IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社富士通ゼネラルの特許一覧

<>
  • 特開-空気調和機 図1A
  • 特開-空気調和機 図1B
  • 特開-空気調和機 図2
  • 特開-空気調和機 図3
  • 特開-空気調和機 図4
  • 特開-空気調和機 図5
  • 特開-空気調和機 図6
  • 特開-空気調和機 図7
  • 特開-空気調和機 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023146403
(43)【公開日】2023-10-12
(54)【発明の名称】空気調和機
(51)【国際特許分類】
   F24F 11/875 20180101AFI20231004BHJP
   F24F 11/86 20180101ALI20231004BHJP
【FI】
F24F11/875
F24F11/86
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022053563
(22)【出願日】2022-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000006611
【氏名又は名称】株式会社富士通ゼネラル
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】仲田 昇平
(72)【発明者】
【氏名】織田 旺伸
(72)【発明者】
【氏名】廣崎 佑
(72)【発明者】
【氏名】藤 利行
【テーマコード(参考)】
3L260
【Fターム(参考)】
3L260AA01
3L260AB02
3L260AB06
3L260BA02
3L260CA12
3L260CB81
3L260FA03
3L260FB02
3L260FB57
(57)【要約】
【課題】快適性の低下を抑制する。
【解決手段】実施形態の空気調和機は、冷媒を圧縮する圧縮機と、室内の空気と冷媒を熱交換する室内機と、室外の空気と冷媒を熱交換する室外機と、冷媒と熱交換する蓄熱部と、室内の温度である室内温度を検出する室温センサと、室内温度と設定温度の差に基づいて圧縮機を駆動し、且つ、設定温度の差が所定値を下回ったときにときに蓄熱部での熱交換を行わせる制御部と、を有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒を圧縮する圧縮機と、
室内の空気と前記冷媒を熱交換する室内機と、
室外の空気と前記冷媒を熱交換する室外機と、
前記冷媒と熱交換する蓄熱部と、
前記室内の温度である室内温度を検出する室温センサと、
前記室内温度と設定温度の差に基づいて前記圧縮機を駆動し、且つ、前記差が所定値を下回ったときに前記蓄熱部での熱交換を行わせる制御部と、
を有することを特徴とする空気調和機。
【請求項2】
第1の冷媒を循環させる第1の冷媒回路と、
第2の冷媒を循環させる第2の冷媒回路と、
前記第1の冷媒と、前記第2の冷媒とを熱交換する熱交換器と、を有し、
前記圧縮機と、前記室外機とは、前記第1の冷媒回路に含まれ、
前記室内機と、前記蓄熱部とは、前記第2の冷媒回路に含まれる、
ことを特徴とする請求項1に記載の空気調和機。
【請求項3】
前記蓄熱部が蓄積した蓄熱量を検出する検出部を更に有し、
前記制御部は、前記蓄熱部での熱交換を行わせているときに、検出した前記蓄熱量が所定値となった場合、前記圧縮機の駆動を停止し、且つ、前記室内機に流入する冷媒を前記蓄熱部で熱交換させる、
ことを特徴とする請求項2に記載の空気調和機。
【請求項4】
前記室内機と、前記蓄熱部とは、前記第2の冷媒回路において直列に接続される、
ことを特徴とする請求項3に記載の空気調和機。
【請求項5】
前記第1の冷媒は、R290(プロパン)である、
ことを特徴とする請求項3または4に記載の空気調和機。
【請求項6】
前記制御部は、前記圧縮機を最低回転数で運転し、且つ、前記差が所定値を下回ったときに前記蓄熱部での熱交換を行わせる、
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の空気調和機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の技術は、空気調和機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、空気調和機では、検出した室内温度と目標室内温度(設定温度)との温度差に応じた回転数(周波数)で圧縮機を動作させることで空調能力を調整し、室内温度が設定温度に近づくように制御している。具体的には、室内温度が設定温度に近づいた場合、圧縮機の回転数を低下させることで空調能力を低減させ、室内温度が設定温度近傍から外れないように制御している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002-115923号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の従来技術では、室内温度が設定温度に近づいて設定温度近傍から外れないように制御している際に、空調負荷が圧縮機が最低回転数で動作しているときの空調能力を下回る場合、圧縮機が停止するサーモオフが頻発して快適性が損なわれるという問題がある。
【0005】
例えば、空調負荷が圧縮機の回転数を最も低くして運転している状態の空調能力を下回る場合は、それ以上空調能力を低減させることができないことから、圧縮機を停止することとなる。そして、空調運転の停止により室内温度が変化して設定温度から外れたところで、空調運転を再起動する。このような断続運転が繰り返される場合、設定温度に対する室内温度の変動が大きくなり、快適性が損なわれる。
