(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023014643
(43)【公開日】2023-01-31
(54)【発明の名称】空気調和機
(51)【国際特許分類】
F24F 11/48 20180101AFI20230124BHJP
F24F 1/0059 20190101ALI20230124BHJP
F24F 11/41 20180101ALI20230124BHJP
F24F 11/61 20180101ALI20230124BHJP
F28F 21/08 20060101ALI20230124BHJP
F28F 19/00 20060101ALI20230124BHJP
F28G 9/00 20060101ALI20230124BHJP
F25B 47/02 20060101ALI20230124BHJP
F24F 110/10 20180101ALN20230124BHJP
【FI】
F24F11/48
F24F1/0059
F24F11/41 120
F24F11/41 100
F24F11/61
F28F21/08 E
F28F19/00 511Z
F28G9/00 Z
F25B47/02 Z
F24F110:10
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021118708
(22)【出願日】2021-07-19
(71)【出願人】
【識別番号】316011466
【氏名又は名称】日立ジョンソンコントロールズ空調株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000660
【氏名又は名称】Knowledge Partners弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】李 明哲
(72)【発明者】
【氏名】法福 守
【テーマコード(参考)】
3L051
3L260
【Fターム(参考)】
3L051BC10
3L260AB02
3L260BA32
3L260CA12
3L260CB05
3L260DA15
3L260FB15
3L260HA06
(57)【要約】
【課題】無酸素銅で形成された、又は、少なくとも外周部を無酸素銅で形成された伝熱管における蟻の巣状腐食を抑制することを目的とする。
【解決手段】無酸素銅で形成された伝熱管を含む熱交換器と、前記伝熱管に霜又は氷を発生させる第1の運転と、前記伝熱管に発生した霜又は氷を溶かす第2の運転と、を実行する制御部と、を備える。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無酸素銅で形成された、又は、少なくとも外周部を無酸素銅で形成された伝熱管を含む熱交換器と、
前記伝熱管に霜又は氷を発生させる第1の運転と、前記伝熱管に発生した霜又は氷を溶かす第2の運転と、を実行する制御部と、
を備える空気調和機。
【請求項2】
前記制御部は、さらに、前記第2の運転後に前記伝熱管を乾燥させる第3の運転を実行する請求項1に記載の空気調和機。
【請求項3】
記制御部は、前記第1の運転を実行した後で少なくとも所定期間経過した後に、再度、前記第1の運転を実行する請求項1又は2に記載の空気調和機。
【請求項4】
前記制御部は、所定の時間間隔で周期的に、前記第1の運転を実行する請求項3に記載の空気調和機。
【請求項5】
前記熱交換器は、室内機に設けられる請求項1乃至4の何れか1項に記載の空気調和機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気調和機に関する。
【背景技術】
【0002】
空気調和機の熱交換器においては、ユーザにより散布された脱臭剤・除菌剤、建築材のホルムアルデヒド等の影響により、伝熱管に蟻の巣状腐食が発生する場合がある。これに対し、特許文献1には、蟻の巣状腐食進行抑制の目的で、伝熱管に無酸素銅を使用した空気調和機において、冷房運転または除湿運転の終了後所定期間内に水分除去運転を行う技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
