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  • 特開-ウィンドウフィルム 図1A
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023146401
(43)【公開日】2023-10-12
(54)【発明の名称】ウィンドウフィルム
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/38 20180101AFI20231004BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20231004BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20231004BHJP
   C09J 133/00 20060101ALI20231004BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20231004BHJP
【FI】
C09J7/38
B32B27/30 A
B32B27/00 M
C09J133/00
C09J11/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022053561
(22)【出願日】2022-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001494
【氏名又は名称】前田・鈴木国際特許弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 洋一
(72)【発明者】
【氏名】藤井 結加
(72)【発明者】
【氏名】山田 将希
【テーマコード(参考)】
4F100
4J004
4J040
【Fターム(参考)】
4F100AK25B
4F100AK42A
4F100AK42D
4F100AK51B
4F100AK52D
4F100AT00A
4F100BA02
4F100BA03
4F100BA07
4F100CA02B
4F100CA07B
4F100CB05B
4F100CC00C
4F100GB07
4F100GB32
4F100JB14B
4F100JK07B
4F100JK12C
4F100JL13
4F100JL14D
4J004AA10
4J004AB01
4J004CB03
4J004CC02
4J004FA08
4J040DF031
4J040JA09
4J040JB09
4J040KA29
4J040LA06
4J040LA10
4J040MA05
4J040NA16
(57)【要約】
【課題】水貼り時に用いる施工液と粘着剤層が接触した後に、粘着剤層に対して圧縮力および/またはせん断力が作用しても、粘着剤層の変形が抑制された粘着剤層を有するウィンドウフィルムを提供すること。
【解決手段】基材と、基材の一方の主面上に配置された粘着剤層と、を有するウィンドウフィルムであって、粘着剤層を構成する粘着剤の23℃における貯蔵弾性率が0.25MPa以上であり、ソーダライムガラス面に対して水貼りしてから168時間後の粘着剤層の粘着力が3N/25mm以上であるウィンドウフィルムである。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、前記基材の一方の主面上に配置された粘着剤層と、を有するウィンドウフィルムであって、
前記粘着剤層を構成する粘着剤の23℃における貯蔵弾性率が0.25MPa以上であり、
ソーダライムガラス面に対して水貼りしてから168時間後の粘着剤層の粘着力が3N/25mm以上であるウィンドウフィルム。
【請求項2】
前記粘着剤層の厚さが1μm以上100μm以下である請求項1に記載のウィンドウフィルム。
【請求項3】
前記粘着剤が紫外線吸収剤を含む請求項1または2に記載のウィンドウフィルム。
【請求項4】
前記基材の他方の主面上に配置されたハードコート層を有する請求項1から3のいずれかに記載のウィンドウフィルム。
【請求項5】
前記粘着剤は、アクリル系粘着剤である請求項1から4のいずれかに記載のウィンドウフィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウィンドウフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
ウィンドウフィルムは、自動車等の移動体の窓、建築物等の窓に飛散防止機能、太陽からの紫外線および赤外線遮蔽機能等を付与するために、当該窓に貼付される粘着フィルムであり、広く利用されている。
【0003】
ウィンドウフィルムの施工方法としては、一般に、いわゆる水貼り法が採用されている。たとえば、特許文献1に開示されているように、水貼り法は、ウィンドウフィルムが貼着されるガラス面に界面活性剤を含む水溶液等の施工液を吹き付けた後、ヘラ等のスキージの押圧により、ウィンドウフィルムとガラス面との間の空気や施工液等を押し出してガラス面にウィンドウフィルムを貼付する方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-229303号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
水貼り法を採用する場合、ガラス面にウィンドウフィルムを貼付する際には、フィルムとガラス面との間に施工液が存在している状態で、フィルムを所定の位置に仮固定してから(位置合わせをしてから)、フィルムの貼付位置を微調整しながら施工する。
【0006】
このとき、ウィンドウフィルムの粘着剤層は施工液と接触する。施工液と接触した粘着剤層は膨潤することがある。スキージ等の押圧によりフィルムとガラス面との間に存在する施工液が除去されても、粘着剤層の膨潤は解消されない。粘着剤層の膨潤は、粘着剤層の凝集力の低下を招くことがある。粘着剤層の凝集力が低下すると、粘着剤層は変形しやすくなる。
【0007】
一方、ウィンドウフィルムの施工では、フィルムを押圧しながら、押圧方向と略垂直な方向に向かってフィルムを移動させる。したがって、フィルムの粘着剤層には、押圧による圧縮力および/またはフィルムの移動によるせん断力が作用する。その結果、施工液との接触により粘着剤層の凝集力が低下していると、ウィンドウフィルムの施工時に、粘着剤層の変形が生じやすくなる。このような粘着剤層の変形が生じると、白濁等の外観上の問題が生じる。
【0008】
また、水貼り法により貼付したウィンドウフィルムであっても、窓が割れた際の破片の飛散を防止するための飛散防止性が要求される。
【0009】
本発明は、このような実状に鑑みてなされ、水貼り時に用いる施工液と粘着剤層が接触した後に、粘着剤層に対して圧縮力および/またはせん断力が作用しても、粘着剤層の変形が抑制された粘着剤層を有するウィンドウフィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の態様は以下の通りである。
[1]基材と、基材の一方の主面上に配置された粘着剤層と、を有するウィンドウフィルムであって、
粘着剤層を構成する粘着剤の23℃における貯蔵弾性率が0.25MPa以上であり、
ソーダライムガラス面に対して水貼りしてから168時間後の粘着剤層の粘着力が3N/25mm以上であるウィンドウフィルムである。
【0011】
[2]粘着剤層の厚さが1μm以上100μm以下である[1]に記載のウィンドウフィルムである。
【0012】
[3]粘着剤が紫外線吸収剤を含む[1]または[2]に記載のウィンドウフィルムである。
【0013】
[4]基材の他方の主面上に配置されたハードコート層を有する[1]から[3]のいずれかに記載のウィンドウフィルムである。
【0014】
[5]粘着剤は、アクリル系粘着剤である[1]から[4]のいずれかに記載のウィンドウフィルムである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、水貼り時に用いる施工液と粘着剤層が接触した後に、粘着剤層に対して圧縮力および/またはせん断力が作用しても、粘着剤層の変形が抑制された粘着剤層を有するウィンドウフィルムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1A図1Aは、本実施形態に係るウィンドウフィルムの一例を示す断面模式図である。
図1B図1Bは、本実施形態に係るウィンドウフィルムの他の例を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を、具体的な実施形態に基づき、詳細に説明する。
【0018】
(1.ウィンドウフィルム)
本実施形態に係るウィンドウフィルム1は、図1Aに示すように、基材10と、粘着剤層11と、を有する。また、本発明の効果が得られる限りにおいて、ウィンドウフィルムは他の構成要素を有していてもよい。すなわち、ウィンドウフィルムは、基材および粘着剤層以外の層を有していてもよい。たとえば、粘着剤層11を被着体に貼付するまで粘着剤層11を保護するために、粘着剤層11の主面11aに剥離シートが配置されていてもよい。
【0019】
ウィンドウフィルム1の使用時には、剥離シートが剥離され、粘着剤層11の露出している主面11aが、被着体(窓)に貼付され、所定の機能を発揮する。
【0020】
上述したように、ウィンドウフィルムは通常水貼り法により施工され、その際に、フィルムの粘着剤層は施工液と接触する。施工液との接触により粘着剤層が膨潤することがあり、この場合、粘着剤層の凝集力が低下することがある。
【0021】
水貼り法による施工では、粘着剤層には、押圧による圧縮力および/またはフィルム貼付位置の微調整に伴うせん断力が作用することになる。粘着剤層の凝集力が低下した場合、上記の圧縮力およびせん断力により、粘着剤層が変形することがある。このような粘着剤の変形が生じると、貼付後に白濁等の糊ズレとして顕在化し外観上問題となる。
【0022】
したがって、水貼り法により施工されるウィンドウフィルムには、粘着剤層が施工液と接触することを前提として、所定の特性を有する必要がある。
【0023】
そこで、本実施形態では、粘着剤層の物性を以下のように制御することにより、施工液との接触後に、粘着剤層に所定の力が作用しても、粘着剤層の変形を抑制している。以下、ウィンドウフィルムの構成要素について詳細に説明する。
【0024】
(1.1.基材)
