(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023146433
(43)【公開日】2023-10-12
(54)【発明の名称】制御弁式の鉛蓄電池、及び、制御弁式の鉛蓄電池の端子
(51)【国際特許分類】
H01M 50/176 20210101AFI20231004BHJP
H01M 50/114 20210101ALI20231004BHJP
H01M 50/15 20210101ALI20231004BHJP
H01M 50/541 20210101ALI20231004BHJP
H01M 50/553 20210101ALI20231004BHJP
【FI】
H01M50/176 101
H01M50/114
H01M50/15 101
H01M50/541
H01M50/553
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022053621
(22)【出願日】2022-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】507151526
【氏名又は名称】株式会社GSユアサ
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】弁理士法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】角 陽美
(72)【発明者】
【氏名】平島 亜紀
(72)【発明者】
【氏名】足立 昌司
【テーマコード(参考)】
5H011
5H043
【Fターム(参考)】
5H011AA02
5H011CC02
5H011DD13
5H011EE04
5H011FF02
5H011KK01
5H043AA19
5H043BA12
5H043CA04
5H043CA13
5H043DA09
5H043DA12
5H043EA13
5H043EA42
5H043JA02
5H043JA12E
5H043KA02D
5H043LA03E
(57)【要約】
【課題】制御弁式の鉛蓄電池において、端子部の下端部に接続部材を接続する際に樹脂製の端子保持部材に不具合が生じることを抑制すること。
【解決手段】制御弁式の鉛蓄電池1であって、極板群21が収容されている電槽11と、電槽11の開口を閉塞している蓋部12であって、上下に貫通する貫通穴18を有する蓋部12と、貫通穴18に挿入されている金属製の極柱30と、蓋部12の下面15Aに固定されて極柱30を保持している樹脂製の端子保持部材31であって、貫通穴18を囲んで下面15Aから下に延出している延出部31Aを有し、延出部31Aに極柱30の上下方向の中間部分30Mが埋め込まれている端子保持部材31と、極柱30の下端部に接続されており、極板群21と極柱30とを接続している金属製のストラップ25と、を備え、延出部31Aの外径が上から下に向かって連続的又は段階的に小さくなっている。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御弁式の鉛蓄電池であって、
発電要素が収容されている電槽と、
前記電槽の開口を閉塞している蓋部であって、上下に貫通する貫通穴を有する蓋部と、
前記貫通穴に挿入されている金属製の端子部と、
前記蓋部の下面に固定されて前記端子部を保持している樹脂製の端子保持部材であって、前記貫通穴を囲んで前記下面から下に延出している延出部を有し、前記延出部に前記端子部の上下方向の中間部分が埋め込まれている端子保持部材と、
前記端子部の下端部に接続されており、前記発電要素と前記端子部とを接続している金属製の接続部材と、
を備え、
前記延出部の外径が上から下に向かって連続的又は段階的に小さくなっている、制御弁式の鉛蓄電池。
【請求項2】
請求項1に記載の制御弁式の鉛蓄電池であって、
前記端子部は、前記蓋部の上面より上側の部分の外径が、当該上側の部分の全高に亘って、下から上に向かって連続的に小さくなっている、制御弁式の鉛蓄電池。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の制御弁式の鉛蓄電池であって、
前記中間部分は上から下に向かって外径が連続的又は段階的に小さくなっている、制御弁式の鉛蓄電池。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の制御弁式の鉛蓄電池であって、
