(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023146600
(43)【公開日】2023-10-12
(54)【発明の名称】演奏データ変換装置及び演奏データ変換プログラム
(51)【国際特許分類】
G10G 1/00 20060101AFI20231004BHJP
G10H 1/00 20060101ALI20231004BHJP
【FI】
G10G1/00
G10H1/00 102Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022053855
(22)【出願日】2022-03-29
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.BLUETOOTH
(71)【出願人】
【識別番号】000001410
【氏名又は名称】株式会社河合楽器製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100090273
【弁理士】
【氏名又は名称】國分 孝悦
(72)【発明者】
【氏名】勝田 雅則
【テーマコード(参考)】
5D182
5D478
【Fターム(参考)】
5D182AA13
5D182AA18
5D478EB21
(57)【要約】
【課題】演奏データのテンポ情報又は発音強さを簡便に設定できるようにする。
【解決手段】演奏データ変換装置は、操作者の操作に基づき、第1の演奏データの各拍のタイミング情報を入力する入力手段と、前記各拍のタイミング情報を基に、前記第1の演奏データを第2の演奏データに変換する変換手段とを有し、前記変換手段は、前記各拍のタイミング情報と前記第1の演奏データのテンポ情報を基に、前記第2の演奏データの各拍のテンポ情報を算出する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作者の操作に基づき、第1の演奏データの各拍のタイミング情報を入力する入力手段と、
前記各拍のタイミング情報を基に、前記第1の演奏データを第2の演奏データに変換する変換手段とを有し、
前記変換手段は、前記各拍のタイミング情報と前記第1の演奏データのテンポ情報を基に、前記第2の演奏データの各拍のテンポ情報を算出することを特徴とする演奏データ変換装置。
【請求項2】
前記変換手段は、隣接する2つの拍の前記タイミング情報の差分と、拍時間情報と、前記第1の演奏データの各拍のテンポ情報を基に、前記第2の演奏データの各拍のテンポ情報を算出することを特徴とする請求項1に記載の演奏データ変換装置。
【請求項3】
前記第1の演奏データを再生する再生手段をさらに有し、
前記入力手段は、前記再生手段により前記第1の演奏データが再生されている状態で、再生位置の時刻に基づき、前記タイミング情報を入力することを特徴とする請求項1又は2に記載の演奏データ変換装置。
【請求項4】
前記入力手段は、タッチパネルのタップ操作又は鍵盤の押鍵操作に基づき、前記タイミング情報を入力することを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の演奏データ変換装置。
【請求項5】
操作者の操作に基づき、第1の演奏データの各拍の楽音の発音強さを入力する入力手段と、
前記各拍の楽音の発音強さを基に、前記第1の演奏データを第2の演奏データに変換する変換手段とを有し、
前記変換手段は、前記各拍の楽音の発音強さを基に、前記第2の演奏データの各拍の楽音の発音強さを決定することを特徴とする演奏データ変換装置。
【請求項6】
前記第1の演奏データを再生する再生手段をさらに有し、
前記入力手段は、前記再生手段により前記第1の演奏データが再生されている状態で、再生位置に対応する拍の楽音の発音強さを入力することを特徴とする請求項5に記載の演奏データ変換装置。
【請求項7】
前記入力手段は、操作者の操作により指定された拍の楽音の発音強さを入力することを特徴とする請求項5に記載の演奏データ変換装置。
【請求項8】
前記入力手段は、タッチパネルのタップ強度又はタップ位置あるいは鍵盤操作の押鍵速度又は押鍵強さに基づき、前記第1の演奏データの各拍の楽音の発音強さを入力することを特徴とする請求項5~7のいずれか1項に記載の演奏データ変換装置。
【請求項9】
前記変換手段は、同じ拍内に複数の楽音が存在する場合には、前記各拍の楽音の発音強さを基に、前記第2の演奏データの同じ拍内の複数の楽音の発音強さを同一の発音強さにすることを特徴とする請求項5~8のいずれか1項に記載の演奏データ変換装置。
【請求項10】
