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特開2023-146503車両用通信制御システム及び車両用通信制御装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023146503
(43)【公開日】2023-10-12
(54)【発明の名称】車両用通信制御システム及び車両用通信制御装置
(51)【国際特許分類】
   H04L 12/40 20060101AFI20231004BHJP
   B60R 16/023 20060101ALI20231004BHJP
【FI】
H04L12/40 Z
B60R16/023 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022053709
(22)【出願日】2022-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110000419
【氏名又は名称】弁理士法人太田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡部 泰一
【テーマコード(参考)】
5K032
【Fターム(参考)】
5K032AA08
5K032BA06
5K032DA01
5K032DB28
5K032EC01
(57)【要約】
【課題】車両の故障情報の初期化に関する既存の手法の不利を解消し又は少なくとも軽減する。
【解決手段】第1バスを介して相互接続される、複数の制御装置と車両用通信制御装置とを含む車両用通信制御システムであって、車両用通信制御装置は、複数の制御装置のうちの少なくとも一つの制御装置により生成される初期化制御信号に基づいて故障情報の初期化が禁止されている状態か否かを判定した結果に基づいて初期化制御状態信号を第1バスへ送信し、複数の制御装置のそれぞれは、車両用通信制御装置から第1バスを介して受信される初期化制御状態信号に依存して、他の制御装置の状態に関わらず、外部装置から受信される初期化要求に応じて故障情報を初期化するか否かを判定する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1バスを介して相互接続される、複数の制御装置と車両用通信制御装置とを含む車両用通信制御システムであって、
前記複数の制御装置のうちの少なくとも一つの制御装置は、
前記車両の状態に基づいて、前記複数の制御装置によりそれぞれ記憶される故障情報の初期化を禁止するか否かを包括的に判定する包括判定部と、
前記判定部による前記判定の結果に基づいて、前記複数の制御装置のうちの一の制御装置が他の制御装置の状態に関わらず外部装置から受信される初期化要求に応じて故障情報を初期化しないようにするために、前記故障情報の初期化を禁止するか否かを制御する初期化制御信号を生成する第1通信制御部と、を備え、
前記車両用通信制御装置は、
前記初期化制御信号に基づいて前記故障情報の初期化が禁止されている状態か否かを判定する初期化状態判定部と、
前記初期化状態判定部による判定の結果に基づいて、前記故障情報の初期化が禁止されている状態か否かの情報を含む初期化制御状態信号を前記第1バスへ送信する第2通信制御部と、を備え、
前記複数の制御装置のそれぞれは、前記車両用通信制御装置から前記第1バスを介して受信される前記初期化制御状態信号に依存して、他の制御装置の状態に関わらず、外部装置から受信される初期化要求に応じて故障情報を初期化するか否かを判定する、
車両用通信制御システム。
【請求項2】
前記第2通信制御部は、前記初期化状態判定部により前記故障情報の初期化が禁止されている状態と判定される場合に、初期化禁止状態信号を前記第1バスへ送信し、
前記複数の制御装置のそれぞれは、前記初期化禁止状態信号が受信される場合に、他の装置の状態に関わらず、外部装置から受信される前記初期化要求に応じて故障情報を初期化しない、請求項1に記載の車両用通信制御システム。
【請求項3】
前記第2通信制御部は、前記初期化状態判定部により前記故障情報の初期化が禁止されていない状態と判定される場合に、初期化許可状態信号を前記第1バスへ送信し、
前記複数の制御装置のそれぞれは、前記初期化許可状態信号が受信される場合に、他の装置の状態に関わらず、外部装置から受信される前記初期化要求に応じて故障情報を初期化する、請求項2に記載の車両用通信制御システム。
【請求項4】
前記初期化禁止状態信号及び前記初期化許可状態信号は、前記車両用通信制御装置から周期的に送信される制御フレーム内の所定のビットのそれぞれ第1のビット値及び第2のビット値に対応する、請求項3に記載の車両用通信制御システム。
【請求項5】
前記車両用通信制御装置は、前記エンジンを制御するエンジン制御装置である、請求項1~4のいずれか1項に記載の車両用通信制御システム。
【請求項6】
前記車両用通信制御システムは、
前記車両用通信制御装置から前記第1バスを介して受信される前記初期化制御信号に対応する二次的な初期化制御状態信号を、前記第1バスとは異なる第2バスへ送信する第3通信制御装置をさらに含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の車両用通信制御システム。
【請求項7】
前記外部装置から送信される前記初期化要求は、前記第1バスを介して前記第2バスへ到達する、請求項6に記載の車両用通信制御システム。
【請求項8】
車両内の複数の制御装置を相互接続する第1バスへ接続される車両用通信制御装置であって、
前記複数の制御装置のうちの少なくとも一つの制御装置により生成される、前記複数の制御装置によりそれぞれ記憶される故障情報の初期化を禁止するか否かを前記車両の状態に基づいて包括的に判定した結果を示す初期化制御信号に基づいて前記故障情報の初期化が禁止されている状態か否かを判定する初期化状態判定部と、
前記初期化状態判定部による判定の結果に基づいて、前記故障情報の初期化が禁止されている状態か否かの情報を含む初期化制御状態信号を前記第1バスへ送信する第2通信制御部と、を備える、
車両用通信制御装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用通信制御システム及び車両用通信制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両には様々な構成要素を制御する複数の電子制御装置(ECU:Electronic Control Unit)が搭載されている。それら電子制御装置は、CAN(Controller Area Network)等のバスを介して相互接続される。電子制御装置間の通信は、標準化され又は個別に設計される通信プロトコルに従って行われる。
【0003】
各電子制御装置は、制御下の構成要素に故障が発生したことを検知すると、故障情報をメモリに記憶させる。故障情報は、通常、故障の原因が解消し又は十分に安全な走行が可能になったことが確認されるまで、メモリ内に維持される。故障情報は、電子制御装置間の協調的な制御のため、又は情報の読み出しの利便性を考慮した冗長的記憶のために、他の電子制御装置へ転送されることもある。
【0004】
いわゆるスキャンツール(診断装置ともいう)は、車両に設けられる接続インタフェースを介してバスへ接続可能な外部装置である。スキャンツールは、電子制御装置が有する故障情報を読み出すことができ、読み出された故障情報は、例えば車両の修理又は故障の原因の解析に利用される。スキャンツールは、さらに故障情報を初期化することを要求する機能を有する。例えば、ディーラは、車両の修理を終了すると、スキャンツールから初期化要求を送出し、各電子制御装置により記憶されている故障情報を初期化(即ち、消去)させる。但し、故障情報の初期化は、安全性の観点から、車両が特定の状態にある場合には実行されない方がよいことがある。また、各国の法令に依存して、故障情報の取り扱いが電子制御装置間で異ならないことが要請されることもある。