前記中間部分から径方向外側に環状に張り出すフランジ部が上下に離間して複数形成されており、最も上にある前記フランジ部の外径が最も大きく、最も下にある前記フランジ部の外径が最も小さい、制御弁式の鉛蓄電池。
【請求項5】
請求項4に記載の制御弁式の鉛蓄電池であって、
少なくとも1つの前記フランジ部は上面視で円形であり、外周面に回り止めの突起が形成されている、制御弁式の鉛蓄電池。
【請求項6】
請求項4に記載の制御弁式の鉛蓄電池であって、
少なくとも1つの前記フランジ部は上面視で非円形である、制御弁式の鉛蓄電池。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の制御弁式の鉛蓄電池であって、
前記中間部分の断面が非円形である、制御弁式の鉛蓄電池。
【請求項8】
制御弁式の鉛蓄電池の端子であって、
金属製の端子部と、
前記端子部の上下方向の中間部分が埋め込まれている樹脂製の端子保持部材と、
を備え、
前記端子保持部材の外径が上から下に向かって連続的又は段階的に小さくなっている、制御弁式の鉛蓄電池の端子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
制御弁式の鉛蓄電池、及び、制御弁式の鉛蓄電池の端子に関する。
【背景技術】
【0002】
鉛蓄電池は外部の接続端子が接続される端子部を備えている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の鉛蓄電池の端子部はL字形の極柱の上下方向の中間部分が樹脂に埋め込まれており、発電要素が接続されているストラップ(接続部材)が極柱の水平部に溶接されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、鉛蓄電池には電解液が液体として存在している液式の鉛蓄電池と、電解液がセパレータに吸収されている制御弁式の鉛蓄電池とがある。従来は極柱の上下方向の中間部分が樹脂に埋め込まれている端子部を制御弁式の鉛蓄電池に適用する場合の課題について十分に検討されていなかった。
本明細書では、制御弁式の鉛蓄電池において、樹脂製の端子保持部材を備える端子部の構造に関する技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
制御弁式の鉛蓄電池であって、発電要素が収容されている電槽と、前記電槽の開口を閉塞している蓋部であって、上下に貫通する貫通穴を有する蓋部と、前記貫通穴に挿入されている金属製の端子部と、前記蓋部の下面に固定されて前記端子部を保持している樹脂製の端子保持部材であって、前記貫通穴を囲んで前記下面から下に延出している延出部を有し、前記延出部に前記端子部の上下方向の中間部分が埋め込まれている端子保持部材と、前記端子部の下端部に接続されており、前記発電要素と前記端子部とを接続している金属製の接続部材と、を備え、前記延出部の外径が上から下に向かって連続的又は段階的に小さくなっている。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】実施形態1に係る制御弁式の鉛蓄電池の斜視図
【
図10】端子及び発電要素を示す模式図(一部断面図)
【発明を実施するための形態】
【0007】
(本実施形態の概要)
(1)本開示に係る鉛蓄電池は、制御弁式の鉛蓄電池であって、発電要素が収容されている電槽と、前記電槽の開口を閉塞している蓋部であって、上下に貫通する貫通穴を有する蓋部と、前記貫通穴に挿入されている金属製の端子部と、前記蓋部の下面に固定されて前記端子部を保持している樹脂製の端子保持部材であって、前記貫通穴を囲んで前記下面から下に延出している延出部を有し、前記延出部に前記端子部の上下方向の中間部分が埋め込まれている端子保持部材と、前記端子部の下端部に接続されており、前記発電要素と前記端子部とを接続している金属製の接続部材と、を備え、前記延出部の外径が上から下に向かって連続的又は段階的に小さくなっている。
【0008】
一般に液式の鉛蓄電池は蓋部の下面と発電要素との間の上下方向の距離がある程度確保されるのに対し、制御弁式では蓋部の下面と発電要素との間の上下方向の距離を液式に比べて短くできる。
