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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023146554
(43)【公開日】2023-10-12
(54)【発明の名称】熱伝達抑制シート及び組電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/658 20140101AFI20231004BHJP
   H01M 10/647 20140101ALI20231004BHJP
   H01M 10/643 20140101ALI20231004BHJP
   H01M 10/625 20140101ALI20231004BHJP
   H01M 50/291 20210101ALI20231004BHJP
   H01M 50/293 20210101ALI20231004BHJP
   F16L 59/02 20060101ALI20231004BHJP
   B32B 7/027 20190101ALI20231004BHJP
   B32B 7/08 20190101ALI20231004BHJP
   B32B 3/30 20060101ALI20231004BHJP
【FI】
H01M10/658
H01M10/647
H01M10/643
H01M10/625
H01M50/291
H01M50/293
F16L59/02
B32B7/027
B32B7/08
B32B3/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022053784
(22)【出願日】2022-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000000158
【氏名又は名称】イビデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】山口 昌孝
【テーマコード(参考)】
3H036
4F100
5H031
5H040
【Fターム(参考)】
3H036AA09
3H036AB15
3H036AB23
3H036AB45
3H036AE11
4F100AA01A
4F100AA01B
4F100AA01C
4F100AA19A
4F100AA19B
4F100AA19C
4F100AA20A
4F100AA20B
4F100AA20C
4F100AA21A
4F100AA21B
4F100AA21C
4F100AG00A
4F100AG00B
4F100AG00C
4F100AK01A
4F100AK01B
4F100AK01C
4F100AK21A
4F100AK21B
4F100AK21C
4F100AK41A
4F100AK41B
4F100AK41C
4F100AL09A
4F100AL09B
4F100AL09C
4F100AN00A
4F100AN00B
4F100AN00C
4F100AT00A
4F100AT00B
4F100BA03
4F100BA07
4F100DD04A
4F100DD04B
4F100DD05C
4F100DD21B
4F100DE01A
4F100DE01B
4F100DE01C
4F100DG01A
4F100DG01B
4F100DG01C
4F100EC102
4F100GB31
4F100GB41
4F100JJ01
4F100JJ02A
4F100JJ02B
4F100JJ02C
4F100JK07A
4F100JK07B
4F100JK07C
5H031AA09
5H031CC01
5H031EE03
5H031EE04
5H031KK02
5H040AA37
5H040AS04
5H040AT01
5H040AT02
5H040AT06
5H040AY05
5H040AY06
5H040CC13
5H040CC34
5H040LL04
(57)【要約】
【課題】取り扱いが容易であり、異常時における各電池セル間の熱の伝播を抑制しつつ、電池セルの変形による電池ケースの破壊及び電池の性能の低下を抑制する。
【解決手段】熱伝達抑制シート10は、互いに対向して配置された板状の第1弾性部材(第1外側部材)1及び第2弾性部材(第2外側部材)2と、これらの間に配置された板状の断熱材(中間部材)3と、を有する。第1弾性部材1及び第2弾性部材2は、断熱材3に対向する面に、それぞれ第1凸部1a及び第2凸部2aを有する。また、断熱材3は、第1弾性部材1及び第2弾性部材2に対向する面に、それぞれ第1凹部3aと、第2凹部3bと、を有し、第1凸部1aが第1凹部3aに嵌合され、第2凸部2aが第2凹部3bに嵌合されている。さらに、熱伝達抑制シート10の積層方向から見た場合に、全ての第1凸部1aが、全ての第2凸部2aの位置と異なる位置に設けられている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向して配置された板状の第1外側部材及び第2外側部材と、
前記第1外側部材と前記第2外側部材との間に配置された板状の中間部材と、を有し、
前記第1外側部材は、前記中間部材に対向する面に設けられた第1凸部を有し、前記第2外側部材は、前記中間部材に対向する面に設けられた第2凸部を有するとともに、前記中間部材は、前記第1外側部材に対向する面に設けられた第1凹部と、前記第2外側部材に対向する面に設けられた第2凹部と、を有し、前記第1凸部が前記第1凹部に嵌合され、前記第2凸部が前記第2凹部に嵌合された熱伝達抑制シートであって、
前記第1外側部材及び前記第2外側部材は、断熱材及び弾性部材のうちいずれか一方からなり、
前記中間部材は、断熱材及び弾性部材のうち他方からなり、
前記第1外側部材、前記中間部材及び前記第2外側部材の積層方向から見た場合に、全ての前記第1凸部が、全ての前記第2凸部の位置と異なる位置に設けられていることを特徴とする、熱伝達抑制シート。
【請求項2】
互いに対向して配置された板状の第1外側部材及び第2外側部材と、
前記第1外側部材と前記第2外側部材との間に配置された板状の中間部材と、を有し、
前記第1外側部材は、前記中間部材に対向する面に設けられた第1凹部を有し、前記第2外側部材は、前記中間部材に対向する面に設けられた第2凹部を有するとともに、前記中間部材は、前記第1外側部材に対向する面に設けられた第1凸部と、前記第2外側部材に対向する面に設けられた第2凸部と、を有し、前記第1凸部が前記第1凹部に嵌合され、前記第2凸部が前記第2凹部に嵌合された熱伝達抑制シートであって、
前記第1外側部材及び前記第2外側部材は、断熱材及び弾性部材のうちいずれか一方からなり、
前記中間部材は、断熱材及び弾性部材のうち他方からなり、
前記第1外側部材、前記中間部材及び前記第2外側部材の積層方向から見た場合に、全ての前記第1凸部が、全ての前記第2凸部の位置と異なる位置に設けられていることを特徴とする、熱伝達抑制シート。
【請求項3】
前記第1外側部材及び前記第2外側部材は弾性部材からなり、
前記中間部材は断熱材からなることを特徴とする、請求項1又は2に記載の熱伝達抑制シート。
【請求項4】
前記第1凸部と前記第1凹部との間、及び前記第2凸部と前記第2凹部との間に、空隙部を有することを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の熱伝達抑制シート。
【請求項5】
前記第1凸部及び前記第2凸部は粒状又は線状に延びる形状であることを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載の熱伝達抑制シート。
【請求項6】
前記第1凸部及び前記第2凸部は複数設けられ、
前記第1凸部及び前記第2凸部が設けられた部材が、弾性部材からなるものであり、
前記第1凸部及び前記第2凸部が形成されている面における中央領域の方が、周縁領域よりも前記第1凸部及び前記第2凸部の数密度が高いことを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載の熱伝達抑制シート。
【請求項7】
前記第1凸部及び前記第2凸部は複数設けられ、
前記第1凸部及び前記第2凸部が設けられた部材が、断熱材からなるものであり、
前記第1凸部及び前記第2凸部が形成されている面における中央領域の方が、周縁領域よりも前記第1凸部及び前記第2凸部の数密度が低いことを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載の熱伝達抑制シート。
【請求項8】
前記第1凸部及び前記第2凸部は略半球形状に突出し、
前記第1凹部及び前記第2凹部は略半球形状に窪んでいることを特徴とする、請求項1~7のいずれか1項に記載の熱伝達抑制シート。
【請求項9】
前記第1外側部材及び前記第2外側部材は、それぞれ、平面部と、前記平面部に設けられた前記第1凸部及び前記第2凸部と、を有する弾性部材からなり、
前記中間部材は断熱材からなり、
前記第1外側部材における任意の第1凸部と、前記任意の第1凸部に最も接近して設けられた第2凸部との距離は、前記任意の第1凸部と、前記任意の第1凸部に対向する位置における前記第2外側部材の平面部との距離よりも大きいことを特徴とする、請求項1に記載の熱伝達抑制シート。
【請求項10】
前記中間部材は、平面部と、前記平面部に設けられた前記第1凸部及び前記第2凸部と、を有する弾性部材からなり、
前記第1外側部材及び前記第2外側部材は断熱材からなり、
前記中間部材における前記第1凸部の裏面側は、平面部であることを特徴とする、請求項2に記載の熱伝達抑制シート。
【請求項11】
前記弾性部材は、ゴム又はエラストマーにより形成されている、請求項1~10のいずれか1項に記載の熱伝達抑制シート。
