(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023146460
(43)【公開日】2023-10-12
(54)【発明の名称】光触媒コーティング構造
(51)【国際特許分類】
B01J 35/02 20060101AFI20231004BHJP
B01J 37/025 20060101ALI20231004BHJP
B01J 23/30 20060101ALI20231004BHJP
B32B 27/18 20060101ALI20231004BHJP
【FI】
B01J35/02 J
B01J37/025 ZAB
B01J23/30 A
B32B27/18 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022053653
(22)【出願日】2022-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100159385
【弁理士】
【氏名又は名称】甲斐 伸二
(74)【代理人】
【識別番号】100163407
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 裕輔
(74)【代理人】
【識別番号】100166936
【弁理士】
【氏名又は名称】稲本 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100174883
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 雅己
(74)【代理人】
【識別番号】100189429
【弁理士】
【氏名又は名称】保田 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100213849
【弁理士】
【氏名又は名称】澄川 広司
(72)【発明者】
【氏名】加藤 喜紀
(72)【発明者】
【氏名】芝 直樹
(72)【発明者】
【氏名】堤之 朋也
(72)【発明者】
【氏名】川瀬 徳隆
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 武史
【テーマコード(参考)】
4F100
4G169
【Fターム(参考)】
4F100AA17C
4F100AC03B
4F100AC05B
4F100AK01B
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4G169HD10
4G169HD17
4G169HE02
4G169HE03
4G169HE12
(57)【要約】
【課題】本発明は、空気中有害成分に対する優れた除去性能を有する光触媒コーティング構造を提供する。
【解決手段】本発明の光触媒コーティング構造は、下塗り層と、前記下塗り層上に設けられた光触媒層とを備え、前記下塗り層は、複数の板状粒子と不溶化された水溶性樹脂とを含み、複数の板状粒子は、積み重なるように配向していることを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下塗り層と、前記下塗り層上に設けられた光触媒層とを備え、
前記下塗り層は、複数の板状粒子と不溶化された水溶性樹脂とを含み、
複数の板状粒子は、積み重なるように配向していることを特徴とする光触媒コーティング構造。
【請求項2】
前記不溶化された水溶性樹脂は、架橋構造を有する請求項1に記載の光触媒コーティング構造。
【請求項3】
前記水溶性樹脂は、ポリビニルアルコール系樹脂である請求項1又は2に記載の光触媒コーティング構造。
【請求項4】
前記水溶性樹脂は、アセトアセチル基を有する変性ポリビニルアルコール又はアニオン性ポリビニルアルコールであり、
前記不溶化された水溶性樹脂は、架橋剤により架橋した架橋ポリマーであり、
前記架橋剤は、グリオキシル酸塩、炭酸ジルコニウムアンモニウム及びポリアミドエピクロロヒドリンのうち少なくとも1つを含む請求項1~3のいずれか1つに記載の光触媒コーティング構造。
【請求項5】
前記光触媒層は、可視光型光触媒を含み、
前記板状粒子の粒子径は、1μm以上10μm以下であり、
前記板状粒子の厚さは、1nm以上0.1μm以下であり、
前記板状粒子のアスペクト比(粒子径/厚さ)は、80以上1000以下である請求項1~4のいずれか1つに記載の光触媒コーティング構造。
【請求項6】
前記板状粒子は、層状物質の粒子である請求項1~5のいずれか1つに記載の光触媒コーティング構造。
【請求項7】
前記層状物質は、インターカレーションが可能な物質である請求項6に記載の光触媒コーティング構造。
【請求項8】
前記下塗り層の厚さは、1μm以上800μm以下であり、
