(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023146593
(43)【公開日】2023-10-12
(54)【発明の名称】キッチンペーパーロール
(51)【国際特許分類】
A47L 13/16 20060101AFI20231004BHJP
D21H 27/00 20060101ALI20231004BHJP
【FI】
A47L13/16 A
D21H27/00 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022053846
(22)【出願日】2022-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002321
【氏名又は名称】弁理士法人永井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉田 翔平
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 穣
【テーマコード(参考)】
3B074
4L055
【Fターム(参考)】
3B074AA01
3B074AA04
3B074AB05
3B074AC02
3B074AC03
3B074BB01
3B074BB02
4L055AA02
4L055AA03
4L055AC06
4L055AJ07
4L055BE15
4L055EA07
4L055EA08
4L055EA10
4L055GA29
(57)【要約】
【課題】潤状態における厚み感に優れるキッチンペーパーを提供する。
【解決手段】
キッチンペーパーがロール状に巻かれているキッチンペーパーロールであって、
巻長さが25~35mであり、前記キッチンペーパーが、エンボス加工による凸部を有するシートが、凸部形成面を対面させてネステッド形式で積層一体化され2プライのものであり、1プライ当たりの坪量が18~25g/m
2であり、5組重の厚さが1.5~3.0mmであり、湿潤時の紙厚の減少率が0.1%~4.0%である、キッチンペーパーロールにより解決される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
キッチンペーパーがロール状に巻かれているキッチンペーパーロールであって、
巻長さが25~35mであり、
前記キッチンペーパーが、エンボス加工による凸部を有するシートが、凸部形成面を対面させてネステッド形式で積層一体化され2プライのものであり、
1プライ当たりの坪量が18~25g/m2であり、
5組重の厚さが1.5~3.0mmであり、
湿潤時の紙厚の減少率が0.1%~4.0%である、
ことを特徴とするキッチンペーパーロール。
【請求項2】
ロール幅が200mm以上であって、
ロール密度が0.12~0.15g/cm3である、
請求項1記載のキッチンペーパーロール。
【請求項3】
乾燥引張強度(縦)が1800cN/25mm以上、乾燥引張強度(横)が800cN/25mm以上、湿潤引張強度(横)が240cN/25mmである、請求項1又は2記載のキッチンペーパーロール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キッチンペーパーをロール状に巻いたキッチンペーパーロールに関する。
【背景技術】
【0002】
キッチンペーパーは、ロール状に巻き取られたキッチンペーパーロールの形態で使用されるものがある。この種のキッチンペーパーロールは、巻長さが10~15mで50カット程度のものが一般的であったが、近年、生活者のライフスタイルの変化から、収納性やストック性の高い日用品が好まれる傾向があり、キッチンペーパーの巻長さを20~40mと増大させた長尺仕様の商品が多く展開されるようになってきている(下記特許文献1~3参照)。
【0003】
このような長尺仕様のキッチンペーパーでは、巻径を増加させずに単にキッチンペーパーの巻長さを長くすると、多くの紙を一定の径に収めるために、巻きつけの圧力が高くなるため、キッチンペーパー自体の厚みが薄くなったり、エンボス加工により形成される空間が潰れたりするなどの問題がある。
【0004】
ところで、キッチンペーパーは、揚げ物の油分の吸収や肉魚等のドリップの吸収、食材、調理器具、キッチン台に付着した水分や油分、汚れの拭き取りといった用途が主で、主には、乾燥状態で液体の吸液を行う態様で使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017-115263号公報
