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  • 特開-不燃化粧板 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023146572
(43)【公開日】2023-10-12
(54)【発明の名称】不燃化粧板
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/00 20060101AFI20231004BHJP
   B32B 7/027 20190101ALI20231004BHJP
   B32B 13/12 20060101ALI20231004BHJP
   E04B 1/94 20060101ALI20231004BHJP
   E04C 2/26 20060101ALI20231004BHJP
【FI】
B32B27/00 E
B32B7/027
B32B13/12
E04B1/94 V
E04C2/26 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022053808
(22)【出願日】2022-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】▲濱▼口 智行
(72)【発明者】
【氏名】清水 正文
(72)【発明者】
【氏名】土井 孝志
【テーマコード(参考)】
2E001
2E162
4F100
【Fターム(参考)】
2E001DE01
2E001FA03
2E001GA12
2E001GA42
2E001GA44
2E001HA28
2E001HC07
2E001HC08
2E001HD11
2E001HD13
2E001JA22
2E001JA25
2E001JA26
2E162CA27
2E162CE08
2E162FA14
2E162FA16
2E162FA17
4F100AD01A
4F100AD03A
4F100AE01B
4F100AK01C
4F100AK03A
4F100AK12C
4F100AK15C
4F100AK22
4F100AK22C
4F100AK25C
4F100AK42C
4F100AK51
4F100AK51C
4F100BA03
4F100CB03C
4F100EC182
4F100EJ17
4F100EJ422
4F100GB07
4F100HB00A
4F100JJ07
4F100JK09
4F100JL11
4F100YY00C
(57)【要約】
【課題】不燃化粧板を製造する際の工程数を削減し、かつ、不燃化粧板同士を重ね合わせた際に生じる化粧層の傷付きを防止することができる不燃化粧板を提供する。
【解決手段】化粧層と、無機系基材と、上記無機系基材の上記化粧層を有する側と反対側面に直接積層され、一層からなり、かつ、最外層に位置する樹脂層とを少なくともこの順に有し、上記樹脂層の厚みが20μm以上120μm以下である不燃化粧板。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
化粧層と、
無機系基材と、
前記無機系基材の前記化粧層を有する側と反対側面に直接積層され、一層からなり、かつ、最外層に位置する樹脂層とを少なくともこの順に有し、
前記樹脂層の厚みが20μm以上120μm以下
である不燃化粧板。
【請求項2】
前記樹脂層は、ウレタン系、酢酸ビニル系、ポリスチレン系、アクリル系、ポリ塩化ビニル系、ポリエチレンテレフタレート系からなる群より選択される少なくとも1種の樹脂を含有する請求項1に記載の不燃化粧板。
【請求項3】
前記樹脂層は、ホットメルト系の樹脂からなる請求項1又は2に記載の不燃化粧板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不燃化粧板に関する。
【背景技術】
【0002】