前記変換手段は、同じ拍内に複数の楽音が存在する場合には、前記各拍の楽音の発音強さと前記第1の演奏データの同じ拍内の複数の楽音の発音強さを基に、前記第2の演奏データの同じ拍内の複数の楽音の発音強さを決定することを特徴とする請求項5~8のいずれか1項に記載の演奏データ変換装置。
【請求項11】
前記変換手段は、同じ拍内に複数の楽音が存在する場合には、前記各拍の楽音の発音強さと、前記第1の演奏データの同じ拍内の複数の楽音の発音強さの比率を基に、前記第2の演奏データの同じ拍内の複数の楽音の発音強さを決定することを特徴とする請求項5~8のいずれか1項に記載の演奏データ変換装置。
【請求項12】
時間軸に沿って、前記第1の演奏データの各楽音の発音時刻を示す第1の図形と、前記第1の演奏データの拍子情報に基づく各拍の時刻を示す第2の図形を表示するように制御する第1の表示制御手段をさらに有することを特徴とする請求項1~11のいずれか1項に記載の演奏データ変換装置。
【請求項13】
前記第1の演奏データの再生位置を表示するように制御する第2の表示制御手段をさらに有し、
前記入力手段は、前記表示された第1の演奏データの再生位置に基づき、前記タイミング情報を入力することを特徴とする請求項1~12のいずれか1項に記載の演奏データ変換装置。
【請求項14】
前記入力手段は、操作者の1つの操作に基づき、前記第1の演奏データの各拍のタイミング情報と各拍の楽音の発音強さの両方を入力することを特徴とする請求項1~13のいずれか1項に記載の演奏データ変換装置。
【請求項15】
前記再生手段は、
前記第1の演奏データの再生位置が前記第1の演奏データの拍の先頭に到達する前に当該拍のタイミング情報が前記入力手段により入力された場合には、前記第1の演奏データの再生位置を次の拍の先頭までスキップして前記第1の演奏データを再生し、
前記第1の演奏データの再生位置が前記第1の演奏データの拍の先頭に到達したときに、当該拍のタイミング情報が未だに前記入力手段により入力されていない場合には、前記第1の演奏データの再生を停止し、その後、当該拍のタイミング情報が前記入力手段により入力された場合には、前記第1の演奏データの再生を再開することを特徴とする請求項3又は6に記載の演奏データ変換装置。
【請求項16】
コンピュータを、請求項1~15のいずれか1項に記載の演奏データ変換装置として機能させるための演奏データ変換プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、演奏データ変換装置及び演奏データ変換プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、外部イベントに従って、曲データを自動演奏する自動演奏装置が記載されている。曲データは、所定の区間に区分されている。自動演奏装置は、自動演奏時には、外部イベントに応じて、外部イベントに対応する区間の自動演奏が進行するとともに、外部イベントの間隔に基づいて、自動演奏のテンポを設定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
楽曲の演奏データを作成及び編集する方法として、楽曲の楽譜を見ながら、音符などの音楽記号をコンピュータの画面上の五線紙に貼り付けたり、楽譜を画像認識したりすることにより、楽譜データを作成し、その楽譜データを演奏データに変換することが行われている。
【0005】
このような演奏データ作成方法の場合、テンポや強弱の抑揚の付いた曲想豊かで自然な演奏データにするためには、テンポ記号や強弱記号を駆使し、さらにテンポ速度や強弱量を繊細に調整する必要がある。そのために、編集作業と再生作業とを試行錯誤しながら何度も行ったり来たりという具合に、非常に面倒で手間のかかる非効率な作業を強いられることになる。また、出来上がった演奏データを再生しても、聴感上の不自然さは否めない。しかも、そのような抑揚を付ける編集作業は、初心者にはハードルが高すぎる。たとえ音楽的センスのある人であっても、そのセンスを演奏データに反映するとなると、大変な作業である。誰でも、感性の赴くまま、もっと簡単に演奏データに抑揚が付けられる方法が望まれる。
【0006】
本発明の目的は、演奏データのテンポ情報又は発音強さを簡便に設定できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
演奏データ変換装置は、操作者の操作に基づき、第1の演奏データの各拍のタイミング情報を入力する入力手段と、前記各拍のタイミング情報を基に、前記第1の演奏データを第2の演奏データに変換する変換手段とを有し、前記変換手段は、前記各拍のタイミング情報と前記第1の演奏データのテンポ情報を基に、前記第2の演奏データの各拍のテンポ情報を算出する。
【0008】
