(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023146441
(43)【公開日】2023-10-12
(54)【発明の名称】発光装置
(51)【国際特許分類】
H01L 33/54 20100101AFI20231004BHJP
H01L 33/62 20100101ALI20231004BHJP
【FI】
H01L33/54
H01L33/62
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022053629
(22)【出願日】2022-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000001960
【氏名又は名称】シチズン時計株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000131430
【氏名又は名称】シチズン電子株式会社
(72)【発明者】
【氏名】草野 賢治
(72)【発明者】
【氏名】清水 隆弘
【テーマコード(参考)】
5F142
【Fターム(参考)】
5F142AA51
5F142BA32
5F142CA13
5F142CD02
5F142CD13
5F142CD17
5F142CD18
5F142CE03
5F142CE13
5F142CG05
5F142CG27
5F142CG32
5F142DB02
5F142DB17
5F142FA16
(57)【要約】
【課題】気密封止された発光装置を提供する。
【解決手段】第1シール材30の上面を覆うケースは、出射口44と注入口45と樹脂充填部50とを備え、樹脂充填部50は、リード線を通過させるための通過孔51及び52を備え、これらを塞ぐように注入口45から充填される第2シール材60が備えられている。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板に配置された発光素子と、
前記基板の外周縁に配置された第1シール材と、
前記第1シール材の上面を覆うケースと、
前記基板と電気的に接続されたリード線と、を有し、
前記ケースは、上面の中央部に、前記発光素子からの出射光を出射するように配置された出射口と、前記ケースの上面の前記出射口と平面的に重ならない位置に配置された注入口と、前記注入口の下方に、前記基板の上面まで貫通し、外側面を囲むように配置された樹脂充填部と、を備え、
前記樹脂充填部は、リード線を通過させるための2つ以上の通過孔を備え、
前記2つ以上の通過孔を塞ぐように、前記注入口から充填される第2シール材を備える
ことを特徴とする発光装置。
【請求項2】
前記2つ以上の通過孔のうちの1つの通過孔は、前記ケースの外側面に配置され、
前記1つの通過孔以外の通過孔は、前記1つの通過孔に対向して、前記ケースの内部に配置され、
前記リード線は、前記1つの通過孔から前記ケースの外側に引き出される
ことを特徴とする請求項1に記載の発光装置。
【請求項3】
前記第2シール材は、前記基板に接するように充填され、前記基板と前記ケースとを接合する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の発光装置。
【請求項4】
前記樹脂充填部は、前記ケースの外側面となる第1側壁と、前記発光素子と前記第2シール材の間に前記発光素子に対向する側を覆うように配置された第2側壁を有し、
前記第2側壁は、外周面側において前記第2シール材に接し、前記発光素子側において前記発光素子から前記第2シール材に向かう光を遮光する
ことを特徴とする請求項1~3に記載の発光装置。
【請求項5】
前記発光素子は、紫外光を出射する
ことを特徴とする請求項1~4に記載の発光装置。
【請求項6】
前記発光素子の出射光を制御する光学素子を更に有し、
前記光学素子は、前記ケースの上面に、前記出射口を覆うように配置される
ことを特徴とする請求項1~5に記載の発光装置。
【請求項7】
前記発光素子の出射光を前記出射口へ反射する反射枠を更に有し、
前記反射枠は、前記ケースの下面に、前記発光素子の側方及び前記出射口を覆うように、前記基板から離間して配置される
ことを特徴とする請求項1~6に記載の発光装置。
【請求項8】
前記樹脂充填部は、前記基板の1つの外周面の近傍に配置され、