ところで、鉛蓄電池は蓋部の上面に端子部が固定されている。一方、例えば特開2015―118805号公報の
図2に開示されているように、液式の鉛蓄電池ではインサート成形によって端子部を蓋部に一体成形することが行われている。
【0009】
また、従来、特許文献1に記載の端子部のように端子部を樹脂(端子保持部材に相当)に埋め込み、その端子保持部材を蓋部の下面に固定することも行われている。
しかしながら、上述した端子保持部材を用いる場合は、端子部を一部材で構成することが難しかった。このため、特許文献1にも記載されているように、発電要素が接続されているストラップ(接続部材に相当)を別部品として成形し、極柱(端子部に相当)とストラップとを溶接することが行われている。具体的には例えば、端子部は以下のような工程で蓋部に固定される。
工程1:発電要素が一体化されている接続部材が成形される。
工程2:接続部材に接続された発電要素が電槽に挿入される。
工程3:発電要素が接続された接続部材が、中間部分が端子保持部材に埋め込まれている端子部の下端部に溶接によって接続される。このとき、接続部材に発電要素が接続されている状態で溶接する。
工程4:端子保持部材が蓋部に下から固定される。
【0010】
本願発明者は、前述した特許文献1に記載の端子部を制御弁式の鉛蓄電池に適用する場合は、上述した工程3において樹脂(端子保持部材)が溶ける可能性があることを見出した。具体的には、前述したように制御弁式の鉛蓄電池は蓋部の下面と発電要素との間の上下方向の距離が短いので、極柱とストラップとを溶接するとき、樹脂と溶接個所との上下方向の距離が近くなる。それに加えて、特許文献1に記載の樹脂は外径が上から下まで一定であるので、樹脂と溶接個所との水平方向の距離も近くなる。このため、溶接の熱によって樹脂が溶ける可能性がある。樹脂と溶接個所とを水平方向に離すことによって距離を確保することも可能であるが、その場合は端子部が大きくなるという課題がある。
【0011】
本開示に係る制御弁式の鉛蓄電池によると、端子保持部材において蓋部の下面から下に延出している延出部の外径が上から下に向かって連続的又は段階的に小さくなっているので、端子保持部材の下端部と溶接個所との距離を遠くすることができる。このため、制御弁式の鉛蓄電池において、端子部の下端部に接続部材を接続する際に樹脂製の端子保持部材が溶接の熱によって溶けるという不具合が生じることを抑制できる。
【0012】
(2)前記端子部は、前記蓋部の上面より上側の部分の外径が、当該上側の部分の全高に亘って、下から上に向かって連続的に小さくなっていてもよい。
【0013】
本開示に係る制御弁式の鉛蓄電池によると、所謂テーパー形状の端子部において、端子部の下端部に接続部材を溶接する際の熱によって樹脂製の端子保持部材が溶けることを抑制できる。
【0014】
(3)前記中間部分は上から下に向かって外径が連続的又は段階的に小さくなっていてもよい。
【0015】
本開示に係る制御弁式の鉛蓄電池によると、中間部分の外径が上から下に向かって連続的又は段階的に小さくなっているので、中間部分の外径が上下に一定である場合に比べて端子保持部材の下端部の外径を小さくできる。このため、端子部の下端部に接続部材を溶接する際の熱によって樹脂製の端子保持部材が溶けることをより抑制できる。
【0016】
制御弁式の鉛蓄電池は電解液がセパレータに染み込んでおり、液体としては存在しないが、セパレータに染み込んでいる電解液が端子保持部材と端子部との間を這い上がってくることがある。本開示に係る制御弁式の鉛蓄電池によると、中間部分の外径が上から下に向かって連続的又は段階的に小さくなっているので、中間部分の外径が上下に一定である場合に比べて中間部分の沿面距離を長くできる。このため、端子保持部材と端子部との間を電解液が這い上がることを抑制できるという効果もある。
【0017】
(4)前記中間部分から径方向外側に環状に張り出すフランジ部が上下に離間して複数形成されており、最も上にある前記フランジ部の外径が最も大きく、最も下にある前記フランジ部の外径が最も小さくてもよい。
【0018】
本開示に係る制御弁式の鉛蓄電池によると、フランジ部を備えることによって中間部分の沿面距離を長くできるので、端子保持部材と端子部との間を電解液が這い上がることを抑制できる。更に、本開示に係る制御弁式の鉛蓄電池によると、最も上にあるフランジ部の外径が最も大きく、最も下にあるフランジ部の外径が最も小さいので、上に行くほど電解液が這い上がり難くなる。
