(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023146539
(43)【公開日】2023-10-12
(54)【発明の名称】受信装置、受信方法および受信プログラム
(51)【国際特許分類】
H04J 99/00 20090101AFI20231004BHJP
H04L 27/26 20060101ALI20231004BHJP
【FI】
H04J99/00 100
H04L27/26 410
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022053764
(22)【出願日】2022-03-29
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.3GPP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和3年度 総務省「第5世代移動通信システムの更なる高度化に向けた研究開発」総務省委託研究 産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】504133110
【氏名又は名称】国立大学法人電気通信大学
(74)【代理人】
【識別番号】100205350
【弁理士】
【氏名又は名称】狩野 芳正
(74)【代理人】
【識別番号】100117617
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 圭策
(72)【発明者】
【氏名】上田 康平
(72)【発明者】
【氏名】石橋 功至
(57)【要約】
【課題】OFDMを用いたGF-NOMAシステムにおいて、アクティブユーザの検出処理と、通信路の推定処理と、搬送波周波数オフセットの推定処理とを効率よく行う。
【解決手段】通信部(321)は、複数の送信装置(21)から、複数のアンテナ(341)で複数の受信信号を受信する。検出部(322)は、複数の送信装置のうち、複数の受信信号に含まれるパイロット信号を所定の期間中に送信したアクティブユーザ(22)を検出する。推定部(323)は、アクティブユーザのそれぞれの、送信信号の搬送波周波数の基準周波数からのずれを表す搬送波周波数オフセットを、アクティブユーザに基づいて推定する。更新部(324)は、パイロット信号に対する搬送波周波数オフセットの影響を表すパイロット行列を更新する。検出部は、更新後のパイロット行列に基づいてアクティブユーザを改めて検出する。
【選択図】
図5A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
認証を省略したグラントフリー通信で送信信号を送信する複数の送信装置から、複数のアンテナで複数の受信信号を受信する通信部と、
前記複数の送信装置のうち、前記複数の受信信号に含まれるパイロット信号を所定の期間中に送信したアクティブユーザを検出する検出部と、
前記アクティブユーザのそれぞれの、前記送信信号の搬送波周波数の基準周波数からのずれを表す搬送波周波数オフセットを、前記アクティブユーザに基づいて推定する推定部と、
前記パイロット信号に対する前記搬送波周波数オフセットの影響を表すパイロット行列を更新する更新部と、
前記アクティブユーザの集合と、前記搬送波周波数オフセットとを表す情報を外部に出力する出力部と
を備え、
前記検出部は、更新後の前記パイロット行列に基づいて前記アクティブユーザを改めて検出し、
前記通信部は、前記搬送波周波数オフセットの推定値に基づいて、前記複数の受信信号に含まれるデータ信号を復号する
受信装置。
【請求項2】
請求項1に記載の受信装置において、
前記推定部は、前記搬送波周波数オフセットを、改めて検出された前記アクティブユーザに基づいて改めて推定し、
前記更新部は、前記パイロット行列を、改めて推定された前記搬送波周波数オフセットに基づいて改めて更新し、
前記推定部と、前記更新部と、前記検出部とは、前記推定と、前記更新と、前記検出とを、それぞれ、第1の回数にわたって繰り返す
受信装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の受信装置において、
前記推定部は、前記アクティブユーザのそれぞれについて、
前記搬送波周波数オフセットの候補値を含む候補範囲の最小値および最大値を、第1候補値および第2候補値として設定し、
前記搬送波周波数オフセットが前記第1候補値である場合の通信路推定値のノルムを、第1候補ノルムとして算出し、
前記搬送波周波数オフセットが前記第2候補値である場合の通信路推定値のノルムを、第2候補ノルムとして算出し、
前記第1候補ノルムと前記第2候補ノルムとのうち、より大きい方の前記ノルムに対応する前記候補値を、前記搬送波周波数オフセットの前記推定値として設定する
受信装置。
【請求項4】
請求項3に記載の受信装置において、
前記推定部は、
前記搬送波周波数オフセットの前記推定値と、前記第1候補値と前記第2候補値との中間値とを、前記候補範囲の前記最小値および前記最大値として有するように前記候補範囲を改めて設定し、
改めて設定した前記最小値に基づいて、前記第1候補ノルムを改めて算出し、
改めて設定した前記最大値に基づいて、前記第2候補ノルムを改めて算出し、
改めて算出した前記第1候補ノルムおよび前記第2候補ノルムに基づいて、前記搬送波周波数オフセットの前記推定値を改めて設定し、
前記推定部は、前記候補範囲の前記設定と、前記第1候補ノルムの前記算出と、前記第2候補ノルムの前記算出と、前記搬送波周波数オフセットの前記推定値の前記設定とを、それぞれ、第2の回数にわたって繰り返す
受信装置。
【請求項5】
請求項4に記載の受信装置において、
前記推定部は、前記最小値および前記最大値の初期値を、3GPP(Third Generation Partnership Project)の規格を満たすように設定する
受信装置。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の受信装置において、
前記検出部は、
前記複数の送信装置から前記受信装置への通信路を表す通信路行列を、残差行列に基づいて算出し、
前記残差行列を、前記通信路行列に基づいて算出し、
前記アクティブユーザの前記集合を、前記通信路行列と前記残差行列とに基づいて推定する
受信装置。
【請求項7】
請求項6に記載の受信装置において、
前記検出部は、
前記通信路行列の算出と、前記残差行列の算出とを、第3の回数にわたって繰り返し、
前記第3の回数にわたって繰り返して算出した前記通信路行列および前記残差行列に基づいて、前記アクティブユーザの前記集合を推定する
受信装置。
【請求項8】
認証を省略したグラントフリー通信で送信信号を送信する複数の送信装置から、複数のアンテナで複数の受信信号を受信することと、
前記複数の送信装置のうち、前記複数の受信信号に含まれるパイロット信号を所定の期間中に送信したアクティブユーザを検出することと、
前記アクティブユーザのそれぞれの、前記送信信号の搬送波周波数の基準周波数からのずれを表す搬送波周波数オフセットを、前記アクティブユーザに基づいて推定することと、
前記パイロット信号に対する前記搬送波周波数オフセットの影響を表すパイロット行列を更新することと、
前記アクティブユーザの集合と、前記搬送波周波数オフセットとを表す情報を外部に出力することと
を含み、
前記検出することは、