【0006】
開示の技術は、かかる点に鑑みてなされたものであって、快適性の低下を抑制する空気調和機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様による空気調和機は、冷媒を圧縮する圧縮機と、室内の空気と冷媒を熱交換する室内機と、室外の空気と冷媒を熱交換する室外機と、冷媒と熱交換する蓄熱部と、室内の温度である室内温度を検出する室温センサと、室内温度と設定温度の差に基づいて圧縮機を駆動し、且つ、設定温度の差が所定値を下回ったときにときに蓄熱部での熱交換を行わせる制御部と、を有する。
【発明の効果】
【0008】
快適性の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1A図1Aは、実施形態にかかる空気調和機の一例を示す回路図である。
図1B図1Bは、実施形態にかかる空気調和機の一例を示す回路図である。
図2図2は、実施形態にかかる空気調和機の一例を示すブロック図である。
図3図3は、実施形態にかかる空気調和機の動作例を示すフローチャートである。
図4図4は、蓄熱材の温度と蓄熱量との関係を説明する説明図である。
図5図5は、実施形態にかかる空気調和機の運転例を説明する説明図である。
図6図6は、蓄熱を利用した能力の引き下げを説明する説明図である。
図7図7は、従来の空気調和機の運転例を説明する説明図である。
図8図8は、変形例にかかる空気調和機の一例を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、実施形態にかかる空気調和機を説明する。実施形態において同一の機能を有する構成には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。なお、以下の実施形態で説明する空気調和機は、一例を示すに過ぎず、実施形態を限定するものではない。また、以下の各実施形態は、矛盾しない範囲内で適宜組みあわせてもよい。
【0011】
図1Aは、実施形態にかかる空気調和機の一例を示す回路図である。図1Aに示すように、空気調和機1は、室外機2と室内機3とを備えている。室外機2は、屋外に設置されている。室内機3は、空気調和機1により冷暖房される室内に設置されている。空気調和機1は、冷媒回路5と水回路6とをさらに備えている。
【0012】
冷媒回路5は、冷媒が循環する流路が形成されている。冷媒回路5の冷媒は、例えばR290(プロパン)である。なお、冷媒回路5の冷媒については、R290に限定するものではなく、例えばR32やR1234yfなどであってもよい。
【0013】
水回路6は、他の冷媒として熱媒体(以下の説明では水)が循環する流路が形成されている。なお、水回路6を循環する熱媒体は不凍液等でも良い。
【0014】
冷媒回路5は、室外機2の内部に配置されている。冷媒回路5は、圧縮機11と四方弁12と室外熱交換器14と膨張弁15と中間熱交換器16とを備えている。
【0015】
圧縮機11は、吸入管17と吐出管18とを備えている。圧縮機11は、吸入管17を介して供給される低圧気相冷媒を圧縮し、低圧気相冷媒が圧縮されることにより生成された高圧気相冷媒を吐出管18を介して吐出する。
【0016】
四方弁12は、圧縮機11の吸入管17、吐出管18、中間熱交換器16とに接続される液管および室外熱交換器14に接続される液管の4つの液管が接続され、冷媒回路5における冷媒の流れる方向を暖房運転時または冷房運転時で切り替えるための弁である。図示例のように、暖房運転時には、四方弁12は、吐出管18からの冷媒を中間熱交換器16と接続する液管に流し、室外熱交換器14と接続する液管からの冷媒を吸入管17に流すように切り替える。冷房運転時には、四方弁12は、吐出管18からの冷媒を室外熱交換器14に接続される液管に流し、中間熱交換器16と接続される液管からの冷媒を吸入管17に流すように切り替える。以後の説明では、四方弁12が暖房運転時の状態/冷房運転時の状態に切り替えられた状態を、それぞれ暖房モード/冷房モードとよぶ。
【0017】
室外熱交換器14は、膨張弁15に接続されている。中間熱交換器16は、膨張弁15に接続されている。
【0018】
水回路6は、ポンプ21a、21bと、室内熱交換器22とを備えている。ポンプ21a、21bは、室外機2の内部に配置されている。ポンプ21aは、後述する蓄熱回路31において中間熱交換器16に接続されている。ポンプ21bは、蓄熱回路31と室内熱交換器22の間に接続されている。ポンプ21aは、中間熱交換器16から供給される水を蓄熱回路31および水回路6において循環させるポンプである。ポンプ21bは、蓄熱回路31から供給される水を室内熱交換器22に循環させるポンプである。室内熱交換器22は、室内機3の内部に配置されている。室内熱交換器22は、蓄熱部35および中間熱交換器16に接続されている。
【0019】
空気調和機1の水回路6は、蓄熱回路31をさらに備えている。蓄熱回路31は、室外機2の内部に配置されている。蓄熱回路31には、蓄熱用流路32が形成されている。水回路6のうちの中間熱交換器16から室内熱交換器22の間の第1流路33は、蓄熱用流路32を介して室内熱交換器22と中間熱交換器16との間の第2流路34に接続されている。
【0020】
ポンプ21aと室内熱交換器22との間の第1流路33は、蓄熱用流路32を介して、室内熱交換器22と中間熱交換器16との間の第2流路34に接続されている。蓄熱回路31は、蓄熱部35と電磁弁36aを備えている。第2流路34は、電磁弁36bを備えている。
【0021】
