(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023146420
(43)【公開日】2023-10-12
(54)【発明の名称】信号品質監視装置、信号品質監視方法およびコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
H04H 20/18 20080101AFI20231004BHJP
H04J 3/00 20060101ALI20231004BHJP
H04L 7/00 20060101ALI20231004BHJP
H04B 1/74 20060101ALI20231004BHJP
H04H 40/18 20080101ALI20231004BHJP
H04H 20/02 20080101ALI20231004BHJP
H04N 17/00 20060101ALI20231004BHJP
H04N 21/226 20110101ALI20231004BHJP
H04N 21/24 20110101ALI20231004BHJP
【FI】
H04H20/18
H04J3/00 R
H04L7/00 910
H04B1/74
H04H40/18
H04H20/02
H04N17/00 A
H04N21/226
H04N21/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022053596
(22)【出願日】2022-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】大朏 俊弥
(72)【発明者】
【氏名】清水 逸平
(72)【発明者】
【氏名】加藤 貴之
(72)【発明者】
【氏名】松下 賢一
(72)【発明者】
【氏名】祝田 幹彦
【テーマコード(参考)】
5C061
5C164
5K028
5K047
【Fターム(参考)】
5C061BB03
5C164FA04
5C164SA31P
5C164SB41P
5C164YA21
5K028BB04
5K028DD01
5K028QQ01
5K047CC08
5K047DD02
5K047HH01
5K047KK18
5K047MM36
(57)【要約】
【課題】送信機の更新や調整を行う際に、適確な遅延時間設定を行うことが可能な信号品質監視装置、信号品質監視方法およびコンピュータプログラムを提供する。
【解決手段】 実施形態の信号品質監視装置は、第1検出部と、第2検出部と、遅延量出力部とを備える。第1検出部は、第1の送信機が出力する第1放送信号を復調した第1シンボルと、第2の送信機が出力する第2放送信号を復調した第2シンボルに基づいて、第1放送信号に対する前記第2放送信号のフレーム内の遅延を補正するための遅延量を検出し、第2検出部は、第1放送信号を復調した第1シンボルと、第2放送信号を復調した第2シンボルに基づいて、第1放送信号に対する第2放送信号のフレーム単位の遅延を補正するための遅延量を検出し、遅延量出力部は、第1検出部が検出した遅延量と第2検出部が検出した遅延量を合わせた補正遅延量を、第2放送信号を遅延させるための情報として第2の送信機に出力する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の送信機が出力する第1放送信号を復調した第1シンボルと、第2の送信機が出力する第2放送信号を復調した第2シンボルに基づいて、前記第1放送信号に対する前記第2放送信号のフレーム内の遅延を補正するための遅延量を検出する第1検出部と、
前記第1シンボルと、前記第2シンボルに基づいて、前記第1放送信号に対する前記第2放送信号のフレーム単位の遅延を補正するための遅延量を検出する第2検出部と、
前記第1検出部が検出した遅延量と前記第2検出部が検出した遅延量を合わせた補正遅延量を、前記第2放送信号を遅延させるための情報として前記第2の送信機に出力する遅延量出力部と
を具備したことを特徴とする信号品質監視装置。
【請求項2】
前記第2検出部は、前記第1検出部が検出した遅延量の補正を前記第2シンボルに対して行い、前記第1シンボルと、前記補正した前記第2シンボルとの間に閾値以上の相違がある場合に、前記第1放送信号に対する前記第2放送信号のフレーム単位の遅延を補正するための遅延量を検出することを特徴とする請求項1に記載の信号品質監視装置。
【請求項3】
第1の送信機が出力する第1放送信号を復調した第1シンボルと、第2の送信機が出力する第2放送信号を復調した第2シンボルに基づいて、前記第1放送信号に対する前記第2放送信号のフレーム内の遅延を補正するための遅延量を検出する第1検出部と、