熱交換器の伝熱管に無酸素銅が使用される場合に伝熱管における蟻の巣状腐食の発生を抑制する更なる技術が要望されている。
【0005】
本発明は、このような問題点に鑑みなされたもので、無酸素銅で形成された、又は、少なくとも外周部を無酸素銅で形成された、熱交換器の伝熱管における蟻の巣状腐食を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、無酸素銅で形成された、又は、少なくとも外周部を無酸素銅で形成された伝熱管を含む熱交換器と、前記伝熱管に霜又は氷を発生させる第1の運転と、前記伝熱管に発生した霜又は氷を溶かす第2の運転と、を実行する制御部と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、無酸素銅で形成された、又は、少なくとも外周部を無酸素銅で形成された、熱交換器の伝熱管における蟻の巣状腐食を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図4】洗浄運転管理処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、実施形態に係る空気調和機1を示す外観構成図である。空気調和機1は、冷凍サイクル(ヒートポンプサイクル)で冷媒を循環させることによって、空調を行う。
図1に示すように、空気調和機1は、室内(被空調空間)に設置される室内機10と、屋外(室外)に設置される室外機20と、ユーザによって操作されるリモコン30と、を備えている。
【0010】
室内機10は、リモコン通信部11を備えている。リモコン通信部11は、赤外線通信等によって、リモコン30との間で所定の信号を送受信する。例えば、リモコン通信部11は、運転/停止指令、設定温度の変更、運転モードの変更、タイマの設定等の信号をリモコン30から受信する。また、リモコン通信部11は、室内温度の検出値等をリモコン30に送信する。なお、
図1では省略しているが、室内機10と室外機20とは、冷媒配管を介して接続されるとともに、通信線を介して接続されている。
【0011】
図2は、実施形態に係る空気調和機1の冷媒回路Qを示す図である。なお、
図2に示す実線矢印は、暖房運転時における冷媒の流れを示している。また、
図2に示す破線矢印は、冷房運転時における冷媒の流れを示している。
【0012】
室内機10は、リモコン通信部11のほかに、室内熱交換器12と、室内ファン14と、温度センサ15と、室内制御部16と、を備えている。室内熱交換器12において、その伝熱管を通流する冷媒と、室内ファン14から送り込まれる室内空気と、の間で熱交換が行われる。室内熱交換器12は、後述の四方弁25の切り替えにより凝縮器または蒸発器として動作する。室内ファン14は、室内熱交換器12の付近に設置されている。室内ファン14は、室内ファンモータ14aの駆動によって、室内熱交換器12に室内空気を送り込む。温度センサ15は、室内温度を計測する。室内制御部16は、プロセッサ、記憶部及び通信部を備えた制御基板である。室内制御部16は、室内機10の全体を制御する。室内制御部16はさらに、後述の室外機20の室外制御部28と通信を行うことにより、室外機20を含んだ空気調和機1の全体の制御も行う。
【0013】
室外機20は、圧縮機21と、室外熱交換器22と、室外ファン23と、室外膨張弁24(膨張弁)と、四方弁25と、室外制御部28と、を備えている。圧縮機21は、圧縮機モータ21aの駆動によって、低温低圧のガス冷媒を圧縮し、高温高圧のガス冷媒として吐出する。室外熱交換器22において、その伝熱管(図示せず)を通流する冷媒と、室外ファン23から送り込まれる外気と、の間で熱交換が行われる。室外熱交換器22は、四方弁25の切り替えにより凝縮器または蒸発器として動作する。
【0014】
室外ファン23は、