前記第2シール材は、前記リード線の側面の少なくとも一部を覆い、かつ前記基板に接合され、
前記リード線は、前記1つの外周面に対向する外周面の近傍で、前記基板と電気的かつ機械的に接合される
ことを特徴とする請求項1~7に記載の発光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光素子を備えた発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
可視光を出射する発光ダイオード(LED)では、ケースなどを使用して、密閉性を改善する様々な発光装置が知られている。特許文献1に記載される発光装置では、弾性を有するシール材の間にリード線を配置し、カバーケース部材とベースケース部材がシール材を挟み込むことで、防水防塵構造とする発光装置が開示されている。特許文献2に記載される発光装置では、回路基板の裏面にリード線が接続され、回路基板の裏面と筐体の内側にシリコンゴムを充填し、密閉防水構造とする発光装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-124327号公報(
図3)
【特許文献2】国際公開WO2008/117334号公報(
図3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載される発光装置では、弾性を有するシール材は、リード線を挟み込むと共に、カバーケース部材とベースケース部材によって挟み込まれる構造を有する。発光装置を製造するとき、カバーケース部材とベースケース部材の位置がずれてしまうと、シール材の挟み込みが不十分になり、シール材と、リード線、カバーケース部材又はベースケース部材の何れかとの間にすき間が生じ、密閉性が低下する恐れがある。
【0005】
また、特許文献1に記載される発光装置では、発光素子が実装された基板は、基板の表面にリード線が半田などで接続され、リード線によって保持される構造を有する。シール材は弾性を有するから、例えば、操作者が持ち運びすることにより、発光装置が振動すると、基板及びリード線も振動し、基板とリード線の接続部分に振動が伝わることによる断線の恐れがある。
【0006】
また、特許文献2に記載される発光装置では、筐体の側面のリード線が挿入された貫通孔から、シリコンゴムを充填している。シリコンゴムを充填するとき、リード線は貫通孔を塞いでしまうので、シリコンゴムがリード線に付着しやすく、作業性が悪い。作業性を改善するために、貫通孔の径を大きくすることが考えられるが、シリコンゴムを十分に充填した後、貫通孔からシリコンゴムがはみ出してしまうと、周囲の部品などへの付着により不具合が生じる恐れがある。
【0007】
また、特許文献2に記載される発光装置では、基板の表面にLEDが実装され、裏面にリード線を接続する両面基板を使用しており、片面基板を使用するときに比べて材料費が高額になる。
【0008】
本発明は、このような課題を解決するものであり、基板及びリード線を部分的に覆う樹脂充填部を保持し、発光素子を取り囲むように配置されたケースによって、気密封止された発光装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る発光装置は、基板と、基板に配置された発光素子と、基板の外周縁に配置
された第1シール材と、第1シール材の上面を覆うケースと、基板と電気的に接続されたリード線と、を有し、ケースは、上面の中央部に、発光素子からの出射光を出射するように配置された出射口と、ケースの上面の出射口と平面的に重ならない位置に配置された注入口と、注入口の下方に、基板の上面まで貫通し、外側面を囲むように配置された樹脂充填部と、を備え、樹脂充填部は、リード線を通過させるための2つ以上の通過孔を備え、2つ以上の通過孔を塞ぐように、注入口から充填される第2シール材を備えている。
【0010】
さらに、本発明に係る発光装置では、2つ以上の通過孔のうちの1つの通過孔は、ケースの外側面に配置され、1つの通過孔以外の通過孔は、その1つの通過孔に対向して、ケースの内部に配置され、リード線は、その1つの通過孔からケースの外側に引き出されることが好ましい。
【0011】
さらに、本発明に係る発光装置では、第2シール材は、基板に接するように充填され、基板とケースとを接合することが好ましい。
【0012】
