IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 京セラドキュメントソリューションズ株式会社の特許一覧

特開2023-146565画像形成制御装置、画像形成制御方法及び画像形成制御プログラム
<>
  • 特開-画像形成制御装置、画像形成制御方法及び画像形成制御プログラム 図1
  • 特開-画像形成制御装置、画像形成制御方法及び画像形成制御プログラム 図2
  • 特開-画像形成制御装置、画像形成制御方法及び画像形成制御プログラム 図3
  • 特開-画像形成制御装置、画像形成制御方法及び画像形成制御プログラム 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023146565
(43)【公開日】2023-10-12
(54)【発明の名称】画像形成制御装置、画像形成制御方法及び画像形成制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   B41J 29/38 20060101AFI20231004BHJP
   B41J 2/21 20060101ALI20231004BHJP
   B41J 2/525 20060101ALI20231004BHJP
【FI】
B41J29/38 204
B41J2/21
B41J2/525
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022053796
(22)【出願日】2022-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115831
【弁理士】
【氏名又は名称】藤岡 隆浩
(72)【発明者】
【氏名】長沼 譲
【テーマコード(参考)】
2C056
2C061
2C262
【Fターム(参考)】
2C056EA11
2C056EE03
2C061AP01
2C061AP07
2C061AQ05
2C061AR01
2C061AS06
2C061HH13
2C061HJ10
2C061HQ12
2C262AA02
2C262AA24
2C262AC02
2C262BA02
2C262BA09
2C262GA29
2C262GA59
(57)【要約】
【課題】過去の画像形成の履歴情報を用いて将来的な画像形成コストの変動を予測する。
【解決手段】画像形成制御装置は、画像形成媒体を設定するための媒体設定入力と、画像形成コストの変化量の予測対象となる予測対象期間を指定する期間指定入力とを受け付ける操作表示部と、画像形成媒体上に画像形成装置によって再現される色を調整して色調整内容を設定する色調整設定部と、前年以前の期間において画像形成が実行された少なくとも1つの画像形成ジョブを抽出し、画像形成で消費されたインクの消費量の実測値であるインク消費量実測値を取得する履歴情報抽出部と、インク消費量実測値を順次加算して実測集計値を生成し、画像形成ジョブを使用して色調整内容に基づく画像形成によって消費されるインク消費量予測値を生成し、インク消費量予測値を順次加算してインク消費量集計値を生成する画像形成コスト予測支援部とを備える。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数色のインクを使用して画像形成媒体上に画像を形成する画像形成装置を制御するための画像形成制御装置であって、
画像形成媒体を設定するための媒体設定入力と、画像形成コストの変化量の予測対象となる予測対象期間を指定する期間指定入力とを受け付ける操作表示部と、
前記媒体設定入力で設定されている画像形成媒体上に前記画像形成装置によって再現される色を調整して色調整内容を設定する色調整設定部と、
前記期間指定入力によって指定される前年以前の期間において画像形成が実行された少なくとも1つの画像形成ジョブを抽出し、前記抽出された画像形成ジョブに紐づけられ、前記画像形成で消費されたインクの消費量の実測値であるインク消費量実測値を取得する履歴情報抽出部と、
前記インク消費量実測値を順次加算して実測集計値を生成し、前記抽出された画像形成ジョブを使用して前記色調整内容に基づく画像形成によって消費されるインク消費量予測値を生成し、前記インク消費量予測値を順次加算してインク消費量集計値を生成する画像形成コスト予測支援部と、