図1に示すように、室外熱交換器22の付近に設置されている。室外ファン23は、室外ファンモータ23aの駆動によって、室外熱交換器22に外気を送り込む。室外膨張弁24は、「凝縮器」(室外熱交換器22及び室内熱交換器12の一方)で凝縮した冷媒を減圧する機能を有している。なお、室外膨張弁24において減圧された冷媒は、「蒸発器」(室外熱交換器22及び室内熱交換器12の他方)に導かれる。
【0015】
四方弁25は、空気調和機1の運転モードに応じて、冷媒の流路を切り替える弁である。四方弁25の切り替えにより、冷房運転時には、破線矢印で示すように、圧縮機21、室外熱交換器22(凝縮器)、室外膨張弁24、及び室内熱交換器12(蒸発器)の順に冷媒が循環する冷凍サイクルとなる。また、四方弁25の切り替えにより、暖房運転時には、実線矢印で示すように、圧縮機21、室内熱交換器12(凝縮器)、室外膨張弁24、及び室外熱交換器22(蒸発器)の順に冷媒が循環する冷凍サイクルとなる。すなわち、圧縮機21、「凝縮器」、室外膨張弁24、及び「蒸発器」を順次に介して、冷凍サイクルで冷媒が循環する冷媒回路Qにおいて、前記した「凝縮器」及び「蒸発器」の一方は室外熱交換器22であり、他方は室内熱交換器12である。室外制御部28は、室外機20の全体を制御する。
【0016】
図3は、室内熱交換器12の伝熱管の概略図である。室内熱交換器12は、冷媒が流れる伝熱管12aと、伝熱管12aの周囲に接続された複数のフィン12bと、を備えている。室内熱交換器12は、無酸素銅で形成された伝熱管を備える。無酸素銅として、例えば、JIS規格のC1011を用いることができる。ここで、無酸素銅とは、銅含有量が99.95質量%以上であり、かつ、リンの含有量が0.002%質量以下である材質であり、JIS規格等の規格に限定されない。室内熱交換器12には、ユーザにより脱臭剤・除菌剤等の散布材が散布されたり、建築材から出たホルムアルデヒドにさらされたりする場合がある。脱臭剤・除菌剤に含まれるエタノール、建築材からのホルムアルデヒド等が分解されると、ギ酸、酢酸等のカルボン酸が生じる場合がある。このカルボン酸は、伝熱管における蟻の巣状腐食の原因となる。
【0017】
これに対し、本実施形態では、室内機10の室内制御部16は、伝熱管である無酸素銅で形成された伝熱管12aに対して以下のような洗浄を行う。すなわち、伝熱管12aの表面に霜又は氷を発生させ、この霜又は氷を溶かすことで生じる水を用いて伝熱管12aを洗い流す洗浄である。ここで、氷とは、水が氷点下の温度で固体になったものを示す。また、霜とは、大気中の水蒸気が固体になり、結晶として堆積したものを示す。具体的には、室内制御部16は、室内機10に取り込まれた空気中の水分を室内熱交換器12で凍結させることで伝熱管12aの表面に霜及び氷の少なくとも一方を発生させる第1の運転と、第1の運転により伝熱管12aに発生した霜及び氷の少なくとも一方を溶かす第2の運転と、を行う。
【0018】
より詳細には、室内制御部16は、第1の運転として、四方弁25を
図2において破線で示す方向に切り替え、室内熱交換器12を蒸発器として動作させ、室内熱交換器12を冷却する運転を行う。本実施形態では、室内制御部16は、室内熱交換器12の伝熱管12aを氷点下の温度に冷却する。また、室内制御部16は、第2の運転として、四方弁25を
図2において実線で示す方向に切り替えることで室内熱交換器12を凝縮器として動作させ、室内熱交換器12を加熱する運転を行う。ただし、室内制御部16は、第2の運転として、他の運転を行ってもよく、例えば、室内熱交換器12の蒸発器としての動作を停止させ、そのまま、伝熱管12aの表面に発生した霜又は氷の少なくとも一部が溶けるまで、冷凍サイクルを停止したままにする運転を行ってもよい。
【0019】
室内制御部16は、第1の運転と第2の運転とを行うことで、室内熱交換器12を洗浄することができる。第1の運転を行い、その後第2の運転を行うという一連の運転を、洗浄運転と称する。本実施形態の空気調和機1では、室内制御部16の制御の下で室内熱交換器12に対して洗浄運転が行われる。
【0020】