【0005】
特許文献1及び2は、複数の電子制御装置へ初期化要求が送信される場合に、初期化をする装置と初期化をしない装置とが混在することを回避するための手法をそれぞれ提案している。より具体的には、特許文献1の手法によれば、初期化要求の送信側のスキャンツール及び受信側の個々の電子制御装置において、通信可能性及びイグニッションスイッチの状態等に関する条件が判定され、所定の条件が満たされる場合にのみ故障情報が初期化される。特許文献2の手法によれば、特に同じ故障情報を複数の電子制御装置が保持するケースを対象として、各電子制御装置が自らの状態(初期化実行の可否)を他の装置へ通知し、各電子制御装置が関係する全ての装置の状態に基づいて故障情報を初期化してもよいかを判定する。
【0006】
特許文献1及び2に開示された手法はいずれも、故障情報の初期化に関する複数の電子制御装置の統一的な動作を、個々の電子制御装置(及び診断装置)に実装される比較的複雑なロジックに依拠して実現している。この場合、車両に新たな電子制御装置が導入される都度複雑なロジックの実装が必要とされ、新たな電子制御装置の導入は既存の装置の実装済みのロジックにも影響を与える。これに対して、特許文献3には、特許文献1及び2の手法の不利を解消し又は少なくとも軽減することができる車両用通信制御装置及び車両用通信制御システムが提案されている。より具体的には、特許文献3の手法によれば、車両の状態に基づいて、複数の制御装置によりそれぞれ記憶される故障情報の初期化を禁止するか否かを包括的に判定し、判定の結果に基づいて、故障情報の初期化を禁止するか否かを制御する初期化制御信号を第1バスへ送信する機能を備えた制御ユニットが初期化制御信号を送信し、他のそれぞれの制御ユニットは、バスを介して受信される初期化制御信号に依存して、外部装置から受信される初期化要求に応じて故障情報を初期化するか否かを判定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010-143404号公報
【特許文献2】特開2010-266279号公報
【特許文献3】特開2019-64300号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献3の手法は、他のそれぞれの制御ユニットに、通信制御システム上に存在する、初期化制御信号を送信する機能を備えたすべての制御ユニットの初期化制御信号を判定する機能を実装する必要がある。このため、初期化制御信号を送信する機能を備えた制御ユニットが追加される都度、他のすべての制御ユニットの機能を修正する必要がある。
【0009】
本開示に係る技術は、こうした既存の手法の不利を解消し又は少なくとも軽減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本開示のある観点によれば、第1バスを介して相互接続される、複数の制御装置と車両用通信制御装置とを含む車両用通信制御システムであって、複数の制御装置のうちの少なくとも一つの制御装置は、車両の状態に基づいて、複数の制御装置によりそれぞれ記憶される故障情報の初期化を禁止するか否かを包括的に判定する包括判定部と、判定部による判定の結果に基づいて、複数の制御装置のうちの一の制御装置が他の制御装置の状態に関わらず外部装置から受信される初期化要求に応じて故障情報を初期化しないようにするために、故障情報の初期化を禁止するか否かを制御する初期化制御信号を生成する第1通信制御部と、を備え、車両用通信制御装置は、初期化制御信号に基づいて故障情報の初期化が禁止されている状態か否かを判定する初期化状態判定部と、初期化状態判定部による判定の結果に基づいて、故障情報の初期化が禁止されている状態か否かの情報を含む初期化制御状態信号を第1バスへ送信する第2通信制御部と、を備え、複数の制御装置のそれぞれは、車両用通信制御装置から第1バスを介して受信される初期化制御状態信号に依存して、他の制御装置の状態に関わらず、外部装置から受信される初期化要求に応じて故障情報を初期化するか否かを判定する、車両用通信制御システムが提供される。
【0011】
また、上記課題を解決するために、本開示の別の観点によれば、車両内の複数の制御装置を相互接続する第1バスへ接続される車両用通信制御装置であって、複数の制御装置のうちの少なくとも一つの制御装置により生成される、複数の制御装置によりそれぞれ記憶される故障情報の初期化を禁止するか否かを車両の状態に基づいて包括的に判定した結果を示す初期化制御信号に基づいて故障情報の初期化が禁止されている状態か否かを判定する初期化状態判定部と、初期化状態判定部による判定の結果に基づいて、故障情報の初期化が禁止されている状態か否かの情報を含む初期化制御状態信号を第1バスへ送信する第2通信制御部と、を備える、車両用通信制御装置が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本開示に係る技術によれば、車両の故障情報の初期化に関する既存の手法の不利を解消し又は少なくとも軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】車両ネットワークの構成の一例を示すブロック図である。
図2】既存の手法に従った故障情報の初期化の制御の一例について説明するための説明図である。
図3】本開示に係る技術の基本的な原理について説明するための説明図である。
図4】一実施形態に係るマスタ制御機能の構成の一例を示すブロック図である。
図5】一実施例に係る初期化制御信号の構成の一例について説明するための説明図である。
図6】一実施形態に係る状態管理機能の構成の一例を示すブロック図である。
図7】一実施例に係る初期化制御状態信号の構成の一例について説明するための説明図である。
図8】一実施形態に係るスレーブ制御機能の構成の一例を示すブロック図である。
図9】ゲートウェイ機能による初期化制御信号の中継について説明するための説明図である。
図10】一実施形態に係るゲートウェイ機能の構成の一例を示すブロック図である。
図11】一実施形態に係るマスタ制御機能により実行される処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図12】一実施形態に係る状態管理機能により実行される処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図13】一実施形態に係るスレーブ制御機能により実行される処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図14】一実施形態に係るゲートウェイ機能により実行される処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に添付図面を参照しながら、本開示の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0015】
<1.概要>
[1-1.システムの構成]
まず、図1を参照しながら、車両用通信制御システムの構成の一例について説明する。図1に示した車両用通信制御システム10は、1つ以上のバスと、それらバスを介して相互接続される1つ以上の制御装置とを含む。例えば、メインバス12は、制御装置20a、20b、20c、20d、20e、20f、20g、…及びボディ統合装置50を相互接続する。サブバス14は、制御装置20b、制御装置40a及び40bを相互接続する。診断用バス16は、ボディ統合装置50及び接続インタフェース60を相互接続する。メインバス12、サブバス14及び診断用バス16の各々は、例えばCANに従って実装されてもよく、又はFlexRay、LIN(Local Interconnect Network)若しくはMOST(Media Oriented Systems Transport)などの他の種類の通信プロトコルに従って実装されてもよい。なお、これ以降の説明において、制御装置20a、20b、20c、20d、20e、20f、20gを互いに区別する必要が無い場合には、符号の末尾のアルファベットを省略することにより、これらを制御装置20と総称する。他の構成要素の符号の扱いについても同様である。
