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特開2023-146492半導体装置の製造方法及び半導体装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023146492
(43)【公開日】2023-10-12
(54)【発明の名称】半導体装置の製造方法及び半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/50 20060101AFI20231004BHJP
   H01L 21/56 20060101ALI20231004BHJP
【FI】
H01L23/50 K
H01L21/56 T
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022053693
(22)【出願日】2022-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】592074614
【氏名又は名称】日電精密工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108062
【弁理士】
【氏名又は名称】日向寺 雅彦
(74)【代理人】
【識別番号】100168332
【弁理士】
【氏名又は名称】小崎 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100146592
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 浩
(74)【代理人】
【氏名又は名称】白井 達哲
(74)【代理人】
【識別番号】100172188
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 敬人
(74)【代理人】
【識別番号】100197538
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 功
(74)【代理人】
【識別番号】100176751
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 耕平
(72)【発明者】
【氏名】石原 隆雄
(72)【発明者】
【氏名】荒井 一尚
(72)【発明者】
【氏名】明島 周三
【テーマコード(参考)】
5F061
5F067
【Fターム(参考)】
5F061AA01
5F061BA01
5F061CA21
5F061CB13
5F067AA01
5F067AB04
5F067BA02
5F067BC13
5F067BD05
5F067DB00
5F067DE01
(57)【要約】
【課題】樹脂と金属とをそれぞれに適した異なる方法で切断する新規な半導体装置の製造方法、及びリードが半導体装置の外形を形成する樹脂の側面から突出し実装信頼性が高い半導体装置を提供すること。
【解決手段】半導体装置の製造方法は、回転ブレードにより第1連結部上の樹脂を切削加工し、第1連結部に達し、第1連結部の幅よりも広い幅の溝を樹脂に形成する樹脂分離工程と、溝に露出する第1連結部をせん断プレス加工またはレーザ加工により切断して、隣り合うダイパッドの間に位置するリード同士を分離する切断工程とを備える。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のダイパッドと、それぞれの前記ダイパッドの周囲に位置する複数のリードと、隣り合う前記ダイパッドの間に位置する前記リード同士をつなぐ第1連結部とを有するリードフレームと、前記ダイパッド上に搭載された半導体チップと、前記リードフレーム及び前記半導体チップを覆う樹脂と、を有する構造体を準備する工程と、
回転ブレードにより前記第1連結部上の前記樹脂を切削加工し、前記第1連結部に達し、前記第1連結部の幅よりも広い幅の溝を前記樹脂に形成する樹脂分離工程と、
前記溝に露出する前記第1連結部をせん断プレス加工またはレーザ加工により切断して、隣り合う前記ダイパッドの間に位置する前記リード同士を分離する切断工程と、
を備える半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記樹脂分離工程において、前記回転ブレードを前記第1連結部に当てて前記第1連結部の上面を粗面化する請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
ダイパッドと、
前記ダイパッドの周囲に位置する複数のリードと、
前記ダイパッド上に搭載され、前記リードと電気的に接続された半導体チップと、
前記ダイパッド及び前記半導体チップを覆う樹脂と、
を備え、
