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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023146514
(43)【公開日】2023-10-12
(54)【発明の名称】ガス供給器およびガス製造方法
(51)【国際特許分類】
   C25B 9/00 20210101AFI20231004BHJP
   C25B 13/07 20210101ALI20231004BHJP
   C25B 9/23 20210101ALI20231004BHJP
   C25B 9/67 20210101ALI20231004BHJP
   C25B 1/04 20210101ALI20231004BHJP
   C25B 3/03 20210101ALI20231004BHJP
   C25B 15/02 20210101ALI20231004BHJP
   F17C 7/00 20060101ALI20231004BHJP
   C01B 13/00 20060101ALI20231004BHJP
   C01B 3/00 20060101ALI20231004BHJP
   C25B 1/27 20210101ALI20231004BHJP
【FI】
C25B9/00 A
C25B13/07
C25B9/23
C25B9/67
C25B1/04
C25B3/03
C25B15/02
F17C7/00 A
C01B13/00
C01B3/00 Z
C25B1/27
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022053727
(22)【出願日】2022-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000006183
【氏名又は名称】三井金属鉱業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井手 慎吾
(72)【発明者】
【氏名】加畑 実
【テーマコード(参考)】
3E172
4G042
4G140
4K021
【Fターム(参考)】
3E172AA02
3E172AA07
3E172AB01
3E172AB11
3E172AB12
3E172AB20
3E172DA90
3E172EB02
3E172KA03
3E172KA22
3E172KA23
4G042AA05
4G042BA31
4G140AB01
4K021AA01
4K021AB25
4K021AC02
4K021BA02
4K021CA09
4K021CA12
4K021DC01
4K021DC03
(57)【要約】
【課題】固体電解質を用いたガス供給器において、十分なガス供給量とともに、安定したガス供給を行うことができるガス供給器およびこのガス供給器を用いたガス製造方法を提供する。
【解決手段】固体電解質を有するガス生成部を備えるガス供給器であって、ガス生成部で生成された濃縮ガスを貯留可能な貯留タンクを備え、貯留タンクは、該貯留タンクから排出される濃縮ガスの排気量を、内部に貯留した濃縮ガスの体積、温度及び圧力のうち、少なくともいずれかに基づいて制御可能に構成する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体電解質を有するガス生成部を備えるガス供給器であって、
前記ガス生成部で生成された濃縮ガスを貯留可能な貯留タンクを備え、
前記貯留タンクは、該貯留タンクから排出される濃縮ガスの排気量を、内部に貯留した濃縮ガスの体積、温度及び圧力のうち、少なくともいずれかに基づいて制御可能に構成される、ガス供給器。
【請求項2】
前記貯留タンクは、前記濃縮ガスの流入口と排気口とを有し、該流入口と該排気口とにそれぞれ少なくとも一つの弁を備え、
前記貯留タンクの流入口または排気口に設けられた弁のうち少なくとも一つを操作することにより、前記貯留タンクの内部に貯留した濃縮ガスの圧力を0.1atm以上150atm以下、前記貯留タンクの排気口から排気される排気ガスの流量を0.1L/分以上100L/分以下の範囲でそれぞれ調節可能に構成される、請求項1に記載のガス供給器。
【請求項3】
前記貯留タンクの排気側に、少なくとも一つの二次タンクをさらに備える、請求項1または2に記載のガス供給器。
【請求項4】
前記二次タンクは、前記濃縮ガスの流入口と排気口とを有し、該流入口と該排気口とにそれぞれ少なくとも一つの弁を備え、
前記二次タンクの流入口または排気口に設けられた弁のうち少なくとも一つを操作することにより、前記二次タンクの内部に貯留した濃縮ガスの圧力を1.0atm以上800atm以下、前記二次タンクの排気口から排気される排気ガスの流量を1.0L/分以上1000L/分以下の範囲でそれぞれ調節可能に構成される、請求項3に記載のガス供給器。