前記下塗り層は、前記光触媒層よりも厚い請求項1~7のいずれか1つに記載の光触媒コーティング構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光触媒コーティング構造に関する。
【背景技術】
【0002】
光触媒は光照射を受けてVOC(揮発性有機化合物)等の空気中の有害物質を除去することができる。しかし、有機系基材(例えば、PVC系壁紙、ゴム、可塑剤等の添加剤を多く含む樹脂)上に光触媒層を形成した場合、基材からブリードアウトする添加剤や基材自体の分解に光触媒の分解エネルギーが消費されてしまい、目的の空気中有害成分に対する除去性能が低下する。
そこで、ガスバリア性を持つ無機層状粘土鉱物を用いることで基材からの放出ガスを抑え、同時に光触媒と基材の直接接触を抑えることが検討されている(例えば、特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-157289号公報
【特許文献2】特開2020-196863号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、無機層状粘土鉱物は一般に水溶性であるため、粘土鉱物層上に水性塗布液を用いて光触媒層を形成すると、光触媒と粘土鉱物とがと混合してしまう。そのため、光触媒が基材に接触する場合や光触媒が粘土鉱物に埋もれる場合があり、光触媒層の空気中有害成分に対する除去性能が低下する。また、環境負荷を低減するために及び快適な作業環境を確保するために、水性塗布液を用いて光触媒層を形成することが望ましい。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、空気中有害成分に対する優れた除去性能を有する光触媒コーティング構造を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、下塗り層と、前記下塗り層上に設けられた光触媒層とを備え、前記下塗り層は、複数の板状粒子と不溶化された水溶性樹脂とを含み、複数の板状粒子は、積み重なるように配向していることを特徴とする光触媒コーティング構造を提供する。
【発明の効果】
【0006】
前記下塗り層は、積み重なるように配向している板状粒子と不溶化された水溶性樹脂を含む。このため、下塗り層は高いバリア性能を有し、基材から放出される有機化合物(例えばVOC、可塑剤など)が光触媒層の光触媒活性に影響を与えることを抑制することができる。これにより、PVC基材上やゴム基材上に光触媒層を形成した場合であっても、光触媒層が空気中の有害物質を除去する効果を発揮することが可能となる。
また、前記下塗り層に含まれる複数の板状粒子は不溶化された水溶性樹脂により繋ぎ合わされているため、水性光触媒分散液を用いて光触媒層を形成した場合であっても、水溶性樹脂が水性光触媒分散液に溶解することを抑制することができ光触媒粒子と板状粒子又は水溶性樹脂とが混合することを抑制することができる。このため、光触媒を表面に露出させることができ、本発明の光触媒コーティング構造が空気中有害成分に対する優れた除去性能を有することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の一実施形態の光触媒コーティング構造を含む光触媒被覆部材の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の光触媒コーティング構造は、下塗り層と、前記下塗り層上に設けられた光触媒層とを備え、前記下塗り層は、複数の板状粒子と不溶化された水溶性樹脂とを含み、複数の板状粒子は、積み重なるように配向していることを特徴とする。
【0009】
前記不溶化された水溶性樹脂は、架橋構造を有することが好ましい。このことにより、水溶性樹脂が水性光触媒分散液に溶解することを抑制することができ光触媒粒子と板状粒子とが混合することを抑制することができる。
前記水溶性樹脂は、ポリビニルアルコール系樹脂であることが好ましい。
好ましくは、前記水溶性樹脂は、アセトアセチル基を有する変性ポリビニルアルコール又はアニオン性ポリビニルアルコールであり、前記不溶化された水溶性樹脂は、架橋剤により架橋した架橋ポリマーであり、前記架橋剤は、グリオキシル酸塩、炭酸ジルコニウムアンモニウム及びポリアミドエピクロロヒドリンのうち少なくとも1つを含む。
【0010】
好ましくは、前記光触媒層は、可視光型光触媒を含み、前記板状粒子の粒子径は、1μm以上10μm以下であり、前記板状粒子の厚さは、1nm以上0.1μm以下であり、前記板状粒子のアスペクト比(粒子径/厚さ)は、80以上1000以下である。
前記板状粒子は、層状物質の粒子であることが好ましい。
前記層状物質は、インターカレーションが可能な物質であることが好ましい。
好ましくは、前記下塗り層の厚さは、1μm以上800μm以下であり、前記下塗り層は、前記光触媒層よりも厚い。