蓄熱部35は、内部に蓄熱材が充填されている。蓄熱部35は、蓄熱用流路32を流れる水の温度が蓄熱部35の温度よりも高い場合、水からの熱を蓄える。また、蓄熱部35は、蓄熱用流路32を流れる水の温度が蓄熱部35の温度よりも低い場合、蓄えた熱を水へ放出する。
【0022】
電磁弁36aは、蓄熱用流路32を介して第1流路33と第2流路34とが接続されるように開いたり、第1流路33と第2流路34とが接続されないように蓄熱用流路32を閉じたりする。電磁弁36bは、第2流路34を介して室内熱交換器22および蓄熱部35と、中間熱交換器16とが接続されるように開いたり、室内熱交換器22および蓄熱部35と、中間熱交換器16とが接続されないように閉じたりする。
【0023】
このように、水回路6において、室内熱交換器22と蓄熱部35とは並列に接続されている。そして、水回路6では、ポンプ21a、21bの動作と、電磁弁36a、36bの開/閉とによって、回路内の水の流路を制御することができる。
【0024】
例えば、水回路6では、ポンプ21a、21bを動作させ、電磁弁36aを閉じ、電磁弁36bを開くことで、中間熱交換器16と室内熱交換器22との間で水を循環させることができる。また、水回路6では、ポンプ21a、21bを動作させ、電磁弁36a、36bを開くことで、中間熱交換器16からの水を室内熱交換器22と蓄熱部35に循環させることができる。水回路6では、ポンプ21aを動作させ、ポンプ21bを停止させ、電磁弁36a、36bを開くことで、中間熱交換器16と蓄熱部35との間で水を循環させることができる。また、水回路6では、ポンプ21aを停止させ、ポンプ21bを動作させ、電磁弁36aを開き、電磁弁36bを閉じることで、蓄熱部35と室内熱交換器22との間で水を循環させることができる。
【0025】
なお、水回路6については、室内熱交換器22と蓄熱部35とを直列に接続する構成であってもよい。図1Bは、実施形態にかかる空気調和機の一例を示す回路図であり、より具体的には、室内熱交換器22と蓄熱部35とを直列に接続する水回路6aの一例である。
【0026】
図1Bに示すように、水回路6aは、ポンプ21cと、室内熱交換器22とを備えている。ポンプ21cは、室外機2aの内部に配置されている。ポンプ21cは、中間熱交換器16と室内熱交換器22との間に接続されている。ポンプ21cは、中間熱交換器16から供給される水を室内熱交換器22に循環させるポンプである。室内熱交換器22は、第2流路34aおよび蓄熱回路31aを介して中間熱交換器16に接続されている。
【0027】
第2流路34aは、電磁弁36cを備えている。蓄熱回路31aは、室外機2aの内部に配置されている。蓄熱回路31aには、蓄熱用流路32aが形成されている。蓄熱用流路32aは、電磁弁36dと蓄熱部35を備えている。
【0028】
このように室内熱交換器22と蓄熱部35を直列に接続する水回路6aでは、電磁弁36c、36dの開/閉によって、回路内の水の流路を制御することができる。例えば、水回路6aでは、電磁弁36cを開き、電磁弁36dを閉じることで、中間熱交換器16と室内熱交換器22との間で水を循環させることができる。また、水回路6aでは、電磁弁36cを閉じ、電磁弁36dを開くことで、中間熱交換器16からの水を室内熱交換器22、蓄熱部35の順に循環させることができる。
【0029】
なお、以後の説明において、ポンプ21a、21b、21cを区別しない場合はポンプ21と称するものとする。同様に、電磁弁36a、36b、36c、36dを区別しない場合は電磁弁36と称するものとする。
【0030】
図2は、実施形態にかかる空気調和機1の一例を示すブロック図である。図2に示すように、空気調和機1は、圧縮機11、四方弁12、電磁弁36、室外ファン41、室内ファン42、室温センサ37、ポンプ21および蓄熱部センサ38と電気的に接続され、各部の制御を行う制御装置43を備えている。
【0031】
室外ファン41は、室外機2の内部に配置されている。室外ファン41は、制御装置43に制御され、室外熱交換器14に外気が熱的に接触するように、外気を送風する。室内ファン42は、室内機3の内部に配置されている。室内ファン42は、制御装置43に制御され、室内熱交換器22に室内の空気が熱的に接触するように、かつ、室内熱交換器22に熱的に接触した室内の空気が室内機3から室内に吹き出るように、室内の空気を送風する。
【0032】
室温センサ37は、室内の温度である室内温度を検出する温度センサである。蓄熱部センサ38は、蓄熱部35が蓄えた蓄熱量の検出にかかる各種センサである。例えば、蓄熱部センサ38は、蓄熱部35の温度を検出する温度センサ、蓄熱回路31を流れる水の温度と流量を検出する温度センサおよび流量検出センサなどである。
【0033】
制御装置43は、制御部の一例としてのコンピュータであり、記憶装置44とCPU45とを備えている。記憶装置44は、制御装置43にインストールされるコンピュータプログラムを記憶し、CPU45により利用される情報を記憶する。CPU45は、制御装置43にインストールされるコンピュータプログラムを実行することにより、情報処理を行い、空気調和機1の動作を制御する。
【0034】
制御装置43は、操作部(図示しない)による設定内容(暖房運転または冷房運転とその設定温度)と、室温センサ37、蓄熱部センサ38の検出結果を受け付けて圧縮機11、四方弁12、電磁弁36、室外ファン41、室内ファン42およびポンプ21を制御する。記憶装置44には、圧縮機11を駆動する際の最低圧縮機回転数が記憶されている。この最低圧縮機回転数は、圧縮機11に固有の値であり、空気調和機1の仕様として予め決められた最も低い回転数、例えば圧縮機11の仕様として許容される最低回転数などである。圧縮機11は、最低圧縮機回転数より小さい圧縮機回転数では低圧気相冷媒を適切に圧縮することができず、最低圧縮機回転数以上の圧縮機回転数で低圧気相冷媒を適切に圧縮することができる。
