(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023146601
(43)【公開日】2023-10-12
(54)【発明の名称】熱変色性筆記具
(51)【国際特許分類】
B43L 19/00 20060101AFI20231004BHJP
B43K 29/02 20060101ALI20231004BHJP
【FI】
B43L19/00 C
B43K29/02 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022053857
(22)【出願日】2022-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】303022891
【氏名又は名称】株式会社パイロットコーポレーション
(72)【発明者】
【氏名】星野 貴宣
(57)【要約】
【課題】筆跡消去中に摩擦体が回転することを抑え、且つ摩擦体の寸法にバラツキが生じても確実に摩擦体を本体に取り付けることができる熱変色性筆記具を提供する。
【解決手段】加熱により消色或いは変色可能な熱変色性インキを収容し、前記インキによる筆跡を摩擦する摩擦体4を軸筒2又はキャップ3からなる本体に備えた熱変色性筆記具。摩擦体4が孔部41を有する環状体であり、孔部41に係止部材5を挿入することで摩擦体4の上方外縁部43が筆跡と接触可能状態で本体に摩擦体4が取り付けられる。本体又は係止部材5の少なくとも一方には、摩擦体4と圧接することにより摩擦体4に食い込んで摩擦体4を弾性変形させる先細形状の圧接突起が設けられている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱により消色或いは変色可能な熱変色性インキを収容し、前記熱変色性インキによる筆跡を摩擦する摩擦体を軸筒又はキャップからなる本体に備えた熱変色性筆記具であって、前記摩擦体は弾性材料より形成され、前記摩擦体が孔部を有する環状体であり、前記孔部に係止部材を挿入することで前記摩擦体の上方外縁部が筆跡と接触可能状態で前記本体に摩擦体が取り付けられ、前記本体又は前記係止部材の少なくとも一方には、前記摩擦体と圧接することにより前記摩擦体に食い込んで前記摩擦体を弾性変形させる先細形状の圧接突起が複数設けられていることを特徴とする熱変色性筆記具。
【請求項2】
前記係止部材が円板状の鍔部と円柱状の軸部とからなり、前記鍔部の下端面又は前記本体の上端面の少なくとも一方には前記圧接突起が設けられており、前記孔部に前記軸部を挿入し、前記軸部と前記本体とが係合することで、前記摩擦体が前記本体の上端面と前記鍔部の下端面とによって挟持され、前記圧接突起が前記摩擦体に軸方向に食い込むことを特徴とする請求項1に記載の熱変色性筆記具。
【請求項3】
前記鍔部の下端面に前記圧接突起が設けられ、前記摩擦体の前記孔部内に前記鍔部が係止される段部が形成され、前記段部に前記圧接突起が食い込み、前記鍔部の上端から前記圧接突起の下端までの軸方向の距離が、前記摩擦体の上端から前記段部の上端までの軸方向の距離以下であることを特徴とする請求項2に記載の熱変色性筆記具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は熱変色性筆記具に関する。詳細には、熱変色性インキによる筆跡を摩擦熱で変色させる摩擦体を備えた熱変色性筆記具に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、加熱により消色或いは変色可能な熱変色性インキを収容し、前記熱変色性インキによる筆跡を摩擦する摩擦体をキャップ又は軸筒に備えた熱変色性筆記具において、摩擦体が孔部を有する環状体であり、孔部に係止部材を挿入することで摩擦体の上方外縁部が筆跡と接触可能状態でキャップ本体又は軸筒に摩擦体が取り付けられる熱変色性筆記具が記載されている。
【0003】
しかし、特許文献1では、強い力で筆跡を摩擦した際に摩擦体が回転してしまい、摩擦体で紙面を十分に摩擦させることができないおそれがあった。
【0004】