前記第1放送信号から得た第1TS信号と、前記第2放送信号から得た第2TS信号に基づいて、前記第1放送信号に対する前記第2放送信号のフレーム単位の遅延を補正するための遅延量を検出する第2検出部と、
前記第1検出部が検出した遅延量と前記第2検出部が検出した遅延量を合わせた補正遅延量を、前記第2放送信号を遅延させるための情報として前記第2の送信機に出力する遅延量出力部と
を具備したことを特徴とする信号品質監視装置。
【請求項4】
前記第2検出部は、前記第1検出部が検出した遅延量の補正を前記第2シンボルに対して行い、前記第1TS信号と、前記補正した前記第2シンボルから得た前記第2TS信号との間に閾値以上の相違がある場合に、前記第1放送信号に対する前記第2放送信号のフレーム単位の遅延を補正するための遅延量を検出することを特徴とする請求項3に記載の信号品質監視装置。
【請求項5】
第1の送信機が出力する第1放送信号を復調した第1シンボルと、第2の送信機が出力する第2放送信号を復調した第2シンボルに基づいて、前記第1放送信号に対する前記第2放送信号のフレーム内の遅延を補正するための遅延量を検出する第1検出ステップと、
前記第1シンボルと、前記第2シンボルに基づいて、前記第1放送信号に対する前記第2放送信号のフレーム単位の遅延を補正するための遅延量を検出する第2検出ステップと、
前記第1検出ステップで検出した遅延量と前記第2検出ステップで検出した遅延量を合わせた補正遅延量を、前記第2放送信号を遅延させるための情報として前記第2の送信機に出力する遅延量出力ステップと
を具備したことを特徴とする信号品質監視方法。
【請求項6】
第1の送信機が出力する第1放送信号を復調した第1シンボルと、第2の送信機が出力する第2放送信号を復調した第2シンボルに基づいて、前記第1放送信号に対する前記第2放送信号のフレーム内の遅延を補正するための遅延量を検出する第1検出ステップと、
前記第1放送信号から得た第1TS信号と、前記第2放送信号から得た第2TS信号に基づいて、前記第1放送信号に対する前記第2放送信号のフレーム単位の遅延を補正するための遅延量を検出する第2検出ステップと、
前記第1検出ステップで検出した遅延量と前記第2検出ステップで検出した遅延量を合わせた補正遅延量を、前記第2放送信号を遅延させるための情報として前記第2の送信機に出力する遅延量出力ステップと
を具備したことを特徴とする信号品質監視方法。
【請求項7】
コンピュータを、
第1の送信機が出力する第1放送信号を復調した第1シンボルと、第2の送信機が出力する第2放送信号を復調した第2シンボルに基づいて、前記第1放送信号に対する前記第2放送信号のフレーム内の遅延を補正するための遅延量を検出する第1検出部と、
前記第1シンボルと、前記第2シンボルに基づいて、前記第1放送信号に対する前記第2放送信号のフレーム単位の遅延を補正するための遅延量を検出する第2検出部と、
前記第1検出部が検出した遅延量と前記第2検出部が検出した遅延量を合わせた補正遅延量を、前記第2放送信号を遅延させるための情報として前記第2の送信機に出力する遅延量出力部と
して機能させることを特徴とするコンピュータプログラム。
【請求項8】
コンピュータを、
第1の送信機が出力する第1放送信号を復調した第1シンボルと、第2の送信機が出力する第2放送信号を復調した第2シンボルに基づいて、前記第1放送信号に対する前記第2放送信号のフレーム内の遅延を補正するための遅延量を検出する第1検出部と、
前記第1放送信号から得た第1TS信号と、前記第2放送信号から得た第2TS信号に基づいて、前記第1放送信号に対する前記第2放送信号のフレーム単位の遅延を補正するための遅延量を検出する第2検出部と、
前記第1検出部が検出した遅延量と前記第2検出部が検出した遅延量を合わせた補正遅延量を、前記第2放送信号を遅延させるための情報として前記第2の送信機に出力する遅延量出力部と
して機能させることを特徴とするコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明の実施形態は、信号品質監視装置、信号品質監視方法およびコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
地上デジタルテレビ放送は、各県に親局と呼ぶ基幹局を中心に据え、親局から送信された放送信号を中継局を多段に設置して放送ネットワークを形成している。地上デジタルテレビ放送の特長として、周波数を有効利用するために単一周波数ネットワーク(Single Frequency Network:SFN)を構築可能であるが、そのためにはSFNエリアにおける各受信電波の遅延時間差を一定範囲内に収めなければ、放送波を受信することができない。
【0003】
このため、親局や中継局における送信機の更新時や、冗長系の送信機の調整では、SFNを考慮した遅延時間設定を行なう必要があり、遅延時間設定のミスは、受信障害の発生を招くおそれがあった。