前記リードは、前記樹脂に覆われたインナー部と、前記樹脂の側面から突出するアウター部とを有し、
前記アウター部の上面の表面粗さは、前記アウター部の側面及び下面の表面粗さよりも大きい半導体装置。
【請求項4】
前記アウター部における前記側面と前記下面とが形成する第1角部が面取りされている請求項3に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記アウター部における前記上面と前記側面とが形成する第2角部が面取りされている請求項3または4に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記アウター部の前記樹脂の側面から突出する長さは、0.05mm以上0.1mm以下である請求項3~5のいずれか1つに記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造方法及び半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
リードフレームと、リードフレーム上に搭載された複数の半導体チップとを樹脂で一括モールドしたQFN(Quad Flat Nonleaded Package)タイプのマトリックスモールド構造においては、ダイシング位置にも樹脂が形成される。このようなマトリックスモールド構造を複数の半導体装置に個片化する場合従来、回転ブレードによりリードの金属とモールド樹脂との両方をダイシング加工で削っていた。しかし、回転ブレードを用いた金属と樹脂の同時ダイシング加工はブレードの負担が大きく、加工速度も遅くなりがちであった。また、QFNは、リードが製品外形を形成する樹脂から突出せず、実装強度の課題があり、実装状態の目視も容易ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-170683号公報
【特許文献2】特開2001-320007号公報
【特許文献3】特許第4086202号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、樹脂と金属とをそれぞれに適した異なる方法で切断する新規な半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
また、本発明は、リードが半導体装置の外形を形成する樹脂の側面から突出し実装信頼性が高い半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様によれば、半導体装置の製造方法は、複数のダイパッドと、それぞれの前記ダイパッドの周囲に位置する複数のリードと、隣り合う前記ダイパッドの間に位置する前記リード同士をつなぐ第1連結部とを有するリードフレームと、前記ダイパッド上に搭載された半導体チップと、前記リードフレーム及び前記半導体チップを覆う樹脂と、を有する構造体を準備する工程と、回転ブレードにより前記第1連結部上の前記樹脂を切削加工し、前記第1連結部に達し、前記第1連結部の幅よりも広い幅の溝を前記樹脂に形成する樹脂分離工程と、前記溝に露出する前記第1連結部をせん断プレス加工またはレーザ加工により切断して、隣り合う前記ダイパッドの間に位置する前記リード同士を分離する切断工程と、を備える。
本発明の一態様によれば、半導体装置は、ダイパッドと、前記ダイパッドの周囲に位置する複数のリードと、前記ダイパッド上に搭載され、前記リードと電気的に接続された半導体チップと、前記ダイパッド及び前記半導体チップを覆う樹脂と、を備え、前記リードは、前記樹脂に覆われたインナー部と、前記樹脂の側面から突出するアウター部とを有し、前記アウター部の上面の表面粗さは、前記アウター部の側面及び下面の表面粗さよりも大きい。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】実施形態の半導体装置の製造方法の一工程を説明するための模式上面図。
図2】実施形態の半導体装置の製造方法の一工程を説明するための模式上面図。
図3】実施形態の半導体装置の製造方法の一工程を説明するための模式上面図。
図4】実施形態の半導体装置の製造方法の一工程を説明するための模式上面図。
図5】実施形態の半導体装置の製造方法の一工程を説明するための模式上面図。
図6】実施形態の半導体装置の製造方法の一工程を説明するための模式上面図。
図7】実施形態の半導体装置の製造方法の一工程を説明するための模式断面図。
図8】実施形態の半導体装置の模式上面図。
図9】実施形態の半導体装置の模式下面図。
図10】実施形態の半導体装置の模式断面図。
図11】実施形態の半導体装置におけるリードの断面SEM画像。
図12図9におけるA-A’断面図。
図13】実施形態の半導体装置の変形例の模式上面図。
