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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023146581
(43)【公開日】2023-10-12
(54)【発明の名称】ハニカムフィルタ
(51)【国際特許分類】
   B01D 39/20 20060101AFI20231004BHJP
   B01J 35/04 20060101ALI20231004BHJP
   B01D 46/00 20220101ALI20231004BHJP
   C04B 38/00 20060101ALN20231004BHJP
【FI】
B01D39/20 D
B01J35/04 301E
B01J35/04 ZAB
B01J35/04 301F
B01D46/00 302
C04B38/00 303Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022053821
(22)【出願日】2022-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088616
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 一平
(74)【代理人】
【識別番号】100154829
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 成
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 文彦
(72)【発明者】
【氏名】栗本 雄大
【テーマコード(参考)】
4D019
4D058
4G019
4G169
【Fターム(参考)】
4D019AA01
4D019BA05
4D019BB06
4D019BC07
4D019BC12
4D019BD01
4D019CA01
4D019CB04
4D019CB06
4D058JA38
4D058JA39
4D058JB41
4D058KA25
4D058SA08
4D058TA06
4G019FA12
4G169AA01
4G169BA13A
4G169BA13B
4G169CA03
4G169CA08
4G169CA13
4G169CA18
4G169DA06
4G169EA18
4G169EA25
4G169EA26
4G169EA27
4G169EB12X
4G169EB12Y
4G169EB15X
4G169EB15Y
4G169EC30
4G169ED03
4G169ED10
(57)【要約】
【課題】耐熱衝撃性に優れたハニカムフィルタを提供する。
【解決手段】流入端面11から流出端面12まで延びる流体の流路となる複数のセル2を取り囲むように配置された多孔質の隔壁1を有する柱状のハニカム基材4と、ハニカム基材4の外周を囲繞するように配設された外周コート層3と、セル2の流入端面11側の端部又は流出端面12側の端部のいずれか一方に配設された多孔質の目封止部5と、を備え、外周コート層3は、外周コート層3の熱膨張挙動における熱膨から収縮に転じる変曲点の温度T1が1000~1500℃であり、且つ、外周コート層3の気孔率P1が36~48%であり、外周コート層3の40~800℃間の熱膨張係数C1が2.5~3.5×10-6/℃である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流入端面から流出端面まで延びる流体の流路となる複数のセルを取り囲むように配置された多孔質の隔壁を有する柱状のハニカム基材と、
前記ハニカム基材の外周を囲繞するように配設された外周コート層と、
前記セルの前記流入端面側の端部又は前記流出端面側の端部のいずれか一方に配設された多孔質の目封止部と、を備え、
前記外周コート層は、当該外周コート層の熱膨張挙動における熱膨から収縮に転じる変曲点の温度T1が1000~1500℃であり、且つ、
前記外周コート層の気孔率P1が36~48%であり、前記外周コート層の40~800℃間の熱膨張係数C1が2.5~3.5×10-6/℃である、ハニカムフィルタ。
【請求項2】
前記ハニカム基材の気孔率P2が53~60%である、請求項1に記載のハニカムフィルタ。
【請求項3】
前記外周コート層の気孔率P1と、前記ハニカム基材の気孔率P2との比(P1/P2)が0.6~0.9である、請求項1又は2に記載のハニカムフィルタ。
【請求項4】
前記外周コート層の表面粗さRaが10~25μmである、請求項1~3のいずれか一項に記載のハニカムフィルタ。
【請求項5】
前記外周コート層の厚さL1が1~3mmである、請求項1~4のいずれか一項に記載のハニカムフィルタ。
【請求項6】
前記隔壁の厚さL2が0.17~0.32mmであり、前記ハニカム基材のセル密度が30~63個/cmである、請求項1~5のいずれか一項に記載のハニカムフィルタ。
【請求項7】
前記ハニカム基材の40~800℃間の熱膨張係数C2が0.2~1.5×10-6/℃である、請求項1~6のいずれか一項に記載のハニカムフィルタ。
【請求項8】