【特許文献2】特開2019-208854号公報
【特許文献3】特開2020-110671号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的な流行により、人々の衛生意識が向上し、物品や生物の拭き取りに用いられる拭き取り紙の需要が増加し、キッチンペーパーにおいて、水分やアルコール等の液体を含ませたうえで、物品の拭き取りを行うなど、汎用的に使用される機会が多くなってきた。
【0007】
従来のキッチンペーパーは、上記のように乾燥状態で液体の吸液を行う態様で使用されることが主であるため、予め湿潤した状態での使用感について改善すべき点があり、特に、長尺仕様のキッチンペーパーは、キッチンペーパー自体の厚みが薄くなったり、エンボス加工により形成される空間が潰れたりするなどの問題があるため、繊維同士がほぐれて紙力が低下する湿潤時において使用感がより低下しやすい。
【0008】
そこで、本発明の主たる課題は、長尺仕様でありながら、巻かれているキッチンペーパーが、特に、湿潤状態における厚み感に優れ、拭き取り用途に使用しても使用感が低下し難い、キッチンペーパーロールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決したキッチンペーパーロールは下記のとおりである。
キッチンペーパーがロール状に巻かれているキッチンペーパーロールであって、
巻長さが25~35mであり、
前記キッチンペーパーが、エンボス加工による凸部を有するシートが、凸部形成面を対面させてネステッド形式で積層一体化され2プライのものであり、
1プライ当たりの坪量が18~25g/m2であり、
5組重の厚さが1.5~3.0mmであり、
湿潤時の紙厚の減少率が0.1%~4.0%である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、長尺仕様でありながら、巻かれているキッチンペーパーが、特に、湿潤状態における厚み感に優れ、拭き取り用途に使用しても使用感が低下し難い、キッチンペーパーロールが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施形態のキッチンペーパーロールの概略図である。
【
図2】実施形態のキッチンペーパーの断面概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次いで、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら以下に詳述する。
図1は、本実施形態のキッチンペーパーロールの概略図であり、
図2は、キッチンペーパーの断面概略図である。
【0013】
本実施形態のキッチンペーパーロール100は、キッチンペーパー1が捲回されて構成されている。具体的には、
図1に示すように、キッチンペーパーロール100は、分断用のミシン目50,50が所定の間隔で配置したされた帯状のキッチンペーパーが、紙管20の周方向に、捲回されて構成されている。
【0014】
紙管20は、特に限定されないが、キッチンペーパーロール100に用いられる公知の紙管、例えば、円筒状の巻芯を用いることができる。紙管の外径L4は、必ずしも限定されないが、37~41mmである。
【0015】
本実施形態のキッチンペーパーロール100は、特に、巻長さが25~35mであり、巻長さが10~15mの従来通常品(以下、「短尺品」ともいう)と比較して巻長さが長い長尺仕様のキッチンペーパーロール(以下、「長尺品」ともいう)である。したがって、短尺品と比較すれば、収納性やストック性の点で利点があり、また、使用期間を長くすることができる。
【0016】
本実施形態のキッチンペーパーロールの巻径L1は、必ずしも限定されないが、短尺品と比較して過度に大きい巻径であれば長尺品のメリットである収納性やストック性の利点が享受されないため、通常のキッチンペーパーロールと同程度とされる。具体的には、巻径L1は、110~125mmである。
【0017】
本実施形態のキッチンペーパーロール100の幅L2は、必ずしも限定されないが、一般的なロール幅と同様に200mm以上あればよい。好ましくは、210~240mmである。
【0018】