【0004】
高価なスペクトルアナライザを用いて遅延プロファイルをチェックする手法もあるが、1フレーム以上の遅延差がある場合には、あたかも遅延量が合っているように見えることがあり、効果的な手法ではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、送信機の更新や調整を行う際に、適確な遅延時間設定を行うことが可能な信号品質監視装置、信号品質監視方法およびコンピュータプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態の信号品質監視装置は、第1検出部と、第2検出部と、遅延量出力部とを備える。第1検出部は、第1の送信機が出力する第1放送信号を復調した第1シンボルと、第2の送信機が出力する第2放送信号を復調した第2シンボルに基づいて、第1放送信号に対する第2放送信号のフレーム内の遅延を補正するための遅延量を検出し、第2検出部は、第1シンボルと、第2シンボルに基づいて、第1放送信号に対する第2放送信号のフレーム単位の遅延を補正するための遅延量を検出し、遅延量出力部は、第1検出部が検出した遅延量と第2検出部が検出した遅延量を合わせた補正遅延量を、第2放送信号を遅延させるための情報として第2の送信機に出力する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態に係わる地上デジタル放送システムの概略構成例を示す図。
【
図2】第1の実施形態に係わる信号品質監視装置の構成の一部を詳細に示した図。
【
図3】
図2に示した信号品質監視装置の動作を説明するためのフローチャート。
【
図4】第2の実施形態に係わる信号品質監視装置の構成の一部を詳細に示した図。
【
図5】
図4に示した信号品質監視装置の動作を説明するためのフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図面を参照して、一実施形態に係わる地上デジタル放送システムについて説明する。
図1は、実施形態に係る地上デジタル放送システムの一例を示す図である。このシステムは、いわゆる親局と呼ばれる基幹局100と、中継局200とを備える。
【0010】
基幹局100は、トランスポートストリーム信号(以下、TS信号と称する)を放送波(放送信号)にのせて、割り当てられた地域に向けて送信する。一方、中継局200は、上記放送波を中継して、基幹局100からは届かない地域や電波強度の弱い地域に向けて送信する。
【0011】
図1の例では、中継局として200のみを示しているが、中継局200からの放送波をさらに中継する中継局があってもよい。このように、中継局は、必要に応じて、多段階に設けられうる。
【0012】
また、基幹局100および中継局200は、事故や災害、障害に備えて、それぞれ運用系統と冗長系統の2系統を備えた構成となっている。以下の説明では、運用系統を1系、冗長系統を2系と称することにする。
【0013】
基幹局100は、分配部11、1系送信機12、2系送信機13、系統切替部14、放送用アンテナ15を備える。なお、分配部11の前段には、TS信号を生成するための構成も備えるが、ここでは説明を省略する。
【0014】
分配部11は、TS信号を複製して、1系送信機12と2系送信機13にそれぞれ出力する。
1系送信機12および2系送信機13は、互いに同様の冗長な構成からなっており、後述する信号品質監視装置16からそれぞれ指示される遅延量(後述する補正遅延量)に応じてTS信号を遅延させる遅延部を備えた変調器(いずれも図示しない)を備え、この遅延部の遅延によって送信のタイミングを調整したTS信号を用いて放送周波数の搬送波を変調し、放送信号を生成する。
【0015】
系統切替部14は、1系送信機12と2系送信機13からそれぞれ放送信号が入力され、信号品質監視装置16からの指示に応じて、一方の放送信号を選択的に放送用アンテナ15に出力する。
放送用アンテナ15は、入力された放送信号を空間に放射する。
【0016】
信号品質監視装置16は、1系送信機12と2系送信機13がそれぞれ出力する放送信号の品質を検出し、検出した品質、メンテナンスの実施、あるいは、所定の切り替え周期などに応じて、一方の放送信号を選択するように、系統切替部14に対して指示を行う。
【0017】
また信号品質監視装置16は、2つの放送信号について、一方を他方に同期させるための補正遅延量を検出する機能を備える。例えば、1系と2系は、事故や障害の発生時、メンテナンスの実施時、あるいは定期的に、切り替えて運用されるが、切り替えの前後において、両系統間で放送信号の遅延時間が一定となるように、信号品質監視装置16によって調整が行われている。