本実施形態に係る基材は、ウィンドウフィルムの剛性を担う材料であり、粘着剤層を支持する機能を有している。基材の材質は、上記の機能を有していれば特に制限されない。本実施形態では、樹脂材料が好適に用いられる。
【0025】
このような樹脂材料としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ4-メチルペンテン-1、ポリブテン-1等のポリオレフィン系樹脂;ポリウレタン系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;ポリ塩化ビニル系樹脂;ポリエーテルサルフォン系樹脂;ポリエチレンサルファイド系樹脂;スチレン系樹脂;アクリル系樹脂;ポリアミド系樹脂;セルロースアセテート等のセルロース系樹脂等からなるフィルム又はこれらの積層フィルム等が例示される。
【0026】
これらの中でも、機械的強度や経済性に優れたポリオレフィン系樹脂およびポリエステル系樹脂からなるフィルム又はこれらの積層フィルムが好ましく、特にポリエステル系樹脂からなるフィルム又はこれらの積層フィルムが好ましく、中でもポリエチレンテレフタレートフィルム又はポリエチレンテレフタレートを含む積層フィルムが好ましい。
【0027】
上記積層フィルムとしては、1種類または2種類以上の樹脂材料を複数積層したフィルムであることが好ましく、このような積層フィルムの中にはナノスケールの層を少なくとも2層以上有する多層構造を含む波長選択性を有する積層フィルム等も含まれる。ここでいう波長選択性とは、特定の波長領域について吸収または反射する性質をいい、波長選択性を有する積層フィルムは特定の波長領域の透過性を制御することができる積層フィルムであることを意味する。
【0028】
基材上に設けられる層との密着性を向上させる目的で、基材の片面又は両面に、酸化法や凹凸化法等により、表面処理が施されていてもよい。酸化法としては、コロナ放電処理、クロム酸処理(湿式)、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線照射処理等が例示される。また、凹凸化法としては、サンドブラスト法、溶剤処理法等が例示される。
【0029】
基材の厚さは、所定の剛性を示していれば特に制限されず、使用目的に応じて適宜設定すればよい。本実施形態においては、施工時の作業性に好適な機械強度を担保できる観点から、基材の厚さは、5~200μmであることが好ましく、10~100μmであることがより好ましい。そして、主に基材以外の層で後述する光学物性を調整する設計とする観点や薄いウィンドウフィルムを得る観点では15~80μmであることが好ましく、20~60μmであることが特に好ましい。
【0030】
基材は、透明であってもよく、着色されていてもよい。また、基材には、アルミニウム、金、銀、銅、ニッケル、コバルト、クロム、スズ、インジウム等の金属が蒸着されていてもよい。
【0031】
(1.2.粘着剤層)
本実施形態に係る粘着剤層は窓に貼付され、ウィンドウフィルムを窓に固定して、ウィンドウフィルムが有する所定の機能を発揮させる。本実施形態に係る粘着剤層が貼付される窓は、ガラス材料から構成されてもよいし、プラスチック等のガラス代替材料から構成されていてもよい。粘着剤層11は後述する粘着剤からなる。
【0032】
粘着剤層は1層(単層)から構成されていてもよいし、2層以上の複数層から構成されていてもよい。粘着剤層が複数層を有する場合、これら複数層は、互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層を構成する層の組み合わせは特に制限されない。
【0033】
粘着剤層11の厚さは、1~100μmであることが好ましく、3~80μmであることがより好ましく、5~60μmであることがさらに好ましく、10~50μmであることが特に好ましく、中でも15~40μmであることが好ましく、20~30μmであることが最も好ましい。これにより、好適な粘着性および光学物性を発揮し易く、粘着剤層の変形が発生し難いものとなる。
【0034】
(1.2.1.粘着剤の物性)
本実施形態では、粘着剤が下記の物性を有していることにより、施工液との接触後に、粘着剤層に力が作用した場合であっても、粘着剤の変形を抑制することができる。
【0035】
(1.2.2.粘着剤の貯蔵弾性率)
本実施形態では、23℃、周波数1Hzにおける粘着剤の貯蔵弾性率(G’)が0.25MPa以上であることが好ましい。貯蔵弾性率は、粘着剤層の変形のしやすさ(硬さ)の指標の1つである。23℃における粘着剤の貯蔵弾性率を上記の範囲内に制御することにより、施工液との接触後においても高い凝集力を維持でき、施工時に粘着剤に圧縮力および/またはせん断力が印加されても、粘着剤の変形(糊ズレ)を抑制することができる。
【0036】
23℃における貯蔵弾性率は、0.3~5MPaであることが好ましく、0.35~3MPaであることがより好ましく、0.4~1MPaであることがさらに好ましく、0.42~0.8MPaであることが特に好ましく、中でも0.44~0.6MPaであることが好ましい。これにより、所望の粘着力を発揮し易いため、施工後においても良好に被着体と固定されるとともに、優れた耐衝撃性や飛散防止性を発揮するものとなる。
【0037】
粘着剤の貯蔵弾性率は、たとえば、粘着剤の組成、架橋構造、粘弾性、粘着剤を構成する主ポリマーの重量平均分子量やガラス転移温度等を変更することにより調整することができる。
【0038】
貯蔵弾性率(G’)は、公知の方法により測定すればよい。たとえば、粘着剤層を所定の大きさの試料とし、動的粘弾性測定装置により、所定の温度範囲において、所定の周波数で試料にひずみを与えて、弾性率を測定する。測定された弾性率から、上記の条件における貯蔵弾性率を算出することができる。
【0039】
(1.2.3.粘着剤層の水貼り後の粘着力)
本実施形態では、ソーダライムガラス面に対して水貼りにより粘着剤層を貼り付けてから168時間後における粘着剤層の粘着力が3N/25mm以上であることが好ましい。水貼り後の粘着力が上記範囲内であることにより、被着体としてのガラス面への接着が良好となり、飛散防止性が向上する。なお、本実施形態では、水貼りは、ウィンドウフィルムと被着体とに対して、施工液としてのアニオン系界面活性剤の10質量%水溶液を噴霧して両者を貼合する方法と定義される。また、施工後においても、たとえば、雨や雪の日など湿度が高い環境に晒された場合において、水蒸気が基材を透過して粘着剤層と被着体の界面に侵入する場合が考えられるが、このような状態になったとしても被着体との良好な固定性を発揮することができる。すなわち、施工後の不具合が生じにくくなる傾向にある。
【0040】
水貼り後の粘着力は、8~100N/25mmであることがより好ましく、16~60N/25mmであることがさらに好ましく、24~45N/25mmであることがさらに好ましい。粘着力の具体的な測定条件は実施例において後述する。
【0041】
本実施形態では、水貼り後の粘着力は、後述する24時間後における粘着力よりも大きいことが好ましい。これにより、被着体としてのガラス面への接着が良好となって飛散防止性が向上するとともに、水貼り施工に好適なものとなり、施工後の不具合が生じにくくなる傾向がある。
【0042】
(1.2.4.粘着剤層の粘着力)
本実施形態では、ソーダライムガラス面に対して粘着剤層を貼り付けてから24時間後における粘着剤層の粘着力は、3N/25mm以上であることが好ましい。当該粘着力が上記範囲内であることにより、被着体としてのガラス面への接着が良好となり、施工後において剥がれる等の不具合が防止できるとともに、飛散防止性が向上する。
【0043】
24時間後における粘着力は、8~100N/25mmであることがより好ましく、16~60N/25mmであることがさらに好ましく、20~30N/25mmであることがさらに好ましい。粘着力の具体的な測定条件は実施例において後述する。
【0044】
本実施形態では、上述したように、水貼り後の粘着力は、24時間後における粘着力よりも大きいことが好ましい。24時間後における粘着力に対する、水貼りにより粘着剤層を貼り付けてから168時間後における粘着剤層の粘着力の比は、1.15~10であることが好ましく、1.20~5であることがより好ましく、1.25~3であることがさらに好ましく、1.30~2であることがさらに好ましく、1.33~1.8であることが特に好ましい。当該粘着力の比が上記範囲内であることにより、被着体としてのガラス面への接着が良好となって飛散防止性が向上するとともに、水貼り施工に好適なものとなり、施工後の不具合が生じにくくなる傾向がある。
【0045】
(1.2.5.粘着剤のゲル分率)
本実施形態に係る粘着剤のゲル分率は、40%以上95%以下であることが好ましい。これにより、水貼りでのフィルムの位置調整等の作業性が好適なものとなり易く、上述した粘着力を発揮し易いため、施工後において良好に被着体と固定され易い。
【0046】
ゲル分率は、50~92%であることがより好ましく、58~90%であることがさらに好ましく、63~88%であることが特に好ましく、中でも68~85%であることが好ましい。粘着剤のゲル分率は、後述する試験例に示す方法により測定することができる。
【0047】
(1.2.6.粘着剤層の全光線透過率)
本実施形態に係る粘着剤層の全光線透過率は、70%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましく、90%以上であることがさらに好ましく、95%以上であることが特に好ましく、中でも99%以上であることが好ましい。これにより、ウィンドウフィルムを窓に貼付した場合であっても、ウィンドウフィルム越しに見える物体の視認性が良好となる。上記全光線透過率の上限値は、100%である。なお、本明細書における全光線透過率は、JISK7361-1:1997に準じて測定した値とする。
【0048】
(1.2.7.粘着剤層のヘイズ値)
本実施形態に係る粘着剤層のヘイズ値は、10%以下であることが好ましく、5%以下であることがより好ましく、3%以下であることがさらに好ましく、1%以下であることが特に好ましく、中でも0.5%以下であることが好ましい。これにより、粘着剤層の全光線透過率を上記の範囲内に制御しやすく、ウィンドウフィルムを窓に貼付した場合であっても、ウィンドウフィルム越しに見える物体の視認性が良好となる。また、水貼り後のウィンドウフィルムのヘイズ値を所定の範囲に制御し易い。上記ヘイズ値の下限値は、0%である。なお、本明細書におけるヘイズ値は、JISK7136:2000に準じて測定した値とする。