また、演奏データ変換装置は、操作者の操作に基づき、第1の演奏データの各拍の楽音の発音強さを入力する入力手段と、前記各拍の楽音の発音強さを基に、前記第1の演奏データを第2の演奏データに変換する変換手段とを有し、前記変換手段は、前記各拍の楽音の発音強さを基に、前記第2の演奏データの各楽音の発音強さを決定する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、演奏データのテンポ情報又は発音強さを簡便に設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、演奏データ変換装置のハードウェア構成例を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、演奏データ変換装置の機能構成例を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、ピアノロールの表示例を示す図である。
【
図4】
図4は、拍情報ウィンドウの表示例を示す図である。
【
図5】
図5は、変換前の演奏データの例を示す図である。
【
図6】
図6は、タップエリアのタップ操作により入力されたタイミング情報及びベロシティの例を示す図である。
【
図7】
図7は、変換後の演奏データの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、本実施形態による演奏データ変換装置100のハードウェア構成例を示すブロック図である。演奏データ変換装置100のハードウェアは、例えば、タブレット、スマートフォン又はパーソナルコンピュータ等の汎用情報処理装置である。
【0012】
演奏データ変換装置100は、CPU102、ROM103、RAM104、表示装置105、タッチパネル107、音源部108、通信インタフェース109、VRAM110、スキャン回路112、バス113、サウンドシステム114及び外部機器115を有する。表示装置105は、例えば液晶ディスプレイであり、VRAM110を介して、バス113に接続される。タッチパネル107は、表示装置105上に設けられ、スキャン回路112を介して、バス113に接続される。なお、タッチパネル107の代わりに、マウス及びキーボードを設けてもよい。
【0013】
ユーザは、タッチパネル107をタッチ操作することにより、指示を行うことができる。スキャン回路112は、タッチパネル107をタッチ操作した位置(座標)を検出し、バス113を介して、検出信号をCPU102に出力する。CPU102は、タッチパネル107のタッチ操作、タップ操作及びダブルタップ操作等を検出することができる。
【0014】
外部機器115は、例えば、外部記憶装置、外部コンピュータ、プリンタ又はMIDI鍵盤楽器等である。外部記憶装置は、例えば、ハードディスク、CD-ROM、MOディスク、DVD又はメモリカード等である。通信インタフェース109は、USB、LAN、無線通信ネットワーク、インターネット若しくは電話回線等の通信ネットワーク、又はMIDI用ネットワークに接続されるインタフェースであり、外部機器115に接続される。演奏データ変換装置100は、通信インタフェース109を介して、外部機器115から演奏データを入力し、VRAM110を介して、演奏データを表示装置105に表示することができる。
【0015】
MIDI鍵盤楽器は、例えば、Bluetooth又はUSBの通信インタフェース109を介して、バス113に接続される。MIDI鍵盤楽器は、操作者の押鍵操作に応じて、押鍵情報と離鍵情報を出力する。押鍵情報は、押鍵の鍵番号と、押鍵操作時刻と、押鍵強さを含む。
【0016】
CPU102は、外部機器115のハードディスクに記憶されているプログラムをRAM104に展開し、RAM104に展開されたプログラムを実行することにより、演奏データ変換装置100の全体を制御する。外部機器115のハードディスクは、CPU102が実行する演奏データ変換プログラムと、演奏データを記憶する。RAM104は、CPU102の処理に使用される情報を一時記憶する。
【0017】
表示装置105は、例えば、液晶ディスプレイである。表示装置105は、演奏データ等を表示する。
【0018】
音源部108は、音源としてのソフトウェアや効果付与のためのDSPを含み、演奏データに対応する楽音を発音させるためのサウンド信号を生成する。音源部108は、演奏データを基に、サウンド信号をサウンドシステム114に出力する。演奏データは、テンポ情報と、拍子情報と、複数のノートデータを含む。ノートデータは、ノートナンバ、ステップタイム、ゲートタイム及びベロシティを含む。ノートナンバは、音高である。ステップタイムは、曲の始めを基点とする発音開始時刻を示す。ゲートタイムは、発音の持続時間である。発音終了時刻は、ステップタイムとゲートタイムの合計時間である。ベロシティは、楽音の発音強さである。また、音源部108は、メトロノームモードがオンに設定されている場合には、演奏データのテンポ情報と拍子情報に基づくメトロノーム音のサウンド信号をサウンドシステム114に出力する。サウンドシステム114は、D/A変換器、アンプ及びスピーカを有し、音源部108により生成されたサウンド信号を基に、演奏データに対応する演奏を発音することができる。