【0018】
なお、1系送信機12および2系送信機13は、故障や事故が発生した場合に交換されるだけでなく、これらの前に、経年劣化による事故や故障を防止するため、所定期間が経過すると、新しい送信機に交換される。
【0019】
図1において、新1系送信機12aは、1系送信機12の代替機であり、1系送信機12と同等もしくはそれ以上の性能を有する。また、新2系送信機13aは、2系送信機13の代替機であり、2系送信機13と同等もしくはそれ以上の性能を有する。交換の詳細については、後述する。
【0020】
また、信号品質監視装置16は、1系送信機12の放送信号と、新1系送信機12aの放送信号に基づいて、新1系送信機12aの放送信号を、1系送信機12の放送信号に同期させるための補正遅延量を求めることができる。同様に、信号品質監視装置16は、2系送信機13の放送信号と、新2系送信機13aの放送信号に基づいて、新2系送信機13aの放送信号を、2系送信機13の放送信号に同期させるための補正遅延量を求めることができる。
【0021】
中継局200は、放送受信アンテナ20、分配部21、1系中継装置22、2系中継装置23、系統切替部24、放送用アンテナ25、信号品質監視装置26を備える。
【0022】
放送受信アンテナ20は、基幹局100や他の中継局から送信された放送信号を受信し、分配部21に出力する。
【0023】
分配部21は、放送受信アンテナ20によって受信された放送信号を分配して、1系中継装置22と2系中継装置23に出力する。
【0024】
1系中継装置22および2系中継装置23は、互いに同様の冗長な構成からなり、分配部21から入力される放送信号を所定のレベルまでRF増幅し、それぞれ系統切替部24に出力する。
【0025】
系統切替部24は、1系中継装置22および2系中継装置23からそれぞれRF増幅された放送信号が入力され、信号品質監視装置26からの指示に応じて、一方の放送信号を放送用アンテナ25を通じて空間に放射する。
【0026】
信号品質監視装置26は、1系中継装置22と2系中継装置23がそれぞれ出力する放送信号の品質を検出し、検出した品質、メンテナンスの実施、あるいは、所定の切り替え周期などに応じて一方を選択するように、系統切替部14に対して指示を行う。
【0027】
また信号品質監視装置26は、基幹局100の信号品質監視装置16と同様に、遅延量を制御するようにしてもよい。
【0028】
なお、中継局200において、1系と2系は、事故や障害の発生時、メンテナンス時、あるいは定期的に、切り替えて運用される。また、切り替えの前後において、両系統間で放送信号の遅延時間が一定となるように、信号品質監視装置26が遅延量を調整するようにしてもよい。
[第1の実施形態]
次に、
図2を参照して、第1の実施形態に係わる信号品質監視装置16の構成例について説明する。
図2では、信号品質監視装置16について、例えば、1系送信機12を、その代替機である新1系送信機12aに交換する場合(あるいは、2系送信機13を、その代替機である新2系送信機13aに交換する場合)に関わる構成を機能ブロックで示している。
【0029】
周波数変換部161は、1系送信機12から出力される1系放送信号をベースバンド信号にダウンコンバートし、A/D変換部162に出力する。同様に、周波数変換部161aは、新1系送信機12aから出力される新1系放送信号をベースバンド信号にダウンコンバートし、A/D変換部162aに出力する。
【0030】
A/D変換部162は、周波数変換部161から出力されるベースバンド信号をA/D変換し、これによって得られる1系放送信号のデジタル信号を遅延付加部163に出力する。同様に、A/D変換部162aは、周波数変換部161aから出力されるベースバンド信号をA/D変換し、これによって得られる新1系放送信号のデジタル信号を遅延付加部163aに出力する。
【0031】
遅延付加部163は、制御部166によって指示された遅延量だけ、1系放送信号のデジタル信号を遅延させて、OFDM復調部164に出力する。
【0032】
遅延付加部163aは、制御部166によって指示された調整遅延量だけ、新1系放送信号のデジタル信号を遅延させて、OFDM復調部164aに出力する。なお、上記調整遅延量は、1系送信機12を新1系送信機12aに交換する際に、制御部166によって設定されたものである。
【0033】
OFDM復調部164は、遅延付加部163を経たデジタル信号に対して、OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)復調を行い、シンボルを得る。同様に、OFDM復調部164aは、遅延付加部163aを経たデジタル信号に対して、OFDM復調を行い、シンボルを得る。
【0034】