さらに、本発明に係る発光装置では、樹脂充填部は、ケースの外側面となる第1側壁と、発光素子と第2シール材の間に発光素子に対向する側を覆うように配置された第2側壁を有し、第2側壁は、外周面側において前記第2シール材に接し、前記発光素子側において前記発光素子から前記第2シール材に向かう光を遮光することが好ましい。
【0013】
さらに、本発明に係る発光装置では、発光素子は、紫外光を出射することが好ましい。
【0014】
さらに、本発明に係る発光装置では、発光素子の出射光を制御する光学素子を更に有し、光学素子は、ケースの上面に、出射口を覆うように配置されることが好ましい。
【0015】
さらに、本発明に係る発光装置では、発光素子の出射光を出射口へ反射する反射枠を更に有し、反射枠は、ケースの下面に、発光素子の側方及び出射口を覆うように、基板から離間して配置されることが好ましい。
【0016】
さらに、本発明に係る発光装置では、樹脂充填部は、基板の1つの外周面の近傍に配置され、第2シール材は、リード線の側面の少なくとも一部を覆い、かつ基板に接合され、リード線は、その1つの外周面に対向する外周面の近傍で、基板と電気的かつ機械的に接合されることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る発光装置は、基板と発光素子と第1シール材とケースと出射口と注入口と樹脂充填部と第2シール材とリード線とを有し、樹脂充填部の2つ以上の通過孔はリード線を保持し、第2シール材は2つ以上の通過孔の間のリード線を覆うことによって、すき間を発生することがなく、さらに通過孔によりリード線の振動による影響もなく気密封止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】第1実施形態に係る発光装置の斜視図である。
【
図3】
図1に示す発光装置の光学素子を取り除いた斜視図である。
【
図7】
図1に示す発光装置の製造方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して、本発明に係る発光装置について説明する。ただし、本発明の技術的範囲はそれらの実施の形態には限定されず、特許請求の範囲に記載された発明とその均等物に及ぶ点に留意されたい。
【0020】
(第1実施形態に係る発光装置の構成および機能)
図1は、第1実施形態に係る発光装置の斜視図であり、
図2は、
図1に示す発光装置の分解斜視図であり、
図3は、
図1に示す発光装置の光学素子を取り除いた斜視図であり、
図4は、
図1に示す発光装置の底面図である。また、
図5は、変形例に係る発光装置の底面図である。さらに、
図6は、
図3に示すA-A線に沿う断面図である。
【0021】
図2及び
図6に示すように、本実施例の発光装置は基板10と、第1配線パターン11と、第2配線パターン12と、第1電極13と、第2電極14と、発光素子20と、第1シール材30と、ケース40と、第2シール材60と、リード線70と、光学素子80と、反射枠90とを有する。発光装置1は、リード線70を経由し、第1電極13と第2電極14との間に電圧が印加されることに応じて、光を出射する。
【0022】
図2に示すように、基板10は、矩形の平面形状を有し、銅、アルミなどの金属や、窒化アルミ、アルミナなどのセラミックなど、高熱伝導率を有する材料で作られた片面配線板である。基板10は、高い放熱性を必要としないとき、ガラスエポキシ、BTレジンやポリイミドなど、絶縁性の樹脂で形成されたプリント基板であってもよい。基板10の表面には、第1配線パターン11、第2配線パターン12、第1電極13、第2電極14が配置される。基板10の裏面は、高熱伝導率を有する材料がそのまま露出しており、ヒートシンクなどの放熱手段に、直接的に接続することにより、高い放熱性を得ることができ、発光素子20が発生させる熱を効率よく放熱する。
【0023】
第1配線パターン11、第2配線パターン12、第1電極13、第2電極14は、矩形の平面形状を有し、銅などの導電性部材で形成され、基板10の表面に互いに離間して配置される。第1配線パターン11、第2配線パターン12、第1電極13、第2電極14は、表面を金メッキなどで保護されていてもよい。第1配線パターン11と第1電極13は、不図示の配線により接続され、第2配線パターン12と第2電極14は、不図示の配線により接続される。
【0024】