【0019】
図2は、演奏データ変換装置100の機能構成例を示すブロック図である。演奏データ変換装置100は、入力部201と、変換部202と、再生部203と、表示制御部204を有する。演奏データ変換装置100は、CPU102が演奏データ変換プログラムを実行することにより、入力部201と変換部202と再生部203と表示制御部204の機能を実現する。
【0020】
演奏データ変換装置100は、操作者が音符などの音楽記号を演奏データ変換装置100の画面上の五線紙に貼り付けたり、楽譜を画像認識したりすることにより、楽譜データを生成する。そして、演奏データ変換装置100は、その楽譜データを演奏データに変換し、その演奏データを外部機器115の外部記憶装置に記録する。このような演奏データは、テンポ及び強弱が単調になりがちである。そこで、演奏データ変換装置100は、テンポや強弱の抑揚の付いた曲想豊かで自然な演奏データにするため、操作者の操作に応じて、テンポや強弱を変更する。以下、その方法を説明する。
【0021】
CPU102は、操作者のタッチパネル107の操作に応じて、楽曲を選択し、選択した楽曲に対応する演奏データを外部記憶装置から読み出し、その演奏データを基に、演奏データの拍毎のテンポとベロシティ(発音強さ)を設定し、演奏データの各楽音の図形を、
図3のピアノロールとして表示装置105に表示する。
【0022】
図3は、本実施形態によるピアノロールの表示例を示す図である。CPU102は、外部記憶装置に記憶されている演奏データを読み出し、その演奏データに対応する
図3のピアノロールを表示装置105に表示するように制御する。
【0023】
図3のピアノロールは、表示画面の横方向が演奏データの時間軸であり、表示画面の縦方向が鍵盤楽器の音高である。演奏データの各楽音は、矩形図形で表される。楽音の矩形図形は、左辺が発音開始時刻を示し、右辺が発音終了時刻を示す。演奏データの再生位置301は、ソングポインタであり、縦ラインで示される。CPU102は、操作者のタッチパネル107の操作に応じて、演奏データの再生経過時刻を進め、各楽音の矩形図形が右から左へ向かって移動するように、スクロール表示する。楽音の矩形図形の左辺が再生位置301を通過すると、楽音の発音が開始される。楽音の矩形図形の右辺が再生位置301を通過すると、楽音の発音が終了する。演奏データの再生は、
図3の再生開始ボタン322をタップ操作することにより行われる。拍情報302は、演奏データの拍子の各拍のタイミングとして、表示される。
【0024】
タッチパネル107は、
図3のピアノロールを表示する表示装置105上に設けられる。操作者は、
図3のピアノロール上のタッチパネル107を操作することができる。タッチパネル107上の左右方向のスワイプ操作が行われると、CPU102は、
図3のピアノロールを左右方向にスクロール表示する。また、タッチパネル107上の左右方向のピンチ操作が行われると、CPU102は、
図3のピアノロールを時間軸方向にズーム表示する。
【0025】
図3のタップ入力モードボタン311がタップ操作されると、CPU102は、タップエリア303を表示し、タップエリア303のタップ操作に基づき、タイミング情報及びベロシティ(発音強さ)の入力及び設定を行う。CPU102は、タップエリア303のタップタイミングに基づき、演奏データの各拍のタイミング情報を入力し、タップエリア303のタップ強度に基づきベロシティを入力する。強くタップするほどベロシティを大きくする。ここでタップ強度は、タップ速度(タップオンからオフまでの時間)なども含まれる。あるいは、タップ位置に基づきベロシティを入力するようにしても良い。例えば、タップエリア303内のタップ位置が上になるほど、ベロシティが大きくなり、タップエリア303内のタップ位置が下になるほど、ベロシティが小さくなる。それ以外にも、スワイプ(距離、方向、速度など)、その他タッチジェスチャの違いなどによりベロシティの大きさを入力してもよい。要するにタッチ操作の違いによりベロシティの大きさをコントロール可能なものであれば上記に限らない。これにより、CPU102は、操作者の1つのタップ操作に基づき、演奏データの各拍のタイミング情報と各拍の楽音のベロシティの両方を入力することができる。