さらに、キャップ又は軸筒及び摩擦体の寸法は大きくなる場合や小さくなる場合などバラツキが発生する。例えば摩擦体の軸方向の寸法が小さい場合、又は摩擦体の孔部の内径の寸法が大きい場合は摩擦体の取り付けが緩くなり、筆跡摩擦中に摩擦体が容易に回転してしまうおそれがある。摩擦体の軸方向の寸法が大きい場合、又は摩擦体の孔部の内径の寸法が小さい場合は摩擦体の取り付けが固く、場合によっては組立不良が発生するおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、強い力で筆跡を摩擦したとしても摩擦体が回転することを抑え、且つ摩擦体の寸法にバラツキが生じても確実に摩擦体を本体に取り付けることができる熱変色性筆記具を提供するものである。尚、本発明において「上」とは、摩擦体が取り付けられている側であり、「下」とは、その反対側である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願の第1の発明は、加熱により消色或いは変色可能な熱変色性インキを収容し、前記熱変色性インキによる筆跡を摩擦する摩擦体を軸筒又はキャップからなる本体に備えた熱変色性筆記具であって、前記摩擦体は弾性材料より形成され、前記摩擦体が孔部を有する環状体であり、前記孔部に係止部材を挿入することで前記摩擦体の上方外縁部が筆跡と接触可能状態で前記本体に摩擦体が取り付けられ、前記本体又は前記係止部材の少なくとも一方には、前記摩擦体と圧接することにより前記摩擦体に食い込んで前記摩擦体を弾性変形させる先細形状の圧接突起が複数設けられていることを特徴とする。
【0008】
本願の第1の発明の熱変色性筆記具は、前記構成により、摩擦体が本体に取り付けられた状態で、摩擦体に複数の圧接突起が食い込むため、本体又は係止部材に対する摩擦体の回転を抑制することができる。さらに、摩擦体の軸方向又は径方向の寸法にバラツキが発生したとしても、圧接突起によってバラツキが吸収されるため、確実に摩擦体を本体に取り付けることができる。
【0009】
本願の第2の発明は、前記第1の発明の熱変色性筆記具において、前記係止部材が円板状の鍔部と円柱状の軸部とからなり、前記鍔部の下端面又は前記本体の上端面の少なくとも一方には前記圧接突起が設けられており、前記孔部に前記軸部を挿入し、前記軸部と前記本体とが係合することで、前記摩擦体が前記本体の上端面と前記鍔部の下端面とによって挟持され、前記圧接突起が前記摩擦体に軸方向に食い込むことを特徴とする。
【0010】
本願の第2の発明の熱変色性筆記具は、前記構成により、本体と係止部材とが摩擦体を挟持する力によって圧接突起を摩擦体に強く食い込ませることができ、本体又は係止部材に対する摩擦体の回転をより効果的に抑制することができる。
【0011】
本願の第3の発明は、前記第2の発明の熱変色性筆記具において、前記鍔部の下端面に前記圧接突起が設けられ、前記摩擦体の前記孔部内に前記鍔部が係止される段部が形成され、前記段部に前記圧接突起が食い込み、前記鍔部の上端から前記圧接突起の下端までの軸方向の距離が、前記摩擦体の上端から前記段部の上端までの軸方向の距離以下であることを特徴とする。
【0012】
本願の第3の発明の熱変色性筆記具は、前記構成により、摩擦体が本体に取り付けられた状態で圧接突起が孔部の内側に収容されるため、圧接突起が外方に露出せず、熱変色性筆記具の外観を損なうことがない。例えば、段部が設けられていない場合、圧接突起は摩擦体の上端面に食い込むこととなるが、圧接突起の全体が摩擦体に食い込んでいないと側方から圧接突起の一部が視認可能となり、熱変色性筆記具の外観に影響を及ぼすおそれがある。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、強い力で筆跡を摩擦したとしても摩擦体が回転せず、且つ摩擦体の寸法にバラツキが生じても確実に摩擦体を取り付けることができる熱変色性筆記具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の熱変色性筆記具を示す正面図である。
【
図2】(a)は
図1のキャップより上側を示す縦断面図である。(b)は(a)のA―A線断面図である。
【
図4】
図2のキャップと摩擦体と係止部材を分解した縦断面図である。
【
図7】
図2のキャップの変形例を示す斜視図である。
【
図8】
図2のキャップの変形例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