【0035】
空気調和機1が制御装置43の制御のもとで実行する動作は、冷房運転と暖房運転とを含んでいる。
【0036】
[冷房運転]
冷房運転は、たとえば、空気調和機1がユーザにより操作されたときに実行される。制御装置43は、空気調和機1が冷房運転を実行するときに、四方弁12を制御し、四方弁12を冷房モードに切り替える。制御装置43は、ユーザにより設定された設定温度と、室内の室温との温度差に基づいて圧縮機11の回転数を算出し、圧縮機11を制御することにより、吸入管17を介して供給された低圧気相冷媒をその算出された回転数で圧縮する。低圧気相冷媒は、圧縮機11により圧縮されることにより、高圧気相冷媒に状態変化する。圧縮機11は、高圧気相冷媒を吐出管18に吐出する。四方弁12は、冷房モードに切り替えられていることにより、吐出管18に吐出された高圧気相冷媒を室外熱交換器14に供給する。
【0037】
制御装置43は、室外ファン41を制御し、外気が室外熱交換器14と熱的に接触するように、外気を送風する。室外熱交換器14は、四方弁12から供給された高圧気相冷媒と外気とを熱交換し、高圧気相冷媒を冷却し、外気を加熱する。高圧気相冷媒は、冷却されることにより、過冷却状態の高圧液相冷媒に状態変化する。すなわち、室外熱交換器14は、空気調和機1が冷房運転を実行するときに、凝縮器として機能する。室外熱交換器14は、さらに、高圧液相冷媒を膨張弁15に供給する。
【0038】
膨張弁15は、室外熱交換器14から中間熱交換器16に流れる冷媒の流量を調節し、室外熱交換器14から供給された高圧液相冷媒を膨張させる。高圧液相冷媒は、膨張することにより、湿り度が高い状態の低圧気液二相冷媒に状態変化する。膨張弁15は、さらに、低圧気液二相冷媒を中間熱交換器16に供給する。
【0039】
中間熱交換器16は、膨張弁15から供給された低圧気液二相冷媒と、水回路6を循環する水とを熱交換し、水を冷却し、低圧気液二相冷媒を加熱する。低圧気液二相冷媒は、中間熱交換器16により加熱されることにより、低圧気相冷媒に状態変化する。すなわち、中間熱交換器16は、空気調和機1が冷房運転を実行するときに、蒸発器として機能する。中間熱交換器16は、さらに、低圧気相冷媒を四方弁12に供給する。四方弁12は、冷房モードに切り替えられていることにより、中間熱交換器16から供給された低圧気相冷媒を、吸入管17を介して圧縮機11に供給する。
【0040】
制御装置43は、空気調和機1が冷房運転を実行するときに、電磁弁36を制御し、水が蓄熱用流路32を流れないようにする。ポンプ21は、中間熱交換器16により冷却された水を室内熱交換器22に供給し、水を水回路6に循環させる。室内熱交換器22は、ポンプ21から供給された水と、室内機3が設置された室内の空気とを熱交換することにより、水を加熱し、室内の空気を冷却する。加熱された水は、水回路6を循環することにより、中間熱交換器16に供給される。制御装置43は、室内ファン42を制御し、室内の空気が室内熱交換器22に熱的に接触するように、かつ、室内熱交換器22により冷却された空気が室内に吹き出すように、室内の空気を送風する。すなわち、室内機3は、室内熱交換器22が室内の空気を冷却することにより、室内を冷房する。
【0041】
[暖房運転]
暖房運転は、たとえば、空気調和機1がユーザにより操作されたときに実行される。制御装置43は、空気調和機1が暖房運転を実行するときに、四方弁12を制御し、四方弁12を暖房モードに切り替える。制御装置43は、ユーザにより設定された設定温度と、室内の室温との温度差に基づいて回転数を算出し、圧縮機11を制御することにより、吸入管17を介して供給された低圧気相冷媒をその算出された回転数で圧縮する。低圧気相冷媒は、圧縮機11により圧縮されることにより、高圧気相冷媒に状態変化する。圧縮機11は、高圧気相冷媒を吐出管18に吐出する。四方弁12は、暖房モードに切り替えられていることにより、吐出管18に吐出された高圧気相冷媒を中間熱交換器16に供給する。
【0042】
中間熱交換器16は、四方弁12から供給された高圧気相冷媒と、水回路6を循環する水とを熱交換し、水を加熱し、高圧気相冷媒を冷却する。高圧気相冷媒は、中間熱交換器16により冷却されることにより、過冷却状態の高圧液相冷媒に状態変化する。すなわち、中間熱交換器16は、空気調和機1が暖房運転を実行するときに、凝縮器として機能する。中間熱交換器16は、さらに、高圧液相冷媒を膨張弁15に供給する。
【0043】
膨張弁15は、中間熱交換器16から室外熱交換器14に流れる冷媒の流量を調節し、室外熱交換器14から供給された高圧液相冷媒を膨張させる。高圧液相冷媒は、膨張することにより、湿り度が高い状態の低圧気液二相冷媒に状態変化する。膨張弁15は、さらに、低圧気液二相冷媒を室外熱交換器14に供給する。
【0044】
制御装置43は、室外ファン41を制御し、外気が室外熱交換器14に熱的に接触するように、外気を送風する。室外熱交換器14は、膨張弁15から供給された低圧気液二相冷媒と外気とを熱交換し、低圧気液二相冷媒を加熱し、外気を冷却する。低圧気液二相冷媒は、加熱されることにより、湿り度が低い状態の低圧気相冷媒に状態変化する。すなわち、室外熱交換器14は、空気調和機1が暖房運転を実行するときに、凝縮器として機能する。室外熱交換器14は、さらに、低圧気相冷媒を四方弁12に供給する。四方弁12は、暖房モードに切り替えられていることにより、室外熱交換器14から供給された低圧気相冷媒を吸入管17に供給し、吸入管17を介して低圧気相冷媒を圧縮機11に供給する。