【0019】
(5)少なくとも1つの前記フランジ部は上面視で円形であり、外周面に回り止めの突起が形成されていてもよい。
【0020】
本開示に係る制御弁式の鉛蓄電池によると、フランジ部の外周面に回り止めの突起が形成されているので、端子部に外部の接続端子が接続される際に端子保持部材に対して端子部が相対回転することを規制できる。
【0021】
(6)少なくとも1つの前記フランジ部は上面視で非円形であってもよい。
【0022】
本開示に係る制御弁式の鉛蓄電池によると、フランジ部が上面視で非円形であることによって回り止めの機能を有しているので、端子部に外部の接続端子が接続される際に端子保持部材に対して端子部が相対回転することを規制できる。
【0023】
(7)前記中間部分の断面が非円形であってもよい。
【0024】
本開示に係る制御弁式の鉛蓄電池によると、端子部に外部の接続端子が接続される際に端子保持部材に対して端子部が相対回転することを規制できる。
【0025】
(8)本開示に係る端子は、制御弁式の鉛蓄電池の端子であって、端子部と、前記端子部の上下方向の中間部分が埋め込まれている樹脂製の端子保持部材と、を備え、前記端子保持部材の外径が上から下に向かって連続的又は段階的に小さくなっている。
【0026】
本開示に係る制御弁式の鉛蓄電池の端子によると、発電要素と端子部とを電気的に接続する接続部材を端子部の下端部に溶接する際の熱によって樹脂製の端子保持部材が溶けることを抑制できる。
【0027】
<実施形態1>
実施形態1を
図1ないし
図10によって説明する。以降の説明において前後方向、左右方向及び上下方向とは、
図1に示す前後方向、左右方向及び上下方向を基準とする。以降の説明では同一の構成要素には一部を除いて図面の符号を省略している場合がある。
【0028】
(1)鉛蓄電池の構造
図1を参照して、実施形態1に係る鉛蓄電池1の構造について説明する。鉛蓄電池1は自動車に搭載されて各種の補機類(電動パワーステアリング、電動ブレーキ、ヘッドライト、エアコンなど)に電力を供給する補機用の鉛蓄電池である。鉛蓄電池1は制御弁式である。
【0029】
鉛蓄電池1は合成樹脂製の電槽11、合成樹脂製の蓋部12、正極外部端子13P(端子の一例)及び負極外部端子13N(端子の一例)を備えている。
電槽11は4枚の外壁14と底壁とを有しており、上側が開口する箱型をなしている。
蓋部12は電槽11に熱溶着(ヒートシール)されて電槽11の開口11A(
図2参照)を閉塞している。蓋部12は平板部15、平板部15から上に向かって略T字状に張り出している張り出し部16、及び、平板部15の外周縁に沿って形成された外周壁17を備えている。張り出し部16の内側には各セル室20(
図2参照)で発生したガスを外部に排気するための排気通路が形成されている。外周壁17は平板部15の外周縁から下向きに延びており、電槽11の外壁14の上端部を囲っている。
【0030】
蓋部12において張り出し部16が形成されていない2つの隅部には平板部15を上下に貫通する貫通穴18が形成されている。正極外部端子13Pは左側の貫通穴18に挿入されて電槽11の内部まで延びている。負極外部端子13Nは右側の貫通穴18に挿入されて電槽11の内部まで延びている。これらの外部端子13P,13Nにはハーネス端子などの外部の接続端子が接続される。
【0031】
図2に示すように、電槽11の内部は5つの隔壁19によって6つのセル室20に仕切られている。
図3に示すように、各セル室20には極板群21(発電要素の一例)と、希硫酸からなる電解液とが収容されている。極板群21は正極板22Pと負極板22Nとを間にセパレータ23を挟んで横方向に交互に積層したものである。各極板22P,22Nは格子体に活物質が充填されたものである。前述したように鉛蓄電池1は制御弁式であるので、電解液はセパレータ23に染み込んでいる。
【0032】
図3及び
図4に示すように、各極板22P,22Nの上部には耳部24(24P、24N)が設けられている。1つのセル室20内の同じ極性の極板22は耳部24が鉛合金製のストラップ25(接続部材の一例)によって連結されている。ストラップ25はセル室20ごとに正極用と負極用とが設けられている。隣接するセル室20の正負のストラップ25は隔壁19に形成されている穴26(
