(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023146476
(43)【公開日】2023-10-12
(54)【発明の名称】アクチュエータドライバおよびこれを用いたカメラモジュール、電子機器、アクチュエータの駆動方法
(51)【国際特許分類】
G03B 5/00 20210101AFI20231004BHJP
G03B 7/00 20210101ALI20231004BHJP
G03B 30/00 20210101ALI20231004BHJP
H04N 23/68 20230101ALI20231004BHJP
H04N 23/55 20230101ALI20231004BHJP
H04N 23/57 20230101ALI20231004BHJP
【FI】
G03B5/00 J
G03B7/00
G03B30/00
H04N5/232 480
H04N5/225 400
H04N5/225 700
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022053670
(22)【出願日】2022-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100133215
【弁理士】
【氏名又は名称】真家 大樹
(72)【発明者】
【氏名】前出 淳
(72)【発明者】
【氏名】谷向 広通
(72)【発明者】
【氏名】阿部 真一
【テーマコード(参考)】
2H002
2K005
5C122
【Fターム(参考)】
2H002GA66
2K005AA06
2K005BA52
2K005CA04
2K005CA13
2K005CA14
2K005CA25
2K005CA40
5C122DA09
5C122EA41
5C122EA54
5C122FB15
5C122GE04
5C122GE05
5C122HA82
(57)【要約】
【課題】姿勢によらずに、安定した動作が可能なアクチュエータドライバを提供する。
【解決手段】第1アクチュエータ110_1は、ペリスコープ型のカメラモジュール100に使用され、手ブレ補正のためにプリズムをピッチ軸AP周りに位置決めする。第1サーボコントローラ201_1は、第1アクチュエータ110_1の可動子の位置を示す第1位置検出値S3_1が第1目標値θ
REF_Pに近づくように、第1制御指令REF1をフィードバック制御する。第1駆動部220_1は、第1制御指令REF1にもとづいて第1アクチュエータ110_1を駆動する。補正部230は、カメラモジュール100の姿勢にもとづいて、第1サーボコントローラ201_1の伝達関数を制御する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペリスコープ型カメラモジュールに使用され、手ブレ補正のためにプリズムをピッチ軸周りに位置決めする第1アクチュエータを駆動するアクチュエータドライバであって、
前記第1アクチュエータの可動子の位置を示す第1位置検出値が第1目標値に近づくように、第1制御指令をフィードバック制御する第1サーボコントローラと、
前記第1制御指令にもとづいて前記第1アクチュエータを駆動する第1駆動部と、
前記カメラモジュールの姿勢にもとづいて、前記第1サーボコントローラの伝達関数を制御する補正部と、
を備える、アクチュエータドライバ。
【請求項2】
前記補正部は、前記伝達関数としてゲイン特性を補正する、請求項1に記載のアクチュエータドライバ。
【請求項3】
前記第1サーボコントローラは、
前記第1位置検出値と前記第1目標値の誤差を生成する誤差検出器と、
前記誤差がゼロに近づくように前記第1制御指令を生成する第1サーボフィルタと、
を含み、
前記カメラモジュールの姿勢にもとづいて、前記第1サーボフィルタの伝達関数が制御される、請求項1または2に記載のアクチュエータドライバ。
【請求項4】
前記第1サーボフィルタは、
前記誤差を入力とする補償器と、
前記補償器の出力を増幅する可変利得回路と、
を含み、
前記カメラモジュールの姿勢にもとづいて、前記可変利得回路のゲインが制御される、請求項3に記載のアクチュエータドライバ。
【請求項5】
前記アクチュエータドライバは、前記プリズムをヨー軸周りに位置決めする第2アクチュエータをさらに駆動するものであり、
前記第2アクチュエータの可動子の位置を示す第2位置検出値が第2目標値に近づくように、第2制御指令をフィードバック制御する第2サーボコントローラと、
前記第2制御指令にもとづいて前記第2アクチュエータを駆動する第2駆動部と、