【請求項5】
前記二次タンクは、前記ガス生成部において生じた熱により前記二次タンク内の濃縮ガスの加熱または冷却が可能なように構成される、請求項3または4に記載のガス供給器。
【請求項6】
前記二次タンクは、内部に貯留した濃縮ガスの体積、温度及び圧力のうち、少なくともいずれかに基づいて制御することにより、前記二次タンクの排気口から排気される排気ガスの供給量が調節可能に構成される、請求項3から5のいずれか一項に記載のガス供給器。
【請求項7】
前記ガス生成部は、酸素濃縮器、水素生成器、アンモニア発生器及びメタンガス発生器のいずれかである、請求項1から6のいずれか一項に記載のガス供給器。
【請求項8】
前記ガス生成部が酸素濃縮器であり、
前記貯留タンクは、内部に貯留した濃縮ガスを、該濃縮ガスの体積、温度、圧力及び酸素濃度のうち、少なくともいずれかに基づいて制御可能に構成される、請求項7に記載のガス供給器。
【請求項9】
前記ガス生成部が酸素濃縮器であり、
前記固体電解質は、互いに対向する少なくとも2つの活性化面を有し、
前記活性化面はそれぞれ電極と接続され、
一方の活性化面と接する一方の気体の酸素分圧より、他方の活性化面と接する他方の気体の酸素分圧が高く、
一方の気体及び他方の気体の少なくともいずれかが大気と接続される、請求項7または8に記載のガス供給器。
【請求項10】
前記貯留タンクは、前記ガス生成部において生じた熱により加熱または冷却が可能なように構成される、請求項1から9のいずれか一項に記載のガス供給器。
【請求項11】
前記貯留タンクは、内部に貯留した濃縮ガスの体積、温度及び圧力のうち、少なくともいずれかに基づいて制御することにより、前記貯留タンクの排気口から排気される排気ガスの供給量が調節可能に構成される、請求項1から10のいずれか一項に記載のガス供給器。
【請求項12】
前記固体電解質が、酸化物イオン伝導体若しくはプロトン伝導体を含む酸化物である、請求項1から11のいずれか一項に記載のガス供給器。
【請求項13】
前記固体電解質が、
式(1):A9.3+x[T6.0-yy]O26.0+z(式中、Aは、La、Ce、Y、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Yb、Lu、Be、Mg、Ca、Sr及びBaからなる群から選ばれる一種又は二種以上の元素である。Tは、Si若しくはGe又はその両方を含む元素である。Mは、Mg、Al、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Ga、Y、Zr、Ta、Nb、B、Ge、Zn、Sn、W及びMoからなる群から選ばれる一種又は二種以上の元素である。xは、-1.4以上1.5以下の数である。yは、0.0以上3.0以下の数である。zは、-5.0以上5.2以下の数である。Tのモル数に対するAのモル数の比率は1.3以上3.7以下である。)で表される複合酸化物を含む、請求項1から12のいずれか一項に記載のガス供給器。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか一項に記載のガス供給器に原料ガスを流入させるとともに、前記固体電解質に電圧を印加することでガスを生成する、ガス製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、酸素濃縮器、水素生成器、アンモニア発生器及びメタンガス発生器などのガス供給器およびガス製造方法に関し、特に、固体電解質を有するガス生成部を備えたガス供給器およびガス製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、医療用や産業用などに用いられる、例えば、空気に含まれる酸素を濃縮して酸素濃度の高いガスを生成する酸素濃縮器、純水や水溶液などを電解することで水素濃度の高いガスを生成する水素生成器、窒素と水からアンモニアを合成するアンモニア発生器、二酸化炭素と水からメタンを合成するメタンガス発生器など、固体電解質を利用したガス供給器が知られている(非特許文献1~4)。
【0003】
例えば、酸素濃縮器は、図7に示すように、酸化物イオン伝導体である固体電解質102の対抗する面102a,102bに、それぞれガス透過可能な電極104a,104bが設けられ、この電極104a,104b間に直流電源106から直流電圧が印加可能に構成されたガス生成部100を有している。
【0004】