更新後の前記パイロット行列に基づいて前記アクティブユーザを改めて検出すること
を含み、
前記搬送波周波数オフセットの推定値に基づいて、前記複数の受信信号に含まれるデータ信号を復号すること
をさらに含む
受信方法。
【請求項9】
演算装置に実行させることによって所定の処理を実現するための受信プログラムであって、
前記処理は、
認証を省略したグラントフリー通信で送信信号を送信する複数の送信装置から、複数のアンテナで複数の受信信号を受信することと、
前記複数の送信装置のうち、前記複数の受信信号に含まれるパイロット信号を所定の期間中に送信したアクティブユーザを検出することと、
前記アクティブユーザのそれぞれの、前記送信信号の搬送波周波数の基準周波数からのずれを表す搬送波周波数オフセットを、前記アクティブユーザに基づいて推定することと、
前記パイロット信号に対する前記搬送波周波数オフセットの影響を表すパイロット行列を更新することと、
前記アクティブユーザの集合と、前記搬送波周波数オフセットとを表す情報を外部に出力することと
を含み、
前記検出することは、
更新後の前記パイロット行列に基づいて前記アクティブユーザを改めて検出すること
を含み、
前記処理は、
前記搬送波周波数オフセットの推定値に基づいて、前記複数の受信信号に含まれるデータ信号を復号すること
をさらに含む
受信プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は受信装置、受信方法および受信プログラムに関し、例えば、グラントフリーな通信システムに好適に利用できるものである。
【背景技術】
【0002】
近年、第5世代移動通信システム(5G)、その高度化(5G+)、第6世代移動通信システム(6G)などでは、多数の端末との同時接続性と、低遅延性とを同時に満足する技術が要求されている。多数同時接続性と低遅延性とを両立する技術として、GF-NOMA(Grant Free Non-Orthogonal Multiple Access:グラントフリー非直交多元接続)技術が注目されている。さらに、通信路の周波数選択性に対処するために、OFDM(Orthogonal Frequency-Division Multiplexing:直交周波数分割多重方式)を用いたGF-NOMAシステムが検討されている。
【0003】
GF-NOMA技術では、複数の端末のそれぞれが、基地局からの通信許可(グラント)を取得せずに通信を行う。そのため、基地局は、これらの端末のうちの、実際に送信を行ったアクティブユーザ(アクティブ端末)を検出し、アクティブユーザに対応する通信路を推定する必要がある。
【0004】
GF-NOMA技術を実現するためには、通信を行ったアクティブユーザの検出処理と、検出したアクティブユーザに対応する通信路の推定処理と、それぞれのアクティブユーザが送信した送信データを復調するマルチユーザ検出処理とを行う必要がある。
【0005】
上記に関連して、非特許文献1(L.Liu and W.Yu、「Massive connectivity with massive MIMO-Part I: Device activity detection and channel estimation」、IEEE Trans.Signal Process.、vol.66、no.11、pp.2933-2946、2018年6月)には、MMV-AMP(Multiple Measurement Vector Approximate Message Passing)技術を用いて、アクティブユーザの検出処理と、通信路の推定処理とを、同時に行う手法が提案されている。
【0006】
非特許文献1の手法では、前提として、全ての端末と、基地局との間で、搬送波周波数が同期している理想的な状態が仮定されている。しかしながら、多数のIoT(Internet of Things:モノのインターネット)端末を利用する通信システムでは、各端末に比較的安価な水晶発振器が用いられて、各端末と基地局との間で搬送波周波数にオフセット(ずれ)が発生し、そのCFO(Carrier Frequency Offset:搬送波周波数オフセット)による通信品質の劣化が問題となる。
【0007】
上記に関連して、非特許文献2(G.Sun et al.、「Massive grant-free OFDMA with timing and frequency offsets」、IEEE Trans.Wireless Commun.、pp.1-16、2021年)には、OFDMを用いたGF-NOMAシステムにおいて、アクティブユーザの検出処理と、通信路の推定処理と、搬送波周波数オフセットの推定処理とを同時に行う手法が提案されている。
【0008】
しかしながら、非特許文献2の手法では、各端末のパイロット系列を拡張するため、推定次元が搬送周波数オフセットに対して線形に増加することが問題となる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】L.Liu and W.Yu、「Massive connectivity with massive MIMO-Part I: Device activity detection and channel estimation」、IEEE Trans.Signal Process.、vol.66、no.11、pp.2933-2946、2018年6月
【非特許文献2】G.Sun et al.、「Massive grant-free OFDMA with timing and frequency offsets」、IEEE Trans.Wireless Commun.、pp.1-16、2021年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記状況に鑑み、本開示は、OFDMを用いたGF-NOMAシステムにおいて、アクティブユーザの検出処理と、通信路の推定処理と、搬送波周波数オフセットの推定処理とを効率よく行うための受信装置、受信方法および受信プログラムを提供することを目的の1つとする。その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0011】
以下に、(発明を実施するための形態)で使用される番号を用いて、課題を解決するための手段を説明する。これらの番号は、(特許請求の範囲)の記載と(発明を実施するための形態)との対応関係を明らかにするために付加されたものである。ただし、それらの番号を、(特許請求の範囲)に記載されている発明の技術的範囲の解釈に用いてはならない。
【0012】
一実施の形態によれば、受信装置(3)は、通信部(321)と、検出部(322)と、推定部(323)と、更新部(324)と、出力部(325)とを備える。通信部(321)は、認証を省略したグラントフリー通信で送信信号を送信する複数の送信装置(21)から、複数のアンテナ(341)で複数の受信信号を受信する。検出部(322)は、複数の送信装置(21)のうち、複数の受信信号に含まれるパイロット信号を所定の期間中に送信したアクティブユーザ(22)を検出する。推定部(323)は、アクティブユーザ(22)のそれぞれの、送信信号の搬送波周波数の基準周波数からのずれを表す搬送波周波数オフセットを、アクティブユーザ(22)に基づいて推定する。更新部(324)は、パイロット信号に対する搬送波周波数オフセットの影響を表すパイロット行列を更新する。出力部(325)は、アクティブユーザの集合と、搬送波周波数オフセットとを表す情報を外部に出力する。検出部(322)は、更新後のパイロット行列に基づいてアクティブユーザ(22)を改めて検出する。通信部(321)は、搬送波周波数オフセットの推定値に基づいて、複数の受信信号に含まれるデータ信号を復号する。
