発明者】
【氏名】広田 正之
(72)【発明者】
【氏名】森田 武
(72)【発明者】
【氏名】水落 秀木
(72)【発明者】
【氏名】浅井 信雄
【テーマコード(参考)】
2B230
2E001
4H028
4J038
【Fターム(参考)】
2B230AA07
2B230BA03
2B230BA18
2B230CA01
2B230CA14
2B230CA19
2B230CA30
2B230CB25
2B230DA02
2B230EB03
2E001DE01
2E001DE04
2E001GA06
2E001GA28
2E001HA33
2E001HC01
2E001HD11
2E001HF12
2E001JD01
4H028AA02
4H028AA04
4H028AA06
4H028AA07
4H028AA35
4H028BA04
4J038DA132
4J038DA161
4J038HA486
4J038HA526
4J038JB01
4J038JC22
4J038JC37
4J038KA07
4J038KA19
4J038MA08
4J038MA10
4J038NA15
4J038PB05
4J038PC06
4J038PC08
(57)【要約】
【課題】難燃性を有するとともに、被覆層が過度に発泡することを抑制できる建材を提供すること。
【解決手段】建材は、基材と、前記基材の表面に形成された被覆層とを備える。前記被覆層層は、加熱により発泡する塗膜と、少なくとも一部が前記塗膜に埋め込まれている、ガラス繊維クロス又はガラス繊維不織布から成るガラス繊維部とを備える。前記塗膜は、例えば、(A)水溶性メラミン樹脂と、(B)縮重合リン酸エステルと、(C)リン酸、ホウ酸、アンモニウム塩、及びアンモニアのうちの1以上と、を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、
前記基材の表面に形成された被覆層と、
を備え、
前記被覆層は、
加熱により発泡する塗膜と、
少なくとも一部が前記塗膜に埋め込まれている、ガラス繊維クロス又はガラス繊維不織布から成るガラス繊維部と、
を備える、
建材。
【請求項2】
請求項1に記載の建材であって、
前記塗膜は、(A)水溶性メラミン樹脂と、(B)縮重合リン酸エステルと、(C)リン酸、ホウ酸、アンモニウム塩、及びアンモニアのうちの1以上と、を含む、
建材。
【請求項3】
請求項2に記載の建材であって、
前記塗膜は、(D)分子構造中にアミノ基を有する化合物とホルムアルデヒドとの重縮合物、(E)カオリン、及び(F)ガラス繊維のうちの1以上をさらに含む、
建材。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の建材であって、
前記塗膜の単位面積当たりの質量は250g/m以上550g/m以下であり、
前記塗膜のうち、前記ガラス繊維部に含侵しているか、前記ガラス繊維部よりも表面側にある部分の単位面積当たりの質量は75g/m以上275g/m以下である、
建材。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の建材であって、
前記被覆層は、前記基材の側に、前記ガラス繊維部を含まない部分を備える、
建材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は建材に関する。
【背景技術】
【0002】
木材を難燃化する方法として、難燃剤を木材に浸透させる方法がある。難燃剤を木材に浸透させる方法は、特許文献1に開示されている。プラスチックを難燃化する方法として、プラスチックの組成を変更する方法がある。プラスチックの組成を変更する方法は特許文献2に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-137805号公報
【特許文献2】特開2000-273298号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
難燃剤を木材に浸透させるためには特殊な装置が必要である。また、難燃剤を木材に浸透させるためには、多くの時間とエネルギーとを要する。プラスチックの組成を変更する方法の場合、プラスチックの組成が限定される。
【0005】
塗料組成物を、木材やプラスチック等の可燃性基材に塗布し、被覆層を形成することで、可燃性基材を難燃化することが考えられる。被覆層は加熱されると発泡し、断熱層となる。