さらに備え、
前記補正部は、前記カメラモジュールの姿勢にもとづいて、前記第2サーボコントローラの伝達関数を制御する、請求項1から4のいずれかに記載のアクチュエータドライバ。
【請求項6】
ペリスコープ型カメラモジュールに使用され、手ブレ補正のためにプリズムをヨー軸周りに位置決めする第2アクチュエータを駆動するアクチュエータドライバであって、
前記第2アクチュエータの可動子の位置を示す第2位置検出値が第2目標値に近づくように、第2制御指令をフィードバック制御する第2サーボコントローラと、
前記第2制御指令にもとづいて前記第2アクチュエータを駆動する第2駆動部と、
前記カメラモジュールの姿勢にもとづいて、前記第2サーボコントローラの伝達関数を制御する補正部と、
を備える、アクチュエータドライバ。
【請求項7】
前記補正部は、加速度センサと接続され、前記加速度センサの出力にもとづいて前記第1サーボコントローラの伝達関数を制御する、請求項1から5のいずれかに記載のアクチュエータドライバ。
【請求項8】
ひとつの半導体基板に一体集積化される、請求項1から7のいずれかに記載のアクチュエータドライバ。
【請求項9】
イメージセンサと、
前記イメージセンサへの入射光路上に設けられたプリズムと、
前記プリズムをピッチ軸周りに位置決めする第1アクチュエータと、
前記第1アクチュエータを駆動する請求項1から5のいずれかに記載のアクチュエータドライバと、
を備える、カメラモジュール。
【請求項10】
請求項9に記載のカメラモジュールを備える、電子機器。
【請求項11】
ペリスコープ型カメラモジュールに使用され、手ブレ補正のためにプリズムを所定軸周りに位置決めするアクチュエータを駆動する方法であって、
前記アクチュエータの可動子の位置を示す位置検出値を生成するステップと、
前記位置検出値が第1目標値に近づくように、制御指令をフィードバック制御するサーボステップと、
前記制御指令にもとづいて前記アクチュエータを駆動するステップと、
前記カメラモジュールの姿勢を検出するステップと、
前記カメラモジュールの姿勢にもとづいて、前記サーボステップにおける伝達特性を制御するステップと、
を備える、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、アクチュエータドライバおよびこれを用いたカメラモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、スマートフォンなどの電子機器の大多数にカメラモジュールが搭載されている。カメラの性能は、電子機器の付加価値を高める上で重要である。
【0003】
スマートフォンなどの薄い筐体内では、望遠レンズを内蔵することが難しい。そこで、長い光路長を稼ぐために、プリズムを利用したペリスコープ型(潜望鏡型)のカメラモジュールが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、ペリスコープ型のカメラモジュールにおける光学式手ブレ補正について検討した結果、以下の課題を認識するに至った。
【0006】
ペリスコープ型カメラモジュールでは、プリズムを回転させることにより、イメージセンサ上に結像する像の位置をシフトさせ、手ブレを補正する。プリズムは、回動可能に支持されており、アクチュエータによって位置決めされる。
【0007】
ここでスマートフォンなどの電子機器は、さまざまな姿勢で使用されるところ、プリズムの回転のしやすさは、姿勢の影響を大きく受ける。つまり、プリズムをフィードバックによって位置決めするサーボ機構においては、制御対象(Plant)であるアクチュエータの伝達特性が、電子機器の姿勢の影響を大きく受ける。その結果、ある姿勢でサーボ系を最適設計すると、別の姿勢において特性が悪化したり、安定性が損なわれるなどの問題が生じうる。なおこの問題を当業者の一般的な認識と捉えてはならない。
【0008】
本開示は係る状況においてなされたものであり、その例示的な目的のひとつは、姿勢によらずに、安定した動作が可能なアクチュエータドライバの提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示のある態様はアクチュエータドライバに関する。このアクチュエータドライバは、ペリスコープ型カメラモジュールに使用され、手ブレ補正のためにプリズムをピッチ軸周りに位置決めする第1アクチュエータを駆動する。アクチュエータドライバは、第1アクチュエータの可動子の位置を示す第1位置検出値が第1目標値に近づくように、第1制御指令をフィードバック制御する第1サーボコントローラと、第1制御指令にもとづいて第1アクチュエータを駆動する第1駆動部と、カメラモジュールの姿勢にもとづいて、第1サーボコントローラの伝達関数を制御する補正部と、を備える。