【0011】
以下、図面を用いて本発明の一実施形態を説明する。図面や以下の記述中で示す構成は、例示であって、本発明の範囲は、図面や以下の記述中で示すものに限定されない。
【0012】
図1は本実施形態の光触媒コーティング構造を含む光触媒被覆部材の概略断面図である。
本実施形態の光触媒コーティング構造10は、下塗り層3と、下塗り層3上に設けられた光触媒層4とを備え、下塗り層3は、複数の板状粒子5と不溶化された水溶性樹脂6とを含み、複数の板状粒子5は、積み重なるように配向していることを特徴とする。
光触媒コーティング構造10は、下塗り層3と光触媒層4とを含む2層コーティング構造であり、基材2をコーティングするように設けることができる。
【0013】
基材2は、下塗り層3及び光触媒層4によりコーティングされる対象物であり、有機化合物を含むことができる。例えば、基材2は、壁紙、化粧板、樹脂板、カーテン、木質フローリング、樹脂系フローリング、畳、絨毯、木製家具、プラスチック製家具、内装材、電化製品のプラスチック製筐体、断熱材、布、皮革、プラスチック、ゴム、木、紙、樹脂塗膜などである。また、基材2は、接着剤、塗料、防腐剤、殺虫剤などを含んでもよい。
【0014】
光触媒コーティング構造10は、基材2をコーティングする構造であり、下塗り層3(ガスバリア層)と、下塗り層3上に設けられた光触媒層4とを含む。
下塗り層3は、基材2をコーティングする層であり、光触媒層4を形成するための下塗りで形成される層である。下塗り層3は、複数の板状粒子5と不溶化された水溶性樹脂6とを含む。下塗り層3において、複数の板状粒子5は、積み重なるように配向している。また、積み重なった複数の板状粒子5の粒子間には不溶化された水溶性樹脂が存在しており、隣接する板状粒子5を不溶化された水溶性樹脂が接着している。また隣接する板状粒子5の隙間を不溶化された水溶性樹脂が埋めている。このような下塗り層3を設けることにより、基材2から発生する揮発性有機化合物(VOC)(例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒドなど)や可塑剤が下塗り層3を通過し光触媒層4に達することを抑制することができ、基材2から発生する揮発性有機化合物により光触媒層4の悪臭物質除去効果が低下することを抑制することができる。また、光触媒層4が基材2に接触することを抑制することができ、光触媒活性により基材2が劣化することを抑制することができる。また、光触媒層4の分解エネルギーが基材2の分解で消費され光触媒層4の悪臭物質除去効果が低下することを抑制することができる。
また、下塗り層3は、マトリクスである不溶化された水溶性樹脂6に板状粒子5が分散した粒子分散型複合材料から構成されてもよい。
【0015】
下塗り層3の厚さは、好ましくは1μm以上800μm以下であり、より好ましくは10μm以上100μm以下である。また、下塗り層3は、光触媒層4よりも厚いことが好ましい。また、下塗り層3の厚さは、光触媒層4の厚さの3倍以上5000倍以下であることが好ましい。
下塗り層3は、例えば、次のようにして作製することができる。
(1)板状粒子5(バリア材微粒子)を水に添加し、分散混合し板状粒子分散液を調製する。板状粒子5を水に分散させる方法としては、一般的には湿式の分散機を用いて実施することができ、その分散機としては、例えば、超音波分散機、コロイドミル及びビーズミルなどが挙げられる。混合は、一般的な液体混合機であればよい。撹拌羽根等が付属しているものであれば、板状粒子分散液の組成をより均一にすることが出来る。
(2)常温の板状粒子分散液を攪拌しながら、水溶性樹脂を徐々に投入し分散させる。攪拌を続けながら板状粒子分散液を90~95℃に加熱し、およそ1時間維持して板状粒子分散液に水溶性樹脂を溶解させる。溶解後、板状粒子分散液を常温まで冷却し下塗り液とする。
(3)下塗り液を基材2に塗布、乾燥する。塗布方法はスプレー、バーコート、スピンコート等一般的な方法を用いることができる。その後、必要に応じて不溶化処理を行うことにより下塗り層3を形成することができる。下塗り液への架橋剤等の硬化剤の添加や、塗布膜の熱処理等を行う(不溶化)と、下塗り層3の耐水性が向上する。熱処理は発泡が起こらないように穏やかな条件である程度水分を飛ばした後に行うことが望ましい。高温で乾燥すると発泡しやすいため、50℃以下で乾燥することが望ましい。
【0016】
板状粒子5は、板のような形状を有する粒子であり、扁平状粒子、フレーク状粒子などを含む。板状粒子5は、無機化合物粒子であることが好ましい。板状粒子5は、下塗り層3において基材2からのVOC放出速度を低下させるVOCバリア材として働くことができる。また、板状粒子5が無機化合物である場合、板状粒子5は、光触媒活性による基材2やバインダーの分解を防ぐ保護材としても働く。下塗り層3において、板状粒子5が積み重なるように配向することにより、迷路状構造による拡散遅延効果により基材2からのVOC放出速度を抑制することができる。