【請求項12】
前記断熱材は、無機粒子、有機繊維及び無機繊維の少なくとも1種を含有する、請求項1~11のいずれか1項に記載の熱伝達抑制シート。
【請求項13】
複数の電池セルと、請求項1~12のいずれか1項に記載の熱伝達抑制シートと、を有し、前記複数の電池セルが直接又は並列に接続された、組電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱伝達抑制シート及び該熱伝達抑制シートを有する組電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境保護の観点から電動モータで駆動する電気自動車又はハイブリッド車等の開発が盛んに進められている。この電気自動車又はハイブリッド車等には、駆動用電動モータの電源となるための、複数の電池セルが直列又は並列に接続された組電池が搭載されている。
【0003】
また、この電池セルには、鉛蓄電池やニッケル水素電池等に比べて、高容量かつ高出力が可能なリチウムイオン二次電池が主に用いられている。そして、電池の内部短絡や過充電等が原因で、ある電池セルが急激に昇温し、その後も発熱を継続するような熱暴走を起こした場合、熱暴走を起こした電池セルからの熱が、隣接する他の電池セルに伝播することで、他の電池セルの熱暴走を引き起こすおそれがある。
【0004】
また、電池セルに熱暴走が生じると、この電池の内部でガスが発生し、内圧が上昇することにより電池セルの変形を引き起こし、この変形が大きい場合には、電池セル自体が破壊されることがある。
このような電池セルの変形は、組電池化した電池セルに対し充放電サイクルを行う場合(すなわち「通常使用時」の場合)においてもわずかに発生しており、充放電の際に電池セルの内圧の上昇及び低下が繰り返された場合に、電池セルに対して、押圧及び緩和が繰り返され、電池の性能が低下する原因となる。
【0005】
上記のような電池セルの膨張による性能低下を抑制する方法として、電池セル間に弾性を付与した断熱シートを介在させる方法が提案されている。
例えば、特許文献1には、電池セルの膨張にしたがって圧縮変形し、電池セルの破損を抑制することができる電池用断熱材が提案されている。上記特許文献1に記載の断熱材は、断熱部と、断熱部より圧縮変形しやすい緩衝部とを含み、緩衝部が断熱部に積層されている。
【0006】
また、特許文献2には、エネルギ貯蔵セル、すなわち電池セルが装置によって断熱されたエネルギ貯蔵システムが提案されている。この装置は、エネルギ貯蔵セルを互いに離間させるように形成されており、例えば、耐熱性のかつ寸法安定性の材料からなるベースに、耐熱性の弾性的な材料からなる凸部が形成されたものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2021-140968号公報
【特許文献2】特表2020-532078号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献1に記載の電池用断熱材は、断熱部と緩衝部とが積層されたものであり、両者が接着されていない場合には、取り扱いが困難である。また、緩衝部が断熱部の表面に設けられた凹部に配置された断熱材も提案されているが、緩衝部を断熱部の両面に配置しようとすると、部分的に断熱部が薄くなりすぎて、断熱性が低下してしまう。
【0009】
また、上記特許文献2に記載の装置は、複数の凸部のみが直接電池セルに接触しており、電池セルの膨張と収縮が繰り返された場合に、突部の劣化が発生しやすくなる。
【0010】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、取り扱いが容易であり、異常時における各電池セル間の熱の伝播を抑制しつつ、電池セルの変形による電池ケースの破壊及び電池の性能の低下を抑制することができる熱伝達抑制シート、並びに、各電池セル間の熱の伝播を抑制しつつ、電池ケースの破壊及び電池の性能の低下を抑制することができる組電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の上記目的は、熱伝達抑制シートに係る下記(1)又は(2)の構成により達成される。
【0012】
(1) 互いに対向して配置された板状の第1外側部材及び第2外側部材と、
上記第1外側部材と上記第2外側部材との間に配置された板状の中間部材と、を有し、
上記第1外側部材は、上記中間部材に対向する面に設けられた第1凸部を有し、上記第2外側部材は、上記中間部材に対向する面に設けられた第2凸部を有するとともに、上記中間部材は、上記第1外側部材に対向する面に設けられた第1凹部と、上記第2外側部材に対向する面に設けられた第2凹部と、を有し、上記第1凸部が上記第1凹部に嵌合され、上記第2凸部が上記第2凹部に嵌合された熱伝達抑制シートであって、
上記第1外側部材及び上記第2外側部材は、断熱材及び弾性部材のうちいずれか一方からなり、
上記中間部材は、断熱材及び弾性部材のうち他方からなり、
上記第1外側部材、上記中間部材及び上記第2外側部材の積層方向から見た場合に、全ての上記第1凸部が、全ての上記第2凸部の位置と異なる位置に設けられていることを特徴とする、熱伝達抑制シート。
【0013】
(2) 互いに対向して配置された板状の第1外側部材及び第2外側部材と、
上記第1外側部材と上記第2外側部材との間に配置された板状の中間部材と、を有し、
上記第1外側部材は、上記中間部材に対向する面に設けられた第1凹部を有し、上記第2外側部材は、上記中間部材に対向する面に設けられた第2凹部を有するとともに、上記中間部材は、上記第1外側部材に対向する面に設けられた第1凸部と、上記第2外側部材に対向する面に設けられた第2凸部と、を有し、上記第1凸部が上記第1凹部に嵌合され、上記第2凸部が上記第2凹部に嵌合された熱伝達抑制シートであって、
上記第1外側部材及び上記第2外側部材は、断熱材及び弾性部材のうちいずれか一方からなり、
上記中間部材は、断熱材及び弾性部材のうち他方からなり、
上記第1外側部材、上記中間部材及び上記第2外側部材の積層方向から見た場合に、全ての上記第1凸部が、全ての上記第2凸部の位置と異なる位置に設けられていることを特徴とする、熱伝達抑制シート。
【0014】
また、熱伝達抑制シートに係る本発明の好ましい実施形態は、以下の(3)~(12)に関する。
【0015】
(3) 上記第1外側部材及び上記第2外側部材は弾性部材からなり、
上記中間部材は断熱材からなることを特徴とする、(1)又は(2)に記載の熱伝達抑制シート。
【0016】
(4) 上記第1凸部と上記第1凹部との間、及び上記第2凸部と上記第2凹部との間に、空隙部を有することを特徴とする、(1)~(3)のいずれか1つに記載の熱伝達抑制シート。
【0017】
(5) 上記第1凸部及び上記第2凸部は粒状又は線状に延びる形状であることを特徴とする、(1)~(4)のいずれか1つに記載の熱伝達抑制シート。
【0018】
(6) 上記第1凸部及び上記第2凸部は複数設けられ、
上記第1凸部及び上記第2凸部が設けられた部材が、弾性部材からなるものであり、
上記第1凸部及び上記第2凸部が形成されている面における中央領域の方が、周縁領域よりも上記第1凸部及び上記第2凸部の数密度が高いことを特徴とする、(1)~(5)のいずれか1つに記載の熱伝達抑制シート。
【0019】
(7) 上記第1凸部及び上記第2凸部は複数設けられ、
上記第1凸部及び上記第2凸部が設けられた部材が、断熱材からなるものであり、
上記第1凸部及び上記第2凸部が形成されている面における中央領域の方が、周縁領域よりも上記第1凸部及び上記第2凸部の数密度が低いことを特徴とする、(1)~(5)のいずれか1つに記載の熱伝達抑制シート。
【0020】
(8) 上記第1凸部及び上記第2凸部は略半球形状に突出し、
上記第1凹部及び上記第2凹部は略半球形状に窪んでいることを特徴とする、(1)~(7)のいずれか1つに記載の熱伝達抑制シート。
【0021】
(9) 上記第1外側部材及び上記第2外側部材は、それぞれ、平面部と、上記平面部に設けられた上記第1凸部及び上記第2凸部と、を有する弾性部材からなり、
上記中間部材は断熱材からなり、
上記第1外側部材における任意の第1凸部と、上記任意の第1凸部に最も接近して設けられた第2凸部との距離は、上記任意の第1凸部と、上記任意の第1凸部に対向する位置における上記第2外側部材の平面部との距離よりも大きいことを特徴とする、(1)に記載の熱伝達抑制シート。
【0022】
(10) 上記中間部材は、平面部と、上記平面部に設けられた上記第1凸部及び上記第2凸部と、を有する弾性部材からなり、
上記第1外側部材及び上記第2外側部材は断熱材からなり、
上記中間部材における上記第1凸部の裏面側は、平面部であることを特徴とする、(2)に記載の熱伝達抑制シート。
【0023】
(11) 上記弾性部材は、ゴム又はエラストマーにより形成されている、(1)~(10)のいずれか1つに記載の熱伝達抑制シート。
【0024】
(12) 上記断熱材は、無機粒子、有機繊維及び無機繊維の少なくとも1種を含有する、(1)~(11)のいずれか1つに記載の熱伝達抑制シート。
【0025】
また、本発明の上記目的は、組電池に係る下記(13)の構成により達成される。
【0026】
(13) 複数の電池セルと、(1)~(12)のいずれか1つに記載の熱伝達抑制シートと、を有し、上記複数の電池セルが直接又は並列に接続された、組電池。
【発明の効果】
【0027】