図4は、室内機10の室内制御部16による洗浄運転管理処理を示すフローチャートである。本実施形態では、室内制御部16は、定期的に洗浄運転を行う。洗浄運転管理処理は、洗浄運転の実行タイミングを制御する処理である。室内制御部16は、空気調和機1の設置完了時点等の既定の時点から所定期間が経過すると、ステップS400において、洗浄運転を開始する。そして、室内制御部16は、温度センサ15により計測された室内温度に基づいて、室外膨張弁24の開度を調整する。具体的には、室内制御部16は、室内温度が高いほど室外膨張弁24を絞るようその開度を制御する。これにより、洗浄運転に要する時間が長くなり過ぎるのを避け、効率的に洗浄運転を行うことができる。
【0021】
さらに、室内制御部16は、ステップS400において洗浄運転が開始されると、ステップS401において、洗浄待ち時間のカウントを開始する。ここで、洗浄待ち時間とは、時間の経過によって積算される値であり、空調運転の有無にかかわらず、カウントが進む。また、洗浄待ち期間とは、洗浄運転を実行したタイミングから、次の洗浄運転を実行するまでの期間である。洗浄待ち期間は、予め設定されているものとする。本実施形態においては、洗浄待ち期間は、36.5日間に設定されているものとする。洗浄運転の開始タイミングから洗浄待ち期間のカウントが開始される。
【0022】
次に、ステップS402において、室内制御部16は、リモコン30におけるユーザ操作に応じて洗浄運転の中断指示を受け付けたか否かを判定する。室内制御部16は、中断指示を受け付けた場合には(ステップS402でYES)、処理をステップS403へ進める。室内制御部16は、中断指示を受け付けなかった場合には(ステップS402でNO)、処理をステップS404へ進める。ステップS403において、室内制御部16は、洗浄運転を中断し、その後処理をステップS405へ進める。このように、洗浄運転中であっても、中断指示を優先するので、ユーザは、洗浄運転中であっても、洗浄運転が終了するのを待つことなく、空調運転を行うことができる。
【0023】
ステップS404において、室内制御部16は、室内熱交換器12に対する洗浄運転が完了したか否かを判定する。室内制御部16は、洗浄運転が開始した後は、室内熱交換器12に設置された温度センサ15により計測された温度を取得する。そして、室内制御部16は、計測された温度が予め定められた温度閾値以下の状態で一定期間が経過した場合に、洗浄運転完了と判定する。ここで、温度閾値は例えば、マイナス5℃など、氷点下の温度とする。また、一定期間は例えば5分とする。なお、温度閾値及び一定期間の値は、予め設定されているものとする。また、環境によっては室内熱交換器12の温度が温度閾値以下に下がらない場合も想定されるため、室内制御部16は、洗浄を開始してから、一定時間が経過した場合に、洗浄を終了させてもよい。
【0024】
次に、ステップS405において、室内制御部16は、伝熱管12aを乾燥させる第3の運転を行う。具体的には、室内制御部16は、第3の運転として、室内ファンモータ14aを所定期間駆動することにより室内ファン14を回す運転を行う。ただし、他の例としては、室内制御部16は、第3の運転として他の運転を行ってもよい。例えば、室内制御部16は、第3の運転として、四方弁25を
図2において実線で示す方向に切り替え、室内熱交換器12を凝縮器として動作させることにより、室内熱交換器12を加熱させる運転を行ってもよい。また、室内制御部16は、第3の運転として、室内熱交換器12の加熱と室内ファン14の駆動との両方を行ってもよい。
室内制御部16は、第3の運転を行うことで、伝熱管12aの表面から水分を除去し、伝熱管12aにおけるカルボン酸との間の水を媒介する反応を抑制でき、蟻の巣状腐食をより抑制できる。
【0025】
以上、ステップS400からステップS405の処理により、洗浄運転が完了する。室内制御部16は、洗浄運転処理が完了すると、次の洗浄運転処理の実行タイミングになるまで待機する。具体的には、ステップS406において、室内制御部16は、洗浄待ち期間の終了タイミングに達したか否かを判定する。室内制御部16は、洗浄待ち期間の終了タイミングに達したと判定した場合、処理をステップS401に進め、再度の洗浄運転を行う。また、室内制御部16は、洗浄待ち期間の終了タイミングに達していないと判定した場合、ステップS406の処理を繰り返す。このようにして、室内制御部16は、洗浄待ち期間の時間間隔で周期的に、室内熱交換器12に対する洗浄運転を繰り返す。