このようなガス生成部100では、固体電解質102の一方の面102aがガス透過可能な電極104a,104bを介して大気と接触した状態で、電極104a,104b間に直流電圧を印加することで、大気中の酸素が、固体電解質102の一方の面、例えば、面102a側から他方の面102b側に移動することにより、電気化学的に酸素のみを分離することができ、高濃度の酸素ガスを得ることができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Ken WATANABE et al., " Oxygen pumping based on c-axis-oriented lanthanum silicate ceramics: challenge toward low operating temperature", Journal of the Ceramic Society of Japan (2019)
【非特許文献2】D. Grigoriou et al., " The role of the promoting ionic species in electrochemical promotion and in metal-support interactions", Catalysis Today 363 (2021) 122-127
【非特許文献3】Daniel Sastre et al., " Enhanced performance of CH4 dry reforming over La0.9Sr0.1FeO3/YSZ under chemical looping conditions", Fuel 309 (2022) 122122
【非特許文献4】Y. Kobayashi et al., " Electrochemical Synthesis of Ammonia Using Proton Conducting Solid Electrolyte and Ru-doped BaCe0.9Y0.1O3-δ Electrode Catalyst", ECS Transactions, 75 (42) 43-52 (2017)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このようなガス供給器は、医療用や産業用などに用いられることから、十分なガス供給量とともに、安定したガス供給が求められる。しかしながら、上述するような固体電解質を用いたガス生成部では、原理上、生成されるガスの量が限られるため、必要量に対して十分なガスが得られない場合が生じ得る。
【0007】
すなわち、固体電解質を用いたガス供給器では、ガスの必要量に対してガス供給量が不足しがちであり、ガス供給量が不足した場合には、例えば、生産ライン等の速度を制約する必要があった。その結果、ガス供給器が燃焼ガスを供給する場合には、燃焼不足が生じてしまう。また、ガス供給器が酸素濃縮器の場合には、患者へ供給する酸素量が不足するなどの問題が生じてしまう。
【0008】
本発明では、このような現状に鑑み、固体電解質を用いたガス供給器において、十分なガス供給量とともに、安定したガス供給を行うことができるガス供給器およびこのガス供給器を用いたガス製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上述するような従来技術における課題を解決するために発明されたものであって、本発明のガス供給器は、
固体電解質を有するガス生成部を備えるガス供給器であって、
前記ガス生成部で生成された濃縮ガスを貯留可能な貯留タンクを備え、
前記貯留タンクは、該貯留タンクから排出される濃縮ガスの排気量を、内部に貯留した濃縮ガスの体積、温度及び圧力のうち、少なくともいずれかに基づいて制御可能に構成される。
【0010】
このようなガス供給器では、前記貯留タンクは、前記濃縮ガスの流入口と排気口とを有し、該流入口と該排気口とにそれぞれ少なくとも一つの弁を備え、
前記貯留タンクの流入口または排気口に設けられた弁のうち少なくとも一つを操作することにより、前記貯留タンクの内部に貯留した濃縮ガスの圧力を0.1atm以上150atm以下、前記貯留タンクの排気口から排気される排気ガスの流量を0.1L/分以上100L/分以下の範囲でそれぞれ調節可能に構成することができる。
【0011】
また、前記貯留タンクの排気側に、少なくとも一つの二次タンクをさらに備えることができる。
【0012】
また、前記二次タンクは、前記濃縮ガスの流入口と排気口とを有し、該流入口と該排気口とにそれぞれ少なくとも一つの弁を備え、
前記二次タンクの流入口または排気口に設けられた弁のうち少なくとも一つを操作することにより、前記二次タンクの内部に貯留した濃縮ガスの圧力を1.0atm以上800atm以下、前記二次タンクの排気口から排気される排気ガスの流量を1.0L/分以上1000L/分以下の範囲でそれぞれ調節可能に構成することができる。
【0013】
