(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023146540
(43)【公開日】2023-10-12
(54)【発明の名称】歩行型作業車両
(51)【国際特許分類】
A01D 25/00 20060101AFI20231004BHJP
【FI】
A01D25/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022053765
(22)【出願日】2022-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092794
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 正道
(72)【発明者】
【氏名】北川 智志
(72)【発明者】
【氏名】高木 真吾
(72)【発明者】
【氏名】黒瀬 英明
(72)【発明者】
【氏名】二宮 浩二
(72)【発明者】
【氏名】後田 達哉
(72)【発明者】
【氏名】小野 弘喜
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 大翔
【テーマコード(参考)】
2B072
【Fターム(参考)】
2B072AA04
(57)【要約】
【課題】作業部を昇降連動する構成の歩行型電動作業車両において、昇降操作時の作業部の作動円滑化を図る。
【解決手段】作業部A,Bを機体フレーム5,41の前方に配置し、後方に操縦ハンドル22,56を備えた操縦部を配置して、該操縦部の下方にバッテリー33,61と作業部駆動モータ10,47を配置し、作業部A,Bをベルト11,51伝動可能に構成する。また、前記機体フレーム5,41の後方上方位置に操縦ハンドル22,56を設け、操縦ハンドル22,56の下方位置には、載置フレーム30,60を設け、載置フレーム30,60にはバッテリー33,61を載置する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業部(A,B)を機体フレーム(5,41)の前方に配置し、後方に操縦ハンドル(22,56)を備えた操縦部を配置して、該操縦部の下方にバッテリー(33,61)と作業部駆動モータ(10,47)を配置し、
作業部(A,B)の上下回動支点となるブラケット(13)と、作業部駆動モータ(10,47)により、動力伝達用のベルト(11、51)を通じて回動する中間軸(14)を同軸上にし、
作業部駆動モータ(10,47)からの動力を、動力伝達用のベルト(11,51)より、中間軸(14)を介して、中間軸(14)に連結されたベルト(19)に伝動可能に構成し、ベルト(19)を通じて作業部(A,B)を駆動することを特徴とする歩行型作業車両。
【請求項2】
前記機体フレーム(5,41)の後方上方位置に操縦ハンドル(22,56)を設け、操縦ハンドル(22,56)の下方位置には、載置フレーム(30,60)を設け、載置フレーム(30,60)にはバッテリー(33,61)を載置した請求項1に記載の歩行型作業車両。
【請求項3】
載置フレーム(30,60)に上下2段の載置台を形成し、上段にバッテリーマネジメントシステム(31,63)と充電器(32,62)を載置し、下段にバッテリー(33,61)を載置してなる請求項2に記載の歩行型作業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行車体の前方に昇降自在に作業部を連結する大根収穫機などの歩行型作業車両に関するものである。
【背景技術】
【0002】
歩行型作業車両である草刈機において、刈取部モータ、駆動輪モータ及び刈高調節モータを備え、機体フレームから後方に向けてハンドルを設けると共に、該ハンドルに操作部を取付固定し、該操作部に連携した各モータ駆動用のバッテリーを機体フレームに設置する構成が公知である(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1によると、刈取部モータ、駆動輪モータ及び刈高調節モータを駆動するバッテリーが刈取部を装着した機体フレームに設置する構成であるから、刈取部を昇降調整する刈高調節モータは、刈取部とバッテリーを昇降させるもので、つまり作業部荷重に加えてバッテリー荷重を昇降連動する構成である。したがって、重量が大なるバッテリーを昇降連動するためその動作が不安定である。
【0005】
この発明は、昇降する作業部の作動を円滑に行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、請求項1記載の発明は、作業部A,Bを機体フレーム5,41の前方に配置し、後方に操縦ハンドル22,56を備えた操縦部を配置して、該操縦部の下方にバッテリー33,61と作業部駆動モータ10,47を配置し、
作業部(A,B)の上下回動支点となるブラケット13と、作業部駆動モータ10,47により、動力伝達用のベルト11、51を通じて回動する中間軸を同軸上にし、