建材を、例えば天井面等に使用した場合、被覆層が過度に発泡すると、断熱層が脱落し、難燃性が低下してしまうおそれがある。本開示の1つの局面では、難燃性を有するとともに、被覆層が過度に発泡することを抑制できる建材を提供することが好ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の1つの局面は、基材と、前記基材の表面に形成された被覆層と、を備える建材である。被覆層層は、加熱により発泡する塗膜と、少なくとも一部が前記塗膜に埋め込まれている、ガラス繊維クロス又はガラス繊維不織布から成るガラス繊維部とを備える。
【0007】
本開示の1つの局面である建材は、ガラス繊維部を備えることにより、被覆層が過度に発泡することを抑制できる効果(以下では発泡抑制効果とする)を奏する。また、被覆層は加熱により発泡する塗膜を備えるので、本開示の1つの局面である建材は、難燃性が高い。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】建材の構成を表す断面図である。
図2】建材の構成を表す断面図である。
図3】建材の製造方法を表す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示の例示的な実施形態について図面を参照しながら説明する。
1.建材の構成
(1)基材
建材は基材を備える。基材として、例えば、可燃性の基材が挙げられる。可燃性の基材として、例えば、木材等が挙げられる。木材として、例えば、厚さ12mm、幅100mm、長さ2000mmのスギ製材等が挙げられる。
【0010】
基材は木材に限定されず、任意に選択できる。基材として、例えば、プラスチック、木質建材、紙、布等が挙げられる。プラスチックとして、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂、塩化ビニル樹脂、発泡ポリスチレン樹脂等が挙げられる。木質建材として、例えば、製材、集成材、合板、単板積層材(LVL)、直交集成板(CLT)、中密度繊維板(MDF)等が挙げられる。基材の形態は特に限定されない。基材の形態として、例えば、柱状、板状、シート状、布状等が挙げられる。
【0011】
基材として、例えば、木質の構造部材が挙げられる。木質の構造部材として、例えば、柱、梁、壁、床等が挙げられる。
柱として、例えば、角形柱がある。長手方向に直交する断面での角形柱の断面形状は、例えば、正方形である。正方形の一辺の長さは、例えば、90mm以上1100mm以下である。
【0012】
梁として、例えば、角形梁がある。長手方向に直交する断面での角形梁の断面形状は、例えば、長方形である。長方形の一辺の長さは、例えば、90mm以上800mm以下である。前記一辺に隣接する辺の長さは、例えば、90mm以上1200mm以下である。角形梁の長さは特に限定されないが、例えば、3000mm以上10000mm以下である。
【0013】
壁の形状は、例えば、長方形である。長方形の短辺の長さは、例えば、3000mm以下である。長方形の短辺の長さは、例えば、500mm以上である。長方形の長辺の長さは、例えば、12000mm以下である。長方形の長辺の長さは、例えば、2000mm以上である。
【0014】
基材として、例えば、木材の表面に板状又はシート状の部材を取り付けたものが挙げられる。板状又はシート状の部材として、例えば、石膏ボード、耐火シート、化粧材等が挙げられる。
(2)被覆層の構成
建材は被覆層を備える。被覆層は基材の表面に形成されている。被覆層は、塗膜と、ガラス繊維部と、を備える。塗膜は、加熱により発泡する。ガラス繊維部は、ガラス繊維クロス又はガラス繊維不織布から成る。ガラス繊維部の少なくとも一部は、塗膜に埋め込まれている。
【0015】
例えば、図1に示すように、建材1は、基材3と、被覆層5とを備える。被覆層5は基材3の表面に形成されている。被覆層5は、塗膜7と、ガラス繊維部9とを備える。図1に示す形態では、ガラス繊維部9の全部が、塗膜7に埋め込まれている。塗膜7はガラス繊維部9の内部に含浸している。
【0016】
厚さ方向において、ガラス繊維部9は、被覆層5の厚み方向における中央5Aよりも、被覆層5の表面5Bの側にあることが好ましい。ガラス繊維部9が、中央5Aよりも表面5Bの側にある場合、発泡抑制効果が一層高い。
【0017】
被覆層5は、基材3の側に、ガラス繊維部9を含まない部分(以下では非含有部5Cとする)を有することが好ましい。非含有部5Cは、例えば、塗膜7のみから成る。被覆層5が非含有部5Cを有する場合、発泡抑制効果が一層高い。
【0018】
例えば、図2に示すように、建材1は、基材3と、被覆層5とを備える。被覆層5は基材3の表面に形成されている。被覆層5は、塗膜7と、ガラス繊維部9とを備える。図2に示す形態では、ガラス繊維部9の表面9Aが、被覆層5の表面5Bと一致している。塗膜7はガラス繊維部9の内部に含浸している。被覆層5は、基材3の側に、非含有部5Cを有することが好ましい。被覆層5が非含有部5Cを有する場合、発泡抑制効果が一層高い。