本実施形態のキッチンペーパーロール100は、ミシン目50,50によって切断される枚数は必ずしも限定されないが125~175カット、好ましくは145~155カットである。上記のとおり長尺品においても巻径は短尺品と変わらない径とされるため、長尺品ではよりキッチンペーパーが引っ張られた状態で巻き取られている。巻長さが25~35mにおいてミシン目によって切断される枚数が過度に多い場合、ミシン目数が過度であり巻き取り時にミシン目が延ばされ使用時に意図しない切断が生じやすく使い難いものとなる。また、製造し難いものとなる。他方で、キッチンペーパーロールは、ミシン目の数によってロールの巻固さに影響する。本実施形態のキッチンペーパーロールにおけるミシン目のカットタイ比、カット部の長さは限定されない。適宜に設計することができる。
【0019】
本実施形態のキッチンペーパー1は、2枚のシート11A,11Bで構成されている、いわゆる2プライと称されるものである。シート11A,11Bは、クレープ紙であり、抄紙工程において抄紙機のドライヤーの出口で、ドクターブレードと呼ばれる刃を当てることにより表面に細かいシワが形成された紙である。
【0020】
シート11A,11Bは、その繊維材料をパルプ繊維を主とするものであり、パルプの配合割合を90質量%以上、好ましくは95質量%以上、より好ましくは100質量% である。パルプは、特に古紙パルプを含まないバージンパルプを100質量%であるのが望ましい。具体的なパルプ種としては、NBKP(針葉樹クラフトパルプ)やNUKP(針葉樹未晒しパルプ)などの針葉樹パルプ、LBKP(広葉樹クラフトパルプ)やLUKP(広葉樹未晒しパルプ)などの広葉樹パルプである。特に、バージンパルプである針葉樹パルプを広葉樹パルプで構成され、針葉樹パルプを広葉樹パルプと比較してより多い組成のパルプ組成であることが好ましい。針葉樹パルプと広葉樹パルプの比は、50:50~90:10であるのが好ましい。
【0021】
他方、シート(1プライ)11A,11Bの坪量は、16~25g/m2、好ましくは19~24g/m2である。これらの範囲であれば、長尺品に巻き取りやすくかつ使用時の柔らかさや手触りを確保でき、湿潤時における紙厚減少率を小さくしやすい。なお、坪量はJIS P 8124に基づいて測定した値をいう。
【0022】
本実施形態のキッチンペーパー1の各々のシート11A,11Bは、エンボス加工による一方面に凸部12b、他方面に前記凸部12b対応する凹部12aが形成されている。そして、各シートの凸部12bの形成面を対面させてネステッド形式で積層一体化されている。ネステッド形式は、
図2に示すように、一方のシートの凸部12bが他方シートの凸部12bが形成されていない部分に位置している態様である。ネステッド形式は紙厚を薄くできるとともに、厚み方向の強度を発現しやすく、特の長尺品でかつ厚み感のあるキッチンペーパーとしやすい。
【0023】
本実施形態のキッチンペーパー1は、各シート11A,11Bが凸部12bの頂部を介して接着剤13により接着して積層一体化されていてもよい。この場合、全ての凸部12bが接着されていなくともよい。接着剤13は、積層構造を有するキッチンペーパーに採用される公知の接着剤を用いることができる。このような接着剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、デンプン、変性デンプン、カルボキシメチルセルロース等の接着剤等が挙げられる。好ましくは、ポリビニルアルコールである。
【0024】
本実施形態のキッチンペーパーの紙厚は、必ずしも限定されないが300μm~390μm、好ましくは、310μm~380μmである。紙厚が300μm未満であると厚み感を感じられにくくなり、390μmを超えると湿潤時に紙厚が低下しやすくなる。紙厚の測定方法は、各例に係る試験片をJIS P 8111(1998)の条件下で十分に調湿した後、同条件下でダイヤルシックネスゲージ(厚み測定器)「PEACOCK G型」(尾崎製作所製)を用いて測定する。具体的な手順は、プランジャーと測定台の間にゴミ、チリ等がないことを確認してプランジャーを測定台の上におろし、前記ダイヤルシックネスゲージのメモリを移動させてゼロ点を合わせ、次いで、プランジャーを上げて試料を試験台の上におき、プランジャーをゆっくりと下ろしそのときのゲージを読み取る。このとき、プランジャーをのせるだけとする。プランジャーの端子は金属製で直径10mmの円形の平面が紙平面に対し垂直に当たるようにし、この厚みの測定時の荷重は、120μmの際に約70gfである。なお、厚みは測定を10回行って得られる平均値とする。