本発明の熱伝達抑制シートは、一対の外側部材と、この間に配置された中間部材とが凹部と第1凸部及び第2凸部との篏合により係止されているため、接着剤を使用する必要がなく、容易に取り扱うことができる。また、本発明の熱伝達抑制シートは、外側部材及び中間部材のいずれか一方が弾性部材からなり、他方が断熱材からなるものであり、これらの積層方向から見た場合に、第1凸部と第2凸部との位置がずれているため、異常時における各電池セル間の熱の伝播を抑制しつつ、電池セルの変形による電池ケースの破壊及び電池の性能の低下を抑制することができる。
【0028】
また、本発明の組電池は、複数の電池セルと上記熱伝達シートを有するため、異常時において、電池セル間の熱の伝播を抑制することができるとともに、弾性部材が電池セルの変形に対して柔軟に変形し、電池ケースの破壊及び電池の性能の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1図1は、本発明の第1実施形態に係る熱伝達抑制シートを模式的に示す断面図である。
図2図2は、図1に示す熱伝達抑制シートを示す平面図である。
図3図3は、第1凸部と第2凸部との位置関係を示す断面図である。
図4図4は、第1凸部及び第2凸部を形成する位置の一例を示す平面図である
図5図5は、本発明の実施形態に係る熱伝達抑制シートにおいて、第1凸部及び第2凸部の形状例を示す斜視図である。
図6図6は、本発明の実施形態に係る熱伝達抑制シートにおいて、第1凸部及び第2凸部の他の形状例を示す平面図である。
図7図7は、本発明の第2実施形態に係る熱伝達抑制シートを模式的に示す断面図である。
図8図8は、第2実施形態に係る熱伝達抑制シートにおいて、好ましい凸部の位置を説明するための平面図である。
図9図9は、本発明の実施形態に係る組電池を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明者は、取り扱いが容易であり、異常時における各電池セル間の熱の伝播を抑制しつつ、電池セルが変形した場合であっても、電池ケース及び電池の性能に影響を与えることがない組電池を提供するため、鋭意検討を行った。
その結果、本発明者は、断熱材及び弾性部材のいずれか一方に凸部を設けるとともに、他方に凹部を設け、平面視で見た場合に凸部がずれた位置となるようにするとともに、凸部と凹部とを嵌合することにより熱伝達抑制シートを組み立てることにより、上記課題を解決できることを見出した。
【0031】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、本発明は、以下で説明する実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、任意に変更して実施することができる。
【0032】
[熱伝達抑制シート]
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る熱伝達抑制シートを模式的に示す断面図である。図2は、図1に示す熱伝達抑制シートを示す平面図である。
図1に示すように、本実施形態においては、互いに対向して配置された板状の第1弾性部材(第1外側部材)1及び第2弾性部材(第2外側部材)2と、これらの間に配置された板状の断熱材(中間部材)3と、を有する。第1弾性部材1は、断熱材3に対向する面に、第1凸部1aが設けられている。また、第2弾性部材2も、断熱材3に対向する面に、第2凸部2aが設けられている。
【0033】
一方、断熱材3は、第1弾性部材1に対向する面における第1凸部1aに対向する位置に、第1凹部3aが設けられている。同様に、断熱材3の第1凹部3aが設けられている面の反対側の面、すなわち第2弾性部材2に対向する面には、第2弾性部材2の第2凸部2aに対向する位置に、第2凹部3bが設けられている。そして、第1弾性部材1の第1凸部1aと断熱材3の第1凹部3aとが嵌合されているとともに、第2弾性部材2の第2凸部2aと断熱材3の第2凹部3bとが嵌合されることにより、熱伝達抑制シート10が組み立てられている。
【0034】
また、図2に示すように、第1弾性部材1と、断熱材3と、第2弾性部材2とを組み立て、第1弾性部材1の上面側、すなわち、第1弾性部材1、断熱材3及び第2弾性部材2の積層方向から見た場合に、全ての第1凸部1aが、全ての第2凸部2aの位置と異なる位置に設けられている。
【0035】
このように構成された熱伝達抑制シート10が、例えば電池セルの間に配置された場合に、異常時に一方の電池セルに熱暴走が発生すると、断熱材3が存在することにより、隣接する電池セルへの熱の伝播が抑制される。したがって、一方の電池セルに隣接した他方の電池セルが熱を受けることを抑制でき、熱暴走の連鎖を阻止することができる。
【0036】
また、本実施形態に係る熱伝達抑制シート10は、第1弾性部材1と第2弾性部材2との間に断熱材3を有する。この第1弾性部材1及び第2弾性部材2は、電池セルの変形を抑制する効果と、電池セルの変形を吸収する効果とを有する。すなわち、異常時に電池セルが変形した場合に、第1弾性部材1及び第2弾性部材2は、電池セルの変形を抑制しつつ、電池セルの変形に対して柔軟に変形する。したがって、電池セルに不要な圧力が印加されることを抑制することができる。
【0037】
さらに、本実施形態においては、第1弾性部材1及び第2弾性部材2が熱伝達抑制シート10の外側に配置され、断熱材3が中央に配置されている。後述するように、断熱材3には、ナノ粒子等の粒径が極めて小さい無機粒子が含まれることがあり、一対の弾性部材の間に断熱材が配置される構成であると、無機粒子が断熱材から脱落することを防止することができる。また、複数の電池セルの間に、本実施形態に係る熱伝達抑制シート10が配置された場合に、電池セルに接する位置に第1弾性部材1及び第2弾性部材2が配置されているため、いずれの電池セルが膨張や収縮した場合でも、熱伝達抑制シート10を電池セルの変形に追従させることができる。
【0038】
さらにまた、本実施形態においては、第1弾性部材1における全ての第1凸部1aの位置と、第2弾性部材2における全ての第2凸部2aの位置とがずれるように配置されている。仮に、第1凸部1aの位置と、第2凸部2aの位置とが平面視で一致するように形成されていると、第1凸部1a及び第2凸部2aが形成されている位置において、断熱材3の厚さが薄くなり、断熱効果が低下する。一方、本実施形態においては、上述のとおり、第1凸部1aと第2凸部2aとの位置がずれているため、第1凸部1a及び第2凸部2aの形成による断熱効果の低下を、最低限に抑制することができる。このように、弾性部材と断熱材との位置関係は、断熱材の材質、弾性部材の耐熱性や、弾性、耐久性等を考慮し、適切に選択することが好ましい。
【0039】
第1凸部1aと第2凸部2aとの好ましい位置関係について、さらに詳細に説明する。図3は、第1凸部1aと第2凸部2aとの位置関係を示す断面図である。断熱材3の板厚をd0とすると、例えば第2弾性部材2における第2凸部2aが設けられている位置では、断熱材3の厚さは、第2凸部2aの厚さだけ減少した距離d1となる。断熱材3の厚さは、薄くなるほど断熱性が低下するため、第1弾性部材1が、断熱材3に対向している面において、平面部1bと第1凸部1aとを有しているとすると、第2凸部2aに対向する位置は、少なくとも平面部1bであることが好ましい。
【0040】
なお、第1凸部1aと第2凸部2aとの位置がずれているのみでは、第2凸部2aと第1凸部1aとの距離が近い場合に、これらの距離d2、d3は、第2凸部2aと対向する平面部1bとの距離d1よりも小さくなり、断熱性が低下するおそれがある。したがって、第2弾性部材2における任意の第2凸部2aと、この第2凸部2aに最も接近して設けられた第1凸部1aとの距離(例えば距離d2)は、第2凸部2aと、これに対向する位置における第1弾性部材1の平面部1bとの距離d1よりも大きいことがより好ましい。
【0041】
図示は省略するが、同様に、第1弾性部材1における任意の第1凸部1aと、この第1凸部1aに最も接近して設けられた第2凸部2aとの距離は、第1凸部1aと、これに対向する位置における第2弾性部材2の平面部2bとの距離よりも大きいことがより好ましい。
【0042】
第1弾性部材1の第1凸部1aと断熱材3の第1凹部3aとの間、及び第2弾性部材2の第2凸部2aと断熱材3の第2凹部3bとの間は、隙間なく嵌合されていてもよいが、若干の空隙部5を有していてもよい。空隙部5を有していると、空隙部5が空気による断熱層となり、より一層断熱効果を向上させることができる。また、熱伝達抑制シート10の製造時に、凸部と凹部とを隙間なく組み立てるためには、第1凸部1a及び第2凸部2aと、第1凹部3aと第2凹部3bとの大きさ及び位置を正確に一致させる必要があり、高精度な製造が要求される。一方、第1弾性部材1の第1凸部1aと断熱材3の第1凹部3aとの間、及び第2弾性部材2の第2凸部2aと断熱材3の第2凹部3bとの間に空隙部5を有していると、容易に熱伝達抑制シート10を製造することができる。
【0043】
第1弾性部材1の第1凸部1a及び第2弾性部材2の第2凸部2aの形成方法は特に限定されない。例えば、凸部の形状の弾性部品を準備し、板状の弾性材に接着剤等により弾性部品を接着してもよいし、接着剤そのものを弾性材の所定の位置に配置することにより、第1凸部1a及び第2凸部2aを形成してもよい。また、型成形により第1弾性部材1及び第2弾性部材2を形成してもよい。
【0044】
断熱材3の形成方法も特に限定されない。例えば、断熱性を有する平板を準備し、切削等により第1凹部3a及び第2凹部3bを形成することにより、断熱材3を形成することができる。また、型成形により断熱材3を形成してもよい。
【0045】