建築基準法で規定されている特殊建築物(病院、商業施設等)や大型建築物(高層住宅等)の建具や壁面材等には、無機系基材の表面に化粧層(樹脂、紙)を貼り合わせた不燃化粧板が使用されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、無機材料を含む無機基材層と、金属層を含み上記無機基材層の表面に設けられた表面層とを有する基材と、上記材の表面層側の面に形成されたシーラー層と、上記シーラー層の表面に形成された表面接着剤層と、上記表面接着剤層の表面に形成され、樹脂フィルムと、上記樹脂フィルムの上記表面接着剤層とは反対側の面に順に形成された印刷層及び表面保護層と、上記樹脂フィルムの上記表面接着剤層側の面に形成された裏面プライマー層とを有する化粧シートと、上記基材の上記無機基材層側の面に設けられ、樹脂フィルムと、上記樹脂フィルムの上記基材側の面に順に形成された蒸着層、樹脂層及び表面プライマー層と、上記樹脂フィルムの上記基材側と反対側の面に形成された表面濡れ性改質層とを有する防湿シートと、上記基材と上記防湿シートとの間に形成された裏面接着剤層と、を備える不燃化粧板が開示されている。
【0004】
特許文献1に記載のように、従来の不燃化粧板では、無機基材層の表面側に樹脂フィルム、印刷層及び表面保護層を備える所謂化粧層を有しており、上記無機基材層の裏面側に裏面接着剤層や防湿シート等、複数の層を有している。
【0005】
無機基材層の裏面側に設けられる複数の層は、不燃化粧板の製造や加工のために不燃化粧板同士を重ね合わせた際に、無機系基材を構成している鉱物が化粧層を傷付けることを防止したり、建具等を製造する際に不燃化粧板と芯材との接着性を向上したりすることを目的として設けられている。
【0006】
しかしながら、従来の無機基材層の裏面側に複数の層を設ける方法では、裏面側の層を製造する工程と、これらを貼り合わせる工程とが必要となり、生産上の負荷が大きいといった課題があった。
【0007】
また、不燃化粧板を構成する層が増えるために、環境負荷が増加(CO排出量等が増加)するといった課題もあり、代替策が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2017-087620号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、不燃化粧板を製造する際の工程数を削減し、かつ、不燃化粧板同士を重ね合わせた際に生じる化粧層の傷付きを防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上述した課題を解決するため鋭意検討したところ、無機系基材の化粧層を有する側と反対側面に直接積層され、一層からなり、かつ、最外層に位置する樹脂層を有し、上記樹脂層の厚みを所定の範囲とすることにより、不燃化粧板を製造する際の工程数を削減して生産上及び環境上の負荷を軽減することができ、更に製造や加工のために不燃化粧板同士を重ね合わせた際に無機系基材を構成している鉱物が化粧層を傷付けることをも防止することができることを見出し、本発明に到達した。
【0011】
すなわち、本発明は、化粧層と、無機系基材と、上記無機系基材の上記化粧層を有する側と反対側面に直接積層され、一層からなり、かつ、最外層に位置する樹脂層とを少なくともこの順に有し、上記樹脂層の厚みが20μm以上120μm以下である不燃化粧板である。
【0012】
本発明の不燃化粧板において、上記樹脂層は、ウレタン系、酢酸ビニル系、ポリスチレン系、アクリル系、ポリ塩化ビニル系、ポリエチレンテレフタレート系からなる群より選択される少なくとも1種の樹脂を含有することが好ましい。
また、上記樹脂層は、ホットメルト系の樹脂からなることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、不燃化粧板を製造する際の工程数を削減し、かつ、不燃化粧板同士を重ね合わせた際に生じる化粧層の傷付きを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本発明の不燃化粧板の一例を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の不燃化粧板について説明する。
なお、以下の記載において、「~」で表される数値範囲の下限上限は「以上以下」を意味する(例えば、α~βならば、α以上β以下である)。
【0016】
<不燃化粧板>