【0013】
一実施の形態によれば、受信方法は、認証を省略したグラントフリー通信で送信信号を送信する複数の送信装置(21)から、複数のアンテナ(341)で複数の受信信号を受信すること(S01)と、複数の送信装置(21)のうち、複数の受信信号に含まれるパイロット信号を所定の期間中に送信したアクティブユーザ(22)を検出すること(S03、S06)と、アクティブユーザ(22)のそれぞれの、送信信号の搬送波周波数の基準周波数からのずれを表す搬送波周波数オフセットを、アクティブユーザ(22)に基づいて推定すること(S04)と、パイロット信号に対する搬送波周波数オフセットの影響を表すパイロット行列を更新すること(S05)と、アクティブユーザ(22)の集合と、搬送波周波数オフセットとを表す情報を外部に出力すること(S09)とを含む。検出すること(S03、S06)は、更新後のパイロット行列に基づいてアクティブユーザ(22)を改めて検出すること(S06)を含む。受信方法は、搬送波周波数オフセットの推定値に基づいて、複数の受信信号に含まれるデータ信号を復号することをさらに含む。
【0014】
一実施の形態によれば、受信プログラムは、演算装置に実行させることによって所定の処理を実現するためのものである。この処理は、認証を省略したグラントフリー通信で送信信号を送信する複数の送信装置(21)から、複数のアンテナ(341)で複数の受信信号を受信すること(S01)と、複数の送信装置(21)のうち、複数の受信信号に含まれるパイロット信号を所定の期間中に送信したアクティブユーザ(22)を検出すること(S03、S06)と、アクティブユーザ(22)のそれぞれの、送信信号の搬送波周波数の基準周波数からのずれを表す搬送波周波数オフセットを、アクティブユーザ(22)に基づいて推定すること(S04)と、パイロット信号に対する搬送波周波数オフセットの影響を表すパイロット行列を更新すること(S05)と、アクティブユーザ(22)の集合と、搬送波周波数オフセットとを表す情報を外部に出力すること(S09)とを含む。検出すること(S03、S06)は、更新後のパイロット行列に基づいてアクティブユーザ(22)を改めて検出すること(S06)を含む。処理は、搬送波周波数オフセットの推定値に基づいて、複数の受信信号に含まれるデータ信号を復号することをさらに含む。
【発明の効果】
【0015】
一実施の形態によれば、アクティブユーザの検出処理と、通信路の推定処理と、搬送波周波数オフセットの推定処理とを効率よく行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、一実施の形態による通信システムの一構成例を示す図である。
【
図2】
図2は、一実施の形態による基地局の一構成例を示す図である。
【
図3】
図3は、一実施の形態による送信信号の一構成例を示す図である。
【
図4】
図4は、一実施の形態においてモデル化された受信信号の一構成例を示す図である。
【
図5A】
図5Aは、一実施の形態による通信方法の処理の一例を示すフローチャートである。
【
図5B】
図5Bは、一実施の形態による通信方法の処理の一例を示すフローチャートである。
【
図5C】
図5Cは、一実施の形態による通信方法の処理の一例を示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、一実施の形態において受信信号を拡張パイロット行列と、拡張通信路行列の推定値とを用いて表す式を概略的に示す図である。
【
図7】
図7は、一実施の形態においてCFOの候補範囲を更新するために用いる二分法について説明するための図である。
【
図8】
図8は、一実施の形態による受信方法の性能についてコンピュータシミュレーションを行った結果を示すグラフである。
【
図9】
図9は、一実施の形態による受信方法の性能についてコンピュータシミュレーションを行った結果を示すグラフである。
【
図10】
図10は、一実施の形態による受信方法の性能についてコンピュータシミュレーションを行った結果を示すグラフである。
【
図11】
図11は、一実施の形態による受信方法の性能についてコンピュータシミュレーションを行った結果を示すグラフである。
【
図12】
図12は、一実施の形態による受信方法の性能についてコンピュータシミュレーションを行った結果を示すグラフである。
【
図13】
図13は、一実施の形態による受信方法の性能についてコンピュータシミュレーションを行った結果を示すグラフである。
【
図14】
図14は、一実施の形態による受信方法の性能についてコンピュータシミュレーションを行った結果を示すグラフである。
【
図15】
図15は、一実施の形態による受信方法の性能についてコンピュータシミュレーションを行った結果を示すグラフである。
【
図16】
図16は、一実施の形態による受信方法の性能についてコンピュータシミュレーションを行った結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
添付図面を参照して、本開示による受信装置、受信方法および受信プログラムを実施するための形態を以下に説明する。
【0018】
(実施の形態)
図1に示すように、一実施の形態による通信システム1は、複数の送信端末としてのユーザ21と、受信装置としての基地局3とを含む。それぞれのユーザ21は、OFDM(Orthogonal Frequency-Division Multiplexing:直交周波数分割多重方式)を用いるGF-NOMA(Grant Free Non-Orthogonal Multiple Access:グラントフリー非直交多元接続)システムによって、基地局3からの通信許可(グラント)を取得せずに、送信信号を基地局3へ送信する。
【0019】
一例として、ユーザ21の総数をNと置く。N台のユーザ21のうち、ある期間において基地局3へ送信信号を送信したユーザ21を、アクティブユーザ22と呼ぶ。一例として、アクティブユーザ22の総数をKと置く。基地局3は、複数のアンテナ341を備えている。一例として、アンテナ341の総数をMと置く。基地局3は、M本のアンテナ341のそれぞれを介して、K台のアクティブユーザ22から送信された送信信号を、受信信号として受信する。
【0020】
図2に示すように、一実施の形態による基地局3は、例えば、コンピュータとして構成されてもよい。
図2の例において、基地局3は、バス31と、演算装置32と、記憶装置33と、通信装置34と、入出力装置35とを備える。バス31は、演算装置32、記憶装置33、通信装置34および入出力装置35を、相互に通信可能に接続するように構成されてもよい。
【0021】
演算装置32は、通信部321と、検出部322と、推定部323と、更新部324と、出力部325とを備える。記憶装置33は、受信プログラムを記憶する受信プログラム記憶部331を備える。演算装置32は、受信プログラムを実行することによって、通信部321、検出部322、推定部323、更新部324および出力部325の処理を実現する。通信部321、検出部322、推定部323、更新部324および出力部325は、それぞれ、演算装置32および記憶装置33が協働して処理を実現する仮想的な機能ブロックである。通信部321、検出部322、推定部323、更新部324および出力部325が実現する処理の詳細については、後述する。