【0049】
(1.2.8.粘着剤の色度a*および色度b*
本実施形態に係る粘着剤のCIE1976L***表色系により規定される色度a*は、-20~20であることが好ましく、-10~10であることがさらに好ましく、-5~5であることがさらに好ましく、-1~1であることが特に好ましく、中でも-0.5~0.5であることが好ましく、-0.38~0.38であることが最も好ましい。一方、色度b*は、-20~20であることが好ましく、-10~10であることがさらに好ましく、-5~5であることがさらに好ましく、-1~1であることが特に好ましく、中でも-0.5~0.5であることが好ましく、-0.36~0.36であることが最も好ましい。色度a*および色度b*が上記の範囲内であることにより、ウィンドウフィルムを窓に貼付した場合であっても、ウィンドウフィルム越しに見える物体の視認性が良好となる。
【0050】
(1.3.粘着剤の組成)
本実施形態に係る粘着剤は上記の物性を有していれば、粘着剤の組成は特に限定されない。たとえば、アクリル系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ポリウレタン系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤等のいずれであってもよい。また、当該粘着剤は、エマルション型、溶剤型または無溶剤型のいずれであってもよい。さらに、当該粘着剤は、架橋構造を有していてもよいし、架橋構造を有していなくてもよい。
【0051】
本実施形態では、上述した物性の実現しやすさの観点、および、粘着物性、光学特性等の観点から、粘着剤としては、アクリル系粘着剤が好ましく、架橋構造を有するアクリル系粘着剤がより好ましい。さらに、架橋構造を有するアクリル系粘着剤は、活性エネルギー線硬化性組成物に活性エネルギー線を照射して得られる架橋構造または熱架橋して得られる架橋構造を有するアクリル系粘着剤であることが好ましく、活性エネルギー線硬化性組成物に活性エネルギー線を照射して得られる架橋構造および熱架橋して得られる架橋構造を有するアクリル系粘着剤であることが特に好ましい。
【0052】
具体的には、当該粘着剤は、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)を含有し、さらに、架橋剤(B)と、活性エネルギー線硬化性化合物(C)と、光重合開始剤(D)と、を含有する粘着性組成物(以下「粘着性組成物P」という場合がある。)を架橋および活性エネルギー線の照射により架橋・硬化して得られる粘着剤であることが好ましい。かかる粘着剤であれば、上述した物性を満足しやすい。その結果、良好な粘着力と高い凝集力とが得られやすい。なお、本明細書において、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸及びメタクリル酸の両方を意味する。他の類似用語も同様である。また、「重合体」には「共重合体」の概念も含まれるものとする。
【0053】
(1.3.1.(メタ)アクリル酸エステル重合体(A))
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として、(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、分子内に反応性官能基を有するモノマー(反応性官能基含有モノマー)と、を含有することが好ましい。
【0054】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含有することにより、粘着剤が好ましい粘着性を発現することができる。(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、アルキル基の炭素数が1~20の(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましい。アルキル基は、直鎖状または分岐鎖状であってもよいし、環状構造を有するものであってもよい。
【0055】
アルキル基の炭素数が1~20の(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸n-ペンチル、(メタ)アクリル酸n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸n-デシル、(メタ)アクリル酸n-ドデシル、(メタ)アクリル酸ミリスチル、(メタ)アクリル酸パルミチル、(メタ)アクリル酸ステアリル等が挙げられる。
【0056】
これらの中でも、23℃における貯蔵弾性率の観点から、アルキル基の炭素数が1~8の(メタ)アクリル酸エステルが好ましく、アルキル基の炭素数が4~8の(メタ)アクリル酸エステルが特に好ましい。具体的には、(メタ)アクリル酸n-ブチルおよび(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシルが好ましく、特に、アクリル酸n-ブチルおよびアクリル酸2-エチルヘキシルが好ましい。なお、これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよく、2種以上を組み合わせる場合は、(メタ)アクリル酸n-ブチルおよび(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシルを組み合わせることが好ましく、アクリル酸n-ブチルおよびアクリル酸2-エチルヘキシルを組み合わせることがより好ましい。
【0057】
(メタ)アクリル酸エステル重合体は、当該重合体を構成するモノマー単位として、アルキル基の炭素数が1~20の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを30~95質量%含有することが好ましく、40~85質量%含有することがより好ましく、45~75質量%含有することがさらに好ましく、50~65質量%含有することが特に好ましい。(メタ)アクリル酸アルキルエステルの含有割合を上記の範囲とすることにより、(メタ)アクリル酸エステル重合体に好適な粘着性を付与させることができるとともに、貯蔵弾性率を上述した値に調整しやすい。また、(メタ)アクリル酸エステル重合体中に他のモノマー成分を所望量導入することができる。
【0058】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、反応性官能基含有モノマーを含有することにより、当該反応性官能基含有モノマー由来の反応性官能基を介して、(メタ)アクリル酸エステル重合体が後述する架橋剤(B)と反応し、粘着剤中に架橋構造(三次元網目構造)が形成される。その結果、所望の凝集力を有する粘着剤が得られ、当該粘着剤は、上述した貯蔵弾性率を満足しやすいものとなる。
【0059】
反応性官能基含有モノマーとしては、分子内に水酸基を有するモノマー(水酸基含有モノマー)、分子内にカルボキシ基を有するモノマー(カルボキシ基含有モノマー)、分子内にアミノ基を有するモノマー(アミノ基含有モノマー)などが好ましく挙げられる。これらの反応性官能基含有モノマーは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0060】
上記反応性官能基含有モノマーの中でも、親水性を示すモノマーであることが好ましく、このようなモノマーとして、水酸基含有モノマーまたはカルボキシ基含有モノマーが好ましく、特に、水酸基含有モノマーが好ましい。これにより、水貼り法による施工において、粘着剤層表面と被着体の界面に水分が十分浸透し易くなり、押圧による圧縮力および/またはフィルム貼付位置の微調整に伴うせん断力が局所的に作用し難くなる傾向があり、糊ズレ抑制効果を示す傾向がある。また、水貼りしても光学物性が水分による影響を受けにくくなり、たとえばヘイズ値の上昇や全光線透過率の低下を防止することができる傾向にある。そして、上述した貯蔵弾性率に関する物性および粘着力に関する物性を満足しやすいことに加えて、貯蔵弾性率の微調整が容易となる。
【0061】
水酸基含有モノマーとしては、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチルなどの(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル等が例示される。
【0062】
これらの中でも、上述した貯蔵弾性率に関する物性を実現しやすい観点から、炭素数が1~4のヒドロキシアルキル基を有する(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルが好ましい。具体的には、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチルが好ましく挙げられ、特に、アクリル酸2-ヒドロキシエチルが好ましく挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0063】
カルボキシ基含有モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸等のエチレン性不飽和カルボン酸が例示される。これらの中でも、得られる(メタ)アクリル酸エステル重合体の粘着力の観点からアクリル酸が好ましい。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0064】
(メタ)アクリル酸エステル重合体は、当該重合体を構成するモノマー単位として、反応性官能基含有モノマーを6~40質量%含有することが好ましく、10~35質量%含有することがより好ましく、14~30質量%含有することがさらに好ましく、18~25質量%以下含有することが特に好ましい。
【0065】
これにより、架橋剤(B)との架橋反応により得られる粘着剤の凝集力を高めることができ、上述した貯蔵弾性率に関する物性を満足しやすいものとなる。また、上述した貯蔵弾性率に関する物性および水貼り後の粘着力を満足しやすいことに加えて、これらの物性の微調整が容易となる。
【0066】
上記(メタ)アクリル酸エステル重合体は、当該重合体を構成するモノマー単位として、分子内に脂環式構造を有するモノマー(脂環式構造含有モノマー)を含有することも好ましい。脂環式構造含有モノマーは嵩高いため、これを重合体中に存在させることにより、重合体同士の間隔を広げるものと推定され、得られる粘着剤を柔軟性に優れたものとすることができる。これにより、上述した貯蔵弾性率に関する物性および水貼り後の粘着力を満足しやすく、ひいては飛散防止性が良好になる傾向がある。