【0019】
ガラス繊維クロス又はガラス繊維不織布を構成するガラスとして、例えば、アルミナ硼けい酸ガラス、ソーダ石灰ガラス、石英ガラス等が挙げられる。アルミナ硼けい酸ガラスは熱膨張率が低く、熱衝撃に強いため、ガラス繊維クロス又はガラス繊維不織布を構成するガラスとして好ましい。ガラス繊維クロス又はガラス繊維不織布を構成するガラスのうち、97質量%以上がアルミナ硼けい酸ガラスであることが好ましい。
【0020】
ガラス繊維クロス又はガラス繊維不織布に含まれる集束剤として、例えば、でんぷん、アクリル樹脂、PVA、EVA等が挙げられる。ガラス繊維クロス又はガラス繊維不織布における集束剤の含有量は、3質量%以下であることが好ましい。
【0021】
ガラス繊維クロスにおける縦方向での織り密度は、30本/25mm以上、70本/25mm以下であることが好ましく、53本/25mmであることがさらに好ましい。ガラス繊維クロスにおける横方向での織り密度は、30本/25mm以上、70本/25mm以下であることが好ましく、48本/25mmであることがさらに好ましい。
【0022】
縦方向又は横方向における織り密度が70本/25mm以下である場合、ガラス繊維クロスへの塗料組成物の染み込みが一層良好になる。縦方向又は横方向における織り密度が30本/25mm以上である場合、発泡抑制効果が一層高い。
【0023】
ガラス繊維クロスの織り方として、平織が好ましい。ガラス繊維クロス又はガラス繊維不織布の単位面積当たりの質量は、70g/m以上150g/m以下が好ましく、92g/mが一層好ましい。
【0024】
ガラス繊維クロス又はガラス繊維不織布の厚さは、0.05mm以上0.20mm以下が好ましく、0.09mm以上0.1mm以下がさらに好ましい。
ガラス繊維クロス又はガラス繊維不織布の縦方向での引張強さは、300N/25mm以上1000N/25mm以下が好ましく、510N/25mmがさらに好ましい。ガラス繊維クロス又はガラス繊維不織布の横方向での引張強さは、300N/25mm以上1000N/25mm以下が好ましく、451N/25mmがさらに好ましい。
【0025】
塗膜7の単位面積当たりの質量は250g/m以上550g/m以下であり、塗膜7のうち、ガラス繊維部9に含侵しているか、ガラス繊維部9よりも表面5Bの側にある部分の単位面積当たりの質量は75g/m以上275g/m以下であることが好ましい。この場合、発泡抑制効果が一層高い。
【0026】
(3)塗料組成物の構成
塗膜は、塗料組成物を塗布することにより形成される。塗料組成物として、例えば、(a)水溶性メラミン樹脂と、(b)縮重合リン酸エステルと、(c)リン酸、ホウ酸、アンモニウム塩、及びアンモニア水のうちの1以上と、を含有する塗料組成物(以下では特定塗料組成物とする)が挙げられる。特定塗料組成物は、(d)分子構造中にアミノ基を有する化合物、(e)カオリン、及び(f)ガラス繊維のうちの1以上をさらに含んでいてもよい。
【0027】
なお、塗膜を形成するために使用される塗料組成物は、加熱により発泡する塗膜を形成できるものであれば、他の塗料組成物であってもよい。他の塗料組成物を塗布して形成された塗膜は、透明性を有することが好ましい。
【0028】
(3-1)(a)水溶性メラミン樹脂
特定塗料組成物は水溶性メラミン樹脂を含む。水溶性メラミン樹脂は、例えば、アルデヒド類とメラミンとをアルカリ触媒存在下で反応させることにより製造することができる。水溶性メラミン樹脂の製造方法は、例えば、特許第257115号公報、特開昭51-114492号公報、特開2006-124457号公報等に開示されている。
【0029】
水溶性メラミン樹脂として、例えば、メチロールメラミン樹脂、アルコキシ化メチロールメラミン樹脂等が挙げられる。メチロールメラミン樹脂として、例えば、モノメチロールメラミン樹脂、ジメチロールメラミン樹脂、トリメチロールメラミン樹脂等が挙げられる。アルコキシ化メチロールメラミン樹脂として、例えば、メチロールメラミン樹脂、メチル化メチロールメラミン樹脂、メトキシメチロール化メラミン樹脂、ブチル化メチロールメラミン樹脂等が挙げられる。
【0030】
アルコキシ化メチロールメラミン樹脂は完全にアルコキシ化されていてもよいし、メチロール基が残存していてもよいし、イミノ基が残存していてもよい。また、特定塗料組成物は、水溶性メラミン樹脂とフェノール樹脂等との共重合体を含んでいてもよい。水溶性メラミン樹脂のうち、メチロールメラミン樹脂が一層好ましい。
【0031】
特定塗料組成物がメチロールメラミン樹脂を含む場合、基材の難燃性と、塗膜の透明性とが一層顕著になる。なお、本明細書において透明とは、完全な透明には限定されず、例えば、半透明であってもよい。