前記外周コート層の熱膨張係数C1と、前記ハニカム基材の熱膨張係数C2との比(C1/C2)が3~12である、請求項7に記載のハニカムフィルタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハニカムフィルタに関する。更に詳しくは、耐熱衝撃性に優れたハニカムフィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ディーゼルエンジン等の内燃機関より排出される排ガス中の粒子状物質を捕集するフィルタや、CO,HC,NOxなどの有毒なガス成分を浄化する装置として、ハニカム構造体を用いたハニカムフィルタが知られている。ハニカム構造体は、コージェライトや炭化珪素などの多孔質セラミックスによって構成された隔壁を有し、この隔壁によって複数のセルが区画形成されたものである。ハニカムフィルタは、上述したハニカム構造体に対して、複数のセルの流入端面側の開口部と流出端面側の開口部とを交互に目封止するように目封止部を配設したものである。即ち、ハニカムフィルタは、流入端面側が開口し且つ流出端面側が目封止された流入セルと、流入端面側が目封止され且つ流出端面側が開口した流出セルとが、隔壁を挟んで交互に配置された構造となっている。そして、ハニカムフィルタにおいては、ハニカム構造体の多孔質の隔壁が、排ガス中の粒子状物質を捕集するフィルタの役目を果たしている。以下、排ガスに含まれる粒子状物質を、「PM」ということがある。「PM」は、「particulate matter」の略である。
【0003】
一方、種々の産業技術分野に対応したハニカム構造体を製造する場合、通常よりも大きい外径(即ち、軸方向に直交する断面の直径)を有する大型ハニカム構造体が要求されることがある。このような大型ハニカム構造体を押出成形によって一体的に形成しようとした場合、例えば、外周部の隔壁の形状が安定せず、ハニカム構造体の製品形状や寸法精度が低下することがある。
【0004】
そこで、ハニカム構造体の外周面を砥石などで研削加工し、その外径を一定に整えた後、研削加工したハニカム構造体(以下、「ハニカム基材」ともいう)の外周面に、再度、外周コート層(外周壁)を設ける技術などが提案されている(例えば、特許文献1及び2参照)。このような技術によれば、外周コート層によって製品形状や寸法精度を高めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015-166296号公報
【特許文献2】特開2020-45264号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ハニカム基材の外周面に外周コート層を設けたハニカムフィルタは、ハニカム基材と外周コート層の熱膨張差が大きく、排気温度の上昇に伴いハニカムフィルタに破損が生じることがあるという問題があった。
【0007】
本発明は、このような従来技術の有する問題点に鑑みてなされたものである。本発明者らは、排気温度の上昇に伴う破損が抑制され、耐熱衝撃性に優れたハニカムフィルタを実現するために鋭意検討した結果、以下のような知見を得た。外周コート層は、その熱膨張挙動において、ある温度を起点として膨張から収縮に転じる変曲点を有しており、排気温度が上記変曲点の温度を超えると、外周コート層は収縮挙動を示す。一方で、ハニカム基材は、上記変曲点の温度を超えても、依然として膨張挙動を示すため、ハニカム基材と外周コート層との膨張収縮差で高い応力が発生し、ハニカムフィルタが破損してしまう。本発明によれば、上述したような排気温度の上昇に伴う破損が抑制され、耐熱衝撃性に優れたハニカムフィルタが提供される。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、以下に示す、ハニカムフィルタが提供される。
【0009】
[1] 流入端面から流出端面まで延びる流体の流路となる複数のセルを取り囲むように配置された多孔質の隔壁を有する柱状のハニカム基材と、
前記ハニカム基材の外周を囲繞するように配設された外周コート層と、
前記セルの前記流入端面側の端部又は前記流出端面側の端部のいずれか一方に配設された多孔質の目封止部と、を備え、
前記外周コート層は、当該外周コート層の熱膨張挙動における熱膨から収縮に転じる変曲点の温度T1が1000~1500℃であり、且つ、
前記外周コート層の気孔率P1が36~48%であり、前記外周コート層の40~800℃間の熱膨張係数C1が2.5~3.5×10-6/℃である、ハニカムフィルタ。
【0010】
[2] 前記ハニカム基材の気孔率P2が53~60%である、前記[1]に記載のハニカムフィルタ。
【0011】
[3] 前記外周コート層の気孔率P1と、前記ハニカム基材の気孔率P2との比(P1/P2)が0.6~0.9である、前記[1]又は[2]に記載のハニカムフィルタ。
【0012】
[4] 前記外周コート層の表面粗さRaが10~25μmである、前記[1]~[3]のいずれかに記載のハニカムフィルタ。
【0013】
[5] 前記外周コート層の厚さL1が1~3mmである、前記[1]~[4]のいずれかに記載のハニカムフィルタ。
【0014】
[6] 前記隔壁の厚さL2が0.17~0.32mmであり、前記ハニカム基材のセル密度が30~63個/cmである、前記[1]~[5]のいずれかに記載のハニカムフィルタ。
【0015】
[7] 前記ハニカム基材の40~800℃間の熱膨張係数C2が0.2~1.5×10-6/℃である、前記[1]~[6]のいずれかに記載のハニカムフィルタ。
【0016】
[8] 前記外周コート層の熱膨張係数C1と、前記ハニカム基材の熱膨張係数C2との比(C1/C2)が3~12である、前記[7]に記載のハニカムフィルタ。