信号比較部165は、制御部166の指示にしたがって、OFDM復調部164で得られたシンボル列と、OFDM復調部164aで得られたシンボル列との間の1フレーム内での遅延量を検出して補正し、その後、遅延を補正したシンボル列を比較して比較値を求める。上記遅延量と上記比較値は、制御部166に出力される。
上記遅延量のより具体的な求め方の一例として、信号比較部165は、OFDM復調部164およびOFDM復調部164aからそれぞれ順次出力されるシンボルの列を監視して、各シンボルの列からフレームの先頭のシンボル(あるいは、ヘッダ)をそれぞれ検出し、この2つの先頭のシンボル(あるいは、ヘッダ)のタイミングの時間差(あるいは、シンボル差)を1フレーム内の遅延時間として検出する。
【0035】
制御部166は、プロセッサとメモリを備え、メモリは制御プログラムや制御データを記憶し、プロセッサがメモリに記憶される制御データを利用して制御プログラムを実行することで、種々の機能を発揮する。
【0036】
この機能の一例としては、1系送信機12および2系送信機13の出力信号の品質を監視して、各送信機が正常に動作しているかをチェックし、必要に応じて、系統切替部14に切り替えを指示する。また、制御部166は、遅延量調整処理を実行する機能を備える。
【0037】
遅延量調整処理では、信号比較部165を制御して、信号比較部165が求めた比較値と遅延量に基づいて、遅延付加部163aに与える調整遅延量を調整し、新1系送信機12aから出力される新1系放送信号のシンボルを、1系送信機12から出力される1系放送信号のシンボルに同期させ、この同期に必要とした遅延量の情報を補正遅延量として出力する(新2系送信機13aから出力される新2系放送信号のシンボルと、2系送信機13から出力される2系放送信号のシンボルについても同様)。
【0038】
なお、信号比較部165と制御部166は、第1検出部、第2検出部、遅延量出力部の一例である。
【0039】
次に、上記地上デジタル放送システムにおいて、1系送信機12を新1系送信機12aに交換する際の信号品質監視装置16による遅延量調整処理について説明する。なお、この交換作業では、1系送信機12を運用しながら、1系送信機12に入力されるTS信号を同時に新1系送信機12aにも入力し、新1系送信機12aにおける遅延量の調整が行われる。
【0040】
図3は、信号品質監視装置16による遅延量調整処理を説明するためのフローチャートである。このフローチャートに示す処理は、制御部166がメモリに記憶される制御プログラムを実行することにより実現される。この処理は、交換作業を進めるオペレータの指示によって開始される。
【0041】
まず、ステップS301において制御部166は、信号比較部165を制御して、1系送信機12から出力される1系放送信号に由来するシンボル列と、新1系送信機12aから出力される新1系放送信号に由来するシンボル列をそれぞれ監視し、両者(例えば、フレームの先頭)を比較して、両シンボル列間の1フレーム内の遅延量を検出し、ステップS302に移行する。
【0042】
ステップS302において制御部166は、信号比較部165を制御して、ステップS301で検出した遅延量に基づいて、1系放送信号に由来するシンボル列に対する、新1系放送信号に由来するシンボル列について1フレーム内の遅延を補正して、両シンボル列をフレームスケールで同期させ、ステップS303に移行する。なお、この時点で、両シンボル列は、フレームの先頭は同期しているものの、フレーム単位での遅延が生じている可能性を有する。
【0043】
ステップS303において制御部166は、信号比較部165を制御して、ステップS302にてフレームスケールで同期した、1系放送信号に由来するシンボル列と、新1系放送信号に由来するシンボル列について、各シンボル毎に、OFDM復調によって得たコンスタレーション点を比較させて、それぞれ差分値を合計した値を比較値として得て、ステップS304に移行する。
【0044】
ステップS304において制御部166は、ステップS303で得た比較値が、予め設定した閾値以上であるか否か、すなわち、1系放送信号に由来するシンボル列と、新1系放送信号に由来するシンボル列について、両者間のシンボルのコンスタレーション点の差異が閾値以上か否かを判定する。ここで、閾値以上の場合には、ステップS305に移行し、一方、閾値未満の場合には、ステップS306に移行する。
【0045】
なお、すでに1フレーム内での遅延量は補正されていることより、閾値以上の場合には、1フレーム以上のフレーム単位での遅延が生じていることを示し、一方、閾値未満の場合には、1フレーム内での遅延量の補正により、シンボルレベルの遅延補正が完了していることを示している。
【0046】