以上が洗浄運転管理処理の詳細である。
【0026】
次に、無酸素銅で形成された室内熱交換器12の伝熱管12aに対する洗浄運転の効果を検証するために発明者らが行った実験について説明する。
発明者らは、室内熱交換器12の伝熱管12aに見立てるサンプルとして、複数のフィンが設置され、リン脱酸銅で形成されたパイプのサンプルを3つと、複数のフィンが設置され、無酸素銅で形成されたパイプのサンプルを3つと、を用意した。以下では、リン脱酸銅で形成されたパイプのサンプル3つをそれぞれ、サンプルA、サンプルB、サンプルCとする。また、以下では、無酸素銅で形成されたパイプのサンプル3つをそれぞれ、サンプルD、サンプルE、サンプルFとする。サンプルA~Fそれぞれの概形は、
図3と同様である。サンプルA~Fそれぞれのパイプの径方向の厚さは、0.233mmとする。
サンプルA~Fそれぞれについて、腐食を促進させる促進工程とサンプルの洗浄を行う洗浄工程とを繰り返し実行する実験を行った。以下では、1回の促進工程及び洗浄工程を、1サイクルの実験工程とする。
【0027】
促進工程について説明する。サンプルA~Fそれぞれのサンプルについて、促進工程として、以下の工程を行った。密封可能なポリエチレン(PE)ケース51に、濃度0.1%のギ酸52を入れ、PEケース内でサンプルをギ酸52に触れないように固定した。PEケース51内で固定されたサンプルの様子を、
図5に示す。
図5のSは、サンプルを示す。
そして、サンプルが固定されたPEケース51を、密封したうえで、40℃に設定されたサーモスタットに入れて22時間放置した後、室温でさらに2時間放置した。これにより、PEケース内のギ酸52が気化して、サンプルに付着し、腐食が進む。ここで、付着するギ酸は、脱臭剤・除菌剤、建築材のホルムアルデヒド等により室内熱交換器12に生じるカルボン酸に見立てた物質である。なお、本実験でギ酸を用いるのは、カルボン酸の中で酢酸等と比べて比較的、酸性度の強い物質であるためである。
以上が促進工程の詳細である。
【0028】
続いて、洗浄工程について説明する。サンプルAとサンプルDとの組と、サンプルBとサンプルEとの組と、サンプルCとサンプルFとの組と、の3つの組それぞれについて、洗浄工程として異なる工程を行った。
サンプルAとサンプルDとの組については、促進工程の終了後、PEケースからサンプルを取り出し、そのまま室内に放置する工程を、洗浄工程として行った。
【0029】
また、サンプルBとサンプルEとの組については、促進工程の終了後、PEケースからサンプルを取り出し、サンプルのパイプに、1°Cの不凍液を30分間、通流させる工程を洗浄工程として行った。これにより、サンプルのパイプ、及び、フィンの表面上に結露水が生じる。生じた結露水により、サンプルのパイプが洗浄されることとなる。以下では、この結露水による洗浄を、結露水洗浄とする。
また、サンプルCとサンプルFとの組については、促進工程の終了後、サンプルを取り出し、サンプルのパイプに、-17°Cの不凍液を30分間、通流させる工程を洗浄工程として行った。これにより、サンプルのパイプ、及び、フィンの表面上に霜、及び氷の少なくとも一方が発生する。発生した霜、及び氷の少なくとも一方は、その後に溶けて水になる。この水によりサンプルのパイプが洗浄されることとなる。サンプルCとサンプルFとの組について行われた洗浄工程は、本実施形態の洗浄運転で行われる洗浄の工程と同様である。以下では、この洗浄を、実施洗浄とする。
【0030】
サンプルA~Fそれぞれについて、36.5日(876時間)周期で、実験工程を10サイクル行った。
その後、10サイクルの実験工程が行われたサンプルA~FそれぞれをCTスキャンにかけ、パイプ上に生じた腐食による穴の深さと個数とを特定し、集計した。集計結果を、