【発明の効果】
【0017】
本発明のハニカムフィルタは、排気温度の上昇に伴う破損が抑制され、耐熱衝撃性に優れるという効果を奏するものである。即ち、本発明のハニカムフィルタは、排気温度が上昇したとしても外周コート層が収縮し難くなり、ハニカム基材と外周コート層との膨張収縮差が小さく、高温時における応力の発生を有効に抑制することができる。これにより、本発明のハニカムフィルタは、耐熱衝撃性に優れる。
【0018】
また、本発明のハニカムフィルタは、上述したように耐熱衝撃性に優れるため、外周コート層の気孔率を高くすることが可能となり、ハニカムフィルタ全体の熱容量を低下させることができる。このため、ハニカムフィルタに触媒を担持した際に、触媒の昇温速度が向上し、当該触媒の早期活性化による浄化性能の向上も期待される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明のハニカムフィルタの一の実施形態を模式的に示す斜視図である。
図2図1に示すハニカムフィルタの流入端面側を示す平面図である。
図3図1に示すハニカムフィルタの流出端面側を示す平面図である。
図4図2のA-A’断面を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。したがって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施の形態に対し適宜変更、改良等が加えられたものも本発明の範囲に入ることが理解されるべきである。
【0021】
(1)ハニカムフィルタ:
本発明のハニカムフィルタの一の実施形態は、図1図4に示すようなハニカムフィルタ100である。ここで、図1は、本発明のハニカムフィルタの一の実施形態を模式的に示す斜視図である。図2は、図1に示すハニカムフィルタの流入端面側を示す平面図である。図3は、図1に示すハニカムフィルタの流出端面側を示す平面図である。図4は、図2のA-A’断面を模式的に示す断面図である。
【0022】
図1図4に示すように、ハニカムフィルタ100は、ハニカム基材4と、ハニカム基材4の外周を囲繞するように配設された外周コート層3と、目封止部5と、を備えたものである。ハニカム基材4は、流入端面11から流出端面12まで延びる流体の流路となる複数のセル2を取り囲むように配置された多孔質の隔壁1を有するものである。ハニカム基材4は、上記した隔壁1が格子状に配設された、流入端面11及び流出端面12を両端面とする柱状の構造体である。外周コート層3は、ハニカム基材4の外周を囲繞するように配設された外周壁である。外周コート層3は、ハニカム基材4の外周面に外周コート材を塗布し、塗布した外周コート材を乾燥し焼成することによって得られた多孔質層である。
【0023】
目封止部5は、セル2の流入端面11側の端部又は流出端面12側の端部のいずれか一方に配設され、セル2の開口部を目封止するものである。目封止部5は、多孔質材料によって構成された多孔質のもの(即ち、多孔質体)である。図1図4に示すハニカムフィルタ100は、流入端面11側の端部に目封止部5が配設されている所定のセル2と、流出端面12側の端部に目封止部5が配設されている残余のセル2とが、隔壁1を挟んで交互に配置されている。以下、目封止部5が流入端面11側の端部に配設されたセル2を、「流出セル2b」ということがある。目封止部5が流出端面12側の端部に配設されたセル2を、「流入セル2a」ということがある。
【0024】
ハニカムフィルタ100は、ハニカム基材4の外周を囲繞するように配設された外周コート層3の構成において、特に主要な特性を有している。以下、外周コート層3について、より詳細に説明する。
【0025】
外周コート層3は、当該外周コート層3の熱膨張挙動における熱膨から収縮に転じる変曲点の温度T1が1000~1500℃である。このように構成することによって、排気温度の上昇に伴うハニカムフィルタ100の破損が抑制され、耐熱衝撃性に優れたものとなる。上記した変曲点の温度T1が1000℃未満であると、ハニカム基材4と外周コート層3との膨張収縮差で高い応力が発生し、ハニカムフィルタ100が破損してしまうことがある。また、上記した変曲点の温度T1が1500℃を超えると、ハニカム基材4と外周コート層3との膨張差が広がることで高い応力が発生し、ハニカムフィルタ100が破損してしまうことがある。なお、特に限定されることはないが、上記変曲点の温度T1は、1050~1400℃であることが好ましく、1100~1200℃であることが更に好ましい。
【0026】
外周コート層3の熱膨張挙動、及び熱膨から収縮に転じる変曲点の温度T1は、以下の方法によって測定することができる。まず、示差検出型の熱膨張計を用い、昇温速度を10℃/分として、それぞれの温度範囲における外周コート層3の平均熱膨張係数及び測定試料の寸法変化に伴う熱膨張挙動を測定する。熱膨張計による測定は、40℃から開始し、上記昇温速度にて、1500℃までの測定を行う。40℃から1500℃までの測定において、熱膨張挙動が下がり始める点(温度)が確認された場合は、その温度を「熱膨から収縮に転じる変曲点の温度T1」とする。一方で、40℃から1500℃までの測定において、熱膨張挙動が下がり始める点が確認できない場合には、上記変曲点の温度T1を1500℃超とする。熱膨張挙動の測定については、外周コート層3の作製に使用した外周コート材を固めて作製したバルク体試料を用いて行うことができる。なお、外周コート層3から測定用の試料を作製できる場合は、外周コート層3から切り出した試料を用いて測定を行ってもよい。