【0010】
本開示の別の態様もまた、アクチュエータドライバである。このアクチュエータドライバは、ペリスコープ型カメラモジュールに使用され、手ブレ補正のためにプリズムをヨー周りに位置決めする第2アクチュエータを駆動する。アクチュエータドライバは、第2アクチュエータの可動子の位置を示す第2位置検出値が第2目標値に近づくように、第2制御指令をフィードバック制御する第2サーボコントローラと、第2制御指令にもとづいて第2アクチュエータを駆動する第2駆動部と、カメラモジュールの姿勢にもとづいて、第2サーボコントローラの伝達関数を制御する補正部と、を備える。
【0011】
なお、以上の構成要素を任意に組み合わせたもの、構成要素や表現を、方法、装置、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明あるいは本開示の態様として有効である。さらに、この項目(課題を解決するための手段)の記載は、本発明の欠くべからざるすべての特徴を説明するものではなく、したがって、記載されるこれらの特徴のサブコンビネーションも、本発明たり得る。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、姿勢によらずに安定した動作を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、手振れ補正機能を備えるカメラモジュールのブロック図である。
【
図2】
図2は、
図1のカメラモジュールを上から見た平面図である。
【
図3】
図3は、アクチュエータドライバの構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(実施形態の概要)
本開示のいくつかの例示的な実施形態の概要を説明する。この概要は、後述する詳細な説明の前置きとして、実施形態の基本的な理解を目的として、1つまたは複数の実施形態のいくつかの概念を簡略化して説明するものであり、発明あるいは開示の広さを限定するものではない。この概要は、考えられるすべての実施形態の包括的な概要ではなく、すべての実施形態の重要な要素を特定することも、一部またはすべての態様の範囲を線引きすることも意図していない。便宜上、「一実施形態」は、本明細書に開示するひとつの実施形態(実施例や変形例)または複数の実施形態(実施例や変形例)を指すものとして用いる場合がある。
【0015】
一実施形態に係るアクチュエータドライバは、ペリスコープ型カメラモジュールに使用され、手ブレ補正のためにプリズムをピッチ軸周りに位置決めする第1アクチュエータを駆動する。アクチュエータドライバは、第1アクチュエータの可動子の位置を示す第1位置検出値が第1目標値に近づくように、第1制御指令をフィードバック制御する第1サーボコントローラと、第1制御指令にもとづいて第1アクチュエータを駆動する第1駆動部と、カメラモジュールの姿勢にもとづいて、第1サーボコントローラの伝達関数を制御する補正部と、を備える。
【0016】
この構成によると、サーボコントローラの伝達関数を、カメラモジュールの姿勢に応じて補正することにより、姿勢に依存するサーボシステムの一巡伝達関数の変動を抑制でき、安定した動作を実現できる。
【0017】
一実施形態において、補正部は、伝達関数としてゲイン特性を補正してもよい。
【0018】
一実施形態において、第1サーボコントローラは、第1位置検出値と第1目標値の誤差を生成する第1誤差検出器と、誤差がゼロに近づくように第1制御指令を生成する第1サーボフィルタと、を含んでもよい。カメラモジュールの姿勢にもとづいて、第1サーボフィルタの伝達関数が制御されてもよい。
【0019】
一実施形態において、第1サーボフィルタは、誤差を入力とする補償器と、補償器の出力を増幅する可変利得回路と、を含んでもよい。カメラモジュールの姿勢にもとづいて、可変利得回路のゲインが制御されてもよい。
【0020】
一実施形態において、アクチュエータドライバは、プリズムをヨー軸周りに位置決めする第2アクチュエータをさらに駆動するものであってもよい。アクチュエータドライバは、第2アクチュエータの可動子の位置を示す第2位置検出値が第2目標値に近づくように、第2制御指令をフィードバック制御する第2サーボコントローラと、第2制御指令にもとづいて第2アクチュエータを駆動する第2駆動部と、さらに備えてもよい。補正部は、カメラモジュールの姿勢にもとづいて、第2サーボコントローラの伝達関数を制御してもよい。