【0045】
ポンプ21は、中間熱交換器16により加熱された水を室内熱交換器22に供給し、水を水回路6に循環させる。室内熱交換器22は、ポンプ21から供給された水と、室内機3が設置された室内の空気とを熱交換することにより、水を冷却し、室内の空気を加熱する。加熱された水は、水回路6を循環することにより、中間熱交換器16に供給される。制御装置43は、室内ファン42を制御し、室内の空気が室内熱交換器22に熱的に接触するように、かつ、室外機2により加熱された空気が室内に吹き出すように、室内の空気を送風する。すなわち、室内機3は、室内熱交換器22が室内の空気を加熱することにより、室内を暖房する。
【0046】
制御装置43は、空気調和機1が暖房運転を実行するときに、設定温度と、室内の室温との温度差に基づいて、暖房専用運転、暖房兼蓄熱運転、蓄熱暖房運転との切り替えを行う。
【0047】
ここで、暖房専用運転とは、例えば、ポンプ21a、21bを動作させ、電磁弁36aを遮断、電磁弁36bを開放することで、中間熱交換器16により加熱された水を室内熱交換器22のみに循環させる運転モードである。この運転モードでは、室外機2側の冷媒回路5より中間熱交換器16を介して伝達された出力(熱量)は、そのまま室内熱交換器22より室内に出力されることとなる。
【0048】
また、暖房兼蓄熱運転とは、例えば、ポンプ21a、21bを動作させ、電磁弁36a、36bを開くことで、中間熱交換器16からの水を室内熱交換器22と蓄熱部35に循環させる運転モードである。この運転モードでは、室外機2側の冷媒回路5より中間熱交換器16を介して伝達された出力(熱量)は、室内熱交換器22と、蓄熱部35とに出力されることとなる。
【0049】
また、蓄熱暖房運転とは、例えば、ポンプ21aを停止させ、ポンプ21bを動作させ、電磁弁36aを開き、電磁弁36bを閉じることで、蓄熱部35と室内熱交換器22との間で水を循環させる運転モードである。また、この運転モードでは、圧縮機11の駆動を停止させ、冷媒回路5における冷凍サイクルを停止する。よって、この運転モードでは、冷媒回路5における冷凍サイクルが停止されたままで、蓄熱部35が蓄えた熱が室内熱交換器22より出力されることとなる。
【0050】
ここで、制御装置43が制御する暖房専用運転、暖房兼蓄熱運転および蓄熱暖房運転の切り替え動作について詳細に説明する。図3は、実施形態にかかる空気調和機1の動作例を示すフローチャートである。
【0051】
図3に示すように、室内温度と設定温度の差に基づいて圧縮機11を駆動する暖房運転が開始されると、制御装置43は、その温度差に基づいて空気調和機1の暖房能力が空調負荷を上回っているか否かを判定する(S1)。暖房能力とは、室内熱交換器22での冷媒と空気との熱交換量に言い換えることができる。なお、暖房運転開始時の運転モードは、暖房専用運転とする。
【0052】
例えば、制御装置43は、圧縮機11を駆動した暖房運転を予め定めた所定時間だけ継続したとき、室内温度と設定温度との温度差が所定値(例えば温度差1度)を下回る場合、暖房能力が空調負荷を上回っているものと判定する。また、制御装置43は、室内温度と設定温度との温度差の時間変化をもとに、単位時間あたりに縮まる温度差の変化量が所定値を上回る場合、暖房能力が空調負荷を上回っているものと判定してもよい。
【0053】
空気調和機1の暖房能力が空調負荷を上回っていない場合(S1:No)、制御装置43は、S1の処理を戻し、そのまま暖房専用運転を継続する。
【0054】
空気調和機1の暖房能力が空調負荷を上回っている場合(S1:Yes)、制御装置43は、空気調和機1における暖房能力を落とすため、圧縮機11の回転数を予め定めた所定の値だけ低下させる(S2)。
【0055】
ついで、制御装置43は、圧縮機11の回転数が記憶装置44に記憶された最低圧縮機回転数と一致するか否かを判定する(S3)。圧縮機11の回転数が最低圧縮機回転数と一致しない場合(S3:No)、すなわち圧縮機11の回転数が最低圧縮機回転数より大きい場合、制御装置43は、S1へ処理を戻す。したがって、圧縮機11の回転数が最低圧縮機回転数より大きい場合、制御装置43は、暖房専用運転を継続する。
【0056】
圧縮機11の回転数が最低圧縮機回転数と一致する場合(S3:Yes)、制御装置43は、運転モードを暖房兼蓄熱運転に切り替える(S4)。このように、圧縮機11を最低圧縮機回転数で駆動して暖房能力を最も低くしているにもかかわらず、空気調和機1の暖房能力が空調負荷を上回っている場合、制御装置43は、暖房兼蓄熱運転に切り替える。これにより、室外機2側の冷媒回路5より中間熱交換器16を介して伝達された出力(熱量)は、室内熱交換器22と、蓄熱部35とに出力されることとなる。このため、空気調和機1では、室外機2側からの出力の一部で蓄熱部35での蓄熱を行うことができるとともに、室内熱交換器22による暖房能力を更に低く抑えることができる。これにより、暖房能力と室内温度の上昇による運転停止が生じないようにすることができる。したがって、空気調和機1では、断続運転が繰り返されて室内温度の変動が大きくなるような、快適性が低下する事態を抑止できる。
【0057】
次いで、制御装置43は、蓄熱部センサ38による検出結果に基づいて、蓄熱部35が蓄えた熱量(蓄熱量)が蓄熱部35の蓄熱限界量以上となっているか否かを判定する(S5)。
【0058】
蓄熱部センサ38による検出結果に基づいて制御装置43が行う、蓄熱量が蓄熱限界量以上であるか否かの判定方法については、次のようなものがある。
【0059】
まず、蓄熱部35の蓄熱材温度は室内凝縮温度を上回ることがないため、蓄熱部35における蓄熱材温度と室内側凝縮温度の温度差が閾値以下である場合に蓄熱量が蓄熱限界量以上であるとする判定方法がある。この判定方法における温度差の閾値は、例えば1℃などとしてもよい。