【0026】
図3のタップ入力モードボタン311がタップ操作されていない場合、CPU102は、MIDI鍵盤楽器の押鍵操作に基づき、タイミング情報及びベロシティ(発音強さ)の入力を行う。CPU102は、MIDI鍵盤楽器の押鍵タイミングに基づき、演奏データの各拍のタイミング情報を入力し、MIDI鍵盤楽器の押鍵速度又は押鍵強さに基づき、演奏データの各拍の楽音のベロシティを入力する。これにより、CPU102は、操作者の1つの押鍵操作に基づき、演奏データの各拍のタイミング情報と各拍の楽音のベロシティの両方を入力することができる。
【0027】
以下、タップエリア303のタップ操作を例に説明するが、タップエリア303の操作の代わりに、MIDI鍵盤楽器の押鍵操作を行う場合も同様である。操作者は、演奏データの各拍の先頭に対応するタイミングで、タイミング情報及びベロシティを入力し、各拍のタイミング及びベロシティを指定する。
【0028】
リアルタイム入力モードでは、CPU102は、タップエリア303の初回のタップ操作で演奏データの再生を開始し、再生時刻の経過に応じて、
図3のピアノロールをスクロール表示し、タップエリア303のタップ操作に応じて、再生位置301の時刻に対応するタイミング情報及びベロシティの入力及び設定を行う。
【0029】
演奏データの再生に伴い、楽音の矩形図形と拍情報302が右から左にスクロール表示される。再生位置301の表示位置は、固定である。操作者は、拍情報302の各々のタイミングを指定するために、タップエリア303のタップ操作を行う。この場合、再生位置301が拍情報302に到達する前にタップ操作する場合と、再生位置301が拍情報302に到達した後にタップ操作する場合がある。
【0030】
まず、再生位置301が拍情報302に到達する前にタップ操作する場合の再生方法を説明する。拍情報302は、拍の先頭時刻を示す。再生位置301が拍情報302に到達する前にタップエリア303のタップ操作が行われた場合には、CPU102は、再生位置301を次の拍情報302までスキップして演奏データを再生する。
【0031】
次に、再生位置301が拍情報302に到達した後にタップ操作する場合の再生方法を説明する。再生位置301が拍情報302に到達したときに、当該拍情報302に対応するタップエリア303のタップ操作が未だに行われていない場合には、CPU102は、演奏データの再生を停止し、その後、当該拍情報302に対応するタップエリア303のタップ操作が行われた場合には、演奏データの再生を再開する。
【0032】
ステップ入力モードでは、CPU102は、演奏データを再生せず、操作者のスワイプ操作に基づき、
図3のピアノロールをスクロール表示し、タップエリア303のタップ操作に応じて、再生位置301の時刻に対応するベロシティの入力を行う。
【0033】
CPU102は、タップエリア303のタップ操作に応じて、演奏データの先頭から末尾まで、楽曲の各拍の先頭に応じたタイミングで、タイミング情報及びベロシティを入力する。
【0034】
リアルタイム入力により、演奏データを自動再生しながら、タイミング情報及びベロシティをタップ入力してもよいし、ステップ入力により、手動スクロールで時間を進めたり戻したりしながら、ベロシティのみをタップ入力してもよい。
【0035】
再生位置301に最も近い時刻の拍情報302は、選択状態の拍情報となり、他の拍情報302とは異なる色で表示される。CPU102は、発音開始時刻が再生位置301に最も近い楽音の矩形図形304を、縁取り表示する。また、CPU102は、選択状態の拍情報302の時刻と同じ時刻の発音開始時刻の楽音の矩形図形304上に、●印を表示する。
【0036】
CPU102は、
図3の拍情報表示ボタン323のタップ操作に応じて、拍情報表示オンと拍情報表示オフを切り替えることができる。拍情報表示オンの場合、CPU102は、
図4の拍情報ウィンドウを表示する。拍情報表示オフの場合、CPU102は、
図4の拍情報ウィンドウを表示しない。
【0037】
図4は、拍情報ウィンドウの表示例を示す図である。CPU102は、
図3の選択状態の拍情報302の内容を、
図4の拍情報ウィンドウに表示する。拍情報302の各々は、演奏データの各拍に対応した情報であり、テンポ401と、ベロシティ402と、拍子405を有する。演奏データの先頭から末尾にわたるすべての拍情報302は、演奏データの読み込み時にCPU102によって自動生成される情報である。因みに、
図4の再生速度403とメトロノーム音の音量404は、拍情報とは関係しない再生に関する設定値であるが、必要に応じてすばやく操作できるように拍情報ウィンドウ内に便宜上配置している。
【0038】