【0067】
脂環式構造含有モノマーにおける脂環式構造の炭素環は、飽和構造のものであってもよいし、不飽和結合を一部に有するものであってもよい。また、脂環式構造は、単環の脂環式構造であってもよいし、二環、三環等の多環の脂環式構造であってもよい。得られる(メタ)アクリル酸エステル重合体の相互間の距離を適切にし、粘着剤により高い応力緩和性を付与する観点から、上記脂環式構造は、多環の脂環式構造(多環構造)であることが好ましい。さらに、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)と他の成分との相溶性を考慮して、上記多環構造は、二環から四環であることが特に好ましい。また、上記と同様に応力緩和性を付与する観点から、脂環式構造の炭素数(環を形成している部分の全ての炭素数をいい、複数の環が独立して存在する場合には、その合計の炭素数をいう)は、通常5以上であることが好ましく、7以上であることがより好ましい。一方、脂環式構造の炭素数の上限は特に制限されないが、上記と同様に相溶性の観点から、15以下であることが好ましく、10以下であることが特に好ましい。
【0068】
上記脂環式構造含有モノマーとしては、具体的には、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸アダマンチル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニルオキシエチル等が例示される。
【0069】
これらの中でも、上述した貯蔵弾性率に関する物性および水貼り後の粘着力を満足しやすくなる観点から、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル(脂環式構造の炭素数:10)、(メタ)アクリル酸アダマンチル(脂環式構造の炭素数:10)または(メタ)アクリル酸イソボルニル(脂環式構造の炭素数:7)が好ましく、特に(メタ)アクリル酸イソボルニルが好ましく、さらにアクリル酸イソボルニルが好ましい。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0070】
(メタ)アクリル酸エステル重合体は、当該重合体を構成するモノマー単位として脂環式構造含有モノマーを含有する場合、当該脂環式構造含有モノマーを1~30質量%含有することが好ましく、3~25質量%含有することがより好ましく、5~20質量%含有することがさらに好ましく、8~15質量%含有することが特に好ましい。これにより、上述した貯蔵弾性率に関する物性および水貼り後の粘着力を満足しやすく、ひいては飛散防止性が良好になる。
【0071】
上記(メタ)アクリル酸エステル重合体は、当該重合体を構成するモノマー単位として、窒素原子含有モノマーを含有することも好ましい。これにより、粘着剤に所定の極性を付与し、ある程度の極性を有する被着体に対しても、親和性に優れたものとすることができる。上記窒素原子含有モノマーとしては、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)に適度な剛性を持たせる観点から、窒素含有複素環を有するモノマーが好ましい。また、構成される粘着剤の高次構造中で上記窒素原子含有モノマー由来部分の自由度を高める観点から、当該窒素原子含有モノマーは、(メタ)アクリル酸エステル重合体を形成するための重合に使用される1つの重合性基以外に反応性不飽和二重結合基を含有しないことが好ましい。
【0072】
窒素含有複素環を有するモノマーとしては、例えば、N-(メタ)アクリロイルモルホリン、N-ビニル-2-ピロリドン、N-(メタ)アクリロイルピロリドン、N-(メタ)アクリロイルピペリジン、N-(メタ)アクリロイルピロリジン、N-(メタ)アクリロイルアジリジン、アジリジニルエチル(メタ)アクリレート、2-ビニルピリジン、4-ビニルピリジン、2-ビニルピラジン、1-ビニルイミダゾール、N-ビニルカルバゾール、N-ビニルフタルイミド等が例示される。
【0073】
これらの中でも、より優れた粘着力を発揮するN-(メタ)アクリロイルモルホリンが好ましく、特にN-アクリロイルモルホリンが好ましい。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0074】
(メタ)アクリル酸エステル重合体は、当該重合体を構成するモノマー単位として窒素原子含有モノマーを含有する場合、当該窒素原子含有モノマーを1~30質量%含有することが好ましく、3~25質量%含有することがより好ましく、5~20質量%含有することがさらに好ましく、8~15質量%含有することがさらに好ましい。これにより、上述した貯蔵弾性率に関する物性および水貼り後の粘着力を満足しやすくなり、ひいては飛散防止性が良好になる。
【0075】
本実施形態では、(メタ)アクリル酸エステル重合体は、所望により、当該重合体を構成するモノマー単位として、他のモノマーを含有してもよい。他のモノマーとしては、反応性官能基含有モノマーの上述した作用を阻害しないためにも、反応性官能基を含有しないモノマーが好ましい。このようなモノマーとしては、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル等の(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル、酢酸ビニル、スチレンなどが例示される。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0076】
(メタ)アクリル酸エステル重合体の重合態様は、ランダム共重合体であってもよいし、ブロック共重合体であってもよい。
【0077】
(メタ)アクリル酸エステル重合体の重量平均分子量は、10~200万であることが好ましく、20~160万であることがより好ましく、30~120万であることがさらに好ましく、40~90万であることが特に好ましく、中でも45~70万であることがより好ましい。これにより、上述した貯蔵弾性率に関する物性および粘着力が満足されやすい。なお、本明細書における重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定した標準ポリスチレン換算の値である。
【0078】
粘着性組成物Pにおいて、(メタ)アクリル酸エステル重合体は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0079】
(1.3.2.架橋剤(B))
本実施形態に係る粘着性組成物Pは、架橋剤(B)を含むことが好ましい。架橋剤(B)は、当該架橋剤を含有する粘着性組成物Pの加熱等を契機として、(メタ)アクリル酸エステル重合体を架橋し、架橋構造(三次元網目構造)を形成する。その結果、得られる粘着剤の凝集力が向上し、上述した貯蔵弾性率に関する物性が満足されやすくなる。
【0080】
架橋剤(B)としては、(メタ)アクリル酸エステル重合体が有する反応性基と反応するものであればよい。イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、アミン系架橋剤、メラミン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、ヒドラジン系架橋剤、アルデヒド系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、金属アルコキシド系架橋剤、金属キレート系架橋剤、金属塩系架橋剤、アンモニウム塩系架橋剤等が例示される。これらの中でも、反応性官能基含有モノマーとの反応性に優れたイソシアネート系架橋剤を使用することが好ましい。なお、架橋剤(B)は、1種を単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0081】
イソシアネート系架橋剤は、少なくともポリイソシアネート化合物を含むものである。ポリイソシアネート化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート等の脂環式ポリイソシアネートなど、及びそれらのビウレット体、イソシアヌレート体、さらにはエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ヒマシ油等の低分子活性水素含有化合物との反応物であるアダクト体などが挙げられる。これらの中でも水酸基との反応性の観点から、トリメチロールプロパン変性の芳香族ポリイソシアネート、特にトリメチロールプロパン変性キシレンジイソシアネートが好ましい。
【0082】
粘着性組成物P中における架橋剤(B)の含有量は、(メタ)アクリル酸エステル重合体100質量部に対して、0.01~10質量部であることが好ましく、0.04~5質量部であることがより好ましく、0.08~1質量部であることがさらに好ましく、0.1~0.8質量部であることが特に好ましく、中でも0.15~0.6質量部であることが好ましい。これにより、上述した貯蔵弾性率に関する物性および粘着力が満足されやすくなる。
【0083】
(1.3.3.活性エネルギー線硬化性化合物(C))
本実施形態に係る粘着性組成物Pは、活性エネルギー線硬化性化合物(C)を含有することが好ましい。活性エネルギー線硬化性化合物(C)は、モノマー、オリゴマーまたはポリマーのいずれであってもよいし、それらの混合物であってもよい。中でも、(メタ)アクリル酸エステル重合体等との相溶性に優れる分子量1000以下の多官能アクリレート系モノマーを好ましく挙げることができる。これにより、得られる粘着剤は、良好な光学特性を維持しながら、上述した貯蔵弾性率に関する物性および粘着力が好適なものとなり易い。
【0084】