【0021】
一実施形態に係るアクチュエータドライバは、ペリスコープ型カメラモジュールに使用され、手ブレ補正のためにプリズムをヨー軸周りに位置決めする第2アクチュエータを駆動する。アクチュエータドライバは、第2アクチュエータの可動子の位置を示す第2位置検出値が第2目標値に近づくように、第2制御指令をフィードバック制御する第2サーボコントローラと、第2制御指令にもとづいて第2アクチュエータを駆動する第2駆動部と、カメラモジュールの姿勢にもとづいて、第2サーボコントローラの伝達関数を制御する補正部と、を備える。
【0022】
一実施形態において、補正部は、加速度センサと接続され、加速度センサの出力にもとづいて第1サーボコントローラのゲイン特性を制御してもよい。
【0023】
一実施形態において、アクチュエータドライバは、ひとつの半導体基板に一体集積化されてもよい。「一体集積化」とは、回路の構成要素のすべてが半導体基板上に形成される場合や、回路の主要構成要素が一体集積化される場合が含まれ、回路定数の調節用に一部の抵抗やキャパシタなどが半導体基板の外部に設けられていてもよい。回路を1つのチップ上に集積化することにより、回路面積を削減することができるとともに、回路素子の特性を均一に保つことができる。
【0024】
一実施形態に係るカメラモジュールは、イメージセンサと、イメージセンサへの入射光路上に設けられたプリズムと、プリズムを第2軸周りに位置決めする第1アクチュエータと、第1アクチュエータを駆動する上述のいずれかのアクチュエータドライバと、を備えてもよい。
【0025】
(実施形態)
以下、好適な実施形態について、図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施形態は、開示および発明を限定するものではなく例示であって、実施形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも開示および発明の本質的なものであるとは限らない。
【0026】
本明細書において、「部材Aが、部材Bと接続された状態」とは、部材Aと部材Bが物理的に直接的に接続される場合のほか、部材Aと部材Bが、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0027】
同様に、「部材Cが、部材Aと部材Bの間に設けられた状態」とは、部材Aと部材C、あるいは部材Bと部材Cが直接的に接続される場合のほか、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0028】
図1は、手振れ補正機能を備えるカメラモジュール100のブロック図である。カメラモジュール100は、ペリスコープ型であり、イメージセンサ102、プリズム104、レンズ群105、第1アクチュエータ110_1、第2アクチュエータ110_2、第1位置検出素子120_1、第2位置検出素子120_2、ジャイロセンサ130、加速度センサ140、アクチュエータドライバ200を備える。
【0029】
プリズム104は、被写体からの光をイメージセンサ102に向けて折り返す。レンズ群105は、プリズム104と被写体の間、あるいはプリズム104とイメージセンサ102の間に挿入される複数のレンズを含む。
【0030】
プリズム104は、ピッチ軸AP周りおよびヨー軸AY周りに回動可能に支持される。第1アクチュエータ110_1は、プリズム104をピッチ軸AP周りに位置決めする。第2アクチュエータ110_2は、プリズム104をヨー軸AY周りに位置決めする。ヨー軸AYは、イメージセンサ102の垂直軸Vと平行な軸である。ピッチ軸APは、イメージセンサ102の水平軸Hと平行な軸である。
【0031】
第1位置検出素子120_1は、第1アクチュエータ110_1の可動子の位置、言い換えるとプリズム104のピッチ軸AP周りの角度情報θFB_Pを示す第1位置検出値S3_1を生成する。第2位置検出素子120_2は、第2アクチュエータ110_2の可動子の位置、言い換えるとプリズム104のヨー軸AY周りの角度情報θFB_Yを示す第2位置検出値S3_2を生成する。位置検出素子120_1,120_2は、ホール素子であってもよい。
【0032】
ジャイロセンサ130は、カメラモジュール100のピッチ軸AP周りおよびヨー軸AY周りの回転運動を検出する。ジャイロセンサ130は、ピッチAP軸周り周りの角速度ωPと、ヨー軸AY周りの角速度ωYを示す検出信号S1を生成する。
【0033】