図2参照)を介して溶接によって接続されている。これにより各セル室20の極板群21が接続されている。
【0033】
図4に示すように、最も右側のセル室20の負極板22Nに接続されているストラップ25は負極外部端子13Nに溶接によって接続されている。図では示していないが、最も左側のセル室20の正極板22Pに接続されているストラップ25は正極外部端子13Pに溶接によって接続されている。
【0034】
(2)正極外部端子及び負極外部端子
正極外部端子13Pと負極外部端子13Nとは実質的に同一であるので、ここでは負極外部端子13Nを例に説明する。
図5に示すように、負極外部端子13Nは鉛合金等の金属製の極柱30(端子部の一例)と、樹脂製の端子保持部材31とを備えている。
図4に示すように、端子保持部材31は蓋部12の平板部15の下面15Aに下から固定されて極柱30を保持する。
【0035】
(2-1)極柱
図6に示すように、極柱30は外部の接続端子が接続される上側部分30U、端子保持部材31に埋め込まれている中間部分30M、及び、ストラップ25が溶接される下側部分30Lの3つの部分で構成されている。
上側部分30Uは上に向かって円柱状に延びている。上側部分30Uはテーパー形状であり、上側部分30Uの全高に亘って、下から上に向かって外径が連続的に小さくなっている。上側部分30Uは平板部15の上面15B(
図1参照)より上側の部分だけがテーパー形状になっていてもよい。
【0036】
中間部分30Mも断面円形であり、上から下に向かって外径が段階的に小さくなっている。中間部分30Mの外周面には環状に張り出すフランジ部32が段毎に形成されている。フランジ部32は上面視で円形である。フランジ部32を設けると上下方向の沿面距離が長くなるので、端子保持部材31と極柱30との間を電解液が這い上がることを抑制できる。
【0037】
複数のフランジ部32は、最も上にあるフランジ部32の外径が最も大きく、最も下にあるフランジ部32の外径が最も小さい。最も上のフランジ部32の直径は蓋部12に形成されている貫通穴18の内径より大きい。
下側部分30Lは、上下方向に延びる部分33と、当該上下方向に延びる部分33の下端部から水平方向に延びる部分34とを有するL字状に形成されている。水平方向に延びる部分34の先端部にはストラップ25が溶接される。
【0038】
図7に示すように、最も上のフランジ部32の外周面には複数の突起35が周方向に等間隔に一体形成されている。突起35は極柱30の上側部分30Uに外部の接続端子を接続する際に端子保持部材31に対して極柱30が相対回転することを規制する回り止めの役割を有している。
【0039】
(2-2)端子保持部材
図6を参照して、端子保持部材31について説明する。端子保持部材31は極柱30の中間部分30Mをインサートした金型に樹脂を流して一体成形することによって製造されたものである。極柱30の中間部分30Mと端子保持部材31とが一体成形されているので、中間部分30Mは端子保持部材31に埋め込まれている。ただし、最も上のフランジ部32は完全には端子保持部材31に埋め込まれておらず、上面が露出している。
【0040】
図8は、端子保持部材31だけを示している。前述したように最も上のフランジ部32は完全には端子保持部材31に埋め込まれないので、端子保持部材31は上側に開口した形状となる。前述したように最も上のフランジ部32の外周面に突起35が形成されているので、端子保持部材31の内周面のうち最も上のフランジ部32の外周面に対向する面には突起35が嵌り込む複数の凹部36が形成されている。
【0041】
図9を参照して、蓋部12への端子保持部材31の固定について説明する。端子保持部材31は蓋部12の平板部15に下から熱溶着されている。
図9において保持部材溶け代42は、端子保持部材31を蓋部12に熱溶着する際に溶けた端子保持部材31の樹脂である。樹脂逃げ代43は、端子保持部材31を蓋部12に溶着する際に溶けた蓋部12の樹脂あるいは端子保持部材31の樹脂である。端子保持部材31を蓋部12に溶着する前の樹脂逃げ代43は空洞である。
【0042】