図2に示すように、発光素子20は、矩形の平面形状を有するLEDダイであり、紫外線光、可視光、赤外線光を出射する。一例では、波長280nm以下の紫外線光である。発光素子20は、図示していないが、裏面にアノード端子とカソード端子を有する。アノード端子は、第1配線パターン11に、カソード端子は、第2配線パターン12に、それぞれ導電性の接着材料や半田などで実装されている。なお、発光素子20が、表面にアノード端子、裏面にカソード端子を有するとき、発光素子20のアノード端子は、金ワイヤなどの導電性の材料で第1配線パターン11に電気的に接続されてもよい。
【0025】
図2に示すように、第1シール材30は、エポキシ、シリコーンなどの樹脂で構成される薄膜の接着材料である。第1シール材30は、中央付近に、第1配線パターン11、第2配線パターン12、第1電極13及び第2電極14を覆わないように矩形の開口形状を有する。第1シール材30の外周は、基板10の表面の外周縁に一致するように配置され、基板10とケース40とを密着させ、固定する。
【0026】
図3及び
図4に示すように、ケース40は、上壁41と、第1側壁42と、第2側壁43と、出射口44と、注入口45とを有する。ケース40は、上面の上壁41と外側面の第1側壁42とで構成された下方に向かって凹型の形状を有する黒色の樹脂材料である。
ケース40は、遮光性を有し、発光素子20の出射光の出射口44以外に向かう光の散乱を抑制する。ケース40は、基板10及び第1シール材30と、外周が一致するように配置され、第1シール材30を介して、基板10に接着される。
【0027】
上壁41は、矩形の平面形状を有し、基板10に対向するようにケース40の上面に配置される。上壁41は、中央部に円形の開口形状の出射口44を有し、発光素子20の出射光を出射する。また、上壁41は、矩形の平面形状の角部近傍に2つの注入口45を有し、後述する第2シール材60が注入口45から注入される。出射口44と注入口45は、互いに干渉されない位置に配置されれば、実施形態以外の位置に配置されていてもよい。また、出射口44と注入口45は、円形、多角形などの開口形状であってもよい。
【0028】
第1側壁42は、上壁41の外周を下方に向かって垂直に延びる矩形の側面形状を有し、出射口44及び注入口45に干渉しない位置に、基板10と上壁41とを離間するように配置される。第1側壁42は、発光素子20の四方を囲む形状を有し、発光素子20の側方へ向かう出射光を遮光する。第1側壁42の下端の平面形状は、第1シール材30の平面形状と一致するように形成され、第1シール材30に接着される。
【0029】
第1側壁42は、第1側壁42aと、第1側壁42bと、第1側壁42cと、第1側壁42dとを有する。第1側壁42aは、2つの注入口45が共に近接する上壁41の外周辺の下方に配置され、第1通過孔51を有する。第1側壁42bと第1側壁42cは、第1側壁42aに直交する壁面であり、それぞれが対向した位置に配置される。第1側壁42dは、第1側壁42aに対向する壁面である。
【0030】
第2側壁43は、上壁41の下面に一体化され、注入口45の外周を下方に向かって垂直に延びる矩形の側面形状を有する。第2側壁43は、第1側壁42a~第1側壁42dの内側に位置する。第2側壁43の下端の位置は、第1側壁42の下端の位置と一致する。また、第2側壁43は、第2側壁43a1と、第2側壁43a3と、第2側壁43b1と、第2側壁43c1とを有する。
【0031】
上壁41の2つの注入口45のうち、一方の注入口45は、第1側壁42aの一端に配置され、第1側壁42aに対向する第2側壁43a1と、第1側壁42bに対向する第2側壁43b1とを有する。一方の注入口45の外周の下方は、第1側壁42aと、第1側壁42bと、第2側壁43a1と、第2側壁43b1とによって四方を連続して囲まれた空間となる。なお、第2側壁43a1は、第2通過孔52を有する。
【0032】
なお、
図5に示すように、一方の注入口45は、第1側壁42aと第2側壁43a1の間にそれぞれに対向するように配置された第2側壁43a2と、第1側壁42bと第2側壁43b1の間にそれぞれに対向するように配置された第2側壁43b2とを更に有し、第1側壁42a及び第1側壁42bを用いず、第2側壁43a1と、第2側壁43b1と、第2側壁43a2と、第2側壁43b2とで四方を連続して囲む空間としてもよい。このとき、第2側壁43a1に加えて、第2側壁43a2も第2通過孔52を有する。