を備える画像形成制御装置。
【請求項2】
請求項1記載の画像形成制御装置であって、
前記期間指定入力は、週次と月次の少なくとも一方を含む画像形成制御装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の画像形成制御装置であって、さらに、
前記画像形成コスト予測支援部は、前記予測対象期間における画像形成コストの予想値を前年以前の前記実測集計値と対比可能に前記操作表示部に表示する画像形成制御装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の画像形成制御装置であって、
前記履歴情報抽出部は、前記媒体設定入力で設定されている画像形成媒体が使用されている画像形成ジョブを抽出する画像形成制御装置。
【請求項5】
複数色のインクを使用して画像形成媒体上に画像を形成する画像形成装置を制御するための画像形成制御方法であって、
画像形成媒体を設定するための媒体設定入力と、画像形成コストの変化量の予測対象となる予測対象期間を指定する期間指定入力とを受け付ける操作表示工程と、
前記媒体設定入力で設定されている画像形成媒体上に前記画像形成装置によって再現される色を調整して色調整内容を設定する色調整設定工程と、
前記期間指定入力によって指定される前年以前の期間において画像形成が実行された少なくとも1つの画像形成ジョブを抽出し、前記抽出された画像形成ジョブに紐づけられ、前記画像形成で消費されたインクの消費量の実測値であるインク消費量実測値を取得する履歴情報抽出工程と、
前記インク消費量実測値を順次加算して実測集計値を生成し、前記抽出された画像形成ジョブを使用して前記色調整内容に基づく画像形成によって消費されるインク消費量予測値を生成し、前記インク消費量予測値を順次加算してインク消費量集計値を生成する画像形成コスト予測支援工程と、
を備える画像形成制御方法。
【請求項6】
複数色のインクを使用して画像形成媒体上に画像を形成する画像形成装置を制御するための画像形成制御装置を制御するための画像形成制御プログラムであって、
画像形成媒体を設定するための媒体設定入力と、画像形成コストの変化量の予測対象となる予測対象期間を指定する期間指定入力とを受け付ける操作表示部、
前記媒体設定入力で設定されている画像形成媒体上に前記画像形成装置によって再現される色を調整して色調整内容を設定する色調整設定部、
前記期間指定入力によって指定される前年以前の期間において画像形成が実行された少なくとも1つの画像形成ジョブを抽出し、前記抽出された画像形成ジョブに紐づけられ、前記画像形成で消費されたインクの消費量の実測値であるインク消費量実測値を取得する履歴情報抽出部、及び
前記インク消費量実測値を順次加算して実測集計値を生成し、前記抽出された画像形成ジョブを使用して前記色調整内容に基づく画像形成によって消費されるインク消費量予測値を生成し、前記インク消費量予測値を順次加算してインク消費量集計値を生成する画像形成コスト予測支援部と、として前記画像形成制御装置を機能させる画像形成制御プログラム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成制御装置、画像形成制御方法、画像形成装置及び画像形成制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から印刷前に印刷コストを予測する技術が提案されている。具体的には、たとえば特許文献1は、画像データの印刷に必要な画像形成媒体(特許文献1では、インク及び印刷用紙を意味している。)の使用量を予測し、予測した画像形成媒体の使用量と画像形成媒体の単位量あたりの価格を示す情報とに基づいて画像データの印刷に要する画像形成媒体の価格を算出する技術を提案している。さらに、特許文献2は、画像データを印刷設定項目(用紙タイプや、サイズ、デュプレックス等)に対して設定された変数で印刷するときのコストを予測してユーザーに提示し、ユーザーがコストに満足するまでコストを予測し、ユーザーがコストに満足した印刷設定項目に対して設定された変数で画像データを印刷することを可能とする技術を提案している。このように、従来から画像データに基づいて印刷コストを予測する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002-328796号公報