また、前記二次タンクは、前記ガス生成部において生じた熱により前記二次タンク内の濃縮ガスの加熱または冷却が可能なように構成することができる。
【0014】
また、前記二次タンクは、内部に貯留した濃縮ガスの体積、温度及び圧力のうち、少なくともいずれかに基づいて制御することにより、前記二次タンクの排気口から排気される排気ガスの供給量が調節可能に構成することができる。
【0015】
また、前記ガス生成部は、酸素濃縮器、水素生成器、アンモニア発生器及びメタンガス発生器のいずれかとすることができる。
【0016】
また、前記ガス生成部が酸素濃縮器である場合、
前記貯留タンクは、内部に貯留した濃縮ガスを、該濃縮ガスの体積、温度、圧力及び酸素濃度のうち、少なくともいずれかに基づいて制御可能に構成することができる。
【0017】
また、前記ガス生成部が酸素濃縮器である場合、
前記固体電解質は、互いに対向する少なくとも2つの活性化面を有し、
前記活性化面はそれぞれ電極と接続され、
一方の活性化面と接する一方の気体の酸素分圧より、他方の活性化面と接する他方の気体の酸素分圧が高く、
一方の気体及び他方の気体の少なくともいずれかが大気と接続することができる。
【0018】
また、前記貯留タンクは、前記ガス生成部において生じた熱により加熱または冷却が可能なように構成することができる。
【0019】
また、前記貯留タンクは、内部に貯留した濃縮ガスの体積、温度及び圧力のうち、少なくともいずれかに基づいて制御することにより、前記貯留タンクの排気口から排気される排気ガスの供給量が調節可能に構成することができる。
【0020】
また、前記固体電解質が、酸化物イオン伝導体若しくはプロトン伝導体を含む酸化物とすることができる。
【0021】
また、前記固体電解質が、
式(1):A9.3+x[T6.0-yy]O26.0+z(式中、Aは、La、Ce、Y、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Yb、Lu、Be、Mg、Ca、Sr及びBaからなる群から選ばれる一種又は二種以上の元素である。Tは、Si若しくはGe又はその両方を含む元素である。Mは、Mg、Al、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Ga、Y、Zr、Ta、Nb、B、Ge、Zn、Sn、W及びMoからなる群から選ばれる一種又は二種以上の元素である。xは、-1.4以上1.5以下の数である。yは、0.0以上3.0以下の数である。zは、-5.0以上5.2以下の数である。Tのモル数に対するAのモル数の比率は1.3以上3.7以下である。)で表される複合酸化物を含むことができる。
【0022】
また、本発明のガス製造方法は、上述するいずれかのガス供給器に原料ガスを流入させるとともに、前記固体電解質に電圧を印加することでガスを生成する。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、ガス生成部で生成された濃縮ガスを貯留可能な貯留タンクを備えるとともに、貯留タンク内に貯留した濃縮ガスを、濃縮ガスの体積、温度及び圧力のうち、少なくともいずれかに基づいて制御することができ、所望のガスについて十分な供給量を維持しつつ、安定してガス供給を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は、本発明の一つの実施形態におけるガス供給器の構成を説明するための模式図である。
図2図2は、別の実施形態におけるガス供給器の構成を説明するための模式図である。
図3図3は、図2の変形例を示す模式図である。
図4図4は、図2の変形例を示す模式図である。
図5図5は、図2の変形例を示す模式図である。
図6図6は、図2の変形例を示す模式図である。
図7図7は、従来の酸素濃縮器の構成を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態(実施例)を図面に基づいて、より詳細に説明する。
図1は、本発明の一つの実施形態である酸素濃縮器などを用いた場合におけるガス供給器の構成を説明するための模式図である。
なお、本実施形態では、ガス生成部として濃縮した酸素を供給する酸素濃縮器を例として説明するが、本発明は、例えば、水素生成器、アンモニア発生器及びメタンガス発生器などにも適用することが可能である。
【0026】
図1に示すように、本実施形態のガス供給器10は、固体電解質22を有するガス生成部20と、ガス生成部20で生成された濃縮ガスを貯留可能な貯留タンク40と、を備えている。
【0027】
ガス生成部20は、固体電解質22を有しており、この固体電解質22は、互いに対向する少なくとも2つの活性化面22a,22bを有している。活性化面22a,22bには、それぞれ電極24a,24bが接続されている。