第1凸部1aや第2凸部2aを形成する位置は特に限定されない。図2の平面視で示すように、第1凸部1aと第2凸部2aとが碁盤目状に等間隔で交互に配置されるように形成されていてもよい。また、図4に示す熱伝達抑制シート20は、複数の第1凸部1a及び複数の第2凸部2aが形成されている面における中央領域の方が、周縁領域よりも第1凸部1a及び複数の第2凸部2aの数密度が高くなっている。このような構成とすると、複数の電池セル間に熱伝達抑制シート20を介在させた場合に、電池セルが最も膨張及び収縮を繰り返す中央領域において、第1弾性部材1及び第2弾性部材2の厚さが厚くなっている箇所が増加するため、電池セルの膨張を吸収しやすくすることができる。
【0046】
また、第1凸部1aと第2凸部2aとの位置関係を、例えば図2に示すようにすると、第1弾性部材1に形成する第1凸部1aの位置と、第2弾性部材2に形成する第2凸部2aの位置とを同一の位置とすることができる。すなわち、同一の弾性部材を2枚準備し、凸部が形成された面が互いに対向するように、一方の弾性部材の表裏を反転させて配置すると、平面視で第1凸部1aと第2凸部2aとがずれた位置となる。したがって、2種類の形状の弾性部材を設計する必要がなく、容易に熱伝達抑制シート10を製造することができる。
【0047】
同様に、図4に示す熱伝達抑制シート20においても、例えば、第1弾性部材1に形成する第1凸部1aの位置と、第2弾性部材2に形成する第2凸部2aの位置とを同一の位置とすることができる。すなわち、図4に示すように、第1凸部1aを形成した第1弾性部材1と、これと同一の第2弾性部材2を準備し、第2弾性部材2の表裏を反転させた後に例えば90°回転させて、第1凸部1aと第2凸部2aとが互いに対向するように両者を配置すると、平面視で第1凸部1aと第2凸部2aとがずれた位置となる。このように、第1弾性部材1の第1凸部1aを形成する位置と、第2弾性部材2の第2凸部2aを形成する位置とを同一として、一方を反転させるか、反転させたうえで所定の角度回転させることにより、平面視で第1凸部1aと第2凸部2aとがずれた位置となるように、第1凸部1a及び第2凸部2aの位置を設計することが好ましい。
【0048】
第1凸部1a及び第2凸部2aの形状も特に限定されない。図1及び図2に示すように、円柱状でもよいし、図5の熱伝達抑制シート10の模式的断面図で示すように、第1凸部1a及び第2凸部2aが半球状に突出しており、第1凹部3a及び第2凹部3bが半球状に窪んでいる形状であると、このような形状の凸部及び凹部は容易に製造できるとともに、第1凸部1aと第1凹部3aと、及び第2凸部2aと第2凹部3bとを容易に嵌合させることができるため、好ましい。なお、これらの形状は、正確な半球状である必要はなく、略半球形状であればよい。第1凸部1a及び第2凸部2aの形状としては、他に、角柱状、円錐状、角錐状等、種々の形状を使用することができる。
【0049】
さらに、第1凸部1a及び第2凸部2aは、上記のような粒状のものだけでなく、図6の熱伝達抑制シート10の平面図で示すように、第1凸部1a及び第2凸部2aが線状に延びる形状であってもよい。
また、第1凸部1a及び第2凸部2aがどのような形状であっても、第1凹部3a及び第2凹部3bは、第1凸部1a及び第2凸部2aが嵌合可能な形状であればよい。
【0050】
(第2実施形態)
図7は、本発明の第2実施形態に係る熱伝達抑制シートを模式的に示す断面図である。第2実施形態は、第1実施形態に示す第1凸部1a、第2凸部2aが、外側の弾性部材ではなく、中間の断熱材に形成されている。
【0051】
図7に示すように、第2実施形態においては、断熱材(中間部材)13の厚さ方向に直交する両面に、第1凸部13aと、第2凸部13bが設けられている。なお、断熱材13の一方の面に設けられた第1凸部13aと、他方の面に設けられた第2凸部13bとは、断熱材13の厚さ方向から見た平面視で異なる位置に設けられている。また、断熱材13の両面に対して対向するように、板状の第1弾性部材(第1外側部材)11及び第2弾性部材(第2外側部材)12が配置されている。
【0052】
第1弾性部材11には、断熱材13の第1凸部13aに対向する位置に、第1凹部11aが設けられている。同様に、第2弾性部材12にも、断熱材13の第2凸部13bに対向する位置に、第2凹部12aが設けられている。そして、断熱材13の第1凸部13aと第1弾性部材11の第1凹部11aとが嵌合されているとともに、断熱材13の第2凸部13bと第2弾性部材12の第2凹部12aとが嵌合されることにより、熱伝達抑制シート30が組み立てられている。
【0053】
このように構成された第2実施形態においても、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0054】
なお、本実施形態においては、断熱材13に第1凸部13a及び第2凸部13bを設けているため、これらの位置関係によって、断熱性が低下することはない。ただし、断熱材13の両面における第1凸部13aと第2凸部13bとが同一の位置に形成されていると、その位置における第1弾性部材11及び第2弾性部材12の厚さの和が小さくなり、電池セルの膨張及び収縮に十分に追従させることができない。したがって、第1凸部13aと第2凸部13bとの位置は、平面視で異なる位置に設けられているものとする。
【0055】
図8は、第2実施形態に係る熱伝達抑制シートにおいて、好ましい凸部の位置を説明するための平面図である。図6に示す熱伝達抑制シート40は、第1実施形態と異なり、第1弾性部材11及び第2弾性部材12よりも弾性が低い断熱材13に、複数の第1凸部13a及び複数の第2凸部13bが形成されている。したがって、複数の電池セル間に熱伝達抑制シート40を介在させた場合に、電池セルが最も膨張及び収縮を繰り返す中央領域において、周縁領域よりも第1凸部13a及び第2凸部13bの数密度を低くすることが好ましい。このような構成とすると、中央の領域において、第1弾性部材11及び第2弾性部材12の厚さをある程度確保できるため、電池セルの膨張を吸収しやすくすることができる。
【0056】
第1凸部13a及び第2凸部13bの形状は、第1実施形態と同様に、円柱状、略半球形状の他に、角柱状、円錐状、角錐状、線状に延びる形状等、種々の形状を使用することができる。また、第1凸部13a及び第2凸部13bを有する断熱材13、第1凹部11aを有する第1弾性部材11、並びに第2凹部12aを有する第2弾性部材12の形成方法も、第1実施形態と同様の方法を採用することができる。
【0057】
上記第1実施形態及び第2実施形態においては、一対の弾性部材の間に断熱材が配置されていたが、本発明はこれに限定されず、一対の断熱材の間に弾性部材が配置されていてもよい。この場合に、第1凸部及び第2凸部は、弾性部材側に形成されていても断熱材側に形成されていてもよい。図1を用いて説明すると、第1弾性部材1及び第2弾性部材2の代わりに凸部を有する一対の断熱材を配置し、断熱材3の代わりに凹部を有する弾性部材を配置することができる。前述のとおり、凸部と凹部は逆となってもよい。
【0058】
なお、一対の断熱材の間に弾性部材が配置されている場合であって、弾性部材が、平面部と、第1凸部及び第2凸部と、を有する場合に、断熱材の板厚が部分的に薄くなることよる断熱性の低下を防止することが好ましい。したがって、第1凸部及び第2凸部の裏面側は、いずれも平面部であることが好ましい。
【0059】
上記のように構成された熱伝達抑制シートを複数の電池セルの間に介在させた場合に、電池セルに接触するように断熱材が配置され、弾性部材は電池セルに接触しない。したがって、異常時に電池セルが高温になった際に、弾性部材まで熱が到達しにくいため、弾性部材の溶融を防止することができる。また、通常時において、電池セルの温度が変化した場合であっても、弾性部材との間に断熱材が配置されているため、弾性部材に与えられる温度変化は小さくなり、弾性部材の劣化を防止することができる。
このように、弾性部材と断熱材との位置関係は、断熱材の材質、弾性部材の耐熱性や、弾性、耐久性等を考慮し、適切に選択することが好ましい。
【0060】
上記種々の実施形態においては、凸部と凹部とが嵌合されることにより、熱伝達抑制シートが製造される。したがって、例えば平板状の断熱材と弾性部材とを積層させる場合と比較して、断熱材と弾性部材とを接着する接着剤等が不要となる。断熱材と弾性部材とが接着剤により接着された熱伝達抑制シートにおいて、接着剤の種類によっては、電池セルの温度が著しく上昇した場合に、接着剤が燃焼することにより、隣接する電池セルに熱が伝わりやすくなり、熱連鎖が発生するおそれがある。したがって、接着剤が不要である本発明に係る熱伝達抑制シートは、熱連鎖の防止においても極めて有効であるといえる。
【0061】
ただし、接着剤を適切に選択すると、温度が上昇しても燃焼する可能性が低くなる。したがって、弾性部材と断熱材との間に適切な接着剤を使用してもよい。この場合に、平板同士の接着と比較して接合面積が広くなるため、より一層接合強度を高くすることができる。
【0062】
次に、本実施形態に係る組電池を構成する断熱材及び弾性部材について、詳細に説明する。
【0063】
〔断熱材〕
本実施形態に係る熱伝達抑制シートにおいては、一対の第1外側部材と第2外側部材、又は中間部材のいずれか一方が断熱材からなる。断熱材としては、有機繊維及び無機繊維の少なくとも一方を含有することが好ましく、必要に応じて無機粒子を含有することがより好ましい。本実施形態においては、これらの材料を、例えばシート状に加工したものを使用することができる。断熱材を構成する材料としては、断熱性を有することが重要であるため、断熱性能が高い材料から選択される。
【0064】
断熱性能を表す指標として、熱伝導率を挙げることができるが、本実施形態においては、断熱材の熱伝導率は1(W/m・K)未満であることが好ましく、0.5(W/m・K)未満であることがより好ましく、0.2(W/m・K)未満であることがより好ましい。さらに、断熱材の熱伝導率は0.1(W/m・K)未満であることがより好ましく、0.05(W/m・K)未満であることがより好ましく、0.02(W/m・K)未満であることが特に好ましい。