分子量1000以下の多官能アクリレート系モノマーとしては、例えば、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールアジペートジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性リン酸ジ(メタ)アクリレート、ジ(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、アリル化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート等の2官能型;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ε-カプロラクトン変性トリス-(2-(メタ)アクリロキシエチル)イソシアヌレート等の3官能型;ジグリセリンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等の4官能型;プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等の5官能型;ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の6官能型などが挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0085】
粘着性組成物Pが活性エネルギー線硬化性化合物(C)を含有する場合、当該活性エネルギー線硬化性化合物(C)の含有量は、(メタ)アクリル酸エステル重合体100質量部に対して、1~40質量部であることが好ましく、2~30質量部であることがより好ましく、3~20質量部であることがさらに好ましく、4~16質量部であることが特に好ましく、中でも5~12質量部であることが好ましく、6~9質量部であることが最も好ましい。これにより、上述した貯蔵弾性率に関する物性および粘着力が好適なものとなり易くなる。また、得られる粘着剤層のハンドリング性が優れたものとなる。
【0086】
(1.3.4.光重合開始剤(D))
本実施形態に係る粘着性組成物Pは、光重合開始剤(D)を含有することが好ましい。ここで、光重合開始剤とは、紫外線等の活性エネルギー線の照射により、ラジカル種を発生させる化合物をいう。光重合開始剤(D)を含有することにより、活性エネルギー線硬化性化合物(C)を含有する粘着成分を効率良く硬化させることができ、得られる粘着剤は上述した貯蔵弾性率に関する物性および粘着力が好適なものとなり易い。また重合硬化時間および活性エネルギー線の照射量を少なくすることができる。
【0087】
光重合開始剤としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン-n-ブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、アセトフェノン、ジメチルアミノアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2,2-ジエトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノ-プロパン-1-オン、4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル-2-(ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、ベンゾフェノン、p-フェニルベンゾフェノン、4,4’-ジエチルアミノベンゾフェノン、ジクロロベンゾフェノン、2-メチルアントラキノン、2-エチルアントラキノン、2-ターシャリ-ブチルアントラキノン、2-アミノアントラキノン、2-メチルチオキサントン、2-エチルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、ベンジルジメチルケタール、アセトフェノンジメチルケタール、p-ジメチルアミノ安息香酸エステル、オリゴ[2-ヒドロキシ-2-メチル-1[4-(1-メチルビニル)フェニル]プロパノン]、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0088】
光重合開始剤(D)は、活性エネルギー線硬化性化合物(C)100質量部に対して、1~50質量部、さらに5~30質量部、特に8~20質量部の範囲の量で用いられることが好ましい。
【0089】
(1.3.5 シランカップリング剤(E))
本実施形態に係る粘着性組成物Pは、シランカップリング剤(E)を含有することが好ましい。これにより、被着体(窓)との密着性が向上する。
【0090】
シランカップリング剤としては、分子内にアルコキシシリル基を少なくとも1個有する有機ケイ素化合物であって、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)との相溶性がよく、光透過性を有するものが好ましい。これにより、得られる粘着剤は、良好な光学特性を維持しながら、上述した粘着力等の物性が好適なものとなり易い。
【0091】
具体的には、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等の重合性不飽和基含有ケイ素化合物、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシ構造を有するケイ素化合物、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルジメトキシメチルシラン等のメルカプト基含有ケイ素化合物、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン等のアミノ基含有ケイ素化合物、3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、あるいはこれらの少なくとも1つと、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン等のアルキル基含有ケイ素化合物との縮合物などが例示される。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0092】
粘着性組成物P中におけるシランカップリング剤の含有量は、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)100質量部に対して、0.01~20質量部であることが好ましく、0.05~10質量部であることがより好ましく、0.1~5質量部であることがさらに好ましく、0.2~1質量部であることが特に好ましい。これにより、被着体への密着性が向上し、上述した粘着力等の物性を満たし易くなる。
【0093】
(1.3.6.紫外線吸収剤(F))
本実施形態に係る粘着性組成物Pは、ウィンドウフィルムに紫外線遮蔽機能を付与するために、紫外線吸収剤(F)を有していることが好ましい。
【0094】
紫外線吸収剤としては、ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤等が例示される。なお、紫外線吸収剤(F)は、1種を単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0095】
ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤としては、2,4-ビス(2-ヒドロキシ-4-ブトキシフェニル)-6-(2,4-ジブトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-4-オクチルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4,6-トリス[2-ヒドロキシ-4-(3-ブトキシ-2-ヒドロキシプロピルオキシ)フェニル]-1,3,5-トリアジン、2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-4-ヘキシルオキシ-3-メチルフェニル)-1,3,5-トリアジン等が例示される。
【0096】
ベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、例えば、2,2’-ジヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4,4’-ジメトキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-オクトキシベンゾフェノン等が挙げられる。
【0097】
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、例えば、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-tert-ブチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’-tert-ブチル-5’-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’-tert-アミル-5’-イソブチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’-イソブチル-5’-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’-イソブチル-5’-プロピルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-tert-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-[2’-ヒドロキシ-5’-(1,1,3,3-テトラメチル)フェニル]ベンゾトリアゾール等が例示される。
【0098】
粘着性組成物P中における紫外線吸収剤(F)の含有量は、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)100質量部に対して、0.1~20質量部であることが好ましく、1~10質量部であることがより好ましく、1.5~5質量部であることがさらに好ましい。
【0099】
(1.3.7.その他の添加剤)
粘着性組成物Pは、必要に応じて、アクリル系粘着剤に通常使用されている添加剤を含有してもよい。このような添加剤としては、粘着付与剤、充填剤、赤外線吸収剤、軟化剤、酸化防止剤、光安定剤、架橋剤、着色剤、改質剤、防錆剤、難燃剤、加水分解防止剤、表面潤滑剤、腐食防止剤、耐熱安定剤、滑剤、帯電防止剤、重合禁止剤、触媒、レベリング剤、増粘剤、分散剤、消泡剤、界面活性剤等が例示される。なお、後述の重合溶媒や希釈溶媒は、粘着性組成物Pを構成する添加剤に含まれないものとする。
【0100】
(1.4.ハードコート層)
