(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023146605
(43)【公開日】2023-10-12
(54)【発明の名称】粒子線照射装置
(51)【国際特許分類】
A61N 5/10 20060101AFI20231004BHJP
【FI】
A61N5/10 H
A61N5/10 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022053865
(22)【出願日】2022-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162640
【弁理士】
【氏名又は名称】柳 康樹
(72)【発明者】
【氏名】福浦 拓八
(72)【発明者】
【氏名】中北 勝
【テーマコード(参考)】
4C082
【Fターム(参考)】
4C082AA01
4C082AC05
4C082AE01
4C082AG22
4C082AG27
(57)【要約】
【課題】輸送経路中にて加速器から出射された粒子線の広がりを精度良く絞ることができる粒子線照射装置を提供する。
【解決手段】第2の遮蔽部材44Bは、第1の遮蔽部材44Aから進行方向D1の下流側へ離間して配置される。そのため、第1の遮蔽部材44Aの開口50Aを通過した粒子線Bのうち、基軸AXに対する角度が大きいものを、進行方向D1の下流側に離間した位置にて、第2の遮蔽部材44Bで遮蔽することができる。そして、進行方向D1の上流側から第1の遮蔽部材44Aの開口50Aを見た場合、下流側に第2の遮蔽部材44Bの開口50Bが見える。そのため、第1の遮蔽部材44Aの開口50Aを通過した粒子線Bのうち、基軸AXに対する角度が小さいものは、第2の遮蔽部材44Bの開口50Bを通過させることができる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子を加速して粒子線を生成する加速器と、
前記粒子線を照射対象に照射する照射部と、
前記加速器と前記照射部との間に設けられ、前記粒子線を輸送可能に設けられた輸送経路と、
前記輸送経路に設けられ、前記粒子線を遮蔽すると共に、前記粒子線を進行方向に通過させる開口をそれぞれ有する少なくとも第1の遮蔽部材及び第2の遮蔽部材を有するコリメータ装置と、を備え、
前記第2の遮蔽部材は、前記第1の遮蔽部材から前記進行方向の下流側へ離間して配置され、
前記進行方向の上流側から前記第1の遮蔽部材の前記開口を見た場合、下流側に前記第2の遮蔽部材の前記開口が見える、粒子線照射装置。
【請求項2】
前記輸送経路に設けられ、前記粒子線を減衰させるデグレーダを更に備え、
前記コリメータ装置は、前記進行方向において前記デグレーダの下流側に設けられる、請求項1に記載の粒子線照射装置。
【請求項3】
前記コリメータ装置は、少なくとも前記第1の遮蔽部材及び前記第2の遮蔽部材を支持する支持部材を有する、請求項1又は2に記載の粒子線照射装置。
【請求項4】
前記支持部材は、前記第1の遮蔽部材を支持する第1の支持面、及び前記第2の遮蔽部材を支持する第2の支持面を有し、
前記第1の支持面及び前記第2の支持面は、前記進行方向に直交する同一の方向にドリル加工を行うことによって形成された加工面である、請求項3に記載の粒子線照射装置。
【請求項5】
前記支持部材は、前記第1の遮蔽部材及び前記第2の遮蔽部材の少なくとも一方を、前記進行方向に直交する二つの方向から支持する、請求項3又は4に記載の粒子線照射装置。
【請求項6】
前記支持部材には、冷却部が接続される、請求項3~5の何れか一項に記載の粒子線照射装置。
【請求項7】
粒子線のコリメートを行うコリメータ装置であって、
前記粒子線を遮蔽すると共に、前記粒子線を進行方向に通過させる開口をそれぞれ有する少なくとも第1の遮蔽部材及び第2の遮蔽部材と、
前記第1の遮蔽部材及び前記第2の遮蔽部材を支持する支持部材と、を備え、
前記第2の遮蔽部材は、前記第1の遮蔽部材から前記進行方向の下流側へ離間して配置され、