【0033】
上壁41の2つの注入口45のうち、他方の注入口45は、第1側壁42aの他端に配置され、第1側壁42aに対向する第2側壁43a3と、第1側壁42cに対向する第2側壁43c1とを有する。他方の注入口45の外周の下方は、第1側壁42aと、第1側壁42cと、第2側壁43a3と、第2側壁43c1とによって四方を囲まれた空間となる。なお、第2側壁43a3は、第2通過孔52を有する。
【0034】
なお、
図5に示すように、他方の注入口45は、第1側壁42aと第2側壁43a3の間にそれぞれに対向するように配置された第2側壁43a4と、第1側壁42cと第2側
壁43c1の間にそれぞれに対向するように配置された第2側壁43c2とを更に有し、第1側壁42a及び第1側壁42cを用いず、第2側壁43a3と、第2側壁43c1と、第2側壁43a4と、第2側壁43c2とで四方を連続して囲む空間としてもよい。このとき、第2側壁43a3に加えて、第2側壁43a4も第2通過孔52を有する。
【0035】
図6に示すように、第2シール材60は、液状又はゲル状のエポキシ、シリコーンなどの樹脂で構成された接着材料である。第2シール材60は、注入口45から注入され、注入口45の下方の第1側壁42又は第2側壁43の内壁面を沿うように基板10へ向かい、基板10に接することで、基板10とケース40を固定する。
【0036】
図2及び
図6に示すように、リード線70は、円柱を細長く伸延した線状部材であり、周囲を絶縁性の樹脂で覆われた導電性の金属材料である。リード線70の一端は、第1電極13、第2電極14のそれぞれに半田などの導電性材料で接続され、リード線70の他端は、不図示の外部電源などに接続される。リード線70は、ケース40の内側から第2通過孔52と第1通過孔51を通過した後、ケース40の外側へ引き出される。リード線70は、第1電極13及び第1通過孔51と、第2電極14及び第2通過孔52との間では傾斜し、第1通過孔51及び第2通過孔52の間では直線状となる。
【0037】
図2に示すように、光学素子80は、矩形の平面形状を有する石英ガラス等のガラス又は透光性を有する樹脂で構成される。光学素子80は、ケース40の出射口44の上方に配置され、発光素子20からの出射光を発光装置1の外部へ出射する。光学素子80は、レンズ、拡散板、光学フィルタ等の、発光素子20からの紫外光に光学的作用を及ぼす光学素子であってもよい。また、光学素子80は、その一部のみが透光性を有するガラス又は樹脂により形成され、他の部分は透光性を有しない部材により形成されてもよい。
【0038】
図2に示すように、反射枠90は、上下面が開口し、上方に向かって凹型の湾曲した形状を有した円筒状の金属製の材料である。反射枠90は、ケース40の出射口44の下方に、基板10からわずかに離間した位置に、上壁41の裏面に設けた凸状部材を用いたカシメなどの方法で接合材料を用いずに固定される。発光素子20が紫外光を出射するとき、発光素子20の周囲の接合材料は、紫外光により劣化し、反射枠90が脱落することがあるが、これを防止できる。反射枠90は、発光素子20からの出射光をケース40の出射口44の方向に反射させる。なお、反射枠90は、エポキシなどの樹脂を用いてもよく、発光素子20に対向する内壁面を銀やアルミなどで覆ってもよい。また、反射枠90は、発光素子20が例えば紫外光以外の光を出射するとき、材料を劣化させる恐れが低いので、接合材料により基板10に固定されてもよい。
【0039】
図3、
図4及び
図6に示すように、発光装置1は、樹脂充填部50を有する。樹脂充填部50は、上方に注入口45が配置され、側方に第1側壁42aと、第1側壁42bと、第1側壁42a対向する第2側壁43a1と、第1側壁42bに対向する第2側壁43b1とが配置される。
図6では、第1側壁42a及び第2側壁43a1が断面図として図示されている。なお、第1側壁42aと、第1側壁42bと、第2側壁43a1と、第2側壁43b1とで作られるロ型の平面形状は、注入口45と同じ又は注入口45より大きいと第2シール材60を注入しやすく好ましい。
【0040】
第1側壁42aは、第1通過孔51を有する。第1通過孔51は、平面視したとき、注入口45に近接し対向する位置に配置され、断面視したとき、基板10及び上壁41から離間して配置された、第1側壁42aを側方に貫通する孔である。第1通過孔51は、リード線70を、発光装置1の内部から外部へ引き出すと共に直線状に水平に保持する。