図14】(a)は回転ブレードによって切断したリードの切断面の画像であり、(b)はパンチング加工によって切断したリードの切断面の画像。
図15】比較例による構造体の切断方法を説明するための模式断面図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照し、実施形態について説明する。なお、各図面中、同じ構成には同じ符号を付している。
【0008】
実施形態の半導体装置の製造方法は、図7(a)に示す構造体100を準備する工程を備える。構造体100は、リードフレーム10と、半導体チップ20と、樹脂30とを有する。
【0009】
図1は、リードフレーム10の模式上面図である。図2は、リードフレーム10の一部分の拡大上面図である。図1図2及び後述する図3図6において、互いに直交する2方向を第1方向X及び第2方向Yとする。上面図及び下面図において、樹脂30を網掛けで表す。
【0010】
リードフレーム10は、金属材料からなり、例えば銅(Cu)からなる。リードフレーム10は、アウターフレーム11と、複数のダイパッド12とを有する。アウターフレーム11は四角い枠状に形成されている。アウターフレーム11の内側に、複数のダイパッド12が第1方向X及び第2方向Yに並んで配置されている。アウターフレーム11には後に示す樹脂切削時の切削ライン位置を決定するための検出マーク200がついている。
【0011】
また、リードフレーム10は、複数のリード13を有する。複数のリード13は、それぞれのダイパッド12の周囲に位置する。ダイパッド12とリード13とは隙間を隔てて分離している。複数のリード13は、アウターフレーム11と、最も外側のダイパッド12との間にも配置されている。
【0012】
また、リードフレーム10は、隣り合うダイパッド12の間に位置するリード13同士をつなぐ複数の第1連結部(タイバー)14を有する。複数のリード13は、第1連結部14の幅方向に突出して第1連結部14に一体につながっている。第1連結部14は、リード13の突出方向に直交する方向に延びている。第1方向Xにおいて隣り合うダイパッド12の間に位置するリード13同士をつなぐ第1連結部14は、第2方向Yに延びている。第2方向Yに延びる第1連結部14の両端は、第1方向Xに延びるアウターフレーム11につながっている。第2方向Yにおいて隣り合うダイパッド12の間に位置するリード13同士をつなぐ第1連結部14は、第1方向Xに延びている。第1方向Xに延びる第1連結部14の両端は、第2方向Yに延びるアウターフレームにつながっている。第1方向Xに延びる第1連結部14には、その幅方向(第2方向Y)における両側において、第2方向Yに突出する複数のリード13がつながっている。第2方向Yに延びる第1連結部14には、その幅方向(第1方向X)における両側において、第1方向Xに突出する複数のリード13がつながっている。
【0013】
ダイパッド12は上面視において四角形であり、ダイパッド12の角は、Y字状またはI字状の第2連結部15(吊りピン)によって第1連結部14につながっている。ダイパッド12は、4つの角部において第2連結部15を介して、ダイパッド12の周囲に位置する4本の第1連結部14に支持されている。第1連結部14と第2連結部15は、隙間を隔てて分離している。
【0014】
図7(a)に示すように、半導体チップ20は、ダイパッド12上に搭載されている。半導体チップ20は、ダイボンディング材22によってダイパッド12に接合される。ダイボンディング材22として、例えば、銀ペーストを用いることができる。半導体チップ20は、例えば、小信号アナログデバイスである。なお、図3図6に示す構造体100において、半導体チップ20の図示は省略している。半導体チップ20は、その上面に複数のチップ端子21を有する。図7(a)に示すように、半導体チップ20は、例えば導電性のワイヤ40によって、リード13と電気的に接続されている。ワイヤ40の一端はチップ端子21に接合され、ワイヤ40の他端はリード13の上面に接合されている。
【0015】
図3及び図7(a)に示すように、樹脂30は、リードフレーム10及び半導体チップ20を覆う。ワイヤ40も樹脂30に覆われる。リードフレーム10の下面にテープを貼り付けた状態で樹脂30をモールドし、モールド後は上記テープを剥離する。このため、リードフレーム10の下面は樹脂30で覆われず、樹脂30から露出する。樹脂30は、ダイパッド12とリード13との間の隙間、ダイパッド12と第1連結部14との間の隙間、隣り合うリード13間の隙間、第2連結部15と第1連結部14との間の隙間、及び第2連結部15とリード13との間の隙間にも形成される。
【0016】