【0017】
板状粒子5は、層状物質の粒子であることが好ましく、また、インターカレーションが可能な物質であることが好ましい。板状粒子5は、例えば、板状の粘土鉱物粒子、雲母などであり、膨潤性層状粘土鉱物粒子であることが好ましい。膨潤性層状粘土鉱物は、水中で膨潤剥離するため高いアスペクト比を持ち、高いガスバリア性能を示す。
また、粘土鉱物粒子は、例えば、層状珪酸塩を含む粒子である。また、下塗り層3に含まれる粘土鉱物粒子は、ベントナイト粒子、サポナイト粒子、マイカ粒子、モンモリロナイト粒子及びスメクタイト粒子のうち少なくとも1つを含むことができる。すなわち、下塗り層3は、複数種の粘土鉱物粒子を含むことができる。
下塗り層3における板状粒子5の割合は、好ましくは5重量%以上95重量%以下であり、より好ましくは30重量%以上80重量%以下である。また、下塗り層3における不溶化された水溶性樹脂の重量に対する板状粒子5の重量の比は、好ましくは0.05以上20以下であり、より好ましくは0.42以上4以下である。
【0018】
板状粒子5の粒子径(平均粒子径D50)は、例えば、1μm以上10μm以下である。また、板状粒子5の厚さ(平均厚さD50)は、例えば、1nm以上0.1μm以下である。板状粒子5の粒子径や厚さは、下塗り層3のSEM観察から算出することができる。板状粒子5のアスペクト比(粒子径/厚さ)は、例えば、20以上1000以下であり、好ましくは80以上1000以下である。下塗り層3がこのような板状粒子5を含むことにより、下塗り層3において板状粒子5が積み重なるように配向し、迷路状構造による拡散遅延効果により下塗り層3のガスバリア性を向上させることができる。また、板状粒子5が水溶性樹脂に混ぜ込まれるため、板状粒子5の粒子間も不溶化された水溶性樹脂6によりバリアすることができ、下塗り層3が高いガスバリア性を有することができる。
【0019】
板状粒子5のアスペクト比が高い程下塗り層3のガスバリア性が向上する。特に、Na型モンモリロナイトや膨潤性マイカ等の膨潤性層状粘土鉱物は水中への分散時に層間に水分子や樹脂分子が挿入され膨潤剥離しアスペクト比および粒子数が増加するため、高いガスバリア性能を示す。膨潤性層状粘土は水への混合時に全ての層が完全に分散剥離するとは限らないため、あらかじめビーズミル等で解砕処理を行っておくと、より良好なアスペクト比の分散微粒子が得られる。
【0020】
水溶性樹脂は下塗り層3において板状粒子5を固定化するバインダーとして働く。水溶性樹脂は不溶化されている。
下塗り層3における不溶化された水溶性樹脂6の割合は、好ましくは5重量%以上95重量%以下であり、より好ましくは20重量%以上70重量%以下である。
水溶性樹脂は、例えば、ポリビニルアルコール系樹脂、アクリル酸系水溶性ポリマー、アクリル酸系コポリマーなどであり、好ましくは、ポリビニルアルコール系樹脂である。
ポリビニルアルコール系樹脂は、例えば、無変性ポリビニルアルコール、部分けん化ポリビニルアルコール、完全けん化ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコールなどである。変性ポリビニルアルコールは、例えば、アセトアセチル基変性ポリビニルアルコール、疎水基変性ポリビニルアルコール、アニオン性ポリビニルアルコールなどである。
【0021】
ポリビニルアルコール(PVA)はポリ酢酸ビニルの酢酸基をOH基に置換(けん化)することで合成される水溶性樹脂である。けん化度(PVA中のOH基数/(酢酸基数+OH基数)×100[mol%])が高いほど下塗り層3の耐水性が高くなるため、水溶性樹脂は、PVAはけん化度98%以上の完全けん化品が望ましい。
PVAは架橋性や結晶性を向上させるための置換基を導入すること(変性)で耐水性の向上が可能となる。このため、水溶性樹脂は、特にアセトアセチル基やカルボキシル基のような反応性置換基を導入し架橋性を向上させた反応性PVAであることが好ましい。
【0022】
さらに、アセトアセチル基変性PVAは常温のような穏やかな条件や架橋剤を添加しない場合においても架橋反応が進行し下塗り層3が良好な耐水性を有するため、水溶性樹脂はアセトアセチル基変性PVAであることが特に好ましい。
反応性PVAの例として三菱ケミカル株式会社製ゴーセネックスZ-200や株式会社クラレ製25-88KL、結晶性を向上させたPVAの例として株式会社クラレ製エクセバールRS2117が挙げられる。
【0023】