【特許文献2】特開2020-55204号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、本願発明者は、特にプロダクション印刷の提供業者において、カラーマネージメント機能を用いて色調整の内容を設定する際に、その色調整のコストへの影響をシミュレートすることが画像形成装置の運用において役立つのではないかと考えた。
【0005】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、過去の画像形成の履歴情報を用いて将来的な画像形成コストの変動を予測するための技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、複数色のインクを使用して画像形成媒体上に画像を形成する画像形成装置を制御するための画像形成制御装置を提供する。前記画像形成制御装置は、画像形成媒体を設定するための媒体設定入力と、画像形成コストの変化量の予測対象となる予測対象期間を指定する期間指定入力とを受け付ける操作表示部と、前記媒体設定入力で設定されている画像形成媒体上に前記画像形成装置によって再現される色を調整して色調整内容を設定する色調整設定部と、前記期間指定入力によって指定される前年以前の期間において画像形成が実行された少なくとも1つの画像形成ジョブを抽出し、前記抽出された画像形成ジョブに紐づけられ、前記画像形成で消費されたインクの消費量の実測値であるインク消費量実測値を取得する履歴情報抽出部と、前記インク消費量実測値を順次加算して実測集計値を生成し、前記抽出された画像形成ジョブを使用して前記色調整内容に基づく画像形成によって消費されるインク消費量予測値を生成し、前記インク消費量予測値を順次加算してインク消費量集計値を生成する画像形成コスト予測支援部とを備える。
【0007】
本発明は、複数色のインクを使用して画像形成媒体上に画像を形成する画像形成装置を制御するための画像形成制御方法を提供する。前記画像形成制御方法は、画像形成媒体を設定するための媒体設定入力と、画像形成コストの変化量の予測対象となる予測対象期間を指定する期間指定入力とを受け付ける操作表示工程と、前記媒体設定入力で設定されている画像形成媒体上に前記画像形成装置によって再現される色を調整して色調整内容を設定する色調整設定工程と、前記期間指定入力によって指定される前年以前の期間において画像形成が実行された少なくとも1つの画像形成ジョブを抽出し、前記抽出された画像形成ジョブに紐づけられ、前記画像形成で消費されたインクの消費量の実測値であるインク消費量実測値を取得する履歴情報抽出工程と、前記インク消費量実測値を順次加算して実測集計値を生成し、前記抽出された画像形成ジョブを使用して前記色調整内容に基づく画像形成によって消費されるインク消費量予測値を生成し、前記インク消費量予測値を順次加算してインク消費量集計値を生成する画像形成コスト予測支援工程とを備える。
【0008】
本発明は、複数色のインクを使用して画像形成媒体上に画像を形成する画像形成装置を制御するための画像形成制御装置を制御するための画像形成制御プログラムを提供する。前記画像形成制御プログラムは、画像形成媒体を設定するための媒体設定入力と、画像形成コストの変化量の予測対象となる予測対象期間を指定する期間指定入力とを受け付ける操作表示部、前記媒体設定入力で設定されている画像形成媒体上に前記画像形成装置によって再現される色を調整して色調整内容を設定する色調整設定部、前記期間指定入力によって指定される前年以前の期間において画像形成が実行された少なくとも1つの画像形成ジョブを抽出し、前記抽出された画像形成ジョブに紐づけられ、前記画像形成で消費されたインクの消費量の実測値であるインク消費量実測値を取得する履歴情報抽出部、及び前記インク消費量実測値を順次加算して実測集計値を生成し、前記抽出された画像形成ジョブを使用して前記色調整内容に基づく画像形成によって消費されるインク消費量予測値を生成し、前記インク消費量予測値を順次加算してインク消費量集計値を生成する画像形成コスト予測支援部と、として前記画像形成制御装置を機能させる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、過去の画像形成の履歴情報を用いて将来的な画像形成コストの変動を予測するための技術を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態に係る高速印刷システム10の機能構成を示すブロックダイアグラムである。