上述した構造体100は一般的には図15に示すように、リード13及び連結部14、15などの金属部分から回転ブレード50によって切削加工し始め、一気に樹脂30も分離する。この場合、切削開始時に簡単に検出できる金属のリード13や連結部14、15が存在する。このため検出用のマーク200をアウターフレーム11に形成しておく必要はない。
【0017】
本発明実施形態の半導体装置の製造方法は、上述した構造体100を準備した後、樹脂分離工程から加工を始める樹脂分離工程において、図7(a)に示すように、回転ブレード50により第1連結部14上の樹脂30を切削加工する。例えば、0.7mmほどの厚さの樹脂30を切削する。この場合樹脂30の表面に研削ラインのマークがないため、上述した図1に示すアウターフレーム11に形成された検出マーク200を利用して切削ラインを決める。
【0018】
樹脂30の切削加工により、図4及び図7(b)に示すように、第1連結部14に達する溝31が樹脂30に形成される。溝31は、第1連結部14が延びる方向(第1方向X及び第2方向Y)に延び、溝31において第1連結部14が露出する。溝31によって、樹脂30はリードフレーム10上において複数の部分に分離される。回転ブレード50の幅は第1連結部14の幅(バー状に延びる方向に直交する方向の幅)よりも広く、溝31の幅は第1連結部14の幅よりも広くなる。
【0019】
第1方向X及び第2方向Yのうちの一方の方向に沿って回転ブレード50を構造体100に対して相対的に移動させ、一方の方向に延びる溝31を形成する。この後、第1方向X及び第2方向Yのうちの他方の方向に沿って回転ブレード50を構造体100に対して相対的に移動させ、他方の方向に延びる溝31を形成する。
【0020】
樹脂分離工程において、回転ブレード50を第1連結部14に当てて、第1連結部14の上面を少し削る。これにより、第1連結部14の上面は、回転ブレード50の砥粒によって粗面化される。
【0021】
溝31は、樹脂30におけるリードフレーム10の上面よりも上に位置する部分に形成される。そのため、図4に示すように、溝31に露出する領域において隣り合うリード13間の隙間におけるリード13の高さ(厚さ)分の樹脂30が残っている。溝31に露出する領域において、リード13と第2連結部15との間の隙間の樹脂30、及び第1連結部14と第2連結部15との間の隙間の樹脂30も残っている。それら隙間に残っている樹脂は、例えば上方から下方に打ち抜くなどの方法で除去される。これにより、図5に示すように、溝31に露出する領域における隣り合うリード13間の隙間、リード13と第2連結部15との間の隙間、及び第1連結部14と第2連結部15との間の隙間が再び現れる。
【0022】
実施形態の半導体装置の製造方法は、樹脂分離工程の後、切断工程を備える。切断工程において、図7(c)に示すように、溝31に露出する第1連結部14をせん断プレス加工により切断する。例えば、せん断プレスする部分をリードフレーム10の下面側から受け部材62で支えた状態で、溝31に挿入されるパンチング部材61で第1連結部14を下方に打ち抜く。第1連結部14の厚さは、例えば0.2mmである。
【0023】
この切断工程により、図6に示すように、隣り合うダイパッド12の間に位置し、第1連結部14によってつながっていたリード13同士が分離される。また、ダイパッド12の角と第1連結部14とをつないでいた第2連結部15も第1連結部14から切断される。
【0024】
第1方向X及び第2方向Yのうちの一方の方向に延びるパンチング部材61で一方の方向に延びる第1連結部14を下方に打ち抜く。この後、第1方向X及び第2方向Yのうちの他方の方向に延びるパンチング部材61で他方の方向に延びる第1連結部14を下方に打ち抜く。第1方向Xに延びる複数の第1連結部14を同時に打ち抜くことができ、また、第2方向Yに延びる複数の第1連結部14を同時に打ち抜くことができる。
【0025】
せん断プレス加工(パンチング)で打ち抜かれる部分の幅は、樹脂分離工程で形成される溝31の幅よりも小さい。したがって、リード13の一部が、溝31に露出する樹脂30の側面30aから突出する。溝31の幅は、例えば0.3mmである。せん断プレス加工(パンチング)で打ち抜かれる部分の幅は、リードフレーム10の厚さと同じであり、例えば0.2mmである。リード13の樹脂30の側面30aからの突出量は、例えば0.05mmである。
【0026】
上述した樹脂分離工程及び連結部の切断工程により、構造体100は複数の半導体装置に個片化される。
【0027】
回転ブレードを用いた切削加工において、金属は樹脂よりも削れにくく回転ブレードへの負担が大きい。一般的に樹脂だけを回転ブレードで切削する場合、ブレードはメタルとダイヤモンド砥粒を焼結したブレード、あるいはダイヤモンドをNi電鋳したブレードを採用する。このメタルブレードで金属を切削すると、砥粒間に切り屑が詰まる目詰まりが起こりやすくなる。そのため、金属を切削する際には、樹脂とメタルとダイヤモンド砥粒を混合焼結したブレードを使う。この混合ブレードは柔らかいため摩耗が激しく、結果的にはメタルブレードで切削する場合に比べて切削スピードが大幅に遅くなる問題があった。