図6の表に示す。
図6の表の各列は、それぞれ、サンプル、対応するサンプルに生じた0.1mm以上0.12mm未満の穴の個数、対応するサンプルに生じた0.12mm以上0.14mm未満の穴の個数、対応するサンプルに生じた0.14mm以上0.16mm未満の穴の個数、対応するサンプルに生じた0.16mm以上0.18mm未満の穴の個数、対応するサンプルに生じた0.18mm以上0.20mm未満の穴の個数、対応するサンプルに生じた0.20mm以上0.233mm未満の穴の個数、対応するサンプルに生じたパイプを貫通した穴の個数を示す。すなわち、
図6の表の各行は、対応するサンプルに生じた各サイズの穴の個数を示す。
【0031】
図7に、各サンプルに生じた腐食による穴の個数の積み上げグラフを示す。
図7のグラフの縦軸は、穴の個数を示し、横軸は、各サンプルを示す。
図7における市松模様の要素は、0.10mm以上0.12mm未満の穴の個数を示す。また、
図7における波線模様の要素は、0.12mm以上0.14mm未満の穴の個数を示す。また、
図7における格子状模様の要素は、0.14mm以上0.16mm未満の穴の個数を示す。また、
図7における右上がり斜線模様の要素は、0.16mm以上0.18mm未満の穴の個数を示す。また、
図7における白地の要素は、0.18mm以上0.20mm未満の穴の個数を示す。また、
図7のグラフにおける灰色地の要素は、0.20mm以上0.233mm未満の穴の個数を示す。また、
図7における黒地の要素は、パイプを貫通した穴の個数を示す。
【0032】
サンプルA~C(リン脱酸銅)、サンプルD~F(無酸素銅)それぞれについて、
図6の表、
図7のグラフを見てみると、洗浄工程で放置されただけのサンプルA、サンプルDよりも、結露水洗浄、実施洗浄が行われたサンプルB、C、サンプルE、Fの方が、生じた穴が少ないことがわかる。このことから、結露水洗浄、又は、実施洗浄を行うことでパイプにおいて腐食による穴の発生を抑制できることが確認できる。
また、
図7のグラフにおけるサンプルB、Cの値を見てみると、サンプルCでは、サンプルBに比べて、腐食による穴の減少は見られなかった。対して、
図7のグラフにおけるサンプルE、Fの値を見てみると、実施洗浄が行われたサンプルFの方が、結露水洗浄が行われたサンプルEよりも生じた穴が顕著に少なく、また、深い穴が生じていないことがわかる。このことから、無酸素銅で形成されたパイプについては、結露水洗浄に比べて実施洗浄の方が、腐食による穴の発生を顕著に低減できることが確認された。
以上の実験の結果から、本実施形態の伝熱管12aのように、熱交換器における無酸素銅で形成された伝熱管において、洗浄運転を行うことでより顕著な蟻の巣状腐食の抑制効果が得られることが分かった。また、本実験では、上述のように実験工程の繰り返しの周期は、36.5日とした。本実験により、周期36.5日で洗浄運転を繰り返すことで、無酸素銅で形成された伝熱管において蟻の巣状腐食の抑制効果が得られることが確認された。この結果に基づいて、本実施形態においては、洗浄待ち期間を、36.5日とした。ただし、洗浄待ち期間の値は実施形態に限定されるものではなく、例えば、42時間、1日、1週間、1か月間、というように、36.5日間以下であればよい。これにより、蟻の巣状腐食の制御効果を得ることができる。ただし、他の例としては、2か月間等、36.5日よりも長い期間であってもよい。この場合も、定期的に洗浄運転を行うことで、蟻の巣状腐食を抑制することができる。
【0033】
以上、本実施形態の空気調和機1では、無酸素銅で形成された室内熱交換器12の伝熱管12aに対して、洗浄運転を行う。これにより、空気調和機1は、脱臭剤・除菌剤、建築材のホルムアルデヒド等にさらされる可能性がある、室内熱交換器12の伝熱管12aにおける蟻の巣状腐食をより抑制できる。
【0034】