図2】一実施形態に係る色調整処理の内容を示すフローチャートである。
図3】一実施形態に係るインク消費量予測処理の内容を示すフローチャートである。
図4】印調整に対するインク消費量の感度分析の一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という)を、図面を参照して説明する。
【0012】
図1は、本発明の一実施形態に係る高速印刷システム10の機能構成を示すブロックダイアグラムである。高速印刷システム10は、3台の画像形成装置100と、5台のパーソナルコンピュータ200と、サーバ300と、3台の測色器500と、LANとを備えている。LANは、3台のパーソナルコンピュータ200と画像形成装置100とを接続している。3台の測色器500は、それぞれ3台のパーソナルコンピュータ200にUSB(Universal Serial Bus)で接続されている。この例では、5台のパーソナルコンピュータ201~205は、同一の構成を有している。サーバ300は、色調整情報データ310と、履歴情報データ320とを格納している。
【0013】
画像形成装置100は、画像形成ユニット110と、ロール紙供給部120と、印刷物収容部130と、画像読取部140とを備える。ロール紙供給部120は、ロール紙ロールRを格納し、ロール紙ロールRから印刷媒体としてのロール紙を画像形成ユニット110に供給する。画像形成ユニット110は、複数色(たとえばCMYK)のインクドットを形成してロール紙Rに印刷対象である印刷対象画像(図示略)を形成する。
【0014】
印刷物収容部130は、画像が再現された印刷媒体をたとえばレーザカッタで裁断して収容する。ロール紙Rは、裁断されて1ページを構成するカット印刷媒体となる。画像読取部140は、印刷媒体上に再現された画像を読み取って画像形成ユニット110の校正を実行することができる。本明細書では、印刷媒体は画像形成媒体とも呼ばれる。
【0015】
パーソナルコンピュータ200は、画像形成制御部210と、測色制御部220と、操作表示部230と、記憶部240とを備えている。画像形成制御部210は、画像形成装置100に画像形成や校正を実行させるための制御データを生成する。測色制御部220は、パーソナルコンピュータ200にUSBで接続されている測色器500を制御し、測色データを取得して管理する。操作表示部230は、タッチパネルとして機能し、様々なメニューを入力画面として表示してユーザーの操作入力を受け付ける。パーソナルコンピュータ200は、画像形成制御装置とも呼ばれる。
【0016】
画像形成制御部210は、色調整設定部211と、インク消費量予測部212と、色変換処理部213と、ハーフトーン処理部214とを備えている。色調整設定部211は、操作表示部230からのユーザー入力に応じて、トーン再現カーブ(Tone Reproduction Curve)を操作することで、印刷対象画像全体の色調や明るさ、コントラストといった色調整パラメータ(色調整内容とも呼ばれる。)を調整することができる。トーン再現カーブは、CMYK各色の入出力濃度カーブである。
【0017】
これにより、ユーザーは、トーン再現カーブを操作することによって、明るさやコントラスト、連続階調(グラデーション)の再現などを調整することができる。トーン再現カーブの操作は、特に、ユーザーの嗜好などに合わせて、写真の色合いや明るさ、色味、メリハリを変えたいときに利用できる。色調整設定部211は、操作表示部230からのユーザー入力に応じて、サーバ300内の色調整情報データ310にトーン再現カーブを登録して保存することができる。これにより、ユーザーは、必要に応じて調整済みのトーン再現カーブを色調整情報データ310から読みだして利用することができる。
【0018】