本発明の不燃化粧板は、化粧層と、無機系基材と、上記無機系基材の上記化粧層を有する側と反対側面に直接積層され、一層からなり、かつ、最外層に位置する樹脂層とを少なくともこの順に有し、上記樹脂層の厚みが20μm以上120μm以下である。
なお、後述する無機系基材を用いることにより、不燃性を付与することができる。
また、本発明の不燃性化粧板は、ISO5660-1に規定される試験方法において、(1)加熱開始後20分間の総発熱量が8MJ/m以下であること、(2)加熱開始20分間の発熱速度が10秒以上継続して200kW/mを超えないこと、(3)加熱開始後20分間に裏面に達する割れや防火上有害な変形がないこと、を満たすことが好ましい。
【0017】
図1は、本発明の不燃化粧板の一例を模式的に示す断面図である。
図1に示すように、本発明の不燃化粧板10は、化粧層1と、無機系基材2と、無機系基材2の化粧層1を有する側と反対側面に直接積層され、一層からなり、かつ、最外層に位置する樹脂層3とを少なくともこの順に有する。
樹脂層3は、厚みが20μm以上120μm以下である。
まずは、化粧層について説明する。
【0018】
(化粧層)
本発明の不燃化粧板は、化粧層を有する。
上記化粧層としては、不燃化粧板に意匠性を付与することができれば特に限定されない。
【0019】
上記化粧層としては、例えば、基材を備える構成が挙げられる。
【0020】
上記基材としては、樹脂シートであってもよく、化粧紙用の原紙であってもよい。
【0021】
上記樹脂シートとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル系樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、エチレン-プロピレン共重合体樹脂、エチレン-プロピレン-ブテン共重合体樹脂、オレフィン系熱可塑性エラストマー等のポリオレフィン系樹脂;アクリル変性ウレタン系樹脂、ポリエステル変性ウレタン系樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体変性ウレタン系樹脂等のポリウレタン系樹脂;アクリル系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;ポリスチレン系樹脂;塩化ビニル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、及び塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体樹脂等を挙げることができ、これらのうち1種又は2種以上を組合せて用いることができる。
上記樹脂シートの厚みとしては、例えば、30μm以上300μm以下程度である。
【0022】
上記化粧紙用の原紙としては、例えば、20g/m以上100g/m以下程度の坪量の薄葉紙、上質紙、和紙、不織布、クラフト等が挙げられる。
【0023】
上記化粧層は、絵柄層を備えてもよい。
上記絵柄層としては、任意の柄を形成することができ、例えば、木目模様、石目模様、砂目模様、タイル貼模様、煉瓦積模様、布目模様、皮絞模様、幾何学図形、文字、記号、抽象模様等が挙げられる。
【0024】
上記絵柄層は、例えば、ポリビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリビニルアセタール系樹脂、セルロース系樹脂等の樹脂をバインダーとし、公知の顔料又は染料を着色剤として含有する印刷インキによる印刷を行うことで形成することができる。
【0025】
上記基材上に上記絵柄層を形成する方法としては、グラビア印刷、オフセット印刷、シルクスクリーン印刷、転写シートからの転写印刷、昇華転写印刷、インクジェット印刷等の公知の印刷法が挙げられる。
【0026】
上記絵柄層の厚みは、例えば、0.1μm以上10μm以下程度である。
【0027】
上記化粧層は、透明性樹脂層、表面保護層、接着剤層、及び、プライマー層等を有してもよい。
【0028】
上記透明性樹脂層としては、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-アクリル酸エステル共重合体、アイオノマー、ポリメチルペンテン、アクリル酸エステル、メタアクリル酸エステル、ポリカーボネート、セルローストリアセテート等が挙げられる。