前記進行方向の上流側から前記第1の遮蔽部材の前記開口を見た場合、下流側に前記第2の遮蔽部材の前記開口が見える、コリメータ装置。
。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒子線照射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
粒子線照射装置として、例えば特許文献1に示すものが知られている。粒子線照射装置は、粒子を加速して粒子線を生成する加速器と、加速器で生成された粒子線を照射する照射装置と、加速器から照射装置へ粒子線を輸送する輸送経路と、を備える。この粒子線照射装置は、照射部から照射した粒子線をコリメータでコリメートする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、上述の粒子線治療装置は、照射部から出射した後の粒子線をコリメートしているが、照射部へ至るまでの輸送経路中では、粒子線の広がりについて何ら対策を行っていない。従って、輸送経路中にて加速器から出射された粒子線の広がりを精度良く絞ることが求められていた。
【0005】
そこで、本発明は、輸送経路中にて加速器から出射された粒子線の広がりを精度良く絞ることができる粒子線照射装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る粒子線照射装置は、粒子を加速して粒子線を生成する加速器と、粒子線を照射対象に照射する照射部と、加速器と照射部との間に設けられ、粒子線を輸送可能に設けられた輸送経路と、輸送経路に設けられ、粒子線を遮蔽すると共に、粒子線を進行方向に通過させる開口をそれぞれ有する少なくとも第1の遮蔽部材及び第2の遮蔽部材を有するコリメータ装置と、を備え、第2の遮蔽部材は、第1の遮蔽部材から進行方向の下流側へ離間して配置され、進行方向の上流側から第1の遮蔽部材の開口を見た場合、下流側に第2の遮蔽部材の開口が見える。
【0007】
本発明に係る粒子線照射装置は、輸送経路に設けられ、粒子線を遮蔽すると共に、粒子線を進行方向に通過させる開口をそれぞれ有する少なくとも第1の遮蔽部材及び第2の遮蔽部材を有するコリメータ装置と、を備える。コリメータ装置は、加速器と照射部との間の輸送経路において、第1の遮蔽部材の開口で粒子線を絞ることができる。ここで、第2の遮蔽部材は、第1の遮蔽部材から進行方向の下流側へ離間して配置される。そのため、第1の遮蔽部材の開口を通過した粒子線のうち、基軸に対する角度が大きいものを、進行方向の下流側に離間した位置にて、第2の遮蔽部材で遮蔽することができる。そして、進行方向の上流側から第1の遮蔽部材の開口を見た場合、下流側に第2の遮蔽部材の開口が見える。そのため、第1の遮蔽部材の開口を通過した粒子線のうち、基軸に対する角度が小さいものは、第2の遮蔽部材の開口を通過させることができる。以上より、輸送経路中にて加速器から出射された粒子線の広がりを精度良く絞ることができる。
【0008】
粒子線照射装置は、輸送経路に設けられ、粒子線を減衰させるデグレーダを更に備え、コリメータ装置は、進行方向においてデグレーダの下流側に設けられてよい。この場合、コリメータ装置は、デグレーダで広がった粒子線を精度よく絞ることができる。
【0009】
コリメータ装置は、少なくとも第1の遮蔽部材及び第2の遮蔽部材を支持する支持部材を有してよい。同一の支持部材で支持することで、第1の遮蔽部材と第2の遮蔽部材との間の位置精度を向上できる。
【0010】
支持部材は、第1の遮蔽部材を支持する第1の支持面、及び第2の遮蔽部材を支持する第2の支持面を有し、第1の支持面及び第2の支持面は、進行方向に直交する同一の方向にドリル加工を行うことによって形成された加工面であってよい。この場合、同じ加工装置のドリルを用いて第1の支持面及び第2の支持面を形成することができるため、両者の位置精度を向上できる。従って、これらの支持面に支持される第1の遮蔽部材と第2の遮蔽部材との間の位置精度を向上できる。
【0011】