また、下塗り層3に含まれる有機化合物である樹脂は光触媒層4に含まれる光触媒の光触媒活性によって分解される可能性がある。この場合、樹脂が光触媒の分解エネルギーを消費するため光触媒層4のVOC除去性能が低下する。しかし、検討の結果、板状粒子5と複合化し十分に耐水化(不溶化)されたPVAは光触媒層4のVOC除去性能への悪影響が殆どないことが分かった。
【0024】
水溶性樹脂の不溶化とは、水溶性樹脂に耐水性を持たせることである。下塗り層3に含まれる水溶性樹脂が不溶化されているため、下塗り層3上に水性光触媒分散液を塗布したとしても、水溶性樹脂が溶解して下塗り層3と上塗り液とが混合することを抑制することができ、光触媒粒子が水溶性樹脂や板状粒子5に埋もれ光触媒活性が低下することを抑制することができる。
【0025】
例えば、水溶性樹脂に熱処理を施すことにより水溶性樹脂を不溶化することができる。具体的には、板状粒子5を水に分散させた分散液にポリビニルアルコール系樹脂を溶解させた下塗り液を基材2上に塗布し塗布膜を形成し、この塗布膜を乾燥させ、120℃以上195℃以下の温度での熱処理を施すことにより下塗り層3に含まれるポリビニルアルコール系樹脂を不溶化することができる(熱による不溶化)。この結果、下塗り層3の耐水性を向上させることができる。
【0026】
例えば、板状粒子5を水に分散させた分散液に水溶性樹脂及び架橋剤を溶解させた下塗り液を基材2上に塗布し塗布膜を形成し、この塗布膜を乾燥させ、架橋反応を進行させることができる(水溶性樹脂が硬化する)。このことにより下塗り層3に含まれる水溶性樹脂が架橋構造を有することができ(架橋ポリマーとなる)水溶性樹脂を不溶化することができる(架橋による不溶化)。この結果、下塗り層3の耐水性を向上させることができる。架橋剤は、例えば、グリオキシル酸塩、炭酸ジルコニウムアンモニウム、ポリアミドエピクロロヒドリンなどである。一般的なPVAを含む下塗り層3の耐水性が良好で、下塗り液における凝集等の問題が生じない架橋剤として炭酸ジルコニウムアンモニウムが好ましい。
【0027】
反応性PVAを用いる場合、炭酸ジルコニウムアンモニウムに加えて各々の反応性置換基に適した架橋剤を選択できる。下塗り層3の耐水性が良好で下塗り液における凝集等の問題が生じない架橋剤として、アセトアセチル基変性PVAにはグリオキシル酸塩が良好であり、アニオン性(カルボキシル基変性)PVAにはポリアミドエピクロロヒドリンが良好である。アセトアセチル基変性PVAとグリオキシル酸ナトリウムの組み合わせは、架橋反応による有害な副生成物がなく穏和な硬化条件であり下塗り層3の耐水性も高いため特に好ましい。
【0028】
また、水溶性樹脂が自己架橋型水溶性樹脂(例えば、アセトアセチル基変性ポリビニルアルコール)である場合、板状粒子5を水に分散させた分散液に自己架橋型水溶性樹脂を溶解させた下塗り層用塗布液を基材2上に塗布し塗布膜を形成し、この塗布膜を乾燥させ、架橋反応を進行させることができる。このことにより下塗り層3に含まれる水溶性樹脂が架橋構造を有することができ(架橋ポリマーとなる)水溶性樹脂を不溶化することができる(架橋による不溶化)。
架橋反応は、常温で進行させてもよく、50℃以上180℃以下の温度に塗布膜を加熱して進行させてもよい。
【0029】
光触媒層4は、光触媒を含む層であり、光触媒層4が受光することにより生じる光触媒活性により空気中の有機化合物(例えば、悪臭物質)を除去する機能を有する。
光触媒層4に含まれる光触媒は光照射を受けて有機物分解等の効果を発揮する物質である。光触媒層4に含まれる光触媒は、可視光型光触媒であることが好ましい。可視光型光触媒は、例えば、酸化タングステン(WO3)を主成分とする光触媒である。また、可視光型光触媒は、光触媒機能を有する成分(例えば酸化タングステン)のエネルギーギャップを小さくして可視光領域での応答性を上げる助触媒を添加して使用してもよい。助触媒としてPt、Pd、Rh、Ru、Os、Irのような白金族金属を光触媒機能を有する成分に添加することが好ましい。
【0030】
光触媒層4は、乾燥硬化後の下塗り層3上に水系分散媒に光触媒粒子が分散した水性光触媒分散液を塗布することにより塗布膜を形成し、この塗布膜を乾燥させることにより形成することができる。水性光触媒分散液は、分散剤、バインダーなどの添加物を含んでもよい。塗布方法はスプレー、バーコート、スピンコート等一般的な方法を用いることができる。
光触媒層4に含まれる光触媒粒子の50%体積累積径は、1nm以上500nm以下であることが好ましい。さらに光触媒粒子の50%体積累積径が5nm以上であると、水性光触媒分散液における光触媒粒子の凝集が少なく、再分散が容易である。光触媒粒子の50%体積累積径が200nm以下であると、水性光触媒分散液を調製する工程で他の成分と均一に混合しすい。粒子径測定は、BET比表面積計やレーザ回折式粒度分布計や動的光散乱式粒度分布計等によって測定することができる。