【0060】
また、蓄熱部35で熱交換しなくなれば蓄熱部35における蓄熱が終了していると判断できることから、蓄熱部35の入口と、蓄熱部35の出口とにおける水の温度差が閾値以下である場合に蓄熱量が蓄熱限界量以上であるとする判定方法がある。この判定方法における温度差の閾値は、例えば1℃などとしてもよい。
【0061】
また、蓄熱部35の蓄熱材の設計許容温度まで上昇した場合には蓄熱が終了していると判断できることから、蓄熱部35の蓄熱材温度が閾値以上である場合に蓄熱量が蓄熱限界量以上であるとする判定方法がある。
【0062】
図4は、蓄熱材の温度と蓄熱量との関係を説明する説明図である。図4に示すように、蓄熱材には、蓄熱する際に相変化を伴うものと、相変化を伴わないものがある。G1は相変化を伴わない顕熱によって蓄熱する蓄熱材であり、G2は相変化を伴う潜熱によって蓄熱する蓄熱材である。グラフG1、G2ともに、グラフの傾きは物性(比熱)により定まるが、グラフG2では相変化において、温度と蓄熱量が比例しない場合がある。しかしながら、相変化を伴う潜熱蓄熱材であっても、ある程度は温度で蓄熱量がわかる。したがって、蓄熱材の設計許容温度とする閾値(例えば55℃)まで蓄熱部35の蓄熱材温度が上昇した場合には蓄熱量が蓄熱限界量以上であると判定してもよい。
【0063】
また、制御装置43は、蓄熱量を計算し、その計算した蓄熱量が閾値以上である場合に蓄熱量が蓄熱限界量以上であると判定してもよい。例えば、制御装置43は、蓄熱部35の入口と、蓄熱部35の出口とにおける水の温度差と、その水の流量(ポンプ回転数など)から蓄熱熱交換量[W]を算出する。ついで、制御装置43は、蓄熱熱交換量[W]と蓄熱時間[s]から蓄熱量[kJ]を算出する。ついで、制御装置43は、算出した蓄熱量[kJ]が閾値(例えば1000[kJ])以上である場合に、蓄熱量が蓄熱限界量以上であると判定する。
【0064】
蓄熱量が蓄熱限界量以上でない場合(S5:No)、制御装置43は、S5へ処理を戻し、暖房兼蓄熱運転を継続する。
【0065】
蓄熱量が蓄熱限界量以上である場合(S5:Yes)、制御装置43は、運転モードを蓄熱暖房運転に切り替える(S6)。これにより、空気調和機1では、冷媒回路5における冷凍サイクルが停止されたままで、蓄熱部35が蓄積した熱が室内熱交換器22より出力されることとなる。
【0066】
ついで、制御装置43は、蓄熱部センサ38による検出結果に基づいて、蓄熱部35が蓄えた熱量(蓄熱量)が所定蓄熱量以下となっているか否かを判定する(S7)。
【0067】
蓄熱部センサ38による検出結果に基づいて制御装置43が行う、蓄熱量が所定蓄熱量以下であるか否かの判定方法については、次のようなものがある。
【0068】
まず、蓄熱部35の蓄熱量が減ることで、その蓄熱材温度が閾値以下となった場合に、蓄熱量が所定蓄熱量以下であるとする判定方法がある。この判定方法における閾値は、蓄熱部35の蓄熱材に応じて、例えば35℃などとしてもよい。
【0069】
また、蓄熱部35の蓄熱材から得られる熱が減ることで、蓄熱部35の出口からの水の温度が閾値以下となった場合に、蓄熱量が所定蓄熱量以下であるとする判定方法がある。この判定方法における閾値は、蓄熱部35の蓄熱材に応じて、例えば35℃などとしてもよい。
【0070】
また、室内側で熱交換しても不快となるため、室内熱交換器22の入口における水の温度が閾値以下となった場合に、蓄熱量が所定蓄熱量以下であるとする判定方法がある。この判定方法における閾値は、室温等に応じて、例えば35℃などとしてもよい。
【0071】
また、室内側で熱交換できていない場合(能力が確保できていない)を想定し、室内熱交換器22の入口と、室内熱交換器22の出口とにおける水の温度差が閾値以下となった場合に、蓄熱量が所定蓄熱量以下であるとする判定方法がある。この判定方法における閾値は、例えば5℃などとしてもよい。
【0072】
また、制御装置43は、現在の蓄熱部35の蓄熱量を計算し、その計算した蓄熱量が閾値以下であるか否かを判定してもよい。具体的には、制御装置43は、蓄熱運転前の蓄熱量から蓄熱暖房中に蓄熱材から持ち出された熱量を減じることで、現在の蓄熱部35の蓄熱量を計算する。ついで、制御装置43は、計算した蓄熱量が閾値(例えば0[kJ])以下であるか否かを判定する。
【0073】
蓄熱部35が蓄積した熱量(蓄熱量)が所定蓄熱量以下となっていない場合(S7:No)、制御装置43は、S7へ処理を戻し、蓄熱暖房運転を継続する。
【0074】
蓄熱部35が蓄積した熱量(蓄熱量)が所定蓄熱量以下となっている場合(S7:Yes)、制御装置43は、蓄熱暖房運転を終了する。なお、この蓄熱暖房運転終了後において、暖房運転を継続する場合には、制御装置43は、S1に処理を戻すこととなる。
【0075】
図5は、実施形態にかかる空気調和機の運転例を説明する説明図である。図5において、上から1段目のグラフは、縦軸を温度[℃]、横軸を空気調和機1の運転時間[h]とし、室温と設定温度との関係を示している。また、上から2段目のグラフは、縦軸を圧縮機11の回転数[rpm]、横軸を空気調和機1の運転時間[h]とし、圧縮機11の時間変化を示している。また、上から3段目のグラフは、縦軸を蓄熱部35の蓄熱量[J]、横軸を空気調和機1の運転時間[h]とし、蓄熱部35の時間変化を示している。また、上から4段目のグラフは、縦軸を空気調和機1の暖房能力[W]、横軸を空気調和機1の運転時間[h]とし、暖房能力の時間変化を示している。
【0076】