支持部材は、第1の遮蔽部材及び第2の遮蔽部材の少なくとも一方を、進行方向に直交する二つの方向から支持してよい。この場合、遮蔽部材を二つの方向から位置決めすることができるため、位置精度を向上できる。
【0012】
支持部材には、冷却部が接続されてよい。この場合、第1の遮蔽部材及び第2の遮蔽部材のそれぞれに対して個別に冷却部を設けなくとも、支持部材を介して共通の冷却部で両者を冷却することができる。
【0013】
本発明に係るコリメータ装置は、粒子線のコリメートを行うコリメータ装置であって、粒子線を遮蔽すると共に、粒子線を進行方向に通過させる開口をそれぞれ有する少なくとも第1の遮蔽部材及び第2の遮蔽部材と、第1の遮蔽部材及び第2の遮蔽部材を支持する支持部材と、を備え、第2の遮蔽部材は、第1の遮蔽部材から進行方向の下流側へ離間して配置され、進行方向の上流側から第1の遮蔽部材の開口を見た場合、下流側に第2の遮蔽部材の開口が見える。
【0014】
このコリメータ装置によれば、上述の粒子線照射装置と同趣旨の作用・効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、輸送経路中にて加速器から出射された粒子線の広がりを精度良く絞ることができる粒子線照射装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態に係る粒子線照射装置の平面視における配置図である。
【
図8】遮蔽部材間の離間距離を説明する概念図である。
【
図9】遮蔽部材間の離間距離を説明する概念図である。
【
図10】比較例に係るコリメータを説明する図である。
【
図11】変形例に係るコリメータ装置を示す図である。
【
図12】変形例に係るコリメータ装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る粒子線照射装置の好適な実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。本実施形態では、粒子線照射装置を荷電粒子線照射装置とした場合について説明する。粒子線照射装置は、例えばがん治療に適用されるものであり、患者の体内の腫瘍(照射対象)に対して、陽子ビームなどの粒子線を照射する装置である。
【0018】
本実施形態の粒子線照射装置の概略構成について説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る粒子線照射装置の平面視における配置図である。
図1に示されるように、粒子線照射装置1は、粒子線を生成する加速器2と、治療台16上の患者15に対して任意の方向から粒子線を照射する回転自在の照射部4を有する照射装置3と、加速器2と照射部4との間に設けられ、粒子線を輸送可能に設けられた輸送経路6とを備えている。また、粒子線照射装置1の各機器は、例えば、建屋200の部屋の中に設置されている。本実施形態において、建屋100は、加速器2が設けられる加速器室202と、照射装置3が設けられる照射室203と、を備える。
【0019】
照射装置3は、照射部4と、ガントリ5と、を備える。照射部4は、患者15に粒子線を照射する装置である。照射部4がスキャニング法によって照射を行う場合、照射部4には走査電磁石、その他電磁石等の機器が設けられる。照射部4は、治療台16を取り囲むように設けられたガントリ5に取り付けられている。照射部4は、ガントリ5によって治療台16の周りに回転可能とされている。ガントリ5は、回転軸線周りに回転可能である。なお、照射部4は、照射対象の腫瘍の形状に応じて、ビームを任意の形状に形成する機能を備えている。照射部4は、ワブラー法であれば、照射野を任意の形状に切り取り、スキャニング法であれば、ビームをスキャンして任意の位置にビームを照射する。ガントリ5の偏向電磁石28は、ビームの照射野を形成するのではなく、ビームの方向を変える機能を有する。コリメータ装置はガントリ5において照射部4の上流に設けられてもよい。デグレーダは、そのコリメータ装置の上流に設けられ、ガントリ5内に設けられてもよい。
【0020】