【0065】
なお、断熱材の熱伝導率は、JIS R 2251に記載の「耐火物の熱伝導率の試験方法」に準拠して、測定することができる。
【0066】
<無機粒子>
無機粒子としては、耐熱性を有する化合物からなるものであることが好ましく、単一の材質の無機粒子を使用してもよいし、2種以上の材質の無機粒子を組み合わせて使用してもよい。2種以上の熱伝達抑制効果が互いに異なる無機粒子を併用すると、発熱体を多段に冷却することができ、吸熱作用をより広い温度範囲で発現できるため、断熱性能を向上させることができる。2種以上の無機粒子が含有されている場合に、各無機粒子の好ましい材質、形状及び粒子径について、以下に説明する。
【0067】
断熱材は、一例として、第1の無機粒子、第2の無機粒子の他に、後述する2種の無機繊維(第1の無機繊維、第2の無機繊維)、有機繊維及びバインダを含むことができる。
【0068】
第1の無機粒子及び第2の無機粒子としては、熱伝達抑制効果の観点から、酸化物粒子、炭化物粒子、窒化物粒子及び無機水和物粒子から選択される少なくとも1種の無機材料からなる粒子を使用することが好ましく、酸化物粒子を使用することがより好ましい。また、シリカナノ粒子、金属酸化物粒子、マイクロポーラス粒子や中空シリカ粒子等の無機バルーン、熱膨張性無機材料からなる粒子、含水多孔質体からなる粒子等を使用することもできる。以下、小径の無機粒子を第1の無機粒子とし、大径の無機粒子を第2の無機粒子として、無機粒子についてさらに詳細に説明する。
【0069】
<第1の無機粒子>
(酸化物粒子)
酸化物粒子は屈折率が高く、光を乱反射させる効果が強いため、無機粒子として酸化物粒子を使用すると、特に異常発熱などの高温度領域において輻射伝熱を抑制することができる。酸化物粒子としては、シリカ(SiO)、チタニア(TiO)、ムライト(Al13Si)、ジルコニア(ZrO)、マグネシア(MgO)、ジルコン(ZrSiO)、チタン酸バリウム(BaTiO)、酸化亜鉛(ZnO)、アルミナ(Al)等が挙げられるが、これに限定されない。すなわち、無機粒子として使用することができる上記酸化物粒子のうち、1種のみを使用してもよいし、2種以上の酸化物粒子を使用してもよい。特に、シリカは断熱性が高い成分であり、チタニアは他の金属酸化物と比較して屈折率が高い成分であって、500℃以上の高温度領域において光を乱反射させ輻射熱を遮る効果が高いため、酸化物粒子としてシリカ及びチタニアを用いることが最も好ましい。
【0070】
(酸化物粒子の平均一次粒子径:0.001μm以上50μm以下)
酸化物粒子の粒子径は、輻射熱を反射する効果に影響を与えることがあるため、平均一次粒子径を所定の範囲に限定すると、より一層高い断熱性を得ることができる。
すなわち、酸化物粒子の平均一次粒子径が0.001μm以上であると、加熱に寄与する光の波長よりも十分に大きく、光を効率よく乱反射させるため、500℃以上の高温度領域において断熱材内における熱の輻射伝熱が抑制され、より一層断熱性を向上させることができる。
一方、酸化物粒子の平均一次粒子径が50μm以下であると、圧縮されても粒子間の接点や数が増えず、伝導伝熱のパスを形成しにくいため、特に伝導伝熱が支配的な通常温度域の断熱性への影響を小さくすることができる。
なお、本発明において平均一次粒子径は、顕微鏡で粒子を観察し、標準スケールと比較し、任意の粒子10個の平均をとることにより求めることができる。
【0071】
(ナノ粒子)
本発明において、ナノ粒子とは、球形又は球形に近い平均一次粒子径が1μm未満のナノメートルオーダーの粒子を表す。ナノ粒子は低密度であるため伝導伝熱を抑制し、無機粒子としてナノ粒子を使用すると、更に空隙が細かく分散するため、対流伝熱を抑制する優れた断熱性を得ることができる。このため、通常の常温域の電池使用時において、隣接するナノ粒子間の熱の伝導を抑制することができる点で、ナノ粒子を使用することが好ましい。
【0072】
さらに、酸化物粒子として、平均一次粒子径が小さいナノ粒子を使用すると、電池セルの熱暴走に伴う膨張によって断熱材が圧縮され、断熱材の内部の密度が上がった場合であっても、断熱材の伝導伝熱の上昇を抑制することができる。これは、ナノ粒子が静電気による反発力で粒子間に細かな空隙ができやすく、かさ密度が低いため、クッション性があるように粒子が充填されるからであると考えられる。
【0073】
なお、本発明において、無機粒子としてナノ粒子を使用する場合に、上記ナノ粒子の定義に沿ったものであれば、材質について特に限定されない。例えば、シリカナノ粒子は、断熱性が高い材料であることに加えて、粒子同士の接点が小さいため、シリカナノ粒子により伝導される熱量は、粒子径が大きいシリカ粒子を使用した場合と比較して小さくなる。また、一般的に入手されるシリカナノ粒子は、かさ密度が0.1(g/cm)程度であるため、例えば、断熱材に隣接して配置された電池セルが熱膨張し、断熱材に対して大きな圧縮応力が加わった場合であっても、防炎剤中のシリカナノ粒子同士の接点の大きさ(面積)や数が著しく大きくなることはなく、断熱性を維持することができる。したがって、ナノ粒子としてはシリカナノ粒子を使用することが好ましい。シリカナノ粒子としては、湿式シリカ、乾式シリカ及びエアロゲル等を使用することができる。
【0074】
(ナノ粒子の平均一次粒子径:1nm以上100nm以下)
ナノ粒子の平均一次粒子径を所定の範囲に限定すると、より一層高い断熱性を得ることができる。
すなわち、ナノ粒子の平均一次粒子径を1nm以上100nm以下とすると、特に500℃未満の温度領域において、断熱材内における熱の対流伝熱及び伝導伝熱を抑制することができ、断熱性をより一層向上させることができる。また、圧縮応力が印加された場合であっても、ナノ粒子間に残った空隙と、多くの粒子間の接点が伝導伝熱を抑制し、断熱材の断熱性を維持することができる。
なお、ナノ粒子の平均一次粒子径は、2nm以上であることがより好ましく、3nm以上であることが更に好ましい。一方、ナノ粒子の平均一次粒子径は、50nm以下であることがより好ましく、10nm以下であることが更に好ましい。
【0075】
(無機水和物粒子)
無機水和物粒子は、発熱体からの熱を受けて熱分解開始温度以上になると熱分解し、自身が持つ結晶水を放出して発熱体及びその周囲の温度を下げる、所謂「吸熱作用」を発現する。また、結晶水を放出した後は多孔質体となり、無数の空気孔により断熱作用を発現する。
無機水和物の具体例として、水酸化アルミニウム(Al(OH))、水酸化マグネシウム(Mg(OH))、水酸化カルシウム(Ca(OH))、水酸化亜鉛(Zn(OH))、水酸化鉄(Fe(OH))、水酸化マンガン(Mn(OH))、水酸化ジルコニウム(Zr(OH))、水酸化ガリウム(Ga(OH))等が挙げられる。
【0076】
例えば、水酸化アルミニウムは約35%の結晶水を有しており、下記式に示すように、熱分解して結晶水を放出して吸熱作用を発現する。そして、結晶水を放出した後は多孔質体であるアルミナ(Al)となり、断熱材として機能する。
2Al(OH)→Al+3H
【0077】
なお、後述するように、本実施形態に係る断熱材及び弾性部材は、例えば、電池セル間に介在されることが好適であるが、熱暴走を起こした電池セルでは、200℃を超える温度に急上昇し、700℃付近まで温度上昇を続ける。したがって、無機粒子は熱分解開始温度が200℃以上である無機水和物からなることも好ましい。
上記に挙げた無機水和物の熱分解開始温度は、水酸化アルミニウムは約200℃、水酸化マグネシウムは約330℃、水酸化カルシウムは約580℃、水酸化亜鉛は約200℃、水酸化鉄は約350℃、水酸化マンガンは約300℃、水酸化ジルコニウムは約300℃、水酸化ガリウムは約300℃であり、いずれも熱暴走を起こした電池セルの急激な昇温の温度範囲とほぼ重なり、温度上昇を効率よく抑えることができることから、好ましい無機水和物であるといえる。
【0078】
(無機水和物粒子の平均二次粒子径:0.01μm以上200μm以下)
また、第1の無機粒子として、無機水和物粒子を使用した場合に、その平均粒子径が大きすぎると、断熱材の中心付近にある第1の無機粒子(無機水和物)が、その熱分解温度に達するまでにある程度の時間を要するため、断熱材の中心付近の第1の無機粒子が熱分解しきれない場合がある。このため、無機水和物粒子の平均二次粒子径は、0.01μm以上200μm以下であることが好ましく、0.05μm以上100μm以下であることがより好ましい。
【0079】
(窒化物粒子)
窒化物粒子としては、窒化ホウ素(BN)等が好適に挙げられる。
【0080】
(炭化物粒子)
炭化物粒子としては、炭化ホウ素(BC)等が好適に挙げられる。
【0081】
(熱膨張性無機材料からなる粒子)
熱膨張性無機材料としては、バーミキュライト、ベントナイト、雲母、パーライト等を挙げることができる。
【0082】
(含水多孔質体からなる粒子)
含水多孔質体の具体例としては、ゼオライト、カオリナイト、モンモリロナイト、酸性白土、珪藻土、湿式シリカ、乾式シリカ、エアロゲル、マイカ、バーミキュライト等が挙げられる。
【0083】
(無機バルーン)
本発明に用いる断熱材は、無機粒子として無機バルーンを含んでいてもよい。
無機バルーンが含まれると、500℃未満の温度領域において、断熱材内における熱の対流伝熱または伝導伝熱を抑制することができ、断熱材の断熱性をより一層向上させることができる。
無機バルーンとしては、シラスバルーン、シリカバルーン、フライアッシュバルーン、バーライトバルーン、およびガラスバルーンから選択された少なくとも1種を用いることができる。