【0016】
制御装置20aは、エンジンECUである。エンジンECU20aは、エンジンの動作に関与する1つ以上のセンサ21a及び1つ以上のアクチュエータ22aへ接続される。例えば、センサ21aは、アクセル開度センサ及びエンジン回転数センサを含む。アクチュエータ22aは、エンジンのスロットルバルブ及びインジェクタを含む。エンジンECU20aは、例えば、後述する制御装置20bと連携し、所望のエンジントルクが得られるようにエンジンの動作を制御する。
【0017】
制御装置20bは、HEV(Hybrid Electric Vehicle)CU(Control Unit)である。HEVCU20bは、他の制御装置と通信し、エンジン、モータ、トランスミッション、ブレーキ及びバッテリを含む車両の構成要素の動作を統合的に制御する。例えば、HEVCU20bは、アクセル開度、車速及びバッテリ電力残量などのデータに基づいて、エンジン及びモータが生み出すべきトルクを算出し、制御装置20a及び制御装置40bへそれぞれトルク指示を送信する。また、HEVCU20bは、変速のタイミングを判定し、制御装置20cへ変速指示を送信する。また、HEVCU20bは、ブレーキのタイミング及び制御量を判定し、制御装置20dへブレーキ指示を送信する。
【0018】
制御装置20cは、トランスミッションECUである。トランスミッションECU20cは、トランスミッションの動作に関与する1つ以上のアクチュエータ22cへ接続される。例えば、アクチュエータ22cは、クラッチの断接及びギア比を制御する油圧制御機構を含む。トランスミッションECU20cは、例えば、制御装置20bから受信される変速指示に応じて、クラッチを連結し若しくは遮断し、又はギア比をシフトさせる。
【0019】
制御装置20dは、ブレーキECUである。ブレーキECU20dは、ブレーキの動作に関与する1つ以上のセンサ21d及び1つ以上のアクチュエータ22dへ接続される。例えば、センサ21dは、車速センサを含む。アクチュエータ22dは、各車輪のブレーキ圧を制御する油圧制御機構を含む。ブレーキECU20dは、例えば、制御装置20bから受信されるブレーキ指示に応じて、油圧制御機構を駆動し、ブレーキを作動させる。
【0020】
制御装置40aは、バッテリECUである。バッテリECU40aは、バッテリの状態の管理に関与する1つ以上のセンサ41aへ接続される。例えば、センサ41aは、電圧センサ、電流センサ及び温度センサを含む。バッテリECU40aは、例えば、センサ41aを通じて取得されるバッテリの状態(例えば、電力残量及び温度など)を示すデータを制御装置20bへ送信する。
【0021】
制御装置40bは、モータECUである。モータECU40bは、モータの動作に関与する1つ以上のセンサ41b及び1つ以上のアクチュエータ42bへ接続される。例えば、センサ41bは、モータ回転数センサを含む。アクチュエータ42bは、インバータを含む。モータECU40bは、例えば、制御装置20bと連携し、所望のモータトルク又は回生トルクが得られるようにモータの動作を制御する。
【0022】
図1に示したように、HEVCU20bは、メインバス12を介して、エンジンECU20a、トランスミッションECU20c及びブレーキECU20dと接続される。また、HEVCU20bは、サブバス14を介して、バッテリECU40a及びモータECU40bと接続される。このHEVCU20bのように、複数のバスとのインタフェースを有する制御装置は、あるバスから受信される信号を他のバスへ中継するゲートウェイ機能を有していてもよい。
【0023】
ボディ統合装置(BIU:Body Integration Unit)50は、車両全体の通信のハブとして機能し、制御系ネットワークであるメインバス12、並びに例えば情報系ネットワーク及び安全系ネットワークなどの他のネットワーク(図示せず)を含む車両内の様々なネットワークを統合する。ボディ統合装置50は、診断用バス16を介して接続インタフェース60にも接続される。
【0024】
接続インタフェース60は、外部装置の車両への接続を仲介するインタフェースである。接続インタフェース60は、例えば、汎用スキャンツール(GST:General Scan Tool)に代表される診断装置を接続可能なDLC(Data Link Connector又はData Link Coupler)であってもよい。図1には、外部装置の一例として、診断装置65が示されている。
【0025】
[1-2.課題の説明]
一般に、車両には図1に例示したような様々な制御装置が搭載され、それら制御装置はバスを介して通信する。また、各制御装置は、制御下にある構成要素(例えば、センサ若しくはアクチュエータ、又はECUの内部モジュールなど)に故障が発生したことを検知すると、故障情報をメモリに記憶させる。故障情報は、例えば、DTC(Diagnostic Trouble Code)のような標準化された情報であってもよく、又は個別に定義された情報であってもよい。故障情報は、通常、故障の原因が解消し又は十分に安全な走行が可能になったことが確認されるまで、メモリ内に維持される。発生した故障が車両の走行にとって致命的でなければ、ドライバは、故障情報が存在するか否かに関わらず、車両の走行を継続することができる。但し、走行の安全性に影響し得る故障情報が存在する場合、いくつかの制御装置は、通常の制御モードとは異なるフェールセーフモードでの制御を実行し得る。例えば、エンジンECU又はHEVCUは、アクセル開度センサに関連付けられる故障情報が存在する場合、センサ入力に関わらずアクセル開度をフェールセーフ値に設定し、車両の暴走を防止することが望ましい。
【0026】
車両に故障が発生した場合、ドライバ又はディーラは、スキャンツール(例えば、診断装置65)を車両へ接続し、車両内の故障情報をスキャンツール上に表示させることができる。スキャンツールは、通常、故障情報を初期化することを要求する機能をも有する。例えば、ディーラは、車両の修理又は故障の原因の解析を終了すると、スキャンツールから車両内のネットワークへ初期化要求を送出し、各制御装置により記憶されている故障情報を初期化(即ち、消去)させる。但し、故障情報の存在が上述したようにフェールセーフ機能のアクティブ化の条件となっている場合には、故障情報の初期化は、車両の状態に基づき十分な安全性が確保されている場合にのみ行われるべきである。また、各国の法令に依存して、故障情報の取り扱いが複数の制御装置間で異ならないことが要請されることもある。
【0027】
図1の例では、エンジンECU20aは、故障情報23aを記憶している。HEVCU20bは、故障情報23bを記憶している。トランスミッションECU20cは、故障情報23cを記憶している。ブレーキECU20dは、故障情報23dを記憶している。バッテリECU40aは、故障情報43aを記憶している。あるシナリオにおいて、診断装置65が接続インタフェース60へ接続され、診断装置65から診断用バス16へ初期化要求が送信されると、ボディ統合装置50はメインバス12へ初期化要求を中継する。HEVCU20bは、メインバス12上を流れる初期化要求をさらにサブバス14へ中継する。このようにバス上を流れる初期化要求に対し、故障情報の初期化を実行するか否かが各制御装置の個別の制御ロジックに委ねられるとすると、予期しないタイミングで故障情報が消去されてしまうリスクが生じる。また、故障情報の共通的な取り扱いの要請に違反する可能性もある。こうした問題に対処するために、例えば、特許文献2は、各電子制御装置が自らの状態(初期化実行の可否)を他の装置へ通知し、各電子制御装置が関係する全ての装置の通知された状態に基づいて故障情報を初期化してもよいかを判定することを提案している。