【0032】
(3-2)(b)縮重合リン酸エステル
特定塗料組成物は縮重合リン酸エステルを含む。縮重合リン酸エステルは、ポリリン酸とアルコールとの縮合反応により得られるエステルである。アルコールとして、例えば、脂肪族アルコール、グリコール、多価アルコール、グリセリン等が挙げられる。
【0033】
脂肪族アルコールとして、例えば、メタノール、エタノール、ブタノール、プロパノール等が挙げられる。グリコールとして、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール等が挙げられる。多価アルコールとして、例えば、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール等が挙げられる。
【0034】
縮重合リン酸エステルとして、多価アルコールを用いて得られた縮重合リン酸エステルが好ましい。特定塗料組成物が、多価アルコールを用いて得られた縮重合リン酸エステルを含む場合、基材の難燃性と、塗膜の透明性とが一層顕著になる。縮重合リン酸エステルとして、ペンタエリスリトールを用いて得られた縮重合リン酸エステルが一層好ましい。特定塗料組成物が、ペンタエリスリトールを用いて得られた縮重合リン酸エステルを含む場合、基材の難燃性と、塗膜の透明性とが一層顕著になる。
【0035】
水溶性メラミン樹脂100質量部に対する縮重合リン酸エステルの配合割合は、好ましくは120質量部以上350質量部以下であり、より好ましくは130質量部以上200質量部以下であり、最も好ましくは170質量部である。
【0036】
水溶性メラミン樹脂100質量部に対する縮重合リン酸エステルの配合割合が120質量部以上350質量部以下である場合、基材の難燃性と、塗膜の透明性とが一層顕著になる。水溶性メラミン樹脂に過剰の縮重合リン酸エステルを混合した場合、基材の難燃性と、塗膜の透明性とが一層顕著になる。
【0037】
(3-3)(c)成分
特定塗料組成物は(c)成分を含む。(c)成分は、リン酸、ホウ酸、アンモニウム塩、及びアンモニア水のうちの1以上を含む。(c)成分は、例えば、リン酸とホウ酸との両方を含む。アンモニウム塩として、例えば、リン酸アンモニウム塩、ホウ酸アンモニウム塩等が挙げられる。
【0038】
アンモニウム塩及びアンモニア水から、アンモニアが徐々に揮発する。揮発したアンモニアは水溶性メラミン樹脂の硬化を遅らせる。
水溶性メラミン樹脂100質量部に対する(c)成分の配合割合は、好ましくは15質量部以上90質量部以下であり、より好ましくは20質量部以上50質量部以下であり、最も好ましくは31質量部である。
【0039】
水溶性メラミン樹脂100質量部に対する(c)成分の配合割合が15質量部以上90質量部以下である場合、基材の難燃性と、塗膜の透明性とが一層顕著になる。(c)成分が水溶性メラミン樹脂に対し過剰のリン酸又はホウ酸を含む場合、水溶性メラミン樹脂の硬化が促進される。
【0040】
また、(c)成分が水溶性メラミン樹脂に対し過剰のリン酸又はホウ酸を含む場合、余剰のリン酸又はホウ酸が基材の水酸基と化学結合し、塗膜と基材との密着性が向上する。基材が木材の場合、リン酸又はホウ酸はセルロースの水酸基と化学結合する。また、余剰のリン酸又はホウ酸は、火災時の燃焼熱により分解した水溶性メラミン樹脂と化学結合することで、基材の難燃性を一層高める。余剰のリン酸又はホウ酸は、水溶性メラミン樹脂の熱分解により生ずる水酸基と化学結合すると推測される。
【0041】
(3-4)(d)分子構造中にアミノ基を有する化合物
特定塗料組成物は、(d)分子構造中にアミノ基を有する化合物(以下では(d)成分ともいう)を含む。特定塗料組成物が(d)成分を含むことにより、常温における特定塗料組成物の硬化が速くなる。常温における特定塗料組成物の硬化が速くなると、垂直面に特定塗料組成物を塗付した場合の垂れが少なくなる。
【0042】
(d)成分として、例えば、尿素、メラミン、脂肪族アミン、芳香族アミン、複素環式アミンが挙げられる。
脂肪族アミンとして、例えば、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、エチレンジアミン、トリエタノールアミン、N,N-ジイソプロピルエチルアミン、テトラメチルエチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、スペルミジン、スペルミン、アマンタジン等が挙げられる。
【0043】
芳香族アミンとして、例えば、アニリン、フェネチルアミン、トルイジン、カテコールアミン、1,8-ビス(ジメチルアミノ)ナフタレン等が挙げられる。