【0016】
・本体
本体は硬質の合成樹脂(例えばポリカーボネート)からなる。本体は軸筒2又はキャップ3である。軸筒2は円筒体である。軸筒2は熱変色性インキを内蔵し、一端には熱変色性インキを吐出するペン先を有する。キャップ3は有底状の円筒体である。キャップ3は軸筒2のペン先側に装着することができる。
【0017】
前記熱変色性インキとしては、従来汎用の加熱により消色或いは変色可能なインキが適用できる。特に、インキ中に配合される着色剤としては、(イ)電子供与性呈色性有機化合物、(ロ)電子受容性化合物、及び(ハ)前記両者の呈色反応の生起温度を決める反応媒体の必須三成分を少なくとも含む可逆熱変色性組成物をマイクロカプセル中に内包させた顔料が有効である。
【0018】
摩擦体4を軸筒2に設ける場合は、摩擦体4は軸筒2のペン先側とは反対側の端部に取り付けられる。摩擦体4をキャップ3に設ける場合は、摩擦体4はキャップ3の開口側とは反対側の端部に取り付けられる。本実施形態では本体がキャップ3である場合を例に説明する。本体が軸筒2である場合でも、キャップ3の場合と同様の構成が適用できる。
【0019】
・キャップ
図4及び
図5に示すように、キャップ3の上端面31には係止突起32が設けられている。係止突起32の横断面形状は略円形である。上端面31及び係止突起32には取付孔33が貫設されている。係止突起32及び取付孔33には切欠34が設けられている。取付孔33の内面には、内向突起35が設けられている。キャップ3の径方向外方にはクリップ36が設けられている。
【0020】
・摩擦体
摩擦体4は、キャップ3及び係止部材5を構成する合成樹脂より軟質な弾性材料からなる。弾性材料は、例えば、シリコーン樹脂、SBS樹脂(スチレン-ブタジエン-スチレン共重合体)、SEBS樹脂(スチレン-エチレン-ブチレン-スチレン共重合体)などのゴム弾性を有する合成樹脂等が採用される。摩擦体4により、ペン先により紙面上に形成された前記熱変色性インキの筆跡を摩擦してその際の発生する摩擦熱で熱変色性インキの筆跡を熱変色させることができる。
【0021】
図2乃至
図4に示すように、摩擦体4は孔部41を有する環状体である。孔部41の横断面形状は円形である。孔部41の上方には段部42を介して拡径孔部41aが設けられている。拡径孔部41aの内径は孔部41の内径より大きい。孔部41の内径は係止突起32の外径より僅かに小さく設定することにより、摩擦体4を係止突起32に仮装着することができる。
【0022】
摩擦体4の外観形状(上方視認形状)としては、円形の他、孔部を有する三角形、四角形、台形、六角形等の多角形が例示できる。また、縦断面形状としては、貫通孔を有する四角形、台形、六角形、楕円形等が例示でき、取付時に外縁部となる部分を面取りしたものであってもよい。
【0023】
孔部41の横断面形状は、円形の他、三角形、四角形、台形等の多角形、円形等、どのような形状であってもよいが、成形性の点から円形が好適である。また、孔部41が円形であることにより、摩擦体4をキャップ3に組み付ける際の摩擦体4の周方向の位置決めが不要となる。
【0024】
摩擦体4は染料や顔料等の着色剤の添加により所望の色に着色することが可能であり、より装飾性の高いものとすることができる。特に、収容するインキの色(色変化を呈するインキにおいては変色前後いずれか、又は両方の色)と同じ色とした場合、摩擦体4にインキ色表示機能を付与するものとなる。
【0025】
・係止部材
係止部材5は硬質の合成樹脂(例えばポリカーボネート)からなる。
図2乃至
図4及び
図6に示すように、係止部材5は鍔部51と軸部53とからなる。鍔部51は円板である。鍔部51の中心から円柱形状の軸部53が軸方向下方に延設されている。軸部53には、キャップ3の内向突起35と係合する外向突起54が設けられている。
【0026】
軸部53の外面の一部には凸形状の回り止め部55が形成されている。キャップ3と係止部材5とを係合させる際、回り止め部55と切欠34の位置を合わせることで、係止部材5の回転が抑制される。係止部材5の回転が抑制されることにより、圧接突起52aと圧接している摩擦体4の回転も抑制される。
【0027】