実施形態の第1の変形例について説明する。本実施形態においては、室内熱交換器12における伝熱管12aは、無酸素銅で形成される。ただし、伝熱管12aは、無酸素銅で形成されたパイプを一部として含むこととしてもよい。例えば、伝熱管12aは、無酸素銅で形成されたパイプと、他の材料(例えば、リン脱酸銅等)で形成されたパイプとを繋ぎ合わせたパイプとして構成されてもよい。
また、伝熱管に対する腐食は、伝熱管であるパイプの外周部から始まる。そこで、伝熱管12aは、径方向に多層なパイプであって外周部が無酸素銅で形成されたパイプを、少なくとも一部として含む構成としてもよい。この場合、最外周部が無酸素銅であればよく、それより内側の層は、アルミニウムなど、無酸素銅以外で形成されたパイプでもよい。また、他の例としては、最外周部以外も無酸素銅でもよい。
【0035】
第2の変形例について説明する。本実施形態においては、室内制御部16は、洗浄待ち期間の時間間隔で周期的に、洗浄運転を繰り返す。ただし、室内制御部16は、一定周期で、洗浄運転を繰り返さなくもよい。例えば、室内制御部16は、洗浄運転を実行した後、少なくとも所定期間経過した後のタイミングで、再度の洗浄運転を行い、その後、異なる期間経過した後で、次の洗浄運転を行うこととしてもよい。
また、室内制御部16は、洗浄運転を実行した後、所定期間経過した場合、ユーザに洗浄運転の実行を勧める信号(例えば、アラーム音、ランプの点灯等)を出力してもよい。例えば、室内制御部16が周期的に洗浄運転を実行せずに、リモコン30等を介して指示を受け付けたタイミングで、洗浄運転を行うような場合、室内制御部16は、このような信号を出力することで、ユーザに対して洗浄運転の実行タイミングを提示できる。これにより、適切なタイミングでの洗浄運転が促進され、蟻の巣状腐食をより抑制できる。
【0036】
第3の変形例について説明する。本実施形態においては、室内熱交換器12が無酸素銅で形成された伝熱管12aを含み、伝熱管12aに対して洗浄運転が行われる。ただし、室外熱交換器22が無酸素銅で形成された伝熱管を含み、室内制御部16は、室外熱交換器22の伝熱管に対して洗浄運転を行うこととしてもよい。また、室内熱交換器12、室外熱交換器22の双方が無酸素銅で形成された伝熱管を含み、室内制御部16は、室内熱交換器12、室外熱交換器22の双方の伝熱管に対して洗浄運転を行うこととしてもよい。
【0037】
第4の変形例について説明する。本実施形態においては、室内制御部16が洗浄運転を実行するよう空気調和機1を制御する。ただし、室外制御部28が洗浄運転を実行するよう空気調和機1を制御してもよい。
【0038】
以上、本発明をその好適な実施形態に基づいて詳述してきたが、本発明はこれら特定の実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の様々な形態も本発明に含まれる。上述の実施形態、変形例の一部を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0039】
1 空気調和機
10 室内機
12 室内熱交換器
12a 伝熱管
14 室内ファン
16 室内制御部
20 室外機
22 室外熱交換器
28 室外制御部
【手続補正書】
【提出日】2022-03-24
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無酸素銅で形成された、又は、少なくとも外周部を無酸素銅で形成された伝熱管を含む熱交換器と、
前記伝熱管に霜又は氷を発生させる第1の運転と、前記伝熱管に発生した霜又は氷を溶かす第2の運転と、を実行する制御部と、
を備える空気調和機。
【請求項2】
前記制御部は、さらに、前記第2の運転後に前記伝熱管を乾燥させる第3の運転を実行する請求項1に記載の空気調和機。
【請求項3】
記制御部は、前記第1の運転を実行した後で少なくとも36.5日以下の所定期間経過した後に、再度、前記第1の運転を実行する請求項1又は2に記載の空気調和機。
【請求項4】
前記制御部は、所定の時間間隔で周期的に、前記第1の運転を実行する請求項3に記載の空気調和機。
【請求項5】
前記熱交換器は、室内機に設けられる請求項1乃至4の何れか1項に記載の空気調和機。