【0029】
上記透明性樹脂層には、必要に応じて、充填剤、艶消し剤、発泡剤、難燃剤、滑剤、帯電防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、ラジカル捕捉剤、軟質成分(例えばゴム)等の各種の添加剤が含まれていても良い。
【0030】
上記透明性樹脂層の厚みは特に限定されないが、一般的には10μm以上400μm以下程度である。
【0031】
上記表面保護層としては、例えば、電離放射線硬化型樹脂又は2液硬化型ウレタン系樹脂を含有する層が挙げられる。
【0032】
上記電離放射線硬化型樹脂としては、特に限定されず、紫外線、電子線等の電離放射線の照射により重合架橋反応可能な公知のラジカル重合性二重結合を分子中に含むプレポリマー(オリゴマーを含む)及び/又はモノマーを主成分とする透明性樹脂が使用できる。
【0033】
上記電離放射線硬化型樹脂を硬化させるために用いる電離放射線としては、電磁波又は荷電粒子が用いることができ、通常は紫外線又は電子線を用いればよいが、可視光線、X線、イオン線等を用いてもよい。
【0034】
上記2液硬化型ウレタン系樹脂としては特に限定されないが、中でも主剤としてOH基を有するポリオール成分(アクリルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、エポキシポリオール等)と、硬化剤成分であるイソシアネート成分(トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、メタキシレンジイソシアネート等)とを含むものが使用できる。
【0035】
上記表面保護層は、必要に応じて、可塑剤、安定剤、充填剤、分散剤、染料、顔料等の着色剤、溶剤等を含んでもよい。
【0036】
上記表面保護層の厚みは特に限定されず、最終製品の特性に応じて適宜設定できるが、通常0.1μm以上50μm以下、好ましくは1μm以上20μm以下程度である。
【0037】
上記接着剤層としては、特に限定されず、公知の接着剤を用いればよい。
例えば、ポリウレタン系、アクリル系、ポリオレフィン系、ポリ酢酸ビニル系、ポリ塩化ビニル系、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、アイオノマー等のほか、ブタジエン-アクリルニトリルゴム、ネオプレンゴム、天然ゴム等が挙げられる。
これら接着剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0038】
上記プライマー層としては、特に限定されず、公知のプライマー剤から形成される層を用いることができる。
上記プライマー剤としては、例えば、アクリル変性ウレタン樹脂(アクリルウレタン系樹脂)等からなるウレタン樹脂系プライマー剤、ウレタン-セルロース系樹脂(例えば、ウレタンと硝化綿の混合物にヘキサメチレンジイソシアネートを添加してなる樹脂)からなるプライマー剤、アクリルとウレタンのブロック共重合体からなる樹脂系プライマー剤等が挙げられる。プライマー剤には、必要に応じて、添加剤を配合してもよい。添加剤としては、例えば、炭酸カルシウム、クレー等の充填剤、水酸化マグネシウム等の難燃剤、酸化防止剤、滑剤、発泡剤、紫外線吸収剤、光安定剤などが挙げられる。添加剤の配合量は、製品特性に応じて適宜設定できる。
【0039】
上記化粧層は、意匠性を付与する観点から、凹凸形状を有してもよい。
【0040】
上記凹凸形状としては、例えば、JIS B 0601(1982)に規定される中心線平均粗さRaが、1μm以上30μm以下の範囲であり、JIS B 0601(2001)に規定される最大高さRzが20μm以上200μm以下の範囲であるものが挙げられる。
【0041】
上記凹凸形状を形成する方法としては特に限定されず、例えば、熱によるエンボス加工、賦形シートによって凹凸形状を転写させる方法等が挙げられる。
熱によるエンボス加工としては、例えば、周知の枚葉、又は、輪転式のエンボス機によるエンボス加工を施す方法が挙げられる。