ここで、XYZ座標を設定して以降の説明を行う場合がある。Y軸方向は、ガントリ5の回転軸が延びる水平方向である。X軸方向は、Y軸方向と直交する水平方向である。Z軸方向は上下方向である。ガントリ5の後端側をY軸方向の負側とし、前端側をY軸方向の正側とする。X軸方向の一方側を正側とし、他方側を負側とする。上側をZ軸方向の正側とし、下側をZ軸方向の負側とする。
【0021】
本実施形態では、加速器2とガントリ5とが、Y軸方向に直線状に配置されている。従って、輸送経路6は、加速器2から照射室203へ向かってY軸方向の正側へ延び、照射室203と加速器室202との間の壁部204を通過して、ガントリ5の後端側から、ガントリ5内に進入して照射部4に接続される。加速器室202では、Y軸方向の負側から正側へ向かう方向が粒子線の進行方向D1となる。
【0022】
輸送経路6には、加速器2側から順に、四極電磁石21、デグレーダ22、コリメータ装置23、四極電磁石24、偏向電磁石26、四極電磁石27、偏向電磁石28が設けられる。
【0023】
四極電磁石21,24,27は、粒子線を絞る電磁石である。デグレーダ22は、粒子線を減衰させる部材である。コリメータ装置23は、粒子線の進行方向D1においてデグレーダ22の下流側に設けられる。コリメータ装置23は、デグレーダ22で広がった粒子線をコリメートする装置である。偏向電磁石26は、加速器2から輸送された粒子線の軌道をガントリ5に進入した箇所で偏向する。偏向電磁石28は、ガントリ5の外周側から照射部4へ粒子線が進入するように、粒子線の軌道を大きく曲げる。
【0024】
次に、
図2を参照して、コリメータ装置23について説明する。コリメータ装置23は、本体部40と、冷却部41と、ケース42と、を備える。本体部40は、粒子線Bをコリメートする部材である。本体部40は、進行方向D1であるY軸方向に平行に延びている。冷却部41は、本体部40を冷却する機構である。ケース42は、本体部40及び冷却部41を収容する。
【0025】
コリメータ装置23は、コリメータ駆動装置30上に設けられている。コリメータ駆動装置30は、コリメータ装置23の位置及び傾きを調整する装置である。コリメータ駆動装置30は、コリメータ装置23のX軸方向の位置を調整するX軸調整機構31を有する。また、コリメータ駆動装置30は、コリメータ装置23のY軸方向の位置を調整するY軸調整機構32を有する。また、コリメータ駆動装置30は、コリメータ装置23の傾きを調整する傾き調整機構33を有する。傾き調整機構33Z軸方向の正側及び負側にそれぞれ設けられ、各位置にてZ軸方向の位置合わせを行うことで、コリメータ装置23の傾きを調整する。各調整機構31,32,33は、ガイド部材と駆動部とを有する。
【0026】
次に、
図3~
図6を参照して、コリメータ装置23の本体部40の構成について詳細に説明する。
図3に示すように、本体部40は、第1の遮蔽部材44Aと、第2の遮蔽部材44Bと、支持部材46と、を備える。
【0027】
第1の遮蔽部材44A及び第2の遮蔽部材44Bは、輸送経路6に設けられ、粒子線Bを遮蔽すると共に、粒子線Bを進行方向D1に通過させる開口50A,50Bをそれぞれ有する部材である。第2の遮蔽部材44Bは、第1の遮蔽部材44Aから進行方向D1の下流側(Y軸方向の正側)へ離間して配置される。遮蔽部材44A,44Bは、進行方向D1に沿って延びる四角柱状の形状を有する。また、遮蔽部材44A,44Bは、中央位置において、進行方向D1に貫通する開口50A,50Bを有する。
【0028】
遮蔽部材44A,44Bは、粒子線Bに対して遮蔽性を有する材料によって構成され、例えば、タンタル、タングステンなどによって構成される。また、遮蔽部材44A,44Bの進行方向D1における長さは、粒子線Bブラッグピークの奥行き以上の長さとすることが好ましい。当該長さにすることで、粒子線Bが開口50以外の箇所で、遮蔽部材44A,44Bを透過して漏れ出ることを抑制できる。例えば、タンタルに対する230MeVの陽子のブラッグピークは、奥行きが37.5mmの位置となる。従って、タンタルを採用する場合、遮蔽部材44A,44Bの進行方向D1の長さは40mm以上であることが好ましい。