【0028】
本実施形態によれば、回転ブレード50を用いるのは実質的に樹脂30の切削のみである。回転ブレード50による金属の加工はリード30の上面を少し削るだけである。回転ブレード50で金属を切断しない。これにより、切削加工の高速化を図ることができる。金属であるリードフレーム10の切断はせん断プレス加工(例えばパンチング加工)により短時間で行える。また、回転ブレード50を金属の切断に用いないため、目詰まりの問題もなく、回転ブレード50の劣化を軽減し、回転ブレード50の使用寿命を延ばすことができる。また、回転ブレード50の交換やメンテナンスの頻度も低くでき、製造コストを低減できる。また、回転ブレード50は、金属よりも切削が容易な樹脂30のみに使用するため、第1方向Xに並び、回転軸が同じ複数枚の回転ブレード50を用いて第2方向Yに延びる複数の溝31を同時加工することが容易となる。同様に、第2方向Yに並び、回転軸が同じ複数枚の回転ブレード50を用いて第1方向Xに延びる複数の溝31を同時加工することが容易となる。
【0029】
回転ブレード50で金属を切削すると、図14(a)に示すように、回転ブレード50の進行方向の前方側に向かってバリ(金属くずの突起)が発生する場合がある。このバリは、隣り合うリード13間の短絡の原因になり得る。本実施形態によれば、金属部分をせん断プレス加工によりリード13を切断するため、図14(b)に示すように、隣のリード13に向かってバリ(金属くずの突起)が発生しない。これにより、半導体装置の信頼性を高くすることができる。
【0030】
図8は、実施形態の半導体装置の製造方法により個片化された半導体装置1の模式上面図であり、図9は、半導体装置1の模式下面図であり、図10(a)は、半導体装置1の模式断面図である。
【0031】
半導体装置1は、ダイパッド12と、ダイパッド12の周囲においてダイパッド12から離れて位置する複数のリード13と、ダイパッド12上に搭載され、例えばワイヤ40によりリード13と電気的に接続された半導体チップ20と、ダイパッド12及び半導体チップ20を覆う樹脂とを備える。
【0032】
前述したように、リード13の一部は樹脂30の側面30aから突出する。すなわち、リード13は、樹脂30に覆われたインナー部13aと、樹脂30の側面30aから突出するアウター部13bとを有する。インナー部13aの上面においてワイヤ40がリード13に接合されている。アウター部13bの側面13b2は、前述したせん断プレス加工による切断面である。
【0033】
樹脂30を分離するための溝31の幅を0.3mmより広げるとインナー部13aが短くなり、ワイヤ40をボンディングする領域を確保できない可能性がある。このため、溝31の幅は、公差含め0.3mm±0.05mmが好ましい。一方、パンチング部材61の幅がリードフレーム10の板厚以下だとパンチングできないため、リードフレーム10の板厚相当で0.15mm以上0.2mm以下が好ましい。したがって、アウター部13bの樹脂30の側面30aから突出する長さは、0.05mm以上0.1mm以下が好ましい。
【0034】
図9に示すように、リード13の下面は、樹脂30から露出している。半導体装置1は、図10(b)に示すように、接合部材を介して配線基板70上に実装される。接合部材は、例えば半田90である。
【0035】
配線基板70は、絶縁性の基板71と、基板71の表面に形成された複数のパッド72を有する。パッド72は、基板71の表面に形成された配線パターンと電気的に接続されている。
【0036】
パッド72の上面に、半田90を介してリード13の下面が接合される。さらに、半田90は、リード13のアウター部13bの側面13b2及び上面13b1に濡れ上がり、アウター部13bを覆うようなフィレットを形成する。
【0037】
本実施形態によれば、樹脂30を分離する溝31を形成する工程において回転ブレード50で第1連結部14の上面を少し削り、第1連結部14の上面が粗面化される。したがって、アウター部13bの上面13b1の表面粗さは、アウター部13bの側面13b2及び下面13b3の表面粗さよりも大きい。これにより、アウター部13bの上面13b1の表面張力が大きくなることにより半田90のフィレットが付きやすくなり、フィレットの大きさを大きくして、接合強度を高めることができる。また、大きなフィレットは上方から視認しやすくなり、半田90の接合不良を見つけやすくなる。
【0038】