【0084】
(無機バルーンの含有量:断熱材全質量に対して60質量%以下)
無機バルーンの含有量としては、断熱材全質量に対し、60質量%以下が好ましい。
【0085】
(無機バルーンの平均粒子径:1μm以上100μm以下)
無機バルーンの平均粒子径としては、1μm以上100μm以下が好ましい。
【0086】
<第2の無機粒子>
断熱材に2種の無機粒子が含有されている場合に、第2の無機粒子は、第1の無機粒子と材質や粒子径等が異なっていれば特に限定されない。第2の無機粒子としては、酸化物粒子、炭化物粒子、窒化物粒子、無機水和物粒子、シリカナノ粒子、金属酸化物粒子、マイクロポーラス粒子や中空シリカ粒子等の無機バルーン、熱膨張性無機材料からなる粒子、含水多孔質体からなる粒子等を使用することができ、これらの詳細については、上述のとおりである。
【0087】
なお、ナノ粒子は伝導伝熱が極めて小さいとともに、断熱材に圧縮応力が加わった場合であっても、優れた断熱性を維持することができる。また、チタニア等の金属酸化物粒子は、輻射熱を遮る効果が高い。さらに、大径の無機粒子と小径の無機粒子とを使用すると、大径の無機粒子同士の隙間に小径の無機粒子が入り込むことにより、より緻密な構造となり、熱伝達抑制効果を向上させることができる。したがって、上記第1の無機粒子として、ナノ粒子を使用した場合に、さらに、第2の無機粒子として、第1の無機粒子よりも大径である金属酸化物からなる粒子を、断熱材に含有させることが好ましい。
金属酸化物としては、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化アルミニウム、チタン酸バリウム、酸化亜鉛、ジルコン、酸化ジルコニウム等を挙げることができる。特に、チタニアは他の金属酸化物と比較して屈折率が高い成分であり、500℃以上の高温度領域において光を乱反射させ輻射熱を遮る効果が高いため、チタニアを用いることが最も好ましい。
【0088】
(第2の無機粒子の平均一次粒子径)
金属酸化物からなる第2の無機粒子を断熱材に含有させる場合に、第2の無機粒子の平均一次粒子径は、1μm以上50μm以下であると、500℃以上の高温度領域で効率よく輻射伝熱を抑制することができる。第2の無機粒子の平均一次粒子径は、5μm以上30μm以下であることが更に好ましく、10μm以下であることが最も好ましい。
【0089】
(第1の無機粒子と第2の無機粒子の含有量)
第1の無機粒子がシリカナノ粒子であり、第2の無機粒子が金属酸化物である場合に、第1の無機粒子の含有量が、第1の無機粒子と第2の無機粒子との合計質量に対して、60質量%以上95質量%以下であると、輻射伝熱の抑制に必要な金属酸化物粒子の量と、伝導・対流伝熱の抑制とクッション性に必要なシリカナノ粒子の量を最適化できる。
その結果、電池の通常使用時における温度から500℃以上の高温までの広い温度領域にわたって、外部から圧縮力が加わってもバランスよく高い断熱性が得られると考えられる。
【0090】
<無機繊維>
無機繊維としては、例えば、シリカ繊維、アルミナ繊維、アルミナシリケート繊維、ジルコニア繊維、カーボンファイバ、ソルブルファイバ、リフラクトリーセラミックファイバ、エアロゲル複合材、マグネシウムシリケート繊維、アルカリアースシリケート繊維、チタン酸カリウム繊維、チタン酸カリウムウィスカ繊維等のセラミックス系繊維、ガラス繊維、グラスウール等のガラス系繊維、ロックウール、バサルトファイバ、ウォラストナイト等の鉱物系繊維等が挙げられる。
これらの無機繊維は、耐熱性、強度、入手容易性などの点で好ましい。無機繊維のうち、取り扱い性の観点から、特にシリカ-アルミナ繊維、アルミナ繊維、シリカ繊維、ロックウール、アルカリアースシリケート繊維、ガラス繊維が好ましい。
【0091】
無機繊維の断面形状は、特に限定されず、円形断面、平断面、中空断面、多角断面、芯断面などが挙げられる。中でも、中空断面、平断面または多角断面を有する異形断面繊維は、断熱性が若干向上されるため好適に使用することができる。
【0092】
無機繊維が後述する特別な性状でない限り、無機繊維の平均繊維長の好ましい下限は0.1mmであり、より好ましい下限は0.5mmである。一方、無機繊維の平均繊維長の好ましい上限は50mmであり、より好ましい上限は10mmである。無機繊維の平均繊維長が0.1mm未満であると、無機繊維同士の絡み合いが生じにくく、断熱材の機械的強度が低下するおそれがある。一方、50mmを超えると、補強効果は得られるものの、無機繊維同士が緊密に絡み合うことができなったり、単一の無機繊維だけで丸まったりし、それにより連続した空隙が生じやすくなるので断熱性の低下を招くおそれがある。
【0093】
無機繊維が後述する特別な性状でない限り、無機繊維の平均繊維径の好ましい下限は1μmであり、より好ましい下限は2μmであり、更に好ましい下限は3μmである。一方、無機繊維の平均繊維径の好ましい上限は15μmであり、より好ましい上限は10μmである。無機繊維の平均繊維径が1μm未満であると、無機繊維自体の機械的強度が低下するおそれがある。また、人体の健康に対する影響の観点より、無機繊維の平均繊維径が3μm以上であることが好ましい。一方、無機繊維の平均繊維径が15μmより大きいと、無機繊維を媒体とする固体伝熱が増加して断熱性の低下を招くおそれがあり、また、断熱材の成形性及び強度が悪化するおそれがある。
【0094】
なお、無機繊維は、単独で使用してもよいし2種以上組み合わせて使用してもよい。図3に示すように、断熱材は、例えば、平均繊維径、形状及びガラス転移点から選択された少なくとも1種の性状が互いに異なる第1の無機繊維及び第2の無機繊維を有することが好ましい。性状が互いに異なる2種の無機繊維を含有することにより、断熱材の機械的強度及び無機粒子の保持性を向上させることができる。
【0095】
(平均繊維径及び繊維形状が異なる2種の無機繊維)
断熱材が、2種の無機繊維を含有する場合に、第1の無機繊維の平均繊維径が、第2の無機繊維の平均繊維径よりも大きく、第1の無機繊維が線状又は針状であり、第2の無機繊維が樹枝状又は縮れ状であることが好ましい。平均繊維径が大きい(太径の)第1の無機繊維は、断熱材の機械的強度や形状保持性を向上させる効果を有する。2種の無機繊維のうち一方、例えば、第1の無機繊維を第2の無機繊維よりも太径にすることにより、上記効果を得ることができる。断熱材には、外部からの衝撃が作用することがあるため、断熱材に第1の無機繊維が含まれることにより、耐衝撃性が高まる。外部からの衝撃としては、例えば電池セルの膨張による押圧力や、電池セルの発火による風圧などである。
また、断熱材の機械的強度や形状保持性を向上させるためには、第1の無機繊維が線状又は針状であることが特に好ましい。なお、線状又は針状の繊維とは、後述の捲縮度が例えば10%未満、好ましくは5%以下である繊維をいう。
【0096】
より具体的には、断熱材の機械的強度や形状保持性を向上させるためには、第1の無機繊維の平均繊維径は1μm以上であることが好ましく、3μm以上であることがより好ましい。第1の無機繊維が太すぎると、断熱材への成形性、加工性が低下するおそれがあるため、第1の無機繊維の平均繊維径は20μm以下であることが好ましく、15μm以下であることがより好ましい。
なお、第1の無機繊維は長すぎても成形性や加工性が低下するおそれがあるため、繊維長を100mm以下とすることが好ましい。さらに、第1の無機繊維は短すぎても形状保持性や機械的強度が低下するため、繊維長を0.1mm以上とすることが好ましい。
【0097】
一方、平均繊維径が細い(細径の)第2の無機繊維は、他の無機繊維や無機粒子等の保持性を向上させるとともに、断熱材の柔軟性を高める効果を有する。したがって、第2の無機繊維を第1の無機繊維よりも細径にすることが好ましい。
【0098】
より具体的に、他の無機繊維や無機粒子等の保持性を向上させるためには、第2の無機繊維は変形が容易で、柔軟性を有することが好ましい。したがって、細径である第2の無機繊維は、平均繊維径が1μm未満であることが好ましく、0.1μm以下であることがより好ましい。ただし、細径の無機繊維が細すぎると破断しやすく、他の無機繊維や無機粒子等の保持能力が低下する。また、他の無機繊維や無機粒子等を保持せずに、繊維が絡み合ったままで断熱材中に存在する割合が多くなり、他の無機繊維や無機粒子等の保持能力の低下に加えて、成形性や形状保持性にも劣るようになる。そのため、第2の無機繊維の平均繊維径は1nm以上が好ましく、10nm以上がより好ましい。
なお、第2の無機繊維は、長くなりすぎると成形性や形状保持性が低下するため、第2の無機繊維の繊維長は0.1mm以下であることが好ましい。
【0099】
また、第2の無機繊維は、樹枝状又は縮れ状であることが好ましい。第2の無機繊維がこのような形状であると、断熱材において、他の無機繊維や無機粒子等と絡み合う。そのため、他の無機繊維や無機粒子等の保持能力が向上する。また、断熱材及び弾性部材が押圧力や風圧を受けた際に、第1の無機繊維と第2の無機繊維が絡み合っていることにより、断熱材が滑って移動することが抑制され、このことにより、特に外部からの押圧力や衝撃に抗する機械的強度が向上する。
【0100】
なお、樹枝状とは、2次元的又は3次元的に枝分かれした構造であり、例えば羽毛状、テトラポット形状、放射線状、立体網目状である。
第2の無機繊維が樹枝状である場合に、その平均繊維径は、SEMによって幹部及び枝部の径を数点測定し、これらの平均値を算出することにより得ることができる。
【0101】
また、縮れ状とは、繊維が様々な方向に屈曲した構造である。縮れ形態を定量化する方法の一つとして、電子顕微鏡写真からその捲縮度を算出することが知られており、例えば下記式から算出することができる。