アクチュエータドライバ200は、検出信号S1にもとづいて、カメラモジュール100のピッチ軸APまわりのブレが相殺されるように、第1アクチュエータ110_1を駆動し、カメラモジュール100のヨー軸AYまわりのブレが相殺されるように、第2アクチュエータ110_2を駆動する。
【0034】
加速度センサ140は、重力方向、つまりカメラモジュール100の姿勢を検出するために設けられる。
【0035】
図2は、
図1のカメラモジュール100を上から見た平面図である。望遠レンズでは、レンズ群105のうち、最も被写体側のレンズ(前玉)からイメージセンサ102までの距離が長くなる。ペリスコープ型のカメラモジュールでは、プリズム104によって光路を折り曲げることで、カメラモジュールの厚みを小さくできる。
【0036】
図3は、アクチュエータドライバ200の構成を示すブロック図である。アクチュエータドライバ200は、ひとつの半導体基板に集積化された機能IC(Integrated Circuit)である。
【0037】
アクチュエータドライバ200は、第1サーボコントローラ201_1、第2サーボコントローラ201_2、第1駆動部220_1、第2駆動部220_2、補正部230、位置指令生成部240、第1A/Dコンバータ250_1、第2A/Dコンバータ250_2を備える。
【0038】
位置指令生成部240は、ジャイロセンサ130からの検出信号S3を受ける。位置指令生成部240は、角速度ωPにもとづいて、第1目標値θREF_Pを生成する。たとえば位置指令生成部240は、角速度ωPを積分して第1目標値θREF_Pを生成してもよい。同様に位置指令生成部240は、角速度ωYにもとづいて、第2目標値θREF_Yを生成する。たとえば位置指令生成部240は、角速度ωYを積分して第2目標値θREF_Yを生成してもよい。
【0039】
第1A/Dコンバータ250_1は、第1位置検出素子120_1からの位置検出信号S3_1をデジタルの第1位置検出値θFB_Pに変換する。第2A/Dコンバータ250_2は、第2位置検出素子120_2からの位置検出信号S3_2をデジタルの第2位置検出値θFB_Yに変換する。
【0040】
第1サーボコントローラ201_1は、第1位置検出値θFB_Pが第1目標値θREF_Pに近づくように、第1制御指令REF1を生成する。第1駆動部220_1は、第1制御指令REF1にもとづいて、第1アクチュエータ110_1を駆動する。
【0041】
第1サーボコントローラ201_1は、第1誤差検出器202_1、サーボフィルタ210_1を含む。第1誤差検出器202_1は、第1位置検出値θFB_Pから第1目標値θREF_Pを減算し、それらの誤差ERRを生成する。第1サーボフィルタ210_1は、誤差ERRがゼロに近づくように、第1制御指令REF1を生成する。
【0042】
第1サーボフィルタ210_1は、補償器212およびアンプ(乗算器)214を含む。補償器212は、PID(比例・積分・微分)補償器あるいはPI(比例・積分)補償器であり、誤差ERRを入力として受ける。
【0043】
可変利得回路214は、D/Aコンバータとアナログアンプの組み合わせであってもよい。この場合、D/Aコンバータは、補償器212の出力はアナログ信号に変換する。アナログアンプは、D/Aコンバータの出力を増幅し、アナログの第1制御指令REF1を生成する。
【0044】
可変利得回路214は、デジタルの係数回路と、D/Aコンバータの組み合わせであってもよい。デジタルの係数回路は、補償器212の出力に、ゲインに相当する係数を乗算する。D/Aコンバータは、係数回路の出力をアナログの第1制御指令REF1に変換する。
【0045】
第2サーボコントローラ201_2は、第1サーボコントローラ201_1と同様に構成されており、第2位置検出値θFB_Pが第2目標値θREF_Pに近づくように、第2制御指令REF2を生成する。第2駆動部220_2は、第2制御指令REF2にもとづいて、第2アクチュエータ110_2を駆動する。
【0046】
第1サーボコントローラ201_1の第1サーボフィルタ210_1は、伝達関数が制御可能に構成される。補正部230は、加速度センサ140からの加速度情報S4を受け、重力方向にもとづいてカメラモジュール100の姿勢を検出する。補正部230は、加速度情報S4にもとづいて、カメラモジュール100の姿勢にかかわらず、第1アクチュエータ110_1のサーボ特性が一定となるように、第1サーボコントローラ201_1の伝達関数を制御する。伝達関数は、ゲイン特性と位相特性に分けて考えることができる。本実施形態では、位相特性は姿勢の影響を受けないものとして、ゲイン特性を補正する場合を説明する。