【0029】
遮蔽部材44A,44Bは、同一の形状・大きさに形成されており、XZ平面上において同位置に配置される。第1の遮蔽部材44Aの開口50Aと、第2の遮蔽部材44Bの開口50Aとは、互いに同一径を有する円柱状の貫通孔である。第1の遮蔽部材44Aの開口50Aの中心軸と、第2の遮蔽部材44Bの開口50Bの中心軸とは、粒子線Bの基軸AXと一致するように配置される。ここで、支持部材46は、粒子線Bと干渉しないように、当該粒子線Bの通過経路を形成する粒子線通過溝部48(
図6参照)を有する。そのため、
図4に示すように、進行方向D1の上流側から第1の遮蔽部材44Aの開口50Aを見た場合、下流側に第2の遮蔽部材44Bの開口50Bが見える。そのため、第1の遮蔽部材44Aの開口50Aに対して、進行方向D1の上流側から入射した粒子線Bは、支持部材46の粒子線通過溝部48を通過して第2の遮蔽部材44Bの開口50Bに入り込むと共に、当該開口50Bの進行方向D1の下流側の端部から出射される。
【0030】
支持部材46は、第1の遮蔽部材44A及び第2の遮蔽部材44Bを支持する部材である。支持部材46は、進行方向D1に沿って延びる四角柱状の形状を有する。支持部材46は、熱伝導性がよい材料によって構成され、例えば、銅、アルミなどによって構成される。
【0031】
支持部材46は、支持部47Aと、支持部47Bと、粒子線通過溝部48(
図4、
図6参照)と、冷却取付部49と、を有する。
【0032】
支持部47Aは、進行方向D1の上流側(Y軸方向の負側)の端部に形成された、第1の遮蔽部材44Aを支持するための部分である。支持部47Bは、進行方向D1の下流側(Y軸方向の正側)の端部に形成された、第2の遮蔽部材44Bを支持するための部分である。
【0033】
図5に示すように、支持部47Aは、上方へ開口する溝部として構成されている。支持部47Aは、XY平面と平行な支持面51(第1の支持面)と、ZY平面と平行な面52と、を有する。支持面51は、支持部材46の上面46aから下側へ離間した位置に設けられる。支持面51は、第1の遮蔽部材44Aの下面44aを支持する。面52は、支持面51のX軸方向の両端部から上方へ立ち上がるように設けられる。ボルトが設けられている面52が「第2の支持面」となる。
【0034】
X軸方向の負側の面52は、第1の遮蔽部材44AのX軸方向の負側の側面44bを支持する。第1の遮蔽部材44Aの下面44aは、支持部材46の下面46bから挿入されたボルト53によって、支持面51に対して固定される。第1の遮蔽部材44Aの側面44bは、支持部材46のX軸方向の負側の側面46cから挿入されたボルト53によって、面52に対して固定される。このような構成により、支持部材46は、第1の遮蔽部材44Aを、進行方向D1に直交する少なくとも二つの方向から支持する。
【0035】
なお、支持部47Bは、進行方向D1における中央位置のXZ平面を基準として、支持部47Aと面対称な構成を有する。従って、支持部47は、支持部47Aと同趣旨の支持面51,52(第2の支持面)を有する(
図6(a)参照)。
【0036】
ここで、支持部47Aの支持面51,52及び支持部47Bの支持面51,52は、進行方向D1に直交する同一の方向にドリル加工を行うことによって形成された加工面である。
図7に示すように、加工前の支持部材46を固定治具JGで固定する。当該状態で、ドリルDRは、支持部材46の進行方向D1の上流側の端部において、上面46a側から下方へ挿入された状態で、進行方向Yに移動することによって、支持部47Aを加工する。支持面51は、ドリルDRの先端部分での加工によって形成される。支持面52は、ドリルDRの外周部分での加工によって形成される。
【0037】
支持部47Aの加工が完了したら、ドリルDRは、支持部材46と干渉しないように、上側へ迂回するように、支持部材46の進行方向D1の下流側の端部へ移動する。ドリルDRは、当該位置において、上面46a側から下方へ挿入された状態で、進行方向Yに移動することによって、支持部47Bを加工する。このように、支持部47Aの支持面51,52及び支持部47Bの支持面51,52は、進行方向D1に直交するZ軸方向の正側から負側の同一の方向にドリル加工を行うことによって形成された加工面である。