【0025】
本実施形態のキッチンペーパーロールは、特徴的にキッチンペーパー5組重の厚さが1.5~3.0mmであり、より好ましくは、1.8~2.3mmである。ここで、キッチンペーパー5組重の厚さは、キッチンペーパーロールから取出したキッチンペーパーを5 組重ねたときの重ね方向の厚み(mm)であり、キッチンペーパーの嵩高さを示すことができる。なお、キッチンペーパー一組とは2プライを一組としたもののことである。キッチンペーパー5組重の厚みは、キッチンペーパーの嵩高さを評価する指標となり得る。すなわち、キッチンペーパーロールでは、上述のとおり、キッチンペーパーが引っ張られて巻かれている。したがって、キッチンペーパーロールから引き出されたキッチンペーパーは、ロール時のテンションから解放され厚みが変化する。特に長尺品では、短尺品よりもより引っ張られきつく巻かれているため嵩が低下しやすい。本実施形態のキッチンペーパーロールは、この5組重の厚さが、1.5~3.0mmと高い復元性を有して、十分な厚み感のあるものとなっている。この5組重の厚さは、本実施形態のキッチンペーパーを紙管に捲回する際のテンションコントロールで調整される。
【0026】
本実施形態のキッチンペーパーロールは、特徴的にキッチンペーパーの湿潤時の紙厚の減少率が0.1%~4.0%である。好ましくは、1.5~2.5%である。このキッチンペーパーは、キッチンペーパーロールから引き出したキッチンペーパーである。キッチンペーパーは、通常湿潤によって紙厚が減少する。湿潤時の紙厚の減少率は、キッチンペーパーに水を含ませて湿潤させた際に、紙厚が減少する比率である。値が小さいほど湿潤時の厚みを保持する能力を示す。換言すれば値が小さいほどエンボス加工による凸部が維持されやすい。
【0027】
湿潤時の紙厚の減少率は、下記のように測定する。
(1)10cm×10cm×厚み2mmのアクリル板2枚(各24.5g)を用意する。
(2)キッチンペーパーロールからキッチンペーパーを引き出し5cm×5cmにカットして試験片とする。
(3)試験片1枚を(1)で準備した2枚のアクリル板の間に挟み(厚みA)を測定する。試験片をアクリル板間に挟むにあたっては、重心を合わせるためキッチンペーパーの中央部とアクリル板の中央部を合わせるようにする。(厚みA)の測定は、KEYENCE社製「ワンショット3D測定マクロスコープ VR-3200」及びその相当機を用いる。レーザマイクロスコープの画像の観察・測定・画像解析ソフトウェアとしては、製品名「VR-H2A」及びその互換ソフトウェアを使用する。測定条件は、倍率12倍、視野面積18mm×24mmの条件で測定する。このとき、画面縦18mm×幅24mmの中央部にMD方向とCD方向に線粗さパラメーターで直線を引き、最も高い点での高さからアクリル板の厚み(2.0mm)を差し引くようにする。
(4)次に、アクリル板と試験片を測定台座から外し、上に置いたアクリル板を一旦外し、試験片に水200μLを均等にピペット(Nichipet Ex2、株式会社ニチリョー等)を用いて付与する。
(5)水を付与した後、すばやく静かに試験片上に、(4)で外したアクリル板を再び載せ、水を付与してから60秒後に、(3)の(厚みA)と同様の手順で試験片の厚みを測定する。この厚みを(厚みB)とする。
(6)(厚みA)及び(厚みB)から、湿潤時の紙厚の減少率(湿潤紙厚減少率)(%)=((厚みA)-(厚みB))/(厚みA)×100 (%)で算出する。
(7)1水準につき、5つの試験片で湿潤紙厚減少率を求めその平均値を測定値とする。
【0028】
本実施形態のキッチンペーパーロールは、長尺品でありながらキッチンペーパー5組重の厚さが1.5~3.0mmと短尺品と遜色なく、さらに、湿潤時の紙厚の減少率が0.1%~4.0%と湿潤状態における厚み感に優れ、拭き取り用途に使用しても使用感が低下し難い。このような特徴的なキッチンペーパーロールとするに、ワインダー巻取り時のキッチンペーパーの圧縮及びテンション調整を行うことができる。
【0029】
さらに、本実施形態のキッチンペーパーロールとするに適する「ロール密度」、「乾燥引張強度(縦)」、「乾燥引張強度(縦)」、「湿潤引張強度(横)」について述べる。これらは、紙のコシ及び引張に影響を与えワインダー適性に関係するため、この好ましい「ロール密度」、「乾燥引張強度(縦)」、「乾燥引張強度(縦)」、「湿潤引張強度(横)」とすることにより、特に湿潤時紙厚減少率をより調整しやすくなる。