【0047】
同様に補正部230は、加速度情報S4にもとづいて、カメラモジュール100の姿勢にかかわらず、第2アクチュエータ110_2の伝達関数の変動をキャンセルするように、言い換えると一巡伝達関数の変動が抑制されるように、第2サーボコントローラ201_2のゲイン特性(具体的には可変利得回路214のゲイン)を制御する。
【0048】
第1サーボフィルタ210_1の可変利得回路214のゲインと、カメラモジュール100の姿勢(加速度センサ140の出力)の関係は、実測にもとづいて定めてもよい。たとえば、サーボをオフとしたオープンループ状態で、カメラモジュール100をさまざまな姿勢に変化させて、第1アクチュエータ110_1の伝達関数を測定し、伝達関数の姿勢依存性を測定してもよい。そして測定した伝達関数の姿勢依存性をキャンセルできるように、姿勢ごとのゲインを定めてもよい。
【0049】
第2サーボフィルタ210_2の可変利得回路214のゲインについても同様である。
【0050】
以上がアクチュエータドライバ200の構成である。
【0051】
カメラモジュール100の姿勢が変化すると、プリズム104のピッチ軸AP周りの回転のしやすさや、同じ駆動電流を供給したときの第1アクチュエータ110_1が発生する力が変化しうる。これらは、サーボ系における制御対象(Plant)の伝達特性の変化として把握できる。
【0052】
実施形態に係るアクチュエータドライバ200によれば、姿勢変化によって、ピッチ軸APに関する制御対象の伝達特性が変化した場合に、その変化を打ち消すように、第1サーボコントローラ201_1の伝達関数を補正することにより、カメラモジュール100の姿勢にかかわらず、ピッチ軸APに関する制御系のループ特性を一定に保つことができる。
【0053】
同様に、カメラモジュール100の姿勢が変化すると、プリズム104のヨー軸AY周りの回転のしやすさや、同じ駆動電流を供給したときの第2アクチュエータ110_2が発生する力が変化しうる。これらは、サーボ系における制御対象の伝達特性の変化として把握できる。
【0054】
実施形態に係るアクチュエータドライバ200によれば、姿勢変化によって、ヨー軸AYに関する制御対象の伝達特性が変化した場合に、その変化を打ち消すように、第2サーボコントローラ201_2の伝達関数を補正することにより、カメラモジュール100の姿勢にかかわらず、ヨー軸AYに関する制御系のループ特性を一定に保つことができる。
【0055】
(変形例)
最後に、アクチュエータドライバ200の変形例を説明する。
【0056】
(変形例1)
実施形態では、第1サーボフィルタ210_1の可変利得回路214のゲインを補正することとしたが、その限りでない。カメラモジュール100の生成に応じて、第1アクチュエータ110_1の伝達関数の周波数特性が変化する場合には、可変利得回路214を可変フィルタに置き換え、可変フィルタの特性を補正してもよい。
【0057】
(変形例2)
実施形態では、制御対象(Plant)の伝達関数として、ゲイン特性を補正したが、それに加えて、位相特性を補正してもよい。
【0058】
(変形例3)
実施形態では、第1サーボフィルタ210_1(第2サーボフィルタ210_2)を、PID補償器212と可変利得回路214の2段構成として、後段の可変利得回路214の特性を補正部230により補正したがその限りでない。たとえばPID補償器212のゲイン(比例ゲイン、積分ゲイン、微分ゲイン)を、姿勢に応じて変化させてもよい。
【0059】
(変形例4)
実施形態では、第1アクチュエータ110_1、第2アクチュエータ110_2の両方について、姿勢に応じた伝達関数の変動を補正したが、一方のみを補正対象としてもよい。
【符号の説明】
【0060】
100 カメラモジュール
102 イメージセンサ
104 プリズム
105 レンズ群
110_1 第1アクチュエータ
110_2 第2アクチュエータ
120_1 第1位置検出素子
120_2 第2位置検出素子
130 ジャイロセンサ
140 加速度センサ
200 アクチュエータドライバ
201_1 第1サーボコントローラ
201_2 第2サーボコントローラ
202_1 第1誤差検出器
202_2 第2誤差検出器
210_1 第1サーボフィルタ
210_2 第2サーボフィルタ
212 補償器
214 アンプ
220_1 第1駆動部
220_2 第2駆動部
230 補正部
240 位置指令生成部
250_1 第1A/Dコンバータ
250_2 第2A/Dコンバータ