【0038】
支持部47Aを加工するときと支持部47Bを加工するときでは、支持部材46は固定治具JGに固定されたまま動かない。従って、加工装置は、一度支持部材46を位置決め固定したら、ドリルDRを持ちかえることなく一つの加工プログラムにて、支持部47A,47Bの両方を加工する。そのため、加工装置は、高い加工精度にて、支持部47A,47Bを加工することができる。
【0039】
粒子線通過溝部48は、粒子線Bを通過させる溝部であり、支持部47Aから支持部47Bまで、進行方向D1に沿って延びる溝部である。
図6に示すように、粒子線通過溝部48は、下方へ開口する溝部として構成されている。粒子線通過溝部48は、XY平面と平行な底面55と、ZY平面と平行な一対の側面54と、を有する。底面55は、支持部材46の下面46bから上側へ離間した位置に設けられる。一対の側面54は、底面55のX軸方向の両端部から下方へ延びるように設けられる。一対の側面54は、X軸方向に互いに離間して対向する。
【0040】
図3に示すように、冷却取付部49は、支持部材46の上面46aのうち、進行方向D1の中央位置に設けられる。冷却取付部49は、上面46aから上方へ突出する本体部49aと、本体部49aに挿入された冷却部41を固定する固定プレート49bと、を有する。これにより、支持部材46には、冷却部41が接続される。
【0041】
図6(a)に示すように、冷却部41は、上下方向に延びる外管41aと、外管41aないに配置される内管41bと、を有する。冷却部41は、内管41bに上方から下方へ向けて冷却媒体を流す。冷却媒体は、内管41bの下端にて折り返されて、外管41aと内管41bとの間の隙間を下方から上方へ向かって流れる。これにより、冷却取付部49を介して、支持部材46が冷却される。
【0042】
第1の遮蔽部材44Aと第2の遮蔽部材44Bの進行方向D1における離間距離について、
図8及び
図9を参照して説明する。
図8及び
図9は、加速器室202と照射室203とを隔てる壁部204付近における輸送経路6の様子を示す概念図である。
図8及び
図9では、コリメータ装置として遮蔽部材44A,44Bのみが示されている。また、基軸AXに対する粒子線Bの成分の傾きを角度θとする。
図8に示すように、第1の遮蔽部材44Aの開口50Aに入り込んだ粒子線Bのうち、角度θが小さい粒子線Bについては、第2の遮蔽部材44Bの開口50Bを通過して照射室203側へ輸送される。開口50Bの進行方向D1の下流側の端部の縁部P1付近を通過する粒子線Bを粒子線B1とすると、当該粒子線B1より角度θが小さいものは、開口50Bを通過する。
【0043】
粒子線B1より角度θが大きいものは、第2の遮蔽部材44Bで遮蔽される。ただし、第2の遮蔽部材44Bの進行方向D1における上流側の端部の縁部P2付近を通過する粒子線Bを粒子線B2とすると、当該粒子線B2より角度θが大きいものは、第2の遮蔽部材44Bの外周側を通過する。開口50Aの進行方向D1の下流側の端部の縁部P3付近を通過する粒子線Bを粒子線B3とすると、当該粒子線B3より角度θが小さいものは、開口50Aを通過して、第2の遮蔽部材44Bの外周側を通過する。第2の遮蔽部材44Bの外周側を通過する粒子線Bは、コンクリートの壁部204によって、照射室203へ漏れることが防止される。粒子線B2が、壁部204の進行方向D1における下流側の内縁部P4よりも、進行方向D1の上流側で壁部204に当たれば、照射室203への漏れを防止できる。
図8に示すように、遮蔽部材44A,44Bの離間距離を所定距離に抑えておくと、第2の遮蔽部材44Bの開口50Bを通過できる粒子線Bが増えるため、照射室203において、治療に利用できない粒子線Bの線量を下げることができる。また、第2の遮蔽部材44Bの外周側を通過した粒子線Bを壁部204で遮蔽し、照射室203へ漏れることを防止できる。