図5に示すように、暖房運転開始時(t0)より室温が設定温度に到達(所定値まで近づく)し、かつ、圧縮機11が最低回転数となる時刻(t1)までの間は、圧縮機11の回転数を調節しながら暖房専用運転が行われる。
【0077】
ついで、圧縮機11が最低回転数となった時刻(t1)より、蓄熱部35が蓄熱完了(蓄熱量が蓄熱限界量となる)する時刻(t2)までの間は、暖房兼蓄熱運転が行われる。この暖房兼蓄熱運転時(t1~t2)においては、余剰能力を蓄熱部35への蓄熱に回すことで空気調和機1の暖房能力が引き下げられることとなる。すなわち、暖房兼蓄熱運転時(t1~t2)には、蓄熱を利用した暖房能力の引き下げを行うことができる。これにより、暖房能力と室内温度の上昇による運転停止が生じないようにすることができる。したがって、空気調和機1では、断続運転が繰り返されて室内温度の変動が大きくなるような、快適性が低下する事態を抑止できる。
【0078】
図6は、蓄熱を利用した能力の引き下げを説明する説明図である。図6に示すように、暖房兼蓄熱運転時(t1~t2)では、室外機2の出力(熱量)の一部は、蓄熱部35における蓄熱に利用される。このため、室内熱交換器22からの出力(暖房能力)は、引き下げられることとなる。
【0079】
ついで、蓄熱部35が蓄熱完了(蓄熱量が蓄熱限界量となる)する時刻(t2)から、その蓄熱量が所定値(例えば0[J])以下となる時刻(t3)までの間は、蓄熱暖房運転が行われる。これにより、空気調和機1では、圧縮機11を駆動することなく、蓄熱部35の蓄熱を利用した暖房運転を継続することができる。そして、制御装置43は、蓄熱部35の蓄熱量が所定値となった時刻(t3)以後は、圧縮機11を再起動させることで、暖房専用運転または暖房兼蓄熱運転を行う。
【0080】
図7は、従来の空気調和機の運転例を説明する説明図である。図7において、上から1段目のグラフは、縦軸を温度[℃]、横軸を従来の空気調和機の運転時間[h]とし、室温と設定温度との関係を示している。また、上から2段目のグラフは、縦軸を従来の空気調和機における圧縮機の回転数[rpm]、横軸を従来の空気調和機の運転時間[h]とし、圧縮機の時間変化を示している。また、上から3段目のグラフは、縦軸を従来の空気調和機の暖房能力[W]、横軸を従来の空気調和機の運転時間[h]とし、暖房能力の時間変化を示している。
【0081】
図7に示すように、従来の空気調和機では、暖房運転開始時(t10)より室温が設定温度に到達(所定値まで近づく)し、かつ、圧縮機が最低回転数となる時刻(t11)までの間は、圧縮機の回転数を調整した暖房運転が行われる。ついで、従来の空気調和機では、圧縮機を最低回転数とした暖房運転を継続し、室温が設定温度範囲の上限に達した時刻(t12)で、圧縮機の駆動を停止させることとなる。この圧縮機の駆動停止により、従来の空気調和機における暖房能力は0となり、室温が低下する。そして、室温が設定温度範囲の下限に達した時刻(t13)で、従来の空気調和機は、圧縮機を再起動させる。これにより、室温は再度上昇に転ずることとなる。
【0082】
図6と、図7における室温と設定温度との関係を示しているグラフ(上から1段目)を比較しても明らかなように、実施形態にかかる空気調和機1では、従来の空気調和機と比べて設定温度に対する室内温度の変動がより小さくなっている。このように、実施形態にかかる空気調和機1では、快適性の低下を抑制することができる。
【0083】
図8は、変形例にかかる空気調和機の一例を示す回路図である。変形例にかかる空気調和機1は、既述の空気調和機1の水回路6が省略され、冷媒回路5が他の冷媒回路61に置換されている。冷媒回路61は、既述の実施形態の空気調和機1の冷媒回路5の中間熱交換器16が室内熱交換器62に置換され、他の部分は、既述の冷媒回路5と同じである。室内熱交換器62は、室内機3の内部に配置されている。室内ファン42は、室内熱交換器62に室内の空気が熱的に接触するように、かつ、室内熱交換器62に熱的に接触した室内の空気が室内機3から室内に吹き出るように、室内の空気を送風する。
【0084】
変形例の空気調和機は、蓄熱回路63をさらに備えている。室内機3は、室外機2の内部に配置されている。蓄熱回路63には、蓄熱用流路64が形成されている。冷媒回路61のうちの膨張弁15と室内熱交換器62との間の第1流路65は、蓄熱用流路64を介して、室内熱交換器62と四方弁12との間の第2流路66に接続されている。蓄熱回路63は、蓄熱部67と電磁弁68とを備えている。蓄熱部67は、内部に蓄熱材が充填されている。蓄熱部67は、蓄熱用流路64を流れる冷媒に熱的に接触する。電磁弁68は、第1流路65と第2流路66とが接続されるように開いたり、第1流路65と第2流路66とが接続されないように閉じたりする。
【0085】
制御装置43は、上述した実施形態の空気調和機1と同様に、圧縮機11と四方弁12と室外ファン41と室内ファン42とを制御し、また、上述した実施形態の空気調和機1の電磁弁36と同様に、電磁弁68を制御する。例えば、制御装置43は、冷媒の流路が暖房専用運転、暖房兼蓄熱運転に対応したものとなるように、電磁弁68の開/閉を制御する。この変形例のように、1つの冷媒回路61に、蓄熱回路63を備える構成であってもよい。
【0086】
以上、空気調和機の実施形態を説明したが、前述した内容により実施形態が限定されるものではない。また、前述した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、前述した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。さらに、実施形態の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換及び変更のうち少なくとも1つを行うことができる。