色変換処理部213は、画像データがRGB画像データである場合に、RGB画像データをCMYK画像データに変換する。ハーフトーン処理部214は、予め設定されているCMYK各色のトーン再現カーブにしたがって、画像形成ユニット110で利用可能なインクを使用し、たとえば大中小のインクドットの形成状態を表すドットデータを生成する。
【0019】
インク消費量予測部212は、インク消費量計算部212Cを有している。インク消費量計算部212Cは、大中小のインクドットの形成数に基づいてインク消費量を計算することができる。インク消費量予測部212の機能について後述する。本実施形態では、インク消費量予測部212は、インクの消費量を予測して画像形成コストの予測を支援する画像形成コスト予測支援部として機能する。
【0020】
画像形成制御部210は、RAMやROM等の主記憶手段、及びMPU(Micro Processing Unit)やCPU(Central Processing Unit)等の制御手段を備えている。パーソナルコンピュータ200は、非一時的な記録媒体であるハードディスクドライブやフラッシュメモリー等からなる記憶部240を有し、画像形成制御部210が実行する処理の制御プログラム(画像形成制御プログラムを含む。)やデータを記憶する。
【0021】
図2は、一実施形態に係る色調整処理の内容を示すフローチャートである。一実施形態に係る色調整処理は、トーン再現カーブを操作することによって、明るさやコントラスト、連続階調(グラデーション)の再現などを調整する処理に加えて、たとえば文書の種類に応じた調整も含まれている。すなわち、業務文書やマニュアルといった文書は、一般に高精度の色再現が要求されない一方、写真画像が重要な文書は、高精度の色再現が要求されることがある。
【0022】
特に、インクジェット印刷では、普通紙(モノクロ用高品質上質紙)や上質紙(カラー用高品質上質紙)、光沢紙、マット紙といった印刷用紙の種類毎に吐出可能なインク量の制限値であるインク量制限値が定められている。インク量制限値が大きな印刷用紙は、色再現範囲(再現可能な色域)が広くなる一方、インク消費量が多くなって印刷コストの上昇の要因となる。
【0023】
ステップS100では、ユーザーは、印刷媒体選択処理を実行する。印刷媒体選択処理では、ユーザーは、予め想定されている印刷仕様(文書の種類)に基づいて印刷媒体を選択し、操作表示部230を操作し、媒体設定入力として色調整処理の前提となる印刷媒体を設定するための入力を行う。
【0024】
ステップS200では、ユーザーは、印刷設定処理を実行する。印刷設定処理では、操作表示部230を操作してユーザーは、たとえば印刷解像度を設定するための入力を行う。ステップS300では、ユーザーは、カラーパッチ出力処理を実行する。カラーパッチ出力処理では、画像形成装置100は、インクドットを形成することによって、選択された印刷媒体上に設定された解像度で所定のカラーチャート(図示略)を再現する。
【0025】
ステップS400では、ユーザーは、カラーパッチ測色処理を実行する。カラーパッチ測色処理では、ユーザーは、そのパーソナルコンピュータ200に接続されている測色器500を使用して所定のカラーチャートに含まれている各カラーパッチを測色する。色調整設定部211は、各カラーパッチの測色によって画像形成装置100の色特性情報を取得することができる。本色特性情報は、上述のように選択されて設定された印刷媒体と印刷解像度を想定する情報である。
【0026】
ステップS500では、ユーザーは、測色データ登録処理を実行する。測色データ登録処理では、色調整設定部211は、画像形成装置100の画像再現特性としてサーバ300内の色調整情報データ310に色特性情報を登録する。色特性情報は、たとえば印刷媒体に紐づけられたICCプロファイルとして登録することができる。
【0027】
ステップS600では、ユーザーは、操作表示部230を操作し、トーンカーブ調整処理を実行するための入力を行う。トーンカーブ調整処理では、ユーザーは、画像形成装置100で印刷したカラーチャートにおいて、たとえばブロンズ化現象の発生の有無を確認しつつインク量制限値を設定する。ユーザーは、さらに、たとえばサンプル画像を画像形成装置100で印刷し、インク量制限値の範囲内でトーン再現カーブを操作する。
【0028】