【0022】
受信プログラムは、記録媒体330から読み出されて受信プログラム記憶部331に格納されてもよい。記録媒体330は、非一時的で有形の媒体(non-transitory and tangible media)であってもよい。
【0023】
通信装置34は、複数のアンテナ341を備える。複数のアンテナ341のそれぞれは、複数のアクティブユーザ22から送信された送信信号を、受信信号として受信する。通信装置34は、複数のアンテナ341がそれぞれ受信した複数の受信信号を処理する。
【0024】
通信装置34は、さらに、図示しない別の通信装置との間で、無線通信および/または有線通信を行ってもよい。受信プログラムは、通信装置34を介して外部から受信されて受信プログラム記憶部331に格納されてもよい。
【0025】
入出力装置35は、使用者に情報を出力し、使用者が入力する操作を受け付ける。一例として、入出力装置35は、画像を出力する表示装置、音声を出力するスピーカー、音声入力を受け付けるマイクロフォン、押下操作を受け付けるボタン、キー入力操作を受け付けるキーボード、タッチ操作を受け付けるとともに画像の出力を行うタッチパネルなどを含む。
【0026】
図3を参照して、一実施の形態による送信信号の一構成例について説明する。
図3において、横軸は時間を表し、縦軸は周波数を表す。時間は、所定の期間ごとに分割されており、周波数は、所定の周波数帯域ごとに分割されている。1つの期間と、1つの周波数帯域との組み合わせを、便宜上、1つの通信リソース41と呼ぶ。
【0027】
それぞれのアクティブユーザ22は、1つの通信リソース41を用いて、1つのOFDMシンボルを含む送信信号を送信する。一実施の形態によるGF-NOMAの通信システム1では、所定の範囲に含まれるNc個のサブキャリアが送信信号のOFDMシンボルに利用可能である。
【0028】
アクティブユーザ22が送信する送信信号は、所望のデータを送信するためのデータ信号であってもよいし、基地局3が求める情報を送信するためのパイロット信号であってもよい。通信リソース41のうちの、データ信号用リソース42およびパイロット信号リソース43の配置は、予め決定されている。
【0029】
一実施の形態において、CFO(Carrier Frequency Offset:搬送波周波数オフセット)の影響を、以下のようにモデル化する。まず、各ユーザ21のCFOが、3GPP(Third Generation Partnership Project)の規格を満たす範囲に含まれると仮定する。3GPPの規格では、各ユーザのCFOを±0.1ppm以内に抑えることが要求されている。次に、各ユーザ21のCFOの値を、一様分布に従う確率変数としてモデル化する。
【0030】
より詳細には、各ユーザ21のCFOを、以下の「数1」式を満たすものとしてモデル化する。
【0031】
【数1】
ここで、「ε
n」は、n番目のユーザ21のCFOを表す。「ε
max」は、3GPPの規格で許容されるCFOの最大値を表す。
【0032】
一実施の形態において、CFOによる位相シフト行列を、以下の「数2」式のようにモデル化する。
【0033】
【数2】
ここで、「Λ
εn
t」(正確には、「n」は「ε」の下付きの添字である)は、n番目のユーザ21がt番目のOFDMシンボルを送信するときのCFOによる位相シフト行列を表す。「φ
t」は、t番目のOFDMシンボルより前のOFDMシンボルからの累積位相シフトを表す。「ω」は、CFOによる位相シフトの角周波数を表す。「N
c」は、サブキャリア数を表す。
【0034】
上記の「数2」式のうち、累積位相シフトφtは、以下の「数3」式のように表される。
【0035】
【数3】
ここで、「φ
t」は、前のOFDMシンボルからの累積位相シフトを表す。「ω」は、CFOによる位相シフトの角周波数を表す。「N
CP」は、サイクリックプレフィックス長を表す。
【0036】
上記の「数2」式および「数3」式のうち、角周波数ωは、以下の「数4」式のように表される。
【0037】
【数4】
ここで、「ω」は、CFOによる位相シフトの角周波数を表す。「ε
n」は、n番目のユーザ21のCFOを表す。「N
c」は、サブキャリア数を表す。
【0038】
一実施の形態において、周波数領域での受信信号は、以下の「数5」式のように表される。
【0039】
【数5】
ここで、「Y
t」は、t番目のOFDMシンボルに対応する受信信号を表す。「n」は、注目しているユーザ21の番号であり、1以上かつN以下の整数である。「N」は、ユーザ21の総数を表す。「ξ
n」は、n番目のユーザ21のアクティブ状態を表す二値変数であり、n番目のユーザ21がアクティブユーザ22である場合は1に等しく、その他の場合は0に等しい。「W
s」は、S行N
c列の複素数行列であり、DFT(Discrete Fourier Transform:離散フーリエ変換)行列からパイロットサブキャリアに対応する周波数の部分を抽出した部分行列を表す。「S」は、パイロットサブキャリア数を表す。「N
c」は、サブキャリア数を表す。「Λ
εn
t」(正確には、「n」は「ε」の下付きの添字である)は、n番目のユーザ21がt番目のOFDMシンボルを送信するときのCFOによる位相シフト行列を表す。「x
n
t」は、周波数領域におけるパイロット行列の、n番目のユーザ21に対応する列ベクトルを表すS行1列の複素数行列である。「h
n」は、n番目のユーザ21と基地局3との間の通信路ベクトルを表す。「Z
t」は、t番目のOFDMシンボルに対応する雑音を表すL行M列の複素数行列であり、その要素のそれぞれが平均0分散σ
z
2の円対称複素ガウス分布に従う。「σ
z
2」は、雑音分散を表す。「P(ε
n)
t」は、CFOの影響を表す行列である。「ε
n」は、n番目のユーザ21のCFOを表す。
【0040】
OFDMシンボルの総数がGであるとき、これらのOFDMシンボル全体での受信信号は、以下の「数6」式および「数7」式のように表される。
【0041】
【0042】
【数7】
ここで、「Y」は、受信信号を表す。「X」は、L行N列の複素数行列であり、等価パイロット行列を表す。「L」は、受信信号に含まれるパイロット信号の総数である。「N」は、ユーザ21の総数を表す。「H」は、N行M列の複素数行列であり、等価通信路行列を表す。「M」は、基地局3のアンテナ341の総数を表す。「Z」は、雑音を表すL行M列の複素数行列であり、各要素が平均0分散σ
z
2の円対称複素ガウス分布に従う。「σ
z
2」は、雑音分散を表す。
【0043】
上記の「数7」式のうち、等価パイロット行列Xは、以下の「数8」式のように表される。
【0044】
【数8】
ここで、「X」は、等価パイロット行列を表す。「P(ε
n)」は、n番目のユーザ21におけるCFOの影響を表す。「ε
n」は、n番目のユーザ21のCFOを表す。なお、「n」は1以上かつN以下の整数を表す。
【0045】
上記の「数8」のうち、CFOの影響P(εn)は、以下の「数9」式のように表される。
【0046】
【数9】
ここで、「P(ε
n)」は、n番目のユーザ21におけるCFOの影響を表す。「P
ti(ε