端子保持部材31が蓋部12に熱溶着されると、端子保持部材31は蓋部12の貫通穴18を囲んで蓋部12の下面15Aから下に延出している状態になる。端子保持部材31において蓋部12の平板部15の下面15Aから下に延出している部分31Aの外径は上から下に向かって段階的に小さくなっている。以降の説明では下に延出している部分31Aのことを延出部31Aという。
【0043】
(3)鉛蓄電池の製造工程
負極外部端子13Nは以下の手順で蓋部12に固定される。
工程1:発電要素が一体化されているストラップ25が成形される。具体的には、各極板22は耳部24が下になる姿勢で保持され、耳部24が鋳型に挿入された状態で溶融した鉛合金が鋳型に流し込まれることにより、耳部24が埋め込まれたストラップ25が成形される。
【0044】
工程2:ストラップ25に接続された各極板22が電槽11に挿入される。
工程3:
図10に示すように、端子保持部材31が一体形成されている極柱30の水平方向に延びる部分34にストラップ25が溶接機50によって溶接される。水平方向に延びる部分34の下側には極板22の耳部24が溶接されていることから、ストラップ25は極板22が接続されている側とは逆側(
図10に示す例では上側)から溶接される。
工程4:端子保持部材31が蓋部12に熱溶着(ヒートシール)される。
【0045】
(4)実施形態の効果
図10に示すように、実施形態1に係る鉛蓄電池1によると、端子保持部材31において蓋部12の下面15Aから下に延出している延出部31Aの外径が上から下に向かって段階的に小さくなっているので、端子保持部材31の下端部と溶接個所との距離を遠くすることができる。このため、極柱30の下端部にストラップ25を溶接するとき、溶接の熱によって樹脂製の端子保持部材31が溶けることを抑制できる。
【0046】
鉛蓄電池1によると、テーパー形状の極柱30において、極柱30の下端部にストラップ25を溶接する際の熱によって樹脂製の端子保持部材31が溶けることを抑制できる。
【0047】
鉛蓄電池1によると、中間部分30Mの外径が上から下に向かって段階的に小さくなっているので、中間部分30Mの外径が上下に一定である場合に比べて端子保持部材31の下端部の外径を小さくできる。このため、極柱30の下端部にストラップ25を溶接する際の熱によって樹脂製の端子保持部材31が溶けることをより抑制できる。
中間部分30Mの外径が上から下に向かって段階的に小さくなっていると、中間部分30Mの外径が上下に一定である場合に比べて中間部分30Mの沿面距離を長くすることができるので、端子保持部材31と極柱30との間を電解液が這い上がることを抑制できるという効果もある。
【0048】
鉛蓄電池1によると、中間部分30Mに複数のフランジ部32が上下に離間して形成されているので、端子保持部材31と極柱30との間を電解液が這い上がることを抑制できる。更に、鉛蓄電池1によると、最も上にあるフランジ部32の外径が最も大きく、最も下にあるフランジ部32の外径が最も小さいので、上に行くほど電解液が這い上がり難くなる。
【0049】
鉛蓄電池1によると、最も上のフランジ部32の外周面に回り止めの突起35が形成されているので、極柱30に外部の接続端子が接続される際に端子保持部材31に対して極柱30が相対回転することを規制できる。
【0050】
実施形態1に係る正極外部端子13P及び負極外部端子13Nによると、極柱30の下端部にストラップ25を溶接する際の熱によって樹脂製の端子保持部材31が溶けることを抑制できる。
【0051】
<実施形態2>
実施形態2を
図11から
図14によって説明する。以降の説明では実施形態1と実質的に同一の構成要素には同一の符号を付して説明を省略する。
図11及び
図12に示すように、実施形態2に係る極柱230は最も上のフランジ部232の形状が上面視で非円形である。具体的には、最も上のフランジ部232の形状は上面視で長方形状である。極柱230の最も上のフランジ部232の外周面には突起は形成されていない。これは、最も上のフランジ部232の形状が非円形であることにより、フランジ部232自体が回り止めの機能を有しているからである。中間部分30Mに形成されている他のフランジ部232の形状は実施形態1と同様に円形である。
【0052】