捲縮度(%)=(繊維長さ-繊維末端間距離)/(繊維長さ)×100
ここで、繊維長さ、繊維末端間距離ともに電子顕微鏡写真上での測定値である。すなわち、2次元平面上へ投影された繊維長、繊維末端間距離であり、現実の値よりも短くなっている。この式に基づき、第2の無機繊維の捲縮度は10%以上が好ましく、30%以上がより好ましい。捲縮度が小さいと、他の無機繊維や無機粒子等の保持能力や、第2の無機繊維同士、第1の無機繊維と第2の無機繊維との絡み合い(ネットワーク)が形成されにくくなる。
【0102】
上述の実施形態では、断熱材の機械的強度や形状保持性、並びに無機粒子や無機繊維等の保持性を向上させる方法として、平均繊維径及び繊維形状が互いに異なる第1の無機繊維及び第2の無機繊維を用いている。ただし、ガラス転移点や平均繊維径が互いに異なる第1の無機繊維及び第2の無機繊維を用いることによっても、断熱材の機械的強度、形状保持性及び粒子の保持性を向上させることができる。
【0103】
上記のとおり、本実施形態においては、断熱材の機械的強度や形状保持性及び粒子の保持性を向上させるために、種々の組み合わせの無機繊維を使用することが好ましい。
【0104】
(ガラス転移点が互いに異なる2種の無機繊維)
断熱材が、2種の無機繊維を含有する場合に、第1の無機繊維は非晶質の繊維であり、第2の無機繊維は、第1の無機繊維よりガラス転移点が高い非晶質の繊維、及び結晶質の繊維から選択される少なくとも1種の繊維であることが好ましい。また、上記2種の無機繊維とともに、ナノ粒子、中空粒子及び多孔質粒子から選択される少なくとも1種を含む第1の無機粒子を使用することにより、さらに一層断熱性能を向上させることができる。
【0105】
結晶質の無機繊維の融点は、通常非晶質の無機繊維のガラス転移点より高い。そのため、第1の無機繊維は、高温にさらされると、その表面が第2の無機繊維より先に軟化して、他の無機繊維や無機粒子等を結着する。したがって、断熱材に上記のような第1の無機繊維を含有させることにより、断熱材の機械的強度を向上させることができる。
第1の無機繊維としては、具体的には、融点が700℃未満である無機繊維が好ましく、多くの非晶質の無機繊維を用いることができる。中でも、SiOを含む繊維であることが好ましく、安価で、入手も容易で、取扱い性等に優れることから、ガラス繊維であることがより好ましい。
【0106】
第2の無機繊維は、上述のとおり、第1の無機繊維よりガラス転移点が高い非晶質の繊維、及び結晶質の繊維から選択される少なくとも1種からなる繊維である。第2の無機繊維としては、多くの結晶性の無機繊維を用いることができる。
第2の無機繊維が結晶質の繊維からなるものであるか、又は第1の無機繊維よりもガラス転移点が高いものであると、高温にさらされたときに、第1の無機繊維が軟化しても、第2の無機繊維は溶融又は軟化しない。したがって、電池セルの熱暴走時においても形状を維持し、電池セル間に存在し続けることができる。
また、第2の無機繊維が溶融又は軟化しないと、断熱材に含まれる各粒子間、粒子と繊維との間、及び各繊維間における微小な空間が維持されるため、空気による断熱効果が発揮され、優れた熱伝達抑制性能を保持することができる。
【0107】
第2の無機繊維が結晶質である場合に、第2の無機繊維としては、シリカ繊維、アルミナ繊維、アルミナシリケート繊維、ジルコニア繊維、カーボンファイバ、ソルブルファイバ、リフラクトリーセラミックファイバ、エアロゲル複合材、マグネシウムシリケート繊維、アルカリアースシリケート繊維、チタン酸カリウム繊維等のセラミックス系繊維、ガラス繊維、グラスウール等のガラス系繊維、ロックウール、バサルトファイバ、ウォラストナイト等の鉱物系繊維等を使用することができる。
第2の無機繊維として挙げられた繊維のうち、融点が1000℃を超えるものであると、電池セルの熱暴走が発生しても、第2の無機繊維は溶融又は軟化せず、その形状を維持することができるため、好適に使用することができる。
なお、上記第2の無機繊維として挙げられた繊維のうち、例えば、シリカ繊維、アルミナ繊維及びアルミナシリケート繊維等のセラミックス系繊維、並びに鉱物系繊維を使用することがより好ましく、この中でも融点が1000℃を超えるものを使用することが更に好ましい。
【0108】
また、第2の無機繊維が非晶質である場合であっても、第1の無機繊維よりもガラス転移点が高い繊維であれば、使用することができる。例えば、第1の無機繊維よりガラス転移点が高いガラス繊維を第2の無機繊維として用いてもよい。
なお、第2の無機繊維としては、例示した種々の無機繊維を単独で使用してもよいし、2種以上を混合使用してもよい。
【0109】
なお、上記のとおり、第1の無機繊維は第2の無機繊維よりもガラス転移点が低く、高温にさらされたときに、第1の無機繊維が先に軟化するため、第1の無機繊維で他の無機繊維や無機粒子等を結着することができる。しかし、例えば、第2の無機繊維が非晶質であって、その繊維径が第1の無機繊維の繊維径よりも細い場合に、第1の無機繊維と第2の無機繊維とのガラス転移点が接近していると、第2の無機繊維が先に軟化するおそれがある。
したがって、第2の無機繊維が非晶質の繊維である場合に、第2の無機繊維のガラス転移点は、第1の無機繊維のガラス転移点よりも100℃以上高いことが好ましく、300℃以上高いことがより好ましい。
【0110】
なお、第1の無機繊維の繊維長は、100mm以下であることが好ましく、0.1mm以上とすることが好ましい。第2の無機繊維の繊維長は、0.1mm以下であることが好ましい。これらの理由については、上記したとおりである。
【0111】
(ガラス転移点及び平均繊維径が互いに異なる2種の無機繊維)
断熱材が、2種の無機繊維を含有する場合に、第1の無機繊維は非晶質の繊維であり、第2の無機繊維は、第1の無機繊維よりガラス転移点が高い非晶質の繊維、及び、結晶質の繊維から選択される少なくとも1種の繊維であり、第1の無機繊維の平均繊維径が、第2の無機繊維の平均繊維径よりも大きいことが好ましい。
【0112】
上述のとおり、本実施形態に係る断熱材が2種の無機繊維を含有する場合に、第1の無機繊維の平均繊維径が、第2の無機繊維よりも大きいことが好ましい。また、太径の第1の無機繊維が非晶質の繊維であり、細径の第2の無機繊維が、第1の無機繊維よりガラス転移点が高い非晶質の繊維、及び結晶質の繊維から選択される少なくとも1種からなる繊維であることが好ましい。これにより、第1の無機繊維のガラス転移点が低く、早く軟化するため、温度の上昇に伴って膜状となって硬くなる。一方、細径である第2の無機繊維が、第1の無機繊維よりガラス転移点が高い非晶質の繊維、及び結晶質の繊維から選択される少なくとも1種からなる繊維であると、温度が上昇しても細径の第2の無機繊維が繊維の形状で残存するため、断熱材の構造を保持し、粉落ちを防止することができる。
【0113】
なお、この場合であっても、第1の無機繊維の繊維長は、100mm以下であることが好ましく、0.1mm以上とすることが好ましい。第2の無機繊維の繊維長は、0.1mm以下であることが好ましい。これらの理由については、上記したとおりである。
【0114】
また、断熱材には、上記第1の無機繊維及び第2の無機繊維の他に、異なる無機繊維が含まれていてもよい。
【0115】
(第1の無機繊維及び第2の無機繊維の各含有量)
断熱材が、2種の無機繊維を含有する場合に、第1の無機繊維の含有量は、断熱材の全質量に対して3質量%以上30質量%以下であることが好ましく、第2の無機繊維の含有量は、断熱材の全質量に対して3質量%以上30質量%以下であることが好ましい。
【0116】
また、第1の無機繊維の含有量は、断熱材の全質量に対して、5質量%以上15質量%以下であることがより好ましく、第2の無機繊維の含有量は、断熱材の全質量に対して、5質量%以上15質量%以下であることがより好ましい。このような含有量にすることにより、第1の無機繊維による形状保持性や押圧力耐性、抗風圧性、及び第2の無機繊維による無機粒子の保持能力がバランスよく発現される。
【0117】
<有機繊維>
有機繊維としては、特に限定されないが、合成繊維、天然繊維、パルプなどが利用できる。合成繊維としては、熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂からなる繊維が選択可能であり、例えば、変性されたポリエチレンテレフタラート(PET;PolyEthylene Terephthalate)繊維、ポリエチレン(PE;PolyEthylene)繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、ポリブチレンテレフタラート繊維、ポリビニルアルコール(PVA)繊維、ポリウレタン繊維、エチレン-ビニルアルコール共重合体繊維、ポリトリメチレンテレフタレート繊維、ポリアセタール繊維、ポリテトラフルオロエチレン繊維、ポリエーテルエーテルケトン繊維、ポリフェニレンサルファイド繊維、ポリアミド繊維、ポリパラフェニルフタルアミド繊維等からなる合成繊維を使用することができる。
【0118】
本実施形態において使用することができる合成繊維の種類及び構造等について、より詳細に以下に説明する。
ビニロン(vinylon):ビニルアルコール単位を質量比で65%以上含む長鎖状合成高分子から成る繊維。
ビニラール(vinylal):アセタール化の水準の異なるポリビニルアルコールの長鎖状合成高分子から成る繊維。
ポリ塩化ビニル(polyvinyl chloride,chlorofiber):塩化ビニル単位を主成分として形成された長鎖状合成高分子から成る繊維。
ビニリデン(polyvinylidene chloride,chlorofiber):塩化ビニリデン単位(-CH-CCl-)を主成分として形成された長鎖状合成高分子から成る繊維。