【0027】
また、本実施形態のハニカムフィルタ100は、外周コート層3の気孔率P1が36~48%であり、更に、外周コート層3の40~800℃間の熱膨張係数C1が2.5~3.5×10-6/℃である。例えば、外周コート層3の気孔率P1が36~48%とすることで、外周コート層3の気孔率を高くすることができ、ハニカムフィルタ100全体の熱容量を低下させることができる。このため、ハニカムフィルタ100に触媒を担持した際に、触媒の昇温速度が向上し、当該触媒の早期活性化による浄化性能の向上が期待される。また、外周コート層3の40~800℃間の熱膨張係数C1が2.5~3.5×10-6/℃であると、耐熱衝撃性の点で好ましい。本明細書において「熱膨張係数」とは示差検出型の熱膨張計を用いて測定される平均熱膨張係数のことを意味する。
【0028】
外周コート層3の気孔率P1は、36~48%であればよく、例えば、37~48%であることが好ましく、38~48%であることが更に好ましい。また、外周コート層3の40~800℃間の熱膨張係数C1は、2.5~3.5×10-6/℃であればよく、例えば、2.5~3.3×10-6/℃であることが好ましく、2.5~3.0×10-6/℃であることが更に好ましい。
【0029】
外周コート層3の気孔率P1は、以下の方法にて測定することができる。外周コート層3を切り出し、走査型電子顕微鏡(SEM)によって撮影した断面のSEM画像を二値化処理した面積比から、外周コート層3の気孔率を算出することができる。
【0030】
外周コート層3の40~800℃間の熱膨張係数C1は、以下の方法にて測定することができる。熱膨張係数C1は、示差検出型の熱膨張計を用い、それぞれの温度範囲における平均熱膨張係数を測定することにより算出する。なお、昇温速度は10℃/分とする。外周コート層3の40~800℃間の熱膨張係数C1の測定においては、外周コート層3の作製に使用した外周コート材を固めて作製したバルク体試料を用いて、各温度範囲における平均熱膨張係数を測定する。なお、外周コート層3から測定用の試料を作製できる場合は、外周コート層3から切り出して作製した試料を用いて測定を行ってもよい。
【0031】
また、特に限定されることはないが、外周コート層3表面粗さRaが10~25μmであることが好ましく、13~25μmであることが更に好ましい。例えば、ハニカムフィルタ100は、排ガス浄化用のフィルタとして使用する場合、金属ケース等の缶体内に収納した状態で用いられることがある。ハニカムフィルタ100を、金属ケース等の缶体内に収納することを、キャニング(canning)ということがある。ハニカムフィルタ100をキャニングする際には、マット等の把持材を介してハニカムフィルタ100の外周面に面圧をかけ、缶体内に把持する。外周コート層3表面粗さRaが10~25μmであると、キャニングによる把持性を向上させることができ、ハニカムフィルタ100のアイソスタティック強度を向上させることができる。
【0032】
外周コート層3表面粗さRaは、算術平均粗さJIS B0601:2001により測定した値である。外周コート層3表面粗さRaは、任意に選択した5箇所の表面粗さを上記した測定方法によって測定し、その平均値を算出することによって求めることができる。
【0033】
外周コート層3の厚さL1については特に制限はない。但し、外周コート層3の厚さL1を1~3mmとすることで、耐熱衝撃性及びアイソスタティック強度の更なる向上を図ることができる。例えば、外周コート層3の厚さL1が1mm未満であると、上記厚さL1の数値範囲を満たすものと比較して、ハニカムフィルタ100のアイソスタティック強度が低くなる傾向がある。また、外周コート層3の厚さL1が3mmを超えると、上記厚さL1の数値範囲を満たすものと比較して、外周コート層3の熱容量が増大し、ハニカムフィルタ100に触媒を担持した際に、浄化性能の向上効果が十分に発揮されないことがある。外周コート層3の厚さL1の厚さについては、例えば、1.5~2.5mmであることが好ましい。外周コート層3の厚さL1は、例えば、走査型電子顕微鏡又はマイクロスコープ(microscope)を用いて測定することができる。なお、外周コート層3の厚さL1は、以下のような8箇所の測定箇所において測定された測定値の平均値とする。まず、外周コート層3の厚さを測定する測定箇所は、ハニカム基材4の端面の円周方向に45°毎の8つの位置を測定箇所とする。そして、8箇所の測定箇所のそれぞれにおいて、外周コート層3の厚さを測定する。測定した8つの測定値の平均値を算出し、算出した平均値を、外周コート層3の厚さL1とする。
【0034】
外周コート層3は、ハニカム基材4の外周面に塗工された外周コート材によって構成されている。外周コート材は、コージェライト粒子と非晶質シリカと結晶性無機繊維を含有したコート材を好適に用いることができる。例えば、外周コート材は、上記した原料に、水、各種の有機バインダ等を加えることによって調製することができる。そして、外周コート材を調製する際に、コージェライト粒子及び非晶質シリカの平均粒子径と、上記原料の混合比率を制御することで、これまでに説明したような各特性を満たす外周コート層3を得ることができる。なお、結晶性無機繊維としては、特に限定されず、周知のものを用いることができる。結晶性無機繊維の例としては、結晶性のアルミナシリケート繊維や炭化珪素繊維などを用いることができる。結晶性無機繊維は、単一種であってよいが、複数種を組み合わせて用いてもよい。