また、エンボスの柄模様としては、例えば、砂目、ヘアライン、梨地、木目版導管溝、石板表面凹凸、布表面テクスチュア、万線条溝等が挙げられる。
【0042】
上記化粧層の製造方法としては特に限定されず、例えば、上述した基材上に、絵柄層を形成し、透明性樹脂層、表面保護層等をプライマー層や、接着剤層を介して積層すればよい。
【0043】
上記化粧層は、転写により形成してもよい。
上記転写により化粧層を形成する場合、例えば、転写用の基材上に、表面保護層、プライマー層、及び接着剤層をこの順に有する転写用シートを用いて、上記接着剤層を介して上述した基材上に転写すればよい。
上記接着剤層、プライマー層、及び、表面保護層は、上述した構成を適宜選択して用いることができる。
【0044】
上記転写用の基材としては、ポリエステル樹脂フィルム又はポリオレフィン樹脂フィルムにより構成されることが好ましい。
上記転写用の基材は、離型性を確保するために、必要に応じて表面に公知の離型処理を施すか、或いは、シリコーン樹脂等の離型層を設けたものであってもよい。
上記転写用の基材の厚みとしては、特に限定されず、例えば、4μm以上200μm以下である。
【0045】
(無機系基材)
本発明の不燃化粧板は、無機系基材を有する。
【0046】
上記無機系基材としては、不燃化粧板の分野で従来公知のものが幅広く使用できる。
例えば、シラス発泡体、白土、軽石等の火山性ガラス質堆積物などが挙げられる。
【0047】
上記無機系基材としては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、ホウ砂等の無機質系充填材と、炭酸カルシウム、マイクロシリカ、スラグ粉等の無機質系粉体とを含むことが好ましい。
【0048】
上記無機系基材としては、例えば、ロックウール、スラグウール、グラスウール、ミネラルウール等の人造鉱物繊維保温材と、でん粉、フェノール樹脂、ポリビニルアルコール等の有機系結合剤と、ワックス系サイズ剤とを更に含むことが好ましい。
【0049】
上記無機系基材は、任意の厚みを選択することができるが、例えば厚み2mm以上15mm以下であることが好ましく、発熱性などの観点から2mm以上9mm以下であることがより好ましく、運搬時の取り回しやすさなどの観点から2mm以上4mm以下であれば更に好ましい。
【0050】
上記無機系基材は、任意の1平方メートル当たり質量を選択することができるが、例えば1平方メートル当たりの質量が1.5kg/m以上4.0kg/m以下であることが好ましい。
【0051】
上記無機系基材の具体例としては、火山性ガラス質複層板(JISA5440「不燃火山性ガラス質複層板」に準拠)等の板を挙げることができる。
【0052】
(樹脂層)
本発明の不燃化粧板は、上記無機系基材の上記化粧層を有する側と反対側面に直接積層され、一層からなり、かつ、最外層に位置する樹脂層を有する。
なお、上記「直接積層」とは、上記無機系基材と樹脂層との間に他の層を有さないことを意味する。
【0053】
上記樹脂層は、上記無機系基材の上記化粧層を有する側と反対側面に直接積層されており、一層からなり、かつ、最外層に位置するので、上記無機系基材の上記化粧層を有する側と反対側面に複数の層を有する従来の構成と比較して、不燃化粧板を製造する際の工程数を削減して生産上及び環境上の負荷を軽減することができる。
【0054】
上記樹脂層は、厚みが20μm以上120μm以下である。
このような厚みを有するので、製造や加工のために不燃化粧板同士を重ね合わせたとしても、化粧層を傷付けることを防止することができる。
上記樹脂層の厚みが120μmを超えると、上記無機系基材の端部から樹脂層を構成する樹脂が落下して製造の際に用いるローラー(送りローラー)等の機器に上記樹脂が付着する等の不具合が発生するため装置の洗浄等や、不燃化粧板を汚損するため汚れ除去等をしなければ次の工程に進行することができず、工程数の削減に寄与しない。
上記樹脂層は、環境負荷を抑制する観点や、コストの面から厚みが20μm以上120μm以下であることが好ましく、30μm以上105μm以下であることがより好ましく、40μm以上70μm以下であることがさらに好ましい。
【0055】