ステップS305において制御部166は、所定のアルゴリズムにしたがって、フレーム単位での遅延量を設定して、1系放送信号に由来するシンボル列と新1系放送信号に由来するシンボル列との間の遅延調整を行い、ステップS303に移行する。
【0047】
以後、ステップS303~S305のループ処理では、1フレーム内の遅延量の遅延調整に加えて、ステップS305で設定したフレーム単位での遅延調整を行って、上記比較値を求める。そして、この比較値が再び閾値以上となってステップS305に移行する場合には、上記アルゴリズムにしたがって、前回、ステップS305で設定した遅延量とは異なる大きさのフレーム単位の遅延量を設定する。
【0048】
やがて、このループ処理により、上記差異が閾値未満となった場合には、ステップS306に移行する。
【0049】
すなわち、上記アルゴリズムでは、例えば、新1系放送信号に由来するシンボル列に対して、1回目には、1フレーム分を遅らせる遅延量を設定して遅延調整を行い、2回目には、1フレーム分を進ませる遅延量を設定して遅延調整を行い、3回目には、2フレーム分を遅らせる遅延量を設定して遅延調整を行う、といったフレーム単位での遅延量の可変(調整)を行う。
【0050】
ステップS306において制御部166は、ステップS301で検出した遅延量、あるいは、ステップS301で検出した遅延量とステップS305で設定したフレーム単位の遅延量の合計量を、補正遅延量として求め、ステップS307に移行する。
【0051】
ステップS307において制御部166は、ステップS306で求めた補正遅延量を、新1系放送信号を遅延させるための情報として新1系送信機12aに出力(指示)し、当該処理を終了する。これにより、新1系送信機12aは、制御部166より指示された補正遅延量だけ、TS信号を遅延させて出力することになり、1系送信機12が出力するTS信号に同期した状態となる。
【0052】
なお、2系送信機13を新2系送信機13aに交換する際の信号品質監視装置16による遅延量調整処理についての説明は省略するが、同様の処理により実現できることは、当業者によって容易に理解できるであろう。
【0053】
以上のように、上記構成の地上デジタル放送システムでは、例えば、1系送信機12を新1系送信機12aに交換する場合に、信号品質監視装置16の遅延量調整処理によって、運用中の1系送信機12から出力されるTS信号に、交換準備中の新1系送信機12aから出力されるTS信号を同期させるための補正遅延量を求めて、新1系送信機12aに遅延量の設定を行うようにしている。
【0054】
したがって、上記構成の地上デジタル放送システムによれば、運用中の1系送信機12から出力されるTS信号に、交換準備中の新1系送信機12aから出力されるTS信号を同期させることができる。すなわち、送信機の更新や調整を行う際に、適確な遅延時間設定を行うことができる。
[第2の実施形態]
次に、
図4を参照して、第2の実施形態に係わる信号品質監視装置16の構成例について説明する。
図4では、信号品質監視装置16について、例えば、1系送信機12を、その代替機である新1系送信機12aに交換する場合(あるいは、2系送信機13を、その代替機である新2系送信機13aに交換する場合)に関わる構成を機能ブロックで示している。
【0055】
なお、周波数変換部161、周波数変換部161a、A/D変換部162、A/D変換部162a、遅延付加部163、遅延付加部163a、OFDM復調部164、OFDM復調部164aについて、前述した第1の実施形態と同様であることより、説明を省略する。
【0056】
信号比較部165は、制御部169の指示にしたがって、OFDM復調部164で得られたシンボル列と、OFDM復調部164aで得られたシンボル列との間の1フレーム内での遅延量を検出する。上記遅延量は、制御部169に出力される。
上記遅延量のより具体的な求め方の一例として、信号比較部165は、OFDM復調部164およびOFDM復調部164aからそれぞれ順次出力されるシンボルの列を監視して、各シンボルの列からフレームの先頭のシンボル(あるいは、ヘッダ)をそれぞれ検出し、この2つの先頭のシンボル(あるいは、ヘッダ)のタイミングの時間差(あるいは、シンボル単位での差)を1フレーム内の遅延時間として検出する。
【0057】
誤り訂正部(FEC)167は、OFDM復調部164で得られたシンボル列について、前方誤り訂正(Forward Error Correction)を施し、TS信号を得る。このTS信号は、TS比較部168に出力される。なお、以下の説明では、誤り訂正部167で得たTS信号を、1系TS信号と称する。
【0058】