【0044】
図9は、
図8よりも遮蔽部材44A,44Bの離間距離を大きくした例である。この場合、開口50Bを通過できる境界の粒子線B1の角度θが小さくなる。従って、治療に用いる粒子線Bの平行性を増加させることができる。その一方、第2の遮蔽部材44Bの外周側を通過する境界の粒子線B2は、壁部204の内縁部P4よりも内周側を通過することで、壁部204を通過してしまい、照射室203側へ漏れてしまう。これにより、照射室203へ到達する、治療に利用できない漏洩粒子線の線量が増える。
【0045】
次に、本実施形態に係る粒子線照射装置1、及びコリメータ装置23の作用・効果について説明する。
【0046】
本実施形態に係る粒子線照射装置1は、輸送経路6に設けられ、粒子線Bを遮蔽すると共に、粒子線Bを進行方向D1に通過させる開口50A,50Bをそれぞれ有する少なくとも第1の遮蔽部材44A及び第2の遮蔽部材44Bを有するコリメータ装置23と、を備える。コリメータ装置23は、加速器2と照射部4との間の輸送経路6において、第1の遮蔽部材44Aの開口50Aで粒子線Bを絞ることができる。ここで、第2の遮蔽部材44Bは、第1の遮蔽部材44Aから進行方向D1の下流側へ離間して配置される。そのため、第1の遮蔽部材44Aの開口50Aを通過した粒子線Bのうち、基軸AXに対する角度が大きいものを、進行方向D1の下流側に離間した位置にて、第2の遮蔽部材44Bで遮蔽することができる。そして、進行方向D1の上流側から第1の遮蔽部材44Aの開口50Aを見た場合、下流側に第2の遮蔽部材44Bの開口50Bが見える。そのため、第1の遮蔽部材44Aの開口50Aを通過した粒子線Bのうち、基軸AXに対する角度が小さいものは、第2の遮蔽部材44Bの開口50Bを通過させることができる。以上より、輸送経路6中にて加速器2から出射された粒子線Bの広がりを精度良く絞ることができる。
【0047】
粒子線照射装置1は、輸送経路6に設けられ、粒子線Bを減衰させるデグレーダ22を更に備え、コリメータ装置23は、進行方向D1においてデグレーダ22の下流側に設けられてよい。この場合、コリメータ装置23は、デグレーダ22で広がった粒子線Bを精度よく絞ることができる。
【0048】
コリメータ装置23は、少なくとも第1の遮蔽部材44A及び第2の遮蔽部材44Bを支持する支持部材46を有してよい。同一の支持部材46で支持することで、第1の遮蔽部材44と第2の遮蔽部材44Bとの間の位置精度を向上できる。
【0049】
支持部材46は、第1の遮蔽部材44Aを支持する支持部47Aの支持面51,52、及び第2の遮蔽部材44Bを支持する支持部47Bの支持面51,52を有し、支持部47Aの支持面51,52及び支持部47Bの支持面51,52は、進行方向D1に直交する同一の方向にドリル加工を行うことによって形成された加工面であってよい。この場合、同じ加工装置のドリルDRを用いて支持部47Aの支持面51,52及び支持部47Bの支持面51,52を形成することができるため、両者の位置精度を向上できる。従って、これらの支持面51,52に支持される第1の遮蔽部材44Aと第2の遮蔽部材44Bとの間の位置精度を向上できる。
【0050】
支持部材46は、第1の遮蔽部材44A及び第2の遮蔽部材44Bの少なくとも一方を、進行方向D1に直交する二つの方向から支持してよい。この場合、遮蔽部材44A,44Bを二つの方向から位置決めすることができるため、位置精度を向上できる。
【0051】
支持部材46には、冷却部41が接続されてよい。この場合、第1の遮蔽部材44A及び第2の遮蔽部材44Bのそれぞれに対して個別に冷却部を設けなくとも、支持部材46を介して共通の冷却部41で両者を冷却することができる。
【0052】
本実施形態に係るコリメータ装置23は、粒子線Bのコリメートを行うコリメータ装置23であって、粒子線Bを遮蔽すると共に、粒子線Bを進行方向D1に通過させる開口50A,50Bをそれぞれ有する少なくとも第1の遮蔽部材44A及び第2の遮蔽部材44Bと、第1の遮蔽部材44A及び第2の遮蔽部材44Bを支持する支持部材46と、を備え、第2の遮蔽部材44Bは、第1の遮蔽部材44Aから進行方向D1の下流側へ離間して配置され、進行方向D1の上流側から第1の遮蔽部材44Aの開口50Aを見た場合、下流側に第2の遮蔽部材44Bの開口50Bが見える。