【0028】
しかしながら、上述した既存の手法では、バスに新たにECUが接続されると、それぞれのECUのコントローラの制御ロジックを変更する必要性が生じる。なぜなら、各コントローラは、自らが有する故障情報の初期化を実行するか否かを、新たなECUが故障情報を初期化できる状態にあるかをも考慮して判定しなければならないからである。即ち、既存の手法では、車両に新たなECUが導入される都度、既存のECUの実装済みのロジックを変更しなければならない。さらに、導入される新たなECUにも、比較的複雑な(関係する他の全てのコントローラの状態を考慮する)制御ロジックを実装しなければならない。これは、車両の生産コストの増加をもたらし、制御装置又はその制御ロジックの再利用性を低下させる。さらに、多数のコントローラが初期化制御のための制御信号を定常的にバス上へ送信する場合、通信コストが多大となりバスの容量が不足する可能性もある。複数のコントローラからそれぞれ送信される制御信号の到着タイミングの差異に起因して、コントローラ間で初期化制御の振る舞いに差異が生じる可能性もある。
【0029】
これに対して、特許文献3では、故障情報の初期化を禁止するか否かを包括的に判定する機能が導入されている。図2は、特許文献3に係る技術に従った故障情報の初期化の制御の一例について説明するための説明図である。図2の例において、第1ECU20-1及び第2ECU20-2は、マスタ制御機能120を有する。第3ECU20-3及び第4ECU20-4は、スレーブ制御機能130をそれぞれ有する。各マスタ制御機能120は、関係する複数のECU(図2の例では、第1ECU20-1、第2ECU20-2、第3ECU20-3及び第4ECU20-4)によりそれぞれ記憶される故障情報の初期化を禁止するか否かを車両の状態に基づいて包括的に判定し、その判定結果に基づく初期化制御信号150-1、150-2をメインバス12へ送信する。一方、第3ECU20-3及び第4ECU20-4のスレーブ制御機能130は、メインバス12上を流れる初期化制御信号150-1、150-2を監視する。スレーブ制御機能130は、例えば、故障情報の初期化が禁止されることを示す初期化制御信号(初期化禁止信号)が受信される場合には、他の装置の状態に関わらず、外部装置(例えば、診断装置65)から受信される初期化要求に応じて故障情報を初期化しない。
【0030】
このように、関係する複数のECUにおける故障情報の初期化を禁止するか否かを、マスタ制御機能120が包括的に判定することにより、車両に新たなECUが導入されるとしても、マスタ制御機能120の制御ロジックのみを変更すれば足りるようになる。つまり、既存のECUのスレーブ制御機能130は、マスタ制御機能120から送信される初期化制御信号150を変わらず監視するだけで十分である。また、導入される新たなECUは、既存のECUが有するものと同じスレーブ制御機能130を実装するだけで、故障情報の共通的な取り扱いに参加することができる。
【0031】
しかしながら、特許文献3に記載の手法では、バスに新たにマスタ制御機能120を持つECUが追加されると、新たに追加されたECUのマスタ制御機能120の初期化制御信号150-Nを判定する制御ロジックをスレーブ制御機能130に実装する修正が必要になる。この場合においても、車両の生産コストの増加をもたらし、制御装置又はその制御ロジックの再利用性を低下させるおそれがある。
【0032】
[1-3.基本的な原理]
本開示に係る技術の実施形態によれば、車両の故障情報の初期化に関する上述の手法の不利を解消し又は少なくとも軽減するために、バスに存在するマスタ制御機能から送信された初期化制御信号を監視し、システムが故障情報の初期化が禁止されている状態か否かを示す初期化制御状態信号をバス上に送信する機能(以下、当該機能を「状態管理機能」ともいう)が導入される。
【0033】
図3は、本開示に係る技術の基本的な原理について説明するための説明図である。図3の例において、第1ECU20-1は、状態管理機能125及びマスタ制御機能120を有する。第2ECU20-2は、マスタ制御機能120を有する。第3ECU20-3及び第4ECU20-4は、スレーブ制御機能130をそれぞれ有する。マスタ制御機能120は、関係する複数のECU(図3の例では、第1ECU20-1、第2ECU20-2、第3ECU20-3及び第4ECU20-4)によりそれぞれ記憶される故障情報の初期化を禁止するか否かを車両の状態に基づいて包括的に判定し、その判定結果に基づく初期化制御信号150をメインバス12へ送信する。
【0034】
状態管理機能125は、メインバス12上を流れる初期化制御信号150を監視する。図3の例では、状態管理機能125は、同じ第1ECU20-1内のマスタ制御機能120により生成される初期化制御信号を併せて監視する。状態管理機能125は、初期化制御信号に基づいて、システムとして故障情報の初期化が禁止されている状態か否かを判定し、その判定結果に基づく初期化制御状態信号155をメインバス12へ送信する。状態管理機能125は、例えば故障情報の初期化が禁止されることを示す初期化制御信号(初期化禁止信号)が受信される場合には、システムとして故障情報の初期化が禁止されている状態であることを示す初期化制御状態信号(初期化禁止状態信号)をメインバス12へ送信する。
【0035】
一方、第3ECU20-3及び第4ECU20-4のスレーブ制御機能130は、メインバス12上を流れる初期化制御状態信号155を監視する。スレーブ制御機能130は、例えば故障情報の初期化が禁止されている状態であることを示す初期化制御状態信号(初期化禁止状態信号)が受信される場合には、他の装置の状態に関わらず、外部装置(例えば、診断装置65)から受信される初期化要求に応じて故障情報を初期化しない。
【0036】
このように、マスタ制御機能120が、関係する複数のECUにおける故障情報の初期化を禁止するか否かを包括的に判定し、状態管理機能125は、いずれかのマスタ制御機能120により故障情報の初期化が禁止すると判定されているかを判定する。これにより、車両にマスタ制御機能120を有する新たなECUが導入されるとしても、制御ロジックを変更しなければならないのは状態管理機能125のみとなる。既存のECUのマスタ制御機能120は、関係する複数のECUにおける故障情報の初期化を禁止するか否かを変わらず包括的に判定すれば足りる。また、既存のECUのスレーブ制御機能130は、マスタ制御機能120から送信される初期化制御信号150を変わらず監視するだけで十分である。また、導入される新たなECUは、既存のECUが有するものと同じマスタ制御機能120又はスレーブ制御機能130を実装するだけで、故障情報の共通的な取り扱いに参加することができる。
【0037】
状態管理機能125は、図1に例示した様々な制御装置20のうちの任意の装置に配置されてよい。典型的には、マスタ制御機能120を既に有している装置に状態管理機能125を配置することが、通信コストの観点から有益である。なお、状態管理機能125は、システム全体の故障情報の包括的な取り扱いに特化した専用の装置に配置されてもよい。次節より、こうした故障情報の初期化の包括的な制御の仕組みに関する実施形態について、より詳細に説明する。
【0038】
<2.各機能の構成例>
[2-1.マスタ制御機能]
図4は、一実施形態に係るマスタ制御機能120の構成の一例を示すブロック図である。マスタ制御機能120は、少なくとも車両内の制御装置を相互接続するバスへ接続される装置に配置される。図4に示したように、マスタ制御機能120は、包括判定部122及び第1通信制御部124を含む。
【0039】
(1)包括判定部