作業部駆動モータからの動力を、動力伝達用のベルトより、中間軸を介して、中間軸に連結されたベルト19に伝動可能に構成し、ベルト19を通じて作業部(A,B)を駆動する。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記機体フレーム5,41の後方上方位置に操縦ハンドル22,56を設け、操縦ハンドル22,56の下方位置には、載置フレーム30,60を設け、載置フレーム30,60にはバッテリー33,61を載置する。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、載置フレーム30,60に上下2段の載置台を形成し、上段にバッテリーマネジメントシステム31,63と充電器32,62を載置し、下段にバッテリー33,61を載置してなる。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に記載の発明によれば、作業部A,Bに作業部駆動モータ10,47を配置しないため、作業部A,Bの昇降動作はバランスを悪くすることなく行える。また作業部A,Bを上昇させての旋回動作も円滑である。
【0010】
請求項2又は請求項3に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明の効果に加え、バッテリー33等の重量物を下方に配置することで機体の重心位置を下げることとなり、作業走行及び操縦操作の安定性を向上する。特に、請求項3に記載の発明によると、バッテリーマネジメントシステム等バッテリー関連部品をまとめて配置することでハーネス類を含めて全体的にコンパクトに構成でき、メンテナンス性向上が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態にかかる歩行型作業車両の根菜類収穫機の斜視図である。
【
図4】(A)同根菜類収穫機の伝動構成概要を示す平面図、(B)その一部の斜視図である。
【
図5】(A)同根菜類収穫機のバッテリー等を収容する載置フレームの斜視図、(B)ヒンジ手段を備えた載置フレーム斜視図である。
【
図6】同歩行型作業車両の別例の根菜類引抜機の側面図である。
【
図7】同歩行型作業車両の別例の根菜類引抜機の斜視図である。
【
図8】同歩行型作業車両の別例の根菜類引抜機の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
歩行型作業車両としての根菜類収穫機1は、
図1に示すように、機体前端から順に、縦引起装置2、左右の横引起装置3,3、引抜搬送装置4を機体フレーム5に支持し、この機体フレーム5の前後を左右の補助輪6,6と左右の駆動輪7,7とによって圃場走行可能に支持している。そして、駆動輪7,7は、それぞれ機体フレーム5の後端部を左右連結する横フレーム部5aの左右端部から垂下状に支架される左右のチェンケース8,8によって支持される構成であり、各チェンケース8,8上部の走行部駆動モータ9,9によって左右独立的に駆動される構成である。
【0013】
一方、機体フレーム5の左右一側(図例では左側)に作業部駆動モータ10を設ける。この作業部駆動モータ10は、機体一側に沿って配設される伝動ベルト11を経由して前記縦引起装置2及び横引起装置3,3を駆動する。詳細には、作業部駆動モータ10の駆動軸10aに設ける駆動プーリ12と、引抜搬送装置4の上面の左右ブラケット13,13によって支持される第1中間軸14の一側に設ける被動プーリ15との間に伝動ベルト11を架け渡すものである。そして、第1中間軸14の左右中間部に設ける中継プーリ16と引起装置2,3の入力軸17に設ける入力プーリ18とをベルト19伝動可能に構成している。
【0014】
なお、縦引起装置2は、機体の進行方向に周回動作するラグ付き無端帯2a等により、収穫対象作物の側方において、畝面に垂れた茎葉部を掻き上げ可能に構成される。
【0015】
一方、左右の横引起装置3,3は、それぞれ機体の左右中央方向にそれぞれ周回動作するラグ付き無端帯3a等によって構成され、縦引起装置2から茎葉部を受けるとともに、作物の側方に垂れ広がった茎葉部を中央側に寄せつつ掻き上げる構成としている。
【0016】
前記ブラケット13,13の一側(図例では右側)において、第1中間軸14と同軸芯にて回動可能な支持アーム20をもって前記入力軸17を覆う入力軸パイプ21を連結するとともに、該入力軸パイプ21をもって前記引起装置2,3を一体的に支持構成している。したがって、操縦ハンドル22に設ける昇降レバー23の後方引き操作で連繋ロッド23aを引き前記引起装置2,3を非作業姿勢に上昇できる。反対に昇降レバー23を前方に操作すると、連繋ロッド23aの引き操作が解かれ前記引起装置2,3は作業姿勢に復帰する。
【0017】
引抜搬送装置4は、後ろ上がりに傾斜する挟持ベルトにカッター(図示せず)を備え、茎葉部を集束挟持して作物を引上げつつ、茎葉部を切断排出する構成としている。前記駆動プーリ12と被動プーリ15との間に架け渡す伝動ベルト11は、中間プーリ24を駆動できる構成とし引抜搬送装置4の狭持ベルトを伝動する第2中間軸25を連動する構成としている(
図4)。なお、図外カッターにも伝動可能に構成できる。26はテンションプーリである。
【0018】
前記補助輪6,6は、支持高さを調節可能に構成され、根菜類の引抜作業高さを調整できる構成である。
【0019】
前記機体フレーム5の横フレーム部5aの後方上方位置に、前記操縦ハンドル22を左右変位した位置に設けている。すなわち、平面視U型で前方部を下方に折曲形成した操縦ハンドル22は、ブラケット部材27を介して上記横フレーム部5aに装着されている。このブラケット部材27を介して横フレーム部5aの下方に湾曲状の補助フレーム5bを設け、この補助フレーム5bに上下2段の載置台を構成する載置フレーム30を設ける。載置フレーム30の上段にはバッテリーマネジメントシステム31と充電器32を、下段にはバッテリー33を載置するものである。なお、全体をバッテリーケース34で覆うことができる構成である。なお、バッテリーマネジメントシステム31は、バッテリー33の過充電等を防止したり、バッテリー33の温度管理、残量管理等を行う公知の構成である。