【0028】
電極24a,24bは、直流電源26に接続されており、電極24a,24b間に直流電圧を印加可能に構成される。また、電極24a,24bは、固体電解質22と外気とが接触したり、固体電解質22における生成ガスが流通できるように、例えば、多孔質体、金網、エキスパンド形状などが好ましく、酸化物や窒化物を含む板状、層状または膜状の多孔質体がより好ましい。なお、本発明において直流電圧としては、電圧値が一定であるものに限られず、電場の向きは変わらずに電圧値が変動するものであっても構わない。
【0029】
また、ガス生成部20は、ガス取込室28と、ガス取出室30とを備えている。
ガス取込室28は、ガス取込口28aを備えており、ガス取込口28aを介してガス取込室28と大気とが接続される。すなわち、ガス取込室28には、ガス取込口28aを介して大気から空気が取り込まれる。また、ガス取込室28内の気体は、固体電解質22の一方の活性化面22aと接している。
【0030】
ガス取出室30は、ガス取出口30aを備えており、ガス取出口30aは、貯留タンク40と接続するガス供給配管32に接続される。また、ガス取出室30内の気体は、固体電解質22の他方の活性化面22bと接している。
【0031】
本実施形態のようにガス生成部20が酸素濃縮器の場合、固体電解質22の一方の活性化面22bと接する側の気体、すなわち、ガス取出室30内の気体の酸素分圧は、固体電解質22の他方の活性化面22aと接する側の気体、すなわち、ガス取込室28内の気体の酸素分圧よりも高くなっている。すなわち、ガス取込室28内の酸素が、固体電解質22を介してガス取出室30に移動することで、ガス取出室30内の気体の酸素濃度が、大気に接する流入口側よりも高くなっている。
【0032】
なお、本実施形態においては、ガス取出室30はガス取出口30aのみを有しているが、ガス生成部20で得られた酸素の濃度を調節するため、ガス取出室30と大気とを接続する、すなわち、ガス取出室30に大気から空気を取り込むための大気取込口を設けてもよく、この場合、大気取込口にマスフローコントローラーなどの弁を設けることが好ましい。なお、本実施形態と異なり、ガス生成部20が水素生成器、アンモニア発生器及びメタンガス発生器のいずれかである場合には、ガス取出室30から取り出すガスの種類を大気の他、用途に応じ、水素、一酸化炭素、一酸化窒素、窒素やアルゴンなどの不活性ガス、炭化水素系ガスと混合させ、濃度を調整することができる。
【0033】
固体電解質22は、酸化物イオン伝導体若しくはプロトン伝導体を含む酸化物とすることが好ましい。なお、このような酸化物としては、希土類元素若しくはアルカリ土類金属元素を含む酸化物であることが好ましく、具体的には、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)や、ランタンシリケートオキサイド(LSO)、イットリウム添加バリウムジルコネート(BZY)などを挙げることができる。
【0034】
また、固体電解質22としては、金属有機構造体(MOF)であってもよいし、Nafion(登録商標)を用いてもよい。
また、固体電解質22が、式(1):A9.3+x[T6.0-yy]O26.0+z(式中、Aは、La、Ce、Y、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Yb、Lu、Be、Mg、Ca、Sr及びBaからなる群から選ばれる一種又は二種以上の元素である。Tは、Si若しくはGe又はその両方を含む元素である。Mは、Mg、Al、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Ga、Y、Zr、Ta、Nb、B、Ge、Zn、Sn、W及びMoからなる群から選ばれる一種又は二種以上の元素である。xは、-1.4以上1.5以下の数である。yは、0.0以上3.0以下の数である。zは、-5.0以上5.2以下の数である。Tのモル数に対するAのモル数の比率は1.3以上3.7以下である。)で表される複合酸化物を含むこともできる。
【0035】
このように構成されたガス生成部20において、原料ガス(本実施形態においては空気)をガス取込室28に供給し、固体電解質22の一方の活性化面22a側と原料ガスとが接した状態で、電極24a,24bによって固体電解質22に直流電圧を印加することによって、所望のガス(本実施形態においては濃縮酸素)が生成される。
【0036】