複素環式アミンとして、例えば、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、キヌクリジン、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、ピロール、ピラゾール、イミダゾール、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、オキサゾール、チアゾール、4-ジメチルアミノピリジン等が挙げられる。
【0044】
(d)成分として、二以上のアミノ基を有するもの、又は尿素が好ましい。二以上のアミノ基を有する(d)成分として、例えば、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等が挙げられる。
【0045】
特定塗料組成物が(d)成分として、二以上のアミノ基を有するもの、又は尿素を含む場合、常温における特定塗料組成物の硬化が一層速くなる。
常温における特定塗料組成物の硬化が一層速くなる理由は、水溶性メラミン樹脂に残留するホルムアルデヒドと(d)成分との重縮合物が特定塗料組成物の流動性を低下させるためであると推測される。なお、(d)成分とホルムアルデヒドとの重縮合物は、後述する(D)成分である。
【0046】
水溶性メラミン樹脂100質量部に対する(d)成分の配合割合は、好ましくは0.05質量部以上5質量部以下であり、より好ましくは0.5質量部以上5質量部以下であり、特に好ましくは2.5質量部である。水溶性メラミン樹脂100質量部に対する(d)成分の配合割合が0.05質量部以上5質量部以下である場合、常温における特定塗料組成物の硬化が一層速くなる。
【0047】
(3-5)(e)カオリン
特定塗料組成物は、例えば、(e)カオリンをさらに含む。カオリンとして、ハロイサイト(Al2Si2O5(OH) 4・2H2O)が好ましい。ハロイサイトはチューブ状の結晶構造を有する。ハロイサイトは、外側にシロキサン(-Si-O-Si-)を有し、内側にアルミノール(-Al-O-Al-)を有している。そのため、ハロイサイトの表面は酸性を呈する。
【0048】
特定塗料組成物がカオリンを含む場合、特定塗料組成物の硬化が速くなる。特定塗料組成物がハロイサイトを含む場合、特定塗料組成物の硬化が一層速くなる。
カオリンの粒子径は1μm以上10μm以下であることが好ましい。カオリンの粒子径が1μm以上10μm以下である場合、特定塗料組成物の硬化が一層早くなる。
【0049】
水溶性メラミン樹脂100質量部に対するカオリンの配合割合は、好ましくは20質量部以上250質量部以下であり、より好ましくは50質量部以上200質量部以下であり、最も好ましくは150質量部以上180質量部以下である。水溶性メラミン樹脂100質量部に対するカオリンの配合割合が250質量部以下である場合、塗膜が白濁することを抑制できる。
【0050】
(3-6)(f)ガラス繊維
特定塗料組成物は、例えば、(f)ガラス繊維をさらに含む。ガラス繊維の形態は、例えば、パウダー状である。特定塗料組成物がガラス繊維を含む場合、加熱発泡後の断熱層の形状保持性が向上する。ガラス繊維の直径は、5μm以上20μm以下であることが好ましく、10μmであることがさらに好ましい。ガラス繊維の長さは、10μm以上300μm以下であることが好ましく、30μm以上50μm以下であることがさらに好ましい。ガラス繊維の長さをガラス繊維の直径で除した値を、ガラス繊維のアスペクト比とする。ガラス繊維のアスペクト比は、1.5以上5.5以下であることが好ましい。
【0051】
ガラス繊維は、パウダー又はミルドと呼ばれることがある。ガラス繊維として、表面処理されていないものが好ましい。ガラス繊維の市販品として、ミルドファイバー(セントラルグラスファイバー(株))、ミルドファイバー(旭ファイバーグラス(株))、PFカットファイバー(日東紡績(株))、ミルドファイバ(日本電気硝子(株))等が挙げられる。
【0052】
(3-7)他の成分
特定塗料組成物は、例えば、難燃性、塗膜の透明性、及び塗膜の硬化の速さを著しく損なわない範囲で、通常の塗料に使用される添加剤、顔料等を含むことができる。添加剤として、例えば、増粘剤、pH調整剤、分散剤、湿潤剤、防腐剤、染料等、消泡剤、顔料等が挙げられる。
【0053】
増粘剤として、例えば、ポリビニルアルコール、ウレタン変性ポリエーテル、カルボキシメチルセルロース等が挙げられる。pH調整剤として、例えば、アンモニア水、アミン等が挙げられる。顔料として、例えば、無機顔料、有機顔料、体質顔料等が挙げられる。無機顔料として、例えば、カーボンブラック、酸化チタン、酸化鉄等が挙げられる。有機顔料として、例えば、キナクリドン、アゾ顔料等が挙げられる。体質含量として、例えば、シリカ、硫酸バリウム、タルク、マイカ等が挙げられる。