【0030】
本実施形態のキッチンペーパーロールは、上記の200mm以上のロール幅において ロール密度が0.12~0.15g/cm3であるのが望ましい。ロール密度は、(ロール重量)÷(ロール容量)で表される。ロール容量は[{ロールの外径(巻径)部分の断面積}-(コア外径(紙管径)部分の断面積)] × ロール幅で表される。ロール密度は、ワインダー巻取り時のキッチンペーパーの圧縮状態を表し、ロール密度が大きいと一定の狭い空間に多量の紙が巻き取られており、圧縮されている状態を表す。
【0031】
本実施形態のキッチンペーパーロールは、キッチンペーパーの乾燥引張強度(縦)が1800cN/25mm以上、乾燥引張強度(横)が800cN/25mm以上、湿潤引張強度(横)が240cN/25mm以上であると望ましい。乾燥引張強度(縦)は、望ましくは1850~2400cN/25mm、乾燥引張強度(横)は、望ましくは800~1000cN/25mm、湿潤引張強度(横)は、望ましくは240~400cN/25mmである。引き出されたキッチンペーパーの強度が上記範囲にあれば、長尺品の強く引っ張られた状態での巻き取り時におけるテンションに耐えることができ、好適な嵩と湿潤紙厚減少率としやすい。の乾燥引張強度(縦)及び(横)は、JIS P 8113に基づいて、試験片を幅25mmとして測定した値である。湿潤引張強度(横)は、JIS P 8135に基づいて試験片を幅25mmとして測定した値である。
【0032】
本実施形態に係るキッチンペーパーロールは、キッチンペーパーの巻密度が0.20~0.40m/cm2であり、好ましくは0.26~0.35m/cm2である。ここで、巻密度は、キッチンペーパーの巻長さ(m)をキッチンペーパーロールの径方向の面積(cm2)で除した値である。キッチンペーパーロールにおいて、キッチンペーパーの巻密度をこのような範囲にすることにより、巻径を増やさずにキッチンペーパーの巻長さを長くすることができる。
【0033】
本実施形態に係るキッチンペーパーロールにおけるキッチンペーパーにおけるエンボス加工による凹凸の形状、密度、面積等はエンボス加工による凸部、凹部の構成は限定されるものではないが、下記構成であるのが望ましい。エンボス加工による凹凸の構成が下記であると紙の厚み方向の潰れ復元性が高まり。本発明のキッチンペーパーロールとしやすい。すなわち、凸部の密度は、0.075~0.2個/mm2であり、好ましくは0.076~0.15個/mm2 、より好ましくは0.077~0.1個/mm2である。ここで、凸部の密度は、シートの単位面積あたり凸部の個数を示す。この凸部の個数であれば、適度な分散性を有し、キッチンペーパーが厚み方向に潰れ難くなる。ゆえに湿潤紙厚の減少率も小さくしやすい。
【0034】
エンボス面積率は、8~14%であることが好ましく、より好ましくは9 ~13%、さらに好ましくは9.5~12%である。エンボス面積率は、シートの表面に占め凸部(凹部)の面積の割合である。このエンボス面積率であるとエンボス加工による吸液性が発揮されやすい。
【0035】
凸部の形状は、特に限定されないが、例えば、平面視で円形、三角形、四角形、楕円形等にすることができる。なお、凸部の頂部の形状としては、凸部の強度を高める観点から、円形を採用するのが好ましい。
【0036】
凸部の寸法は、特に制限されないが、好ましくは1.0~1.6mm/個、より好ましくは1.2~1.4mm/個、さらに好ましくは1.3~1.38mm個である。凸部の寸法は、凸部の形状が円形の場合は円の直径を示し、四角形、三角形の場合は一辺の長さを示し、楕円形の場合は長径または短径である。
【0037】
凸部の単位面積は、特に制限されないが、好ましくは0.5~2.0mm2/個、より好ましくは1.0~1.7mm2/個、さらに好ましくは1.3~1.6mm2/個である。ここで、凸部の単位面積は、凸部1個あたりの面積を示す。
【0038】
以下、本発明の効果について検証した実施例を参照しつつ、さらに本発明に係るキッチンペーパーロールについて説明する。
【実施例0039】
本発明に係るキッチンペーパーロールと市販品について、「吸水量」、「湿潤による紙厚減少率」、「吸油量」を測定し、さらに、「水拭き時の厚み感」、「水拭き時の吸水性」、「油汚れ拭き取り易さ」について官能試験を行った。各例は全てエンボス加工による凹凸を有し、ネステッド形式で積層されているものである。また、市販品1は、長尺品、市販品2及び市販品3は、カット数が100カットの長尺品と短尺品との間の製品群のものである。
