(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023146596
(43)【公開日】2023-10-12
(54)【発明の名称】積層インダクタ
(51)【国際特許分類】
H01F 17/00 20060101AFI20231004BHJP
H01F 27/00 20060101ALI20231004BHJP
【FI】
H01F17/00 C
H01F27/00 160
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022053851
(22)【出願日】2022-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(72)【発明者】
【氏名】飛田 和哉
(72)【発明者】
【氏名】郭 旭冉
(72)【発明者】
【氏名】數田 洋一
(72)【発明者】
【氏名】田久保 悠一
(72)【発明者】
【氏名】志賀 悠人
(72)【発明者】
【氏名】小林 創
(72)【発明者】
【氏名】松浦 利典
(72)【発明者】
【氏名】濱地 紀彰
(72)【発明者】
【氏名】占部 順一郎
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 駿也
【テーマコード(参考)】
5E070
【Fターム(参考)】
5E070AA01
5E070AB06
5E070CB13
(57)【要約】
【課題】Q値の向上が図られた積層インダクタを提供する。
【解決手段】 積層インダクタ1においては、接続部37、37の延在方向は、Z方向から見て、ターン部31~36に沿った方向、より具体的にはターン部31~36からわずかに傾いた方向となっている。このような接続部37、38によれば、ターン部31~36との接合箇所における電流ルートの変化が緩やかになる。接合箇所における電流ルートが急激に(たとえば90度)変わる場合には、接合箇所において大きな信号ロスが生じることが考えられ、この場合にはQ値の低下が招かれ得る。積層インダクタ1においては、ターン部31~36と接続部37、38との接合箇所における電流ルートが穏やかに変わり、接合箇所における信号ロスが抑制されるため、高いQ値を実現することができる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の絶縁層が積層された積層構造を有し、前記絶縁層に対して平行な実装面を有する素体と、
前記素体の実装面に設けられた一対の端子電極と、
前記素体内に設けられ、前記実装面に対して平行なコイル軸を有し、両端部が前記実装面から露出して前記一対の端子電極と電気的に接続されたコイル導体と
を備え、
前記コイル導体が、前記コイル軸の延在方向から見て外周側において巻回された外周コイル部と内周側において巻回された内周コイル部とを含み、前記コイル導体においては前記外周コイル部と前記内周コイル部とが交互に巻回されており、
前記コイル導体が、前記コイル軸に沿って並ぶ複数段のターン部を有し、少なくとも一部の段の前記ターン部が前記コイル軸に対して垂直な面内に位置するとともに前記外周コイル部の一部を構成する第1コイル部と前記内周コイル部の一部を構成する第2コイル部とを含み、
隣り合う段の前記ターン部の前記第1コイル部の端部同士および前記第2コイル部の端部同士が、前記コイル軸の延在方向から見て前記実装面に対して平行な方向に関してずれており、
前記コイル導体が、隣り合う段の前記ターン部の前記第1コイル部の端部間または前記第2コイル部の端部間にわたって直線状に延びて互いを接続する接続部をさらに有する、積層インダクタ。
【請求項2】
前記コイル導体が、3段以上のターン部を有し、かつ、隣り合う段の前記ターン部の前記第1コイル部の端部同士または前記第2コイル部の端部同士を接続する前記接続部を複数有する、請求項1に記載の積層インダクタ。
【請求項3】
前記コイル軸の延在方向に関して、前記接続部の両端部のズレ量が、前記ターン部の長さの1~3倍である、請求項1または2に記載の積層インダクタ。
【請求項4】