上記樹脂層は、ウレタン系、酢酸ビニル系、ポリスチレン系、アクリル系、ポリ塩化ビニル系、ポリエチレンテレフタレート系からなる群より選択される少なくとも1種の樹脂を含有することが好ましい。
上記樹脂を用いることにより、後述する芯材との接着性を好適に付与することができる。
上記樹脂層は、接着性やタックフリー性を好適に付与することができる観点から、ウレタン系の樹脂からなることがより好ましい。
なお、タックフリー性とは、樹脂層を指先(腹)で触って、樹脂が付着しない性質を意味する。
【0056】
上記樹脂層は、ホットメルト系の樹脂からなることが好ましい。
上記樹脂層がホットメルト系の樹脂からなることにより、接着性やタックフリー性を好適に付与することができる。
【0057】
上記ホットメルト系の樹脂としては、エチレン酢酸ビニル系、ポリオレフィン系、ポリアミド系、合成ゴム系、アクリル系、ポリウレタン系、ポリエステル系等の熱可塑性樹脂、若しくは、ポリウレタン系、ポリオレフィン系等の湿気硬化型樹脂を用いることができる。
【0058】
上記樹脂層を形成する方法としては特に限定されないが、例えば、ロールコート法、グラビアコート法、スプレイコート法、押出コート法、インフレーションコート法、スロットコート法、スパイラルコート法等の塗布法で塗布し、乾燥及び硬化させる方法が挙げられる。
【0059】
(その他)
本発明の不燃化粧板は、上記化粧層と上記無機系基材との間に、プライマー層や接着剤層を有しても良い。
上記プライマー層や接着剤層としては、上述した化粧層で記載したものを適宜選択して用いることができる。
【0060】
(不燃化粧板の製造方法)
本発明の不燃化粧板は、例えば、無機系基材と、化粧層とを準備し、無機系基材と、化粧層の基材側とを、接着剤層又はプライマー層を介して接着し、上記無機系基材の化粧層を積層した側と反対側の面に、ロールコート等の方法により樹脂層を形成すればよい。
上記無機系基材に化粧層を積層する工程と、樹脂層を形成する工程はいずれを先に行ってもよく、例えば、上記無機系基材に対して樹脂層を形成した後に、上記無機系基材の樹脂層を形成した側と反対側に化粧層を積層する工程を行ってもよい。
【0061】
(芯材)
本発明の不燃化粧板は、芯材に貼り合わせることにより建具等として用いることができる。
【0062】
上記芯材としては、例えば、木材単板(LVL材)、木材合板、パーチクルボード、MDF(中密度繊維板)等の木質板;石膏板、石膏スラグ板等の石膏系板;珪酸カルシウム板、石綿スレート板、軽量発泡コンクリート板、中空押出セメント板等のセメント板;パルプセメント板、石綿セメント板、木片セメント板等の繊維セメント板;陶器、磁器、土器、硝子、琺瑯等のセラミックス板;鉄板、亜鉛メッキ鋼板、ポリ塩化ビニルゾル塗布鋼板、アルミニウム板、銅板等の金属板;ポリオレフィン樹脂板、ポリ塩化ビニル樹脂板、アクリル樹脂板、ABS板、ポリカーボネート板等の熱可塑性樹脂板;フェノール樹脂板、尿素樹脂板、不飽和ポリエステル樹脂板、ポリウレタン樹脂板、エポキシ樹脂板、メラミン樹脂板等の熱硬化性樹脂板;フェノール樹脂、尿素樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ジアリルフタレート樹脂等の樹脂を、硝子繊維不織布、布帛、紙、その他の各種繊維質基材に含浸硬化して複合化したいわゆるFRP板等が挙げられ、これらを単独で用いてもよく、これらの2種以上を積層した複合基板として用いてもよい。
また、熱可塑性樹脂板や熱硬化性樹脂板は必要に応じて、着色剤(顔料又は染料)、木粉や炭酸カルシウム等の充填剤、シリカ等の艶消し剤、発泡剤、難燃剤、タルク等の滑剤、帯電防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤等の各種の添加剤が含まれていてもよい。
なお、上記芯材の厚みは用途に応じて適宜選択すればよい。
【0063】
上記芯材へ本発明の不燃化粧板を積層する方法としては特に限定されず、例えば、上述したプライマー層を介して積層したり、上述した接着剤層を介して積層したりする手段等が挙げられる。
【実施例0064】
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、この例によって限定されるものではない。