鍔部51の上面には、ペン先のボール径等を表す数字が表示されていてもよい。(具体的には印刷、一体成形、シール貼着等)。回り止め部55によって鍔部51の位置が一定方向で固定されるため、鍔部51に表示された数字がクリップ36に対して傾くことなく常に所望位置で維持できる。
【0028】
係止部材5は染料や顔料等の着色剤の添加や印刷、塗布等により所望の色に着色することが可能であり、より装飾性の高いものとすることができる。特に、収容するインキの色(色変化するインキにおいては変色前後いずれか、又は両方の色)と同じ色とした場合、係止部材5にインキ色表示機能を付与するものとなる。
【0029】
鍔部51の下端面52に圧接突起52aを設けられている。圧接突起52aは下端面52に軸方向下方に突出させて設けられる。圧接突起52aの形状は、軸方向と直交する方向に延びるリブ状であるが、他にも離散した点状等が挙げられる。圧接突起52aの先端は先細形状に設定される。圧接突起52aを摩擦体4に確実に食い込ませるため、圧接突起52aの断面の先端角度は鋭角であることが好ましい。又、摩擦体4に加わる圧接突起52aの圧力を高めるため、圧接突起52a同士の間には間隔が空けられていることが好ましい。圧接突起52aを等間隔に配置し、且つ圧接突起52aの高さを全て等しく設定することにより、圧接突起52aを摩擦体4に均等に食い込ませることができる。
【0030】
図3及び
図4に示すように、キャップ3の上端面31から圧接突起52aの下端までの距離Cを、段部42の上端から摩擦体4の下端までの距離Eより小さく設定(C<E)
することにより、摩擦体4がキャップ3に取り付けられた状態で、摩擦体4をキャップ3に取り付ける際に圧接突起52aが摩擦体4に食い込み、係止部材5に対する摩擦体4の回転が抑制される。
【0031】
図3及び
図4に示すように、鍔部51の上端から圧接突起52aの下端までの軸方向の距離Bを、摩擦体4の上端から段部42の上端までの軸方向の距離D以下に設定(B≦D)することにより、摩擦体4がキャップ3に取り付けられた状態で、鍔部51は摩擦体4の上端よりも低い位置に没入状態で固定される。そのため、摩擦時に係止部材5を被筆記面に接触させることなく、外縁部43を筆跡に確実に接触させて容易に摩擦できると共に、キャップ3を垂直に立てることで摩擦体4の上端面を筆跡に接触させて広面積を摩擦することができる。
【0032】
・組み立て
摩擦体4をキャップ3に取り付ける際は、最初に係止突起32と孔部41とを仮装着させる。次に、切欠34と回り止め部55の位置を合わせながら、取付孔33に係止部材5の軸部53を挿入する。外向突起54が内向突起35を乗り越えることにより、キャップ3と係止部材5とが係合する。キャップ3と係止部材5とが係合することで、摩擦体4が鍔部51の下端面52とキャップ3の上端面31とによって挟持され、摩擦体4がキャップ3に取り付けられる。この際、キャップ3又は係止部材5に設けられた圧接突起52aが摩擦体4に食い込み、摩擦体4の回転が抑制される。
【0033】
【0034】
・キャップ
図7に示すように、キャップ3の上端面31に圧接突起31aを設けてもよい。圧接突起31aは上端面31より軸方向上方に突出させて設けられる。圧接突起31aの形状は、軸方向と直交する方向に延びるリブ状であるが、他にも離散した点状等が挙げられる。圧接突起31aを等間隔に配置し、且つ圧接突起31aの高さを全て等しく設定することにより、圧接突起31aを摩擦体4に均等に食い込ませることができる。
【0035】
図8に示すように、キャップ3の係止突起32に圧接突起32aを設けてもよい。圧接突起32aは係止突起32の外面に径方向外方に突出させて設けられる。圧接突起32aの形状は軸方向に延びる縦リブ状であるが、他にも離散した点状等が挙げられる。圧接突起32aを等間隔に配置し、且つ圧接突起32aの高さを全て等しく設定することにより、圧接突起32aを摩擦体4に均等に圧接させることができる。
【0036】
・摩擦体
図7に示すように、キャップ3の上端面31に圧接突起31aが設けられている場合は、段部42の上端から摩擦体4の下端までの距離を、圧接突起31aの上端から鍔部51の下端までの距離より大きく設定することにより、摩擦体4をキャップ3に取り付ける際に圧接突起31aが摩擦体4に食い込み、キャップ3に対する摩擦体4の回転が抑制される。