演奏データは、テンポ401と、ベロシティ402と、拍子405を有する。テンポ401と拍子405は、例えば、演奏データの先頭と、それらが変化したときに設けられる。ベロシティ402は、演奏データ内の各ノートデータに設けられる。
【0039】
選択情報の拍情報302は、複数の拍情報302の中で、再生位置301に最も近い拍情報である。再生位置301が相対的に移動すると、選択状態の拍情報が新たな選択情報の拍情報に切り替わる。すると、
図4の拍情報ウィンドウの表示は、新たな選択状態の拍情報に切り替わる。
【0040】
図4の拍情報ウィンドウは、選択状態の拍情報302に含まれるテンポ401と、ベロシティ402と、拍子405を表示する。当該拍情報302に対応する拍の中に、複数のノートデータのベロシティがある場合には、
図4の拍情報ウィンドウは、複数のノートデータのうちの先頭のノートデータのベロシティをベロシティ402として表示する。その場合、
図4の拍情報ウィンドウは、複数のノートデータのベロシティの平均値をベロシティ402として表示してもよい。
【0041】
CPU102は、操作者のタッチパネル107の操作に応じて、
図4の拍情報ウィンドウ内のテンポ401と、ベロシティ402を変更することができる。拍情報ウィンドウ内のテンポ401とベロシティ402を変更した場合は、後述する変換後のテンポT2とベロシティV2の値にそのまま反映される。
【0042】
テンポ401は、例えば125であり、スライダー操作、+ボタン操作又は-ボタン操作により、変更可能である。ベロシティ402は、例えば69であり、スライダー操作、+ボタン操作又は-ボタン操作により、変更可能である。再生速度403は、スライダー操作により、変更可能である。メトロノーム音の音量404は、スライダー操作により、変更可能である。拍子405は、例えば3/4である。
【0043】
図5は、変換前の演奏データの例を示す図である。小節インデックスは、3/4拍子の小節番号を示す。拍インデックスは、3/4拍子の各小節内の拍番号を示す。
図5の演奏データは、各拍情報302について、テンポT1とベロシティV1を有する。例えば、すべての拍情報302は、テンポT1が120であり、ベロシティV1が69である。
【0044】
図6は、タップエリア303のタップ操作により入力されたタイミング情報t1及びベロシティV2の例を示す図である。CPU102は、操作者のタップエリア303のタップ操作に応じて、タイミング情報t1及びベロシティV2を入力する。タップインデックスは、
図3のタップエリア303のタップ操作の識別番号を示す。タップエリア303の最初のタップ操作により、CPU102は、演奏データの再生を開始する。その最初のタップ操作は、タイミング情報t1が0になる。
【0045】
図6のタイミング情報t1及びベロシティV2が入力された後、
図3のボタン321内の変換ボタンのタップ操作が行われると、CPU102は、
図5の変換前のテンポT1と、
図6のタイミング情報t1及びベロシティV2を基に、
図7の変換後のテンポT2及びベロシティV3を生成する。
【0046】
図7は、変換後の演奏データの例を示す図である。
図7のタップインデックスとタイミング情報t1は、それぞれ、
図6のタップインデックスとタイミング情報t1と同じである。変換後の演奏データは、各拍について、変換後のテンポT2と、変換後のベロシティV3を有する。変換後の演奏データは、テンポが120で3/4拍子であることから、拍時間t2は、4分音符の1拍に相当する時間、つまり0.5秒間隔となる。
【0047】
まず、テンポT2の設定方法を説明する。CPU102は、次式(1)のように、各拍について、
図5の変換前のテンポT1と、拍時間情報t2の間隔と、タイミング情報t1の間隔を基に、変換後のテンポT2を算出する。拍時間情報t2は、1拍の時間であり、この例では4分音符の1拍の時間(0.5秒)である。もちろん、拍子やテンポが変化すれば拍時間情報t2は固定値にはならない。例えば、タップインデックスが「1」の拍の変換後のテンポT2(=150)の算出方法を示す。
【0048】
T2=T1×(t2の間隔)÷(t1の間隔)
=120×(0.5-0)÷(0.4-0)
=150 ・・・(1)
【0049】
つまり、拍時間の間隔が0.5秒に対してタップ入力の間隔が0.4秒と短かったので、次の拍のテンポを150に速めて再生するという意味である。
【0050】
さらに例えば、タップインデックスが「3」の拍の変換後のテンポT2(=100)の算出方法を、次式に示す。
【0051】
T2=T1×(t2の間隔)÷(t1の間隔)
=120×(1.5-1.0)÷(1.5-0.9)
=100
【0052】
つまり、拍時間の間隔が0.5秒に対してタップ入力の間隔が0.6秒と長かったので、次の拍のテンポを100に遅らせて再生するという意味である。