【0035】
ハニカムフィルタ100において、多孔質の隔壁1を有するハニカム基材4の構成については特に制限はない。但し、ハニカム基材4の好ましい態様は、以下の通りである。
【0036】
ハニカム基材4の気孔率P2が53~60%であることが好ましく、55~60%であることが更に好ましい。ハニカム基材4の気孔率P2は、ハニカム基材4を構成する隔壁1の気孔率を測定した値である。ハニカム基材4の気孔率P2は、水銀圧入法によって測定された値である。ハニカム基材4の気孔率P2の測定は、例えば、Micromeritics社製のオートポア9500(商品名)を用いて行うことができる。ハニカム基材4の気孔率P2の測定は、ハニカム基材4から隔壁1の一部を切り出して試料片とし、このようにして得られた試料片を用いて行うことができる。なお、ハニカム基材4の気孔率P2は、ハニカム基材4の全域において一定の値であることが好ましい。
【0037】
外周コート層3の気孔率P1と、ハニカム基材4の気孔率P2との比(P1/P2)が0.6~0.9であることが好ましく、0.6~0.85であることが更に好ましい。このように構成することによって、キャニング性及び耐熱衝撃性の点において優れた効果を奏する。
【0038】
ハニカム基材4は、隔壁1の厚さL2が0.17~0.32mmであることが好ましく、0.17~0.29mmであることが更に好ましい。隔壁1の厚さL2は、例えば、走査型電子顕微鏡又はマイクロスコープ(microscope)を用いて測定することができる。隔壁1の厚さL2が0.17mm未満であると、十分な強度が得られない場合がある。一方、隔壁1の厚さL2が0.32mmを超えると、ハニカムフィルタ100の圧力損失が増大することがある。
【0039】
ハニカム基材4の40~800℃間の熱膨張係数C2が0.2~1.5×10-6/℃であることが好ましく、0.2~1.0×10-6/℃であることが更に好ましい。ハニカム基材4の40~800℃間の熱膨張係数C2は、以下の方法にて測定することができる。まず、ハニカム基材4の熱膨張係数C2を測定するための試料として、ハニカム基材4から下記形状の試料片を切り出す。試料片は、ハニカム基材4のセル2の延びる軸方向の長さが50mm、この軸方向に直交する面の各方向の長さが5mm×5mmとなる直方体形状とする。ハニカム基材4の40~800℃間の熱膨張係数C2は、このように作製した試料片の上記軸方向の熱膨張係数を測定した値とする。熱膨張係数C2は、示差検出型の熱膨張計を用い、それぞれの温度範囲における平均熱膨張係数を測定することにより算出する。測定条件については、外周コート層3の熱膨張係数C1を測定する際の条件と同一のものとする。
【0040】
外周コート層3の熱膨張係数C1と、ハニカム基材4の熱膨張係数C2との比(C1/C2)が3~12であることが好ましく、4~10であることが更に好ましい。このように構成することによって、耐熱衝撃性の点において優れた効果を奏する。
【0041】
隔壁1によって区画されるセル2の形状については特に制限はない。例えば、セル2の延びる方向に直交する断面における、セル2の形状としては、多角形、円形、楕円形等を挙げることができる。多角形としては、三角形、四角形、五角形、六角形、八角形等を挙げることができる。なお、セル2の形状は、三角形、四角形、五角形、六角形、八角形であることが好ましい。また、セル2の形状については、全てのセル2の形状が同一形状であってもよいし、異なる形状であってもよい。例えば、図示は省略するが、四角形のセルと、八角形のセルとが混在したものであってもよい。また、セル2の大きさについては、全てのセル2の大きさが同じであってもよいし、異なっていてもよい。例えば、図示は省略するが、複数のセルのうち、一部のセルの大きさを大きくし、他のセルの大きさを相対的に小さくしてもよい。なお、本発明において、セルとは、隔壁によって取り囲まれた空間のことを意味する。
【0042】
ハニカム基材4は、隔壁1によって区画形成されるセル2のセル密度が、30~63個/cmであることが好ましく、31~62個/cmであることが更に好ましい。このように構成することによって、ハニカムフィルタ100の捕集性を維持しつつ、圧力損失の増大を抑制することができる。
【0043】
ハニカムフィルタ100の形状については特に制限はない。ハニカムフィルタ100の形状としては、流入端面11及び流出端面12の形状が、円形、楕円形、多角形等の柱状を挙げることができる。なお、ハニカム基材4は、柱状を呈し、その外周側面に、格子状に配列した隔壁1を取り囲むような外周壁(図示せず)を更に有していてもよいし、このような外周壁を有していなくともよい。ハニカム基材4が外周壁を有する場合には、この外周壁の外側に、外周コート層3が配設される。一方、ハニカム基材4が外周壁を有さない場合は、格子状に配列した隔壁1の最外周部分を取り囲むように、ハニカム基材4の外周面に外周コート層3が配設される。
【0044】
ハニカムフィルタ100の大きさ、例えば、流入端面11から流出端面12までの長さや、ハニカムフィルタ100のセル2の延びる方向に直交する断面の大きさについては、特に制限はない。ハニカムフィルタ100を、排ガス浄化用のフィルタとして用いた際に、最適な浄化性能を得るように、各大きさを適宜選択すればよい。
【0045】