前記コイル導体の両端部のそれぞれが前記外周コイル部から延びて前記実装面に達している、請求項1~3のいずれか一項に記載の積層インダクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層インダクタに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、素体の実装面に対して平行なコイル軸を有するコイル導体が設けられた積層インダクタが開示されている。本文献に開示された積層インダクタにおいて、素体はコイル軸の延在方向に沿って積層された複数の絶縁体層で構成されており、コイル導体は絶縁体層を介して積層された複数のインダクタ導体層と絶縁体層を貫通するビアホール導体とで構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来技術に係る積層インダクタにおいては、複数の絶縁体層はコイル軸の延在方向に沿って積層されているため、隣り合うインダクタ導体層の間に介在するビアホール導体は、その長さが絶縁体層の厚さに限られ、かつ、その向きは絶縁体層の厚さ方向(すなわち、コイル軸の延在方向)に限られていた。そのため、隣り合うインダクタ導体層の間隔を調整することが難しく、コイル巻数に関する設計自由度が低かったため、インダクタンス値の調整(たとえば増加)が困難であった。
【0005】
そこで、発明者らは、コイル軸に対して平行な絶縁層で素体を構成することで、隣り合うインダクタ導体層の間隔を調整でき、それによりインダクタンス値を調整するができる技術について研究を重ねた。この研究の結果として、上述した従来技術に係る積層インダクタのように、実装面に対して垂直な方向から見たときに、インダクタ導体層とビアホール導体との接合箇所で電流ルートが90度折れ曲がる場合には、電流ルートが急激に変わり、その接合箇所において信号ロスが生じ、Q値の低下が招かれ得るとの知見を得た。
【0006】
本発明は、Q値の向上が図られた積層インダクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一形態に係る積層インダクタは、複数の絶縁層が積層された積層構造を有し、絶縁層に対して平行な実装面を有する素体と、素体の実装面に設けられた一対の端子電極と、素体内に設けられ、実装面に対して平行なコイル軸を有し、両端部が実装面から露出して一対の端子電極と電気的に接続されたコイル導体とを備え、コイル導体が、コイル軸の延在方向から見て外周側において巻回された外周コイル部と内周側において巻回された内周コイル部とを含み、コイル導体においては外周コイル部と内周コイル部とが交互に巻回されており、コイル導体が、コイル軸に沿って並ぶ複数段のターン部を有し、少なくとも一部の段のターン部がコイル軸に対して垂直な面内に位置するとともに外周コイル部の一部を構成する第1コイル部と内周コイル部の一部を構成する第2コイル部とを含み、隣り合う段のターン部の第1コイル部の端部同士および第2コイル部の端部同士が、コイル軸の延在方向から見て実装面に対して平行な方向に関してずれており、コイル導体が、隣り合う段のターン部の第1コイル部の端部間または第2コイル部の端部間にわたって直線状に延びて互いを接続する接続部をさらに有する。
【0008】
上記積層インダクタにおいては、接続部の延在方向は、コイル軸に対して平行な方向ではなく、ターン部に沿った方向となっている。そのため、ターン部と接続部との接合箇所における電流ルートは緩やかに変わり、それにより接合箇所における信号ロスが抑制され、Q値の向上が図られる。
【0009】
他の形態に係る積層インダクタは、コイル導体が、3段以上のターン部を有し、かつ、隣り合う段のターン部の第1コイル部の端部同士または第2コイル部の端部同士を接続する接続部を複数有する。
【0010】
他の形態に係る積層インダクタは、コイル軸の延在方向に関して、接続部の両端部のズレ量が、ターン部の長さの1~3倍である。
【0011】
他の形態に係る積層インダクタは、コイル導体の両端部のそれぞれが外周コイル部から延びて実装面に達している。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、Q値の向上が図られた積層インダクタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】一実施形態に係る積層インダクタを示す概略斜視図である。
【
図2】
図1に示したコイル導体をX方向から見た側面図である。
【
図3】
図1に示したコイル導体を示す平面図である。
【
図4】
図1に示したコイル導体をY方向から見た側面図である。
【
図5】コイル導体を構成するターン部を示した斜視分解図である。
【
図6】コイル導体におけるターン部の接続を示した斜視分解図である。
【
図7】コイル導体におけるターン部の接続を示した斜視分解図である。
【
図8】コイル導体におけるターン部の接続を示した斜視分解図である。
【
図9】コイル導体におけるターン部の接続を示した斜視分解図である。
【