同様に、誤り訂正部(FEC)167aは、OFDM復調部164aで得られたシンボル列について、前方誤り訂正を施し、TS信号を得る。このTS信号は、TS比較部168に出力される。なお、以下の説明では、誤り訂正部167aで得たTS信号を、新1系TS信号と称する。
【0059】
TS比較部168は、制御部169から通知される遅延量(信号比較部165が検出した遅延量)に基づいて新1系TS信号を遅延させることで、新1系TS信号と1系TS信号との間の1フレーム内での遅延を補正して両信号のフレームを同期させた後、両信号をビット単位で比較し、その差を比較値として制御部169に出力する。
【0060】
制御部169は、プロセッサとメモリを備え、メモリは制御プログラムや制御データを記憶し、プロセッサがメモリに記憶される制御データを利用して制御プログラムを実行することで、種々の機能を発揮する。
【0061】
この機能の一例としては、1系送信機12および2系送信機13の出力信号の品質を監視して、各送信機が正常に動作しているかをチェックし、必要に応じて、系統切替部14に切り替えを指示する。また、制御部169は、遅延量調整処理を実行する機能を備える。
【0062】
遅延量調整処理では、信号比較部165を制御して1フレーム内の遅延量を求めて、この遅延量をTS比較部168に与えて、1系TS信号と新1系TS信号をフレームで同期させ、その後、このフレームスケールで同期した2つのTS信号の比較値に基づいて、遅延付加部163aに与える調整遅延量を調整し、1系TS信号と新1系TS信号をデータレベルで同期させる(2系放送信号に由来する2系TS信号と、新2系放送信号に由来する新2系TS信号についても同様)。
【0063】
なお、信号比較部165、誤り訂正部167および167a、TS比較部168、制御部169は、第1検出部、第2検出部、遅延量出力部の一例である。
【0064】
次に、上記地上デジタル放送システムにおいて、1系送信機12を新1系送信機12aに交換する際の信号品質監視装置16による遅延量調整処理について説明する。なお、この交換作業では、1系送信機12を運用しながら、1系送信機12に入力されるTS信号を同時に新1系送信機12aにも入力し、新1系送信機12aにおける遅延量の調整が行われる。
【0065】
図5は、信号品質監視装置16による遅延量調整処理を説明するためのフローチャートである。このフローチャートに示す処理は、制御部169がメモリに記憶される制御プログラムを実行することにより実現される。この処理は、交換作業を進めるオペレータの指示によって開始される。
【0066】
まず、ステップS501において制御部169は、信号比較部165を制御して、1系送信機12から出力される1系放送信号に由来するシンボル列と、新1系送信機12aから出力される新1系放送信号に由来するシンボル列をそれぞれ監視し、両者(例えば、フレームの先頭)を比較して、両シンボル列間の1フレーム内の遅延量を検出し、ステップS502に移行する。
【0067】
ステップS502において制御部169は、TS比較部168を制御して、ステップS501で検出した遅延量に基づいて、1系TS信号に対する新1系TS信号の1フレーム内の遅延を補正して、両TS信号をフレームスケールで同期させ、ステップS503に移行する。なお、この時点で、両TS信号は、フレームの先頭は同期しているものの、フレーム単位での遅延が生じている可能性を有する。
【0068】
ステップS503において制御部169は、TS比較部168を制御して、1系TS信号と、1フレーム内の遅延が補正された新1系TS信号をビット単位で比較させて、それぞれの差分値を合計した値を比較値を取得し、ステップS504に移行する。
【0069】
ステップS504において制御部169は、ステップS503で得た比較値が、予め設定した閾値以上であるか否か、すなわち、1系TS信号を構成するビット列と、新1系TS信号を構成するビット列について、両者間の差異が閾値以上か否かを判定する。ここで、閾値以上の場合には、ステップS505に移行し、一方、閾値未満の場合には、ステップS506に移行する。
【0070】
なお、すでに1フレーム内での遅延量は補正されていることより、閾値以上の場合には、1フレーム以上の遅延が生じていることを示し、一方、閾値未満の場合には、1フレーム内での遅延量の補正により、ビットレベルの遅延補正が完了していることを示している。
【0071】
ステップS505において制御部169は、所定のアルゴリズムにしたがって、フレーム単位での遅延量を設定して、1系TS信号のデータ列と新1系TS信号のデータ列との間の遅延調整を行い、ステップS503に移行する。
【0072】
以後、ステップS503~S505のループ処理では、1フレーム内の遅延量の遅延調整に加えて、ステップS505で設定したフレーム単位での遅延調整を行って、上記比較値を求める。そして、この比較値が再び閾値以上となってステップS505に移行する場合には、上記アルゴリズムにしたがって、前回、ステップS505で設定した遅延量とは異なる大きさのフレーム単位の遅延量を設定する。