ステップS700では、色調整設定部211は、操作表示部230を介してトーン再現カーブの操作の完了に応じてインク消費量を予測するか否かをユーザーに問い合わせる。ユーザーがインク消費量を予測することを選択した場合には、処理がステップS800に進められる。ユーザーがインク消費量を予測することを選択しなかった場合には、トーンカーブ登録処理(ステップS950)が実行されて、色調整処理が完了する。トーンカーブ登録処理では、調整済みのトーンカーブが画像形成装置100の登録情報の一部として印刷媒体と紐づけて色調整情報データ310に登録されて利用可能となる。
【0029】
図3は、一実施形態に係るインク消費量予測処理(ステップS800)の内容を示すフローチャートである。ステップS810では、ユーザーは、予測対象期間指定処理を実行する。予測対象期間指定処理では、ユーザーは、一年のうちの予測対象となる特定の週又は月を選択し、予測対象期間を指定する期間指定入力として操作表示部230から入力する。この例では、4月が選択されたものとする。なお、特定の週又は月は、特定の1週や1月だけでなく、週次(1週又は複数の連続する週の週毎)と月次(1月又は複数の連続する月の月毎)の少なくとも一方を含むようにしてもよい。
【0030】
図4は、印調整に対するインク消費量の感度分析の一例を示すグラフである。この例では、一例として季節感に起因するインク消費量の変動がイメージとして感覚的に示されている。グラフの横軸は、濃度の調整量を示しており、縦軸は、インク消費量を示している。具体的には、ユーザーは、たとえば写真画像の鮮やかさを強調するために、たとえばCMYのインク消費量を増やして全体的に濃度(彩度)を上昇させる調整を行ったとする。本願発明者は、この際の濃度調整に対するインク消費量の変化、ひいては画像形成コストの変化量が季節によって変動することに着目した。この例では、インク消費量は、濃度の濃い領域において、濃度を濃くすることによって夏(7月)はインク消費量が大きく変化するのに対し、春(4月)は変化が比較的に小さい。
【0031】
具体的には、4月は、春をイメージする配色、たとえば桜のピンク(たとえば#f7cfe1)や草木が育ち始める緑色(たとえば#cbdb37)などが画像や挿絵で好んで使用される可能性が高く、7月は、夏をイメージする配色、たとえば青い海やさんさんと輝く太陽の赤などが画像や挿絵で好んで使用される可能性が高く、10月は、秋をイメージする配色、たとえば紅葉のオレンジや茶色など暖色系が好んで使用される可能性が高く、そして1月は、冬をイメージする配色、たとえば雪の白色や青やグレー系を取り入れて寒さを感じさせる配色が好まれる。
【0032】
一方、業務用の文書やマニュアルといった印刷は、ユーザー毎に定期的に特定の月や週に発生することも考えられる。さらに、クリスマスの街頭ポスターや展示会も定期的に発生することがある。本願発明者は、このような印刷における配色や用途に周期性があることに着目し、予測対象期間を指定し、それに対応する過去の期間に着目することによって周期的な変動を抑制して印刷コストの予測精度を向上させる方法を一形態として創作した。
【0033】
ステップS820では、インク消費量予測部212は、過去データ取得処理を実行する。過去データ取得処理では、インク消費量予測部212は、前年の4月に印刷された過去の印刷ジョブをサーバ300の履歴情報データ320内で検索し、そのうち1つを取得する。この例では、本検索では、同一の印刷媒体を使用して同一の印刷解像度で印刷が行われた印刷ジョブが抽出されるものとする。本実施形態では、過去データとして印刷ジョブの内容と消費されたインクの実測量であるインク消費量実測値が紐づけして一定の保存期間だけ保存されているものとする。印刷ジョブは、画像形成ジョブとも呼ばれる。
【0034】
ステップS830では、インク消費量予測部212は、履歴情報抽出部として機能し、過去インク実測量加算処理を実行する。過去インク実測量加算では、インク消費量予測部212は、抽出された過去の印刷ジョブに紐づけされたインク消費量実測値を加算する。インク消費量実測値の加算は、抽出された過去の印刷ジョブ毎に加算される(ステップS860)。
【0035】