図10】コイル導体におけるターン部の接続を示した斜視分解図である。
【
図11】接続部が形成された絶縁層の導体パターンを示した図である。
【
図12】接続部が形成された絶縁層の導体パターンを示した図である。
【
図13】異なる形態のコイル導体を示した側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0015】
図1に、一実施形態に係る積層インダクタ1を示す。積層インダクタ1は、素体10と、素体10の表面に設けられた一対の端子電極20A、20Bと、素体10の内部に設けられたコイル導体30とを備えて構成されている。
【0016】
素体10は、略直方体の外形を有する。素体10は、上面10a、下面10b、互いに対面する一対の側面10c、10dおよび互いに対面する一対の側面10e、10fを有する。本実施形態では、素体10の下面10bが、積層インダクタ1が搭載される実装基板と対面する実装面となっている。本実施形態では、側面10c、10dの離間距離が側面10e、10fの離間距離より長くなっており、素体10は側面10c、10dの対面方向に延びた形状を有する。以下では説明の便宜上、上面10aと下面10bとの対面方向をZ方向、側面10c、10dの対面方向をY方向、側面10e、10fの対面方向をX方向とも称す。
【0017】
素体10は、複数の絶縁層12がZ方向に重なる積層構造を有する。各絶縁層12の平面形状(すなわち、Z方向から見たときの形状)は、素体10の上面10aおよび下面10bと同じ形状(すなわち、長方形状)である。絶縁層12は、絶縁材料で構成されており、一例として樹脂で構成されている。絶縁層12の層数は、たとえば9~20層(一例として12層)である。絶縁層12の厚さは、たとえば0.05~0.4mm(一例として0.3mm)であり、素体10を構成する絶縁層12の全てが同じ厚さであってもよく、一部の絶縁層12が異なる厚さであってもよい。
【0018】
一対の端子電極20A、20Bは、素体10の下面10bに設けられている。一対の端子電極20A、20Bはいずれも矩形状を有し、一方の端子電極20Aは下面10bにおいて側面10cに対応する短辺に沿って延在しており、他方の端子電極20Bは下面10bにおいて側面10dに対応する短辺に沿って延在している。各端子電極20A、20Bは、単層構造であってもよく、複数層構造であってもよい。
【0019】
コイル導体30は、X方向に延びるコイル軸C周りに巻回されている。すなわち、コイル導体30のコイル軸Cは、素体10の上面10aおよび下面10bに対して平行であり、かつ、一対の側面10c、10dに対して平行である。
図2に示すように、コイル導体30は、二重巻き構造を有し、コイル軸Cの延在方向から見て外周側において巻回された外周コイル部40と内周側において巻回された内周コイル部50とを含んで構成されている。コイル導体30は、素体10を構成する各絶縁層12に埋設された導体の集合体である。そのため、コイル導体30のうちのZ方向に延びる部分(後述する外ピラー、内ピラー等)は、複数の絶縁層12のそれぞれに埋設された導体が複数重なって構成されている。
【0020】
コイル導体30は、
図3、4に示すように、コイル軸Cに沿って並ぶ複数段(本実施形態では6段)のターン部31~36を含んで構成されている。各ターン部31~36は、コイル軸Cに対して垂直な面(X-Y面)内においてコイル軸C周りに巻回されており、隣り合うターン部31~36同士は互いに平行である。
図5に示すように、ターン部31~36は、側面10eから近いほうから、ターン部31、ターン部32、ターン部33、ターン部34、ターン部35、ターン部36の順に並んでいる。側面10eに最も近いターン部31はコイル導体30の一方の端部を構成するコイル端部30aを有し、側面10eから最も遠いターン部36はコイル導体30の他方の端部を構成するコイル端部30aを有する。素体10は、複数の絶縁層12がコイル軸Cに対して直交するZ方向に積層された構成を有するため、絶縁層12に設けられる導体パターンは高い設計自由度を有し、ターン部31~36の各種寸法は細かに設定することができる。たとえば、ターン部の厚さ(X方向長さ)や隣り合うターン部の離間距離は任意に設定することができる。また、素体10の絶縁数12の層数を変えることなく、ターン部の段数を適宜に増減することもできる。
【0021】
隣り合うターン部31~36同士は、接続部37、38によって接続されている。以下では、
図6~12を参照しつつ、接続部37、38を介したターン部31~36の接続について説明する。
【0022】