また、光触媒層4に含まれる光触媒が0.1g/m2以上10g/m2以下となるように光触媒層4を形成することができる。また、光触媒層4の厚さは、例えば、0.05μm以上10μm以下である。
【0031】
実験1
表1に示した膨潤性無機層状粘土化合物(板状粒子)を水に添加し分散混合した。膨潤性無機層状粘土化合物として、粒径や厚みの異なる膨潤性マイカ(片倉コープアグリ株式会社製MEB-3、ME200B-4T、ME-200)、モンモリロナイト(クニミネ工業株式会社製クニピア-F)又は合成スメクタイト(クニミネ工業株式会社製スメクトンSA)を用いた。
部分けん化PVA(キシダ化学PVA500)をこの分散液に投入し分散液を攪拌しながら90℃~95℃に加熱し1時間維持して部分けん化PVAを水に溶解させた。このようにして、1.5wt%の部分けん化PVAと、1.5wt%の板状粒子とを含む水溶液(下塗り液)を調製した。
【0032】
ドクターブレード法(0.05mmギャップ)を用いて調製した下塗り液を株式会社サンゲツ製の塩化ビニル樹脂系壁紙(7cm×5cm)に塗布し、塗布膜を45℃で乾燥させ塗布層を形成した。そして、150℃のホットプレート上に塗布層を有する壁紙を1時間載せることにより塗布層に熱処理(不溶化処理)を施し下塗り層を形成した。
その後、スピンコート法を用いて20wt%の酸化タングステンを含む光触媒水分散液(上塗り液、体積平均径D50=200nmの光触媒微粒子を分散させたスラリー)を下塗り層上に塗布し、乾燥させることにより光触媒層(dry30g/m2)を形成した。
このようにして試料1~5を作製した。
【0033】
作製した試料を0.5Lのガスバッグに封入し、アセトアルデヒドガスを初発15ppmとなるように注入した。
10000lxの青色LED光を光触媒層に1時間照射し、アセトアルデヒドガス濃度の変化を検知管で測定した。そして、アセトアルデヒド残存率(1時間後のアセトアルデヒド濃度/初発濃度×100)を算出し、以下の基準でVOC除去性能を判定した。
[性能判定基準]
アセトアルデヒド残存率が20%以下: ◎
アセトアルデヒド残存率が20~70%: 〇
アセトアルデヒド残存率が70%以上だが減少傾向にある: △
アセトアルデヒド濃度が減少しない: ×
表1に各試料のVOC除去性能評価結果を示す。粒子径が小さくかつアスペクト比の高い板状粒子を用いて作製した試料が高いVOC除去性能を示した。
評価結果が×となった試料4、5では、下塗り層に含まれる部分けん化PVAが十分に不溶化されておらず、光触媒水分散液を上塗りするときに、下塗り層に含まれる成分が分散液に溶出・混合してしまい二層コートが形成されていないと推察される。
【0034】
【0035】
実験2
膨潤性マイカ(板状粒子)(片倉コープアグリ株式会社製MEB-3)を水に添加し分散混合した。部分けん化PVA(キシダ化学PVA500)をこの分散液に投入し水に溶解させた。この分散液に、部分けん化PVAの添加量を100重量部として10重量部の架橋剤を添加し溶解させた。各試料の架橋剤の種類は表2に示し、具体的には、架橋剤として、炭酸ジルコニウムアンモニウム(第一稀元素化学工業株式会社AC-7)、ジヒドロビス(アンモニウムラクテート)チタニウム、チタンラクテート、ジイロプロポキシチタンビス(トリエタノールアミネート)(マツモトファインケミカル株式会社製TC-300、TC-310、TC-400)を用いた。
このようにして、3wt%の部分けん化PVAと、3wt%の板状粒子と、架橋剤とを含む水溶液(下塗り液)を調製した。
【0036】
ドクターブレード法を用いて調製した下塗り液を塩化ビニル樹脂系壁紙に塗布し、塗布膜を45℃で乾燥させ塗布層を形成した。そして、150℃のホットプレート上に塗布層を有する壁紙を10分間載せることにより塗布層に熱処理(不溶化処理)を施し下塗り層を形成した。
その後、スピンコート法を用いて20wt%の酸化タングステンを含む光触媒水分散液(上塗り液)を下塗り層上に塗布し、乾燥させることにより光触媒層(dry8g/m2)を形成した。このようにして試料6~9を作製した。
【0037】
作製した試料を0.5Lのガスバッグに封入し、アセトアルデヒドガスを初発15ppmとなるように注入した。
10000lxの青色LED光を光触媒層に1時間照射し、アセトアルデヒドガス濃度の変化を検知管で測定した。そして、アセトアルデヒド残存率を算出し、前述の基準でVOC除去性能を判定した。
表2に各試料のVOC除去性能評価結果を示す。架橋剤に炭酸ジルコニウムアンモニウムを用いた試料6が高いVOC除去性能を示した。一方で、チタン系架橋剤を用いた下塗り層は耐水性が不十分で光触媒水分散液の上塗り時に下塗り層が光触媒水分散液に溶解混合してしまい、試料7~9はVOC除去性能を示さなかった。
【0038】
【0039】
実験3