【0020】
操縦部の操縦ハンドル22近傍に、走行部駆動モータ用スイッチ、作業部駆動モータ用スイッチを備え、これらスイッチのON操作によって走行部駆動モータ9及び作業部駆動モータ10は起動する。
【0021】
前記載置フレーム30は、
図5(B)に示すように、開閉形態としてもよい。すなわち、左右いずれか一側に縦軸芯を備えたヒンジ手段35を構成し、縦軸中心に後方に開閉自在とするもので、バッテリー33交換等のメンテナンスを良好とする。なお、載置フレーム30の回動支点となるヒンジ手段35は操縦部とは反対側に構成するとともに、ハーネス類は回動支点部に配策している。バッテリー33等の重量物を下方に配置することで機体の重心位置を下げることとなり、作業走行及び操縦操作の安定性を向上する。また、バッテリーマネジメントシステム31等バッテリー33関連部品をまとめて配置することでハーネス類を含めて全体的にコンパクトに構成でき、メンテナンス性向上が図れる。
【0022】
前記のように、縦引起装置2及び横引起装置3,3の作業部Aを機体フレーム5の前方に配置し、後方に操縦ハンドル22等の操縦部を配置して、該操縦部の下方にバッテリー33と作業部駆動モータ10を配置し、作業部Aをベルト11伝動可能に構成するものであるから、作業部Aに作業部駆動モータ10を配置しないため、作業部Aの昇降動作はバランスを悪くすることなく行える。また作業部Aを上昇させての旋回動作も円滑である。
【0023】
前記駆動輪7,7の伝動構成は、左右それぞれのチェンケース8,8内装のチェンによるものとし、左右チェンケース8,8のそれぞれ機体内側方に走行部駆動モータ9,9を対向配置し、左右チェンケース8,8のそれぞれ外方に駆動輪7,7を設ける構成としている。さらに、左右チェンケース8,8を左右入れ替えて横フレーム部5aに装着できる構成を付加することで、駆動輪7,7のトレッドを変更でき異なる畝間に対応できる。なお、横フレーム部5aを複数の分割構成とし、長さの異なる分割部材(スペーサ)を介在することによって任意にトレッド変更することができ、異なる畝間に対応できる。
【0024】
また、走行部駆動モータ9の軸芯と駆動輪7の軸芯との距離が異なるように、複数長さの異なるチェンケース8,8を用意したり、チェンケースを上下に分割するとともに複数のスペーサを用意することで車高を調整でき、作物種類や品種に対応できる。また、チェンケース8,8内には、チェンと上下に配置するスプロケットを備えるが、スプロケット径を異ならせて形成し、上下反転して駆動輪と走行部駆動モータを装着できる構成とすると減速比の異なる仕様とすることができる。
【0025】
前記駆動輪7,7の車軸位置は、本機の重心位置Gよりも後方側となるよう構成し、補助輪6の車軸位置は重心位置Gよりも前方側になるよう構成している。これによって安定走行を確保できる。
【0026】
図6,
図7は、機体レイアウトの異なる構成を示すもので、引抜搬送装置40と一体的に構成する機体フレーム41は、前方の駆動輪42,42と後方の補助輪43,43によって走行可能に支持される。機体フレーム41の前方には縦引起装置44と横引起装置45とからなる作業部Bが支持アーム46を介して昇降可能に連結されている。機体フレーム41の一側には作業部駆動用モータ47に連動する駆動プーリ48,中間プーリ49を介して縦引起装置44の入力プーリ50を連動すべく伝動ベルト51a,51bを巻掛けている。
【0027】
駆動輪42,42は、機体フレーム41から側方に延出する車軸フレーム52,52に垂下されたチェンケース53,53に支架されている。チェンケース53,53のそれぞれには走行部駆動モータ54,54が設けられている。機体フレーム41の中央部に引抜搬送装置40の上方を迂回すべくU字型に形成された操縦部フレーム55の下端を支持し、この操縦部フレーム55の上辺部に左右一側に変位して操縦ハンドル56を装着する構成である(
図7)。
【0028】
補助輪43,43は調整ハンドル57を備え、支持アーム58の基部中心に上下に調整可能に設け、作物の生育状況に応じて適正な高さに調整できる構成としている。
【0029】
なお、縦引起装置44と横引起装置45とからなる昇降可能な作業部Bは、図外のハンドルに連繋されて非作業姿勢に上昇し又は作業姿勢に下降できる構成である。
【0030】
また、機体フレーム41の後部に載置フレーム60を設け、バッテリー61を下段に載置し上段には充電器62とバッテリーマネジメントシステム63を載置している。
【0031】
図8は、バッテリーマネージメントシステム63より、モータの回転数を変更するインバータ64、65を取り出して配置した構成である。左インバータ64と右インバータ65を別に備えることで、左右の回転数を変更でき、操舵することが可能となる。
また駆動輪42と42の幅を変更するには、車軸フレーム66、67の配置寸法を変更することで可能とする。この構成においてもインバータ64,65を近傍に配置することで構成の変更が容易となる。
【符号の説明】
【0032】
5 機体フレーム
10 作業部駆動モータ
11 ベルト
22 操縦ハンドル
30 載置フレーム
31 バッテリーマネジメントシステム
32 充電器
33 バッテリー
41 機体フレーム
47 作業部駆動用モータ
51 ベルト
56 操縦ハンドル
60 載置フレーム
61 バッテリー
62 充電器
63 バッテリーマネジメントシステム
A 作業部
B 作業部