図6は、接続部37を介したターン部31とターン部32との接続を示している。
【0023】
ターン部31は、外周コイル部40の一部を構成する第1コイル部41、および、第1コイル部41から連続的に延びるとともに内周コイル部50の一部を構成する第2コイル部51を有する。第1コイル部41は、Z方向に延びるとともにY方向において離間した一対の外ピラー41aと、Y方向に延びるとともにZ方向において離間した一対の外クロスバー41bとを含み、外周コイル1ターンを構成している。素体10の側面10c側に位置する外ピラー41aの下端部は、コイル端部30aを構成しており、下面10bまで延びて下面10bから露出して端子電極20Aに物理的かつ電気的に接続されている。第2コイル部51は、Z方向に延びるとともにY方向において離間した一対の内ピラー51aとY方向に延びる一本の内クロスバー51bとを含み、内周コイル3/4ターンを構成している。
【0024】
ターン部32は、外周コイル部40の一部を構成する第1コイル部42、および、第1コイル部42から連続的に延びるとともに内周コイル部50の一部を構成する第2コイル部52を有する。第1コイル部42は、Z方向に延びる一本の外ピラー42aと、Y方向に延びる一本の外クロスバー42bとを含み、外周コイル1/2ターンを構成している。第2コイル部52は、Z方向に延びるとともにY方向において離間した一対の内ピラー52aとY方向に延びる一本の内クロスバー52bとを含み、内周コイル3/4ターンを構成している。
【0025】
接続部37は、直線状の形状を有する。接続部37は、内周コイル部50を構成する部分であるターン部31の第2コイル部51とターン部32の第2コイル部52とを接続している。より詳しくは、接続部37は、第2コイル部51の一対の内ピラー51aのうちの側面10d側に位置する内ピラー51aの下端部と、第2コイル部52の一対の内ピラー52aのうちの側面10c側に位置する内ピラー52aの下端部との間にわたって直線状に延びて互いを接続している。接続部37が接続される内ピラー51aと内ピラー52aとは下端部の高さ位置(すなわち、Z方向に関する位置)が同じであるため、接続部37はZ方向に対して垂直(すなわち、下面10bに対して平行)に延在している。接続部37が接続される内ピラー51aと内ピラー52aとは、コイル軸Cの延在方向から見てY方向にずれているため、接続部37はX方向に対して平行に延在しておらず、X方向に対して交差するように延在している。より詳しくは、
図11に示すように、Z方向から見て、接続部37はY方向からわずかな角度θ
1(たとえばθ
1<45度)だけ傾斜した方向に延在している。コイル軸Cの延在方向に関する接続部37のズレ量は、コイル軸Cの延在方向に関するターン部31、32の長さの1~3倍(本実施形態では2倍)である。素体10は、複数の絶縁層12がコイル軸Cに対して直交するZ方向に積層された構成を有するため、絶縁層12に設けられる導体パターンは高い設計自由度を有し、接続部37の角度θ
1を含む各種寸法は細かに設定することができる。
【0026】
図7は、接続部38を介したターン部32とターン部33との接続を示している。
【0027】
ターン部33は、外周コイル部40の一部を構成する第1コイル部43、および、第1コイル部43から連続的に延びるとともに内周コイル部50の一部を構成する第2コイル部53を有する。第1コイル部43は、Z方向に延びるとともにY方向において離間した一対の外ピラー43aと、Y方向に延びる一本の外クロスバー43bとを含み、外周コイル3/4ターンを構成している。第2コイル部53は、Z方向に延びる一本の内ピラー53aとY方向に延びる一本の内クロスバー53bとを含み、内周コイル1/2ターンを構成している。
【0028】
接続部38は、接続部37同様、直線状の形状を有する。接続部38は、外周コイル部40を構成する部分であるターン部32の第1コイル部42とターン部33の第1コイル部43とを接続している。より詳しくは、接続部38は、第1コイル部42の外ピラー42aの上端部と、第1コイル部43の一対の外ピラー43aのうちの側面10d側に位置する外ピラー43aの上端部との間にわたって直線状に延びて互いを接続している。接続部38が接続される外ピラー42aと外ピラー43aとは上端部の高さ位置が同じであるため、接続部38はZ方向に対して垂直に延在している。接続部38が接続される外ピラー42aと外ピラー43aとは、コイル軸Cの延在方向から見てY方向にずれているため、接続部38はX方向に対して平行に延在しておらず、X方向に対して交差するように延在している。より詳しくは、