ハニカム基材4を構成する隔壁1の材料については特に制限はない。例えば、隔壁1の材料が、コージェライト、炭化珪素、珪素-炭化珪素複合材料、コージェライト-炭化珪素複合材料、窒化珪素、ムライト、アルミナ及びチタン酸アルミニウムから構成される群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。本実施形態のハニカムフィルタ100においては、隔壁1の材料として、コージェライト、炭化珪素、チタン酸アルミニウムのうちの少なくとも1種を含む材料を好適例として挙げることができる。
【0046】
目封止部5の材料についても特に制限はない。例えば、上述した隔壁1の材料と同様の材料を用いることができる。
【0047】
(2)ハニカムフィルタの製造方法:
本発明のハニカムフィルタを製造する方法については、特に制限はなく、例えば、以下のような方法を挙げることができる。まず、ハニカム基材を作製するための可塑性の坏土を調製する。ハニカム基材を作製するための坏土は、原料粉末として、前述の隔壁の好適な材料の中から選ばれた材料に、適宜、バインダ等の添加剤、造孔材、及び水を添加することによって調製することができる。
【0048】
次に、このようにして得られた坏土を押出成形することにより、複数のセルを区画形成する隔壁、及びこの隔壁を囲繞するように配設された外周壁を有する、柱状のハニカム成形体を作製する。次に、得られたハニカム成形体を、例えば、マイクロ波及び熱風で乾燥する。
【0049】
次に、乾燥したハニカム成形体のセルの開口部に目封止部を配設する。具体的には、例えば、まず、目封止部を形成するための原料を含む目封止材を調製する。次に、ハニカム成形体の流入端面に、流入セルが覆われるようにマスクを施す。次に、先に調製した目封止材を、ハニカム成形体の流入端面側のマスクが施されていない流出セルの開口部に充填する。その後、ハニカム成形体の流出端面についても、上記と同様の方法で、流入セルの開口部に目封止材を充填する。
【0050】
次に、セルのいずれか一方の開口部に目封止部を配設したハニカム成形体を焼成して、目封止ハニカム焼成体を作製する。焼成温度及び焼成雰囲気は原料により異なり、当業者であれば、選択された材料に最適な焼成温度及び焼成雰囲気を選択することができる。
【0051】
次に、得られた目封止ハニカム焼成体の外周壁を研削加工し、その後、隔壁の外周側に外周コート材を塗工して、外周コート層を形成する。このようにしてハニカムフィルタを製造することができる。外周コート材は、コージェライト粒子と非晶質シリカと結晶性無機繊維を含有したコート材を用いることが好ましい。例えば、外周コート材は、上記した原料に、水、各種の有機バインダ等を加えることによって調製することができる。そして、外周コート材を調製する際に、コージェライト粒子及び非晶質シリカの平均粒子径と、上記原料の混合比率を制御することで、これまでに説明したような特性を満たす外周コート層を得ることができる。
【実施例0052】
以下、本発明を実施例によって更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0053】
(実施例1)
コージェライト化原料100質量部に、造孔材を2質量部、分散媒を2質量部、有機バインダを7質量部、それぞれ添加し、混合、混練して坏土を調製した。コージェライト化原料としては、アルミナ、水酸化アルミニウム、カオリン、タルク、及びシリカを使用した。分散媒としては、水を使用した。有機バインダとしては、メチルセルロース(Methylcellulose)を使用した。分散剤としては、デキストリン(Dextrin)を使用した。造孔材としては、平均粒子径18μmの吸水性ポリマーを使用した。本実施例において、各原料の平均粒子径は、レーザー回折・散乱法によって求めた粒度分布における積算値50%での粒径(D50)のことである。
【0054】
次に、ハニカム成形体作製用の口金を用いて坏土を押出成形し、全体形状が円柱形状のハニカム成形体を得た。ハニカム成形体のセルの形状は、四角形とした。
【0055】
次に、ハニカム成形体をマイクロ波乾燥機で乾燥し、更に熱風乾燥機で完全に乾燥させた後、ハニカム成形体の両端面を切断し、所定の寸法に整えた。
【0056】
次に、目封止部を形成するための目封止材を調製した。その後、目封止材を用いて、乾燥したハニカム成形体の流入端面側の所定のセルの開口部、及び流出端面側の残余のセルの開口部に目封止部を形成した。
【0057】
次に、各目封止部を形成したハニカム成形体を、脱脂し、焼成して、目封止ハニカム焼成体を作製した。次に、目封止ハニカム焼成体の外周壁を研削加工して、目封止ハニカム基材を作製した。
【0058】
次に、以下の方法にて、外周コート材を調製した。まず、コート材原料として、コージェライト粒子、非晶質シリカ、結晶性無機繊維、有機バインダ、水を用意した。これらに、混合・混錬を加えて、外周コート材を調製した。コージェライト粒子は、平均粒子径が15μmのものを用いた。非晶質シリカは、平均粒子径が300μmのものを用いた。結晶性無機繊維は、繊維長が52μmのものを用いた。コージェライト粒子、非晶質シリカ、結晶性無機繊維の配合比は、コージェライト粒子100質量部に対して、非晶質シリカを25質量部、結晶性無機繊維を20質量部とした。
【0059】
次に、目封止ハニカム基材の外周面に、上記した外周コート材を所定の厚さとなるように塗布し、乾燥させて外周コート層を形成した。乾燥方法や乾燥条件としては、特に限定されず、適宜調整すればよい。以上のようにして、実施例1のハニカムフィルタを製造した。