【0041】
第2側壁43a1は、第1通過孔51に対向するように配置された第2通過孔52を有
する。第2通過孔52は、第1通過孔51と同様に、注入口45の下方であって、基板10及び上壁41から離間して配置された、第2側壁43a1を側方に貫通する孔である。第2通過孔52は、リード線70を、発光装置1の内部から第1通過孔51へ直線的に引き出すと共に直線状に水平に保持する。なお、注入口45の下方に、第2側壁43a1に加え、第2側壁43a2を有するとき、第2通過孔52は、第1通過孔51に対向するようにそれぞれの壁面に1つずつ配置され、リード線70は、3つの貫通孔によって保持される。
【0042】
第1通過孔51は、第2通過孔52に対向する側に、テーパなどの誘い込みとも呼ばれる形状を設けてもよい。また、第2通過孔52は、第1電極13に対向する側に、テーパなどの誘い込みとも呼ばれる形状を設けてもよい。また、第2通過孔52は、第1通過孔51よりも内径を大きくしてもよく、第2通過孔52の全長に渡って第1通過孔51側よりも第1電極13側の径を大きくする形状であってもよい。何れも、リード線70を挿入しやすくなり、作業性がよくなる。
【0043】
第2シール材60は、注入口45から注入され、樹脂充填部50を構成する4つの壁面の第1側壁42aと、第1側壁42bと、第2側壁43a1と、第2側壁43b1との内壁に沿って、基板10へ向かう。第2シール材60は、基板10に向かいながら、リード線70の第1通過孔51及び第2通過孔52の間を覆い、また、第1通過孔51及び第2通過孔52のすき間を塞ぐように封止する。第2シール材60が基板10に向かうとき、基板10と、第2側壁43a1及び第2側壁43b1との間に、第1シール材30の厚み程度のすき間を設けてあるので、樹脂充填部50に例えば気泡などの空気だまりが残る恐れは低い。第2シール材60は、基板10と、第2側壁43a1及び第2側壁43b1との間に配置され、基板10と接する面積を大きくでき、基板10とより強固に密着できる。更に、第2シール材60は、基板10に接した後、加熱などの方法によって硬化させ、基板10とケース40を固定し、発光装置1を気密封止する。なお、第2シール材60は、脱落防止のために光学素子80と接合されてもよい。
【0044】
図7は、発光装置1の製造方法を示すフローチャートである。
【0045】
まず、基板準備工程において、第1配線パターン11、第2配線パターン12、第1電極13及び第2電極14が表面に配置された基板10が準備される(S101)。次いで、発光素子配置工程において、発光素子20が第1配線パターン11及び第2配線パターン12に電気的に接続される(S102)。次いで、リード線接続工程において、リード線70が第1電極13及び第2電極14に電気的に接続される(S103)。次いで、第1シール材置工程において、第1シール材30が基板10の表面に配置される(S104)。
【0046】
次いで、ケース準備工程において、金型を用いた樹脂成型により出射口44、注入口45、第1通過孔51、第2通過孔52などを有するケース40が準備される(S105)。次いで、反射枠配置工程において、反射枠90がケース40の出射口44の下方にカシメなどの方法により固定される(S106)。次いで、リード線挿入工程において、リード線70が第1通過孔51及び第2通過孔52に挿入され、第1通過孔51から外部へ引き出される(S107)。
【0047】
次いで、組立工程において、第1シール材30とケース40を接合する(S108)。次いで、第2シール材注入工程において、第2シール材60が注入口45から注入され、加熱などの方法によって硬化され、基板10、ケース40、リード線70を固定する(S109)。次いで、光学素子配置工程において、光学素子80がケース40の出射口44を覆うように配置される(S110)ことで、発光装置1は製造される。
【0048】
(第1実施形態に係る発光装置の作用効果)
発光装置1では、注入口45は、ケース40の上面に位置するので、ケース40の側方に位置するときに比べて、第2シール材60を注入しやすい。また、注入口45は、リード線70が挿入されていないので、注入口45にリード線70があるときに比べて、第2シール材60を注入しやすい。