包括判定部122は、車両の状態に基づいて、複数の制御装置によりそれぞれ記憶される故障情報の初期化を禁止するか否かを包括的に判定する。ここでの複数の制御装置とは、マスタ制御機能120が配置される装置を含んでもよい。例えばエンジンECU20aがマスタ制御機能120を有する場合、包括判定部122は、エンジンECU20a及びHEVCU20b(並びに他のECU)によりそれぞれ記憶される故障情報の初期化を禁止するか否かを包括的に判定してもよい。本明細書において、「包括的に判定する」との表現は、複数の装置の動作を左右する条件判定を、複数の装置がそれぞれ個別に又は並列的に行うのではなく、特定の1つの装置がまとめて行うことを意味する。
【0040】
故障情報の初期化が包括的に禁止される条件(以下、初期化禁止条件という)は、いかなる条件であってもよい。典型的には、初期化禁止条件は、フェールセーフ機能の稼働状態に関連する。
【0041】
一例として、エンジンECU20aは、アクセル開度センサに関連付けられる故障情報が存在する場合、センサ入力に関わらず、フェールセーフ値に設定したアクセル開度に基づいてスロットルを制御する。それにより、センサ入力が故障に起因して異常に高いアクセル開度を示しているとしても、車両の暴走が防止される。特にエンジンが停止していないときに、こうしたフェールセーフ機能は維持されるべきである。従って、初期化禁止条件は、例えば次のように表現され得る:
a)エンジンがオンであり且つスロットルのフェールセーフ機能がオンである
→故障情報の初期化を禁止する
b)エンジンがオフであり又はスロットルのフェールセーフ機能がオフである
→故障情報の初期化を許可する
この場合、上述した車両の状態は、エンジンの稼働状態及びスロットルのフェールセーフ機能の稼働状態を含む。包括判定部122は、エンジンがオンであり且つスロットルのフェールセーフ機能がオンである場合に、複数の制御装置によりそれぞれ記憶される故障情報の初期化を禁止すると判定する。エンジンECU20aは、上述した初期化禁止条件を判定するための情報(エンジンの稼働状態及びスロットルのフェールセーフ機能の稼働状態)を通常有している。そのため、マスタ制御機能120がエンジンECU20aに配置されれば、上述した初期化禁止条件の判定に要する情報の収集のために、追加的な通信コストは発生しない。
【0042】
他の例として、ブレーキECU20dは、ブレーキの動作に関連付けられる故障情報が存在する場合、ドライバの意図に反してブレーキが解放されないようにフェールセーフ機能をオンにし得る。従って、初期化禁止条件は、上述したスロットルのフェールセーフ機能の稼働状態に関連する条件に加えて(又はその代わりに)、ブレーキのフェールセーフ機能の稼働状態に関連する条件を含んでもよい。
【0043】
(2)第1通信制御部
第1通信制御部124は、包括判定部122による上述した包括的な判定の結果に基づいて、故障情報の初期化を禁止するか否かを制御する初期化制御信号を、複数の制御装置を相互接続するバスへ送信する。初期化制御信号は、後述する状態管理機能125により受信される。
【0044】
一例として、初期化制御信号は、初期化禁止信号を含んでもよい。例えば、第1通信制御部124は、包括判定部122により故障情報の初期化を禁止すると判定される場合に、故障情報の初期化を包括的に禁止する初期化禁止信号をバスへ送信してもよい。初期化禁止信号は、他の装置の状態に関わらず、初期化禁止信号を受信した制御装置が外部装置から受信される初期化要求に応じて故障情報を初期化することを禁止する。
【0045】
初期化制御信号は、初期化許可信号を含んでもよい。例えば、第1通信制御部124は、包括判定部122により故障情報の初期化を禁止しないと判定される場合に、故障情報の初期化を許可する初期化許可信号をバスへ送信してもよい。初期化許可信号は、他の装置の状態に関わらず、初期化許可信号を受信した制御装置が外部装置から受信される初期化要求に応じて故障情報を初期化することを許可する。
【0046】
ある実施例において、初期化禁止信号及び初期化許可信号は、マスタ制御機能120から周期的に送信される制御フレーム内の所定のビットのそれぞれ第1のビット値及び第2のビット値に対応してもよい。図5は、そうした実施例に係る初期化制御信号の構成の一例について説明するための説明図である。図5の例において、初期化制御信号150は、CANのデータフレーム構造に従って生成される制御フレーム160に含まれる。より具体的には、制御フレーム160は、SOF(Start Of Frame)フィールド、ID(Identifier)フィールド、RTR(Remote Transmission Request)フィールド、制御(CTRL)フィールド、データ(DATA)フィールド、及び後続のその他のフィールド(図示せず)を含む。
【0047】
SOFフィールドは、受信ノードがフレームの開始を認識し処理タイミングをフレームに同期させるために使用される。IDフィールドは、送信ノードを一意に識別すると共に、フレームが衝突した場合の調停(即ち、優先される送信ノードの決定)のためにも使用される。典型的には、初期化制御信号150を含む制御フレーム160には、診断装置65から送出される初期化要求フレームよりも優先順位の高いIDが与えられる。RTRフィールドは、データフレームと、データフレームの返送を要求するリモートフレームとを区別するために使用される。制御フィールドは、データフィールドの長さを示す制御情報を搬送する。制御フレーム160のデータフィールドは、予め定義されるビット位置に初期化制御信号150を含む。図5の例において、初期化制御信号150は、ビット値「1」によって初期化が禁止されることを表し、ビット値「0」によって初期化が許可されることを表す。この場合、ビット値「1」を示す当該ビットが初期化禁止信号であり、ビット値「0」を示す当該ビットが初期化許可信号であると解釈されてもよい。当然ながら、ビット値と初期化の禁止及び許可との関係は逆であってもよい。
【0048】
図5の例に限定されず、初期化制御信号は他の構成を有していてもよい。例えば、初期化制御信号は、初期化が禁止されるか又は許可されるかを示すビット若しくはコードと共に追加的な情報を含む制御メッセージであってもよい。追加的な情報とは、例えば、初期化が禁止され若しくは許可される期間、対象の故障情報を特定するコード、及び対象のECU又はECUのグループを識別する識別子のうちの1つ以上を含んでもよい。
【0049】
[2-2.状態管理機能]
図6は、一実施形態に係る状態管理機能125の構成の一例を示すブロック図である。状態管理機能125は、少なくとも車両内の制御装置を相互接続するバスへ接続される装置に配置される。状態管理機能125が配置された装置は、車両用通信制御装置として機能し得る。図6に示したように、状態管理機能125は、初期化状態判定部127及び第2通信制御部129を含む。
【0050】
(1)初期化状態判定部
初期化状態判定部127は、マスタ制御機能120からバスを介して受信される初期化制御信号に基づいて故障情報の初期化が禁止されている状態か否かを判定する。初期化状態判定部127は、バス上に存在するすべてのマスタ制御機能120から送信される初期化制御信号を監視し、少なくとも一つの初期化制御信号が、故障情報の初期化を禁止しているか否かを判定する。
【0051】
(2)第2通信制御部
第2通信制御部129は、初期化状態判定部127による上述した判定の結果に基づいて、故障情報の初期化が禁止されている状態か否かの情報を含む初期化制御状態信号を、複数の制御装置を相互接続するバスへ送信する。初期化制御状態信号は、後述するスレーブ制御機能130により受信される。
【0052】