【0073】
やがて、このループ処理により、上記差異が閾値未満となった場合には、ステップS506に移行する。
【0074】
すなわち、上記アルゴリズムでは、例えば、新1系放送信号に由来する新1系TS信号のデータ列に対して、1回目には、1フレーム分を遅らせる遅延量を設定して遅延調整を行い、2回目には、1フレーム分を進ませる遅延量を設定して遅延調整を行い、3回目には、2フレーム分を遅らせる遅延量を設定して遅延調整を行う、といったフレーム単位での遅延量の可変(調整)を行う。
【0075】
ステップS506において制御部169は、ステップS501で検出した遅延量、あるいは、ステップS501で検出した遅延量とステップS505で設定したフレーム単位の遅延量の合計量を、補正遅延量として求め、ステップS507に移行する。
【0076】
ステップS507において制御部169は、ステップS506で求めた補正遅延量を、新1系放送信号を遅延させるための情報として新1系送信機12aに設定(指示)し、当該処理を終了する。これにより、新1系送信機12aは、制御部169により指示された補正遅延量だけ、TS信号を遅延させて出力することになり、1系送信機12が出力するTS信号に同期した状態となる。
【0077】
なお、2系送信機13を新2系送信機13aに交換する際の信号品質監視装置16による遅延量調整処理についての説明は省略するが、同様の処理により実現できることは、当業者によって容易に理解できるであろう。
【0078】
以上のように、上記構成の地上デジタル放送システムでは、例えば、1系送信機12を新1系送信機12aに交換する場合に、信号品質監視装置16の遅延量調整処理によって、運用中の1系送信機12から出力されるTS信号に、交換準備中の新1系送信機12aから出力されるTS信号を同期させるための補正遅延量を求めて、新1系送信機12aに遅延量の設定を行うようにしている。
【0079】
したがって、上記構成の地上デジタル放送システムによれば、運用中の1系送信機12から出力されるTS信号に、交換準備中の新1系送信機12aから出力されるTS信号を同期させることができる。すなわち、送信機の更新や調整を行う際に、適確な遅延時間設定を行うことができる。
【0080】
なお、この発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また上記実施形態に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることによって種々の発明を形成できる。また例えば、実施形態に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除した構成も考えられる。さらに、異なる実施形態に記載した構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【0081】
上記実施形態では、1系送信機12を新1系送信機12aに交換する場合(あるいは2系送信機13を新2系送信機13aに交換する場合)を例に挙げて説明したが、これに限定されるものではない。例えば、送信機を冗長に複数備える基幹局や中継局を新設する場合に、複数の送信機間の同期を取るために使用することもできる。すなわち、基幹局100でいえば、1系送信機12に、2系送信機13を同期させる(遅延を一致させる)ために使用することもできる。
【0082】
また上記実施形態では、基幹局100の信号品質監視装置16について説明したが、同様の機能を中継局200の品質監視装置26に設けるようにしてもよい。
その他、この発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形を施しても同様に実施可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0083】
11…分配部、12…1系送信機、12a…新1系送信機、13…2系送信機、13a…新2系送信機、14…系統切替部、15…放送用アンテナ、16…信号品質監視装置、20…放送受信アンテナ、21…分配器、22…1系中継装置、23…2系中継装置、24…系統切替部、25…放送用アンテナ、26…信号品質監視装置、100…基幹局、161…周波数変換部、161a…周波数変換部、162…A/D変換部、162a…A/D変換部、163…遅延付加部、163a…遅延付加部、164…OFDM復調部、164a…OFDM復調部、165…信号比較部、166…制御部、167…誤り訂正部、167a…誤り訂正部、168…TS比較部、169…制御部、200…中継局。