図13に示すように、実施形態2に係る端子保持部材231は、上側に長方形状に開口した形状となる。実施形態2に係る極柱230は、中間部分30Mのうち上側の部分の断面が非円形である。具体的には、中間部分30Mのうち上側の部分の断面は2本の平行な直線と2つの半円とからなる所謂レーストラック形状である。このため、端子保持部材231において中間部分30Mの上側の部分が埋め込まれている部分231Bの内周形状もそれに対応してレーストラック形状である。
【0053】
図14に示すように、実施形態2に係る端子保持部材231も、蓋部12の平板部15の下面15Aから下に延出している延出部231Aの外径が上から下に向かって段階的に小さくなっている。
実施形態2はその他の点において実施形態1と実質的に同じである。
【0054】
実施形態2に係る鉛蓄電池によると、フランジ部232が上面視で非円形であることによって回り止めの機能を有しているので、極柱230に外部の接続端子が接続される際に端子保持部材231に対して極柱230が相対回転することを規制できる。
【0055】
実施形態2に係る鉛蓄電池によると、極柱230の中間部分30Mの上側の部分の断面が非円形であるので、極柱230に外部の接続端子が接続される際に端子保持部材231に対して極柱230が相対回転することをより規制できる。
【0056】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0057】
(1)上記実施形態では端子保持部材31の延出部31Aの外径が上から下に向かって段階的に小さくなっている場合を例に説明したが、延出部31Aの外径は上から下に向かって連続的に小さくなっていてもよい。
【0058】
(2)上記実施形態では中間部分30Mの外径が上から下に向かって段階的に小さくなっている場合を例に説明したが、中間部分30Mの外径は上から下に向かって連続的に小さくなっていてもよい。
上記実施形態では中間部分30Mの外径が上から下に向かって小さくなっている場合を例に説明したが、中間部分30Mの外径は上下に一定であってもよい。
【0059】
(3)上記実施形態では極柱30の上側部分30U(言い換えると外部の接続端子が接続される部分)が円柱状である場合を例に説明した。これに対し、
図15に示す正極外部端子313Pのように上側部分330Uの形状は箱型であってもよいし、他の形状であってもよい。
【0060】
(4)上記実施形態では端子部として極柱30を例に説明した。これに対し、
図16に示す端子部413Pのように、端子部はブッシング401と極柱430とで構成されてもよい。ブッシング401は銅合金等の金属製であり、円筒状に形成されている。極柱430はブッシング401に挿入されてブッシング401に溶接されている。
【0061】
(5)上記実施形態2では非円形のフランジ部232として上面視で長方形状のフランジ部232を例に説明した。しかしながら、非円形のフランジ部232は長方形状に限定されるものではなく、例えば三角形であってもよいし、五角形であってもよいし、楕円形であってもよい。
【0062】
(6)上記実施形態2では極柱230の中間部分30Mの上側の部分の断面が非円形である例としてレーストラック形状を例に説明したが、中間部分30Mの断面は楕円形や四角形などであってもよい。中間部分30Mの形状によって回り止めする必要がない場合は、中間部分30Mの断面は円形であってもよい。
【0063】
(7)上記実施形態2では端子保持部材31の下端部とストラップ25とを溶接によって接続する場合を例に説明したが、これらは例えば半田付けによって接続されてもよい。
【0064】
(8)上記実施形態では自動車に搭載される補機用の鉛蓄電池1を例に説明したが、鉛蓄電池1の用途はこれに限定されるものではなく、任意の用途に用いることができる。
【符号の説明】
【0065】
1: 鉛蓄電池
11: 電槽
11A:開口
12: 蓋部
13N: 負極外部端子(端子の一例)
13P: 正極外部端子(端子の一例)
15A: 下面
15B: 上面
18: 貫通穴
21: 極板群(発電要素の一例)
25: ストラップ(接続部材の一例)
30: 極柱(端子部の一例)
30M: 中間部分
31: 端子保持部材
31A: 延出部
32: フランジ部
35: 突起
213P: 正極外部端子(端子の一例)
230: 極柱
231: 端子保持部材
231A: 延出部
232: フランジ部
313P: 正極外部端子(端子の一例)
401: ブッシング(端子部の一例)
430: 極柱(端子部の一例)