【0060】
実施例1のハニカムフィルタは、流入端面及び流出端面の形状が円形の、円柱形状のものであった。流入端面及び流出端面の直径の大きさは、267mmであった。また、ハニカムフィルタのセルの延びる方向の長さは、178mmであった。実施例1のハニカムフィルタは、隔壁の厚さL2が0.25mmであり、ハニカム基材を構成する隔壁の気孔率P2が53%であり、セル密度が47個/cmであった。表1に、各結果を示す。隔壁の気孔率P2は、Micromeritics社製のオートポア9500(商品名)を用いて測定した。
【0061】
また、ハニカム基材の外周面を囲繞するように配設された外周コート層は、その気孔率P1が45%であり、その厚さL1が1.0mmであり、その表面粗さRaが15μmであった。外周コート層の気孔率P1は、外周コート層を切り出し、走査型電子顕微鏡(SEM)によって撮影した断面のSEM画像を二値化処理した面積比から求めた。また、外周コート層の表面粗さRaは、算術平均粗さJIS B0601:2001に基づき測定を行った。
【0062】
また、外周コート層の熱膨張係数C1、及びハニカム基材の熱膨張係数C2を以下の方法にて測定した。また、外周コート層については、その熱膨張挙動における熱膨から収縮に転じる変曲点の温度T1について併せて測定した。
【0063】
[外周コート層の熱膨張係数C1、及びハニカム基材の熱膨張係数C2]
示差検出型の熱膨張計を用い、それぞれの温度範囲における平均熱膨張係数を測定することにより算出した。なお、昇温速度は10℃/分とした。外周コート層の40~800℃間の熱膨張係数C1の測定においては、外周コート層の作製に使用した外周コート材を固めて作製したバルク体試料を用いて、各温度範囲における平均熱膨張係数を測定した。ハニカム基材の熱膨張係数C2を測定するための試料は、ハニカム基材から下記形状の試料片を切り出して作製した。ハニカム基材の熱膨張係数C2を測定するための試料片は、ハニカム基材のセルの延びる軸方向の長さが50mm、この軸方向に直交する面の各方向の長さが5mm×5mmとなる直方体形状とした。
【0064】
[外周コート層の熱膨から収縮に転じる変曲点の温度T1]
示差検出型の熱膨張計を用い、昇温速度を10℃/分として、それぞれの温度範囲における外周コート層の平均熱膨張係数及び測定試料の寸法変化に伴う熱膨張挙動を測定した。熱膨張計による測定は、40℃から開始し、上記昇温速度にて、1500℃までの測定を行った。40℃から1500℃までの測定において、熱膨張挙動が下がり始める点(温度)が確認された場合は、その温度を「熱膨から収縮に転じる変曲点の温度T1」とした。一方で、40℃から1500℃までの測定において、熱膨張挙動が下がり始める点が確認できない場合には、上記変曲点の温度T1を1500℃超とする。測定に使用する試料は、外周コート層の熱膨張係数C1の測定に用いたものと同様のものとした。
【0065】
【表1】
【0066】
【表2】
【0067】
実施例1のハニカムフィルタについて、以下の方法で、「耐熱衝撃性」、「浄化性能」、及び「アイソスタティック強度」の評価を行った。表2に各結果を示す。
【0068】
[耐熱衝撃性]
まず、以下の方法で、各実施例及び比較例にて製造したハニカムフィルタの「ESP破損温度」を測定した。なお、「ESP破損温度」とは、耐熱衝撃性を示す指標のことである。ESPは、Electric Furnace Spallingの略である。具体的には、ある所定の温度に熱せられた電気炉にハニカムフィルタを投入し、所定時間たった後、それを取り出して、外周コート層に破損が生じているか調べた。この操作を、電気炉内温度を25℃刻みで上昇させながら、外周コート層に破損が生じるまで繰り返して、外周コート層に破損が生じる温度を測定した。各実施例及び比較例のハニカムフィルタの外周コート層に破損が生じた温度(以下、「破損温度」という)から、以下の評価基準にて、耐熱衝撃性の評価を行った。なお、破壊温度には「セルシウス温度」を用いた。
評価「優」:比較例1のハニカムフィルタの破損温度を100%とした場合に、評価対象のハニカムフィルタの破損温度が、110%を超える場合、その評価を「優」とする。
評価「良」:比較例1のハニカムフィルタの破損温度を100%とした場合に、評価対象のハニカムフィルタの破損温度が、105%を超え、110%以下の場合、その評価を「良」とする。
評価「可」:比較例1のハニカムフィルタの破損温度を100%とした場合に、評価対象のハニカムフィルタの破損温度が、100%を超え、105%以下の場合、その評価を「可」とする。
評価「不可」;比較例1のハニカムフィルタの破損温度を100%とした場合に、評価対象のハニカムフィルタの破損温度が、100%以下の場合、その評価を「不可」とする。
【0069】
[浄化性能]