n)」(正確には、「i」は「t」の下付き添字である。)は、n番目のユーザ21が、t
i番目のOFDMシンボルを送信するときの、CFOの影響を表す。「i」は、OFDMシンボルの番号を表し、1以上かつG以下の整数である。「ε
n」は、n番目のユーザ21のCFOを表す。
【0047】
図4を参照して、一実施の形態においてモデル化された受信信号の一構成例について説明する。
図4において、行列Yは、受信信号を表すL行M列の複素数行列である。Lは、受信信号に含まれるパイロット信号の総数であり、Mは、通信装置34が備えるアンテナ341の総数である。行列Xは、CFOの影響を含むパイロット行列であり、L行N列の複素数行列である。Nは、通信システム1に含まれるユーザ21の総数である。行列Hは、通信路行列であり、N行M列の複素数行列である。通信路行列Hが有するN個の行ベクトルは、N台のユーザ21にそれぞれ対応する。行列Hに含まれるN個の行ベクトルのうち、K台のアクティブユーザ22にそれぞれ対応するK個の行ベクトルは、対応するアクティブユーザ22が送信信号を送信するので、非ゼロの要素を有する。反対に、通信路行列Hに含まれるN個の行ベクトルのうち、K台のアクティブユーザ22以外の、N-K台の非アクティブなユーザ21にそれぞれ対応するN-K個の行ベクトルは、対応するユーザ21が送信信号を送信しないので、ゼロの要素を有する。行列Zは、雑音を表すL行M列の複素数行列である。
【0048】
図5A、
図5Bおよび
図5Cのフローチャートを参照して、一実施の形態による受信方法の処理の一例について説明する。
図5Bは、
図5Aのフローチャートのうち、後述するステップS03およびS06の処理を詳細に説明するためのフローチャートである。
図5Cは、
図5Aのフローチャートのうち、後述するステップS04の処理を詳細に説明するためのフローチャートである。なお、一実施の形態による受信プログラムは、演算装置32に実行させることによって、
図5A、
図5Bおよび
図5Cのフローチャートの処理を実現するように構成されてもよい。
【0049】
【0050】
図5AのステップS01において、基地局3の通信部321が、受信信号を受信する。より詳細には、通信部321は、基地局3の通信装置34を制御して、N台のユーザ21のうちのK台のアクティブユーザ22が送信した送信信号を、M台のアンテナ341によって、受信信号として受信する。受信信号は、記憶装置33に格納されてもよい。
【0051】
ステップS01の後、
図5AのステップS02が実行される。ステップS02において、基地局3の推定部323が、第1のカウンタ変数を初期化する。第1のカウンタ変数は、後述するステップS03、S04、S05、S06およびS07の繰り返し処理を管理するための変数である。初期化された第1のカウンタ変数は、例えば、1である。
【0052】
ステップS02の後、
図5AのステップS03が実行される。ステップS03において、基地局3の検出部322が、アクティブユーザ22を検出する。一実施の形態では、MMV-AMP(Multiple Measurement Vector Approximate Message Passing)技術を用いてアクティブユーザ22の検出を行う。
【0053】
図5Bのフローチャートを参照して、
図5AのステップS03の具体的な処理について説明する。
図5AのステップS03が開始すると、
図5BのステップS11が実行される。
【0054】
ステップS11において、基地局3の検出部322が、第2のカウンタ変数を初期化する。第2のカウンタ変数は、後述するステップS12、S13およびS14を繰り返す回数を管理するための変数である。第2のカウンタ変数の初期値は、例えば、0である。
【0055】
ステップS11の後、
図5BのステップS12が実行される。ステップS12において、基地局3の検出部322が、通信路行列Hを更新する。通信路行列Hの各要素は、以下の「数10」式のように算出される。
【0056】
【数10】
ここで、「h^
n
(m+1)」(正しくは、ハット記号「^」は「h」の上にある)は、今回のm+1回目に更新された、通信路行列Hの、n番目のユーザ21に対応する行ベクトルの推定値である。「n」は、注目しているユーザ21の番号であり、1以上かつN以下の整数である。「m」は、第2のカウンタ変数である。「η
m,n」は、前回のm回目に算出された、n番目のユーザ21に対応する雑音除去器である。「R
(m)」は、前回のm回目に更新された残差行列である。「x^
n」(正しくは、ハット記号「^」は「x」の上にある)は、パイロット行列Xの、n番目のユーザ21に対応する列ベクトルの更新値である。ただし、更新値x^nを用いるのは、後述する
図5AのステップS06の実行時に
図5BのステップS12を実行するときに限られ、
図5AのステップS03を実行中に
図5BのステップS12を実行するときは、更新値x^
nの代わりの初期値x
nとして、基地局3で元々知っているパイロット系列を用いる。「h^
n
(m)」(正しくは、ハット記号「^」は「h」の上にある)は、前回のm回目に更新された通信路行列Hの、n番目のユーザ21に対応する行ベクトルの推定値である。
【0057】
ただし、
図5AのステップS03を一度実行する間に、
図5BのステップS12を最初に実行する、第2のカウンタ変数mが初期値に等しい状態においては、上記の「数10」式における「前回」の各値の代わりに、各値の初期値を使用する。各値の初期値は、後述する
図5AのステップS04で推定するCFO(Carrier Frequency Offset:搬送波周波数オフセット)の影響を無視した場合に得られる値である。CFOとは、各ユーザ21と基地局3との間で発生する搬送波周波数のオフセット(ずれ)である。
【0058】
ステップS12の後、
図5BのステップS13が実行される。ステップS13において、基地局3の検出部322が、残差行列Rを更新する。残差行列Rは、以下の「数11」式のように算出される。
【0059】
【数11】
ここで、「R
(m+1)」は、今回のm+1回目に更新された残差行列である。「Y」は、受信信号を表す行列である。「X^」(正しくは、ハット記号「^」は「X」の上にある)は、後述するCFOの推定値を用いて更新されたパイロット行列を表す。ただし、
図5AのステップS03を実行中に
図5BのステップS13を実行するときは、このパイロット行列X^の代わりに、基地局3で元々知っているパイロット行列Xを用いる。「m」は、第2のカウンタ変数である。「N」は、ユーザ21の総数を表す。「L」は、受信信号に含まれるパイロット信号の総数である。「R
(m)」は、前回のm回目に更新された残差行列である。「n」は、注目しているユーザ21の番号であり、1以上かつN以下の整数である。「η’
m,n」は、前回のm回目に算出された、n番目のユーザ21に対応する雑音除去関数の一次微分である。「x^
n」(正しくは、ハット記号「^」は「x」の上にある)は、後述するCFOの推定値を用いて更新されたパイロット行列Xの、n番目のユーザ21に対応する列ベクトルである。「h^
n
(m)」(正しくは、ハット記号「^」は「h」の上にある)は、前回のm回目に更新された通信路行列Hの、n番目のユーザ21に対応する行ベクトルの推定値である。
【0060】
ステップS13の後、
図5BのステップS14が実行される。ステップS14において、基地局3の検出部322が、第2のカウンタ変数をインクリメントする。