【0065】
実施例及び比較例に用いる無機系基材及び化粧層として、以下の材料を準備した。
(無機系基材)
火山性ガラス質複層板(厚み3mm、製品名ダイライトFTL、大建工業株式会社製)
(化粧層)
ポリオレフィン系基材である化粧シート(厚み120μm)
【0066】
(実施例1)
無機系基材として準備した厚み3mmの火山性ガラス質複層板の一方の面(火山性ガラス質の面)に、ロールコーターを用いて、ウレタン系ホットメルトタイプ樹脂を厚みが50μmとなるように塗布して樹脂層を形成した。
その後、無機系基材の樹脂層を形成した側と反対側に、接着剤層(2液硬化型ウレタン系エマルジョンタイプ接着剤(ポリエステルポリオール1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)との混合))を介して準備した化粧シートを積層して、不燃化粧板を作製した。
【0067】
(実施例2~3、比較例1~2)
樹脂層の厚みを表1に記載の数値に変更したこと以外は実施例1と同様にして、不燃化粧板を作製した。
【0068】
<作製時又は加工時の傷の発生>
不燃化粧板の作製時、又は、不燃化粧板の建具加工の時における傷の発生を確認し、以下の基準で評価した。その結果を表1に示す。
なお、建具加工は、化粧板/芯材貼り合わせ、正寸カット、建具側面に木口テープ貼り、NCルーター加工、金具取付、検査・梱包の順で生産され、その工程内において不燃化粧材を重ね合わせた際に発生する傷を評価した。
+:傷付きなし
+/-:軽微な傷付きあり
-:傷付きあり(化粧層の意匠性が明確に悪化)
【0069】
<加工適性>
不燃化粧板の作製時において、無機系基材の一方の面に樹脂層を形成する樹脂を塗布する工程において、以下の不具合発生有無を評価した。その結果を表1に示す。
+:不具合発生なし
+/-:樹脂層を形成する樹脂が無機系基材の端部から落下する不具合が一部発生するが、次の工程(化粧層の積層)に進行することは可能であった
-:送りローラー等に樹脂層を形成する樹脂が付着し、次の工程(化粧層の積層)に進行することができなかった
【0070】
<タックフリー性評価(指触乾燥性)>
不燃化粧板の樹脂層を指先(腹)で触って、樹脂層を構成する樹脂が付着するかを以下の基準で評価した。その結果を表1に示す。
+:樹脂の付着なし
-:樹脂の付着あり
【0071】
<芯材との接着性>
不燃化粧板の樹脂層を備える側と、芯材(LVL材)とを酢酸ビニル系接着剤を用いて貼り合わせ後に75mm×75mmサイズにカットして試験サンプルを作製した。
試験サンプルに対して2類浸漬剥離試験(60℃温水に2時間浸漬後、60オーブンで3時間乾燥)を実施し、不燃化粧板の樹脂層と、芯材との間の剥離の有無を評価した。
+:剥離なし
-:剥離あり
【0072】
【表1】
【0073】
表1より、実施例の不燃化粧板は、作製時又は加工時に不燃化粧板同士を重ね合わせた際に生じる化粧層の傷付きを防止することができ、芯材との接着性も良好であり、タックフリー性にも優れることが確認された。
また、実施例の不燃化粧板において、樹脂層は、無機系基材の化粧層を有する側と反対側面に直接積層され、一層からなり、かつ、最外層に位置するため、工程数を削減することができることも確認された。
また、樹脂層の厚みが50μmである実施例1の不燃化粧板は、加工適性にも優れるものであった。
一方で、樹脂層の厚みが10μmである比較例1では、傷付きを十分に防止することができなかった。
また、樹脂層の厚みが140μmである比較例2では、送りローラー等に樹脂層を構成する樹脂が付着し、送りローラーの洗浄をしなければ次の工程(化粧層の積層)に進行することができず、工程上の不具合が発生した。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明の不燃化粧板は、不燃化粧板を製造する際の工程数を削減し、かつ、不燃化粧板同士を重ね合わせた際に生じる化粧層の傷付きを防止することができるので、建具等に用いる不燃化粧板として有用である。
【符号の説明】
【0075】
1 化粧層
2 無機系基材
3 樹脂層
10 不燃化粧板
図1