膨潤性マイカ(板状粒子)(片倉コープアグリ株式会社製MEB-3)を水に添加し分散混合した。アセトアセチル基を有する変性PVA(三菱ケミカル株式会社製ゴーセネックスZ-200)をこの分散液に投入し水に溶解させた。このアセトアセチル基を有する変性PVAが溶解した分散液に、アセトアセチル基を有する変性PVAの添加量を100重量部として5重量部の架橋剤を添加し溶解させた。各試料の架橋剤の種類は表3に示し、具体的には、架橋剤として、グリオキシル酸ナトリウム(三菱ケミカル株式会社製SafelinkTM SPM-01)、炭酸ジルコニウムアンモニウム、塩化ジルコニル(第一稀元素化学工業株式会社製AC-7、ZC-2)を用いた。
このようにして、2wt%のアセトアセチル基を有する変性PVAと、2wt%の板状粒子と、架橋剤とを含む水溶液(下塗り液)を調製した。
【0040】
ドクターブレード法を用いて調製した下塗り液を塩化ビニル樹脂系壁紙に塗布し、塗布膜を常温で乾燥させ塗布層を形成した。そして、塗布層を70℃オーブン中で5分間熱処理を行い下塗り層を形成した。
その後、スピンコート法を用いて10wt%の酸化タングステンを含む光触媒水分散液(上塗り液)を下塗り層上に塗布し、乾燥させることにより光触媒層(dry2.5g/m2)を形成した。
このようにして試料10~12を作製した。
【0041】
作製した試料を0.5Lのガスバッグに封入し、アセトアルデヒドガスを初発15ppmとなるように注入した。
10000lxの青色LED光を光触媒層に1時間照射し、アセトアルデヒドガス濃度の変化を検知管で測定した。そして、アセトアルデヒド残存率を算出し、前述の基準でVOC除去性能を判定した。
表3に各試料のVOC除去性能評価結果を示す。架橋剤としてグリオキシル酸ナトリウムを用いた試料10および架橋剤として炭酸ジルコニウムアンモニウムを用いた試料11が良好なVOC除去性能を示した。また、架橋剤として塩化ジルコニルを分散液に添加すると、添加時に下塗り液に凝集が生じ、試料12では均一な下塗り層の成膜ができなかった。
【0042】
【0043】
実験4
膨潤性マイカ(板状粒子)(片倉コープアグリ株式会社製MEB-3)を水に添加し分散混合した。アセトアセチル基を有する変性PVA(三菱ケミカル株式会社製ゴーセネックスZ-200)をこの分散液に投入し水に溶解させた。試料13、14では、このアセトアセチル基を有する変性PVAが溶解した分散液に、アセトアセチル基を有する変性PVAの添加量を100重量部として5重量部の架橋剤を添加し溶解させた。各試料の架橋剤の種類は表4に示し、具体的には、架橋剤として、グリオキシル酸ナトリウム(三菱ケミカル株式会社製SafelinkTM SPM-01)、炭酸ジルコニウムアンモニウム(第一稀元素化学工業株式会社製AC-7)を用いた。
このようにして、2wt%のアセトアセチル基を有する変性PVAと、2wt%の板状粒子と、架橋剤とを含む水溶液(下塗り液)を調製した。また、試料15では、分散液に架橋剤を添加しておらず、下塗り液は、2wt%のアセトアセチル基を有する変性PVAと、2wt%の板状粒子とを含む。
【0044】
ドクターブレード法を用いて調製した下塗り液を塩化ビニル樹脂系壁紙に塗布し、塗布膜を常温で18時間乾燥・硬化させ下塗り層を形成した(熱処理無し)。
その後、スピンコート法を用いて10wt%の酸化タングステンを含む光触媒水分散液(上塗り液)を下塗り層上に塗布し、乾燥させることにより光触媒層(dry2.5g/m2)を形成した。
このようにして試料13~15を作製した。
【0045】
作製した試料を0.5Lのガスバッグに封入し、アセトアルデヒドガスを初発15ppmとなるように注入した。
10000lxの青色LED光を光触媒層に1時間照射し、アセトアルデヒドガス濃度の変化を検知管で測定した。そして、アセトアルデヒド残存率を算出し、前述の基準でVOC除去性能を判定した。
表4に各試料のVOC除去性能評価結果を示す。
アセトアセチル基を有する変性PVAを常温で乾燥硬化を行った試料13、14は、優れたVOC除去性能を有していた。また、架橋剤を添加していない下塗り液を用いた試料15でもVOC除去性能を有することが確認された。これは、アセトアセチル基を有する変性PVAは穏和な条件でも自己架橋が進み硬化するためと考えられる。従って、アセトアセチル基を有する変性PVAは下塗り層のバインダーとして特に良好であることがわかった。
【0046】
【0047】
実験5
膨潤性マイカ(板状粒子)(片倉コープアグリ株式会社製MEB-3)を水に添加し分散混合した。
表5に示した水溶性樹脂をこの分散液に投入し水に溶解させた。水溶性樹脂として、アセトアセチル基を有する変性PVA(三菱ケミカル株式会社製ゴーセネックスZ-200)、疎水基変性PVA(株式会社クラレ製エクセバールRS2117、RS4104)、完全ケン化PVA(株式会社クラレ製11-98)、アニオン性PVA(株式会社クラレ製25-88KL)、ポリアクリル酸(株式会社日本触媒製アクアリックHL415)、アクリル酸系コポリマー(アクリル酸/スルホン酸系モノマー共重合体ナトリウム塩、株式会社日本触媒製アクアリックGH234)を用いた。