【0049】
また、発光装置1では、第1通過孔51は、リード線70が通過するように、第1通過孔51の内径とリード線70の外径との距離を最小にすることができる。第1通過孔51は、第1通過孔51の内径とリード線70の外径とのすき間が小さいから、第2シール材60による第1通過孔51の封止が必要となる範囲が狭く、容易になると共に、発光装置1の気密封止も容易となる。また、第2シール材60が第1通過孔51からケース40の外側に漏れ出す恐れを低減できる。
【0050】
また、発光装置1では、第2通過孔52は、第1通過孔51と同様にリード線70が通過する最小径とすることができる。第1通過孔51と第2通過孔52に保持されたリード線70は、リード線70の側方に第2シール材60の注入による圧力が加わったとしても、第1通過孔51と第2通過孔52の間ではリード線70の撓みが抑制され、リード線70の第1電極13から第2通過孔52に引っ張られる力を減少できるから、リード線70が第1電極13から剥がれる恐れを低減できる。
【0051】
また、発光装置1では、第2シール材60は、樹脂充填部50の第2側壁43もしくは第1側壁42と第2側壁43で側方が囲まれた空間に注入される。第2側壁43は、第2シール材60の側方を囲み、第2シール材60が発光装置1の内部に向かわないような形状を有するから、第2シール材60が発光素子20などに付着する恐れを低減する。
【0052】
また、発光装置1では、第2側壁43は、第2シール材の側方を覆うように接し、発光素子20と第2シール材60の間に配置され、第2シール材60に向かう発光素子20からの光を遮光する。第2側壁43は、発光素子20が紫外光を出射するとき、発光素子20からの紫外光を遮光するので、第2シール材60の紫外光による劣化を抑制することができる。
【0053】
また、発光装置1では、樹脂充填部50に注入された第2シール材60は、加熱などの方法により硬化され、基板10、ケース40及びリード線70を一体化するように保持することができる。第2シール材60は、第1シール材30に加え、基板10がケース40からの脱落を防止する第2の接合材料として機能する。また、第2シール材60は、リード線70に発光装置1の外側へ引っ張るような力が加わったとしても、第2シール材60によって基板10とケース40とリード線70を固定しているので、リード線70が第1電極13から剥がれる恐れを低減できる。
【0054】
また、発光装置1では、リード線70の一端は、第1側壁42aに近接する樹脂充填部50によって保持され、リード線70の他端は、第1側壁42dに近接する第1電極13に接合される。基板10は、第1側壁42aの近傍を樹脂充填部50内の第2シール材60によって保持され、対向する第1側壁42dの近傍をリード線70によって吊り上げるように保持される。基板10は、第1シール材30が経年劣化して基板10をケース40に接着する機能が低下したとしても、第2シール材60とリード線70によって基板10の両端を保持され、ケース40からの脱落を防止することができる。
【0055】
また、発光装置1では、リード線70の一端は、基板10から離間する第2通過孔52に挿入され、リード線70の他端は、基板10の第1電極13に接合され、基板10に接
している。基板10とリード線70とのなす角度は、リード線70と第1電極13とが接合される近傍を頂点とし、基板10の表面及び第1電極13と第2通過孔52とを結ぶ直線に挟まれる角度であり、0°から45°の角度に設定される。
【0056】
基板10とリード線70のなす角度は、リード線70が、基板10の第1側壁42dの近傍を上方に持ち上げるように作用するから、0°よりも大きい角度が好ましく、リード線70が、発光素子20から水平方向に出射される光に照射されないから、5°よりも大きい角度が更に好ましい。また、リード線70が、基板10の第1側壁42dの近傍を上方に持ち上げ過ぎて第1電極13から剥離する恐れを抑制できるから、45°よりも小さい角度が好ましく、第2通過孔52が基板10に近づくことで発光装置1を薄型化することができるから、30°よりも小さい角度が更に好ましい。
【符号の説明】
【0057】
1 発光装置
10 基板
20 発光素子
30 第1シール材
40 ケース
44 出射口
45 注入口
50 樹脂充填部
60 第2シール材
70 リード線
80 光学素子
90 反射枠