貯留タンク40は、ガス供給配管32と接続される流入口42と、貯留タンク40内に貯留した濃縮ガスを排気する排気口44とを有している。流入口42(ガス供給配管32)と排気口44(ガス排気配管46)には、それぞれ少なくとも一つの弁32a,46aを備えている。この弁32a,46aを操作することによって、ガス生成部20から貯留タンク40への濃縮ガスの移動、貯留タンク40から外部への濃縮ガスの移動を制御することができる。なお、このような弁32a,46aとしては、特に限定されるものではないが、例えば、マスフローコントローラーを用いることができる。また、本実施形態においては、流入口42及び排気口44にそれぞれ一つの弁32a,46aを設けているが、流入口42及び排気口44にそれぞれ二つ以上の弁を設けるように構成することもできる。
【0037】
また、貯留タンク40は、図示しないセンサーによって貯留タンク40内の濃縮ガスの体積、温度及び圧力のうち、少なくともいずれかを計測可能に構成される。また、貯留タンク40は、このように計測された貯留タンク40内の濃縮ガスの体積、温度及び圧力のうち、少なくともいずれかに基づいて、貯留タンク40から排出される濃縮ガスの排気量を制御可能に構成される。
【0038】
具体的には、濃縮ガスの体積を制御する場合には、貯留タンク40をシリンジ構造とすることにより、貯留タンク40内部の容積を変更可能に構成すればよい。また、濃縮ガスの温度を制御する場合には、加熱/冷却装置を用いて、濃縮ガスの加熱または冷却をするように構成すればよい。
【0039】
なお、本実施形態では、ガス生成部20において生じた熱を、貯留タンク40内の濃縮ガスに伝える熱伝導機構(図示せず)を備えている。なお、熱伝導機構としては、特に限定されるものではなく、ガス生成部20と貯留タンク40との間で熱交換が可能な既知の熱交換器を用いることができる。
【0040】
また、濃縮ガスの圧力を制御する場合には、上述の弁32a,46aのうち少なくとも一つを操作し、体積又は温度を制御することによって、貯留タンク40内の濃縮ガスの加圧または減圧をするように構成すればよい。
【0041】
なお、貯留タンク40内の濃縮ガスの圧力を制御する場合、濃縮ガスの圧力は0.1atm以上150atm以下となるように制御することが好ましい。また、この場合、貯留タンク40の排気口44から排気される濃縮ガスの流量は0.1L/分以上100L/分以下となるように制御することが好ましい。
【0042】
このように、貯留タンク40内の濃縮ガスの体積や温度、圧力を制御することによって、貯留タンク40から排出される濃縮ガスの排気量を調整することができる。
【0043】
また、本実施形態のようにガス供給器10が酸素濃縮器である場合、貯留タンク40内の濃縮ガスの酸素濃度を計測し、この酸素濃度に基づいて、貯留タンク40内の濃縮ガスの酸素濃度を任意の濃度に制御可能に構成することもできる。
【0044】
なお、貯留タンク40内の濃縮ガスの酸素濃度は、上述の弁32aまたは弁46aの少なくとも一方の弁を制御することによって、調節することができる。例えば、貯留タンク40内を上述の体積制御によって減圧した状態で圧力調整弁41を開け、外気(酸素濃度20.9%)を取り込むことによって、任意の酸素濃度に制御することができる。
【0045】
図2は、別の実施形態におけるガス供給器の構成を説明するための模式図である。
図2に示すガス供給器10は、基本的には、図1に示すガス供給器10と同様な構成であり、同様な構成要素には、同じ符合を付して、その詳細な説明を省略する。
【0046】
本実施形態のガス供給器10では、貯留タンク40の排気側に二次タンク50が接続されている。
二次タンク50は、濃縮ガスの流入口52と排気口54とを有しており、ガス排気配管46が二次タンク50の流入口52と接続されている。また、排気口54には、二次排気配管56が接続されている。
【0047】
二次タンク50の流入口52(ガス排気配管46)及び排気口54(二次排気配管56)には、それぞれ少なくとも一つの弁46a,56aを備えている。この弁46a,56aを操作することによって、貯留タンク40から二次タンク50への濃縮ガスの移動、二次タンク50から外部への濃縮ガスの移動を制御することができる。なお、このような弁46a,56aとしては、特に限定されるものではないが、例えば、マスフローコントローラーを用いることができる。また、本実施形態においては、流入口52及び排気口54にそれぞれ一つの弁46a,56aを設けているが、流入口52及び排気口54にそれぞれ二つ以上の弁を設けるように構成することもできる。
【0048】
また、二次タンク50は、図示しないセンサーによって二次タンク50内の濃縮ガスの体積、温度及び圧力のうち、少なくともいずれかを計測可能に構成される。また、二次タンク50は、このように計測された二次タンク50内の濃縮ガスの体積、温度及び圧力のうち、少なくともいずれかに基づいて、二次タンク50の排気口54から排気される排気ガスの供給量が調節可能に構成される。
【0049】