図11、リード13のアウター部13bの断面SEM(Scanning Electron Microscope)画像である。
【0039】
前述した第1連結部14のせん断プレス加工により、アウター部13bにおける側面13b2と下面13b3とが形成する第1角部が面取りされる。面取りされた部分13b4は、側面13b2及び下面13b3に対して傾斜した傾斜、または曲面、または傾斜面と曲面の両方を含む。これにより、アウター部13bに濡れ広がる半田90の量を多くでき、接合強度をより高めることができる。
【0040】
また、アウター部13bにおける上面13b1と側面13b2とが形成する第2角部も、せん断プレス加工時にパンチング部材61によって下方に引き込まれるような力を受けて面取りされる。面取りされた部分13b5は、上面13b1及び側面13b2に対して傾斜した傾斜、または曲面、または傾斜面と曲面の両方を含む。これにより、半田90が側面13b2から上面13b1に乗り上がるように広がりやすくなり、アウター部13bに付く半田90の量を多くでき、接合強度をより高めることができる。
【0041】
図9は、半導体装置1における配線基板70に対する実装面である下面を表す。ダイパッド12の角に位置する第2連結部15の先端部15bは樹脂30の側面から突出する。第2連結部15において先端部15bと、ダイパッド12との間に位置する部分の下面15aは樹脂30で覆われ、半導体装置1の下面(実装面)に露出しなく、先端部15bの突出も目立たなくする。またこれにより、第2連結部15を、リードと誤認識することを防げる。
【0042】
図12は、図9におけるA-A’断面図である。第2連結部15の下面15aは、前述したリードフレーム10において第2連結部15は下面側から押し潰され、第2連結部15の下面15aとダイパッド12の下面12aとの間に段差が形成される。また、第2連結部15の下面15aとリード13の下面との間にも段差が形成される。すなわち、半導体装置1の下面側から見て、第2連結部15の下面15aは、ダイパッド12の下面12a及びリード13の下面よりも奥側に引っ込んでいる。これにより、樹脂30は、第2連結部15の下面15aを覆いつつ、ダイパッド12の下面12a及びリード13の下面を露出させることができる。
【0043】
前述した図4に示す溝31を形成する工程の後、隣り合うリード13間の隙間に残っている樹脂30、リード13と第2連結部15との間の隙間に残っている樹脂30、及び第1連結部14と第2連結部15との間の隙間に残っている樹脂30を除去することで、図8図9に示すように、1つのリード13のアウター部13bについて3つの側面を樹脂30から露出させることができる。これにより、1つのアウター部13bについて3つの側面に半田90を付けることができ、接合強度を高くできる。
【0044】
または、図4に示す溝31を形成する工程の後、隣り合うリード13間の隙間に残っている樹脂30、リード13と第2連結部15との間の隙間に残っている樹脂30、及び第1連結部14と第2連結部15との間の隙間に残っている樹脂30を除去しなくてもよい。この場合、図13に示すように、1つのアウター部13bにおいて樹脂30から露出する側面は1つとなる。半田90が付く側面が1つでも、前述したように、アウター部13bの上面13b1を粗面化することで、半田90とアウター部13bとの接合強度を高くでき、半導体装置1の信頼性を高くできる。
【0045】
第1連結部14は、せん断プレス加工に限らず、レーザ加工により切断してもよい。一般に、レーザ加工において、樹脂を切断する場合と金属を切断する場合とでは、異なるレーザ装置を用いる、またはレーザ照射条件が異なる。本実施形態では、レーザ加工は、リードフレーム10(金属)の切断にのみ用いるため、単一のレーザ装置を用意するだけでよく、条件設定も容易になる。
【0046】
リード13がダイパッド12の周り4方向に位置する例の説明を行ったが4方向でなく2方向にのみリード13が存在し、第1連結部14も1方向のみに延びる場合も含まれる。また第2連結部(吊りピン)15はY字形状の説明を行ったがI字形状の場合もある。
【0047】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0048】
1…半導体装置、10…リードフレーム、12…ダイパッド、13…リード、13a…インナー部、13b…アウター部、13b1…上面、13b2…側面、13b3…下面、14…第1連結部(タイバー)、15…第2連結部(吊りピン)、20…半導体チップ、21…チップ端子、22…ダイボンディング材、30…樹脂、31…溝、50…回転ブレード、61…パンチング部材、70…配線基板、90…半田、100…構造体
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