一例として、初期化制御状態信号は、初期化禁止状態信号を含んでもよい。例えば第2通信制御部129は、初期化状態判定部127により故障情報の初期化が禁止されている状態と判定される場合に、故障情報の初期化が禁止されている状態であることを示す初期化禁止状態信号をバスへ送信してもよい。初期化禁止状態信号は、他の装置の状態に関わらず、初期化禁止状態信号を受信した制御装置が外部装置から受信される初期化要求に応じて故障情報を初期化することを禁止する。スレーブ制御機能130は、状態管理機能125から初期化禁止状態信号が受信される場合には、車両内の他の装置の状態を認識することなく、外部装置から受信される初期化要求に応じて故障情報を初期化しない。
【0053】
初期化制御状態信号は、初期化許可状態信号を含んでもよい。例えば第2通信制御部129は、初期化状態判定部127により故障情報の初期化が禁止されていない状態と判定される場合に、故障情報の初期化を許可する初期化許可状態信号をバスへ送信してもよい。初期化許可状態信号は、他の装置の状態に関わらず、初期化許可状態信号を受信した制御装置が外部装置から受信される初期化要求に応じて故障情報を初期化することを許可する。スレーブ制御機能130は、マスタ制御機能120から初期化許可状態信号が受信される場合には、車両内の他の装置の状態を認識することなく、外部装置から受信される初期化要求に応じて故障情報を初期化する。
【0054】
ある実施例において、初期化禁止状態信号及び初期化許可状態信号は、状態管理機能125から周期的に送信される制御フレーム内の所定のビットのそれぞれ第1のビット値及び第2のビット値に対応してもよい。図7は、そうした実施例に係る初期化制御状態信号の構成の一例について説明するための説明図である。図7の例において、初期化制御状態信号155は、CANのデータフレーム構造に従って生成される制御フレーム165に含まれる。この例における初期化制御状態信号155の構成は、図5に示した初期化制御信号150の例と同様であってよいため、ここではその説明を省略する。
【0055】
[2-3.スレーブ制御機能]
図8は、一実施形態に係るスレーブ制御機能130の構成の一例を示すブロック図である。スレーブ制御機能130は、故障情報を記憶するメモリ131を有する制御装置の各々に配置される。図8に示したように、スレーブ制御機能130は、初期化制御部132を含む。
【0056】
初期化制御部132は、状態管理機能125からバスを介して受信される初期化制御信号に依存して、外部装置(例えば、診断装置65)から受信される初期化要求に応じて故障情報を初期化するか否かを判定する。例えば、初期化制御部132は、故障情報の初期化が禁止されている状態を示す初期化禁止状態信号が受信される場合には、他の装置の状態に関わらず、外部装置から受信される初期化要求に応じて故障情報を初期化しない。また、初期化制御部132は、故障情報の初期化が許可されている状態を示す初期化許可状態信号が受信される場合には、他の装置の状態に関わらず、外部装置から受信される初期化要求に応じて故障情報を初期化する。初期化制御部132は、初期化要求に応じて故障情報を初期化しない場合には、初期化拒否を示す応答信号(否定応答)を外部装置へ返送してもよい。また、初期化制御部132は、初期化要求に応じて故障情報を初期化した場合には、初期化完了を示す応答信号(確認応答)を外部装置へ返送してもよい。
【0057】
より具体的には、例えば、初期化制御部132は、状態管理機能125からバス上へ周期的に送信される制御フレーム165を監視する。制御フレーム165は、例えば制御フレーム165の送信元のノードに付与されたIDを有する。また、制御フレーム165は、データフィールド内の予め定義されるビット位置に、初期化制御状態信号155を含む。図7の例によれば、このビット位置のビット値が「1」である場合、初期化制御状態信号155は初期化禁止状態信号であり、このビット位置のビット値が「0」である場合、初期化制御状態信号155は初期化許可状態信号である。初期化制御部132は、このように初期化制御状態信号155のビット値に依存して、故障情報の初期化が禁止されるか又は許可されるかのステータス(以下、初期化禁止ステータスという)を切り替える。そして、初期化制御部132は、外部装置から初期化要求が受信されると、その時点の初期化禁止ステータスに基づいて、メモリ131に記憶されている故障情報を初期化するか否かを制御する。
【0058】
[2-3.ゲートウェイ機能]
上述したように、車両内のネットワークは、概して複数のバスを含む。ある1つの制御装置上の状態管理機能125が複数のバスのうちの第1バスへ初期化制御状態信号を送出する場合、通常は、初期化制御状態信号は第1バス以外のバス上を流れない。しかしながら、他のバスにのみ接続される制御装置が故障情報を記憶するケースもあり得ることを想定すると、初期化制御状態信号は、状態管理機能125が接続されていないバスへも中継されるべきである。
【0059】
例えば図1の例においては、車両用通信制御システム10は、メインバス12、サブバス14及び診断用バス16を含む。エンジンECU20aが状態管理機能125を有し、エンジンECU20aからメインバス12へ制御フレーム165が送出される場合、制御フレーム165そのものはサブバス14上を流れない。こうしたケースでは、メインバス12とサブバス14との間に介在するHEVCU20bに、初期化制御状態信号を中継するためのゲートウェイ機能を実装することが有益である。
【0060】
図9は、一実施形態に係るゲートウェイ機能について説明するための説明図である。図9の例において、第1ECU20-1は、状態管理機能125及びマスタ制御機能120を有する。第2ECU20-2は、マスタ制御機能120を有する。第3ECU20-3は、スレーブ制御機能130及びゲートウェイ機能140を有する。第4ECU20-4、第5ECU40-1及び第6ECU40-2は、スレーブ制御機能130をそれぞれ有する。上述したように、マスタ制御機能120は、関係する複数のECUによりそれぞれ記憶される故障情報の初期化を禁止するか否かを車両の状態に基づいて包括的に判定し、その判定結果に基づく初期化制御信号150を含む制御フレームをメインバス12へ送信する。状態管理機能125は、メインバス12上を流れる初期化制御信号150を監視し、初期化制御信号150に基づいて、システムとして故障情報の初期化が禁止されている状態か否かを判定し、その判定結果に基づく初期化制御状態信号155をメインバス12へ送信する。
【0061】
第3ECU20-3及び第4ECU20-4のスレーブ制御機能130は、メインバス12上を流れる制御フレームを監視し、初期化禁止状態信号が受信される場合には外部装置から初期化要求が受信されたとしても故障情報を初期化しない。また、本実施形態において、第3ECU20-3のゲートウェイ機能140は、状態管理機能125からメインバス12を介して受信される初期化制御状態信号155に対応する二次的な初期化制御状態信号を含む制御フレームをサブバス14へ送信する。つまり、第3ECU20-3は、第3通信制御装置としての機能を有する。ゲートウェイ機能140から送信される制御フレームは、例えば図7に例示した制御フレーム165と同等の構成を有していてもよく、但しIDフィールドには制御フレーム165とは異なるIDが設定され得る。第5ECU40-1及び第6ECU40-2のスレーブ制御機能130は、サブバス14上を流れる制御フレームを監視する。そして、それらスレーブ制御機能130は、初期化禁止状態信号が受信される場合には外部装置から初期化要求が受信されたとしても故障情報を初期化せず、初期化許可状態信号が受信される場合には初期化要求の受信に応じて故障情報を初期化する。
【0062】
図10は、一実施形態に係るゲートウェイ機能140の構成の一例を示すブロック図である。なお、ここでは1つの制御装置がゲートウェイ機能140と共にスレーブ制御機能130を有する例を示している。しかしながら、かかる例に限定されず、制御装置はゲートウェイ機能140のみを有していてもよい。スレーブ制御機能130の構成は、図8を用いて説明したものと同様であってよいため、ここではその説明を省略する。図10に示したように、ゲートウェイ機能140は、中継制御部142を含む。