図12に示すように、Z方向から見て、接続部38はY方向からわずかな角度θ
2(たとえばθ
2<45度)だけ傾斜した方向に延在している。コイル軸Cの延在方向に関する接続部38のズレ量は、コイル軸Cの延在方向に関するターン部32、33の長さの1~3倍(本実施形態では2倍)である。接続部38の角度θ
2を含む各種寸法は、接続部37同様、細かに設定することができる。
【0029】
図8は、接続部37を介したターン部33とターン部34との接続を示している。ターン部34は、上述したターン部32の形状と実質的に同じ形状を有する。すなわち、ターン部34は、外周コイル部40の一部を構成する第1コイル部44、および、第1コイル部44から連続的に延びるとともに内周コイル部50の一部を構成する第2コイル部54を有する。第1コイル部44は、Z方向に延びる一本の外ピラー44aと、Y方向に延びる一本の外クロスバー44bとを含み、外周コイル1/2ターンを構成している。第2コイル部54は、Z方向に延びるとともにY方向において離間した一対の内ピラー54aとY方向に延びる一本の内クロスバー54bとを含み、内周コイル3/4ターンを構成している。ターン部33とターン部34とを接続する接続部37は、ターン部31とターン部32とを接続する接続部37と同じ形状を有し、同じ寸法を有する。ターン部33とターン部34とを接続する接続部37は、内周コイル部50を構成する部分であるターン部33の第2コイル部53とターン部34の第2コイル部54とを接続している。ターン部33とターン部34とを接続する接続部37が、第2コイル部53と第2コイル部54とを接続する形態は、ターン部31とターン部32とを接続する接続部37が、第2コイル部51と第2コイル部52とを接続する形態と同一である。
【0030】
図9は、接続部38を介したターン部34とターン部35との接続を示している。ターン部35は、上述したターン部33の形状と実質的に同じ形状を有する。すなわち、ターン部35は、外周コイル部40の一部を構成する第1コイル部45、および、第1コイル部45から連続的に延びるとともに内周コイル部50の一部を構成する第2コイル部55を有する。第1コイル部45は、Z方向に延びるとともにY方向において離間した一対の外ピラー45aと、Y方向に延びる一本の外クロスバー45bとを含み、外周コイル3/4ターンを構成している。第2コイル部55は、Z方向に延びる一本の内ピラー55aとY方向に延びる一本の内クロスバー55bとを含み、内周コイル1/2ターンを構成している。ターン部34とターン部35とを接続する接続部38は、ターン部32とターン部33とを接続する接続部38と同じ形状を有し、同じ寸法を有する。ターン部34とターン部35とを接続する接続部38は、外周コイル部40を構成する部分であるターン部34の第1コイル部44とターン部35の第1コイル部45とを接続している。ターン部34とターン部35とを接続する接続部38が第1コイル部44と第1コイル部45とを接続する形態は、ターン部32とターン部33とを接続する接続部38が、第1コイル部42と第1コイル部43とを接続する形態と同一である。
【0031】
図10は、接続部37を介したターン部35とターン部36との接続を示している。ターン部36は、外周コイル部40の一部を構成する第1コイル部46を有し、内周コイル部50を構成する部分は有しない。第1コイル部46は、Z方向に延びるとともにY方向において離間した一対の外ピラー46aと、Y方向に延びる一本の外クロスバー46bとを含み、外周コイル3/4ターンを構成している。素体10の側面10d側に位置する外ピラー46aの下端部は、コイル端部30bを構成しており、下面10bまで延びて下面10bから露出して端子電極20Bに物理的かつ電気的に接続されている。
【0032】
ターン部35とターン部36とを接続する接続部37は、直線状の形状を有し、内周コイル部50を構成する部分であるターン部35の第2コイル部55と外周コイル部40を構成する部分であるターン部36の第1コイル部46とを接続している。より詳しくは、接続部37は、第2コイル部55の一対の内ピラー55aのうちの側面10d側に位置する内ピラー55aの下端部と、第1コイル部46の一対の外ピラー46aのうちの側面10c側に位置する外ピラー46aの下端部との間にわたって直線状に延びて互いを接続している。接続部37が接続される内ピラー55aと外ピラー46aとは下端部の高さ位置が同じであるため、接続部37はZ方向に対して垂直に延在している。接続部37が接続される内ピラー55aと外ピラー46aとは、コイル軸Cの延在方向から見てY方向にずれているため、接続部37はX方向に対して平行に延在しておらず、X方向に対して交差するように延在している。より詳しくは、