本実施形態に係るウィンドウフィルムは、基材および粘着剤層以外に、ハードコート層を有していてもよい。この場合、図1Bに示すように、ハードコート層12は、基材10において、粘着剤層11が配置されている主面10aとは反対側の主面10b上に配置されていることが好ましい。さらに、基材10と粘着剤層11の間にハードコート層が配置されることも好ましい。
【0101】
ハードコート層は、基材よりも硬度、耐擦傷性、耐候性等に優れた材料から構成される。そして、ウィンドウフィルムは、粘着剤層が被着体に貼付されるため、ウィンドウフィルムにおいて、ハードコート層が外部に露出することになる。したがって、ウィンドウフィルムがハードコート層を有することにより、水貼り施工時にはヘラ等のスキージの押圧によるウィンドウフィルム表面の傷の発生が抑制される。また、ウィンドウフィルムの表面硬度が高くすることができるため、ヘラ等のスキージの押圧によってウィンドウフィルムにかかる応力を粘着剤層に直接伝わり難くできる傾向があり、粘着剤の変形を小さくできる。そして、施工後においても、外部から何らかの力がかかったとしても、粘着剤層および被着体(自動車や建築物の窓等)に直接外力を伝わり難くできるため、優れた耐衝撃性を発揮できる。さらに、被着体が割れたとしても、その破片が飛び散ることを抑制できるため、優れた飛散防止性を発揮できる。したがって、自動車等の移動体や建築物の外観を維持しながらも、安全性を高めることができる。
【0102】
ハードコート層の厚さは、ウィンドウフィルムの表面硬度、耐擦傷性および耐候性の観点から、0.5~20μmであることが好ましく、1~15μmであることがより好ましく、2~10μmであることが特に好ましく、中でも3~6μmであることが好ましい。
【0103】
ハードコート層の構成材料としては、基材よりも硬度、耐擦傷性、耐候性等に優れた材料であれば特に制限されない。本実施形態に係るハードコート層は、活性エネルギー線硬化性樹脂を含むハードコート層形成用組成物の硬化物であることが好ましい。
【0104】
(1.4.1.ハードコート層形成用組成物Q)
本実施形態では、ハードコート層形成用組成物Qは、熱硬化性の材料から構成されていても、活性エネルギー線硬化性の材料から構成されていてもよいが生産性の観点や所望の耐擦傷性を得られ易い観点から、活性エネルギー線硬化性の材料から構成されていることが好ましく、活性エネルギー線硬化性樹脂と、光重合開始剤と、を含むものであることが好ましい。
【0105】
(1.4.2.活性エネルギー線硬化性樹脂(a))
活性エネルギー線硬化性樹脂は、特に制限されず、従来公知のものから選択できる。たとえば、活性エネルギー線硬化性のモノマー、オリゴマーまたはそれらを含む組成物等が例示される。
【0106】
活性エネルギー線硬化性モノマーとしては、多官能(メタ)アクリレートが例示される。活性エネルギー線硬化性オリゴマーとしては、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレート等が例示される。
【0107】
多官能(メタ)アクリレートとしては、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートや、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等のペンタエリスリトール多官能(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートや、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等のジペンタエリスリトール多官能(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、トリアリル(メタ)アクリレート、等が例示される。
【0108】
これらのうち、ハードコート層に適度な堅硬性、耐擦傷性、耐候性等を付与できることから、ペンタエリスリトール多官能(メタ)アクリレートまたはジペンタエリスリトール多官能(メタ)アクリレートであることがより好ましい。
【0109】
(1.4.3.光重合開始剤(b))
ハードコート層形成用組成物Qを硬化させるための活性エネルギー線として紫外線を用いる場合には、ハードコート層形成用組成物Qは光重合開始剤(b)を含むことが好ましい。光重合開始剤(b)を含むことにより、ハードコート層形成用組成物に対して紫外線を照射した際に、効率的にハードコート層を形成することができる。
【0110】
光重合開始剤(b)としては、上述した光重合開始剤(D)と同様のものが例示される。例示されるもののうち一種単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いても良い。
【0111】
光重合開始剤(b)の含有量は、活性エネルギー線硬化性樹脂(a)100質量部に対し、1~50質量部であることが好ましく、3~30質量部であることがより好ましく、5~20質量部であることがさらに好ましい。
【0112】
(1.4.4.その他の添加剤)
また、本発明の効果を損なわない範囲で、適宜、その他の添加剤を含むことができる。その他の添加剤としては、例えば、酸化防止剤、赤外線吸収剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、着色剤、重合促進剤、重合禁止剤、可塑剤、レベリング剤、抗ウイルス剤、抗菌剤、充填材および希釈溶剤等が挙げられる。
【0113】
(1.5.ウィンドウフィルムの物性)
本実施形態に係るウィンドウフィルムは、水貼り後において以下に示す物性を有している。
【0114】
本実施形態に係るウィンドウフィルムは、水貼りしてから168時間後の全光線透過率が60%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましく、80%以上であることがさらに好ましく、90%以上であることが特に好ましく、中でも95%以上であることが好ましい。これにより、ウィンドウフィルムを被着体(窓)に貼付した後であっても、良好な視認性を発揮することができる。なお、上記の水貼りしてから168時間後の全光線透過率の上限値は、100%である。
【0115】
また、本実施形態に係るウィンドウフィルムは、水貼りしてから168時間後のヘイズ値が30%以下であることが好ましく、20%以下であることがより好ましく、10%以下であることがさらに好ましく、1%以下であることが特に好ましく、中でも0.5%以下であることが好ましい。これにより、水貼り後のウィンドウフィルムの全光線透過率を上記の範囲内にすることが容易となる。なお、上記の水貼りしてから168時間後のヘイズ値の下限値は、0%である。
【0116】
(1.6.粘着性組成物の製造)
粘着性組成物Pは、たとえば、まず、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)を製造し、得られた(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)と、架橋剤(B)と、活性エネルギー線硬化性化合物(C)と、光重合開始剤(D)とを混合することにより製造できる。所望により、任意の段階で、シランカップリング剤(E)や紫外線吸収剤(F)等の添加剤を加えてもよい。
【0117】
(メタ)アクリル酸エステル重合体は、たとえば、重合体を構成するモノマーの混合物を通常のラジカル重合法で重合することにより製造することができる。(メタ)アクリル酸エステル重合体の重合は、必要に応じて重合開始剤を使用して、溶液重合法により行うことができる。
【0118】
溶液重合法で使用する重合溶媒としては、酢酸エチル、酢酸n-ブチル、酢酸イソブチル、トルエン、アセトン、ヘキサン、メチルエチルケトン等が例示される。重合溶媒は、1種類用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0119】
重合開始剤としては、アゾ系化合物、有機過酸化物等が挙げられ、2種類以上を併用してもよい。アゾ系化合物としては、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン1-カルボニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチル-4-メトキシバレロニトリル)、ジメチル2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、4,4’-アゾビス(4-シアノバレリック酸)、2,2’-アゾビス(2-ヒドロキシメチルプロピオニトリル)、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]等が例示される。
【0120】
有機過酸化物としては、過酸化ベンゾイル、t-ブチルパーベンゾエイト、クメンヒドロパーオキシド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ-n-プロピルパーオキシジカーボネート、ジ(2-エトキシエチル)パーオキシジカーボネート、t-ブチルパーオキシネオデカノエート、t-ブチルパーオキシビバレート、(3,5,5-トリメチルヘキサノイル)パーオキシド、ジプロピオニルパーオキシド、ジアセチルパーオキシド等が例示される。
【0121】
なお、上記重合工程において、2-メルカプトエタノール等の連鎖移動剤を配合することにより、得られる重合体の重量平均分子量を調節することができる。
【0122】
続いて、得られた(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の溶液に、架橋剤(B)、活性エネルギー線硬化性化合物(C)、光重合開始剤(D)および必要に応じて添加剤を添加し、十分に混合することにより、溶剤で希釈された粘着性組成物P(塗布溶液)が得られる。
【0123】
なお、上記各成分のいずれかが、固体状の成分である場合、あるいは、希釈されていない状態で他の成分と混合した際に析出を生じる成分である場合には、その成分を単独で予め希釈溶媒に溶解もしくは希釈してから、その他の成分と混合してもよい。
【0124】
希釈溶剤としては、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、塩化メチレン、塩化エチレン等のハロゲン化炭化水素、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、1-メトキシ-2-プロパノール等のアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、2-ペンタノン、イソホロン、シクロヘキサノン等のケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル、エチルセロソルブ等のセロソルブ系溶剤等が例示される。