【0037】
図8に示すように、係止突起32の外面に圧接突起32aが設けられている場合は、孔部41の内径は圧接突起32aの外径より小さく設定することにより、摩擦体4をキャップ3に取り付ける際に圧接突起32aが摩擦体4に食い込み、キャップ3に対する摩擦体4の回転が抑制される。
【0038】
拡径孔部41aは孔部41の上下両端に設けられていてもよい。拡径孔部41aが孔部41の両端に設けられている場合、下側の拡径孔部41aの領域内に収まるように圧接突起31aを設けることで、圧接突起31aが拡径孔部41aの内側に収容されるため、圧接突起31aが外方に露出せず、熱変色性筆記具1の外観を損なうことがない。加えて、摩擦体4の形状を上下対称とすれば、摩擦体4をキャップ3に組み付ける際の摩擦体4の上下方向の位置決めが不要となる。
【0039】
・係止部材
図7及び
図8に示すようにキャップ3に圧接突起が設けられている場合は、係止部材5に圧接突起52aが設けられていなくてもよい。
【0040】
以上に説明したキャップ3と係止部材5との組合せについて、キャップ3又は係止部材5の少なくとも一方に圧接突起が設けられていれば、その組合せは問わない。例えば、
図7又は
図8に示すキャップ3と、
図6に示す係止部材5とを組み合わせて実施してもよい。キャップ3及び係止部材5の両側に圧接突起を設けることにより、確実に摩擦体4の回転を抑制することができる。また、圧接突起31a及び32aが両方とも設けられていてもよい。キャップ3に2種類の圧接突起を設けることにより、摩擦体4の軸方向及び径方向の両方の寸法のバラツキを吸収することができる。
【0041】
本実施の形態の熱変色性筆記具1は、加熱により消色或いは変色可能な熱変色性インキを収容し、前記熱変色性インキによる筆跡を摩擦する摩擦体4を軸筒2又はキャップ3からなる本体に備えた熱変色性筆記具であって、摩擦体4は弾性材料より形成され、摩擦体4が孔部41を有する環状体であり、孔部41に係止部材5を挿入することで摩擦体4の上方外縁部43が筆跡と接触可能状態で本体に摩擦体4が取り付けられ、前記本体又は係止部材5の少なくとも一方には、摩擦体4と圧接することにより摩擦体4に食い込んで摩擦体4を弾性変形させる先細形状の圧接突起が複数設けられていることにより、摩擦体4が本体に取り付けられた状態で、摩擦体4に複数の圧接突起が食い込むため、本体又は係止部材5に対する摩擦体4の回転を抑制することができる。さらに、摩擦体4の軸方向又は径方向の寸法にバラツキが発生したとしても、圧接突起によってバラツキが吸収されるため、確実に摩擦体4を本体に取り付けることができる。
【0042】
本実施の形態の熱変色性筆記具1は、係止部材5が円板状の鍔部51と円柱状の軸部53とからなり、鍔部51の下端面52又は本体の上端面31の少なくとも一方には圧接突起が設けられており、孔部41に軸部53を挿入し、軸部53と本体とが係合することで、摩擦体4が前記本体の上端面31と鍔部51の下端面52とによって挟持され、圧接突起が摩擦体4に軸方向に食い込むことにより、前記本体と係止部材5とが摩擦体4を挟持する力によって、圧接突起を摩擦体4に強く食い込ませることができ、前記本体又は係止部材5に対する摩擦体4の回転をより効果的に抑制することができる。
【0043】
本実施の形態の熱変色性筆記具1は、鍔部51の下端面52に圧接突起52aが設けられ、摩擦体4の孔部41内に鍔部51が係止される段部42が形成され、段部42に圧接突起52aが食い込み、鍔部51の上端から圧接突起52aの下端までの軸方向の距離Bが、摩擦体4の上端から段部42の上端までの軸方向の距離D以下であることにより、摩擦体4が本体に取り付けられた状態で圧接突起52aが孔部41の内側に収容されるため、圧接突起52aが外方に露出せず、熱変色性筆記具1の外観を損なうことがない。
【符号の説明】
【0044】
1 熱変色性筆記具
2 軸筒
3 キャップ
31 上端面
31a 圧接突起
32 係止突起
32a 圧接突起
33 取付孔
34 切欠
35 内向突起
36 クリップ
4 摩擦体
41 孔部
41a 拡径孔部
42 段部
43 外縁部
5 係止部材
51 鍔部
52 下端面
52a 圧接突起
53 軸部
54 外向突起
55 回り止め部