図11に示すように、Z方向から見て、接続部37はY方向からわずかな角度θ
3(たとえばθ
3<45度)だけ傾斜した方向に延在している。コイル軸Cの延在方向に関する接続部37のズレ量は、コイル軸Cの延在方向に関するターン部35、36の長さの1~3倍(本実施形態では2倍)である。
【0033】
コイル導体30は、ターン部31~36同士が上述したように接続部37、38により接続されて構成されている。コイル導体30は、ターン部31~36と接続部37、38とにより、外周コイル部40と内周コイル部50とが交互に巻回された構成となっている。そのため、一対の端子電極20A、20Bに電圧が印加されて、たとえば一方のコイル端部30aからコイル導体30に電流が流れると、その電流は、コイル軸C周りを螺旋状に、かつ、外周コイル部40と内周コイル部50とを交互に流れる。
【0034】
上述した積層インダクタ1においては、接続部37、37の延在方向は、Z方向から見て、ターン部31~36に沿った方向、より具体的にはターン部31~36からわずかに傾いた方向となっている。このような接続部37、38によれば、ターン部31~36との接合箇所における電流ルートの変化が緩やかになる。接合箇所における電流ルートが急激に(たとえば90度)変わる場合には、接合箇所において大きな信号ロスが生じることが考えられ、この場合にはQ値の低下が招かれ得る。積層インダクタ1においては、ターン部31~36と接続部37、38との接合箇所における電流ルートが穏やかに変わり、接合箇所における信号ロスが抑制されるため、高いQ値を実現することができる。
【0035】
積層インダクタ1のコイル導体30は、接続部37および接続部38を2つずつ有しており、コイル軸Cの延在方向において接続部37と接続部38とは交互に並んでいる。換言すると、コイル導体30では、コイル軸Cの延在方向において、接続部37による内周コイル部同士の接続(すなわち、第2コイル部の端部同士の接続)と、接続部38による外周コイル部同士の接続(すなわち、第1コイル部の端部同士の接続)とが交互に繰り返されている。積層インダクタ1のコイル導体30は、外周コイル部40の一部を構成する第1コイル部41、46から両端部30a、30bが引き出されている。このようにコイル導体30の両端が外周コイル部40で構成されることで、コイル内径の拡大が図られており、取得可能なインダクタンスの範囲を最大限広げることができる。。
【0036】
積層インダクタ1のコイル導体30は6段のターン部31~36を有しているが、ターン部の段数は適宜増減することができ、コイル導体30は少なくとも2段のターン部を有していればよい。コイル導体30が3段のターン部を有する場合、コイル導体30は2つの接続部(すなわち、接続部37および接続部38)を有する。コイル導体30が4段以上のターン部を有する場合、3つ以上の接続部37、38を有し、コイル軸Cの延在方向において接続部37と接続部38とが交互に並ぶ。
【0037】
上述した積層インダクタ1のコイル導体30は二重巻き構造を有している。コイル導体30を二重巻き構造とすることで、一巻き構造に比べて、高いインダクタンスを得ることができる。コイル導体30は、二重巻き構造に限らず、三重巻き以上の多重巻き構造のコイル導体であってもよい。
図13に、三重巻き構造を有するコイル導体30Aを示す。コイル導体30Aは、コイル軸Cの延在方向から見て外周側において巻回された外周コイル部40および内周側において巻回された内周コイル部50に加えて、外周コイル部40と内周コイル部50との間において巻回された中間コイル部60を含んで構成されている。コイル導体30Aを構成する複数段のターン部は、上述したコイル導体30のターン部31~36同様、接続部37により内周コイル部同士が接続され、接続部38により外周コイル部同士が接続される。
【0038】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。たとえば、コイル導体を構成する全てのターン部が外周コイル部の一部を構成する第1コイル部および内周コイル部の一部を構成する第2コイル部の両方を含む必要はなく、少なくとも一部の段のターン部が両方を含んでいればよい。
【符号の説明】
【0039】
1…積層インダクタ、10…素体、20A、20B…端子電極、30、30A…コイル導体、31~36…ターン部、37、38…接続部、40…外周コイル部、50…内周コイル部、C…コイル軸。