【0053】
このコリメータ装置23によれば、上述の粒子線照射装置1と同趣旨の作用・効果を得ることができる。
【0054】
ここで、
図10を参照して、比較例に係るコリメータ装置300について説明する。比較例に係るコリメータ装置300は、筒状の支持部材346と、支持部材346に挿入された複数の遮蔽部材344を有する。支持部材346は、進行方向D1の全長に亘って貫通する貫通孔346aを有する。また、遮蔽部材344は開口350を有している。遮蔽部材344は、支持部材346の全長にわたって開口350が連結されるように、隙間無く遮蔽部材344が設けられている。このようなコリメータ装置300では、遮蔽部材344の数が多くなることでコストアップするという問題が生じると共に、寸法精度が悪化するという問題がある。これに対し、本実施形態に係るコリメータ装置23は、第1の遮蔽部材44Aと第2の遮蔽部材44Bとの間の遮蔽部材を省略することで、コストを低減すると共に、部品点数を抑えることで寸法精度を向上することができる。また、比較例では、支持部材346の貫通孔346aを形成するためには、長いドリルを用いて深孔の加工をしなくてはならないが、このような加工は寸法精度が悪化すると共に、加工限界の問題も生じる。これに対し、本実施形態に係るコリメータ装置23では、
図7に示すような加工が可能となるため、高い寸法精度で加工を行うことができる。
【0055】
本発明は、上述の実施形態に限定されるものではない。
【0056】
例えば、
図11(a)(b)に示すように、二つのピースを用いて一つの遮蔽部材を構成してよい。具体的に、
図11(a)に示すように、第1の遮蔽部材44Aは反割れの部材44Aa,44Abの組み合わせにより構成され、第2の遮蔽部材44Bは反割れの部材44Ba,44Bbの組み合わせにより構成される。部材44Aa,44Baは、U字状の開口50Aa,50Baを有する。部材44Ab,44Bbは、逆U字状の開口50Ab,50Bbを有する。これにより、
図11(b)に示すように、部材44Aa,44Abを組み合わせることで、円形の開口50Aが構成される。部材44Ba,44Bbを組み合わせることで、円形の開口50Bが構成される。
【0057】
図11(c)に示すように、開口50A,50Bの形状は限定されず、円形に変えて矩形状の形状としてもよい。また、開口50Aと開口50Bが互いに異なる形状であってもよい。また、
図11(d)に示すように、支持部材46は、凹状の断面形状で遮蔽部材44A,44Bを支持しなくともよく、L字状の断面形状にて、二方向から支持する構造でもよい。この場合、支持部材46の軽量化を図ることができる。
【0058】
また、
図12(a)に示すように、第1の遮蔽部材44Aに対してサイズが異なる第2の遮蔽部材44Bを採用してもよい。この場合、第1の遮蔽部材44Aを大きくすることで、進行方向D1の上流側で散った粒子線Bを遮蔽することできる。また、組立時の遮蔽部材44A,44Bの取付違いを抑制できる。
図12(b)に示すように、三つ目の遮蔽部材44Cを設けてもよい。例えば、冷却部41の近くに遮蔽部材44Cを設けることで、当該遮蔽部材44Cの冷却効率を向上できる。
【0059】
例えば、照射部4の照射方式は、上述のようなスキャニング方式に限定されるものではなく、例えば、ワブラー法、二重散乱体法等のブロードビーム方式が採用されてもよい。
【0060】
建屋200の構造や、各構成要素のレイアウトは、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜変更してもよい。
【符号の説明】
【0061】
1…粒子線照射装置、2…加速器、4…照射部、6…輸送経路、22…デグレーダ、23…コリメータ装置、40…冷却部、44A…第1の遮蔽部材、44B…第2の遮蔽部材、46…支持部材、50A,50B…開口。