【0061】
ステップS14の後、
図5BのステップS15が実行される。ステップS15において、基地局3の検出部322が、第2のカウンタ変数が閾値に達したか否かを判定する。第2のカウンタ変数が閾値に達していない場合(No)、処理は
図5BのステップS12へ戻る。反対に、第2のカウンタ変数が閾値に達している場合(Yes)、処理は
図5BのステップS16へ進む。
【0062】
ステップS16において、基地局3の検出部322が、アクティブユーザ22を検出する。より詳細には、ステップS12で更新された通信路行列Hの推定値と、ステップS13で更新された残差行列Rの推定値とに基づいて、以下の「数12」式の条件を満たすユーザ21の集合を、アクティブユーザ22の集合として検出する。
【0063】
【数12】
ここで、「A^」(正しくは、ハット記号「^」は「A」の上にある)は、推定されたアクティブユーザ22の集合を表す。「n」は、注目しているユーザ21の番号であり、1以上かつN以下の整数である。「R
(m)」は、前回のm回目に更新された残差行列である。「x^
n」(正しくは、ハット記号「^」は「x」の上にある)は、後述するCFOの推定値を用いて更新されたパイロット行列Xの、n番目のユーザ21に対応する列ベクトルである。「h^
n
(m)」(正しくは、ハット記号「^」は「h」の上にある)は、前回のm回目に更新された通信路行列Hの、n番目のユーザ21に対応する行ベクトルの推定値である。「θ
m,n」は、通信システム1の設計に合わせて適宜に設定された閾値である。
【0064】
ステップS16が終了すると、
図5Bの処理は終了し、
図5AのステップS03は終了し、処理は
図5AのステップS04へ進む。
【0065】
図5AのステップS04において、基地局3の推定部323が、ステップS03で検出したアクティブユーザ22に基づいて、CFOを推定する。ここで、一実施の形態では、ステップS03におけるアクティブユーザ22の検出と、ステップS04におけるCFOの推定とを、個別に行うことに注目されたい。ただし、CFOの推定値が得られていない最初の段階で実行されるステップS03は、アクティブユーザ22を大まかに絞り込む処理である。
【0066】
図5Cのフローチャートを参照して、
図5AのステップS04の具体的な処理について説明する。
図5AのステップS04が開始すると、
図5CのステップS21が実行される。
【0067】
ステップS21において、基地局3の推定部323が、第3のカウンタ変数を初期化する。第3のカウンタ変数は、後述するステップS22、S23、S24、S25およびS26を繰り返す回数を管理するための変数である。第3のカウンタ変数の初期値は、例えば、1である。
【0068】
ステップS21において、基地局3の推定部323は、さらに、後述するCFOの第1候補値および第2候補値を初期化する。一例として、CFOの第1候補値の初期値は、上記の「数1」式に示したように、3GPPの規格を満たす範囲の最小値「-εmax」である。同様に、CFOの第2候補値の初期値は、3GPPの規格を満たす範囲の最大値「εmax」である。
【0069】
ステップS21の後、
図5CのステップS22が実行される。ステップS22において、基地局3の推定部323が、アクティブユーザ22の拡張パイロット行列を更新する。拡張パイロット行列は、ユーザ21全体に対応するパイロット行列Xのうち、アクティブユーザ22に対応する列ベクトルを抽出し、さらに、抽出した列ベクトルのそれぞれを、2つの列ベクトルに置き換えることで得られる。置き換えた2つの列ベクトルのうち、一方はCFOの第1候補値に対応し、他方はCFOの第2候補値に対応する。CFOの第1候補値および第2候補値は、それぞれ、その時点におけるCFOの候補範囲の最小値および最大値である。拡張通信路行列の初期値は、CFOの第1候補値および第2候補値の初期値に基づいて算出される。その後の、CFOの第1候補値および第2候補値を更新する処理については、後述する。拡張パイロット行列は、以下の「数13」式のように表される。
【0070】
【数13】
ここで、「X
b」は、拡張パイロット行列を表す。「P(ε
n1,1
(i))」(正確には、「n1」の「1」は「n」の下付き添字である)は、n
1番目のアクティブユーザ22の、第3のカウンタ変数の値がiであるときの、CFOがその候補範囲の最小値に等しい場合の影響を表す。「x
n1」(正確には、「1」は「n」の下付き添字である)は、周波数領域におけるパイロット行列の、n
1番目のアクティブユーザ22に対応する列ベクトルを表す。「P(ε
n1,2
(i))」(正確には、「n1」の「1」は「n」の下付き添字である)は、n
1番目のアクティブユーザ22の、第3のカウンタ変数の値がiであるときの、CFOがその候補範囲の最大値に等しい場合の影響を表す。「P(ε
nK^,1
(i))」(正確には、「nK^」の「K^」は「n」の下付き添字であり、ハット記号「^」は「K」の上にある)は、n
K^(正確には、ハット記号「^」は「K」の上にある)番目のアクティブユーザ22の、第3のカウンタ変数の値がiであるときの、CFOがその候補範囲の最小値に等しい場合の影響を表す。「x
nK^」(正確には、「K^」は「n」の下付き添字であり、ハット記号「^」は「K」の上にある)は、周波数領域におけるパイロット行列の、n
K^(正確には、ハット記号「^」は「K」の上にある)番目のアクティブユーザ22に対応する列ベクトルを表す。「P(ε
nK^,2
(i))」(正確には、「nK^」の「K^」は「n」の下付き添字であり、ハット記号「^」は「K」の上にある)は、n
K^(正確には、ハット記号「^」は「K」の上にある)番目のアクティブユーザ22の、第3のカウンタ変数の値がiであるときの、CFOがその候補範囲の最大値に等しい場合の影響を表す。
【0071】
受信信号行列Yは、拡張パイロット行列Xbを用いて、以下の「数14」式のように表される。
【0072】
【数14】
ここで、「Y」は、受信信号を表す。「X
b」は、拡張パイロットを表す。「H
b」は、後述する拡張通信路を表し、2K^(正確には、ハット記号「^」は「K」の上にある)行M列の複素数行列である。「Z」は、雑音行列を表す。
【0073】
ステップS22の後、
図5CのステップS23が実行される。ステップS23において、基地局3の推定部323が、アクティブユーザ22の拡張通信路行列を更新する。拡張通信路行列は、ステップS22で求めた拡張パイロット行列Xbの場合と同様に、通信路行列Hのうち、アクティブユーザ22に対応する行ベクトルを抽出し、さらに、抽出した行ベクトルのそれぞれを、CFOの第1候補値および第2候補値にそれぞれ対応する2つの行ベクトルに置き換えることで得られる。拡張通信路行列は、MMSE(Minimum Mean Square Error:最小平均二乗誤差)推定を利用することにより、以下の「数15」式のように推定される。
【0074】
【数15】
ここで、「H^
b」(正確には、ハット記号「^」は「H」の上にある)は、拡張通信路行列推定値を表す。「X
b」は、拡張パイロットを表す。「σ
2」は、雑音分散を表す。「I
L」は、L行L列の単位行列を表す。「Y」は、受信信号を表す。
【0075】
受信信号行列Yを、拡張パイロット行列X
bと、拡張通信路行列の推定値H^
b(正確には、ハット記号「^」は「H」の上にある)とを用いて表す式を
図6に示す。