【0054】
特定塗料組成物は、例えば、酸を含む。酸は、水溶性メラミン樹脂の硬化を促進する。酸として、例えば、スルホン酸、カルボン酸等が挙げられる。スルホン酸として、例えば、p-トルエンスルホン酸等が挙げられる。カルボン酸として、例えば、酢酸、クエン酸、マレイン酸、アクリル酸等が挙げられる。
【0055】
特定塗料組成物は、例えば、塗膜の透明性を著しく損なわない範囲で、発泡性耐火被覆の成分を含む。発泡性耐火被覆の成分として、例えば、ポリリン酸アンモニウム、メラミン、多価アルコール等が挙げられる。多価アルコールとして、例えば、ペンタエリスリトール等が挙げられる。
【0056】
(3-8)特定塗料組成物の形態
特定塗料組成物の形態は、例えば、第1剤と第2剤とにより構成される2液の形態である。第1剤は水溶性メラミン樹脂を含む。第2剤は、縮重合リン酸エステルと、(c)成分とを含む。第1剤と第2剤とは、使用前に混合される。特定塗料組成物の形態が2液の形態である場合、特定塗料組成物の貯蔵安定性が高い。
【0057】
(d)成分は、第2剤に含まれ、第1剤には含まれないことが好ましい。(d)成分が第2剤に含まれ、第1剤には含まれない場合、特定塗料組成物の貯蔵安定性が一層高い。
(4)塗膜
塗膜は、例えば、(A)水溶性メラミン樹脂と、(B)縮重合リン酸エステルと、(C)リン酸、ホウ酸、アンモニウム塩、及びアンモニアのうちの1以上と、を含む。塗膜は、例えば、(D)分子構造中にアミノ基を有する化合物とホルムアルデヒドとの重縮合物、(E)カオリン、及び(F)ガラス繊維のうちの1以上をさらに含む。
【0058】
(A)水溶性メラミン樹脂は、例えば、特定塗料組成物に含まれる(a)水溶性メラミン樹脂と同様のものである。(B)縮重合リン酸エステルは、例えば、特定塗料組成物に含まれる(b)縮重合リン酸エステルと同様のものである。
【0059】
塗膜において、水溶性メラミン樹脂100質量部に対する縮重合リン酸エステルの配合割合は、好ましくは120質量部以上350質量部以下であり、より好ましくは130質量部以上200質量部以下であり、最も好ましくは170質量部である。
【0060】
塗膜において、水溶性メラミン樹脂100質量部に対する縮重合リン酸エステルの配合割合が120質量部以上350質量部以下である場合、建材の難燃性と、塗膜の透明性とが一層顕著になる。水溶性メラミン樹脂に過剰の縮重合リン酸エステルを混合した場合、建材の難燃性と、塗膜の透明性とが一層顕著になる。
【0061】
(C)成分は、基本的には、特定塗料組成物に含まれる(c)成分と同様のものである。ただし、(C)成分における選択肢の1つは、アンモニア水ではなくアンモニアである。
塗膜において、水溶性メラミン樹脂100質量部に対する(C)成分の配合割合は、好ましくは15質量部以上90質量部以下であり、より好ましくは20質量部以上50質量部以下であり、最も好ましくは31質量部である。
【0062】
塗膜において、水溶性メラミン樹脂100質量部に対する(C)成分の配合割合が15質量部以上90質量部以下である場合、建材の難燃性と、塗膜の透明性とが一層顕著になる。(C)成分が水溶性メラミン樹脂に対し過剰のリン酸又はホウ酸を含む場合、水溶性メラミン樹脂の硬化が促進される。
【0063】
また、(C)成分が水溶性メラミン樹脂に対し過剰のリン酸又はホウ酸を含む場合、余剰のリン酸又はホウ酸が基材の水酸基と化学結合し、塗膜と基材との密着性が向上する。基材が木材の場合、リン酸又はホウ酸はセルロースの水酸基と化学結合する。また、余剰のリン酸又はホウ酸は、火災時の燃焼熱により分解した水溶性メラミン樹脂と化学結合することで、建材の難燃性を一層高める。余剰のリン酸又はホウ酸は、水溶性メラミン樹脂の熱分解により生ずる水酸基と化学結合すると推測される。
【0064】
(D)成分における分子構造中にアミノ基を有する化合物は、例えば、特定塗料組成物に含まれる(d)成分と同様のものである。
塗膜において、水溶性メラミン樹脂100質量部に対する(D)成分の配合割合は、好ましくは0.05質量部以上5質量部以下であり、より好ましくは0.5質量部以上5質量部以下である。水溶性メラミン樹脂100質量部に対する(D)成分の配合割合が0.05質量部以上5質量部以下である場合、建材を製造するとき、常温における塗膜の硬化が一層速くなる。
【0065】
塗膜は、例えば、(E)カオリンを含む。(E)カオリンは、例えば、特定塗料組成物に含まれる(e)成分と同様のものである。
塗膜において、水溶性メラミン樹脂100質量部に対するカオリンの配合割合は、好ましくは20質量部以上250質量部以下であり、より好ましくは50質量部以上200質量部以下であり、最も好ましくは150質量部以上180質量部以下である。水溶性メラミン樹脂100質量部に対するカオリンの配合割合が250質量部以下である場合、塗膜が白濁することを抑制できる。