【0125】
調製された塗布溶液の濃度および粘度としては、コーティング可能な範囲であればよく、状況に応じて適宜選定することができる。例えば、粘着性組成物Pの濃度が10~60質量%となるように希釈する。なお、塗布溶液を得るに際して、希釈溶剤等の添加は必要条件ではなく、粘着性組成物Pがコーティング可能な粘度等であれば、希釈溶剤を添加しなくてもよい。この場合、粘着性組成物Pは、(メタ)アクリル酸エステル重合体の重合溶媒をそのまま希釈溶剤とする塗布溶液となる。
【0126】
(1.7.粘着剤の製造)
粘着剤層を構成する粘着剤は、上述した粘着性組成物Pを架橋し、所定の対象物に塗布し乾燥させた後、活性エネルギー線の照射により粘着性組成物Pを硬化させて得られることが好ましい。粘着性組成物Pの架橋は、通常は加熱処理により行うことができる。なお、この加熱処理は、所望の対象物に塗布した粘着性組成物Pの塗膜から希釈溶剤等を揮発させる際の乾燥処理で兼ねることもできる。
【0127】
加熱処理の加熱温度は、50~150℃であることが好ましく、70~120℃であることがより好ましい。また、加熱時間は、10秒~10分であることが好ましく、50秒~2分であることがより好ましい。
【0128】
加熱処理後、必要に応じて、常温(例えば、23℃、50%RH)で1~2週間程度の養生期間を設けてもよい。養生が必要な場合は、養生期間経過後、架橋構造を有する粘着剤が得られる。養生が不要な場合には、加熱処理終了後、架橋構造を有する粘着剤が得られる。
【0129】
粘着性組成物Pの硬化に用いる活性エネルギー線としては、通常、紫外線、電子線等が用いられる。活性エネルギー線の照射量は、活性エネルギー線の種類によって異なるが、例えば紫外線の場合には、照度が50~1000mW/cm2程度であることが好ましく、100~500mW/cm2であることが好ましい。光量は、50~10000mJ/cm2が好ましく、200~5000mJ/cm2がより好ましく、特に500~2000mJ/cm2が好ましい。また、電子線の場合には、10~1000krad程度が好ましい。
【0130】
粘着性組成物Pの加熱処理および活性エネルギー線の照射により、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は架橋剤(B)と架橋構造を形成し、複数の活性エネルギー線硬化性成分(C)は互いに結合して、三次元網目構造を形成し、それらが互いに絡み付いた構造が形成されると推定される。このような構造を有する粘着剤は、良好な光学特性を維持しながら、上述した貯蔵弾性率や粘着力等の物性が好適なものとなり易い。
【0131】
(1.8.ウィンドウフィルムの製造)
ウィンドウフィルムを製造する方法としては特に制限されず、公知の方法により製造すればよい。たとえば、基材の一方の主面上に、上記の粘着性組成物Pの塗布液を塗布し、加熱処理を行って粘着性組成物Pを架橋することで所定の厚みを有する塗布層を形成し、当該塗布層に剥離シートの剥離面を重ね合わせる。または、剥離シートの剥離面上に、上記の粘着性組成物Pの塗布液を塗布し、加熱処理を行って粘着性組成物Pを架橋することで所定の厚みを有する塗布層を形成し、当該塗布層に、基材の一方の主面を重ね合わせる。養生が必要な場合は、所定の養生期間を経た後に、養生が不要な場合には、塗布層を形成した後に、剥離シート越しに塗布層に対して活性エネルギー線を照射し、塗布層を硬化させて粘着剤層を形成する。これにより、ウィンドウフィルムが得られる。
【0132】
また、ウィンドウフィルムがハードコート層を有する場合には、基材の一方の主面上に粘着剤層を形成する前に、基材の他方の主面上に、ハードコート層を形成することが好ましい。この場合には、まず、基材の他方の主面上に、上記のハードコート層形成用組成物Qの塗布液を塗布し乾燥させる。乾燥後、溶剤を蒸発させたハードコート層形成用組成物Qに、紫外線、電子線等の活性エネルギー線を照射して硬化させることにより、基材上にハードコート層が形成される。
【0133】
活性エネルギー線として、紫外線を照射する場合には、紫外線照射装置としては、高圧水銀ランプ、キセノンランプ、メタルハライドランプ等の公知の装置を用いることができる。
【0134】
粘着性組成物Pおよびハードコート層形成用組成物Qの塗布液を塗布する方法としては、バーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法等が例示される。
【0135】
なお、本明細書において、「X~Y」(X,Yは任意の数字)と記載した場合、特に断らない限り「X以上Y以下」の意と共に、「好ましくはXより大きい」或いは「好ましくはYより小さい」の意も包含するものである。また、「X以上」(Xは任意の数字)と記載した場合、特に断らない限り「好ましくはXより大きい」の意を包含し、「Y以下」(Yは任意の数字)と記載した場合、特に断らない限り「好ましくはYより小さい」の意も包含するものである。
【0136】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は上記の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の範囲内において種々の態様で改変しても良い。
【実施例0137】
以下、実施例を用いて、発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0138】
(実施例1)
1.(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の調製
アクリル酸n-ブチル30質量部、アクリル酸2-エチルヘキシル25質量部、N-アクリロイルモルホリン10質量部、アクリル酸イソボルニル10質量部およびアクリル酸2-ヒドロキシエチル25質量部を共重合させて、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)を調製した。得られた(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の分子量を以下に示す方法で測定したところ、重量平均分子量(Mw)50万であった。
【0139】
重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて以下の条件で測定(GPC測定)したポリスチレン換算の重量平均分子量である。
(測定条件)
・GPC測定装置:東ソー社製,HLC-8020
・GPCカラム(以下の順に通過):東ソー社製
TSK guard column HXL-H
TSK gel GMHXL(×2)
TSK gel G2000HXL
・測定溶媒:テトラヒドロフラン
・測定温度:40℃
【0140】
2.粘着性組成物Pの調製
上記で得られた(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)100質量部(固形分換算値;以下同じ)と、架橋剤(B)としてのイソシアネート系架橋剤(三井化学社製,製品名「タケネートD-110N」)(B1)0.2質量部と、活性エネルギー線硬化性化合物(C)としてのε-カプロラクトン変性トリス-(2-アクリロキシエチル)イソシアヌレート(C1)8.0質量部と、光重合開始剤(D)としての 2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド(D1)0.8質量部と、シランカップリング剤(E)としての3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(E1)0.2質量部と、を混合し、十分に撹拌して、メチルエチルケトンで希釈することにより、固形分濃度40質量%の粘着性組成物Pの塗布溶液を得た。
【0141】
3.粘着剤層の製造
ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面をシリコーン系剥離剤で剥離処理した剥離シートを用意した。当該剥離シートの剥離処理面に、調製した粘着性組成物Pの塗布溶液を、乾燥後の厚さが25μmになるようにアプリケーターで塗工した。塗工後、90℃、1分の条件で加熱し、希釈溶剤を十分に除去して、塗布層を形成した。形成した塗布層に、ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面をシリコーン系剥離剤で剥離処理した剥離シートの剥離処理面を貼り合わせた。次に、紫外線照射装置(アイグラフィックス社製,製品名「アイグランテージECS-401GX型」)により下記の条件で紫外線を照射して塗布層を硬化させ、2枚の剥離シートにより挟持された粘着剤層を得た。
【0142】
4.ウィンドウフィルムの製造
ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面をシリコーン系剥離剤で剥離処理した剥離シートを用意した。当該剥離シートの剥離処理面に、調製した粘着性組成物Pの塗布溶液を、乾燥後の厚さが25μmになるようにアプリケーターで塗工した。塗工後、90℃、1分の条件で加熱し、希釈溶剤を十分に除去して、塗布層を形成した。形成した塗布層に、基材として、厚さ38μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの一方の主面を貼り合わせた。次に、紫外線照射装置(アイグラフィックス社製,製品名「アイグランテージECS-401GX型」)により下記の条件で紫外線を照射して塗布層を硬化させ、粘着剤層を形成して、PETフィルム/粘着剤層/剥離シートの構成を有するウィンドウフィルムを得た。
[紫外線照射条件]
・光源:高圧水銀灯
・照度:200mW/cm2
・光量:1000mJ/cm2
【0143】
(実施例2から9、比較例1から5)
粘着剤層を構成する(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の組成および分子量、架橋剤(B)の種類および配合量、活性エネルギー線硬化性化合物(C)の配合量、光重合開始剤(D)の種類および配合量、シランカップリング剤(E)の配合量、紫外線吸収剤(F)の配合量を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同じ方法により、ウィンドウフィルムを構成する粘着剤層、および、PETフィルム/粘着剤層/剥離シートの構成を有するウィンドウフィルムを製造した。