図6の例において、拡張通信路行列の推定値H^
b(正確には、ハット記号「^」は「H」の上にある)は、アクティブユーザ22のそれぞれについて、CFOの候補範囲の最小値(ε
n1,1
(i)など)および最大値最小値(ε
n1,2
(i)など)にそれぞれ対応する2つの行ベクトルを有する。
【0076】
ステップS23の後、
図5CのステップS24が実行される。ステップS24において、基地局3の推定部323が、CFOの推定値を選択する。より詳細には、まず、推定部323が、拡張通信路行列の、それぞれのアクティブユーザ22に対応する2つの要素のノルムを算出する。次に、推定部323は、それぞれのアクティブユーザ22について、算出した2つのノルムのうち、より大きい方のノルムを選択する。さらに、推定部323は、それぞれのアクティブユーザ22について、CFOの候補範囲の最小値および最大値のうち、選択したノルムに対応する方を、CFOの推定値として選択する。
【0077】
ステップS24の後、
図5CのステップS25が実行される。ステップS25において、基地局3の推定部323が、CFOの候補範囲を更新する。より詳細には、推定部323が、二分法を用いて、CFOの推定値を含む候補範囲を狭める。推定部323は、まず、現状のCFOの候補範囲の最小値および最大値の中間値を算出する。推定部323は、次に、算出した中間値と、ステップS24で選択したCFOの候補値との間の範囲を、CFOの新しい候補範囲に設定する。このとき、ステップS24で選択したCFOの候補値より中間値の方が小さい場合は、選択した候補値および中間値を、それぞれ、CFOの新しい候補範囲の最小値および最大値に設定する。反対の場合には、選択した候補値および中間値を、それぞれ、CFOの新しい候補範囲の最大値および最小値に設定する。
【0078】
図7を参照して、CFOの候補範囲を更新するために用いる二分法について説明する。
図7の例に示すように、ある時点での、CFOの候補範囲の最小値および最大値が、それぞれ、ε^
n,1
(1)およびε^
n,2
(1)であり、ステップS24において最大値ε^
n,2
(1)の方が選択された場合、CFOの新しい候補範囲の最小値ε^
n,1
(2)は、ε^
n,1
(1)およびε^
n,2
(1)の中間値ε^
n,3
(1)に設定され、CFOの新しい候補範囲の最大値ε^
n,2
(2)は、ε^
n,2
(1)に設定される。ここで、正確には、ハット記号「^」は「ε」の上にある。
【0079】
ステップS25の後、
図5CのステップS26が実行される。ステップS26において、基地局3の推定部323が、第3のカウンタ変数をインクリメントする。
【0080】
ステップS26の後、
図5CのステップS27が実行される。ステップS27において、基地局3の推定部323が、第3のカウンタ変数が閾値に達したか否かを判定する。第3のカウンタ変数が閾値に達していない場合(No)、処理は
図5CのステップS22へ戻る。反対に、第3のカウンタ変数が閾値に達している場合(Yes)、
図5Cの処理は終了し、
図5AのステップS04も終了し、処理は
図5AのステップS05へ進む。
【0081】
図5AのステップS05において、基地局3の更新部324が、CFOの推定値に基づいてパイロット系列を更新する。更新されたパイロット系列を表すパイロット行列X^(正確には、ハット記号「^」は「X」の上にある)は、以下の「数16」式のように表される。
【0082】
【数16】
ここで、「X^」(正確には、ハット記号「^」は「X」の上にある)は、更新したパイロット行列を表す。「P(ε^
1)」(正確には、ハット記号「^」は「ε」の上にある)は、1番目のユーザ21に対応する、CFOの影響を表す行列である。「ε^
1」は、1番目のユーザ21のCFOの推定値を表す。「x
1」は、周波数領域におけるパイロット行列Xの、1番目のユーザ21に対応する列ベクトルを表す。「P(ε^
N)」(正確には、ハット記号「^」は「ε」の上にある)は、N番目のユーザ21に対応する、CFOの影響を表す行列である。「ε^
N」は、N番目のユーザ21のCFOの推定値を表す。「x
N」は、周波数領域におけるパイロット行列Xの、N番目のユーザ21に対応する列ベクトルを表す。
【0083】
ステップS05の後、
図5AのステップS06が実行される。ステップS06において、基地局3の検出部322が、更新したパイロット系列に基づいてアクティブユーザ22を検出する。ステップS06の処理は、
図5AのステップS03の処理と同様に、ただし
図5AのステップS05で更新したパイロット系列を用いて、改めて行われる。
【0084】
ステップS06の後、
図5AのステップS07が実行される。ステップS07において、基地局3の推定部323が、第1のカウンタ変数をインクリメントする。
【0085】
ステップS07の後、
図5AのステップS08が実行される。ステップS08において、基地局3の推定部323が、第1のカウンタ変数が閾値に達したか否かを判定する。第1のカウンタ変数が閾値に達していない場合(No)、処理は
図5AのステップS04へ戻る。反対に、第1のカウンタ変数が閾値に達している場合(Yes)、処理は
図5AのステップS09へ進む。ここで、第1のカウンタ変数が閾値に達するまで、ステップS04におけるCFOの推定と、ステップS06におけるアクティブユーザ22の検出とが、個別に、かつ、交互に繰り返して行われることに注目されたい。
【0086】
図5AのステップS09において、基地局3の出力部325は、最後に検出したアクティブユーザ22の集合と、最後に推定したCFOとを表す情報を、外部に出力する。より詳細には、出力部325は、入出力装置35を制御して、この情報を外部に出力してもよい。もしくは、出力部325は、通信装置34を制御して、この情報を外部に送信してもよい。
【0087】
ステップS09が終了すると、
図5Aの処理は終了する。基地局3の通信部321は、搬送波周波数オフセットの推定値と、通信路推定の結果とに基づいて、複数の受信信号に含まれるデータ信号を復号してもよい。
【0088】
以上に説明したように、一実施の形態によれば、アクティブユーザ22の検出処理および通信路の推定処理と、搬送波周波数オフセットの推定処理とを、個別かつ交互に行うことによって、効率よく行うことができる。
【0089】
(変形例)
上記の実施の形態による構成では、
図5AのステップS03および
図5Bの各ステップにおいて、アクティブユーザ22を検出するためにMMV-AMP技術を用いた。これはあくまでも一例であって、本開示はこの例に限定されない。この構成の一変形例として、MMV-AMP技術の代わりに、CD(Coordinate Descent)法やGMMV-AMP(Generalized Multiple Measurement Vector Approximate Message Passing)技術などを用いてアクティブユーザ22を検出してもよい。
【0090】
発明者らは、一実施の形態による受信装置としての基地局3、受信方法および受信プログラムの性能が、CFOを無視した場合のMMV-AMP技術より優れていることを、コンピュータシミュレーションによって確認した。このコンピュータシミュレーションの結果について、
図8、
図9、
図10、
図11、
図12、
図13、
図14、
図15および
図16を参照して説明する。
【0091】