【0053】
上記の算出方法によると、タップインデックスが「0」の拍の変換後のテンポT2は算出することができない。そのため、タップインデックスが「0」の拍の変換後のテンポT2は、タップインデックスが「1」の拍の変換後のテンポT2と同じ値を設定する。2拍目からいきなりテンポを変化させることは通常考えにくいため、この方法で問題はない。仮に、タップインデックスが「0」の拍の変換後のテンポT2を変換前の値(=120)に設定した場合には、2拍目からテンポが150に急激に変化する不自然な演奏データになってしまうため、この方法は適切ではない。
【0054】
以上のように、変換部202は、隣接する2つの拍のタイミング情報t1の差分と、変換後の演奏データの拍時間情報t2と、変換前の演奏データの各拍のテンポ情報T1を基に、変換後の演奏データの各拍のテンポ情報T2を算出する。
【0055】
次に、ベロシティV3の設定方法を説明する。CPU102は、
図6の各拍のベロシティV2を、
図7の各拍のベロシティV3として設定する。そして、CPU102は、各拍のベロシティV3を、各拍内の楽音(ノートデータ)のベロシティとして設定する。
【0056】
次に、同じ拍内に複数の楽音が存在する場合を説明する。CPU102は、同じ拍内に複数の楽音が存在する場合には、各拍のベロシティV2を基に、変換後の演奏データの同じ拍内の複数の楽音のベロシティを同一のベロシティにする。例えば、ある拍のベロシティV2が71である場合には、CPU102は、その拍内の複数の楽音のベロシティをすべて71にする。
【0057】
また、CPU102は、同じ拍内に複数の楽音が存在する場合には、各拍のベロシティV2と変換前の演奏データの同じ拍内の複数の楽音のベロシティを基に、変換後の演奏データの同じ拍内の複数の楽音のベロシティを決定してもよい。
【0058】
例えば、CPU102は、同じ拍内に複数の楽音が存在する場合には、各拍のベロシティV2と、変換前の演奏データの同じ拍内の複数の楽音のベロシティの比率を基に、変換後の演奏データの同じ拍内の複数の楽音のベロシティを決定することができる。
【0059】
例えば、同じ拍内に第1の楽音と第2の楽音が存在する場合を説明する。変換前の演奏データは、第1の楽音のベロシティが100であり、第2の楽音のベロシティが50であるとする。この場合、第1の楽音のベロシティと第2の楽音のベロシティの比率は、100:50=1:0.5である。入力されたベロシティV2は、60であるとする。この場合、変換後の演奏データのベロシティは、入力されたベロシティV2と上記の比率を基に設定される。すなわち、変換後の演奏データは、第1の楽音のベロシティが60×1=60に設定され、第2の楽音のベロシティが60×0.5=30に設定される。
【0060】
以上のように、操作者は、演奏データの拍ではなく、自分の拍のタイミングでタイミング情報t1をタップ入力すると、自分の拍の間隔に合うように次の拍のテンポを変更することができる。また、操作者は、タップの位置に応じて、楽音のベロシティを変更することができる。
【0061】
入力部201は、操作者の操作に基づき、変換前の演奏データの各拍のタイミング情報t1を入力する。変換部202は、各拍のタイミング情報t1を基に、
図5の変換前の演奏データを
図7の変換後の演奏データに変換する。変換部202は、各拍のタイミング情報t1と変換前の演奏データのテンポ情報T1を基に、変換後の演奏データの各拍のテンポ情報T2を算出する。
【0062】
変換部202は、式(1)のように、隣接する2つの拍のタイミング情報t1の差分と、変換後の演奏データの拍時間情報t2と、変換前の演奏データの各拍のテンポ情報T1を基に、変換後の演奏データの各拍のテンポ情報T2を算出する。
【0063】
再生部203は、変換前の演奏データを再生する。リアルタイム入力モードでは、入力部201は、再生部203により変換前の演奏データが再生されている状態で、再生位置301の時刻に基づき、タイミング情報t1を入力し、再生位置301に対応する拍のベロシティV2を入力する。ステップ入力モードでは、入力部201は、再生部203により変換前の演奏データが再生されていない状態で、操作者の操作により指定された拍のベロシティV2を入力する。
【0064】
表示制御部204は、
図3のように、時間軸に沿って、変換前の演奏データの各楽音の発音時刻を示す矩形図形と、変換前の演奏データの拍子情報に基づく各拍情報302の時刻を示す縦ライン図形を表示するように制御する。
【0065】