【0063】
中継制御部142は、状態管理機能125から第1バス(例えばメインバス12)を介して受信される初期化制御状態信号に対応する二次的な初期化制御状態信号を、第1バスとは異なる第2バス(例えばサブバス14)へ送信する。中継制御部142は、同じ装置上のスレーブ制御機能130の初期化制御部132にも初期化制御信号を出力する。また、中継制御部142は、外部装置からの初期化要求が第1バスを介して受信された場合には、初期化要求を第2バスへ中継する。中継制御部142は、同じ装置上のスレーブ制御機能130の初期化制御部132にも初期化要求を出力する。そして、中継制御部142は、第2バスへ接続されるスレーブ制御機能130から初期化要求に対する応答信号が受信された場合には、応答信号を第1バスへ中継する。
【0064】
図10に例示したような構成において、初期化要求を送出可能な外部装置との接続インタフェースは、ゲートウェイ機能140を基準として第2バスではなく第1バスの側に設けられることが好適である。この場合、外部装置から送信される初期化要求は、第1バスを介して第2バスへ到達することになる。そして、例えばCANのフレームIDに基づく衝突フレームの調停などの優先制御を取り入れることで、万が一初期化禁止状態信号と同時に初期化要求が送信されたとしても、スレーブ制御機能130がどのバスへ接続しているかに関わらず全てのスレーブ制御機能130が先に初期化禁止状態信号を受信することが可能となる。
【0065】
<3.処理の流れの例>
[3-1.マスタ制御]
図11は、上述した実施形態に係るマスタ制御機能120により実行される処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0066】
図11を参照すると、まず、マスタ制御機能120の包括判定部122は、車両の状態を監視する(ステップS10)。例えば、スロットルのフェールセーフ機能を保護しようとする場合、車両の状態とは、エンジンの稼働状態及びスロットルのフェールセーフ機能の稼働状態を含んでよい。この場合、包括判定部122は、エンジンがオンであるか又はオフであるか、及びスロットルのフェールセーフ機能がオンであるか又はオフであるかを定常的に監視する。
【0067】
次に、包括判定部122は、監視される車両の状態に基づいて、複数の制御装置によりそれぞれ記憶される故障情報の初期化を禁止するか否かを包括的に判定する(ステップS12)。例えば、包括判定部122は、エンジンがオンであり且つスロットルのフェールセーフ機能がオンである場合に故障情報の初期化を禁止すると判定し、そうでない場合に故障情報の初期化を許可すると判定してもよい。
【0068】
その後の処理は、故障情報の初期化を包括的に禁止すると判定されたか又は初期化を許可すると判定されたかに依存して分岐する(ステップS14)。第1通信制御部124は、包括判定部122により故障情報の初期化を禁止すると判定される場合(S14/Yes)、故障情報の初期化が包括的に禁止されることを示す初期化禁止信号をバスへ送信する(ステップS16)。また、第1通信制御部124は、包括判定部122により故障情報の初期化を許可すると判定される場合(S14/No)、故障情報の初期化が許可されることを示す初期化許可信号をバスへ送信する(ステップS18)。
【0069】
初期化禁止信号又は初期化許可信号であり得る初期化制御信号が送信された後、処理はステップS10へ戻る。典型的には、車両用通信制御システム10が稼動している間(即ち、ネットワーク上を初期化要求が流れる可能性がある期間中)、マスタ制御機能120は、ステップS10~ステップS18の処理を周期的に繰り返す。
【0070】
[3-2.状態管理]
図12は、上述した実施形態に係るマスタ制御機能120により実行される処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0071】
図12を参照すると、まず、状態管理機能125の初期化状態判定部127は、マスタ制御機能120から送信される初期化制御信号をバスを介して受信する(ステップS20)。例えば初期化制御信号がマスタ制御機能120から送信される制御フレーム160内の所定のビットである場合、初期化状態判定部127は、まず、バス上を流れる様々なフレームのうち所定のIDを有する制御フレーム160を検出する。そして、初期化状態判定部127は、検出した制御フレーム160に含まれる予め定義されるビット位置のビットを、初期化制御信号として抽出する。
【0072】
次に、初期化状態判定部127は、受信した初期化制御信号に基づいて、システムとして故障情報の初期化が禁止されている状態か否かを判定する(ステップS22)。例えば初期化状態判定部127は、初期化制御信号として抽出したビットが初期化禁止を意味する値を有する場合には、故障情報の初期化が禁止されている状態と判定する。また、初期化状態判定部127は、初期化制御信号として抽出したビットが初期化許可を意味する値を有する場合には、故障情報の初期化が許可されている状態と判定する。
【0073】
その後の処理は、故障情報の初期化が禁止されている状態と判定されたか又は初期化が許可されている状態と判定されたかに依存して分岐する(ステップS24)。第2通信制御部129は、初期化状態判定部127により故障情報の初期化が禁止されている状態と判定される場合(S24/Yes)、故障情報の初期化が禁止されている状態を示す初期化禁止状態信号をバスへ送信する(ステップS26)。また、第2通信制御部129は、初期化状態判定部127により故障情報の初期化が許可されている状態と判定される場合(S24/No)、故障情報の初期化が許可されている状態を示す初期化許可状態信号をバスへ送信する(ステップS28)。
【0074】
初期化禁止状態信号又は初期化許可状態信号であり得る初期化制御状態信号が送信された後、処理はステップS20へ戻る。典型的には、車両用通信制御システム10が稼動している間(即ち、ネットワーク上を初期化要求が流れる可能性がある期間中)、状態管理機能125は、ステップS20~ステップS28の処理を周期的に繰り返す。
【0075】
[3-3.スレーブ制御]
図13は、上述した実施形態に係るスレーブ制御機能130により実行される処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0076】
図13を参照すると、まず、スレーブ制御機能130の初期化制御部132は、状態管理機能125から送信される初期化制御状態信号をバスを介して受信する(ステップS30)。例えば、初期化制御状態信号が状態管理機能125から送信される制御フレーム165内の所定のビットである場合、初期化制御部132は、まず、バス上を流れる様々なフレームのうち所定のIDを有する制御フレーム165を検出する。そして、初期化制御部132は、検出した制御フレーム165に含まれる予め定義されるビット位置のビットを、初期化制御状態信号155として抽出する。
【0077】
次に、初期化制御部132は、受信した初期化制御状態信号に依存して、初期化禁止ステータスを更新する(ステップS32)。例えば初期化制御部132は、初期化制御状態信号として抽出したビットが初期化禁止状態を意味する値を有する場合には、初期化禁止ステータスを「禁止」に設定する。また、初期化制御部132は、初期化制御信号として抽出したビットが初期化許可状態を意味する値を有する場合には、初期化禁止ステータスを「許可」に設定する。
【0078】
次に、初期化制御部132は、外部装置から初期化要求が受信されたか否かを判定する(ステップS34)。初期化要求が受信されない場合(S34/No)、処理はステップS30へ戻り、初期化制御部132は、次の周期で再び初期化制御状態信号を受信する。初期化要求が受信された場合(S34/Yes)、処理はステップS36へ進む。