【0144】
【表1】
【0145】
表1に記載の略号等の詳細は以下の通りである。
((メタ)アクリル酸エステル重合体(A))
BA:アクリル酸n-ブチル
2EHA:アクリル酸2-エチルヘキシル
ACMO:N-アクリロイルモルホリン
IBXA:アクリル酸イソボルニル
HEA:アクリル酸2-ヒドロキシエチル
AA:アクリル酸
(架橋剤(B))
B1:イソシアネート系架橋剤(三井化学社製,製品名「タケネートD-110N」)
B2:エポキシ系架橋剤(三菱ガス化学社製、製品名「TETRAD-C」)
(活性エネルギー線硬化性化合物(C))
C1:ε-カプロラクトン変性トリス-(2-アクリロキシエチル)イソシアヌレート
(光重合開始剤(D))
D1:2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド
D2:1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンとベンゾフェノンとを1:1の質量比で混合したもの
(シランカップリング剤(E))
E1:3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン
(紫外線吸収剤(F))
F1:ベンゾフェノン系紫外線吸収剤(SOLVAY社製,CYASORB UV-24)
【0146】
実施例および比較例で作製した粘着剤層およびウィンドウフィルムを用いて以下の評価を行った。
【0147】
(粘着剤の貯蔵弾性率G’)
実施例および比較例で作製した粘着剤層を複数積層し、厚さ800μm(0.8mm)の積層体とした。得られた粘着剤層の積層体から、直径8mmの円柱体(高さ800μm)を打ち抜き、貯蔵弾性率測定用試料とした。
【0148】
測定用試料について、JIS K7244-1に準拠し、粘弾性測定装置(Anton Paar社製MCR301)を用いてねじりせん断法により、測定温度範囲-20~140℃、測定周波数1Hz、昇温速度4℃/minの条件で貯蔵弾性率を測定した。測定結果から、23℃の貯蔵弾性率を算出した。結果を表2に示す。
【0149】
(粘着剤のゲル分率の評価)
実施例および比較例で作製した粘着剤層を50mm×50mmのサイズに裁断して、その粘着剤層をポリエステル製メッシュ(品名:テトロンメッシュ#200)に包み、その質量を精密天秤にて秤量した。秤量値から上記メッシュ単独の質量を差し引くことにより、粘着剤のみの質量を算出した。このときの質量をM1とした。
【0150】
次に、上記ポリエステル製メッシュに包まれた粘着剤を、室温下(23℃)で酢酸エチルに24時間浸漬させた。その後メッシュを取り出し、温度23℃、相対湿度50%の環境下で、24時間風乾させ、さらに80℃のオーブン中にて12時間乾燥させた。乾燥後、その質量を精密天秤にて秤量した。秤量値から上記メッシュ単独の質量を差し引くことにより、粘着剤のみの質量を算出した。このときの質量をM2とした。得られたM1およびM2を用いて、ゲル分率およびゾル分率を以下の式から算出した。結果を表2に示す。
ゲル分率(%)=(M2/M1)×100
【0151】
(ウィンドウフィルムの粘着力)
実施例および比較例で作製したウィンドウフィルムの粘着力を以下のようにして測定した。得られたウィンドウフィルムを25mm幅、100mm長に裁断した。23℃、50%RHの環境下にて、上記ウィンドウフィルムから剥離シートを剥離し、露出した粘着剤層を厚さ3mmのフロートガラス板に貼付した。このとき、2kgのローラーで1往復ウィンドウフィルムを加圧することにより貼付した。貼付後、23℃、50%RHの条件下で24時間放置した。放置後、ウィンドウフィルムの粘着力(N/25mm)を、引張試験機(オリエンテック社製テンシロン)を用い、剥離速度0.3m/min、剥離角度180°の条件で測定した。なお、ここに記載した以外の条件はJIS Z0237:2009に準拠して、測定を行った。結果を表2に示す。
【0152】
(ウィンドウフィルムの水貼り後の粘着力)
実施例および比較例で作製したウィンドウフィルムの水貼り後の粘着力を以下のようにして測定した。得られたウィンドウフィルムを25mm幅、100mm長に裁断した。23℃、50%RHの環境下にて、上記ウィンドウフィルムから剥離シートを剥離し、露出した粘着剤層を厚さ3mmのフロートガラス板に貼付した。このとき、粘着剤層およびフロートガラスの両方にアニオン系界面活性剤の10質量%水溶液を噴霧した後、粘着剤層とフロートガラスとを接触させ、2kgのローラーで1往復ウィンドウフィルムを加圧することにより貼付した。貼付後、スキージにより粘着剤層とフロートガラスとの間に存在する水溶液を除去した。水貼りしたウィンドウフィルムを23℃、50%RHの条件下で168時間放置した。放置後、ウィンドウフィルムの水貼り後の粘着力(N/25mm)を、引張試験機(オリエンテック社製テンシロン)を用い、剥離速度0.3m/min、剥離角度180°の条件で測定した。なお、ここに記載した以外の条件はJIS Z0237:2009に準拠して、測定を行った。結果を表2に示す。
【0153】
(24時間後粘着力に対する水貼り後の粘着力の比)
上記の方法にて得られたウィンドウフィルムの粘着力の測定結果より、24時間後粘着力に対する水貼り後の粘着力の比を算出した。結果を表2に示す。
【0154】
(粘着剤層およびウィンドウフィルムの光学物性)
粘着剤層の全光線透過率、ヘイズ値およびL***表色系における色度a*および色度b*を以下のようにして測定した。また、水貼り後のウィンドウフィルムの全光線透過率およびヘイズ値を以下のようにして測定した。結果を表2に示す。
【0155】
実施例および比較例で得られた粘着剤層から剥離シートを剥離し、露出した粘着剤層を厚さ3mmのフロートガラス板に貼付して、これを測定サンプルとした。フロートガラス板でバックグラウンド測定を行った上で、上記測定サンプルについて、JISK7361-1:1997に準拠して、ヘイズメーター(日本電色工業社製、NDH-5000)を用いて粘着剤層およびの全光線透過率(%)を測定した。また、JISK7136:2000に準拠して、ヘイズメーター(日本電色工業社製、NDH-5000)を用いて粘着剤層のヘイズ値を測定した。結果を表2に示す。
【0156】
実施例および比較例で得られた粘着剤層について、同時測光分光式色度計(日本電色工業社製,製品名「SQ2000」)を使用し、透過光において、CIE1976L***表色系により規定される色度a*および色度b*を測定した。結果を表2に示す。
【0157】
実施例および比較例で得られたウィンドウフィルムから剥離シートを剥離し、23℃、50%RHの環境下にて、露出した粘着剤層を厚さ3mmのフロートガラス板に貼付して、これを測定サンプルとした。なお、このとき、粘着剤層およびフロートガラスの両方にアニオン系界面活性剤の10質量%水溶液を噴霧した後、粘着剤層とフロートガラスとを接触させ、2kgのローラーで1往復ウィンドウフィルムを加圧することにより貼付した。貼付後、スキージにより粘着剤層とフロートガラスとの間に存在する水溶液を除去した。水貼りしたウィンドウフィルムを23℃、50%RHの条件下で168時間放置した。放置後、フロートガラス板でバックグラウンド測定を行った上で、上記測定サンプルについて、JISK7361-1:1997に準拠して、ヘイズメーター(日本電色工業社製、NDH-5000)を用いてウィンドウフィルムの全光線透過率を測定した。また、上記測定サンプルについて、JISK7136:2000に準拠して、ヘイズメーター(日本電色工業社製、NDH-5000)を用いてウィンドウフィルムのヘイズ値を測定した。結果を表2に示す。
【0158】
(施工性の評価)
ウィンドウフィルムの施工性(位置ずらし性)を、以下のようにして評価した。噴霧器を用いて、ガラス面全面に、アニオン系界面活性剤の10質量%水溶液を噴霧した。その後、ガラス面に、実施例および比較例で作製したウィンドウフィルムを配置して、ウィンドウフィルムを、スキージを使用して押圧しながら手作業にて水貼りした。その後、施工時の位置合わせを模して、手作業にてウィンドウフィルムを、施工液を除去しながらガラス面に平行に1cmずらした。その後、粘着剤層とガラス面との界面を目視で観察し、粘着剤層の外観を以下に示す基準により評価した。結果を表2に示す。
A:白濁は発生せずに良好に実使用できるレベルであった(外観変化なし)
B:僅かに白濁が発生していたが実使用が許容されるレベルであった(手指の押圧部に僅かに粘着剤層の変形とみられる白濁あり)
F:顕著な白濁が発生しており実使用上問題となるレベルであった(手指の押圧部に明らかな粘着剤層の変形とみられる白濁あり)
【0159】
(飛散防止性の評価)
長さ170mm×幅150mm×厚み1mmのソーダライムガラス板(日本板硝子社製)に、実施例および比較例で得られたウィンドウフィルムの剥離シートを剥離し、露出した粘着剤層を貼り合せた。その後、テーブルの上に設置した高さ10mmの2つの台の上に、上記ガラス板とウィンドウフィルムとからなる積層体を配置した。このとき、ウィンドウフィルム側が上向き(上記の台とは反対側の向き)となり、当該積層体の長辺方向の両端部から10mm部分までが上記台上にそれぞれ載置され、中央部が浮いた状態(高さ10mm)となるように配置した。そして、その積層体の中央部に対して、高さ30cmから直径31.75mmの鉄球(200g)を落下させた。その後の積層体の状態を目視により観察し、以下の基準により飛散防止性を評価した。結果を表2に示す。
A…ウィンドウフィルムが裂けず、ガラスが飛散しなかった。
F…ウィンドウフィルムが裂けて、ガラスが飛散した。
【0160】
【表2】
【0161】
表2より、実施例1から9のウィンドウフィルムは、施工液との接触後であっても、位置ずらし性および飛散防止性に優れることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0162】
本発明のウィンドウフィルムは、たとえば、施工液を用いて被着体に貼付される粘着フィルムとして好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0163】
1…ウィンドウフィルム
10…基材
11…粘着剤層
12…ハードコート層
図1A
図1B