【0066】
塗膜は、例えば、(F)ガラス繊維を含む。(F)ガラス繊維は、例えば、特定塗料組成物に含まれる(f)成分と同様のものである。塗膜は、例えば、特定塗料組成物における「他の成分」を含んでいてもよい。
【0067】
なお、塗膜は、加熱により発泡する作用を奏する限り、特定塗料組成物以外の塗料組成物を塗布して形成された塗膜であってもよい。塗膜は、透明性を有することが好ましい。
2.建材の製造方法
建材は、例えば、図3に示す方法で製造できる。図3のS1に示すように、基材3の表面に塗料組成物を塗布し、第1塗膜11を形成する。塗料組成物は、例えば、特定塗料組成物である。次に、第1塗膜11が硬化し、流動性を失うまで放置する。放置時間は、例えば、数時間~数週間である。次に、S2に示すように、第1塗膜11の上にガラス繊維部9を載せる。
【0068】
次に、S3に示すように、ガラス繊維部9の上から塗料組成物を塗布し、第2塗膜13を形成する。S3で塗布する塗料組成物は、例えば、S1で塗布した塗料組成物と同じ種類の塗料組成物である。S3で塗布する塗料組成物の少なくとも一部は、ガラス繊維部9に染み込む。
【0069】
次に、第2塗膜13を硬化させる。以上の工程により、建材1が完成する。第1塗膜11と第2塗膜13とが、被覆層5を構成する塗膜7となる。第1塗膜11は、非含有部5Cとなる。S3で塗布する塗料組成物が十分多い場合、図1に示すように、ガラス繊維部9の全部が、塗膜7に埋め込まれている。S3で塗布する塗料組成物が少ない場合、図2に示すように、ガラス繊維部9の表面9Aと、被覆層5の表面5Bとが一致している。第2塗膜13は、塗膜7のうち、ガラス繊維部9に含侵しているか、ガラス繊維部9よりも表面5Bの側にある部分である。
【0070】
3.建材が奏する効果
(3-1)建材1の周囲で火災が発生し、被覆層5が加熱されると、被覆層5に含まれる塗膜7は発泡する。その結果、被覆層5は断熱層を形成する。形成された断熱層は基材3の燃焼を抑制する。被覆層5はガラス繊維部9を含むため、発泡抑制効果を奏する。
【0071】
(3-2)塗膜7は、例えば、特定塗料組成物の塗布により形成された塗膜である。その場合、建材1は、基材3の燃焼を一層抑制できる。
(3-3)塗膜7の単位面積当たりの質量は、例えば、250g/m以上550g/m以下であり、塗膜7のうち、ガラス繊維部9に含侵しているか、ガラス繊維部9よりも表面5Bの側にある部分の単位面積当たりの質量は、例えば、75g/m以上275g/m以下である。その場合、建材1の発泡抑制効果は一層高い。
【0072】
(3-4)被覆層5は、例えば、非含有部5Cを備える。その場合、建材1の発泡抑制効果は一層高い。
4.実施例
(4-1)特定塗料組成物の製造
以下の各成分を混合することで、特定塗料組成物の第1剤と第2剤とを製造した。
<第1剤>
水溶性メラミン樹脂:20質量部
ガラス繊維:50質量部
カオリン:1.5質量部
湿潤剤:0.5質量部
<第2剤>
縮重合リン酸エステル:30質量部
リン酸:5質量部
尿素:0.5質量部
第1剤及び第2剤は、それぞれ、溶媒として水を含んでいた。第1剤及び第2剤のそれぞれにおいて、全質量に対する不揮発分の質量比は76質量%であった。第1剤に含まれるガラス繊維の直径は10μmであり、繊維長は30~50μmであった。
【0073】
(4-2)建材1の製造
(i)実施例1
基材3として、矩形の板状の集成材を用意した。基材3の寸法は、縦99mm、横99mm、厚さ30mmであった。図3のS1に示すように、基材3の表面に、前記(4-1)で製造した特定塗料組成物を塗布し、第1塗膜11を形成した。特定塗料組成物は、100質量部の第1剤と、100質量部の第2剤とを混合したものであった。
【0074】
次に、第1塗膜11が硬化し、流動性を失うまで16時間放置した。第1塗膜11の単位面積当たりの質量は183g/mであった。第1塗膜11の単位面積当たりの質量は、不揮発成分の単位面積当たりの質量である。
【0075】
次に、図3のS2に示すように、第1塗膜11の上にガラス繊維クロスから成るガラス繊維部9を載せた。ガラス繊維クロスを構成するガラスのうち、97質量%以上はアルミナ硼けい酸ガラスであった。ガラス繊維クロスに含まれる集束剤はアクリル樹脂であった。ガラス繊維クロスにおける集束剤の含有量は13質量%であった。ガラス繊維クロスにおけるガラスの含有量は87質量%であった。
【0076】