【0048】
試料16では、アセトアセチル基を有する変性PVA100重量部に対して5重量部のグリオキシル酸ナトリウム(三菱ケミカル株式会社製SafelinkTM SPM-01)を架橋剤として分散液に添加し溶解させ、試料20では、アニオン性PVA100重量部に対して30重量部のポリアミドエピクロロヒドリン(星光PMC株式会社製WS-4020)を架橋剤として分散液に添加し溶解させ、試料21では、ポリアクリル酸およびアクリル酸系コポリマー100重量部に対して25重量部のオキサゾリン基含有ポリマー(株式会社日本触媒製エポクロスWS-700)を架橋剤として分散液に添加し溶解させた。このようにして、2wt%の水溶性樹脂と、2wt%の板状粒子と、架橋剤とを含む水溶液(下塗り液)を調製した。
また、試料17~19では、分散液に架橋剤を添加しておらず、下塗り液は、2wt%の水溶性樹脂と、2wt%の板状粒子とを含む。
【0049】
ドクターブレード法を用いて調製した下塗り液を塩化ビニル樹脂系壁紙に塗布し、塗布膜を常温で2時間以上乾燥・硬化させ下塗り層を形成した(熱処理無し)。
その後、スプレー噴霧法を用いて2.5wt%の酸化タングステンを含む光触媒水分散液(上塗り液)を下塗り層上に塗布し、乾燥させることにより光触媒層(dry0.3g/m2)を形成した。
このようにして試料16~22を作製した。
【0050】
作製した試料を0.5Lのガスバッグに封入し、アセトアルデヒドガスを初発15ppmとなるように注入した。
10000lxの青色LED光を光触媒層に5時間照射し、アセトアルデヒドガス濃度の変化を検知管で測定した。そして、アセトアルデヒド残存率を算出し、前述の基準でVOC除去性能を判定した。
表5に各試料のVOC除去性能評価結果を示す。試料19、20、22は水溶性樹脂の架橋反応が進まなかったため、VOC除去性能を有さなかったと考えられる。また、水溶性樹脂をアセトアセチル基を有する変性PVAとし架橋剤をグリオキシル酸ナトリウムとした試料16では、下塗り層の硬化時間を短くしても優れたVOC除去性能を有することがわかった。
【0051】
【0052】
実験6
膨潤性マイカ(板状粒子)(片倉コープアグリ株式会社製MEB-3)を水に添加し分散混合した。
表6に示した水溶性樹脂をこの分散液に投入し水に溶解させた。水溶性樹脂として、アセトアセチル基を有する変性PVA(三菱ケミカル株式会社製ゴーセネックスZ-200)、アニオン性PVA(株式会社クラレ製25-88KL)、疎水基変性PVA(株式会社クラレ製エクセバールRS4104、RS2117)を用いた。
【0053】
試料23では、アセトアセチル基を有する変性PVA100重量部に対して5重量部のグリオキシル酸ナトリウム(三菱ケミカル株式会社製SafelinkTM SPM-01)を架橋剤として分散液に添加し溶解させ、試料24では、アニオン性PVA100重量部に対して30重量部のポリアミドエピクロロヒドリン(星光PMC株式会社製WS-4020)を架橋剤として分散液に添加し溶解させた。このようにして、2wt%の水溶性樹脂と、2wt%の板状粒子と、架橋剤とを含む水溶液(下塗り液)を調製した。
また、試料25、26では、分散液に架橋剤を添加しておらず、下塗り液は、2wt%の水溶性樹脂と、2wt%の板状粒子とを含む。
【0054】
ドクターブレード法を用いて調製した下塗り液を塩化ビニル樹脂系壁紙に塗布し、塗布膜を常温で乾燥させた。そして、145℃のオーブンを用いて塗布膜に10分間熱処理を施し下塗り層を形成した。
その後、スプレー噴霧法を用いて2.5wt%の酸化タングステンを含む光触媒水分散液(上塗り液)を下塗り層上に塗布し、乾燥させることにより光触媒層(dry0.3g/m2)を形成した。
このようにして試料23~26を作製した。
【0055】
作製した試料を0.5Lのガスバッグに封入し、アセトアルデヒドガスを初発15ppmとなるように注入した。
10000lxの青色LED光を光触媒層に5時間照射し、アセトアルデヒドガス濃度の変化を検知管で測定した。そして、アセトアルデヒド残存率を算出し、前述の基準でVOC除去性能を判定した。
表6に各試料のVOC除去性能評価結果を示す。下塗り層に対し熱処理を施さなかった試料16、17、20に比べ、下塗り層に対し145℃の熱処理を施した試料23、24、25が優れたVOC除去性能を有することがわかった。
【0056】
【符号の説明】
【0057】
2:基材 3:下塗り層 4:光触媒層 5:板状粒子 6:不溶化された水溶性樹脂 10:光触媒コーティング構造 15:光触媒被覆部材