このコンピュータシミュレーションで使用した各パラメータは、以下のとおりである。ユーザ21の総数Nは、200である。アクティブユーザ22の総数Kは、8である。パイロット信号の総数Lは、72である。基地局3のアンテナ341の総数Mは、4である。OFDMサブキャリアの総数N
cは、2048である。パイロットサブキャリアの総数Sは、36である。パイロットOFDMシンボルの総数Gは、2である。CFOの最大値ε
maxは、0.0133である。CPの長さN
CPは、144である。
図5Aの処理を繰り返す回数、すなわち第1のカウンタ変数の閾値は、3である。
図5Bの処理を繰り返す回数、すなわち第2のカウンタ変数の閾値は、60である。
図5Cの処理を繰り返す回数、すなわち第3のカウンタ変数の閾値は、7である。
【0092】
図8の横軸はSNR(Signal to Noise Ratio:信号対雑音比)をdB(デシベル)で表し、縦軸は見逃し確率を表す。見逃し確率は、アクティブユーザ22の判定を誤る確率を表す。
図8は、合計3本のグラフG11、G12およびG13を含む。グラフG11は、CFOを無視した場合のMMV-AMPに対応する。グラフG12は、一実施の形態に対応する。グラフG13は、CFOが既知である場合の理想的なMMV-AMPに対応する。
図8から、一実施の形態が、CFOを無視した場合のMMV-AMPより優れていることを確認できる。
【0093】
図9の横軸はSNRをdBで表し、縦軸は誤警報確率を表す。誤警報確率は、非アクティブユーザの判定を誤る確率を表す。
図9は、合計3本のグラフG21、G22およびG23を含む。グラフG21は、CFOを無視した場合のMMV-AMPに対応する。グラフG22は、一実施の形態に対応する。グラフG23は、CFOが既知である場合の理想的なMMV-AMPに対応する。
図9から、一実施の形態が、CFOを無視した場合のMMV-AMPより優れていることを確認できる。
【0094】
図10の横軸はSNRをdBで表し、縦軸は通信路推定の性能を評価するNMSE(Normalized Mean. Squared Error:正規化平均二乗誤差)を表す。
図10は、合計3本のグラフG31、G32およびG33を含む。グラフG31は、CFOを無視した場合のMMV-AMPに対応する。グラフG32は、一実施の形態に対応する。グラフG33は、CFOが既知である場合の理想的なMMV-AMPに対応する。
図10から、一実施の形態が、CFOを無視した場合のMMV-AMPより優れていることを確認できる。
【0095】
図11の横軸はアクティブ率を表し、縦軸は見逃し確率を表す。アクティブ率は、ユーザ21のうちのアクティブユーザ22の割合を表す。
図11は、合計3本のグラフG41、G42およびG43を含む。グラフG41は、CFOを無視した場合のMMV-AMPに対応する。グラフG42は、一実施の形態に対応する。グラフG43は、CFOが既知である場合の理想的なMMV-AMPに対応する。
図11から、一実施の形態が、CFOを無視した場合のMMV-AMPより優れていることを確認できる。
【0096】
図12の横軸はアクティブ率を表し、縦軸は誤警報確率を表す。
図12は、合計3本のグラフG51、G52およびG53を含む。グラフG51は、CFOを無視した場合のMMV-AMPに対応する。グラフG52は、一実施の形態に対応する。グラフG53は、CFOが既知である場合の理想的なMMV-AMPに対応する。
図12から、一実施の形態が、CFOを無視した場合のMMV-AMPより優れていることを確認できる。
【0097】
図13の横軸はアクティブ率を表し、縦軸は通信路推定の性能を評価するNMSEを表す。
図13は、合計3本のグラフG61、G62およびG63を含む。グラフG61は、CFOを無視した場合のMMV-AMPに対応する。グラフG62は、一実施の形態に対応する。グラフG63は、CFOが既知である場合の理想的なMMV-AMPに対応する。
図13から、一実施の形態が、CFOを無視した場合のMMV-AMPより優れていることを確認できる。
【0098】
図14の横軸はCFOの最大値を表し、縦軸は見逃し確率を表す。ここで、SNRは6dBである。
図14は、合計3本のグラフG71、G72およびG73を含む。グラフG71は、CFOを無視した場合のMMV-AMPに対応する。グラフG72は、一実施の形態に対応する。グラフG73は、CFOが既知である場合の理想的なMMV-AMPに対応する。
図14から、一実施の形態が、CFOを無視した場合のMMV-AMPより優れていることを確認できる。
【0099】
図15の横軸はCFOの最大値を表し、縦軸は誤警報確率を表す。ここで、SNRは6dBである。
図15は、合計3本のグラフG81、G82およびG83を含む。グラフG81は、CFOを無視した場合のMMV-AMPに対応する。グラフG82は、一実施の形態に対応する。グラフG83は、CFOが既知である場合の理想的なMMV-AMPに対応する。
図15から、一実施の形態が、CFOを無視した場合のMMV-AMPより優れていることを確認できる。
【0100】
図16の横軸はCFOの最大値を表し、縦軸は通信路推定の性能を評価するNMSEを表す。
図16は、合計3本のグラフG91、G92およびG93を含む。グラフG91は、CFOを無視した場合のMMV-AMPに対応する。グラフG92は、一実施の形態に対応する。グラフG93は、CFOが既知である場合の理想的なMMV-AMPに対応する。
図16から、一実施の形態が、CFOを無視した場合のMMV-AMPより優れていることを確認できる。
【0101】
以上に説明したように、
図8~
図16のいずれの場合も、一実施の形態が、CFOを無視した場合のMMV-AMPより優れていることを確認できる。
【0102】
以上、発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。また、実施の形態に説明したそれぞれの特徴は、技術的に矛盾しない範囲で自由に組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0103】
1 通信システム
21 ユーザ(送信装置)
22 アクティブユーザ
3 基地局(受信装置)
31 バス
32 演算装置
321 通信部
322 検出部
323 推定部
324 更新部
325 出力部
33 記憶装置
330 記録媒体
331 受信プログラム記憶部
34 通信装置
341 アンテナ
35 入出力装置
41 通信リソース
42 データ信号用リソース
43 パイロット信号用リソース
G11、G12、G13 グラフ
G21、G22、G23 グラフ
G31、G32、G33 グラフ
G41、G42、G43 グラフ
G51、G52、G53 グラフ
G61、G62、G63 グラフ
G71、G72、G73 グラフ
G81、G82、G83 グラフ
G91、G92、G93 グラフ
H 等価通信路行列
H^b (正確には、ハット記号「^」が「H」の上にある)
L 行数
M 列数
N 行数、列数
NC サブキャリア数
X 等価パイロット行列
Y 受信信号行列
Z 雑音
ε^(1)
n,1、ε^(2)
n,1、ε^(1)
n1,1 最小値(正確には、ハット記号「^」が「ε」の上にある)
ε^(1)
n,2、ε^(2)
n,2、ε^(1)
n1,2 最大値(正確には、ハット記号「^」が「ε」の上にある)
ε^(1)
n,3、ε^(2)
n,3 中間値(正確には、ハット記号「^」が「ε」の上にある)