ステップS840では、インク消費量予測部212は、インク消費量計算処理を実行する。インク消費量計算処理では、インク消費量予測部212は、色変換処理部213を使用してRGB画像データをCMYK画像データに変換し、ハーフトーン処理部214を使用してステップS600で調整済みのトーンカーブに基づいてハーフトーン処理を実行する。これにより、インク消費量予測部212は、たとえば大中小のインクドットの形成状態を表すドットデータを生成することができる。インク消費量計算部212Cは、大中小のインクドットの形成数に基づいてインク消費量を計算する。
【0036】
ステップS850では、インク消費量予測部212は、インク消費量加算処理を実行する。インク消費量加算処理では、インク消費量予測部212は、過去の印刷ジョブに基づいて算出されたインク消費量を加算する。インク消費量予測部212は、指定された期間内(この例では、4月)で抽出された過去ジョブの全てについて実行し、抽出された過去の印刷ジョブ毎にインク消費量予測値を順次加算して、インク消費量集計値を生成する(ステップS860)。
【0037】
ステップS870では、インク消費量予測部212は、過去の印刷ジョブでの実測集計値と、過去の印刷ジョブに基づく新たに調整されたトーンカーブを使用した場合のインク消費量の予測集計値であるインク消費量集計値とを対比可能に操作表示部230に表示する。
【0038】
ステップS900(図2参照)では、ユーザーは、インクの消費量が所望の消費量(たとえば許容コスト範囲内)であるか否かを判断する。インクの消費量が所望の消費量でない場合には、処理をステップS600に戻し、ユーザーは、改めてトーンカーブ調整処理(ステップS600)を実行する。インクの消費量が所望の消費量である場合には、ユーザーは、トーンカーブ登録処理(ステップS950)を実行する。トーンカーブ登録処理では、調整済みのトーンカーブが画像形成装置100の登録情報の一部として印刷媒体と、実測集計値及びインク消費量集計値とを紐づけて色調整情報データ310に登録されて利用可能となる。
【0039】
このように、一実施形態に係る高速印刷システム10は、周期性を考慮し、印刷時期に起因するインク消費量の季節変動を抑制しつつ色調整に起因する将来的なインク消費量の変動を正確に予測することができる。これにより、ユーザーは、色調整に起因するコスト変動を考慮しつつ適切な色調整を実現することができる。
【0040】
本発明は、上記各実施形態だけでなく、以下のような変形例でも実施することができる。
【0041】
第1変形例:上記実施形態では、高速印刷システムは、特定の印刷媒体の選択を前提として色調整の内容に起因するインク消費量の変動に伴う印刷コストに着目しているが、色調整の内容に起因するインク消費量の変動に限定されない。具体的には、たとえば選択する印刷媒体のコストに伴う印刷コストの変化を含めてもよい。
【0042】
第2変形例:上記実施形態では、色調整内容は、ハーフトーン処理におけるトーン再現カーブの操作によって設定されているが、必ずしもトーン再現カーブの操作に限定されない。具体的には、たとえばCMYKのプロセスカラーだけでなく、色変換処理において、有彩色を再現可能な特色(カスタムカラー)や淡色の使用に伴うコスト変動の予測にも利用することができる。色調整設定部211は、カスタムカラーや淡色の使用に関する情報も色調整情報データ310に、たとえば色変換テーブルとして登録することができる。
【0043】
第3変形例:上記実施形態では、前年の予測対象期間に印刷された過去の印刷ジョブが検索されているが、前年に限られず、前年よりも前の年の予測対象期間を検索対象としてもよい。このように、本発明は、過去の履歴、すなわち前年以前(前年のみを含む)の印刷ジョブに関する情報を使用するものであればよい。
【0044】
第4変形例:上記実施形態では、インク消費量集計値が生成されているが、本発明の画像形成コスト予測支援部は、印刷媒体の単価とインク単価とを使用して、画像形成コストの予想値を生成するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0045】
10 高速印刷システム
100 画像形成装置
110 画像形成ユニット
120 ロール紙供給部
130 印刷物収容部
140 画像読取部
200 パーソナルコンピュータ
210 画像形成制御部
211 色調整設定部
212 インク消費量予測部
213 色変換処理部
220 測色制御部
230 操作表示部
500 測色器

図1
図2
図3
図4