【0079】
ステップS36以降の処理は、その時点の初期化禁止ステータスに依存して分岐する。故障情報の初期化が許可されている場合(S36/Yes)、初期化制御部132は、メモリ131により記憶されている故障情報を初期化する(ステップS38)。そして、初期化制御部132は、初期化要求への応答として、故障情報の初期化を完了したことを示す応答信号を送信する(ステップS40)。一方、故障情報の初期化が禁止されている場合、初期化制御部132は、故障情報を初期化せず、初期化要求を拒否することを示す応答信号を送信する(ステップS42)。
【0080】
その後、処理はステップS30へ戻る。典型的には、車両用通信制御システム10が稼動している間、スレーブ制御機能130は、ステップS30~ステップS42の処理を繰り返す。
【0081】
[3-4.ゲートウェイ]
図14は、上述した実施形態に係るゲートウェイ機能140により実行される処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0082】
図14を参照すると、まず、ゲートウェイ機能140の中継制御部142は、状態管理機能125から送信される初期化制御状態信号を第1バスを介して受信する(ステップS50)。そして、中継制御部142は、受信した初期化制御状態信号に対応する二次的な初期化制御信号を第2バスへ送信する(ステップS52)。中継制御部142は、例えば、受信される制御フレームから抽出される初期化制御状態信号のビットを含む二次的な制御フレームを生成して、生成した二次的な制御フレームを第2バスへ送信してもよい。その代わりに、中継制御部142は、どのビットが初期化制御状態信号であるかを認識することなく、受信される制御フレームのデータフィールドを複製することにより二次的な制御フレームを生成して、生成した二次的な制御フレームを第2バスへ送信してもよい。
【0083】
また、中継制御部142は、第1バスから初期化要求が受信されたか否かを判定する(ステップS54)。初期化要求が受信されない場合(S54/No)、処理はステップS50へ戻る。初期化要求が受信された場合(S54/Yes)、処理はステップS56へ進む。
【0084】
ステップS56において、中継制御部142は、第1バスから受信された初期化要求を第2バスへ中継する。そして、中継制御部142は、初期化要求に対する応答信号が第2バスから受信されると(ステップS58)、その応答信号を第1バスへ中継する(ステップS60)。なお、第2バスへ複数の制御装置が接続されている場合には、1回の初期化要求の中継に対して複数の制御装置からそれぞれ応答信号が返送され得る。
【0085】
<4.まとめ>
ここまで、図1図14を用いて本開示に係る技術の様々な実施形態について詳細に説明した。上述した実施形態によれば、車両内の制御装置を相互接続する第1バスへ接続される制御装置において、当該車両の状態に基づいて複数の制御装置(マスタ装置)によりそれぞれ記憶される故障情報の初期化を禁止するか否かが包括的に判定され、上記判定の結果に基づいて、上記故障情報の初期化を禁止するか否かを制御する初期化制御信号が上記第1バスへ送信される。また、第1バスへ接続される車両用通信制御装置(状態管理装置)において、第1バスを介して受信される初期化制御信号に基づいて、システムとして上記故障情報の初期化が禁止されている状態か否かが判定され、上記判定の結果に基づいて、上記故障情報の初期化が禁止されている状態か否かを示す初期化制御状態信号が上記第1バスへ送信される。
【0086】
それにより、故障情報の初期化が禁止されるか否かを判定するための制御ロジックを実装した制御装置(マスタ装置)が新たに第1バス上に追加された場合であっても、車両用通信制御装置(状態管理装置)以外の既存の制御装置(マスタ装置及びスレーブ装置)に実装する制御ロジックを修正する必要性が排除される。従って、車両に搭載される制御装置の数に応じた生産コストの増加を抑制しつつ、初期化制御の統一的な振る舞いを既存の手法よりも容易に実現することができる。
【0087】
また、上述した実施形態によれば、故障情報の初期化が禁止されている状態と判定される場合に、故障情報の初期化が禁止されている状態を示す初期化禁止状態信号が初期化制御状態信号として第1バスへ送信される。従って、第1バスへ接続されるスレーブ装置は、初期化制御状態信号として初期化禁止状態信号が第1バスから受信されるか否かを監視するだけで、その時点で故障情報の初期化が禁止されている状態か否かを知得することができる。
【0088】
また、上述した実施形態によれば、上記初期化禁止状態信号は、他の装置の状態に関わらず、当該初期化禁止状態信号を受信したスレーブ装置が外部装置から受信される初期化要求に応じて故障情報を初期化することを禁止する信号である。従って、車両に新たなマスタ装置又はスレーブ装置が導入されるとしても、既存のスレーブ装置は新たなマスタ装置の状態を初期化制御のために考慮しなくてよい。また、新たなマスタ装置又はスレーブ装置には、既存のスレーブ装置と同様の初期化制御のための制御ロジックを実装するだけで十分である。このように、上述した実施形態は、初期化制御のための制御ロジックの再利用性を改善し、システムの拡張可能性を向上させる。
【0089】
また、上述した実施形態によれば、故障情報の初期化が禁止されていない状態と判定される場合には、故障情報の初期化が許可されている状態を示す初期化許可状態信号が第1バスへ送信される。従って、スレーブ装置は、第1バスを監視して、初期化禁止状態信号又は初期化許可状態信号のいずれかである初期化制御状態信号を検出することで、その時点で故障情報の初期化が包括的に禁止されているのか又は許可されているのかを直ちに知得することができる。1つの実施例において、初期化禁止状態信号及び初期化許可状態信号は、状態管理装置から周期的に送信される制御フレーム内の所定のビットのそれぞれ第1のビット値及び第2のビット値に対応し得る。この場合、スレーブ装置は、初期化制御のために上記所定のビットを監視することのみを要する。これは、スレーブ装置への初期化制御機能の実装が極めて容易であることを意味する。
【0090】
本明細書では、本開示に係る技術がハイブリッド車両に適用される例について主に説明した。しかしながら、かかる例に限定されず、本開示に係る技術は、非ハイブリッド車両(例えば、ガソリン自動車、ディーゼル自動車又は電気自動車)にも適用可能である。
【0091】
なお、本明細書において説明した機能の各々により実行される処理は、ソフトウェア、ハードウェア、及びソフトウェアとハードウェアとの組合せのいずれを用いて実現されてもよい。ソフトウェアを構成するプログラムは、例えば、各制御装置の内部又は外部に設けられる非一時的なコンピュータ読取可能な記憶媒体に予め格納される。そして、各プログラムは、例えば、実行時にRAM(Random Access Memory)に読み込まれ、CPU(Central Processing Unit)などのプロセッサにより実行される。
【0092】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0093】
10:車両用通信制御システム、12:メインバス、14:サブバス、16:診断用バス、20・40:制御装置、21・41:センサ、22・42:アクチュエータ、23・43:故障情報、50:ボディ統合装置、60:接続インタフェース、65:診断装置(外部装置)、120:マスタ制御機能、122:包括判定部、124:第1通信制御部、125:状態管理機能、127:初期化状態判定部、129:第2通信制御部、130:スレーブ制御機能、131:メモリ、132:初期化制御部、140:ゲートウェイ機能、142:中継制御部、150:初期化制御信号、155:初期化制御状態信号
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