アクリル(acrylic):アクリロニトリル基の繰返し単位が質量比で85%以上含む長鎖状合成高分子から成る繊維。
アクリル系(modacrylic):アクリロニトリル基の繰返し単位が質量比で35%以上、85%未満含む長鎖状合成高分子から成る繊維。
ナイロン(nylon,polyamide):繰り返しているアミド結合の85%以上が脂肪族又は環状脂肪族単位と結合している長鎖状合成高分子から成る繊維。
アラミド(aramid):2個のベンゼン環に直接結合しているアミド又はイミド結合が質量比で85%以上であり、イミド結合がある場合は、その数がアミド結合の数を超えない長鎖状合成高分子から成る繊維。
ポリエステル(polyester):テレフタル酸と2価アルコールとのエステル単位を質量比で85%以上含む長鎖状合成高分子から成る繊維。
ポリエチレンテレフタラート(PET;polyethylene terephthalate):テレフタル酸とエチレングリコールとのエステル単位を質量比で85%以上含む長鎖状合成高分子から成る繊維。
ポリトリメチレンテレフタラート(PTT;polytrimethylene terephthalate):テレフタル酸と1,3-プロパンジオールとのエステル単位を質量比で85%以上含む長鎖状合成高分子から成る繊維。
ポリブチレンテレフタラート(PBT;polybutylene terephthalate):テレフタル酸と1,4-ブタンジオールとのエステル単位を質量比で85%以上含む長鎖状合成高分子から成る繊維。
ポリエチレン(PE;polyethylene):置換基のない飽和脂肪族炭化水素で構成する高分子で、長鎖状合成高分子から成る繊維。
ポリプロピレン(PP;polypropylene):2個当たり1個の炭素原子にメチル基の側鎖がある飽和脂肪族炭化水素で構成する高分子で、立体規則性があり、他に置換基のない長鎖状合成高分子から成る繊維。
ポリウレタン(elastane,polyurethane):ポリウレタンセグメントを質量比で85%以上含み、張力をかけないときの長さの3倍に伸長したとき、張力を除くとすぐ元の長さに戻る長鎖状合成高分子から成る繊維。
ポリ乳酸(polylactide):乳酸エステル単位を質量比で50%以上含む長鎖状合成高分子から成る繊維。
有機繊維の平均繊維長及び平均繊維径の好ましい範囲は、無機繊維と同様である。
【0119】
<その他の材料>
本実施形態において用いることができる断熱材は、上記第1の無機粒子及び第2の無機粒子、第1の無機繊維及び第2の無機繊維や有機繊維の他に、結合材、着色剤等のように、断熱材に成形するために必要な成分を含んでいてもよい。以下、その他の成分についても詳細に説明する。
【0120】
(結合材)
本発明に断熱材は、バインダのような結合材を含まないものであっても、焼結等により形成されることができるが、特に断熱材がシリカナノ粒子を含む場合には、断熱材としての形状を保持するために、適切な含有量で結合材を添加することが好ましい。本発明において結合材とは、無機粒子を保持するために繋ぎ止めておくものであればよく、接着を伴うバインダ、粒子を物理的に絡める繊維、粘着力で付着する耐熱樹脂などその形態は問わない。上記第1の無機繊維及び第2の無機繊維も結合剤として機能する。
【0121】
なお、バインダとしては、有機バインダ、無機バインダ等を用いることができる。本発明はこれらの種類について特に制限しないが、有機バインダとしては、高分子凝集材及びアクリルエマルジョン等を使用することができ、無機バインダとしては、例えばシリカゾル、アルミナゾル、硫酸バンド等を使用することができる。これらは、水などの溶媒が除去されると接着剤として機能する。
【0122】
本発明に用いる断熱材において、結合材の含有量は、断熱材全質量に対し、60質量%以下であることが好ましく、50質量%以下であることがより好ましい。本発明に用いる断熱材において、結合材の含有量は、断熱材全質量に対し、10質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であることがより好ましい。
【0123】
本発明に用いる断熱材の厚さは特に限定されないが、0.1mm以上30mm以下の範囲にあることが好ましい。断熱材の厚さが上記範囲内であると、充分な断熱性及び機械的強度を得ることができるとともに、容易に成形することができる。
【0124】
〔弾性部材〕
本実施形態に係る熱伝達抑制シートにおいては、一対の第1外側部材と第2外側部材、又は中間部材のいずれか一方が上記断熱材からなり、他方が弾性部材からなる。弾性部材としては、複数の電池セルの間に熱伝達抑制シートを介在させた場合に、電池セルの変形に対して柔軟に変形し、電池セルの膨張や収縮を吸収する弾性を有するものを使用することができる。このような弾性部材としては、例えば、ゴム又はエラストマーを用いることができる。
【0125】
[組電池]
図9は、本発明の実施形態に係る組電池を示す模式図である。本実施形態に係る組電池100は、複数の電池セル20a、20b、20cと、本実施形態に係る熱伝達抑制シート10と、を有する。また、該複数の電池セル20a、20b、20cが直列又は並列に接続されている。
具体的に、図9に示すように、本実施形態に係る熱伝達抑制シート10は、電池セル20aと電池セル20bとの間、及び電池セル20bと電池セル20cとの間に介在されている。さらに、電池セル20a、20b、20c及び熱伝達抑制シート10は、電池ケース50に収容されている。
【0126】
なお、熱伝達抑制シート10については、上述したとおりである。ただし、図1及び図2等に示す熱伝達抑制シート10に代えて、図4に示す熱伝達抑制シート20、図7に示す熱伝達抑制シート30、図8に示す熱伝達抑制シート40等や、その他、本発明の熱伝達抑制シートを使用することができる。
【0127】
このように構成された組電池100においては、ある電池セル20aが高温になった場合でも、電池セル20bとの間には、熱伝達抑制効果を有する熱伝達抑制シート10が存在しているため、電池セル20bへの熱の伝播を抑制することができ、熱暴走の連鎖を阻止することができる。
また、本実施形態に係る熱伝達抑制シート10は、第1外側部材及び第2外側部材、又は中間部材として弾性部材を使用するため、電池セル20a、20b、20cの変形を抑制する効果と、電池セル20a、20b、20cの変形を吸収する効果とを有する。例えば、異常時に電池セル20aが変形した場合に、第1弾性部材1は電池セル20aの変形を抑制しつつ、電池セル20aの変形に対して柔軟に変形する。したがって、電池セル20aや電池ケース50の破壊を抑制することができる。
【0128】
なお、電池セル20a、20b、20cは、通常使用時である充放電サイクルにおいても、わずかに変形が発生している。すなわち、電池セル20a、20b、20cと電池ケース50との隙間が小さい場合には、電池セル20a、20b、20cの膨張時に、電池セル20a、20b、20cは電池ケース50から圧力を受け、電池セル20a、20b、20cの収縮時に、電池ケース50からの圧力は消失する。このように、電池セル20a、20b、20cに対する押圧と緩和が繰り返されると、電池性能が低下する原因となる。
本実施形態においては、通常使用時である充放電サイクルにおける電池セル20a、20b、20cのわずかな変形に対しても、第1弾性部材1及び第2弾性部材2が柔軟に変形するため、電池セル20a、20b、20cの電池性能の低下を抑制することができる。
【0129】
本実施形態において、電池セル20a、20b、20cは角形であっても丸型であってもよい。
【0130】
また、本発明に係る組電池は、図9に例示した組電池に限定されず、隣り合う電池セル20a、20b、20c間のみでなく、電池セル20a、20b、20cと、その外側に配置される電池ケース50との間に、熱伝達抑制シート10を配置することもできる。
【0131】
このように構成された組電池においても、ある電池セルが発火した場合に、電池ケース50の外側に炎が広がることを抑制することができる。
例えば、本実施形態に係る組電池は、電気自動車(EV:Electric Vehicle)等に使用され、搭乗者の床下に配置されることがある。この場合に、仮に電池セルが発火しても、搭乗者の安全を確保することができる。
また、熱伝達抑制シート10を、各電池セル間に介在させるだけでなく、電池セル20a、20b、20cと電池ケース50との間に配置することができるため、新たに防炎材等を作製する必要がなく、容易に低コストで安全な組電池を構成することができる。
【0132】
本実施形態の組電池において、電池セル20a、20b、20cと電池ケース50との間に熱伝達抑制シート10を配置する場合に、熱伝達抑制シート10と電池セル20a、20b、20cとは、接触していても、隙間を有していてもよい。ただし、熱伝達抑制シート10と電池セル20a、20b、20cとの間に隙間を有していない場合であっても、熱伝達抑制シート10は、第1弾性部材1及び第2弾性部材2を有しているため、いずれかの電池セルの温度が上昇し、体積が膨張した際に、電池セルの変形を許容することができる。
【符号の説明】
【0133】
1,11 第1弾性部材(第1外側部材)
1a,13a 第1凸部
1b,2b 平面部
2,12 第2弾性部材(第2外側部材)
2a,13b 第2凸部
3,13 断熱材(中間部材)
3a,11a 第1凹部
3b,12a 第2凹部
5 空隙部
10,20,30,40 熱伝達抑制シート
20a,20b,20c 電池セル
100 組電池
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9