まず、ハニカムフィルタに、NOxを含む試験用ガスを流した。その後、このハニカムフィルタから排出されたガスのNOx量をガス分析計で分析した。なお、ハニカムフィルタに流入させる試験用ガスの温度を200℃とした。ハニカムフィルタ及び試験用ガスは、ヒーターにより温度調整した。ヒーターは、赤外線イメージ炉を用いた。試験用ガスは、窒素に、二酸化炭素5体積%、酸素14体積%、一酸化窒素350ppm(体積基準)、アンモニア350ppm(体積基準)及び水10体積%を混合させたガスを用いた。この試験用ガスに関しては、水と、その他のガスを混合した混合ガスとを別々に準備しておき、試験を行う時に配管中でこれらを混合させて用いた。ガス分析計は、「HORIBA社製、MEXA9100EGR(商品名)」を用いた。また、試験用ガスがハニカムフィルタに流入するときの空間速度は、100,000(時間-1)とした。試験用ガスのNOx量と、ハニカムフィルタから排出されたガスのNOx量から、ハニカムフィルタのNOx浄化率を測定した。各実施例及び比較例のハニカムフィルタのNOx浄化率から、以下の評価基準にて、浄化性能の評価を行った。
評価「優」:比較例1のハニカムフィルタのNOx浄化率を100%とした場合に、評価対象のハニカムフィルタのNOx浄化率が、120%を超える場合、その評価を「優」とする。
評価「良」:比較例1のハニカムフィルタのNOx浄化率を100%とした場合に、評価対象のハニカムフィルタのNOx浄化率が、110%を超え、120%以下の場合、その評価を「良」とする。
評価「可」:比較例1のハニカムフィルタのNOx浄化率を100%とした場合に、評価対象のハニカムフィルタのNOx浄化率が、100%を超え、110%以下の場合、その評価を「可」とする。
評価「不可」;比較例1のハニカムフィルタのNOx浄化率を100%とした場合に、評価対象のハニカムフィルタのNOx浄化率が、100%以下の場合、その評価を「不可」とする。
【0070】
[アイソスタティック強度]
アイソスタティック強度の測定は、社団法人自動車技術会発行の自動車規格(JASO規格)のM505-87で規定されているアイソスタティック破壊強度試験に基づいて行った。アイソスタティック破壊強度試験は、ゴムの筒状容器に、ハニカムフィルタを入れてアルミ製板で蓋をし、水中で等方加圧圧縮を行う試験である。アイソスタティック破壊強度試験によって測定されるアイソスタティック強度は、ハニカムフィルタが破壊したときの加圧圧力値(MPa)で示される。各実施例及び比較例のハニカムフィルタのアイソスタティック強度から、以下の評価基準にて、アイソスタティック強度の評価を行った。
評価「優」:比較例1のハニカムフィルタのアイソスタティック強度を100%とした場合に、評価対象のハニカムフィルタのアイソスタティック強度が、110%を超える場合、その評価を「優」とする。
評価「良」:比較例1のハニカムフィルタのアイソスタティック強度を100%とした場合に、評価対象のハニカムフィルタのアイソスタティック強度が、105%を超え、110%以下の場合、その評価を「良」とする。
評価「可」:比較例1のハニカムフィルタのアイソスタティック強度を100%とした場合に、評価対象のハニカムフィルタのアイソスタティック強度が、100%を超え、105%以下の場合、その評価を「可」とする。
評価「不可」;比較例1のハニカムフィルタのアイソスタティック強度を100%とした場合に、評価対象のハニカムフィルタのアイソスタティック強度が、100%以下の場合、その評価を「不可」とする。
【0071】
(実施例2~7)
ハニカムフィルタの構成を、表1に示すように変更した以外は、実施例1のハニカムフィルタと同様の方法でハニカムフィルタを作製した。なお、実施例2~7においては、外周コート材の調製において、使用する原料の平均粒子径と混合比率を変更した。
(比較例1~5)
ハニカムフィルタの構成を、表1に示すように変更した以外は、実施例1のハニカムフィルタと同様の方法でハニカムフィルタを作製した。なお、比較例1,3~5においては、外周コート材を、以下のようにして調製した。実施例1の外周コート材に使用したコージェライト粒子を、平均粒子径15μmのコージェライト粒子と、平均粒子径35μmのコージェライト粒子とを含む混合物に変更して、外周コート材を調製した。この外周コート材の調製に使用したコージェライト粒子の量については、実施例1の外周コート材に使用したコージェライト粒子の量を100質量%とした場合に、平均粒子径15μmのコージェライト粒子を50質量%とし、平均粒子径35μmのコージェライト粒子を75質量%とした。
【0072】
実施例2~7及び比較例1~5のハニカムフィルタについても、実施例1と同様の方法で、「耐熱衝撃性」、「浄化性能」、及び「アイソスタティック強度」の評価を行った。表2に各結果を示す。
【0073】
(結果)
実施例1~7のハニカムフィルタは、耐熱衝撃性、浄化性能、及びアイソスタティック強度の評価において、基準となる比較例1のハニカムフィルタの各性能を上回るものであることが確認できた。
【0074】
比較例2のハニカムフィルタは、外周コート層の気孔率P1が32%であり、耐熱衝撃性の評価結果が「不可」であった。比較例3、5のハニカムフィルタは、変曲点の温度T1が850℃であり、外周コート層の熱膨張係数C1が1.0×10-6/℃であり、耐熱衝撃性の評価結果が「不可」であった。比較例4のハニカムフィルタは、外周コート層の気孔率P1が35%であり、アイソスタティック強度の評価結果が「不可」であった。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明のハニカムフィルタは、排ガス中の粒子状物質を捕集するフィルタとして利用することができる。
【符号の説明】
【0076】
1:隔壁、2:セル、2a:流入セル、2b:流出セル、3:外周コート層、4:ハニカム基材、5:目封止部、11:流入端面、12:流出端面、100:ハニカムフィルタ。
図1
図2
図3
図4