「水拭き時の厚み感」、「水拭き時の吸水性」、「油汚れ拭き取り易さ」の官能試験は、試験者27名が実際の使用時における感じ方を5段階(特に優れている5点、優れている4点、普通である3点、やや劣っている2点、劣っている1点)で評価し、その平均点を小数点1位で四捨五入して評価した。
「湿潤による紙厚減少率」、の測定方法は、上記のとおりである。「吸水量」、「吸油量」は下記のとおりに測定した。各例における物性、測定値及び評価を下記表1に示す。
【0040】
[吸水量]
吸水量の測定は下記(1)~(5)のとおりに行った。
(1)試験片の質量を電子天秤(A&D HR300等)により測定する。
(2)試験片よりも大きいトレイ(例えば、内寸:215mm×160mm)に、20mm程度の深さとなるように、25℃の水を入れる。
(3)試験片を、試験片以上の大きさの剛性のある平網(例えば、120mm×120mm、網目15mm)の上に拡げて載せ、前記水を入れたトレイ内におろして、水面に接触するように試験片を浸水させる。
(4)試験片の表面にまで十分に水が浸みこんだら、平網を水面より真上に上げ、ピンセットにより試験片の角を摘み、そのまま30秒静止する。
(5)30秒後に吸水した試験片の質量を電子天秤により測定し、下記式により1m2当たりの吸水量を算出する。
吸水量(g/m2)=((上記(4)で測定した吸水した試験片の質量)-(上記(1)で測定した試験片の質量))×100(注:m2に換算するため、100倍する)
【0041】
[吸油量]
吸油量の測定は下記(1)~(5)のとおりとした。
(1)試験片の質量を電子天秤(A&D HR300等)により測定する。
(2)試験片よりも大きいトレイ(例えば、内寸:215mm×160mm)に、20mm程度の深さとなるように、25℃のサラダ油(日清サラダ油:日清オイリオグループ株式会社製)を入れる。
(3)試験片を、試験片以上の大きさの剛性のある平網(例えば、120mm×120mm、網目30mm)の上に拡げて載せ、前記サラダ油を入れたトレイ内におろして、油面に接触するように試験片を浸油させる。
(4)試験片の表面にまで十分にサラダ油が浸みこんだら、平網を油面より真上に上げ、そのまま30秒静止した後、ピンセットにより試験片の角を摘み、予め秤量された測定容器に試験片を移す。このとき、平網を油面より上げて静止を開始してから測定容器に移すまで30秒を超えないようにする。
(5)試験片が入った測定容器の質量を電子天秤により測定し、その測定値より測定容器の質量を差し引いて、吸油後の試験片の質量を算出する。そして、下記式により1m2当たりの吸油量を算出する。
吸油量(g/m2)=((上記(4)で測定した吸油した試験片の質量)-(上記(1)で測定した試験片の質量))×100(注:m2に換算するため、100倍する)
【0042】
【0043】
本発明の実施例と、巻長さが短い市販品2及び市販品3とを比較すると、吸水量及び吸油量において大きな差は見られない。また、嵩についてみると、市販品1及び市販品2及び市販品3より低いが、市販品1とは同等以上であり、各実施例は、紙厚及び嵩において市販品2及び市販品3と遜色がない。
特徴的には、その湿潤時の紙厚の減少率(4.9kPa加圧下)である。実施例は、市販品1~市販品3に比べて格段に減少率が低い。セルロース繊維は湿潤によって膨潤するとともに、繊維間結合は減少するから圧力下ではシートのうねりやエンボス形状が平坦化し嵩(紙厚)は減少する。そして、この湿潤時の紙厚の減少率の場合、特に、「水拭き時の厚み感」の評価が高くなっており、市販品2及び市販品3の紙厚や嵩が高いもののよりも良い評価が得られている。市販品2及び市販品3は嵩がやや高いだけであるが、湿潤時の紙厚の減少率が高いため、湿潤時におけるエンボス加工による凹凸の潰れが実施例よりも生じやすくなっており、評価が低くなったと考えられる。本実施例では、ワインダーにより適切な引張や紙質の調整により、湿潤時の紙厚の減少率が小さく、長尺仕様でありながら、巻かれているキッチンペーパーが、特に、湿潤状態における厚み感に優れ、拭き取り用途に使用しても使用感が低下し難い、キッチンペーパーロールとなっている。
1…キッチンペーパー、100…キッチンペーパーロール、11A,11B…シート(クレープ紙)、12a…エンボス加工による凹部、12b…エンボス加工による凸部、13…接着剤、L1…巻径、L2…キッチンペーパーロールの幅、L4…紙管外径。