具体的には、濃縮ガスの体積を制御する場合には、二次タンク50をシリンジ構造とすることにより、二次タンク50内部の容積を変更可能に構成すればよい。また、濃縮ガスの温度を制御する場合には、加熱/冷却装置を用いて、濃縮ガスの加熱または冷却をするように構成すればよい。
【0050】
なお、本実施形態では、ガス生成部20において生じた熱を、二次タンク50内の濃縮ガスに伝える熱伝導機構(図示せず)を備えている。なお、熱伝導機構としては、特に限定されるものではなく、ガス生成部20と二次タンク50との間で熱交換が可能な既知の熱交換器を用いることができる。
【0051】
また、濃縮ガスの圧力を制御する場合には、上述する弁46a,56aのうち少なくとも一つを操作することによって、二次タンク50内の濃縮ガスの加圧または減圧をするように構成すればよい。
【0052】
なお、二次タンク50内の濃縮ガスの圧力を制御する場合、濃縮ガスの圧力は1.0atm以上800atm以下となるように制御することが好ましい。また、この場合、二次タンク50の排気口54から排気される濃縮ガスの流量は1.0L/分以上1000L/分以下となるように制御することが好ましい。
【0053】
なお、本実施形態では、貯留タンク40の排気側に二次タンク50を1つだけ設けた構成としているが、二次タンク50の数はこれに限定されず、例えば、図3に示すように、貯留タンク40の排気側に、複数の二次タンク50a~50cを並列に接続することもできる。この場合、ガス生成部20と貯留タンク40との間、貯留タンク40と各二次タンク50a~50cとの間、各二次タンク50a~50cの排気側に、それぞれ少なくとも一つの弁32a,46a~46c,56a~56cを設けることが好ましい。
【0054】
また、図4に示すように、貯留タンク40の排気側に、複数の二次タンク50a,50bを直列に接続することもできる。この場合、ガス生成部20と貯留タンク40との間、貯留タンク40と二次タンク50aとの間、二次タンク50aと二次タンク50bとの間、二次タンク50bの排気側にそれぞれ少なくとも一つの弁32a,46a,46a’,56aを設けることが好ましい。
【0055】
また、図5に示すように、貯留タンク40の排気側に、直列に接続した複数の二次タンク50a~50gを並列に接続することもできる。この場合、ガス生成部20と貯留タンク40との間、貯留タンク40と各二次タンク50a,50d,50fとの間、各二次タンク50a~50g同士の間、各二次タンク50c,50e,50gの排気側に、それぞれ少なくとも一つの弁32a,46a~46c,46a’~46d’,56a~56cを設けることが好ましい。
【0056】
このように、貯留タンク40の排気側に、複数の二次タンク50を設けることによって、異なる生産ライン等でそれぞれが必要とするガス供給量に調節して供給することが可能となる。
【0057】
また、図6に示すように、複数の貯留タンク40a~40cを並列に接続することもでき、各貯留タンク40a~40cは、それぞれ1つ以上の二次タンク50a~50eが接続されている。
【0058】
このように、複数の貯留タンク40a~40cを設けることによって、多量の酸素ガスを貯蔵したり、もしくは、各貯留タンク40a~40cに酸素濃度の異なるガスを貯蔵するようなこともできる。
また、図6に示すように、貯留タンク40aには、複数の二次タンク50a,50bが直列に接続されるように構成することもできるし、貯留タンク40cのように、複数の二次タンク50d,50eを並列に接続するように構成してもよい。
【0059】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されることはなく、例えば、ガス生成部20の排気側に複数の貯留タンク40のみを並列に設け、二次タンク50を設けないように構成することもできるなど、本発明の目的を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0060】
10 ガス供給器
20 ガス生成部
22 固体電解質
22a 活性化面
22b 活性化面
24a 電極
24b 電極
26 直流電源
28 ガス取込室
28a ガス取込口
30 ガス取出室
30a ガス取出口
32 ガス供給配管
32a 弁
40 貯留タンク
40a~40c 貯留タンク
41 圧力調整弁
42 流入口
44 排気口
46 ガス排気配管
46a~46d 弁
46a’~46d’ 弁
50 二次タンク
52 流入口
54 排気口
56 二次排気配管
56a~56d 弁
100 ガス生成部
102 固体電解質
104a 電極
104b 電極
106 直流電源
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7