表示制御部204は、変換前の演奏データの再生位置301を表示するように制御する。入力部201は、その表示された変換前の演奏データの再生位置301に基づき、タイミング情報t1を入力し、その表示された変換前の演奏データの再生位置301に対応する拍のベロシティV2を入力する。入力部201は、タッチパネル107のタップ操作又は鍵盤の押鍵操作に基づき、タイミング情報t1を入力する。
【0066】
再生部203は、変換前の演奏データの再生位置301が変換前の演奏データの拍情報(拍の先頭)302に到達する前に当該拍のタイミング情報t1が入力部201により入力された場合には、変換前の演奏データの再生位置301を次の拍情報(拍の先頭)302までスキップして変換前の演奏データを再生する。
【0067】
また、再生部203は、変換前の演奏データの再生位置301が変換前の演奏データの拍情報(拍の先頭)302に到達したときに、当該拍のタイミング情報t1が未だに入力部201により入力されていない場合には、変換前の演奏データの再生を停止し、その後、当該拍のタイミング情報t1が入力部201により入力された場合には、変換前の演奏データの再生を再開する。
【0068】
その場合、再生停止時間が長くなるほど変換後の次の拍のテンポが遅くなる。テンポが遅くなりすぎると不自然な演奏データに変換されてしまう。それを防止するために、テンポの下限値を設けてもよい。計算したテンポが下限値を下回る場合には、テンポを下限値に補正した上でそのテンポ補正分を相殺する形で演奏データの次の拍の前に空白時間を挿入(つまり次の拍以降の全ての楽音の時刻をその時間分後方へシフト)するようにしてもよい。
【0069】
入力部201は、操作者の操作に基づき、変換前の演奏データの各拍のタイミング情報t1と各拍のベロシティV2を入力する。ベロシティは、楽音の発音強さを示す。変換部202は、各拍のベロシティV2を基に、変換後の演奏データの各楽音のベロシティを決定する。
【0070】
入力部201は、操作者の1つの操作に基づき、変換前の演奏データの各拍のタイミング情報t1と各拍のベロシティV2の両方を入力する。入力部201は、タッチパネル107のタップタイミングに基づき、変換前の演奏データの各拍のタイミング情報t1を入力し、タッチパネル107のタッチ操作の違いに基づき、変換前の演奏データの各拍のベロシティV2を入力する。
【0071】
また、入力部201は、鍵盤の押鍵タイミングに基づき、変換前の演奏データの各拍のタイミング情報t1を入力し、鍵盤操作の押鍵速度又は押鍵強さに基づき、変換前の演奏データの各拍のベロシティV2を入力してもよい。
【0072】
変換部202は、同じ拍内に複数の楽音が存在する場合には、各拍のベロシティV2を基に、変換後の演奏データの同じ拍内の複数の楽音のベロシティを同一のベロシティにする。
【0073】
また、変換部202は、同じ拍内に複数の楽音が存在する場合には、各拍のベロシティV2と変換前の演奏データの同じ拍内の複数の楽音のベロシティを基に、変換後の演奏データの同じ拍内の複数の楽音のベロシティを決定してもよい。
【0074】
例えば、変換部202は、同じ拍内に複数の楽音が存在する場合には、各拍のベロシティV2と、変換前の演奏データの同じ拍内の複数の楽音のベロシティの比率を基に、変換後の演奏データの同じ拍内の複数の楽音のベロシティを決定することができる。
【0075】
以上のように、本実施形態によれば、操作者は、楽譜上にテンポ記号や強弱記号を入力したり、値を調整したりするような面倒な作業が必要なくなる。また、操作者は、楽曲の演奏を聴きながら、自分の感性の赴くまま、単調な演奏データに抑揚を簡単につけることができる。また、操作者は、1つの演奏データから、いろんな異なる抑揚の演奏データを簡単に生成することができる。操作者が異なれば、生成される演奏データも異なる。1つの演奏データを基にして、操作者の数以上の異なる抑揚の演奏データを生成することができる。
【0076】
本実施形態は、コンピュータがプログラムを実行することによって実現することができる。また、上記のプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体及び上記のプログラム等のコンピュータプログラムプロダクトも本発明の実施形態として適用することができる。記録媒体としては、例えばフレキシブルディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、ROM等を用いることができる。
【0077】
なお、上記実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその技術思想、又はその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0078】
201 入力部
202 変換部
203 再生部
204 表示制御部