【0087】
以上のように、空気調和機1は、冷媒を圧縮する圧縮機11と、室内の空気と冷媒を熱交換する室内機3と、室外の空気と冷媒を熱交換する室外機2と、冷媒と熱交換する蓄熱部35と、室内の温度である室内温度を検出する室温センサ37と、室内温度と設定温度の差に基づいて圧縮機11を駆動し、且つ、その差が所定値を下回ったときに蓄熱部35での熱交換を行わせる制御装置43とを有する。
【0088】
これにより、空気調和機1では、室内温度と設定温度の差が所定値を下回ったときには蓄熱部35での熱交換が行われるようにして、余剰な暖房能力を蓄熱部35での蓄熱に回すことで、室内温度の上昇による運転停止が生じないようにすることができる。したがって、空気調和機1では、断続運転が繰り返されて室内温度の変動が大きくなるような、快適性が低下する事態を抑止できる。
【0089】
また、空気調和機1は、第1の冷媒を循環させる冷媒回路5と、第2の冷媒を循環させる水回路6と、第1の冷媒と、第2の冷媒とを熱交換する中間熱交換器16と、を有する。空気調和機1において、圧縮機11と、室外機2とは、冷媒回路5に含まれる。また、室内機3と、蓄熱部35とは、水回路6に含まれる。
【0090】
このように、空気調和機1は、室内機3に用いる冷媒と、室外機2に用いる冷媒とを独立して循環させる構成であってもよい。このような構成を用いることで、例えば、室外機2に用いる冷媒が室内機3側に漏れるような事態を抑制することができる。
【0091】
また、空気調和機1は、蓄熱部35が蓄積した蓄熱量を検出する検出部を更に有し、制御装置43は、蓄熱部35での熱交換を行わせているときに、検出した蓄熱量が所定値となった場合、圧縮機11の駆動を停止し、且つ、室内機3に流入する冷媒を蓄熱部35で熱交換させる。これにより、空気調和機1では、余剰な暖房能力で蓄熱部35に蓄積した熱を用いた効率のよい暖房運転を実現できる。
【0092】
また、空気調和機1において、室内機3と、蓄熱部35とは、水回路6aにおいて直列に接続される。このような直列な構成とすることで、例えば、並列の場合と比較して、冷媒を循環させるためのポンプ21の個数などを削減し、より低コストに運用することができる。
【0093】
また、空気調和機1において、第1の冷媒は、R32またはR290(プロパン)である。空気調和機1では、R32またはR290(プロパン)を冷媒とする構成において、室内機3側に水回路を採用することでそのR290が室内機3側に漏れるような事態を抑制することができる。また、空気調和機1において、第2の冷媒は水または不凍液である。
【0094】
また、空気調和機1は、圧縮機11を最低回転数で運転し、且つ、室内温度と設定温度の差が所定値を下回ったときに蓄熱部35での熱交換を行わせる。これにより、空気調和機1では、圧縮機11を最低回転数で運転した状態における余剰能力を蓄熱部35での熱交換に利用して、暖房能力のさらなる引き下げを行うことができる。
【符号の説明】
【0095】
1…空気調和機
2、2a…室外機
3…室内機
5…冷媒回路
6、6a…水回路
11…圧縮機
12…四方弁
14…室外熱交換器
15…膨張弁
16…中間熱交換器
17…吸入管
18…吐出管
21、21a~21c…ポンプ
22、62…室内熱交換器
31、31a、63…蓄熱回路
32、32a、64…蓄熱用流路
33、33a、65…第1流路
34、34a、66…第2流路
35、67…蓄熱部
36、36a~36d、68…電磁弁
37…室温センサ
38…蓄熱部センサ
41…室外ファン
42…室内ファン
43…制御装置
44…記憶装置
45…CPU
61…冷媒回路
G1、G2…グラフ
t0~t3、t10~t13…時刻
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【手続補正書】
【提出日】2023-08-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒を圧縮する圧縮機と、
室内の空気と前記冷媒を熱交換する室内機と、
室外の空気と前記冷媒を熱交換する室外機と、
前記冷媒と熱交換する蓄熱部と、
前記室内の温度である室内温度を検出する室温センサと、
前記蓄熱部の温度を検出する蓄熱センサと、
前記室内温度と設定温度の差に基づいて前記圧縮機を駆動し、且つ、前記差が所定値を下回ったときに前記蓄熱部での熱交換を行わせる制御部と、
前記蓄熱センサの検出結果に基づいて算出した前記蓄熱部が蓄積した蓄熱量が当該蓄熱部の蓄熱限界量以上であるか否かを判定する判定部と、を有し、
前記制御部は、前記蓄熱部での熱交換を行わせているときに、前記蓄熱部が蓄積した蓄熱量が前記蓄熱限界量以上である場合、前記圧縮機の駆動を停止し、且つ、前記室内機に流入する冷媒を前記蓄熱部で熱交換させる、
ことを特徴とする空気調和機。
【請求項2】
第1の冷媒を循環させる第1の冷媒回路と、
第2の冷媒を循環させる第2の冷媒回路と、
前記第1の冷媒と、前記第2の冷媒とを熱交換する熱交換器と、を有し、
前記圧縮機と、前記室外機とは、前記第1の冷媒回路に含まれ、
前記室内機と、前記蓄熱部とは、前記第2の冷媒回路に含まれる、
ことを特徴とする請求項1に記載の空気調和機。
【請求項3】
前記室内機と、前記蓄熱部とは、前記第2の冷媒回路において直列に接続される、
ことを特徴とする請求項に記載の空気調和機。
【請求項4】
前記第1の冷媒は、R290(プロパン)である、
ことを特徴とする請求項に記載の空気調和機。
【請求項5】
前記制御部は、前記圧縮機を最低回転数で運転し、且つ、前記差が所定値を下回ったときに前記蓄熱部での熱交換を行わせる、
ことを特徴とする請求項1乃至のいずれか一項に記載の空気調和機。