ガラス繊維クロスにおける縦方向での織り密度は、53本/25mmであった。ガラス繊維クロスにおける横方向での織り密度は、48本/25mmであった。ガラス繊維クロスの織り方は平織であった。ガラス繊維クロスの単位面積当たりの質量は、150g/mであった。ガラス繊維クロスの厚さは、0.1mmであった。
【0077】
次に、図3のS3に示すように、ガラス繊維部9の上から特定塗料組成物を塗布し、第2塗膜13を形成した。次に、第2塗膜13を硬化させた。第2塗膜13の単位面積当たりの質量は197g/mであった。第2塗膜13の単位面積当たりの質量は、不揮発成分の単位面積当たりの質量である。
【0078】
以上の工程により、実施例1の建材1が完成した。第1塗膜11と第2塗膜13とが、被覆層5を構成する塗膜7となった。第1塗膜11は、非含有部5Cとなった。図1に示すように、ガラス繊維部9の全部が、塗膜7に埋め込まれた。第2塗膜13は、塗膜7のうち、ガラス繊維部9に含侵しているか、ガラス繊維部9よりも表面5Bの側にある部分となった。
【0079】
(ii)実施例2~7
基本的には実施例1の場合と同様にして、実施例2~7の建材1を製造した。ただし、第1塗膜11の単位面積当たりの質量、及び、第2塗膜13の単位面積当たりの質量は、表1に示すとおりとした。
【0080】
【表1】
【0081】
また、実施例4では、ガラス繊維クロスから成るガラス繊維部9の代わりに、ガラス繊維不織布から成るガラス繊維部9を用いた。ガラス繊維不織布を構成するガラスのうち、97質量%以上はアルミナ硼けい酸ガラスであった。ガラス繊維不織布に含まれる集束剤はアクリル樹脂であった。ガラス繊維不織布における集束剤の含有量は13質量%であった。ガラス繊維不織布におけるガラスの含有量は87質量%であった。ガラス繊維不織布の単位面積当たりの質量は、150g/mであった。ガラス繊維不織布の厚さは、0.1mmであった。
【0082】
実施例5、6では、S3で塗布する特定塗料組成物が少なかったため、図2に示すように、ガラス繊維部9の表面9Aと、被覆層5の表面5Bとが一致していた。
(iii)比較例1、2
基本的には実施例1の場合と同様にして、比較例1、2の建材1を製造した。ただし、比較例1では、第1塗膜11を形成し、硬化させた後、ガラス繊維部9を載せることなく、第2塗膜13を形成した。よって、比較例1では、被覆層5はガラス繊維部9を備えない。
【0083】
比較例2では、比較例1と同様に第1塗膜11及び第2塗膜13を形成した後、第2塗膜13の上にガラス繊維クロスから成るガラス繊維部9を載せた。よって、比較例2では、ガラス繊維部9は塗膜7に埋め込まれていなかった。
【0084】
また、比較例1、2における第1塗膜11の単位面積当たりの質量、及び、第2塗膜13の単位面積当たりの質量は、表1に示すとおりとした。
(4-3)建材1の評価
各実施例及び各比較例の建材1について試験を行った。ISO5660-1に規定されているコーンカロリーメータ法により、試験体に対して50kW/mの輻射強度で10分間加熱した場合の総発熱量及び最大発熱速度を測定した。測定値を以下の評価基準にあてはめて、難燃性を評価した。評価結果を表1に示す。
【0085】
(総発熱量に基づく難燃性の評価基準)
〇:7.2MJ/m以下
△:8MJ/m以下
×:8MJ/m
(最高発熱速度に基づく難燃性の評価基準)
〇:180kW/m以下
△:200kW/m以下
×:200kW/m
また、コーンカロリーメータ法を行うとき、試験体の上方にイグナイタが設置される。被覆層5が発泡したとき、被覆層5がイグナイタに接触するか否かを観察した。観察結果に基づき、発泡抑制効果を以下の基準で評価した。評価結果を表1に示す。なお、被覆層5が過度に発泡すると、被覆層5はイグナイタに接触し易い。
【0086】
(発泡抑制効果の評価基準)
〇:被覆層5はイグナイタに接触しない。
△:被覆層5はイグナイタに接触するが、接触時間は10秒間以内である。
【0087】
×:被覆層5はイグナイタに接触し、接触時間は10秒間を超える。
また、建材1を目視で観察し、被覆層5の透明性を以下の基準で評価した。評価結果を表1に示す。
【0088】
(透明性の評価基準)
〇:被覆層5を通して基材3の木目を視認できる。
△:被覆層5を通して基材3の木目がぼやけて見える。
【0089】
×:基材3の木目は見えない。
5.他の実施形態
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は上述の実施形態に限定されることなく、種々変形して実施することができる。
【0090】
例えば、第2塗膜13の上に、さらに別の塗膜を形成してもよい。
【符号の説明】
【0091】
1…建材、3…基材、5…被覆層、5A…中央、5B…表面、5C…非含有部、7…塗膜、9…ガラス繊維部、9A…表面、11…第1塗膜、13…第2塗膜
図1
図2
図3